(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポジ型レジストは、化学増幅型レジストであって、前記全面露光処理工程後、露光後ベーク(Post Exposure Bake)を行う露光後ベーク処理工程を更に有することを特徴とする請求項1記載の欠陥評価用マスクブランクの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1に開示されたマスクブランクの中でも遮光層及び反射防止層の材料として、異方性の高いドライエッチングが可能な材料、つまり、遮光層として、酸素非含有塩素系ドライエッチング及びフッ素系ドライエッチングでエッチング可能な遮光層と、フッ素系ドライエッチングでエッチング可能な反射防止層との組み合わせの場合、更に、遮光層と反射防止層とが互いに異なるエッチング選択性を有する材料、つまり、遮光層として、酸素非含有塩素系ドライエッチングでエッチング可能な遮光層と、フッ素系ドライエッチングでエッチング可能な反射防止層との組み合わせの場合に、マスクブランクの欠陥検査では検出されないが、転写用マスクを製造した後の転写用マスクの欠陥検査において初めて検出する微小黒欠陥が存在するという問題が発生した。
また、特許文献2に開示されたマスクブランクにおいて、フッ素系ドライエッチングでエッチング可能な材料の遮光膜と、膜厚が薄い、例えば、2〜30nmのフッ素系ドライエッチングに耐性を有する金属又は金属化合物からなるエッチングマスク膜との組み合わせの場合に、マスクブランクの欠陥では検出されないが、転写用マスクを製造した後の転写用マスクの欠陥において初めて検出する微小黒欠陥が存在するという問題が発生した。
【0014】
この微小黒欠陥は、主に、薄膜をパターニングした後の基板が露出された領域にスポット状に存在する欠陥で、サイズが20〜100nm、高さが薄膜の膜厚相当のものである。これらの微小黒欠陥は、薄膜を微細且つ、高精度にパターニングするために、酸素非含有塩素系ドライエッチングやフッ素系ドライエッチングでパターニングして転写用マスクを作製する場合や、薄膜をたとえば2〜30nmのフッ素系ドライエッチングに耐性を有する金属又は金属化合物からなるエッチングマスク膜(ハードマスク膜)をマスクにして、遮光膜等の薄膜をフッ素系ドライエッチングでパターニングして転写用マスクを作製する場合であって、半導体デザインルールでDRAMハーフピッチ(hp)32nmノード以降の転写用マスクを作製する場合に初めて認識されたものである。上述の微小黒欠陥は、半導体デバイスを製造するに際しては欠陥となるので、全て除去・修正しなければならないが、欠陥数が50個超となると欠陥修正の負荷が大きく、事実上欠陥修正が困難となる。また、近年の半導体デバイスの高集積化において、転写用マスクに形成する薄膜パターンの複雑化(例えば、OPC(Optical Proximity Correction)パターン)、微細化(例えば、Assist Features)、狭小化において、除去・修正も限界があり問題となってきた。
【0015】
本発明者らは、上述のマスクの微小黒欠陥の発生要因について調査したところ、「基板上にイオン主体のドライエッチングが可能な材料からなる薄膜を有するマスクブランクの表面に、処理液を用いて表面処理した後、該表面処理をしたマスクブランクに対して、前記薄膜をイオン主体のドライエッチングが可能なドライエッチングガスによりエッチングを行う工程と、 該エッチング後の前記基板表面の表面形態情報(欠陥情報)を取得する工程と、取得した前記表面形態情報(欠陥情報)に基づいて、マスクの欠陥要因となる潜在化したマスクブランク欠陥を評価するマスクブランクの評価方法。」に係る発明の案出過程において、マスクブランクの欠陥検査では検出されない潜在化したマスクブランク欠陥が一つの要因であることが判明した。そして、上述の潜在化したマスクブランク欠陥が、エッチング阻害物質(例えば、カルシウム(Ca)やマグネシウム(Mg)等)からなり、そのエッチング阻害物質は、マスクブランク表面を表面処理する際に使用する処理液(例えば、洗浄液)に極微量ながら含まれていることがわかり、本出願人は、その対策の出願を行っている(特願2011−084783号、特願2011−084784号)。
【0016】
本発明者らは、上記対策を施してもなお、上述の微小黒欠陥が発生する場合があることを突き止めた。
この微小黒欠陥は、薄膜をパターニングした後に、主としてパターンエッジに存在する欠陥、及び基板が露出された領域にスポット状に存在する欠陥で、前者はサイズが20〜300nm、高さが薄膜の膜厚相当のもの、後者はサイズが20〜100nm未満、高さが薄膜の膜厚相当のものであり、半導体デザインルールでDRAMハーフピッチ32nmノード以降の転写用マスクを作製する場合に初めて認識したものである。
【0017】
本発明者らは、現像プロセス条件を変化させて作製した転写用マスクの欠陥情報を取得し、上記微小黒欠陥の発生要因について調査したところ、特にパドル現像方式における静止スキャン方式では、静止状態で現像が進むため、アルカリ性の現像液により溶解したレジスト膜の溶解物が、基板上にたまり易く、その後のリンス工程でのpHショックにより生成する析出物がレジストパターンエッジや、レジストパターン間に付着することにより、微小黒欠陥が発生することを突き止めた。そして、本出願人は、アルカリ性の現像液による現像工程と、純水等によるリンス工程との間に、純水リンス時にpHショックが起こっても問題となるサイズの析出物が発生しないように(レジスト残渣が析出しないように)、ひいては純水リンス時にpHショックが起こっても問題となるサイズの微小欠陥が生じないような転写用マスクの製造方法の出願を行っている(特願2011−263052号)。
尚、上述のレジスト残渣は、100nmより小さいラインアンドスペース(L&S)などの密なパターンを有する転写用マスクを製造する場合に顕著に発生し、パターンが微細化するに従って個数が増大し、60nm以下のラインアンドスペース(L&S)などの密なパターンを有する転写用マスクで特に問題となることを突き止めた。
【0018】
