(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記指標は、前記灰白質健常者画像から健常者の灰白質濃度の平均値と標準偏差を脳局所ごとに求め、前記変換灰白質患者画像から得られる患者の灰白質濃度が、健常者の前記灰白質の平均値から標準偏差にしてどの程度離れているかを示すZ−スコア値である、
ことを特徴とする請求項11に記載の画像診断支援装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
(1)構成
図1は、本実施形態に係る画像診断支援装置1の機能ブロック図であり、併せて画像診断支援装置1に接続される装置等も図示している。
【0013】
画像診断支援装置1には、ネットワーク104を介して、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置100、CT(Computed Tomography)装置101、PET(Positron Emission Tomography)装置102、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置103等のモダリティが接続されている。
【0014】
画像診断支援装置1はその内部構成として、入力部10、検出部20、置換部30、記憶部40、変換部50、比較部60、表示画像生成部70、表示部80等を有している。
【0015】
入力部10は、各モダリティで撮像した患者画像を病院内LAN等のネットワーク104を介して入力する。本実施形態の画像診断支援装置1では、主に患者の脳画像を取り扱うため、以下の説明においては、患者画像は患者の頭部を撮像した画像とする。
【0016】
検出部20は、患者画像に脳梗塞や脳腫瘍等の異常部位がある場合は、これらの異常部位を検出する。置換部30は、異常部位の領域の画像を正常部位の領域の画像で置換して置換患者画像を生成する。記憶部40は健常者の脳を撮像した健常者画像を保存する。
【0017】
変換部50は、置換患者画像と健常者画像とから、両者の解剖学的位置合わせに必要な位置変換データを取得し、患者の脳の各組織位置が健常者の脳の各組織位置に合致するように、前記位置変換データを用いて前記患者画像を変換して変換患者画像を生成する。位置変換データを取得することと、両者の画像の位置関係が一致するように、取得した位置変換データを用いて一方の画像を変換することを、以下、レジストレーション(画像の位置合わせ)と呼ぶことがある。
【0018】
比較部60は、変換部50で生成した変換患者画像と、記憶部40に保存されている健常者画像とを比較して両者の差異を表す差異指標を算出する。
【0019】
表示画像生成部70は、算出した差異指標が所定の判定基準範囲外となる画像領域(基準外領域)を求め、基準外領域が視認できる表示を患者画像に重畳して表示用画像を生成する。また、表示部80は、生成した表示用画像を表示する。上述した各機能ブロックのより詳細な動作については後述する。
【0020】
図2は、画像診断支援装置1のハードウェア構成例を示すブロック図である。画像診断支援装置1は、有線/無線LANインターフェース等からなる入力/出力インターフェース201、プロセッサ202、液晶ディスプレイパネル等からなるディスプレイ装置203、マウスやキーボード等からなるユーザインターフェース204、ハードディスクドライブ等からなる記憶装置205、RAM206等を有して構成される。
【0021】
入力/出力インターフェース201は
図1の入力部10に対応し、ディスプレイ装置203は
図1の表示部80に対応する。また、
図1の検出部20、置換部30、記憶部40、変換部50、比較部60、及び表示画像生成部70の各ブロックで実現する機能は、記憶装置205に保存されるプログラムコードを、プロセッサ202が実行することによって実現される。RAM206は、プロセッサ202のワークエリアとして機能する。
【0022】
(2)動作(第1の実施形態)
以下、画像診断支援装置1の第1の実施形態の動作について説明する。画像診断支援装置1は、アルツハイマー型認知症等の画像診断を支援する装置である。患者の脳を撮像したMRI画像やCT画像と、健常者の脳(標準脳)のMRI画像やCT画像とを用いて患者脳と標準脳の形態を比較し、脳の萎縮の度合いを評価する。また、患者の脳を撮像したPET画像やSPECT画像と、標準脳のPET画像やSPECT画像とを用いて、患者脳と標準脳の糖代謝や血流量などを比較して評価する。
