(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記各第1坪量部の面積、および前記異なる2方向のそれぞれで隣接する前記第1坪量部同士のピッチが一定であり、前記異なる2方向のそれぞれで隣接する前記第1坪量部の一方の形状は円形、長円形もしくは他方の第1坪量部より角数の多い多角形または前記多角形で角が円弧状なる図形である
請求項1記載の吸収体。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の吸収体の好ましい一実施形態(第1実施形態)の第1実施態様について、
図1を参照しながら、以下に説明する。
【0010】
図1に示すように、第1実施態様の吸収体10(10A)は、隣接する平面視長円形の第1坪量部11間に該第1坪量部11より坪量が低い第2坪量部12を有する。この第2坪量部12は第1坪量部11を囲み、交差域13からみて少なくとも二方向に延びて配されている。本例では、第1坪量部11は、Y方向に等間隔に配され、X方向に隣接する第1坪量部11列はY方向に例えば1/2ピッチずつずらして配されている。
各第2坪量部12が交わる交差域13は以下のように規定される。
まず、第2坪量部12(12A)の最小幅P(PA)を規定するそれぞれの辺LA1,LA2を交差域13方向に延長して想定される領域SAが規定される。第2坪量部12(12B)の最小幅PBを規定するそれぞれの辺LB1,LB2を交差域13方向に延長して想定される領域SBが規定される。そして領域SAと領域SBの共通部分で構成される想定交差域14(交差基準)を含む最小径の円Cminが得られる。また、交差域13に隣接する第1坪量部11を含まず該第1坪量部11の少なくとも二つに接する最大径の円Cmaxが得られる。そして最小径の円Cminより最大径の円Cmaxが大きいという条件を満たすので交差広部15が規定される。上記最小幅Pは、交差域13から延びる第2坪量部12Aが最小となる幅である。また、上記第1坪量部11の坪量は、200g/m
2以上800g/m
2以下、好ましくは300g/m
2以上700g/m
2以下、より好ましくは300g/m
2以上500g/m
2以下である。さらに上記第2坪量部12の坪量は、10g/m
2以上300g/m
2以下、好ましくは30g/m
2以上200g/m
2以下、より好ましくは50g/m
2以上100g/m
2以下である。
【0011】
次に、前述の第1実施態様の比較として第1比較例を、
図2を参照して説明する。
図2に示すように、第1比較例の吸収体100(100A)は、隣接する平面視長方形の第1坪量部111間に該第1坪量部111より坪量が低い第2坪量部112を有する。第2坪量部112は第1坪量部111を囲み、交差域113からみて少なくとも二方向に延びて配されている。各第2坪量部112が交わる交差域113は以下のように規定される。
まず、第2坪量部112(112A)の最小幅P(PA)を規定するそれぞれの辺LA1,LA2を交差域113方向に延長して想定される領域SAが規定される。第2坪量部112(112B)の最小幅PBを規定するそれぞれの辺LB1,LB2を交差域113方向に延長して想定される領域SBが規定される。そして領域SAと領域SBの共通部分で構成される想定交差域114(交差基準)を含む最小径の円Cminが得られる。また、交差域113に隣接する第1坪量部111を含まず該第1坪量部111の少なくとも二つに接する最大径の円Cmaxが得られる。そして最小径の円Cminが最大径の円Cmaxより大きいので交差広部の条件を満たしていない。すなわち、交差部115は交差域113と想定交差域114と同一である。上記最小幅Pは、交差域113から延びる第2坪量部112Aが最小となる幅である。
【0012】
上記第1実施態様と第1比較例を比較すると、第2坪量部12、112の最小幅PA=PBは同一であり、最小径の円Cminも同一であるが、交差広部15が交差部113より広くなっている。このような交差広部15を有する第1実施態様の吸収体10は以下のような作用効果が得られる。
【0013】