新規レジストの開発や、該開発したレジスト材料を転写用マスクに適用する場合においては、マスク製造プロセス(現像処理等)のプロセス評価(ここでは、マスク欠陥となる欠陥品質評価)が必要となる。この場合に、上述のように、薄膜上にレジスト膜を形成したマスクブランクを準備し、レジスト膜に所定のパターンの露光(描画)処理、現像処理、リンス処理を経て、マスクを作製し、得られたマスクの欠陥検査を行って評価するのが一般的であった。しかし、マスク作製した欠陥評価となると時間がかかり、また、手間がかかる。
これに対し本発明者らは、「電子線露光用等のポジ型レジスト塗布ブランクを、全面露光し、現像してレジスト膜を全面除去し、100nm未満のサイズのレジスト残渣と思われる凸欠陥の個数を調べた結果」は、薄膜やレジストの材料・種類・品質や、レジスト塗布前処理プロセス(塗布前処理条件)、現像プロセス(現像条件)等によって、有意差が認められ、有益な情報が得られることを第1に見出した。
【0019】
更に、本発明者らは、上記の「電子線露光用等のポジ型レジスト塗布ブランクを、全面露光し、現像してレジスト膜を全面除去したマスクブランク」について、更に、「薄膜を全面エッチング」して微小黒欠陥の個数を調べた。その結果は、上述した「基板上に形成した転写パターンとなる薄膜が形成されたマスクブランクを表面処理する際に使用する処理液に含まれるエッチング阻害物質の濃度を減らすことで、マスクの微小黒欠陥を減少させる対策を施したマスクブランク」上の薄膜(レジスト塗布前)を全面エッチングして微小黒欠陥の個数を調べた結果(例えば50個以下)と比べ、微小黒欠陥の個数は大幅に(例えば500個以上)増加することがわかった。
すなわち、本発明者らは、レジスト塗布以降の全面現像プロセスにおいても、エッチングマスクとなる異物が新たに発生していることを突き止めた。この現像プロセスで発生するエッチングマスクとなる異物は、レジスト膜付きマスクブランクの欠陥検査では未だ発生していないので検出されないが、レジスト膜付きマスクブランクが原因で生じ、マスクの製造工程の途中では通常把握されない潜在的な欠陥である。ここで、現像工程後の検査は必須の検査ではなく、
図1に示すように、現像工程後に検査はコストの観点から通常行われない。したがって、現像工程後のレジスト残渣はマスクの製造工程の途中では通常把握されない潜在的な欠陥(マスクの検査で初めて検出される欠陥)である。
【0020】
そして、本発明者らは、上記の「電子線露光用等のポジ型レジスト塗布ブランクを、全面露光し、現像してレジスト膜を全面除去し、薄膜を全面エッチングして微小黒欠陥の個数を調べた結果(即ち微小黒欠陥の個数)」は、薄膜やレジストの材料・種類・品質や、レジスト塗布前処理プロセス(塗布前処理条件)、現像プロセス(現像条件)等によって、顕著な有意差が認められ、極めて有益な情報が得られることを第2に見い出した。しかも、「電子線露光用等のポジ型レジスト塗布ブランクを、全面露光し、現像してレジスト膜を全面除去し、薄膜を全面エッチングして微小黒欠陥の個数を調べた結果(即ち微小黒欠陥の個数)」と、実際に転写用マスクを作製して欠陥を調べた結果との間で、良好な相関関係が得られることを見出した。
即ち、本発明者らは、電子線露光用等のポジ型レジスト塗布ブランクに関し、転写用マスクを作製することなく、マスクブランクの段階で転写用マスクを作製したときの欠陥評価を短時間かつ簡便に実施できる手法を開発した。
【0021】
さらに、本発明によると、薄膜やレジストの材料・種類・品質や、レジスト塗布前処理プロセス(塗布前処理条件)、現像プロセス(現像条件)等の評価が可能であり、特定の形状のパターンにのみ欠陥が発生するパターン依存性のある欠陥の評価を除く評価が可能であることを見い出し、本発明を完成させるに至った。
本発明者らは、上記微小黒欠陥は、薄膜として、エッチングマスク膜(ハードマスク膜)が形成されたマスクブランクの場合に顕著に発生し、材料については、タンタル系薄膜の場合に顕著に発生することを突き止めた。また、この微小黒欠陥は、100nmより小さいラインアンドスペース(L&S)などの密なパターンを有するマスクを製造する場合に顕著に発生し、パターンが微細化するに従って個数が増大し、60nm以下のラインアンドスペース(L&S)などの密なパターンを有するマスクで特に問題となることを突き止めた。
【0022】
なお、電子線露光(描画)用のポジ型レジストに関しては、現像によってレジスト層を全面で除去するためには、レジスト層を電子線で全面露光(描画)する必要があるが、コスト的、時間的な負担が大きい。本発明者らは、電子線以外の露光光源でレジスト層を全面露光(全面感光)し、現像してレジスト膜を全面除去し、薄膜を全面エッチングして、潜在的な欠陥の評価を行った結果と、実際に転写用マスクを作製して欠陥を調べた結果との間で、良好な相関関係が得られることを見出した。
【0023】
本発明は上述の課題を解決するための手段として、以下の構成を要する。
(構成1)
欠陥評価用マスクブランクであって、
前記欠陥評価用マスクブランクは、基板の主表面上に、薄膜及びポジ型レジストからなるレジスト膜が形成され、
前記レジスト膜は、感光可能な露光光源にて全面露光処理されていることを特徴とする欠陥評価用マスクブランク。
【0024】
(構成2)
前記露光光源は、波長180nm〜500nmの領域内に分光分布における相対強度の高い領域を有する露光光源であることを特徴とする構成1記載の欠陥評価用マスクブランク。
【0025】
(構成3)
前記ポジ型レジストは、化学増幅型レジストであることを特徴とする構成1又は2記載の欠陥評価用マスクブランク。
(構成4)
前記全面露光処理後、露光後ベーク(Post Exposure Bake)処理されていることを特徴とする構成3記載の欠陥評価用マスクブランク。
【0026】
(構成5)
前記薄膜は、イオン主体のドライエッチングが可能なドライエッチングガスでエッチング可能な材料からなることを特徴とする構成1乃至4の何れか一に記載の欠陥評価用マスクブランク。
(構成6)
前記薄膜は、タンタルを含む材料で形成されていることを特徴とする構成5に記載の欠陥評価用マスクブランク。
【0027】
(構成7)
構成1乃至6の何れか一に記載の欠陥評価用マスクブランクの製造方法であって、
基板の主表面上に薄膜を形成する薄膜形成工程と、
前記薄膜表面の欠陥情報を取得するレジスト形成前薄膜欠陥情報取得工程と、
前記薄膜表面にポジ型レジストからなるレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、
前記レジスト膜に、感光可能な露光光源にて全面露光処理する全面露光処理工程と、を有することを特徴とする欠陥評価用マスクブランクの製造方法。