【0023】
第1の実施形態の動作では、脳の萎縮の度合いを患者脳と標準脳とをMRI画像を用いて比較する手法を採る。第1の実施形態の動作との比較のため、まず従来の画像診断支援装置の動作の概略と、その問題点について簡単に説明しておく。
【0024】
図3は、非特許文献1等における従来の画像診断支援装置の動作の流れを示す図である。本実施形態と同様に、従来の画像診断支援装置においても健常者の脳画像をデータベースとして保有しており、
図3のステップST160において、患者の脳画像と健常者の脳画像とを比較する。ステップST100〜ST150は比較のための前処理である。まず、ステップST100で患者脳のMRI画像を入力する。ステップST110では、健常者の脳画像と比較するために、患者の脳画像のボクセルサイズを健常者の脳画像のボクセルサイズに一致させる。
【0025】
次に、ステップST120で患者の脳画像から灰白質領域を抽出する。アルツハイマー型認知症は神経細胞が破壊・萎縮することによって脳機能が低下することが主な原因であり、脳の神経細胞の細胞体は灰白質に在る。そこで、脳画像から灰白質領域を抽出し、患者の灰白質の画像濃度(輝度)と健常者の灰白質の画像濃度(輝度)とを比較することによって患者の脳神経細胞の萎縮や破壊の程度を推定することができる。このために、ステップST120で患者の脳画像から灰白質領域を抽出している。
【0026】
ステップST140では、患者画像から抽出した灰白質画像の解剖学的標準化を行っている。患者の灰白質画像と、健常者の灰白質画像とを比較するためには、ボクセルサイズの一致だけでは不十分であり、患者と健常者の解剖学的な同一脳組織の位置を予め併せておく必要がある。この位置合わせを画像上で行う処理が解剖学的位置合わせである。具体的には、拡大/縮小や、移動/回転等の線形変換の他、局所的な変形を伴う非線形変換を患者画像に対して施すことによって、患者画像の解剖学的位置関係を健常者画像に一致させる。ステップST140の前後に行われる平滑化(ステップST130、150)は、患者の個人差による灰白質の微小形状の違いを弱めるための処理である。
【0027】
このようにして比較のための準備が終わると、ステップST160において、患者の灰白質の画像濃度(輝度)と健常者の灰白質の画像濃度(輝度)とが比較され、両者の差異を表す指標としてのZ−スコアが、患者画像のボクセル毎に算出される。Z−スコアとは、患者の灰白質画像のボクセル値(ボクセルの輝度)が、健常者の平均ボクセル値からどれだけの標準偏差分離れているかを示す値である。ステップST170では、算出したZ−スコアを、その大きさに応じて色分けして、患者画像に重ねて表示している。
【0028】
上述した従来の処理(ステップST100〜ST170)では、灰白質抽出処理(ステップST120)が正しく行われることを前提としている。しかしながら、患者の脳に脳梗塞や脳腫瘍などの異常部位が含まれると、異常部位を含んだMRI画像から灰白質領域を正しく抽出できない。脳梗塞や脳腫瘍の部分はMRI画像上では輝度が高く(白く)表示されるため、脳の白質部位を灰白質部位と誤認識し、このため、灰白質領域を正しく抽出できなくなる。
図4は、上記の従来の問題点を模式的に示す図である。
【0029】
図4(a)は、脳梗塞や脳腫瘍等の異常部位を含まない脳のMRI画像(アキシャル画像)から灰白質領域を抽出する例であり、この場合、灰白質領域は正しく抽出される。一方、
図4(b)は、脳梗塞や脳腫瘍等の異常部位を含む脳のMRI画像(同じくアキシャル画像)から灰白質領域を抽出する例である。この場合、異常部位と灰白質とが分離できず、異常部位を含んだ領域が灰白質領域として誤抽出されてしまう。なお、通常のMRI画像では、背景が黒であり灰白質領域が白(高輝度)として表示されるが、
図4では(以降の図も同様)、説明の便宜上、白黒の輝度を逆転させ、背景を白色とし灰白質の色を黒っぽい色で表現している。
【0030】
