(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被検体に対するスキャンの少なくとも一部において、放射線源が第1のビュー角度範囲に位置しているときの放射線出力レベルを、前記第1のビュー角度範囲とは異なる第2のビュー角度範囲に位置しているときよりも小さくする放射線出力変調を行う放射線断層撮影装置であって、
前記被検体において体軸方向に所望の範囲を指定する指定手段と、
前記放射線出力変調を行う前記体軸方向の範囲が前記所望の範囲を覆うように放射線出力変調を行なう前記放射線源の前記体軸方向における位置及び放射線ビーム幅を決定する決定手段と、
前記決定された前記放射線源の前記体軸方向における位置及び放射線ビーム幅によるスキャンを行った場合に前記放射線出力変調を伴うスキャンにより被曝低減効果が及ぶと予想される前記体軸方向の範囲のうち前記所望の範囲を超えた領域を表示するよう表示手段を制御する表示制御手段と、を備えた放射線断層撮影装置。
被検体の体軸方向における所定の範囲がスキャンされるよう設定される1または複数のアキシャルスキャンの少なくとも一部において、放射線源が第1のビュー角度範囲に位置しているときの放射線出力レベルを、前記第1のビュー角度範囲とは異なる第2のビュー角度範囲に位置しているときよりも小さくする放射線出力変調を行う放射線断層撮影装置であって、
前記被検体において前記体軸方向に所望の範囲を指定する指定手段と、
前記被検体に設定された1または複数のアキシャルスキャンのうちスキャンの範囲が前記指定された所望の範囲を覆う1または複数のアキシャルスキャンに対して前記放射線出力変調を行うよう放射線出力変調を行なう放射線源の前記体軸方向における位置及び放射線ビーム幅を決定する決定手段と、
前記所望の範囲と前記決定された前記放射線源の前記体軸方向における位置及び放射線ビーム幅により前記放射線出力変調を行う前記体軸方向の範囲との差分を表示するよう表示手段を制御する表示制御手段と、を備えた放射線断層撮影装置。
被検体の体軸方向における所定の範囲がスキャンされるよう設定される複数のアキシャルスキャンの少なくとも一部において、放射線源が第1のビュー角度範囲に位置しているときの放射線出力レベルを、前記第1のビュー角度範囲とは異なる第2のビュー角度範囲に位置しているときよりも小さくする放射線出力変調を行う放射線断層撮影装置であって、
前記被検体において前記体軸方向に所望の範囲を指定する指定手段と、
前記放射線出力変調を行うアキシャルスキャンの前記体軸方向におけるスキャンの範囲が前記指定された所望の範囲を覆うように、前記放射線出力変調を行う1または複数のアキシャルスキャンにおけるアキシャルスキャン位置と放射線ビーム幅とを決定する決定手段であって、前記放射線ビーム幅を予め定められた複数の候補の中から選択することにより決定する決定手段と、
前記所望の範囲と前記決定されたアキシャルスキャン位置と放射線ビーム幅により前記放射線出力変調を行う前記体軸方向の範囲との差分を表示するよう表示手段を制御する表示制御手段と、を備えた放射線断層撮影装置。
被検体に対するヘリカルスキャンの少なくとも一部において、放射線源が第1のビュー角度範囲に位置しているときの放射線出力レベルを、前記第1のビュー角度範囲とは異なる第2のビュー角度範囲に位置しているときよりも小さくする放射線出力変調を行う放射線断層撮影装置であって、
前記被検体の体軸方向において被曝低減が望まれる所望の範囲を指定する指定手段と、
前記指定された所望の範囲よりその両端側にそれぞれ、指定された所望の放射線ビーム幅の半分の距離ずつ拡大した範囲に、前記放射線出力変調を受けた放射線ビームの前記体軸方向における中心の放射線が照射されるよう、前記放射線源の前記体軸方向における位置を決定する決定手段と、
前記所望の範囲と前記決定された前記放射線源の前記体軸方向における位置により前記放射線出力変調を行う前記体軸方向の範囲との差分を表示するよう表示手段を制御する表示制御手段と、を備えた放射線断層撮影装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