【0028】
(構成8)
前記ポジ型レジストは、化学増幅型レジストであって、前記全面露光処理工程後、露光後ベーク(Post Exposure Bake)を行う露光後ベーク処理工程を更に有することを特徴とする構成7記載の欠陥評価用マスクブランクの製造方法。
【0029】
(構成9)
構成1乃至6の何れか一に記載の欠陥評価用マスクブランクにおいて、前記薄膜に対して表面処理がなされ、該表面処理の処理条件が異なる複数枚の欠陥評価用マスクブランクを準備する工程と、
前記欠陥評価用マスクブランクの前記レジスト膜表面に現像液を供給し、前記レジスト膜を現像し、前記レジスト膜を全面除去する工程と、
前記薄膜表面の欠陥情報を取得する工程と、
前記処理条件と前記欠陥情報との対応関係の中から、所定の欠陥品質が得られる前記処理条件を選定することを特徴とする欠陥評価方法。
【0030】
(構成10)
構成1乃至6の何れか一に記載の欠陥評価用マスクブランクにおいて、前記レジスト材料が異なる複数枚の欠陥評価用マスクブランクを準備する工程と、
前記欠陥評価用マスクブランクの前記レジスト膜表面に現像液を供給し、前記レジスト膜を現像し、前記レジスト膜を全面除去する工程と、
前記薄膜表面の欠陥情報を取得する工程と、
前記レジスト材料と前記欠陥情報との対応関係の中から、所定の欠陥品質が得られる前記レジスト材料を選定することを特徴とする欠陥評価方法。
【0031】
(構成11)
構成1乃至6の何れか一に記載の欠陥評価用マスクブランクを複数枚準備する工程と、
前記欠陥評価用マスクブランクの前記レジスト膜表面に、現像プロセスが異なる条件にて現像液を供給し、前記レジスト膜を現像し、前記レジスト膜を全面除去する工程と、
前記薄膜表面の欠陥情報を取得する工程と、
前記現像プロセス条件と前記欠陥情報との対応関係の中から、所定の欠陥品質が得られる前記現像プロセス条件を選定することを特徴とする欠陥評価方法。
【0032】
(構成12)
構成9乃至11の何れか一に記載の欠陥評価方法において、前記レジスト膜を全面除去する工程の後、前記薄膜をエッチングにより全面除去する工程と、を有し、
前記薄膜表面の欠陥情報の取得は、前記薄膜をエッチングにより全面除去した前記基板表面の欠陥情報を取得することを特徴とする欠陥評価方法。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、電子線露光用等のポジ型レジスト塗布ブランクに関し、転写用マスクを作製することなく、転写用マスクを作製したときの欠陥評価が短時間かつ簡便な欠陥評価方法を提供できる。
また、本発明によれば、欠陥評価用マスクブランクを使用して様々な欠陥評価が行えるので、欠陥が少ないような薄膜の組成、薄膜に対する処理、レジストにおける諸条件(レジスト材料、レジスト塗布前処理、加熱処理、冷却処理)、マスクブランクの作製方法・作製条件、マスクの作製方法・作製条件(例えば、現像プロセス、エッチングの条件)の最適化、選定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の欠陥評価用マスクブランクは、
欠陥評価用マスクブランクであって、
前記欠陥評価用マスクブランクは、基板の主表面上に、薄膜及びポジ型レジストからなるレジスト膜が形成され、
前記レジスト膜は、感光可能な露光光源にて全面露光処理されていることを特徴とする(構成1)。
【0036】
上記構成によれば、欠陥評価用マスクブランクの全面露光処理されたレジスト膜に現像液を供給し、レジスト膜を全面除去し、薄膜表面の欠陥情報を取得することにより、転写用マスクを作製することなく、マスクブランクの段階で転写用マスクを作製したときの欠陥評価を短時間かつ簡便に実施できる欠陥評価用マスクブランクを提供できる。
【0037】
本発明において、ポジ型レジストは、特に限定されない。電子線露光用のポジ型レジスト、レーザー露光用のポジ型レジストを使用することができる。また、化学増幅型ポジ型レジストも使用することができる(構成3)。
本発明において、上述の欠陥評価用マスクブランクは、レジスト材料、レジスト塗布プロセス、マスク製造プロセスなどの欠陥評価に使用される。
ここで、レジスト塗布プロセスとは、薄膜上にレジストを塗布する塗布プロセス、レジスト塗布前の塗布前処理プロセス、塗布プロセス後に行う加熱処理プロセス、冷却処理プロセスなどをいう。
本発明において、マスク製造プロセスとは、レジスト膜に対する露光処理プロセス、現像処理プロセス、リンス処理プロセス、エッチングプロセスなどをいう。
【0038】
本発明において、露光光源は、前記レジスト膜が感光可能な露光光源であって、電子線以外の露光光源であることが好ましい。電子線露光(EB露光)も適応可能であるが、電子線露光(EB露光)だと処理時間及びコストがかかる。
本発明において、露光光源としては、水銀(UV)ランプ、エキシマレーザ、エキシマランプ、メタルハライドランプなどが挙げられる。
中でも、処理時間及びコストの面から水銀(UV)ランプを使用するのが好ましい。水銀(UV)ランプは、高圧水銀(UV)ランプと低圧水銀(UV)ランプがある。これら高圧水銀(UV)ランプ、低圧水銀(UV)ランプは、波長180nm〜500nmの領域内に分光分布における相対強度の高い領域を有する光源である。
【0039】
高圧水銀(UV)ランプは、主に、365nm、436nm、405nm、313nmの波長域に相対強度の高い領域(分光放射エネルギーが高い領域)を有し、その他にも、302nm、254nm、264nmの波長域にも相対強度の高い領域が存在する光源である。
低圧水銀(UV)ランプは、主に、254nm、185nmの波長域に相対強度の高い領域(分光放射エネルギーが高い領域)を有し、その他にも、365nm、405nm、436nm、313nmの波長域にも相対強度の高い領域が存在する光源である。
また、処理時間は多少要するが、エキシマレーザを使用することもできる。KrFエキシマレーザ(波長248nm)、ArFエキシマレーザ(波長193nm)、F
2エキシマレーザ(波長157mn)があるが、コストを考えるとKrFエキシマレーザが良い。
【0040】
本発明において、全面露光とは、レジスト膜の表面全体を露光すること(露光しない箇所が生じないように露光すること)を言い、レジストの感光に寄与する波長の光により全面露光された前記レジスト膜に現像液を供給した時に、該レジスト膜が全面除去される程度に露光された状態をいう。全面露光では、レジスト膜の全面を均一に露光することが好ましい。全面露光は、レジスト膜の全面に対し一括(一度)で行うことが好ましい。全面露光は、描画やスキャン方式で行うこともできる。