上述の吸収体10Aでは、平面視、第2坪量部12が第1坪量部11を囲むように、かつ少なくとも2方向に連続的に配され、第2坪量部12の交差部が広い交差広部15となっているので、吸収体10A自体が肌面にそって曲がりやすく、柔らかくなる。このため、吸収体10Aの肌へのフィット感を高めることができ装着感に優れる。また、その第2坪量部12の交差域の面積を大きくした交差広部15が構成されていることで、交差広部15における液の保持性が低下して液の拡散性が高められ、高坪量である第1坪量部11への液移動性を高くすることができる。したがって、交差広部15は、第2坪量部12が2方向以上に配されている交差部分での液留めと液分散の効果を有する。
上記交差広部15は、第1比較例で示した第1坪量部111の角部を円弧状に構成することで第1実施態様の第1坪量部11としているため、円弧状に構成した分、交差広部15を広く採ることができている。
角部を円弧にした場合、この円弧は、第1坪量部11の長手方向幅、短手方向幅(もしくは少なくとも前記二方向の軸と直交する幅)の10%以上250%以下の曲率半径を有する。10%以上の曲率半径を有することで、交差部における第2坪量部12への液の拡散を促し、250%以下の曲率半径を有することで、交差広部15となった交差部内で液が留まりやすくなることを防止する。
さらに、上記吸収体10を積繊して製造する場合、低坪量部の第2坪量部12の積繊が安定し、高坪量部の第1坪量部11から第2坪量部12にかけてなだらかな変形が得られる(
図1のS部参照)。これによって、第2坪量部12の厚さの薄い部分では液保持性が低下して第2坪量部12の中央部では少量液の拡散が得られやすくなり、なだらかな変形が得られている部分では高坪量部である第1坪量部11への導液性が向上することで、高坪量の第1坪量部11へ液が伝達され、結果として多量の液を拡散、保持できる。
【0014】
次に、第1実施形態の別の態様として第2ないし第4実施態様を、
図3を参照して以下に説明する。
図3(1)に示すように、第2実施態様の吸収体10(10B)は、隣接する平面視円形の第1坪量部11間に該第1坪量部11より坪量が低い第2坪量部12を有する。各第1坪量部11の面積は等しく、S1=S2=S3=S4である。また隣接している第1坪量部11同士のピッチは等しく、L1=L2=L3=L4である。第2坪量部12は第1坪量部11を囲み、少なくとも二方向に延びて配されている。
さらに、上記第1実施態様と同様に交差広部15が規定されている。したがって、各第2坪量部12の最小幅Pを規定する辺をその最小幅を維持して交差域13方向に延長して想定される想定交差域14(交差基準)を含む最小径の円Cminが得られる。また、交差域13に隣接する第1坪量部11を含まず該第1坪量部11の少なくとも二つに接する最大径の円Cmaxが得られる。そして交差広部15は、最小径の円Cminより最大径の円Cmaxが大きいという交差広部の条件を満たしている。
上記吸収体10Bは、第2坪量部12の最小幅が狭い割に交差広部15の面積を広く取れるので、交差広部15で液を吸収しやすくなり、液移動を抑制しながら第1坪量部11に液を導くことができる。
【0015】
また
図3(2)に示すように、第3実施態様の吸収体10(10C)は、隣接する平面視六角形の第1坪量部11間に該第1坪量部11より坪量が低い第2坪量部12を有する。本例では、第1坪量部11は正六角形である。各第1坪量部11の面積は等しく、S1=S2=S3=S4である。また隣接している第1坪量部11同士のピッチは等しく、L1=L2=L3=L4である。第2坪量部12は第1坪量部11を囲み、少なくとも二方向に延びて配されている。
さらに、上記第1実施態様と同様に交差広部15が規定されている。したがって、各第2坪量部12の最小幅Pを規定する辺をその最小幅を維持して交差域13方向に延長して想定される想定交差域14(交差基準)を含む最小径の円Cminが得られる。また、交差域13に隣接する第1坪量部11を含まず該第1坪量部11の少なくとも二つに接する最大径の円Cmaxが得られる。そして交差広部15は、最小径の円Cminより最大径の円Cmaxが大きいという交差広部の条件を満たしている。
上記吸収体10Cは、第2坪量部12を広く取ることができ、第2坪量部12の設計自由度が高い。
【0016】
さらに