放射線出力変調を行う場合には、通常、操作者が、被検体の体軸方向において、被曝低減を求める所望の範囲を指定し、放射線出力変調を受けた放射線がこの指定された所望の範囲に照射されるよう、放射線出力変調条件を設定する。
【0006】
放射線出力変調を受けた放射線が照射される範囲には、被曝低減効果が生じるが、その副作用として、画質の劣化も起こる。
【0007】
そのため、放射線出力変調条件は、放射線出力変調を受けた放射線が、指定された所望の範囲にだけ照射されるように設定するのが理想的である。
【0008】
しかしながら、実際には、実施されるスキャンの特性によって制約が生じ、放射線出力変調条件が理想的に設定できない場合がある。
【0009】
例えば、実施されるスキャンがアキシャルスキャン(axial scan)である場合には、放射線出力変調はアキシャルスキャン単位で行うしかない。そのため、当初の放射線ビーム(beam)幅の設定を優先したい場合には、放射線出力変調を受けた放射線が照射される範囲は、アキシャルスキャン範囲単位に限定されてしまい、指定された所望の範囲に一致させることが難しい。
【0010】
また例えば、実施されるスキャンがヘリカルスキャン(helical scan)である場合には、被検体の体軸方向に所定の幅を有する放射線が、その体軸方向に対して螺旋回転しながら連続的に移動する。そのため、指定された所望の範囲に照射される放射線すべてに対して放射線出力変調を行おうとすると、放射線出力変調を受けた放射線が照射される範囲は、その所望の範囲よりも拡大されることになる。
【0011】
このように、スキャンの特性による制約により、放射線出力変調の効果が実際に及ぶ範囲が、操作者の意図したものと違ってしまう場合がある。この場合に、その状況が不明であると、被検体の被曝評価や画像の画質評価を適正に行うことができない。
【0012】
このような事情により、スキャンにおいて放射線出力変調を行う際に、被検体の被曝評価や画像の画質評価を適正に行うことが可能となる技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の観点の発明は、
被検体に対するスキャンの少なくとも一部において、放射線源が第1のビュー角度範囲に位置しているときの放射線出力レベルを、前記第1のビュー角度範囲とは異なる第2のビュー角度範囲に位置しているときよりも小さくする放射線出力変調を行う放射線断層撮影装置であって、
前記被検体の体軸方向において指定された所望の第1の範囲と、該第1の範囲に前記放射線出力変調を受けた放射線が照射されるように、かつ、前記スキャンの特性に基づいて決定された放射線出力変調の条件にしたがって前記放射線出力変調を行った場合に、前記放射線出力変調の効果が実質的に及ぶと予想される、前記第1の範囲とは異なる第2の範囲とを同時に表示するよう、表示手段を制御する表示制御手段を備えた放射線断層撮影装置を提供する。
【0014】
なお、「放射線出力変調の効果が実質的に及ぶ」には、放射線出力変調の効果が、実際際に及ぶ、あるいは、実効的に及ぶことが含まれる。
【0015】
第2の観点の発明は、
前記スキャンが、1または複数のアキシャルスキャンであり、
前記1または複数のアキシャルスキャンのうち前記第1の範囲に対応する1または複数のアキシャルスキャンにおけるアキシャルスキャン範囲の端のうち最も外側の2つの端を両端とする範囲に、前記放射線出力変調を受けた放射線が照射されるよう、前記条件を決定する決定手段をさらに備えた上記第1の観点の放射線断層撮影装置を提供する。
【0016】
第3の観点の発明は、
前記スキャンが、アキシャルスキャン範囲が前記体軸方向に連続的に並ぶ複数のアキシャルスキャンであり、
前記放射線出力変調を行う1または複数のアキシャルスキャンにおけるアキシャルスキャン位置と放射線ビーム幅とを決定することにより、前記条件を決定する決定手段であって、前記放射線ビーム幅を候補の中から選択する決定手段をさらに備えた上記第1の観点の放射線断層撮影装置を提供する。