【0041】
本発明において、薄膜としては、パターニングして立体的構造のマスクを作製するために用いられる膜ならば、どのような膜であっても良い。
また、欠陥評価用マスクブランクを構成する薄膜としては、下層の材料膜をエッチングする際にエッチングマスク(ハードマスク)の働きを有するエッチングマスク膜(又はハードマスク膜)を、上述の薄膜以外に設けても良い。または、薄膜を積層膜とし、その積層膜の一部としてエッチングマスク(ハードマスク)を設けても良い。
本発明では、欠陥評価用マスクブランクを構成する薄膜として、エッチングマスク膜(又はハードマスク膜)が形成された場合に、最も顕著な効果が得られる。特に、ハードマスクとしては、レジストパターンがエッチングされにくいエッチャント(例えば、実質的に酸素を含まない塩素系ガスやフッ素系ガス)でエッチングされる材料からなることが望ましい。
【0042】
本発明において、薄膜としては、金属を含む膜を用いることができる。
本発明においては、レジスト膜に接する薄膜としては、イオン主体のドライエッチングが可能なドライエッチングガスでエッチング可能な材料が好ましい。イオン主体のドライエッチングが可能なドライエッチングガスとしては、フッ素系ガスや実質的に酸素を含まない塩素系ガスが挙げられる。
フッ素系ガスとしては、CHF
3、CF
4、SF
6、C
2F
6、C
4F
8等が挙げられる。実質的に酸素を含まない塩素系ガスとしては、Cl
2、SiCl
4、CHCl
3、CH
2Cl
2、CCl
4等が挙げられる。また、ドライエッチングガスとしては、上述のフッ素系ガス、塩素系ガス以外に、He、H
2、Ar、C
2H
4等のガスを添加した混合ガスを用いることもできる。
また、イオン主体のドライエッチングが可能な材料とは、上述のフッ素系ガスや実質的に酸素を含まない塩素系ガスを用いてドライエッチングできる材料であって、具体的には、タンタル(Ta)、タングステン(W)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、パラジウム(Pd)、モリブデン(Mo)、珪素(Si)やこれらの化合物が挙げられる。さらに、上述の材料に、酸素、窒素、炭素、水素、フッ素が含まれていても構わない。
【0043】
また、本発明において、前記薄膜は、実際に透過型マスクブランクや、反射型マスクブランクにおいて使用される露光光に対して光学的変化をもたらす薄膜と同じ材料を使用しても構わない。
透過型マスクブランクにおいては、露光光を遮光させる機能を有する遮光膜、被転写体等との多重反射を抑制させるため、表面の反射を抑制させる機能を有する反射防止膜、パターンの解像性を高めるため露光光に対して所定の位相差を生じさせる機能を有する位相シフト膜等が挙げられ、これらの膜単独又は複数層積層させた積層膜とすることもできる。また、反射型マスクブランクにおいて、薄膜とは、露光光を吸収させる機能を有する吸収体膜、露光光や欠陥検査光における多層反射膜とコントラストを向上させるために、露光光の反射を低減させる反射低減膜、上述の吸収体膜のパターニング時の多層反射膜に対するエッチングダメージを防止するためのバッファー層、露光光を反射させるための多層反射膜などが挙げられる。
また、欠陥評価用マスクブランクの用途としては、LSI(半導体集積回路)用、LCD(液晶表示板)用、FPD用(有機ELパネルを含む)などが挙げられる。
【0044】
また、本発明においては、露光光源としては、波長180nm〜500nmの領域内に分光分布における相対強度の高い領域を有する露光光源が好ましい(構成2)。
本発明において、露光光源の光強度(照度、光量)は、露光光源、露光装置によって異なる。
例えば、露光光源としては、上述の高圧水銀(UV)ランプを使用する場合においては、照射エネルギーを500mJ/cm
2以上750mJ/cm
2以下の範囲で設定することが好ましい。また、KrFエキシマレーザを使用する場合においては、照射エネルギーを4.0mJ/cm
2以上10.0mJ/cm
2以下の範囲で設定することが好ましい。
具体的には、化学増幅型レジスト(構成3)の場合、ベース樹脂として、ポリヒドロキシスチレン(p-hydroxystyrene、PHS)樹脂が一般的に使用され、その場合、露光光源としては、波長248nm、365nmを含む光源を使用することが好ましく、露光エネルギーは、波長248nm相当で、4.5mJ/cm
2以上とすることが好ましい。さらに好ましくは、4.5mJ/cm
2以上8.0mJ/cm
2以下が望ましい。
【0045】
また、本発明においては、ポジ型レジストは、化学増幅型レジストであることが好ましい(構成3)。
また、本発明において、化学増幅型レジストを使用する場合、前記全面露光処理後、露光後ベーク(Post Exposure Bake)処理されていることが更に好ましい(構成4)。特に、電子線描画用レジストにおいて、露光光源として波長180nm〜500nmの領域内に分光分布における相対強度の高い領域を有する露光光源を使用する場合、露光後ベーク処理を行うことで、現像液を供給した時の溶解速度が向上する。さらに、溶解速度などの現像作用等の条件が電子線描画をした時と同様の条件となるために、よりマスク製造プロセスに近い欠陥性能評価ができるので好ましい。
【0046】
本発明は、前記薄膜は、イオン主体のドライエッチングが可能なドライエッチングガスでエッチングが可能な材料からなる場合(構成5)、さらに好ましくは、タンタルを含む材料の場合(構成6)において、より効果的である。
イオン主体のドライエッチングが可能なドライエッチングガスや、イオン主体のドライエッチングが可能な材料については、上述で説明した通りである。
【0047】
また、構成6にあるように、他の薄膜(例えばクロムを含む材料)に比べ、タンタルを含む材料からなる薄膜(タンタル系薄膜)は、中性から弱アルカリ性領域においてゼータ電位が数十mV高いので、現像液で溶解したレジストの析出物が薄膜に再付着しやすい。また、他の薄膜(例えばクロムを含む材料)に比べ、タンタル系薄膜の方が現像後の欠陥のサイズが大きい傾向がある。従って、欠陥評価用マスクブランクに形成する薄膜、特に、レジスト膜に接する薄膜は、タンタルを含む材料で形成されることが望ましい。
