(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989324
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】ディスク式スチームトラップ
(51)【国際特許分類】
F16T 1/16 20060101AFI20160825BHJP
【FI】
F16T1/16 G
【請求項の数】1
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2011-229969(P2011-229969)
(22)【出願日】2011年10月19日
(65)【公開番号】特開2013-87889(P2013-87889A)
(43)【公開日】2013年5月13日
【審査請求日】2014年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】浅田 哲夫
【審査官】
加藤 一彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭61−099797(JP,A)
【文献】
特公昭43−001078(JP,B1)
【文献】
特公昭45−029338(JP,B1)
【文献】
特開昭57−124196(JP,A)
【文献】
特開昭57−006169(JP,A)
【文献】
特開2009−192012(JP,A)
【文献】
特開昭54−043322(JP,A)
【文献】
特公昭57−008355(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16T 1/16
F16T 1/08
F16K 31/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁ディスクの上面に弁ディスクよりも大径で変圧室内周壁よりも少し小径の円板状の反転バイメタルを載せて、弁ディスクの中心部分で連結し、外輪弁座の外周に環状のバイメタル座を設け、低温時に反転バイメタルが上に凸状に反転して周囲縁部分がバイメタル座に当接し中心部分が上昇して弁ディスクを強制的に持上げて開弁させ、高温時に下に凸状に反転して周囲縁部分がバイメタル座から離れるようにしたものにおいて、弁ディスクの外周とバイメタル座の内周壁との間に隙間が形成されており、反転バイメタルの周囲縁部分にバイメタル座の内径よりも小さな小径部が形成されていることを特徴とするディスク式スチームトラップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧室すなわち熱力学的蒸気室の圧力変化に応じて弁ディスクが開閉することにより、蒸気配管系に発生する復水を自動的に排出するディスク式スチームトラップに関し、特に、バイメタルを用いてエアバインディングを解消できるようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスク式スチームトラップは内外輪弁座からなる弁座面に対して離着座する弁ディスクを、弁ディスクの背後に形成した変圧室の圧力変化によって自力的に制御して開閉弁させ復水を自動的に排出するものである。このものにおいては、始動時に空気が流入してきても、蒸気の場合と同様に瞬時に閉弁してしまい、一旦閉弁すると空気は蒸気と異なり凝縮作用を起こさないので、その後は開弁できない、いわゆるエアバインディングが起こる。そこで、従来からバイメタルを用いてこのエアバインディングを解消することが行なわれている。これは、バイメタルの温度変化による湾曲作用を利用して、低温時に弁ディスクを強制的に持上げて開弁させ、高温時に弁ディスクに干渉しない様にしたものである。この一例が特許文献1に示されている。これは、弁ディスクの上面に弁ディスクよりも大径で変圧室内周壁よりも少し小径の円板状の反転バイメタルを載せて、弁ディスクの中心部分で連結し、外輪弁座の外周に環状のバイメタル座を設け、低温時に反転バイメタルが上に凸状に反転して周囲縁部分がバイメタル座に当接し中心部分が上昇して弁ディスクを強制的に持上げて開弁させ、高温時に下に凸状に反転して周囲縁部分がバイメタル座から離れるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−99797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のディスク式スチームトラップは、低温時に反転バイメタルが上に凸状に反転して周囲縁部分がバイメタル座に当接し中心部分が上昇して弁ディスクを強制的に持上げて開弁させた状態において、弁ディスクの下面を流下する流体が反転バイメタルの上方に流入し難いために、反転バイメタルが高温時に下に凸状に反転するタイミングが遅れ、蒸気を漏出してしまうという問題点があった。