【0017】
第4の観点の発明は、
前記決定手段が、前記放射線ビーム幅を、前記スキャンのスキャン条件として指定された所望の幅以下で選択する上記第3の観点の放射線断層撮影装置を提供する。
【0018】
第5の観点の発明は、
前記決定手段が、前記放射線ビーム幅を、前記放射線出力変調を行うアキシャルスキャンの数が最小となるように選択する上記第3の観点または第4の観点の放射線断層撮影装置を提供する。
【0019】
第6の観点の発明は、
前記スキャンが、ヘリカルスキャンであって、前記被検体のスキャン位置の制御において誤差が生じるものであり、
前記第1の範囲を含み、かつ該第1の範囲の幅に所定の長さを加えた幅を有する範囲に、前記放射線出力変調を受けた放射線ビームの前記体軸方向における中心の放射線が照射されるよう、前記条件を決定する決定手段をさらに備えた上記第1の観点の放射線断層撮影装置を提供する。
【0020】
第7の観点の発明は、
前記所定の長さが、1mm以上、10mm以下である上記第6の観点の放射線断層撮影装置を提供する。
【0021】
第8の観点の発明は、
前記スキャンが、ヘリカルスキャンであり、
前記第1の範囲よりその両端側にそれぞれ、スキャン条件として指定された所望の放射線ビーム幅の半分の距離ずつ拡大した範囲に、前記放射線出力変調を受けた放射線ビームの前記体軸方向における中心の放射線が照射されるよう、前記条件を決定する決定手段をさらに備えた上記第1の観点の放射線断層撮影装置を提供する。
【0022】
第9の観点の発明は、
前記表示制御手段が、前記第1および第2の範囲を、前記被検体を表す画像上に表示するよう制御する上記第1の観点から第8の観点のいずれか一つの観点の放射線断層撮影装置を提供する。
【0023】
第10の観点の発明は、
コンピュータ(computer)を、上記第1の観点から第9の観点のいずれか一つの観点の放射線断層撮影装置における表示制御手段として機能させるためのプログラムを提供する。
【0024】
ここで、「ビュー角度」とは、放射線源の回転角度位置を規定するものであり、ガントリ(gantry)角度ともいう。
【0025】
また、「放射線出力変調条件」は、例えば、被検体の体軸方向における放射線源の位置または範囲とし、放射線源がこの位置または範囲に位置してスキャンを行うときに放射線出力変調を行うようにすることができる。
【0026】
また、「アキシャルスキャン範囲」とは、放射線源の回転軸すなわちアイソセンタ(iso-center)軸上において、アキシャルスキャンによって放射線が照射される範囲である。
【0027】
また、「放射線ビーム幅」とは、アイソセンタ軸上における放射線ビームの幅である。スキャンがアキシャルスキャンの場合には、アキシャルスキャン範囲の幅と放射線ビーム幅とは等しくなる。
【0028】
また、「アキシャルスキャン」には、シネスキャン(cine scan)なども含まれ、「ヘリカルスキャン」には、可変ピッチヘリカルスキャンやシャトルスキャン(shuttle scan)なども含まれる。
【発明の効果】
【0029】
上記観点の発明によれば、被検体に対するスキャンの少なくとも一部において放射線出力変調を行う際に、被曝低減を求めて指定された所望の第1の範囲と、実際に放射線出力変調を行った場合に放射線出力変調の効果が及ぶと予想される、第1の範囲とは異なる第2の範囲とを共に表示するので、意図しない被曝低減範囲を知ることができ、被検体の被曝評価や画像の画質評価を適正に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】発明の実施形態によるX線CT装置の構成を概略的に示す図である。
【
図2】本実施形態によるX線CT装置におけるスキャンの実行に係る部分の機能ブロック(block)図である。
【
図3】第1例におけるスキャン範囲および被曝低減希望範囲の設定例を示す図である。