タンタルを含む材料としては、例えば、Ta、TaO、TaON、TaN、TaCN、TaOCN、TaC、TaB、TaBO、TaBON、TaBN、TaBC、TaBCN、TaBOCN等が挙げられる。
タンタルを含む材料からなる薄膜は、透過型マスクブランクにおける遮光性膜や、反射型マスクブランクにおける吸収体膜等に用いられる。
【0048】
本発明において、基板材料は限定されないが、実際に透過型マスクブランクや反射型マスクブランクで使用する基板材料とすることが好ましい。透過型マスクブランクの場合、露光光を透過する材料であれば良く、例えば、合成石英ガラスが挙げられ、反射型マスクブランクの場合の基板材料としては、露光光の吸収による熱膨張を防止するための材料であれば良く、例えば、TiO
2−SiO
2低膨張ガラスが挙げる。そして、反射型マスクブランクにおける基板には、該基板上に露光光を反射させるための多層反射膜(Mo/Si多層反射膜)が形成された多層反射膜付き基板が含まれる。
【0049】
また、上述の構成1〜6の欠陥評価用マスクブランクの製造方法は、基板の主表面上に薄膜を形成する薄膜形成工程と、前記薄膜表面の欠陥情報を取得するレジスト形成前薄膜欠陥情報取得工程と、前記薄膜表面にポジ型レジストからなるレジスト膜を形成するレジスト膜形成工程と、前記レジスト膜に、感光可能な露光光源にて全面露光処理する全面露光処理工程と、を有することを特徴とする(構成7)。
【0050】
上述のように、構成1〜6の欠陥評価用マスクブランクは、レジスト形成前に薄膜表面の欠陥情報を取得するレジスト形成前薄膜欠陥情報取得工程を有することが好ましい。該工程で取得した薄膜欠陥情報は、欠陥評価用マスクブランクを使った欠陥評価方法において、薄膜表面処理工程以降のプロセス(レジスト塗布プロセス、レジスト塗布前処理プロセス、加熱処理プロセス、冷却処理プロセス、露光処理プロセス、現像処理プロセス、リンス処理プロセス、エッチングプロセス等)により増加した欠陥評価の際のリファレンスとして使用することができる。
上述のレジスト形成前薄膜欠陥情報は、レジスト形成前に前記薄膜表面の検査を行うことによって、欠陥情報を取得しても良い。
また、欠陥情報の取得は、マスクブランク欠陥検査装置(例えば、M1350、M2351、M6640等:レーザーテック社製)により欠陥検査を行うことで得られる。上記マスクブランク欠陥検査装置は、検出すべき欠陥の種類や特性に応じて検出感度が有利な欠陥検査装置を選定することが好ましい。例えば、レジスト膜に対して全面露光処理を行い、現像処理した後の薄膜表面の欠陥情報を取得する場合は、上述のM2351を使用することができ、薄膜をさらに全面エッチングして除去した基板表面の欠陥情報を取得する場合は、上述のM1350を使用することができる。
上述のレジスト形成前薄膜欠陥情報は、構成1〜6の欠陥評価用マスクブランクと対応付けを行い、レジスト形成前薄膜欠陥情報付き欠陥評価用マスクブランクとして使用することができる。
【0051】
また、本発明においては、ポジ型レジストは、化学増幅型レジストであって、前記全面露光処理工程後、露光後ベーク(Post Exposure Bake)を行う露光後ベーク処理工程を更に有することを特徴とする(構成8)。
上述と同様に、電子線描画用レジストにおいて、露光光源として波長180nm〜500nmの領域内に分光分布における相対強度の高い領域を有する露光光源を使用する場合、露光後ベーク処理を行うことで、現像液を供給した時の溶解速度が向上する。さらに、溶解速度などの現像作用等の条件が電子線描画をした時と同様の条件となるために、よりマスク製造プロセスに近い欠陥性能評価ができるので好ましい。
また、本発明の欠陥評価用マスクブランクを使用して以下のような欠陥性能の評価をすることができる。
具体的には、薄膜やレジストの材料・種類・品質や、レジスト塗布前処理プロセス(塗布前処理条件)、現像プロセス(現像条件)等の評価が可能であり、特定の形状のパターンにのみ欠陥が発生するパターン依存性のある欠陥の評価を除く評価が可能となる。
【0052】
例えば、レジスト塗布前処理プロセス等のマスクブランク製造プロセスの最適化等においては、上述の構成1〜6の欠陥評価用マスクブランクを使用し、
前記薄膜に対して表面処理がなされ、該表面処理の面処理条件が異なる複数枚の欠陥評価用マスクブランクを準備する工程と、
前記欠陥評価用マスクブランクの前記レジスト膜表面に現像液を供給し、前記レジスト膜を現像し、前記レジスト膜を全面除去する工程と、
前記薄膜表面の欠陥情報を取得する工程と、を有し、
前記処理条件と前記欠陥情報との対応関係の中から、所定の欠陥品質が得られる前記処理条件を選定することができる(構成9)。つまり、上述の構成1〜6の欠陥評価用マスクブランクを使用することで、欠陥が発生しにくいレジスト塗布前処理プロセス(塗布前処理条件)の最適化が行える。これにより、欠陥の発生しにくいマスクブランクを得ることができる。
【0053】
また、新規レジスト材料開発等においては、上述の構成1〜6の欠陥評価用マスクブランクを使用し、
レジスト材料が異なる複数枚の欠陥評価用マスクブランクを準備する工程と、
前記欠陥評価用マスクブランクの前記レジスト膜表面に現像液を供給し、前記レジスト膜を現像し、前記レジスト膜を全面除去する工程と、前記薄膜表面の欠陥情報を取得する工程と、を有し、
前記レジスト材料と前記欠陥情報との対応関係の中から、所定の欠陥品質が得られる前記レジスト材料を選定することができる(構成10)。つまり、欠陥が発生しにくいレジスト材料の評価・選定が行える。これにより、欠陥の発生しにくいレジスト材料を選定(スクリーニング)することができる。
【0054】
また、現像プロセスやエッチングプロセス等のマスク製造プロセスの最適化等においては、上述の構成1〜6の欠陥評価用マスクブランクを使用し、
前記欠陥評価用マスクブランクの前記レジスト膜表面に、現像プロセスが異なる条件にて現像液を供給し、前記レジスト膜を現像し、前記レジスト膜を全面除去する工程と、
前記薄膜表面の欠陥情報を取得する工程と、を有し、
前記現像プロセス条件と前記欠陥情報との対応関係の中から、所定の欠陥品質が得られる前記現像プロセス条件を選定することができる(構成11)。つまり、欠陥が発生しにくい現像プロセス(現像プロセス条件)の最適化が行える。これにより、欠陥の発生しにくいマスクを得ることができる。
