(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記被測定物は、前記被測定部としての車体と地面に置かれる前記基部としての車輪と前記車体を前記車輪に対して弾性的に支持するサスペンションとを含む運搬車両であり、
前記弾性支持減殺機構は、前記載台に設けられ、前記運搬車両の車体を上から車輪に押し付ける装置である請求項2に記載の重心高さ測定装置。
前記被測定物は、前記被測定部としての車体と地面に置かれる前記基部としての車輪と前記車体を前記車輪に対して弾性的に支持するサスペンションとを含む運搬車両であり、
前記弾性支持減殺機構は、前記載台の上に置かれ、前記車体を支持するための複数のジャッキである、請求項4に記載の重心高さ測定装置。
前記被測定物は、前記被測定部としての車体と地面に置かれる前記基部としての車輪と前記車体を前記車輪に対して弾性的に支持するサスペンションとを含む運搬車両であり、
前記弾性的な支持を減殺することは、前記載台に設けられた装置により、前記運搬車両の車体を上から車輪に押し付けることである、請求項9に記載の重心高さ測定方法。
前記被測定物は、前記被測定部としての車体と地面に置かれる前記基部としての車輪と前記車体を前記車輪に対して弾性的に支持するサスペンションとをそれぞれ含む牽引車及び被牽引車を備える運搬車両であり、
前記弾性的な支持を減殺することは、前記被牽引車のシャーシの脚を前記載台の上に出すことである、請求項11に記載の重心高さ測定方法。
前記被測定物は、前記被測定部としての車体と地面に置かれる前記基部としての車輪と前記車体を前記車輪に対して弾性的に支持するサスペンションとをそれぞれ含む牽引車及び被牽引車を備える運搬車両であり、
前記弾性的な支持を減殺することは、前記被牽引車のシャーシの脚を前記載台の上に出すことであるとともに、前記牽引車を前記載台の外部に停車させることである、請求項11に記載の重心高さ測定方法。
前記被測定物は、前記被測定部としての車体と地面に置かれる前記基部としての車輪と前記車体を前記車輪に対して弾性的に支持するサスペンションとを含む運搬車両であり、
前記弾性的な支持を減殺することは、前記載台の上に置かれた複数のジャッキにより、前記車体を支持することである、請求項11に記載の重心高さ測定方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般に、車両は乗り心地や操縦の安定性のためにサスペンションを備えている。サスペンションは車重を支えて衝撃を吸収するスプリングを備え、車体を車輪に対して弾性的に支持する。これにより、路面の凸凹によるタイヤの振動を車体に伝えない緩衝機能を有する。
【0006】
しかしながら、従来の車両を載せた載台を変位させて重心高さの測定をする際には、上記サスペンションの弾性が車両を載せた載台に望まない振動を発生させてしまい、その影響により重心高さの測定精度が低下するという課題があった。
【0007】
このような課題は、被測定部が基部に対して弾性的に支持される被測定物にも共通する課題である。
【0008】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、被測定部が基部に対して弾性的に支持される被測定物の重心高さの測定精度を向上可能な重心高さ測定装置及び重心高さ測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明のある態様に係る重心高さ測定装置は、被測定部と載置面上に置かれる基部と前記被測定部を前記基部に対して弾性的に支持する弾性支持部とを含む被測定物の重心高さを測定する装置であって、前記被測定物が載置される載台と、前記載台を支持し、前記被測定物が載置された載台の荷重をそれぞれ検出する複数のロードセルと、前記載台を水平方向に振動させ又は鉛直方向に傾斜させる載台変位装置と、前記載台変位装置による前記載台の振動又は傾斜に伴って生じ且つ前記ロードセルが検出する荷重の変化に基づいて、前記被測定物の重心高さを演算する重心高さ演算器と、前記被測定物における前記弾性支持部による前記被測定部の弾性的な支持を減殺する弾性支持減殺機構と、を備え、
前記弾性支持減殺機構が、前記被測定部を前記載台に向けて上から押さえつけることにより、又は、前記被測定部を下から押し上げて前記基部を前記載台から浮かせることにより、弾性的な支持を減殺する。
【0010】
前記構成によれば、
被測定部が載台に向けて上から押さえつけられ、又は、被測定部が下から押し上げられて基部が載台から浮く。これにより、被測定物における弾性支持部による被測定部の弾性的な支持
が弾性支持減殺機構によって減殺
され、被測定物を剛体に近い状態にすることができる。その結果、重心高さの測定において、弾性支持部による被測定部の弾性的な支持による影響を低減することができ、ひいては、その精度を向上させることができる。また、当該弾性支持減殺機構により、載台を振動又は傾斜させた際に、載台上の被測定物の移動が抑制されるので、より正確な測定が可能となる。
【0011】
ここで「剛体」とは外力による変形が全く生じない「完全剛体」と、外力による変形が若干生じてもその変形による重心高さ測定上の影響が極めて少なくて完全剛体と見なしても何ら支障がない「見なし剛体」とを包含するものである。
【0012】
上記弾性支持減殺機構が、前記被測定部を下から押し上げて、前記基部を前記載台から浮かせることにより、弾性的な支持を減殺する構成では、上記被測定物は、前記被測定部としての車体と地面に置かれる前記基部としての車輪と前記車体を前記車輪に対して弾性的に支持するサスペンションとを含む運搬車両であり、前記弾性支持減殺機構は、前記載台の上に置かれ、前記車体を支持するための複数のジャッキであってもよい。
【0013】
前記構成によれば、被測定物が運搬車両である場合に、載台の上に置かれた複数のジャッキにより載台上の運搬車両の車体を下から持ち上げて車輪を載置面から浮かせると、サスペンションの弾性支持が減殺されて、運搬車両を剛体に近い状態にすることができる。
【0014】
上記弾性支持減殺機構が、前記被測定部を前記載台に向けて上から押さえつけることにより、弾性的な支持を減殺する構成では、上記被測定物は、前記被測定部としての車体と地面に置かれる前記基部としての車輪と前記車体を前記車輪に対して弾性的に支持するサスペンションとを含む運搬車両であり、前記弾性支持減殺機構は、前記載台に設けられ、前記運搬車両の車体を上から車輪に押し付ける装置であってもよい。
【0015】
前記構成によれば、被測定物が運搬車両である場合は、前記運搬車両の車体を上から車輪に押し付ける装置を載台に設けることで、サスペンションの弾性支持が減殺されるので、運搬車両を剛体に近い状態にすることができる。例えば、複数のアームを備えた装置により運搬車両を上から押し付けるようにしてもよい。