【0005】
したがって本発明が解決しようとする課題は、反転バイメタルが高温時に速やかに下に凸状に反転できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明のディスク式スチームトラップは、弁ディスクの上面に弁ディスクよりも大径で変圧室内周壁よりも少し小径の円板状の反転バイメタルを載せて、弁ディスクの中心部分で連結し、外輪弁座の外周に環状のバイメタル座を設け、低温時に反転バイメタルが上に凸状に反転して周囲縁部分がバイメタル座に当接し中心部分が上昇して弁ディスクを強制的に持上げて開弁させ、高温時に下に凸状に反転して周囲縁部分がバイメタル座から離れるようにしたものにおいて、反転バイメタルの周囲縁部分にバイメタル座の内径よりも外径の小さな凹部を形成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、反転バイメタルの周囲縁部分にバイメタル座の内径よりも外径の小さな凹部を形成しているので、低温時に反転バイメタルが上に凸状に反転して周囲縁部分の大径部がバイメタル座に当接し中心部分が上昇して弁ディスクを強制的に持上げて開弁させた状態において、弁ディスクの下面を流下する流体が弁ディスクの周囲縁部分から反転バイメタルの周囲縁部分の小径部である凹部を通して反転バイメタルの上方に流入するので、反転バイメタルが高温時に速やかに下に凸状に反転でき、蒸気を漏出することがないという優れた効果を生じる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態に係わるディスク式スチームトラップの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、
図1を参照して説明する。本体1に同一軸上に入口2と出口3を形成し、この入口2及び出口3と連通する変圧室4を蓋部材5と本体1とで形成する。入口2と出口3の変圧室4側開口端に内輪弁座6と外輪弁座7を同心円状で同一平面に形成してその間に環状溝8を形成する。内外輪弁座6,7に離着座する円板状の弁ディスク11を変圧室4内に配置する。入口2と変圧室4は内輪弁座6に形成した入口通路9を介して連通し、変圧室4と出口3は環状溝8の一部から形成した出口通路10を介して連通する。
【0010】
外輪弁座7の外周と蓋部材5の内周の間に環状のバイメタル座14を設ける。バイメタル座14は本体1と蓋部材5の間に挟んで固定する。弁ディスク11は上面の中央部分が膨らんだ球面状に形成し、その上面に円板状の反転バイメタル12を載せ、中心部分をビス13で固定する。反転バイメタル12は弁ディスク11よりも大径で変圧室4内周壁よりも少し小径で、周囲縁部分にバイメタル座14の内径よりも外径の小さな凹部15を6個有し、上面が低膨脹側であり、低温時に上に凸状に反転して弁ディスク11上面の球面と同じ曲面になり、周囲縁部分の大径部がバイメタル座14に当接し、高温時に下に凸状に反転して周囲縁部分がバイメタル座14から離れる。反転バイメタル12の周囲縁部分の凹部15の数は6個に限られることなく、1個以上設けることができる。
【0011】
上記実施例の作動を説明する。トラップ本体が低温の場合、反転バイメタル12は上に凸状に反転して周囲縁部分の大径部がバイメタル座14に当接し中心部分が上昇して弁ディスク11を持上げて開弁させている。これにより、入口2から入口通路9を通して流入する低温の復水や空気は環状溝8から出口通路9を通して出口3に排出される。このとき、弁ディスク11の下面を流下する流体が弁ディスク11の周囲縁部分から反転バイメタル12の周囲縁部分の小径部である凹部15を通して反転バイメタル12の上方に流入するので、反転バイメタル12が高温時に速やかに下に凸状に反転でき、蒸気を漏出することがない。
【0012】
そして高温の復水が流入すると反転バイメタル12は加熱されて下に凸状に反転して周囲縁部分がバイメタル座14から離れる。以後周知のディスク式スチームトラップの作動原理に基づいて蒸気は逃さず復水のみを自動的に排出する。運転途中に空気が変圧室4内に流入すると弁ディスク11は閉弁するが、変圧室4内が所定温度に低下すると反転バイメタル12が上に凸状に反転して周囲縁部分の大径部がバイメタル座14に当接し中心部分が上昇して弁ディスク11を持上げて開弁させる。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明は、蒸気配管系に発生する復水を自動的に排出するディスク式スチームトラップに利用することができる。
【符号の説明】
【0014】
1 本体
2 入口
3 出口
4 変圧室
5 蓋部材
6 内輪弁座
7 外輪弁座
8 環状溝
9 入口通路
10 出口通路
11 弁ディスク
12 反転バイメタル
13 ビス
14 バイメタル座
15 凹部