【0055】
尚、マスク製造の際には、現像プロセス後のレジスト残渣は、薄膜のエッチング工程で除去されるものも多く、マスク製造プロセスの最適化においては、
前記レジスト膜を全面除去する工程の後、前記薄膜をエッチングにより全面除去する工程と、を有し、
前記薄膜をエッチングにより除去した前記基板表面の欠陥情報を取得することが好ましい。この場合においては、前記薄膜表面の欠陥情報を取得する工程は、省略しても良い。
【0056】
上述のように、本発明によれば、欠陥評価用マスクブランクを使用して様々な欠陥評価が行えるので、欠陥が少ないような薄膜の組成、薄膜に対する処理、レジストにおける諸条件(レジスト材料、レジスト塗布前処理、加熱処理、冷却処理)、マスクブランクの作製方法・作製条件、マスクの作製方法・作製条件(例えば、現像プロセス、エッチングの条件)を最適化し、選定することができる。
また、上述以外にも、本発明によれば、欠陥評価用マスクブランクを使用することで、レジストとその下地の薄膜との相関関係を評価することもできる。例えば、レジスト材料とその下地の薄膜材料との組み合わせに対し、いずれの組み合わせが、欠陥が発生しやすいか(または欠陥が発生しにくいか)を評価できる。
【0057】
また、本発明によれば、上述の構成9〜11に記載の欠陥評価方法において、前記レジスト膜を全面除去する工程の後、前記薄膜をエッチングにより全面除去する工程と、を有し、前記薄膜表面の欠陥情報の取得は、前記薄膜をエッチングにより全面除去した前記基板表面の欠陥情報を取得しても良い(構成12)。
【実施例】
【0058】
次に、本発明の実施例について説明する。
(実施例1):欠陥評価用マスクブランク
本実施例の欠陥評価用マスクブランクは、合成石英ガラス基板/TaN層とTaO層の積層膜(薄膜)/ポジ型化学増幅型レジスト(全面露光処理済み)の構成を有する。
本実施例の欠陥評価用マスクブランクは、半導体デザインルールDRAMハーフピッチ32nmノード対応のArFエキシマレーザー露光用のバイナリーマスクブランクの欠陥を評価するためのものであり、基板上に形成する薄膜は、バイナリーマスクブランクの遮光膜(遮光層と反射防止層の積層膜)と同じ膜構成、膜厚とすることができる。
本実施例の欠陥評価用マスクブランクは、例えば、約152mm×約152mmサイズの合成石英ガラス基板上に、実質的にタンタルと窒素とからなるTaNの遮光層(膜厚:42nm)と、実質的にタンタルと酸素とからなるTaOの反射防止層(膜厚:9nm)の積層膜(薄膜)を有し、この積層膜(薄膜)上に、ポジ型の化学増幅型レジスト(PRL009:富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)を有する。このポジ型の化学増幅型レジストは、DeepUVランプにより全面露光処理されている。
【0059】
(実施例2−1、2−2):欠陥評価用マスクブランクの製造方法
本実施例の欠陥評価用マスクブランクの製造方法は、薄膜形成後、薄膜表面の欠陥情報取得し、ポジ型化学増幅型レジストをスピンコーターで塗布し、プリベークし、冷却し、全面露光(DeepUVランプ:248nm、365nm波長帯含む)する。好ましくはこれに続けてPEB処理する。
本実施例の欠陥評価用マスクブランクの製造方法は、例えば、約152mm×約152mmサイズの合成石英ガラス基板上に、実質的にタンタルと窒素とからなるTaNの遮光層(膜厚:42nm)と、実質的にタンタルと酸素とからなるTaOの反射防止層(膜厚:9nm)の積層膜(薄膜)形成する。
次に、この積層膜(薄膜)表面を、マスクブランク欠陥検査装置(例えば、M1350:レーザーテック社製)により欠陥検査を行う。欠陥検査の結果、例えば、このマスクブランク表面に60nm以上のサイズのパーティクルやピンホールの欠陥数に関する欠陥情報が取得される。
次に、この積層膜(薄膜)上に、ポジ型の化学増幅型レジスト(PRL009:富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)をスピンコーティングにより塗布した後、プリベークを行い、冷却して、レジスト膜を形成し、このレジスト膜をDeepUVランプにより全面露光処理する(以上は実施例1−1)。これに続き、実施例2−2では、露光後ベーク(Post Exposure Bake:PEB)処理を行う。PEB処理の条件は110℃で10分とした。
実施例2−1(PEB処理無し)と実施例2−2(PEB処理有り)のレジスト膜について、塗布後、全面露光後、PEB後、現像後の各膜厚(Å)、現像による膜厚の減少(Film loss)(Å)、および、現像液による溶解速度(Å/sec)を比較したデータを
図2に示す。
なお、現像は、基板を静止した状態(0rpm)にて、90度の角度をなす2辺の交点付近を軸Oとして往復角運動するスリットノズルを1辺から他辺へ57度移動させ(1スキャン)、基板をスリットノズルでスキャンしながら、現像液を帯状(カーテン状)に吐出する方式で行った。現像時間は15秒とした。現像液は、東京応化工業(株)社製NMD−W(2.38%TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドの水溶液、界面活性剤入り、)とした。
図2から、全面露光後にPEB処理を実施した場合は、PEB処理を実施しなかった場合に比べ、3倍以上溶解速度が速いことがわかった。
【0060】
次に、本発明に係る薄膜の表面処理の条件の選定方法について説明する。
(実施例3〜5、比較例1):薄膜の表面処理の条件の選定方法
本実施例で使用する欠陥評価用マスクブランクとして、上述の実施例1に記載の欠陥評価用マスクブランクを複数枚用意した。
次に、エッチング阻害物質の濃度が異なる複数種の洗浄液を用いて、上述の欠陥評価用マスクブランクの洗浄を行った。尚、マスクブランクの洗浄は、スピン洗浄により行った。尚、洗浄液B、C、Dを使用した洗浄後、洗浄液Aを用いたリンスも実施した。尚、エッチング阻害物質の濃度は、マスクブランク表面に供給する直前の洗浄液について、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−MS)法により測定を行い、検出限界以上の元素はカルシウムのみであった。
【0061】