【0018】
上記重心高さ測定装置における前記載台変位装置は、前記載台を水平方向に自由振動させる振動発生部と、前記自由振動状態にある前記載台の変位及び加速度のいずれか一方または両方を検出する振動状態検出部と、を備え、前記重心高さ演算器は、前記振動状態検出部からの検出信号、及び、前記ロードセルからの検出信号に基づいて前記被測定物の重心高さを演算してもよい。
【0019】
上記構成によれば、被測定物が載せられた載台を水平方向に自由振動させることにより、重心高さを求める上で必要とされる載台の変位及び加速度のいずれか一方または両方が得られるので、被測定物の重心高さを測定することができる。
【0020】
上記重心高さ測定装置における前記載台変位装置は、前記載台を傾斜させる傾斜部と、前記載台を傾斜させた状態における前記被測定物の基準姿勢に対する傾斜角度を取得する傾斜角度取得部と、を備え、前記重心高さ演算器は、前記傾斜角度取得部により取得された前記傾斜角度、前記被測定物の基準姿勢における前記ロードセルからの検出信号、及び、前記載台が傾斜したときの前記ロードセルからの検出信号に基づいて前記被測定物の重心高さを演算してもよい。
【0021】
上記構成によれば、被測定物が載せられた載台を傾斜させることにより、重心高さを求める上で必要とされる載台の傾斜角度が得られるので、被測定物の重心高さを測定することができる。
【0022】
本発明の他の態様に係る重心高さ測定方法は、被測定部と載置面上に置かれる基部と前記被測定部を前記基部に対して弾性的に支持する弾性支持部とを含む被測定物の重心高さを測定する方法であって、前記被測定物を載台に載置することと、前記被測定物における前記弾性支持部による前記被測定部の弾性的な支持を減殺することと、前記弾性支持部による前記被測定部の弾性的な支持が減殺された前記被測定物が載置された載台の荷重をそれぞれ検出することと、その後、前記載台を水平方向に振動させ又は鉛直方向に傾斜させることと、前記載台の振動又は傾斜に伴って生じ且つ前記検出した前記載台の荷重の変化に基づいて、前記被測定物の重心高さを演算することと、を含
み、前記弾性的な支持を、前記被測定部を前記載台に向けて上から押さえつけることにより、又は、前記被測定部を下から押し上げて前記基部を前記載台から浮かせることにより、減殺する。
【0023】
上記方法によれば、
被測定部が載台に向けて上から押さえつけられ、又は、被測定部が下から押し上げられて基部が載台から浮く。これにより、被測定物における弾性支持部による被測定部の弾性的な支持
が減殺
され、被測定物を剛体に近い状態にすることができる。その結果、重心高さの測定において、弾性支持部による被測定部の弾性的な支持による影響を低減することができ、ひいては、その精度を向上させることができる。また、弾性的な支持を減殺することにより、載台を振動又は傾斜させた際に、載台上の被測定物の移動が抑制されるので、より正確な測定が可能となる。
【0024】
前記被測定物は、前記被測定部としての車体と地面に置かれる前記基部としての車輪と前記車体を前記車輪に対して弾性的に支持するサスペンションとをそれぞれ含む牽引車及び被牽引車を備える運搬車両であり、前記弾性的な支持を
、前記被測定部を下から押し上げて前記基部を前記載台から浮かせることにより、減殺することは、前記被牽引車のシャーシの脚を前記載台の上に出すことであってもよい。
【0025】
上記方法によれば、被測定物が牽引車及び被牽引車を備える運搬車両である場合には、被牽引車のシャーシの脚を載台の上に出すことにより、載台上の被牽引車の車体を下から持ち上げて車輪を載置面から浮かせると、サスペンションの弾性支持が減殺されて被測定物を剛体に近い状態にすることができる。
【0026】
前記被測定物は、前記被測定部としての車体と地面に置かれる前記基部としての車輪と前記車体を前記車輪に対して弾性的に支持するサスペンションとをそれぞれ含む牽引車及び被牽引車を備える運搬車両であり、前記弾性的な支持を
、前記被測定部を下から押し上げて前記基部を前記載台から浮かせることにより、減殺することは、前記被牽引車のシャーシの脚を前記載台の上に出すことであるとともに、前記牽引車を前記載台の外部に停車させることであってもよい。
【0027】
上記方法によれば、被測定物が牽引車及び被牽引車を備える運搬車両である場合には、被牽引車のシャーシの脚を載台の上に出すとともに、前記牽引車を前記載台の外部に停車させることにより、載台上の被牽引車の車体を下から持ち上げて車輪を載置面から浮かせると、載台上の被牽引車のスペンションの弾性支持が減殺されるとともに、載台外部に停車した牽引車のサスペンションの弾性支持の影響が除外されるので、運搬車両をより剛体に近い状態にすることができる。
【0028】
前記被測定物は、前記被測定部としての車体と地面に置かれる前記基部としての車輪と前記車体を前記車輪に対して弾性的に支持するサスペンションとを含む運搬車両であり、前記弾性的な支持を
、前記被測定部を下から押し上げて前記基部を前記載台から浮かせることにより、減殺することは、前記載台の上に置かれた複数のジャッキにより、前記車体を支持することであってもよい。
【0029】
上記方法によれば、被測定物が運搬車両である場合は、載台の上に置かれた複数のジャッキにより載台上の運搬車両の車体を下から持ち上げて車輪を載置面から浮かせると、サスペンションの弾性支持が減殺されて、運搬車両を剛体に近い状態にすることができる。
【0030】
前記被測定物は、前記被測定部としての車体と地面に置かれる前記基部としての車輪と前記車体を前記車輪に対して弾性的に支持するサスペンションとを含む運搬車両であり、前記弾性的な支持を
、前記被測定部を前記載台に向けて上から押さえつけることにより減殺することは、前記載台に設けられた装置により、前記運搬車両の車体を上から車輪に押し付けることであってもよい。
【0031】
上記方法によれば、被測定物が運搬車両である場合は、前記運搬車両の車体を上から車輪に押し付ける装置を載台に設けることで、サスペンションの弾性支持が減殺されるので、運搬車両を剛体に近い状態にすることができる。
【0033】
尚、特許請求の範囲及び明細書にいう「載置面」とは、被測定物が置かれる面を意味する。より具体的には、例えば載台の載置面、地面、床面等が該当する。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、以上に説明した構成を有し、車両の重心高さの測定においてサスペンションの弾性の影響を低減し重心高さの測定精度を向上できる重心高さ測定装置を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。以下では、全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同じ符号を付して、重複する説明は省略する。