このように、患者脳に脳梗塞や脳腫瘍などの異常部位があると、評価すべき本来の灰白質領域が誤って抽出され、ステップST130以降の処理において信頼性の有る結果を得ることができなくなる。このため、従来は、MRI画像を入力した後、入力画像が異常部位を含んでいるかを肉眼で確認し、入力画像が異常部位を含んでいる場合にはその後の解析を断念していた。
【0031】
第1の実施形態に係る画像診断支援装置1は、上記のような従来の不都合を解消するものである。
【0032】
図5は、第1の実施形態に係る画像診断支援装置1の処理の流れを示す図である。まず、ステップST1において、患者脳をMRI装置100で撮像したMRI患者画像を入力する。ここで入力するMRI画像は、T1強調画像やT2強調画像といった形態画像の他、好ましくはDWI(拡散強調画像)画像、PWI(灌流強調画像)画像、MRA(Magnetic Resonance Angiography)画像を含む。DWI画像、PWI画像、及びMRA画像は、後述するように患者の脳画像における脳梗塞や脳腫瘍といった異常部位を検出するために使用される画像であり、健常者との比較に用いられる画像はT1強調画像やT2強調画像といった形態画像である。したがって、以下特に明示しない限りは、患者画像(或いはMRI患者画像)という場合は、T1強調画像やT2強調画像といった形態画像を指すものとする。
【0033】
ステップST2では入力したMRI患者画像から異常部位を検出する。ステップST3では、検出した異常部位の領域の画像を正常部位の領域の画像で置換して置換患者画像を生成する。
【0034】
図6は、ステップST2、ST3の詳細な処理フローを示す図である。
図6のステップST21では、入力した患者画像(頭部画像)から脳領域を抽出する。
【0035】
次に、ステップST22において異常部位の抽出を行う。患者画像に脳梗塞部位が含まれている場合は、DWI画像とPWI画像を用いて、公知の灌流強調画像/拡散強調画像ミスマッチ法により梗塞部位を特定する。患者画像に腫瘍が含まれている場合は、MRA画像を用いて、同じく公知のリージョングローイング法により腫瘍部位を特定する。
【0036】
一方、ステップST23において患者脳を右脳と左脳に分割する。そして、ステップST24において、分割した右脳と左脳の外形形状が略対称となるように、右脳の輪郭と左脳の輪郭を一致させるよう、右脳又は左脳のいずれか一方の形状を他方に合わせる。この処理を右脳と左脳の輪郭レジストレーションと呼ぶ。
【0037】
そして、ステップST25において、脳梁を軸に脳を折り畳んだとき、左脳と右脳とで異常部位が重なるか否かを判定する。つまり、異常部位が、患者脳の右脳と左脳において対称となる位置の両方に存在するのか、或いは一方のみに存在するのかを判定する。
【0038】
図7は、輪郭レジストレーション以降の置換処理の概念を示す図である。
図7(a)に示すように、異常部位が患者脳の右脳と左脳において対称となる位置の一方のみに存在する場合(片側異常の場合)は、他方の位置にある正常部位の領域の画像で前記異常部位の領域の画像を置換する(ステップST26)。
【0039】
一方、
図7(b)に示すように、異常部位が患者脳の右脳と左脳において対称となる位置の両方に存在する場合(両側異常の場合)は、記憶部40に保存されている健常者画像から患者画像の異常部位の位置に該当する領域にある正常部位の画像を抽出し、異常部位の領域の画像を、抽出した正常部位の画像で置換する(ステップST28)。なお、この置換に先立ち、健常者脳と患者脳とで輪郭レジストレーションを行い、健常者脳の輪郭形状と患者脳の輪郭形状とが合致するように健常者画像を変換しておく(ステップST27)。
【0040】
上記のように、患者画像の異常部位を、同じ患者画像の対称位置にある正常部位と置換した画像、或いは、健常者画像の対応する位置にある正常部位と置換した画像を、以下、置換患者画像と呼ぶ。
【0041】
図5に戻る。ステップST4〜ステップST13までの処理について、以下、
図8〜
図10に示す、模式的な脳のアキシャル画像を参照しつつ説明する。
【0042】
図8の左上の画像Aが入力された患者画像Aであり、画像BがステップST2、ST3の置換処理によって生成される置換患者画像である。置換患者画像Bは、患者画像Aの右上にある異常部位が正常部位で置換された画像である。