複数種の洗浄液としては、洗浄液A:DI水(カルシウム濃度:0.001ppb)(実施例3)、洗浄液B:界面活性剤B含有アルカリ性洗浄液(カルシウム濃度:0.01ppb)(実施例4)、洗浄液C:界面活性剤E含有アルカリ性洗浄液(カルシウム濃度:0.3ppb)(実施例5)、洗浄液D:界面活性剤F含有アルカリ性洗浄液(カルシウム濃度:1ppb)(比較例1)を使用した。
次に、上述の洗浄液により洗浄を行った欠陥評価用マスクブランクの、表面に、ポジ型の化学増幅型レジスト(PRL009:富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)をスピンコーティングにより塗布した後、プリベークを行い、レジスト膜を形成した。
次に、レジスト膜に対して上述の実施例2−2の条件で全面露光処理、PEB、現像・リンス処理を行った。
次に、欠陥評価用マスクブランクのTaO層を、フッ素系(CF4)ガスを用いたドライエッチングを行い除去した後、さらに、塩素系(Cl2)ガスを用いたドライエッチングを行い、TaN層を除去した。
次に、エッチング後の基板表面について、マスクブランク欠陥検査装置(M1350:レーザーテック社製)を用いて、欠陥の個数を取得した。
その結果、基板上(測定領域:132mm×132mm)に存在している凸部の個数を調べたところ、洗浄液Aの場合、17個(実施例3)、洗浄液Bの場合35個(実施例4)、洗浄液Cの場合139個(実施例5)、洗浄液Dの場合964個(比較例1)となり、洗浄液に含まれるカルシウム濃度が少なくなるに従って、凸部の個数も少ない結果となった。
次に、上述の実施例、比較例で使用した欠陥評価用マスクブランクとは別の上述と同じ膜構成のマスクブランクを準備し、上述と同様に洗浄液A〜Dの洗浄液を用いて、それぞれ洗浄処理を行った。
次に、洗浄処理を行った欠陥評価用マスクブランク表面に、ポジ型の化学増幅型レジスト(PRL009:富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)をスピンコーティングにより塗布した後、プリベークを行い、レジスト膜を形成した。
次に、レジスト膜に対して描画・現像・リンスを行い、マスクブランク表面にレジストパターンを形成し、レジストパターンをマスクにしてフッ素系(CF
4)ガスを用いたドライエッチングを行い、反射防止層をパターニングして反射防止層パターンを形成し、その後、塩素系(Cl
2)ガスを用いたドライエッチングを行い、反射防止層パターンをマスクにして遮光層をパターニングして遮光層パターンを形成し、最後にレジストパターンを除去して、マスクを作製した。
この得られたマスクについて、マスク欠陥検査装置(KLA−Tencor社製)を用いて転写パターン形成領域内(132mm×104mm)の欠陥検査を行ったところ、100nm以下の黒欠陥は、4個(洗浄液A:実施例3)、9個(洗浄液B:実施例4)、32個(洗浄液E:実施例5)、146個(洗浄液F:比較例1)であった。洗浄液A〜Cの洗浄液を使用して洗浄したマスクブランクを用いて作製されたマスクは、欠陥数が50個以下となり、マスクの欠陥修正の負荷が少なく良好な結果が得られた。一方、洗浄液Dの洗浄液を使用したマスクブランクを用いて作製されたマスクは、欠陥数が多数存在し、マスクの欠陥修正の負荷が大きく、事実上欠陥修正が困難な結果となった。
上記の結果から、実施例3、4、5の薄膜処理条件を選定した。
【0062】
(実施例6−1、6−2、比較例2):レジスト材料選定方法
実施例2−2において、実施例2−2で使用したポジ型の化学増幅型レジスト(PRL009:富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)に替えて、実施例6−1、6−2、比較例2では、界面活性剤の含有量が異なるポジ型の化学増幅型レジストA(界面活性剤なし(0%)、実施例6−1)、ポジ型の化学増幅型レジストB(界面活性剤含有X%)、比較例2ではポジ型の化学増幅型レジストC(界面活性剤含有Y%)をそれぞれ使用したこと以外は、実施例2−2と同様とした。(尚、界面活性剤含有量は、X<Yとした。)
レジスト膜を全面除去した後に、マスクブランク欠陥検査装置(M2351:レーザーテック社製)により欠陥検査を行ったところ、このマスクブランク表面の薄膜上の異物(レジスト残渣)の個数は、実施例6−1のポジ型の化学増幅型レジストAを使用した場合5個(評価○)、実施例6−2のポジ型の化学増幅型レジストBを使用した場合4個(評価○)、比較例2のポジ型の化学増幅型レジストCを使用した場合70個(評価×)、となった。
薄膜を全面除去した後に、得られたガラス基板について、マスクブランク欠陥検査装置(M1350:レーザーテック社製)を用いて、転写パターン形成領域内(132mm×132mm)の欠陥検査を行った。その結果、60nm以上100nm未満のサイズの黒欠陥個数は、実施例6−1のポジ型の化学増幅型レジストAを使用した場合151個(評価△)、実施例6−2のポジ型の化学増幅型レジストBを使用した場合252個(評価○)、比較例2ポジ型の化学増幅型レジストCを使用した場合821個(評価×)、となった。
上述の実施例3〜5と同様に、欠陥評価用マスクブランクとは別の上述と同じ膜構成のマスクブランクを準備し、得られた各マスクについて、マスク欠陥検査装置(KLA−Tencor社製)を用いて、転写パターン形成領域内(132mm×132mm)の欠陥検査を行った。その結果、100nmサイズ未満の黒欠陥個数は、実施例6−1のポジ型の化学増幅型レジストAを使用した場合27個(評価○)、実施例6−2のポジ型の化学増幅型レジストBを使用した場合41個(評価○)、比較例2のポジ型の化学増幅型レジストCを使用した場合129個(評価×)となった。
実施例6−1、6−2、比較例2の比較から、本願方法により、タンタル系の薄膜に関し、欠陥低減の観点からは、レジストAが最も適し、レジストBは次に適し、レジストCは適さないことがわかる。このように、本発明によれば、欠陥の出にくいレジストを評価でき、これにより、欠陥の出にくいレジストを選別でき、使用できる。
上記の結果から、レジストAを選定した。
【0063】
(実施例7):現像プロセス条件選定
まず、本実施例で使用する欠陥評価用マスクブランクとして、上述の実施例1に記載の欠陥評価用マスクブランクを用意した。