【0037】
(第1実施形態)
<重心高さ測定装置の概略構成の説明>
図1および
図2に示されるように、重心高さ測定装置1は、設置ベース2上に組み付けられた計量台3を備えている。計量台3は、重心高さの測定の対象である測定対象物4が載ることのできる四角形の板状部材からなる載台5と、この載台5の四隅を下方から支持する4個のロードセル11,12,13,14と、載台5に設けられた車両押し付け装置500とを備えている。重心高さ測定装置1は、測定対象物4の重量を測定する装置(トラックスケール)と、測定対象物4の重心高さを測定する装置とを兼ねるものである。なお、設置ベース2としては、例えば地表面を掘り下げて形成されるピットや、地表面上に敷設される床部材などが挙げられる。
【0038】
<運搬車両の構成の説明>
図1および
図2に示されるように、本実施形態では測定対象物4を運搬車両とする。運搬車両は牽引車及び貨物を載せた被牽引車から構成される。各車両は、被測定部としての車体と、載台5の載置面に置かれる基部としての車輪と、車体を車輪に対して弾性的に支持するサスペンションとを含む。牽引車は、前輪、後輪として左右1つずつの車輪を備えて構成されており、被牽引車は、左右2つずつの車輪を3つ備えて構成されている。
【0039】
図3は、運搬車両のサスペンションの構造を示している。
図3に示すように、サスペンション100は、ロアアーム102、スプリング104、及びショックアブソーバ105で構成されている。スプリング104は、路面からの衝撃や振動を吸収する。ショックアブソーバ105は、スプリング104の余分な揺れを止める。ロアアーム102は、車体に対してホイールを所定の正しい位置に保持する機能を有する。ロアアーム102及びショックアブソーバ105は、サスペンション100を車両に搭載した際に車体と連結する連結部を備える。其々の連結部を介して、タイヤの振動や車両の駆動力、制動力、遠心力等の力がサスペンション100の軸力として車体へ伝達される。このような構成により、サスペンション100は、運搬車両の車体を車輪に対して弾性的に支持する。
【0040】
<弾性支持減殺機構の説明>
図1および
図2に示されるように、車両押し付け装置500は、載台5に設けられた6つのアームから構成される。各アームは、上下方向に伸縮可能な本体部と、車両を上から押さえ付けるための上腕部から構成される。このような構成により、車両押し付け装置500は、牽引車の車体の上部2箇所、被牽引車の車体の前方部2箇所、及び車体の後方部2カ所を上から車輪に押し付けることができる。このような構成により、車両押し付け装置500は、運搬車両におけるサスペンション100による車体の弾性的な支持を減殺する弾性支持減殺機構として機能する。
【0041】
<ロードセルの基本構造の説明>
図4に示されるように、ロードセル11〜14は、ダブルコンベックス・ローディング方式のコラム型ロードセルであり、弾性体15と、密封ケーシング16とを備えている。
弾性体15は、例えばアルミニウム合金やステンレス等の金属製で略円柱形状に形成され、その軸線を鉛直方向に向けて起立配置されている。
【0042】
弾性体15は、軸線方向中央部に形成される起歪部17と、上端に形成される上側凸面18と、下端に形成される下側凸面19とを有している。上側凸面18および下側凸面19はいずれも、所定の曲率半径Rの部分球面形状に形成されている。
【0043】
弾性体15は、起歪部17が密封ケーシング16内に気密に収められ、上端部および下端部がそれぞれ密封ケーシング16から露出させた状態で密封ケーシング16に組み込まれている。
【0044】
<ロードセルの上側受け部材および下側受け部材の説明>
弾性体15の上端部と載台5との間には、上側受け部材20が介在されている。上側受け部材20は、水平座面21を有し、この水平座面21を弾性体15の上側凸面18に接触させた状態で載台5に固定されている。
【0045】
弾性体15の下端部と設置ベース2との間には、下側受け部材22が介在されている。下側受け部材22は、水平座面23を有し、この水平座面23を弾性体15の下側凸面19に接触させた状態で設置ベース2に固定されている。
【0046】
<復元力発生機構の基本構成の説明>
復元力発生機構は、弾性体15の上側凸面18および上側受け部材20の水平座面21と、弾性体15の下側凸面19および下側受け部材22の水平座面23とにより構成されている。復元力発生機構は、載台5の水平方向の変位y
0に対して復元力Fを発生する。この復元力Fについて、
図5を用いて以下に説明する。
【0047】
<復元力の発生の理論説明>
図5には、載台5の水平方向の変位y
0に伴ってロードセル11〜14の弾性体15が垂直状態から横方向にy
0だけ移動してθだけ傾斜した状態が示されている。図中記号を以下のように定める。
y
0:弾性体15の上部の移動量
S:弾性体15の上部と下部の接触点長さ
H:弾性体15の高さ(ロードセル11〜14の高さ)
A:上側凸面18の曲率半径(=R)
B:下側凸面19の曲率半径(=R)
N:弾性体15に作用する垂直荷重
θ:弾性体15の傾斜角
図5において、弾性体15の傾斜角θの値が微小であるならば、次式(1)が成立する。
tanθ≒y
0/H ・・・(1)
また、弾性体15の上部と下部の接触点長さSは、次式(2)で表わすことができる。
S≒A・tanθ+(B−H)tanθ
=(A+B−H)・y
0/H ・・・(2)
そして、垂直荷重Nと復元力Fとの比Kは、次式(3)で表わすことができる。
K=F/N≒S/H=(A+B−H)・y
0/H
2 ・・・(3)
上記式(3)より復元力Fは、次式(4)で表わすことができる。
F=N・(A+B−H)・y
0/H
2 ・・・(4)
【0048】
<自由振動の初期条件を与えるアクチュエータの説明>
図2に示されるように、載台5におけるロードセル13,14が設置されている側の近傍には、油圧シリンダ24が配置されている。油圧シリンダ24は、伸長作動時にピストンロッド25で載台5の側面を押して、載台5に対し水平方向の力を加えることにより、載台5に水平方向の変位と速度を与えることができようになっている。油圧シリンダ24は、載台5に対し自由振動の初期条件を与えるアクチュエータとして機能する。なお、油圧シリンダ24に代えて、例えば空圧シリンダや磁性流体シリンダなどを用いることもできる。ここで、「初期条件」とは、「初期変位」と「初期速度」とを含む概念であり、これらを総称するものである。
【0049】
<油圧シリンダの油圧回路の説明>