【
図4】第1例におけるスキャン条件およびX線出力変調条件を示す図である。
【
図5】第1例における被曝低減希望範囲および被曝低減予想範囲の表示例を示す図である。
【
図6】第2例におけるスキャン範囲および被曝低減希望範囲の設定例を示す図である。
【
図7】第2例における当初のスキャン条件を示す図である。
【
図8】第2例における組換え後のスキャン条件およびX線出力変調条件を示す図である。
【
図9】第2例における被曝低減希望範囲および被曝低減予想範囲の表示例を示す図である。
【
図10】第3例におけるスキャン範囲および被曝低減希望範囲の設定例を示す図である。
【
図11】第3例におけるスキャン条件およびX線出力変調条件を示す図である。
【
図12】第3例における被曝低減希望範囲および被曝低減予想範囲の表示例を示す図である。
【
図13】第4例におけるスキャン範囲および被曝低減希望範囲の設定例を示す図である。
【
図14】第4例におけるスキャン条件およびX線出力変調条件を示す図である。
【
図15】第4例における被曝低減希望範囲および被曝低減予想範囲の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、発明の実施形態について説明する。
【0032】
図1は、本実施形態によるX線CT装置の構成を概略的に示す図である。X線CT装置100は、操作コンソール(console)1、撮影テーブル(table)10、および走査ガントリ20を備えている。
【0033】
操作コンソール1は、操作者からの入力を受け付ける入力装置2と、被検体の撮影を行うための各部の制御や画像を生成もしくは再構成するためのデータ(data)処理などを行う中央処理装置3と、走査ガントリ20で取得したデータを収集するデータ収集バッファ(buffer)5と、画像を表示するモニタ(monitor)6と、プログラムやデータなどを記憶する記憶装置7とを備えている。
【0034】
撮影テーブル10は、被検体40を載せて走査ガントリ20の開口部に搬送するクレードル(cradle)12を備えている。クレードル12は、撮影テーブル10に内蔵するモータ(motor)で昇降および水平直線移動される。なお、ここでは、被検体40の体軸方向すなわちクレードル12の水平直線移動方向をz方向、鉛直方向をy方向、z方向およびy方向に垂直な水平方向をx方向とする。
【0035】
走査ガントリ20は、回転部15と、回転部15を回転可能に支持する本体部20aとを有する。回転部15には、X線管21と、X線管21を制御するX線コントローラ(controller)22と、X線管21から発生したX線ビーム81をコリメート(collimate)してX線ビーム幅を変化させるコリメータ(collimator)23と、被検体40を透過したX線ビーム81を検出するX線検出器24と、X線検出器24の出力を投影データに変換して収集するデータ収集装置(DAS;Data Acquisition System)25と、X線コントローラ22,コリメータ23,DAS25の制御を行う回転部コントローラ26とが搭載されている。本体部20aは、制御信号などを操作コンソール1や撮影テーブル10と通信する制御コントローラ29を備えている。回転部15と本体部20aとは、スリップリング(slip ring)30を介して電気的に接続されている。
【0036】
図2は、本実施形態によるX線CT装置におけるスキャン計画処理に係る部分の機能ブロック図である。本実施形態によるX線CT装置は、
図2に示すように、スキャン条件設定部101、被曝低減希望範囲指定部102、X線出力変調条件決定部(決定手段)103、および表示制御部(表示制御手段)104を備えている。
【0037】
スキャン条件設定部101は、操作者の操作に応じて、1検査分のスキャン条件を設定する。本例では、スキャン条件として、被検体の姿勢、撮影部位、z方向におけるスキャン範囲、X線ビーム幅、スキャンモード(scan mode)などを設定する。
【0038】