図3(3)に示すように、第4実施態様の吸収体10(10D)は、隣接する平面視多角形の第1坪量部11間に該第1坪量部11より坪量が低い第2坪量部12を有する。本例では、第1坪量部11は平面視45°回転させた正方形と、正五角形である。各第1坪量部11の面積は等しく、S1=S2=S3=S4である。また隣接している第1坪量部11同士のピッチは等しく、L1=L2=L3=L4である。第2坪量部12は第1坪量部11を囲み、少なくとも二方向に延びて配されている。
さらに、最小幅の代わりに最小平均幅として上記第1実施態様と同様に交差広部15が規定されている。最小平均幅は、交差域13を挟んで両方向に異なる幅で延びる第2坪量部12の交差域13の一方側が最小となる幅PA1と他方側が最小となる幅PA2の平均の幅である。したがって、各第2坪量部12の最小平均幅を規定する辺を交差域13方向に延長して想定される想定交差域14(交差基準)を含む最小径の円Cminが得られる。また、交差域13に隣接する第1坪量部11を含まず該第1坪量部11の少なくとも二つに接する最大径の円Cmaxが得られる。そして交差広部15は、最小径の円Cminより最大径の円Cmaxが大きいという交差広部の条件を満たしている。
上記吸収体10Dは、第2坪量部12を部分的に狭くすることによって、第2坪量部12の過度の液拡散を抑制して、第1坪量部11に液を導きやすくなっている。
【0017】
次に、前述の第2ないし第4実施態様の比較として第2比較例を、
図4を参照して説明する。
図4に示すように、第2比較例の吸収体100(100B)は、隣接する平面視四角形の第1坪量部111間に該第1坪量部111より坪量が低い第2坪量部112を有する。本例では、第1坪量部111は平面視45°回転させた正方形である。各第1坪量部111の面積は等しく、S1=S2=S3=S4である。また隣接している第1坪量部111同士のピッチは等しく、L1=L2=L3=L4である。第2坪量部112は第1坪量部111を囲み、少なくとも二方向に延びて配されている。
さらに、上記第1比較例と同様に交差部115が規定されている。したがって、各第2坪量部112の最小幅を規定する辺を交差域113方向に延長して想定される想定交差域114(交差基準)を含む最小径の円Cminが得られる。また、交差域113に隣接する第1坪量部111を含まず該第1坪量部111の少なくとも二つに接する最大径の円Cmaxが得られる。そして交差部115は、最小径の円Cminと最大径の円Cmaxが同一であり、交差広部の条件を満たしていない。すなわち、交差部115は想定交差域114と同一である。
【0018】
上記第2ないし第4実施態様の構成と第2比較例の構成を比較すると、第2坪量部12、112の面積もピッチも同一であるが、交差広部15、交差部115の広さが第2ないし第4実施態様のほうが大きくなっている。このように、第1坪量部11は、角部を円弧状にして円形化することや、多角形化することが広い交差広部15を得るのに有効であることがわかる。
また上述の第4実施態様のように、異なる2方向のそれぞれで隣接する第1坪量部11の一方の形状が異なる場合、その形状は、円形、長円形もしくは他方の第1坪量部11より角数の多い多角形であってもよい。また、上記第2ないし第4実施態様の吸収体10では、第1坪量部11は、角部が円弧状であってもよい。円弧状とすることは、さらに交差広部15の面積を広くすることができるので好ましい。
【0019】
上述した第2ないし第4実施態様の吸収体10では、各第1坪量部11の面積は等しく、また隣接している第1坪量部11同士のピッチも等しくなっている。この関係を上述の第1実施態様の吸収体10Aが有していてもよい。
【0020】
上述の各実施態様の吸収体10では、交差広部15を備えたことにより、吸収体10を積繊によって作製する際、壊れ難く、第2坪量部
12の積繊が安定し、第2坪量部12の坪量ばらつきが抑制される。また第2坪量部12においてなだらかな変形、すなわち低坪量の第2坪量部12からから高坪量の第1坪量部11への断面形状の変化がなだらかになる(前記
図1(2)、(3)のS部参照、比較として前記
図2(2)、(3)の断面図参照)。これによって、第2坪量部12の厚さの薄い部分では液保持性が低下する。そして第2坪量部12から第1坪量部11へ向かっての坪量変化を徐々に高くなっているので、第2坪量部12の液拡散が高まり、第2坪量部12から第1坪量部11へ導液されやすくなる。
また後に詳述するように、交差広部15では液の拡散が抑制される。そして交差広部15から第2坪量部12の最小幅部分への液移動時の第1坪量部11への液移動は、液容量の大きい部位から小さい部位へ液が移動し、溢れる液が第1坪量部11へ移動する。