油圧シリンダ24は、電磁弁26を介して油圧ポンプ27に接続されている。油圧ポンプ27が電動モータ28の作動によって駆動されると、油圧ポンプ27からの圧油が電磁弁26の切換動作に応じて油圧シリンダ24のヘッド側油室またはボトム側油室に供給されるようになっている。
【0050】
<油圧シリンダの作動説明>
油圧シリンダ24の伸長指令を示すバルブ切換信号が後述する制御装置40から電磁弁26に送信されると、電磁弁26はそのバルブ切換信号に応じて次のような油路切換動作を実行する。すなわち、電磁弁26は、油圧ポンプ27からの圧油を油圧シリンダ24のボトム側油室に供給すると同時に、油圧シリンダ24のヘッド側油室の内部の油をタンク29に還流させるような油路の切り換えを行う。これにより、油圧シリンダ24が伸長作動され、載台5の側面がピストンロッド25に押されて載台5に水平方向の変位と速度が与えられる。
【0051】
これに対し、油圧シリンダ24の収縮指令を示すバルブ切換信号が後述する制御装置40から電磁弁26に送信されると、電磁弁26はそのバルブ切換信号に応じて次のような油路切換動作を実行する。すなわち、電磁弁26は、油圧ポンプ27からの圧油を油圧シリンダ24のヘッド側油室に供給すると同時に、油圧シリンダ24のボトム側油室の内部の油をタンク29に還流させるような油路の切り換えを行う。これにより、油圧シリンダ24が収縮作動され、載台5とピストンロッド25との接触が解除される。
【0052】
<載台の自由振動の説明>
載台5を水平方向(y方向)に自由振動させるために、まず油圧シリンダ24の伸長・収縮動作により、載台5に初期条件(初期変位と初期速度)を与える。載台5には、水平方向の変位に対する復元力発生機構からの復元力Fが作用する。こうして、載台5の水平方向の変位に対して復元力Fを作用させることで、載台5を水平方向に自由振動させることができる。
【0053】
<変位センサの説明>
載台5におけるロードセル11,12が設置されている側の近傍には、油圧シリンダ24と対向するように変位センサ30が配置されている。変位センサ30は、自由振動状態にある載台5の変位を検出する変位検出手段として機能する。なお、変位センサ30としては、種々の方式のものを採用することができ、例えば光学式変位センサ、渦電流式変位センサ、差動変圧式変位センサなどが挙げられる。
【0054】
<加速度センサの説明>
載台5におけるロードセル11,12が設置されている側の近傍には、油圧シリンダ24と対向するように加速度センサ31が配置されている。加速度センサ31は、自由振動状態にある載台5の加速度を検出する加速度検出手段として機能する。なお、加速度センサ31としては、種々の方式のものを採用することができ、例えば静電容量形加速度センサや、金属ひずみゲージ式加速度センサ、半導体ひずみゲージ式加速度センサ、圧電式加速度センサなどが挙げられる。
【0055】
<重心高さ測定装置の制御系のシステム構成の説明>
図6に示されるように、重心高さ測定装置1は、制御装置40と、操作装置41と、表示装置42とを備えている。
【0056】
<制御装置の概略説明>
制御装置40は、主として、増幅器43と、ローパスフィルタ44と、マルチプレクサ45と、A/D変換器46と、I/O回路47と、メモリ48と、マイクロプロセッサ(MPU)49とにより構成されている。
【0057】
増幅器43は、送り込まれる信号をA/D変換可能な大きさに増幅して送り出す機能を有している。
【0058】
ローパスフィルタ44は、低域周波数のみを信号として通過させる機能を有している。
マルチプレクサ45は、送り込まれる複数の信号を選択制御信号の指令に基づいて選択的に送り出す機能を有している。
【0059】
A/D変換器46は、マルチプレクサ45からのアナログ信号をデジタル信号に変換する機能を有している。
【0060】
I/O回路47は、A/D変換器46と、操作装置41と、表示装置42と、メモリ48と、MPU49との間で各種の信号やデータの受け渡しを行う機能を有している。
【0061】
メモリ48は、PROMやRAMなどで構成され、所定プログラムや基本データなどを長期的に記憶したり、種々のデータや演算用数値などを一時的に記憶したりする機能を有している。
【0062】
MPU49は、メモリ48に格納されている所定プログラムの指示に従って、必要な信号をI/O回路47を介して受け取り、また必要なデータをメモリ48から受け取り、受け取った信号やデータに基づいて演算を実行する機能を有している。
【0063】
<操作装置の概略説明>
操作装置41は、操作スイッチや数値キーなどを備えてなり、測定開始・終了の動作や零点調整動作、使用モードの切り換え動作、数値設定動作などの種々の動作の際に用いられる。
【0064】
<表示装置の概略説明>
表示装置42は、例えば液晶ディスプレイからなり、測定結果や各種データの入出力画面などが表示される。
【0065】
<重心高さ測定装置の制御系システムの処理動作の概略説明>
重心高さ測定装置1の制御系システムにおいては、ロードセル11〜14、変位センサ30および加速度センサ31のそれぞれの信号は、増幅器43、ローパスフィルタ44、マルチプレクサ45、A/D変換器46およびI/O回路47を経由してMPU49に送られる。MPU49は、メモリ48に格納されている所定プログラムに従って、I/O回路47からの信号を取り込み、またメモリ48に記憶されている種々のデータを読み込み、これらの信号やデータに基づいて測定対象物4の平面的重心座標の演算や重心高さの演算を実行する。そして、その演算結果は表示装置42に表示される。
【0066】
<MPUの機能説明>
MPU49においては、所定プログラムが実行されることにより、
図7に示される平面的重心座標演算部50および重心高さ演算部51のそれぞれの機能が実現される。
【0067】
<重心Gの平面座標(x
G,y
G)の求め方の理論説明>
次に、
図8および
図9を用いて、測定対象物4の平面的重心座標、すなわち載台5に載せられた測定対象物4の重心Gを水平面(o−xy平面)に射影したときのその面上における重心Gの座標(x
G,y
G)の求め方について説明する。
【0068】
なお、理論説明の簡単化のために、載台5は密度が一定の直方体と仮定する。座標系o−xyzの原点は載台5の中央にとる。ロードセル11〜14のそれぞれの出力は無負荷時において零に調整されているものとする。
図8および
図9中の記号および理論式で用いる記号の意味を下記のとおり定義する。
G:測定対象物4の重心
G
0:載台5の重心
a:ロードセル11(13)とロードセル12(14)との間の距離
b:ロードセル11(12)とロードセル13(14)との間の距離
c:載台5の高さ
H:ロードセル11〜14の高さ(弾性体15の高さ)