「被検体の姿勢」は、仰向け、うつ伏せ、右横向き、左横向きなどの中から選択することにより設定する。「撮影部位」は、頭部、胸部、腹・腰部などの中から選択することにより設定する。スキャンモードは、アキシャルモードまたはヘリカルモードを選択することにより設定する。スキャン範囲は、被検体40のスカウト画像上でグラフィカル(graphical)に設定する。
【0039】
なお、本例では、「被検体の姿勢」および「撮影部位」を設定すると、被曝低減の対象となる部位の種類と位置が予測され、X線出力変調においてX線出力を通常レベルより小さいレベルに低減するビュー角度範囲VRと、このときのX線出力低減率kとが自動決定される。例えば、「被検体の姿勢」が“仰向け”である場合、「撮影部位」が“胸部”であれば、ビュー角度範囲VRは、X線管が最上となる角度位置0度を中心として、±90度の範囲(被検体の正面側180度分)であり、X線出力低減率kは、50%である。
【0040】
X線出力低減率kは、管電圧一定下では、管電流低減率となる。CT自動露出機構によりX線出力の変調曲線を求めた場合には、この変調曲線に沿ったX線出力が、通常レベルとなる。X線出力低減率kは、操作者の操作に応じて、所望の低減率を設定してもよい。
【0041】
被曝低減希望範囲指定部102は、操作者の操作に応じて、z方向において被曝低減を求める所望の被曝低減希望範囲(第1の範囲)を指定する。例えば、操作者が、モニタ6の画面において、被検体40のスカウト画像上でグラフィカルに所望の範囲を入力し、入力された範囲を被曝低減希望範囲DRとして指定する。
【0042】
X線出力変調条件決定部103は、指定された被曝低減希望範囲DRに、X線出力変調を受けたX線が照射されるように、かつ、スキャンの特性を考慮して、X線出力変調条件を決定する。ここでは、X線焦点がz方向における所定の位置または範囲に位置しているときにX線出力変調を行うものとし、この所定の位置や範囲をX線出力変調条件として決定するものとする。
【0043】
表示制御部104は、指定された被曝低減希望範囲DRと、決定されたX線出力変調条件でX線出力変調を行った場合に、X線出力変調の効果が実際に、実質的に、または実効的に及ぶと予想される、被曝低減希望範囲DRとは異なる被曝低減予想範囲ERとを共に表示するよう、モニタ6を制御する。例えば、被検体40のスカウト画像上で、被曝低減希望範囲DRと被曝低減予想範囲ERとを同時に表示する。
【0044】
以下、これら各部による動作例について説明する。
【0045】
(第1例)
本例では、スキャンモードは、アキシャルモードである。すなわち、1検査分のスキャンは、1または複数のアキシャルスキャンである。
【0046】
本例において、X線出力変調条件決定部103は、1検査分としての上記1または複数のアキシャルスキャンのうち、被曝低減希望範囲DRに対応する1または複数のアキシャルスキャンにおけるアキシャルスキャン範囲の端のうち最も外側の2つの端を両端とする範囲に、X線出力変調を受けたX線が照射されるよう、X線出力変調条件を決定する。
【0047】
図3および
図4に、本例におけるスキャン範囲および被曝低減希望範囲の設定例を示す。なお、
図4中のZ軸(IC)は、アイソセンタ軸である。
【0048】
本例において、撮影部位は、被検体40の胸部である。スキャン範囲は、スカウト画像41上で、座標Z1からZ2までの第1のスキャン範囲と、座標Z3から座標Z4までの第2のスキャン範囲とが設定されている。また、これら2つのスキャン範囲に対しては、アキシャルスキャン範囲がz方向に並んだ2つのアキシャルスキャンA1、A2によりそれぞれスキャンが行われるよう設定されている。アキシャルスキャンA1,A2のX線ビーム幅dは、それぞれ、第1の幅d1(160mm)、第2の幅d2(120mm)である。
【0049】
被曝低減希望範囲DRは、放射線感受性の高い部位である乳房(乳腺)を覆うように設定されている。本例では、被曝低減希望範囲DRは、上記の第1のスキャン範囲に含まれている。