【0021】
次に、液の周辺移動を促進させる構成について、
図5ないし
図7を参照して以下に説明する。
図5に示すように、吸収体10(10E)は、第1坪量部11が第2坪量部12より坪量が高く、隣接する第1坪量部11間に第2坪量部12を有する。したがって第2坪量部12は第1坪量部11を囲み、少なくとも二方向(X方向とY方向)に延びて配されている。本例では、第1坪量部11は、X方向に等間隔に配され、Y方向にも等間隔に配されている。
さらに、上記第1実施態様と同様に交差広部15が規定されている。したがって、各第2坪量部12の最小幅を規定する辺を交差域13方向に延長して想定される想定交差域14(交差基準)を含む最小径の円Cminが得られる。また、交差域13に隣接する第1坪量部11を含まず該第1坪量部11の少なくとも二つに接する最大径の円Cmaxが得られる。そして交差広部15は、最小径の円Cminより最大径の円Cmaxが大きいという交差広部の条件を満たしている。
【0022】
上述の吸収体10Eは、
図6(1)に示すように、第1坪量部11間に第2坪量部12を有し、第2坪量部12はその断面形状がアーチ形状を有している。このような形状に積繊した吸収体10を厚み方向に圧縮すると、
図6(2)に示すように、第2坪量部12から第1坪量部11にかけて密度が徐々に高くなるいわゆる密度勾配が作られる。そして、第2坪量部12は吸収体10の一面側に偏って配されて、他の面側に第1坪量部11の突出部11Tが構成される。またその突出部11Tの断面は他の面側に向かって狭くなる台形状を有している。高密度部分が高坪量部(第1坪量部11)となることで、毛管力による導液と保持力が得られ、さらに、徐々に高密度な高坪量部へ向かって密度と坪量が大きくなる構造を有することで、保持できない液を拡散させ、保持できる液を移動保持させる構造体が得られる。その結果、液の吸収が早く、液の戻りが低い吸収体となる。
また交差広部15はその中央部分が最寄りの第1坪量部11の境界に比べて厚さが薄くなっている。これにより、液の保持量が少なく、拡散し易い構造を有しており、また、低密度な構造であることから過度の拡散を抑制することができる。
また
図7に示すように、第2坪量部12は、交差広部15の低密度部から徐々に密度が高くなり交差広部15間は高密度部になっている。したがって第2坪量部12では、低坪量(低密度)部から高坪量(高密度)部への液の移行はあるが、高坪量(高密度)部から
低坪量(低密度)部への液の移行は少ない。なお、第2坪量部12の高密度部は第1坪量部11よりは低密度である。交差広部15を含む第2坪量部12では、多少の坪量差を有しながらも第1坪量部11よりも低坪量であり、概ね均質な坪量となっており、そのような状況での密度は、厚さと比例することから次のように定義することができる。ここでは、第1坪量部11及び第2坪量部12における厚みが2mm以上を高密度領域、厚みが2mm未満を低密度領域とし、その中間の厚みを密度の遷移領域(密度グラデーション領域)とした。なお、密度の変化がゆるやかとは、高密度領域と低密度領域のそれぞれの厚みが上記記載の範囲内にあり、高密度領域と低密度領域を結ぶゆるやかな曲線の偏曲点を通る垂線と水平方向の直線が作る角度が90度以上180度未満である場合を指す。
【0023】
次に、上述の吸収体10Eの比較として第3比較例を、
図8ないし
図10を参照して説明する。
図8に示すように、第3比較例の吸収体100(100C)は、隣接する平面視長方形の第1坪量部111間に第1坪量部111より坪量が低い第2坪量部112を有する。第2坪量部112は第1坪量部111を囲み、少なくとも二方向(X方向とY方向)に延びて配されている。本例では、第1坪量部11
1は、X方向に等間隔に配され、Y方向にも等間隔に配されている。
さらに、上記第1比較例と同様に交差部115が規定されている。したがって、各第2坪量部112の最小幅を規定する辺を交差域113方向に延長して想定される想定交差域114(交差基準)を含む最小径の円Cminが得られる。また、交差域113に隣接する第1坪量部111を含まず該第1坪量部111の少なくとも二つに接する最大径の円Cmaxが得られる。そして交差部115は、最小径の円Cminと最大径の円Cmaxが同一であり、交差広部の条件を満たしていない。すなわち、交差部115は想定交差域114と同一である。