W
i:各ロードセル11〜14に作用する静荷重(i=1,2,3,4)
W:測定対象物4の自重(=W
1+W
2+W
3+W
4)
W
12:W
1+W
2
W
24:W
2+W
4
なお、上記記号のうち、a,b,c,H,Rは既知の値であり、これらの値は予めメモリ48に記憶される。
【0069】
<重心Gの平面座標(x
G,y
G)の求め方の理論説明>
モーメントのつりあい条件として次式(5),(6)が成り立つ。
【0070】
W
24・a−W・(a/2+x
G)=0 ・・・(5)
W
12・b−W・(b/2+y
G)=0 ・・・(6)
上記式(5),(6)より次式(7),(8)が得られる。
【0071】
x
G=a・(W
24/W−1/2) ・・・(7)
y
G=b・(W
12/W−1/2) ・・・(8)
よって、W
24,W
12およびWの測定値を上記式(7),(8)に代入して計算することにより、重心Gの平面座標(x
G,y
G)を求めることができる。
【0072】
<測定対象物の重心高さhの求め方の理論説明>
次に、測定対象物4の重心高さhの求め方について、主に
図9を用いて以下に説明する。以下の理論説明では、測定対象物4が載せられた載台5が自由振動状態にあることが前提となる。油圧シリンダ24にて自由振動の初期条件を与えるとともに、復元力発生機構からの復元力Fを作用させることにより、測定対象物4が載せられた載台5を水平方向(y方向)に自由振動させる。なお、
図9では、静止時における測定対象物4の重心Gのy座標y
Gをdで表わしている。また、o−yz座標系は空間に固定した座標系とする。
【0073】
ここで、以下の説明で用いる新しい記号を定義しておく。
m:測定対象物4の質量
m
0:載台5の質量
M:m+m
0(=W/g)
e:載台5の下面から重心G
0までの距離
W
i(t):ロードセル11〜14に作用する動荷重(i=1,2,3,4)
ΔW
i(t):W
i(t)の静荷重W
iからの変動成分(=P
i(t)−P
i)
ΔW
12(t):ΔW
1(t)+ΔW
2(t)
ΔW
34(t):ΔW
3(t)+ΔW
4(t)
ΔW(t):ΔW
12(t)+ΔW
34(t)
y
0(t):重心G
0のy方向の変位
【数1】
:重心G
0のy方向の加速度
z
0(t):重心G
0のz方向の変位
【数2】
:重心G
0のz方向の加速度
y
G(t):重心Gのy方向の変位
【数3】
:重心Gのy方向の加速度
z
G(t):重心Gのz方向の変位
【数4】
:重心Gのz方向の加速度
δ(t):重心Gの重心G
0に対する相対変位(=y
G(t)−y
0(t))
F
12(t):ロードセル11,12から水平方向に載台5に作用する力の和
F
34(t):ロードセル13,14から水平方向に載台5に作用する力の和
F(t):F
12(t)+F
34(t)
なお、上記記号のうち、m
0,eは既知の値であり、これらの値は予めメモリ48に記憶される。
【0074】
測定対象物4が剛体であるならば、測定対象物4の重心Gと載台5の重心G
0とのZ方向の相対変位は零である。測定対象物4が非剛体の場合、その相対変位は零ではないが、その量は微小である。よって、その相対変位の量は以下の運動方程式において無視することとする。すなわち、Z
0(t)=Z
G(t)とおく。このとき、系の運動方程式は次式(9),(10)で表わされる。
【0076】
上記式(9),(10)は、測定対象物4が剛体であるか否かとは関係なく成立する。
【0077】
また、転倒モーメントのつりあい条件として次式(11)を得る。
【0079】
ここに、δは、重心Gの重心G
0に対するy方向の相対変位である。δは(b/2−d)に比較して微小であるから以下の式変形においては無視する。
上式(9)から
【数7】
を求め、上式(10)から
【数8】
を求め、それらを
【数9】
であることを考慮して上式(11)に代入すると、次式(12)となる。
【0081】
上記式(12)より、測定対象物4の重心高さhを求める次式(13)が得られる。
【0083】
前述した復元力Fを求める式(4)において、弾性体15に作用する垂直荷重NはMg(g:重力加速度)、弾性体15の上側凸面18および下側凸面19の曲率半径A,Bはいずれも所定半径Rであるから、ロードセル11〜14によって支持される載台5の復元力Fは、次式(14)で表わすことができる。
【0085】
上記式(14)を上記式(13)に代入してhを書き直すと次式(15)となる。
【0086】
【数13】
ただし、kは次式(16)で表わされるものである。
【0088】
上式(15)より明らかなように、この式(15)に含まれるパラメータの値が既知ならば、重心高さhは変数y
0(t)、
【数15】
、ΔW(t)及びΔW
34(t)を用いて計算することができる。
【0089】
上式(15)は、測定対象物4が剛体だけでなく非剛体であったとしても、有効な式である。しかし、もし測定対象物4が剛体に限定される場合には、上式(10)を上式(13)に代入して、
【数16】
とおくことにより、次式(17)を得ることができる。さらに、上式(10)、(14)、(16)により求められる
【数17】
のy
0(t)を用いた表現式を次式(17)に代入して、次式(17)´が得られる。
【0090】
ここで、「剛体」とは、外力による変形が全く生じない「完全剛体」と、外力による変形が若干生じてもその変形による重心高さ測定上の影響が極めて少なくて完全剛体と見なしても何ら支障がない「見なし剛体」とを包含するものである。また、「非剛体」とは、外力による変形が生じてその変形の影響が重心高さ測定上無視できない物体を総称して表現したものである。
【0093】
この式(17)、(17)´から明らかなように、
【数20】
あるいはy
0(t)のどちらか一方のみが必要であることがわかる。
【0094】
<ロードセルで検出される荷重信号の補正の説明>
ところで、載台5の水平方向の自由振動に伴って、ロードセル11〜14は揺動振動となる。これにより、ロードセル11〜14の軸方向に作用する荷重は、回転角θの関数となる。今、ロードセル11〜14で検出される荷重W
i´(t)が上記の軸方向荷重であると仮定する。
【0095】
このとき、W
i´(t)は次式(18)で表わすことができる。
【0097】
ただし、Fi(t)およびθはそれぞれ次式(19)および式(20)で表わされる。
【0100】
ここに、F
i(t)は、各ロードセル11〜14に生じる復元力Fの符号を逆にしたものである。
上記式(18)により次式(21)が得られる。
【0102】
式(21)によりW
i(t)がW
i´(t)とy
0(t)から求まることがわかる。
【0103】
なお、傾斜補正の成されたデジタルロードセルを用いる場合は、その出力はW