【0050】
被曝低減希望範囲DRの両端は、アキシャルスキャンA1やA2におけるアキシャルスキャン範囲のいずれか2つの端と一致していない。しかしながら、ここでは、X線ビーム幅dの設定を優先し、変更しない場合を想定する。この場合、X線出力変調は、これらアキシャルスキャンA1,A2のうちのいずれかのアキシャルスキャンにおいて行うしかない。
【0051】
そこで、X線出力変調条件決定部103は、アキシャルスキャン範囲が被曝低減希望範囲DRに最も近いアキシャルスキャンA1においてX線出力変調を行うよう、X線出力変調条件を決定する。
【0052】
この場合、X線出力変調の効果が及ぶと予想される被曝低減予想範囲ERは、
図4に示すように、アキシャルスキャンA1のアキシャルスキャン範囲と一致することになる。
【0053】
図5に、本例における被曝低減希望範囲DRと被曝低減予想範囲ERとの表示例を示す。ここでは、被曝低減希望範囲DRをz方向の幅で表す被曝低減希望領域DSと、被曝低減予想範囲ERと被曝低減希望範囲DRとの差分FRをz方向の幅で表す差分領域FSとを表示させるようにしている。このようすると、被曝低減希望範囲DR、被曝低減予想範囲ER、およびこれらの差分FRが、それぞれ明瞭で分かり易い。また、これらの表示は、高被曝の印象を与えないように、赤黄系の色を避け、青緑系の色を用いて行う方が好ましい。
【0054】
(第2例)
本例では、スキャンモードは、アキシャルモードである。また、1検査分のスキャンは、アキシャルスキャン範囲がz方向に連続的に並ぶ複数のアキシャルスキャンである。
【0055】
本例において、X線出力変調条件決定部103は、被曝低減希望範囲DRをほぼカバーするように、X線出力変調を行う1または複数のアキシャルスキャンにおけるアキシャルスキャン位置とX線ビーム幅とを決定する。ただし、各アキシャルスキャンのX線ビーム幅dは、予め定められた複数の候補の中からそれぞれ選択することにより決定するものとする。複数の候補は、例えば、第1の幅d1(160mm)、第2の幅d2(120mm)、第3の幅d3(80mm)、第4の幅d4(40mm)、および第5の幅d5(20mm)とする。また、ここでは、撮影時間と画質とのバランスを取るため、各アキシャルスキャンのX線ビーム幅dは、スキャン条件として設定されたX線ビーム幅以下で決定するとともに、アキシャルスキャン位置およびX線ビーム幅は、アキシャルスキャンの位置の数、すなわちアキシャルスキャンの回数が最小となるように決定する。なお、ここでは、スキャン条件として設定されたX線ビーム幅は、第3の幅d3(80mm)とする。
【0056】
図6および
図7に、本例におけるスキャン範囲および被曝低減希望範囲の設定例を示す。
【0057】
本例において、撮影部位は、被検体40の胸部である。スキャン範囲は、スカウト画像41上で、座標Z1から座標Z4までの範囲が設定されている。また、このスキャン範囲に対しては、当初、アキシャルスキャン範囲がz方向に連続的に並んだ4つのアキシャルスキャンA1〜A4によりスキャンが行われるよう設定されている。アキシャルスキャンA1〜A4のX線ビーム幅dは、すべて同じであり、それぞれ第3の幅d3(80mm)である。
【0058】
被曝低減希望範囲DRは、放射線感受性の高い部位である乳房(乳腺)を覆うように設定されている。本例では、被曝低減希望範囲DRは、アキシャルスキャンA1およびA2のアキシャルスキャン範囲の境界をまたいでいる。なお、被曝低減希望範囲DRの幅は、90mm程度である。
【0059】
図7に示すように、被曝低減希望範囲DRの両端は、アキシャルスキャンA1〜A4におけるアキシャルスキャン範囲のうちいずれか2つの端と一致していない。しかしながら、ここでは、上述の通り、アキシャルスキャンのスキャン位置やX線ビーム幅dの設定は変更可能であるが、X線ビーム幅dは、決められた候補の中からしか選択できない場合を想定している。この場合、X線出力変調を受けたX線が、被曝低減希望範囲DRに照射されるよう、X線出力変調を行うアキシャルスキャンのアキシャルスキャン位置と上記候補からの選択によるX線ビーム幅とを決定するしかない。