【0024】
上述の吸収体100Cは、
図9(1)に示すように、第1坪量部111に相当する領域間に第2坪量部112となる領域を有し、第1坪量部111間の第2坪量部112下には断面矩形の凹部116を有している。このような形状に積繊した吸収体100を厚み方向に圧縮すると、
図9(2)に示すように、第2坪量部112から第1坪量部111にかけて密度が急に高くなる。また
図10に示すように、第2坪量部112は、溝状の凹部116(前記
図9参照)の坪量が均一であり、交差部115では低密度部であるが、交差部115間では急に密度が高くなって高密度部になる。
【0025】
上記第1実施態様と第1比較例を比較すると、第2坪量部12、112の最小幅PA=PBは同一であり、最小径の円Cminも同一であるが、第1実施形態では交差広部15の面積が交差部115の面積より広くなっている。
上述のように、第1実施形態のように交差広部15の面積が交差部115の面積より広くなると、坪量分布が発生する。すなわち、第2坪量部12から第1坪量部11にかけて密度が徐々に高くなるいわゆる密度勾配ができる。これによって第2坪量部12の低坪量部では、密度分布が低密度部から高密度部に徐々に変化するいわゆる密度グラデーションを有し、これによって第2坪量部12から第1坪量部11への液移行が容易になる。よって、第2坪量部12から第1坪量部11への移行される液量が多くなり、液の拡散性が高められる。
【0026】
図11(1)に示すように、前記断面アーチ型を有する吸収体10(前記
図5ないし
図7参照)は、上記説明したように、第2坪量部12にも低坪量部と高坪量部が生じている。この高坪量部は第1坪量部11よりは低坪量となっている。このため、低坪量の交差広部15に液が溜まると、交差広部15から第2坪量部12の高坪量部への液の拡散が第1坪量部11への液の拡散より勝るため、(2)図のように、液の拡散は交差広部15から平面視楕円状に広がる。
【0027】
一方、
図12(1)に示すように、前記第1比較例の吸収体100(前記
図8ないし
図10参照)は、低坪量部である交差域
113に液が保持され、そこから平面視同心円状に拡がる。しかも低坪量部の第2坪量部112と高坪量部の第1坪量部111との境界はなだらかな形状になっておらず、急激な坪量変化が起きているため、毛管力は高いが時間あたり液の移動量が少ない高坪量部に液が移動するための時間が必要となり、低坪量部の交差域
113に液が溜まりやすい。したがって、液の拡散性が低い。
【0028】
また
図13に示すように、(1)の吸収体10の状態から(2)のように液が供給された状態になると、溝状の凹部16(前記
図7の交差広部15下の凹んだ部分に対応する。)の第2坪量部12では、液の広がりが抑制され、矢印方向に第2坪量部12の交差広部15から高坪量部である第1坪量部11への液の移行が進む。よって、第2坪量部12から第1坪量部11への液の移行が円滑にできるという効果が得られる。これは第2坪量部12内の低密度部から高密度部Hへの毛管力より、第2坪量部11の交差広部15から第1坪量部11への毛管力のほうが強いため、凹部16での液の拡がりが抑制され、第2坪量部12の交差広部15から第1坪量部11への液移行(矢印で示す)が進むようになるためである。また、第2坪量部12から第1坪量部11に向かって、密度が徐々に高くなる密度グラデーションができている場合には、第2坪量部12から第1坪量部11への液移行がより起り易くなる。
【0029】
また
図14に示すように、交差部115(前記
図8参照)よりも交差広部15の面積が広いので、低坪量域が増える。低坪量域は第1坪量部11の高坪量域よりも薄く柔軟性を有するので、吸収体10全体の柔軟性が向上する。
【0030】
次に上述の交差広部15の定義について、
図15を参照して詳細に説明する。
図15(1)に示すように、第2坪量部12(12A)の最小幅PAを規定するそれぞれの辺LA1,LA2を交差域13方向に延長して交差域13で想定される領域SAが規定される。さらに第2坪量部12(12B)の最小幅PBを規定するそれぞれの辺LB1,LB2を交差域13方向に延長して交差域13で想定される領域SBが規定される。
【0031】