【0043】
ステップST4では、患者画像Aと健常者画像とをボクセル単位で比較するために、ボクセルサイズを等しくする等大化処理を行う。次のステップST5では、置換患者画像Bに対して、灰白質領域、白質領域、脳脊髄液領域の分割を行って灰白質抽出を行う。分割処理は、例えば、k-means法等の公知技術を用いることができる。各領域に分割した後、灰白質領域のみを抽出する。
図8の画像Cが、置換患者画像Bから灰白質領域のみが抽出された患者灰白質画像Cである。
【0044】
ステップST6では、患者灰白質画像Cに対して公知のフィルタ処理を行って平滑化する。平滑化は、患者の個人差による灰白質の微小形状の違いを弱めるための処理である。
【0045】
記憶部40には、健常者画像と共に、健常者画像から灰白質領域が抽出された健常者灰白質画像Dも保存されている。ステップST7では、この健常者灰白質画像Dと患者灰白質画像Cとから位置変換データを取得する。位置変換データは、健常者灰白質画像Dと患者灰白質画像Cにおいて解剖学的に同じとみなせる組織同士の位置の差を、ボクセル毎、或いは適宜の大きさで画像を分割した格子毎に、ベクトルとして求めたデータである。位置変換データは、ボクセル毎、或いは格子毎のベクトルの集合、即ちベクトル場であり、Warp Fieldとも呼ばれる。
図8のEは、この位置変換データ(Warp Field)の概念を模式的に示したものである。
【0046】
他方、異常部位を含む患者画像A(
図9の画像A)に対しても、ステップST4〜ST6同様に、ボクセル等大化処理(ステップST8)、灰白質抽出処理(ステップST9)、及び平滑化処理(ステップST10)が行われる。ステップST9の灰白質抽出処理は異常部位を含む患者画像Aに対して行われるため、
図4で説明したように異常部位が灰白質と誤認され得る。この結果、
図9の画像Fに示すように、抽出された患者灰白質画像Fは、異常部位領域を含んだ画像となる。
【0047】
ステップST11では、先のステップST7で取得された位置変換データ(Warp Field)を用いて、患者画像変換処理を行う。この結果、患者灰白質画像Fは変形され、患者灰白質画像Fの脳の各組織位置は、健常者灰白質画像Dの脳の各組織位置に合致するようなる。この変形された画像が、
図9に示す変換患者画像Gである。
【0048】
ステップST12では、健常者灰白質画像Dと変換患者画像Gとを比較して、両者の差異を表す差異指標を算出する。差異指標の一例としては、非特許文献1等でも用いられているZ−スコアがある。Z−スコアは、患者の灰白質画像のボクセル値(ボクセルの輝度)が、健常者の平均ボクセル値からどれだけの標準偏差分離れているかを示す値である。変換患者画像Gのボクセル値をX、健常者の平均ボクセル値をμ、健常者のボクセル値の標準偏差をσとすると、Z−スコアは、
Z−スコア=(μ−X)/σ (式1)
で表すことができる。データベース(記憶部40)には、複数の健常者の健常者灰白質画像Dが保存されており、健常者の平均ボクセル値μと標準偏差σは、健常者灰白質画像Dの各ボクセル位置(或いは所定の各局所)における複数健常者のボクセル値から求めた平均値と標準偏差である。
【0049】
(式1)に示すZ−スコアは、一般的なZ−検定で用いられるものと類似した値である。Z−スコアが大きい程、即ち、患者の灰白質画像のボクセル値Xが健常者の灰白質画像の平均ボクセル値μより小さいほど、患者の灰白質の萎縮の程度が大きいと考えることがきる。また、Z−スコアが所定の閾値、例えば、2より大きい領域は、その患者の灰白質が縮小している領域であると考えることもできる。
【0050】
そこで、Z−スコアが所定の閾値よりも大きい領域(基準外領域)を抽出し、その領域を健常者灰白質画像Dと変換患者画像Gとの比較結果を示す画像Hに表現している。
【0051】
一方、変換患者画像Gの異常部位と健常者灰白質画像Dの対応する部位とを比較して求めたZ−スコアは、その値の大小に関わらず信頼性のない、或いは信頼性の低い値である。そこで、異常部位に該当する領域を識別できるように画像Hに表現している。
【0052】
最後に、ステップST13では、比較結果画像Hを患者画像Aの形状に位置あわせし、