i(t)であるから、上述の補正は不要となる。
【0104】
<重心高さ測定装置の計測動作の説明>
以上に述べたように構成される重心高さ測定装置1の計測動作について、主に、
図7の機能ブロック図、
図10のフローチャートおよび
図11のタイムチャートを用いて以下に説明する。なお、
図10において記号「S」はステップを表わす。
以下の計測動作説明は、測定対象物4が荷物を載せた運搬車両である場合の例である。
【0105】
<ステップS1〜S4の処理内容の説明>
載台5に進入した運搬車両が停止するまで待機する(S1)。
【0106】
運搬車両が停止した時刻t
1から微小時間Δtだけ経過した時刻(t
1+Δt)以降において、平面的重心演算部50は、ロードセル11〜14からの静荷重信号W
i(i=1,2,3,4)を読み込むとともに、読み込んだ静荷重信号W
iから測定対象物4の質量(重量)を求める(S2)。
【0107】
また、平面的重心演算部50は、次式(16)に基づいてkを演算する(S3)とともに、次式(7),(8)に基づいて測定対象物4の重心Gの平面座標(x
G,y
G)を算出する(S4)。
【0109】
x
G=a・(W
24/W−1/2) ・・・(7)
y
G=b・(W
12/W−1/2) ・・・(8)
【0110】
<ステップ5の処理内容の説明>
車両押し付け装置500が作動する(S5)。これにより、装置500と載台5との間で運搬車両全体が上下方向に挟み込まれて、サスペンション100の弾性支持が減殺されるので、測定対象物4を剛体に近い状態にすることができる。
【0111】
<ステップS6の処理内容の説明>
時刻t
2において、制御装置40(I/O回路47)は、油圧シリンダ24の伸長作動を示すバルブ切換信号を電磁弁26に送信する。これにより、油圧シリンダ24が伸長作動され、載台5の側面がピストンロッド25に押されて載台5に水平方向の変位と速度が与えられる。その後、あらかじめ定められた変位において、制御装置40は、油圧シリンダ24の収縮作動を示すバルブ切換信号を電磁弁26に送信する。これにより、油圧シリンダ24が収縮作動され、載台5とピストンロッド25との接触が解除され、載台5に自由振動の初期条件が与えられる。そして、載台5には水平方向の変位に対する復元力発生機構からの復元力Fが作用するため、載台5は水平方向(y方向)に自由振動する。
【0112】
このとき、車両押し付け装置500により車両は押し付けられて、測定対象物4は剛体に近い状態であるので、車両自身による弾性振動の影響が載台5に伝わりにくくなる。その結果、重心高さの測定において、サスペンション100による車両の車体の弾性的な支持による影響を低減することができ、ひいては、その測定精度を向上することができる。また、車両押し付け装置500により、載台5を振動させた際に、載台5上の測定対象物4の移動が抑制されるので、より正確な測定が可能となる。
【0113】
<ステップS7,S8の処理内容の説明>
時刻t
2から微小時間Δtだけ経過した時刻(t
2+Δt)以降において、重心高さ位置演算部51は、自由振動状態にある載台5の変位y
0(t)、加速度
【数26】
及びロードセル11〜14の動荷重信号W
i(t)を読み込む(S6)。この読み込み動作は、所定の閾値以上の波形データを取得できる時刻t
3まで行われる(S7)。
【0114】
<ステップS9の処理内容の説明>
載台5が静止した時刻t
4以降から時刻t
5の間において、重心高さ演算部51は、ステップS2で取得した静荷重信号W
iとステップS7で収得した動荷重信号W
i(t)とに基づいてΔW(t)およびΔW
34(t)をそれぞれ演算する。
【0115】
<ステップS10の処理内容の説明>
時刻t
5以降から時刻t
6の間において、重心高さ演算部51は、次式(15)に基づいて測定対象物4の重心Gの重心高さhを演算する。なお、hの測定値は、あらかじめ定めた時間区間内の各サンプリング時刻において式(15)で計算されたhの平均値とする。
【0117】
<ステップS11の処理内容の説明>
そして、制御装置40(I/O回路47)は、ステップS10の演算の結果得られた重心高さhの値を表示させる表示信号を表示装置42に送信する。これにより、ステップS10の演算で求められた重心高さhの値が表示装置42に表示される。
【0118】
<第1の実施形態の重心高さ測定装置のまとめ>
第1の実施形態の重心高さ測定装置1によれば、測定対象物4が載せられた載台5を水平方向に自由振動させることにより、測定対象物4の重心高さを求める上で必要とされる載台5の水平方向の変位と加速度とを得ると共に、載台5の振動に伴って生じるロードセル11〜14からの検出信号の変化に基づいて測定対象物4の重心高さを定位置で測定する。このような、重心高さの測定において、載台5に設けられた車両押し付け装置500により、装置500と載台5との間で車両全体が上下方向に押し込まれて、サスペンション100による車両の弾性支持が減殺されるので、測定対象物4を剛体に近い状態にすることができる。その結果、サスペンション100による車両の車体の弾性的な支持による影響を低減することができ、ひいては、その測定精度を向上することができる。
【0119】
尚、上記第1の実施の形態における重心高さの計測動作では、ロードセル11〜14により静荷重信号Wiを検出した後に(S2)、車両押し付け装置500を作動させ(S5)、その後、ロードセル11〜14により動荷重信号Wi(t)するようにしたが(S7)、車両押し付け装置500を作動させた後に、ロードセル11〜14により静荷重信号Wi及び動荷重信号Wi(t)を検出するようにしてもよい。
【0120】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る重心高さ測定装置について説明する。なお、第2の実施の形態の重心高さ測定装置1Aにおいて、第1の実施形態の重心高さ測定装置1と同一または同様のものについては図に同一符号を付すに留めてその詳細な説明を省略することとし、以下においては、第1の実施形態の重心高さ測定装置1と異なる点を中心に説明することとする。
【0121】
図12は、本発明の第2の実施形態に係る重心高さ測定装置を模式的に示した模式図である。
図12では、測定対象物4としての運搬車両を後方からみた図を示している。本実施形態においても、第1実施形態と同様に、載台5には運搬車両を上から押さえ付ける車両押し付け装置500が設けられている。
【0122】
図12に示されるように、重心高さ測定装置1Aは、設置ベース2として地表面を掘り下げて形成されたピット200と、そのピット200の開口部に配設された傾斜板201と、その傾斜板201をピット200の底面において支持する支持台202と、一端がピット200の底面に連結されると共に他端が傾斜板201に連結される昇降装置203とを備える。