そして
図15(2)に示すように、上記領域SA、SBの共通部分で構成される想定交差域14を交差基準とし、この交差基準を含む最小径の円Cminを求める。交差基準が長方形、正多角形の場合には、その最小外接円が最小径の円Cminとなる。また長方形を除く平行四辺形、上記以外の多角形等の場合には、少なくとも交差基準を含む最小の円が最小径の円Cminとなる。
【0032】
次に
図15(3)に示すように、対象となる交差部を計測する。すなわち、交差部周囲に存する第1坪量部11を含まず第1坪量部11の少なくとも二つに接する最大径の円Cmaxを求める。そして最小径の円Cminより最大径の円Cmaxが大きいという条件を満たすことで交差広部15が規定される。したがって、Cmax>Cminであれば、交差広部15となる。
【0033】
次に、上述した以外の交差広部15の第1ないし第4実施例を、
図16ないし
図19を参照して説明する。
第1実施例は、
図16(1)に示すように、交差基準14Aが平行四辺形の場合である。したがって、交差基準14Aを含む最小径の円Cminは、平行四辺形の対角線が長い方の頂点に接する円となる。
そして
図16(2)に示すように、第1坪量部11を含まず第1坪量部11の少なくとも二つに接する最大径の円CmaxがCmax>Cminを満足するように、第1坪量部11を後退させた形状とすることで交差域13に交差広部15が構成される。
【0034】
第2実施例は、
図17(1)に示すように、第2坪量部12がT字形に交差する場合で、交差基準14Aが長方形の場合である。したがって、交差基準14Aを含む最小径の円Cminは、この長方形の外接円となる。
そして
図17(2)に示すように、第1坪量部11を含まず第1坪量部11の少なくとも二つ(本例の場合は三つ)に接する最大径の円CmaxがCmax>Cminを満足するように、第1坪量部11の角部を後退させた形状として、円弧状もしくは凸曲線状(例えば楕円状)にすることで交差域に交差広部15が構成される。
【0035】
第3実施例は、
図18(1)に示すように、第2坪量部12の幅が交差域13の両側で異なる場合で、交差基準14Aが長方形の場合である。この場合の交差基準14Aは、交差域13を挟んで両方向に異なる幅で延びる第2坪量部12Aの交差域の一方側で最小となる幅PA1と他方側で最小となる幅PA2の平均の幅である最小平均幅PAaが長方形の1辺の長さを規定し、同様にして、交差域を挟んで両方向に異なる幅で延びる第2坪量部12Bの交差域の一方側で最小となる幅PB1と他方側で最小となる幅PB2の平均の幅である最小平均幅PBaが長方形の別の1辺の長さを規定することで決まる。したがって、交差基準14Aを含む最小径の円Cminは、この長方形の外接円となる。
そして
図18(2)に示すように、第1坪量部11を含まず第1坪量部11の少なくとも二つ(本例の場合は三つ)に接する最大径の円CmaxがCmax>Cminを満足するように、第1坪量部11の角部を後退させた形状として、円弧状もしくは凸曲線状(例えば楕円状)にすることで交差域に交差広部15が構成される。
【0036】
第4実施例は、
図19(1)に示すように、異なる二方向に配した各第2坪量部12が一定幅で曲線状に配され、交差基準14Aが長方形の場合である。この交差基準は、各第2坪量部12のそれぞれの幅を1辺とする長方形で規定される。したがって、交差基準14Aを含む最小径の円Cminは、長方形の外接円となる。
そして
図19(2)に示すように、第1坪量部11を含まず第1坪量部11の少なくとも二つ(本例の場合は四つ)に接する最大径の円CmaxがCmax>Cminを満足するように、第1坪量部11の角部を後退させた形状として、円弧状もしくは凸曲線状(例えば楕円状)にすることで交差域に交差広部15が構成される。
なお、上記いずれのCmax>Cminなる関係は、面積で比較しても直径もしくは半径で比較してもよい。
【0037】
以上説明したように、交差後部15は、交差基準に基づいて規定される交差基準を含む最小径の円Cminより、第1坪量部11を含まず第1坪量部11の少なくとも二つに接する最大径の円Cmaxのほうが大きいという条件を満たすものであれば、いかなる形状であってもよい。
【0038】
次に、上述の第1坪量部11(高坪量部)と第2坪量部12(低坪量部)の境界の設定方法を、