図10に示すように、患者画像Aに重畳して表示用画像J或いは表示用画像Kを生成している。表示用画像J、Kでは、Z−スコアが所定の閾値を超える領域をカラー表示し、さらにZ−スコアの値に応じて色分けすることにより、灰白質が萎縮した領域と、萎縮の程度が表示用画像J、Kから一目瞭然となるようにしている。また、異常部位におけるZ−スコアが仮に高かったとしても、その値は信頼できないことを瞬時に知らしめるため、異常部位の領域を強調表示している。例えば、異常領域の範囲を囲む表示や(表示用画像J)、異常領域の内部を削除(ブランク表示)する(表示用画像K)等の強調表示を行っている。
【0053】
なお、上記処理のうち、ステップST2の処理を
図1の検出部20、ステップST3の処理を置換部30、ステップST4〜ステップST11までの処理を変換部50、ステップST12の処理を比較部60、ステップST13の処理を表示画像生成部70で行っている。
【0054】
上述した第1の実施形態に係る画像診断支援装置1では、異常部位の検出と正常部位への置換が自動的に行われるため、患者脳に異常部位が含まれるか否かを事前に肉眼で確認する必要が無い。また、異常部位が正常部位で置換された患者灰白質画像Cと健常者灰白質画像Dとから位置変換データ(Warp Field)を取得しているため、入力した患者画像Aに脳梗塞や腫瘍などがあってもこれらの影響を受けない正しい位置変換データ(Warp Field)を得ることができる。その結果、健常者灰白質画像Dとの比較の対象となる変換患者画像Gを高い信頼性で生成することができ、灰白質萎縮の程度を示す差異指標(Z−スコア)も高い信頼性で算出することが可能となる。
【0055】
(3)動作(第2の実施形態)
前述した第1の実施形態では、萎縮の度合いを算出する処理において、患者画像と健常者画像のいずれにおいてもMRI画像を利用している。これに対して、第2の実施形態では、患者画像と健常者画像の位置合わせに必要な位置変換データ(Warp Field)は、第1の実施形態と同様にMRI患者画像とMRI健常者画像を用いて取得するものの、取得した位置変換データ(Warp Field)を用いて変換する対象は、MRI患者画像ではなく、PET装置102で撮像したPET画像(或いはSPECT装置103で撮像したSPECT画像)である。
【0056】
第2の実施形態では、MRI患者画像とは別に患者のPET画像(或いはSPECT画像)を入力し、入力したPET患者画像(或いはSPECT患者画像)を健常者のPET画像(或いはSPECT患者画像)に合致するように変換する。そして、変換したPET患者画象(或いはSPECT患者画像)と健常者のPET画像(或いはSPECT画像)とを比較し、両者の差異指標を算出する。例えば、PET画像の場合は両者の糖代謝量の差を差異指標として算出する。また、SPECT画像の場合は両者の血流量の差を差異指標として算出する。
【0057】
図11は、第2の実施形態に係る画像診断支援装置1の処理の流れを示す図である。ステップST50では、第1の実施形態と同様にMRI患者画像を入力する一方、患者のPET画像又はSPECT画像を入力する。
図11において(
図12も同様)、「PET/SPECT」の表記は、「PET又はSPECT」の意である。
【0058】
ステップST2〜ステップST7までの処理は
図5等で説明した処理と同じであるため、説明を省略する。
【0059】
ステップST7の処理により、MRI置換患者画像とMRI健常者画像との各組織の位置の差を表す位置変換データ(1)(Warp Field(1))が取得される。
【0060】
一方、ステップST51では、入力したPET/SPECT患者画像と、ステップST3で生成したMRI置換患者画像とのレジストレーションを行う。このレジストレーションにより、PET/SPECT患者画像とMRI置換患者画像との各組織の位置の差を表す位置変換データ(2)(Warp Field(2))が取得される。
【0061】
ステップST52では、位置変換データ(1)と位置変換データ(2)とを用いて、PET/SPECT患者画像をPET/SPECT健常者画像に合致させるための変換を行い、PET/SPECT変換患者画像を生成する。なお、PET/SPECT健常者画像とMRI健常者画像は共に記憶部40に保存されており、MRI健常者画像との間はレジストレーションが既になされているものとする。