【0060】
そこで、X線出力変調条件決定部103は、まず、スキャン範囲に対して行う1または複数のアキシャルスキャンにおけるアキシャルスキャン範囲の端のうちいずれか2つが、被曝低減希望範囲DRの両端に近づくように、各アキシャルスキャンのアキシャルスキャン位置およびX線ビーム幅を組み直す。このとき、X線ビーム幅dは、上記候補の中から、設定された所望のX線ビーム幅である第3の幅d3(80mm)以下で極力大きいものをできるだけ多く選択してゆくことにする。すなわち、第3の幅(80mm)、第4の幅(40mm)、第5の幅(20mm)の順に、できるだけ数が多くなるようにX線ビーム幅を選択してゆく。そして、組み直されたアキシャルスキャンのうち被曝低減希望範囲DRに対応するものに、X線出力変調を行わせるよう、X線出力変調条件を決定する。
【0061】
図8に、組み直された後の各アキシャルスキャンの設定例を示す。本例では、スキャン範囲に対して、アキシャルスキャンA1′〜A6′が設定されている。被曝低減希望範囲DRに対応するアキシャルスキャンは、アキシャルスキャンA2′およびA3′であり、これらのアキシャルスキャンにおいてX線出力変調が行われる。
【0062】
各アキシャルスキャンのX線ビーム幅dは、決められた候補の中からしか選択できないので、被曝低減希望範囲DRと、X線出力変調を行うアキシャルスキャンのアキシャルスキャン範囲の端のうち最も外側の2つの端を両端とする範囲とは、完全に一致しないことが多い。本例でも、被曝低減希望範囲DRの幅が90mm程度であり、選択可能なX線ビーム幅は、第3の幅(80mm)、第4の幅(40mm)、および第5の幅(20mm)であるから、完全には一致しない。
【0063】
本例においては、X線出力変調の効果が及ぶと予想される被曝低減予想範囲ERは、
図8に示すように、アキシャルスキャンA2′,A3′のそれぞれのアキシャルスキャン範囲を加算した範囲と一致することになる。
【0064】
図9に、本例における被曝低減希望範囲DRと被曝低減予想範囲ERとの表示例を示す。
【0065】
(第3例)
本例では、スキャンモードは、ヘリカルモードである。ここでは、X線出力変調の効果が実効的に及ぶ範囲を、X線出力変調が行われた時点におけるX線焦点の位置の範囲とし、この範囲を被曝低減予想範囲ERとする。また、ヘリカルスキャンにおいては、被検体40の荷重により、クレードル12がその移動時に駆動系に対して僅かに滑り、スキャン位置の制御において誤差が生じる場合を想定する。
【0066】
図10および
図11に、本例におけるスキャン範囲および被曝低減希望範囲の設定例を示す。
【0067】
本例において、撮影部位は、被検体40の胸部である。スキャン範囲は、スカウト画像41上で、座標Z1から座標Z4までの範囲が設定されている。また、このスキャン範囲に対しては、X線管21のX線焦点がこのスキャン範囲に位置しているときにX線を照射するヘリカルスキャンH1が行われるように設定されている。ヘリカルスキャンH1のX線ビーム幅dは、第1の幅d3(80mm)である。ヘリカルピッチhpは1とする。
【0068】
被曝低減希望範囲DRは、放射線感受性の高い部位である乳房(乳腺)を覆うように設定されている。
【0069】
本例において、X線出力変調条件決定部103は、スキャン位置の制御に誤差が含まれない場合には、X線出力変調を受けたX線ビームのうちz方向の中心のX線が、被曝低減希望範囲DRに照射されるように、X線出力変調条件を決定することを基本とする。すなわち、X線管21のX線焦点が、被曝低減希望範囲DRに位置しているときに、X線出力変調を行うことを基本として考える。
【0070】
しかし、実際には、僅かながらスキャン位置の制御に誤差が含まれる。そこで、X線出力変調条件決定部103は、スキャン位置の制御に誤差が生じることを考慮して、