【0123】
ピット200は、傾斜板201を傾斜させる際の可動域を確保するための部分であり、開口部の長手方向(
図12紙面垂直方向)および幅方向(
図12左右方向)の寸法が測定対象物4よりも大きな直方体形状の空間が地中に形成されている。傾斜板201は、長手方向(
図12紙面垂直方向)および幅方向(
図12左右方向)の寸法が、測定対象物4よりも大きく、かつ、ピット200よりも小さな上面視矩形の板状に形成されている。傾斜板201と載台5との間にはロードセル11〜14が配置されている。ロードセル11及び12は、載台5を介して運搬車両の右側の前輪及び後輪に対応して配置されており、ロードセル13及び14は、運搬車両の左側の前輪及び後輪に対応して配置されている。支持台202は、傾斜板201の長手方向に沿って軸通される軸部201aを回動可能に保持している。これにより、傾斜板201は、軸部201aを中心として、支持台202に傾斜可能に軸支される。
【0124】
昇降装置203は、傾斜板201を傾斜させるためのアクチュエータであり、油圧シリンダにより構成されている。昇降装置203は、傾斜板201の幅方向一側(
図12右側)に配設され、油圧によりロッドを伸縮させることで、傾斜板201を傾斜させることができる。なお、本実施の形態では、昇降装置203が、傾斜板201の幅方向一側(
図12右側)に配設されているが、傾斜板201の幅方向他側(
図12左側)に配設してもよく、また、一側および他側の両方に配設してもよい。このような構成により、重心高さ測定装置1Aは、載台5を上下方向に傾斜させるとともに、傾斜に伴って生じる荷重の変化をロードセル11〜14により検出することができる。
【0125】
<測定対象物の重心高さhの求め方の理論説明>
次に、本実施の形態に係る重心高さ測定装置1Aによる重心高さを算出する方法について説明する。重心位置の算出における測定対象物4の測定姿勢として、基準姿勢及び傾斜姿勢を採用する。基準姿勢とは、測定対象物4が載台5上で静止した状態をさす。傾斜姿勢とは、測定対象物4の基準姿勢に対して、一端側(
図12右側)が他端側(
図12左側)よりも上方となるように傾斜した状態をさす。
【0126】
図13及び
図14は、
図12の測定対象物4を模式的に示す正面図(Y方向からみた図)であり、
図13が基準姿勢を示し、
図14が傾斜姿勢を示している。
【0127】
図13に示されるように、X方向の支点間距離をL、X方向の重心位置をx1、重心高さをhとする。また、基準姿勢における測定対象物4の右端にかかる荷重に基づいて算出する重量をW
12、左側にかかる荷重に基づいて算出する重量をW
34とする。さらに、
図14に示されるように、基準姿勢から傾斜姿勢へと姿勢を変えたときの測定対象物4の右側の移動距離をH、測定対象物4の傾斜角度をθとする。また、傾斜姿勢における測定対象物4の右端にかかる荷重に基づいて算出する重量をW
12’左側にかかる荷重に基づいて算出する重量をW
34’とする。さらに、x2、x3、及びx4を
図14に示すように定め、測定対象物4全体の荷重に基づいて算出する総重量をW
Gとする。そうすると、まず以下の式が成り立つ。
x1=x3+x4=(x2/cosθ)+h・tanθ・・・(2−1)
sinθ=H/L・・・(2−2)
図13において、モーメントのつり合いを考えると次式が成り立つ。
x1・W
G=L・W
12・・・(2−3)
図14において、モーメントのつり合いを考えると次式が成り立つ。
x2・W
G=L・cosθ・W
12’・・・(2−4)
式(2−1)〜(2−4)より、重心高さZを求める式が導かれる。
h=((W
12’−W
12)/W
G)・(L/H)・(L
2−H
2)
1/2・・・(2−5)
【0128】
式(2−5)のパラメータのうち、W
Gは測定対象物4の基準姿勢においてロードセル11〜14が検出した荷重により求めることができる。W
12は測定対象物4の基準姿勢において車両の右側に対応したロードセル11及び12が検出した荷重により求めることができる。W
12’は測定対象物4の傾斜姿勢において車両の右側のロードセル11及び12が検出した荷重により求めることができる。Lは運搬車両の車輪間距離とすれば既知の値である。Hは傾斜角度θが既知であれば式(2−2)により求めることができる。そのため、これらのパラメータの値に基づいて、式(2−5)を解けば、被測定物の重心高さhを算出することができる。
【0129】
このような測定対象物を傾斜させて重心高さを計測する重心高さ測定装置1Aにおいては、傾斜時に測定対象物の片側をより高く持ち上げれば、重心高さを精度良く求めることができる。ところが、測定対象物が運搬車両であるような場合には、測定対象物の一方を高く持ち上げると、車両のサスペンションの弾性が車両を載せた載台に望まない振動を発生させてしまうことがわかっている。そこで、本実施形態に係る重心高さ測定装置1Aにおいても車両押し付け装置500を動作させることにより、測定対象物の弾性振動を減殺することができる。
【0130】
<重心高さ測定装置の計測動作の説明>
本実施の形態に係る重心高さ測定装置1Aの計測動作について
図15および
図16を用いて説明する。
図15は、重心高さ測定装置1Aの制御系の概略システム構成図である。本実施形態では、メモリ48は車両の車輪間距離L、載台5を傾斜させた状態における傾斜角度θ、及び傾斜角度θに対応した測定対象物4の移動距離Hなどのパラメータを予め記憶している。MPU49は、ロードセル11〜14からの検出信号やメモリ48に記憶されたパラメータの値に基づいて測定対象物4の重心高さを演算する。
【0131】
図16は、重心高さ測定装置1Aで実行される重心高さ測定処理を説明するフローチャートである。
【0132】
<ステップS1〜S2の処理内容の説明>
載台5に進入した運搬車両が停止するまで待機する(S1)。
【0133】
次に、運搬車両が停止した時刻から微小時間だけ経過した時刻以降において、MPU49は、基準姿勢におけるロードセル11〜14からの静荷重信号W
12、W
34を読み込むとともに、読み込んだ静荷重信号W
12、W
34から測定対象物4の質量(重量)WGを求める(S2)。
【0134】
<ステップS3の処理内容の説明>
次に、車両押し付け装置500が作動する(S3)。これにより、装置500と載台5との間で運搬車両全体が上下方向に挟み込まれて、サスペンション100の弾性支持が減殺されるので、測定対象物4を剛体に近い状態にすることができる。
【0135】
<ステップS4の処理内容の説明>