【0062】
ステップST53では、PET/SPECT変換患者画像とPET/SPECT健常者画像とが比較され、両者の差異を表す指標として、糖代謝量の差や血流量の差がボクセル毎に算出される。そして、糖代謝量の差や血流量の差が、所定の範囲を超える領域を基準外領域として求める。
【0063】
そして、ステップST54において、算出された基準外領域が差異指標値の大きさに応じて色分けされ、PET/SPECT患者画像に重畳されて表示される。
【0064】
(4)動作(第3の実施形態)
上記の第2の実施形態と第3の実施形態とでは、患者画像と健常者画像の位置合わせに必要な位置変換データ(Warp Field)を、MRI画像を用いず、CT装置101で撮像したCT画像から取得している点において相違する。しかしながら、比較対象は第2の実施形態と同様に、PET/SPECT患者画像とPET/SPECT健常者画像である。
【0065】
図12は、第3の実施形態に係る画像診断支援装置1の処理の流れを示す図である。ステップST60では、CT患者画像とPET/SPECT患者画像を入力する。このうち、CT患者画像は位置変換データを取得するために使用される。
【0066】
ステップST61、ST62では、入力したCT患者画像の脳梗塞等の異常部位を公知の技術を用いて検出し、検出した異常部位を正常部位で置換する処理を行う。ステップST61、ST62の処理は、処理対象がCT画像とMRI画像とで異なるものの、処理の内容自体は第1、第2の実施形態(ステップST2、ST3)と同じである。即ち、片側異常の場合には、同じCT患者画像の対称位置にある正常部位を抽出して異常部位と置換する。両側異常の場合には、記憶部40に保存しているCT健常者画像から対応する正常部位を抽出して異常部位と置換する。
【0067】
ステップST63では、ステップST62で生成されたCT置換患者画像と、記憶部40に保存しているCT健常者画像との間でレジストレーションを行い、両者の位置合わせに必要な位置変換データ(1)(Warp Field(1))を取得する。
【0068】
一方、ステップST64では、CT置換患者画像と、入力したPET/SPECT患者画像との間でレジストレーションを行い、両者の位置合わせに必要な位置変換データ(2)(Warp Field(2))を取得する。
【0069】
そして、ステップST65において、位置変換データ(1)と位置変換データ(2)とを用いて、PET/SPECT患者画像をPET/SPECT健常者画像に合致させるための変換を行い、PET/SPECT変換患者画像を生成する。なお、PET/SPECT健常者画像とCT健常者画像は共に記憶部40に保存されており、両者の間はレジストレーションが既になされているものとする。
【0070】
ステップST53、ステップST54の処理は第2の実施形態と同じである。ステップST53において、PET/SPECT変換患者画像とPET/SPECT健常者画像とが比較され、両者の差異を表す指標として、糖代謝量の差や血流量の差がボクセル毎に算出される。そして、糖代謝量の差や血流量の差が、所定の範囲を超える領域を基準外領域として求める。また、ステップST54において、算出された基準外領域が差異指標値の大きさに応じて色分けされ、PET/SPECT患者画像に重畳されて表示される。
【0071】
第2、第3の実施形態では、患者のPET/SPECT画像と、健常者のPET/SPECT画像とを比較する際に位置変換データ(1)と位置変換データ(2)を用いている。そして、位置変換データ(1)と位置変換データ(2)は、いずれも異常部位が正常部位で置換された置換患者画像に基づいて取得される。異常部位は自動的に検出されて正常部位と置換されるため、患者の脳画像に異常部位が含まれていたとしても、異常部位を事前に肉眼で観察する必要がない。また、位置変換データ(1)と位置変換データ(2)は、異常部位の影響を受けていないため、PET/SPECT患者画像を高い精度でPET/SPECT健常者画像に変換することが可能となり、両者の比較において信頼性の高い差異指標を算出することができる。
【0072】
なお、本発明は上記の実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。