図11に示すように、被曝低減希望範囲DRよりも少しだけ拡大した範囲に、X線焦点が位置しているとき、X線出力変調を行うよう、X線出力変調条件を設定する。例えば、被曝低減希望範囲DRを含み、かつ、この被曝低減希望範囲DRの幅に所定の長さを加えた幅を有する範囲に、X線焦点が位置しているとき、X線出力変調を行うよう、X線出力変調条件を決定する。
【0071】
ここでは、被検体40の重さによるクレードルの加速移動時の滑りを考慮して、被曝低減希望範囲DRの端のうち、より遅くX線が照射される側を外側に所定の長さdaだけ拡大した範囲を、X線出力変調を行うX線焦点の位置の範囲とする。所定の長さdaは、例えば1mm以上、10mm以下であり、より現実的な長さとしては4〜5mm程度である。
【0072】
この場合、被曝低減予想範囲ERは、
図11に示すように、被曝低減希望範囲DRよりも、所定の長さda分だけ拡大された範囲となる。
【0073】
図12に、本例における被曝低減希望範囲DRおよび被曝低減予想範囲ERの表示例を示す。
【0074】
(第4例)
本例では、スキャンモードは、ヘリカルモードである。ここでは、X線出力変調の効果が実効的に及ぶ範囲を、X線出力変調が行われた時点におけるX線焦点の位置の範囲とし、この範囲を被曝低減予想範囲ERとする。
【0075】
図13および
図14に、本例におけるスキャン範囲および被曝低減希望範囲の設定例を示す。
【0076】
本例において、撮影部位は、胸部である。スキャン範囲は、スキャン範囲は、スカウト画像41上で、座標Z1から座標Z4までの範囲が設定されている。また、このスキャン範囲に対しては、X線管21のX線焦点がこのスキャン範囲に位置しているときにX線を照射するヘリカルスキャンH1が行われるように設定されている。ヘリカルスキャンH1のX線ビーム幅dは、第3の幅d3(80mm)である。ヘリカルピッチhpは1とする。
【0077】
被曝低減希望範囲DRは、放射線感受性の高い部位である乳房(乳腺)を覆うように設定されている。
【0078】
本例において、X線出力変調条件決定部103は、被曝低減希望範囲DRに照射されるX線すべてがX線出力変調を受けるようにX線出力変調条件を決定する。すなわち、被曝低減希望範囲DRよりも両端側に、それぞれ、設定されたX線ビーム幅の半分の距離ずつ拡大した範囲に、X線出力変調を受けたX線ビームのうちz方向の中心のX線が照射されるよう、X線出力変調条件を決定する。これは、X線焦点が、当該範囲に位置しているときに、X線出力変調を行うことに等しい。
【0079】
ここでは、X線ビーム幅dは、第3の幅d3(80mm)が設定されているので、
図14に示すように、被曝低減希望範囲DRの両端からそれぞれd3/2(40mm)ずつ拡大した範囲に、X線管21のX線焦点が位置しているとき、X線出力変調を行うよう、X線出力変調条件を決定する。
【0080】
この場合、被曝低減予想範囲ERは、
図14に示すように、被曝低減希望範囲DRからそれぞれd3/2(40mm)ずつ拡大された範囲となる。
【0081】
図15に、本例における被曝低減希望範囲DRおよび被曝低減予想範囲ERの表示例を示す。
【0082】
このように、本実施形態によれば、被検体に対するスキャンの少なくとも一部においてX線出力変調を行う際に、被曝低減を求めて指定された所望の被曝低減希望範囲DRと、スキャンの特性による制約を受けて決定されたX線出力変調条件に従ってX線出力変調を行った場合に、X線出力変調の効果が実際に、実質的に、または実効的に及ぶと予想される、被曝低減希望範囲DRとは異なる被曝低減予想範囲ERとを共に表示するので、意図しない被曝低減範囲を知ることができ、被検体40の被曝評価や画像の画質評価を適正に行うことが可能となる。
【0083】
なお、発明の実施形態は、上記の実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【0084】
例えば、コンピュータを、上記の表示制御部104として機能させるためのプログラムもまた、発明の一実施形態である。