次に、制御装置40(I/O回路47)は、昇降装置203を作動させ、予めメモリ48に記憶していた傾斜角度θに応じた移動距離Hだけ傾斜台203を上下に傾斜させる(S4)。このとき、車両押し付け装置500により車両は押し付けられて、測定対象物4は剛体に近い状態であるので、車両自身による弾性振動の影響が載台5に伝わりにくくなる。その結果、重心高さの測定において、サスペンション100による車両の車体の弾性的な支持による影響を低減することができ、ひいては、その測定精度を向上することができる。また、車両押し付け装置500により、載台5を傾斜させた際に、載台5上の測定対象物4の移動が抑制されるので、より正確な測定が可能となる。
【0136】
<ステップS5の処理内容の説明>
MPU49は、メモリ48に記憶された、車両の車輪間距離L、傾斜角度θ、及び傾斜角度θに対応した測定対象物4の移動距離Hなどのパラメータを取得する。一方で、傾斜姿勢におけるロードセル11〜14からの検出信号W
12’、W
34’を取得する。
【0137】
<ステップS6の処理内容の説明>
MPU49は、ロードセル11〜14からの検出信号W
12、W
12’、W
Gおよびメモリ48に記憶されたパラメータの値L、Hに基づいて式(2−5)を計算し、測定対象物4の重心高さを演算する。
【0138】
<ステップS7の処理内容の説明>
そして、制御装置40(I/O回路47)は、ステップS6の演算の結果得られた重心高さhの値を表示させる表示信号を表示装置42に送信する。これにより、ステップS6の演算で求められた重心高さhの値が表示装置42に表示される。
【0139】
<第2の実施形態の重心高さ測定装置のまとめ>
したがって、第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、重心高さの測定において、載台5に設けられた車両押し付け装置500により、装置500と載台5との間で車両全体が上下方向に押し込まれて、サスペンション100による車両の弾性支持が減殺されるので、測定対象物4を剛体に近い状態にすることができる。その結果、サスペンション100による車両の車体の弾性的な支持による影響を低減することができ、ひいては、その測定精度を向上することができる。
【0140】
尚、上記第2の実施の形態における重心高さの計測動作では、ロードセル11〜14により静荷重信号を検出した後に(S2)、車両押し付け装置500を作動させ(S3)、その後、ロードセル11〜14により傾斜姿勢における荷重信号を検出するようにしたが(S5)、車両押し付け装置500を作動させた後に、ロードセル11〜14により、静荷重信号及び傾斜時の荷重信号を検出するようにしてもよい。
【0141】
以下、本発明の実施形態における弾性支持減殺機構の変形例について説明する。尚、本変形例においても測定対象物4は、被測定部としての運搬車両の車体と、載置面に置かれる基部としての車輪と、車体を車輪に対して弾性的に支持するサスペンションとを含む運搬車両である。運搬車両は牽引車及び貨物を載せた被牽引車から構成されるものとする。
【0142】
(変形例1)
図17は、第1の変形例に係る重心高さ測定装置を簡略化した平面図及び矢視図である。上記各実施の形態においては、弾性支持減殺機構は、載台5に設けられた車両押し付け装置500であった。しかし、本変形例の弾性支持減殺機構は、
図17に示されるように、載台5に設けられた複数のワイヤー501である。ここでは、例えば載台5の四隅を含む6カ所にそれぞれの一端が固定された6本のワイヤー501により、牽引車の前方の左右2カ所、車両の連結部の左右2カ所、及び被牽引車の後方の左右2カ所を固定する。
【0143】
このような構成により、運搬車両の車体が載台5に固定されて運搬車両のサスペンションの弾性支持が減殺され、測定対象物4が剛体に近い状態になるので、上記実施の形態と同様な効果を奏することができる。また、本変形例は、上記実施形態の車両押し付け装置のような大掛かりな装置と比べ、安価且つ簡単に実現が可能である。例えば、運搬車両に設けられた車両の牽引フック等を利用すれば、ワイヤー501の一端を容易に車体に固定することができる。
【0144】
(変形例2)
図18は、第2の変形例に係る重心高さ測定装置を簡略化した平面図及び矢視図である。本変形例の弾性支持減殺機構は、
図18に示されるように、載台5の上に置かれた複数のジャッキ502である。ここでは例えば牽引車の車体の四隅を下方から支持するために載置面上に4つのジャッキ502が、被牽引車の車体の四隅を下方から支持するために載置面上に4つのジャッキ502がそれぞれ置かれている。このようにして載台5上に置かれた8つのジャッキ502により載台上の運搬車両の車体を下から持ち上げて車輪を載置面から浮かせると、サスペンションの弾性支持が減殺されて、測定対象物4を剛体に近い状態にすることができる。よって、上記実施の形態と同様な効果を奏することができる。
【0145】
なお、ジャッキ502を載台5に固定してもよい。この場合、運搬車両がより安定した状態で重心高さを測定することができる。
【0146】
(変形例3)
図19は、第3の変形例に係る重心高さ測定装置を簡略化した平面図及び矢視図である。本変形例の弾性的な支持を減殺する方法は、
図19に示されるように、被牽引車のシャーシの脚503を載台5の上に出すことである。これにより、載台5上の被牽引車の車体を下から持ち上げて車輪を載置面から浮かせると、サスペンションの弾性支持が減殺されて被測定物を剛体に近い状態にすることができる。よって、上記実施の形態と同様な効果を奏することができる。
【0147】
(変形例4)
図20は、第4の変形例に係る重心高さ測定装置を簡略化した平面図及び矢視図である。本変形例の弾性的な支持を減殺する方法は、
図20に示されるように、被牽引車のシャーシの脚503を載台5の上に出すとともに、牽引車を載台5の外部に停車させることである。ここでは牽引車を設置ベース2上に停車させている。これにより、載台5上の被牽引車の車体を下から持ち上げて車輪を載置面から浮かせると、載台5上の被牽引車のサスペンションの弾性支持が減殺されるとともに、載台外部に停車した牽引車のサスペンションの弾性支持の影響が除外されるので、測定対象物4をより剛体に近い状態にすることができる。よって、上記実施の形態と同様な効果を奏することができる。
【0148】
(その他の変形例)
その他の変形例として、運搬車両の車体と車輪とを直接つなぎ合わせるような構成にして、車体と車輪とを相互に圧縮させてサスペンションの弾性的な支持を減殺してもよい。また、車両のサスペンションのスプリングにスペーサを挿入するような構成にして、サスペンションの弾性的な支持を減殺してもよい。
【0149】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。