図20を参照して説明する。特に、断面アーチ型に積繊させた場合の境界の求め方を説明する。
図20に示すように、断面頂部が半円形状の型51を用いて吸収体10を積繊した場合、吸収体10は型51の表面にそってアーチ型に積繊され、アーチ型部分が低坪量の第2坪量部12となり、その両側に高坪量の第1坪量部11となる。ここで、高坪量部と低坪量部との境界は、型51の断面半円形部分に対する接線LTの傾きが45°になるときの接点Tを通る厚み方向の線LBとなる。
【0039】
上述した本発明の吸収体10は、種々の吸収性物品への適用が可能である。その一例として、生理用ナプキン(昼用)、長時間用生理用ナプキンおよび尿パッドに適用される吸収体10について、以下に好ましい一例を説明する。
【0040】
図21に示すように、昼用の生理用ナプキンに適用される吸収体10は、一例として、平面視長円形状の第1坪量部11が千鳥配置され、隣接する第1坪量部11間に第1坪量部11よりも低坪量の第2坪量部12が配されているものである。この第2坪量部12の交差域が交差広部15になっている。なお、吸収体10の長手方向の長さは、例えば150mmないし250mm程度である。
このように吸収体10は、交差広部15が配されていることから、柔軟性が高く、長手方向の可撓性が抑制され、使用時における肌面への追従性がよくなる。
【0041】
図22に示すように、長時間夜用の生理用ナプキンに適用される吸収体10は、中央部から前方部にかけての形状安定域には、一例として、平面視長円形状の高坪量の第1坪量部11が千鳥配置されている。この配置は、上述の昼用の生理用ナプキンと同様であってもよい。一方、後方部には、交差広部15の面積が広くなるように形状の異なる第1坪量部11が配されている。例えば前記
図3(3)を参照して説明したような形状および配置形態である。本例では、一例として、角部が円弧状にされた五角形の第1坪量部11pから放射状に角部が円弧状にされた三角形、四角形および長円形の第1坪量部11が前記Cmax>Cminなる関係を満足するように配されている。したがって、第2坪量部12の交差域は交差広部15となっている。なお、吸収体10の長手方向の長さは、例えば270mmないし450mm程度である。
この第1坪量部11の形状、配置形態は一例であり、種々の形状、配置形態をとることができる。この吸収体10の排泄領域では、上述の昼用の生理用ナプキンと同様の効果が得られ、しかも後方部には交差広部15が広く配されていることから、柔軟性が高く、可撓性に優れ身体形状に容易に変形するため、使用時における吸収体10の肌面への追従性がよくなる。
【0042】
図23に示すように、尿パッドに適用される吸収体10は、中央部から前方側および後方側にかけて両側に、角部を円弧状にした細長い台形状の第1坪量部11(11a)が配されている。その間の中央部から前方側および後方側にかけて、角部を円弧状にした長方形の複数の第1坪量部11(11b)が順に配列されている。さらに前方部および後方部には、角部を円弧状にしたひし形の複数の第1坪量部11(11c)が配されている。いずれの形状の第1坪量部11も前記Cmax>Cminなる関係を満足するように配されている。したがって、第2坪量部12の各交差域は交差広部15となっている。この第1坪量部11の形状、配置形態は一例であり、交差域が交差広部15となる条件を満たす範囲内で、種々の形状、配置形態をとることができる。なお、吸収体10の長手方向の長さは、例えば270mmないし450mm程度である。
この吸収体10では、側方の起立性が得られる。すなわち、図示はしない弾性材による変形に対する追従性が得られ、しかも中央部には交差広部15が広く十分に配されていることから、柔軟性が高く、股間部(上記中央部に相当)の湾曲性に優れている。また、適度の可撓性を有することから、前後部の胴方向の湾曲性に優れ、第1坪量部11の型崩れが防止できる。
【0043】
本発明の吸収体10は、上記の実施形態に制限されるものではなく、展開型おむつ、パンツ型おむつ、生理用ショーツ、ショーツ型ナプキン、生理用ナプキン、失禁パッド、失禁ライナ等の種々の吸収性物品に含まれる吸収体に用いることができる。また、上記吸収性物品が乳幼児用のものであっても、成人用のものであっても適用することができる。さらに、尿に限らずその他、経血、オリモノ、軟便等に対しても効果的である。