尚、上述のマスクブランクは、マスクブランクの欠陥検査では検出されない潜在化したマスクブランク欠陥を防止するために、界面活性剤を含有するアルカリ性洗浄液(カルシウム濃度:0.3ppb)を用いたスピン洗浄の後、DIW(脱イオン化水)(カルシウム濃度:0.001ppb)を用いたリンスを実施したものを準備した。尚、上述のカルシウム濃度は、マスクブランク表面に供給する直前の洗浄液について、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-MS:Inductively Coupled Plasma-Mass Spectroscopy)により測定した。
【0064】
次に、上記マスクブランク表面に、ポジ型の化学増幅型レジスト(PRL009:富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製)をスピンコーティングにより塗布した後、プリベークを行い、レジスト膜を形成した。
次に、レジスト膜に対して電子線描画装置を用いて描画を行った。描画パターンは、100nmのラインアンドスペース(L&S)パターンとした。
【0065】
次に、静止スキャン方式のパドル現像を行った。現像工程では、
図4(1)に示すように、基板を静止した状態(0rpm)にて、図示のように90度の角度をなす2辺の交点付近を軸Oとして往復角運動するスリットノズルを1辺から他辺へ90度移動させ、基板をスリットノズルでスキャンしながら、現像液を帯状(カーテン状)に吐出する(
図3の現像時間6.0秒まで参照)。
その後、基板をゆっくり90度回転させる(
図3の現像時間16.5秒まで参照)。その後、
図4(1)に示すように、基板を静止した状態にて、スリットノズルで、基板をスキャンしながら、現像液を帯状(カーテン状)に吐出する(
図3の現像時間22.5秒まで参照)。
以上の工程を2回繰り返し、基板の4辺について、静止スキャン方式で現像を行った。
現像液は、アルカリ性の現像液であって、東京応化工業(株)社製NMD−W(2.38%TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、界面活性剤入り、)を用いた。
現像液の流量は約2800ml/min、総流量は約1120mlとした。現像液の温度は室温(約23℃)とした。
【0066】
次に、アルカリ洗浄工程(第1洗浄工程)を実施した。アルカリ洗浄工程では、
図4(2)に示すように、基板を回転させながら、スリットノズルで、図示のように基板を往復スキャンしながら、上記現像液をカーテン状に吐出する。また、基板を約10秒間で往復スキャンする間に、基板の回転数を15rpmで5秒間保ち、1秒間で15rpmから30rpmに変化させ(角加速度は1.6rad/s
2)、基板の回転数を30rpmで約5秒間保ち(
図3の経過時間71.5秒まで参照)、これらの工程を2回繰り返した(
図3の経過時間81.5秒まで参照)。
アルカリ洗浄工程における現像液の流量は約2800ml/min、総流量は約930mlとした。現像液の温度は室温(約23℃)とした。
【0067】
次に、リンス工程を行った。リンス工程(第2洗浄工程)では、
図5左側に示すように、スリットノズルを基板の中心を通る位置に静止した状態で、基板を回転させながら、リンス液を帯状(カーテン状)に吐出する。基板の回転数は、経過時間0から2秒で回転数を0から75rpmまで増加させ、5秒間で回転数を75rpmから300rpmに変化させ(角加速度は4.7rad/s
2)、回転数を300rpmで40秒間保つ(
図5の経過時間47.0秒まで参照)。続いて、5秒間で回転数を300rpmから400rpmに変化させ(角加速度は2.1rad/s
2)、回転数を400rpmで40秒間保つ(
図5の経過時間92.0秒まで参照)。続いて、3秒間で回転数を400rpmから300rpmに変化させ(角加速度は−3.5rad/s
2)、回転数を300rpmで42秒間保つ(
図5の経過時間137.0秒まで参照)。続いて、5秒間で回転数を300rpmから75rpmに変化させ(角加速度は−4.7rad/s
2)、回転数を75rpmで40秒間保ちつつ、
図5右側に示すように、スリットノズルを基板の中心を通る位置から基板端(辺)を通る位置の間で往復スキャンした状態で、基板を回転させながら、リンス水を帯状(カーテン状)に吐出する(
図5の経過時間182.0秒まで参照)。
リンス水は、DIW(脱イオン化水)とCO
2水(比抵抗3μS)との混合水とし、流量比はDIW:CO
2水=2:1とした。
リンス水の流量は約2800ml/min、総流量は約8400mlとした。リンス水の温度は室温(約23℃)とした。
続いて、1000rpmで90秒間スピン乾燥を行った。このうち最初の30秒間は、基板の回転数を75rpmから1000rpmまで増加させる加速時間である。
以上の工程を経て、マスクブランク表面に100nmのラインアンドスペース(L&S)のレジストパターンを形成した。
走査型顕微鏡で100nmのラインアンドスペース(L&S)のレジストパターンを観察したところ、レジストパターンのエッジ、及び、薄膜(スペース)上に、析出物(レジスト残渣)は観察されなかった(
図6参照)。
【0068】
次に、レジストパターンをマスクにしてフッ素系(CF
4)ガスを用いたドライエッチングを行い、TaO層をパターニングしてTaO層パターンを形成し、その後、塩素系(Cl
2)ガスを用いたドライエッチングを行い、TaO層パターンをマスクにしてTaN層をパターニングしてTaN層パターンを形成し、最後にレジストパターンを除去して、マスクを作製した。
【0069】
この得られたマスクについて、マスク欠陥検査装置(KLA−Tencor社製)を用いて、転写パターン形成領域内(132mm×132mm)の欠陥検査を行った。その結果、100nmサイズ未満の黒欠陥個数は、19個となった。
【0070】
(比較例3)
実施例7において、現像工程及びリンス工程の間のアルカリ洗浄工程を実施しないこと以外は実施例7と同様とした。
走査型顕微鏡で100nmのラインアンドスペース(L&S)のレジストパターンを観察したところ、レジストパターンのエッジ、及び、薄膜(スペース)上に、析出物(レジスト残渣)が観察された(
図7参照)。
得られたマスクについて、マスク欠陥検査装置(KLA−Tencor社製)を用いて、転写パターン形成領域内(132mm×132mm)の欠陥検査を行った。その結果、100nmサイズ未満の黒欠陥個数は、812個となった。
上記の結果から、実施例7の現像プロセス条件を選定した。
尚、上述の実施例、比較例では、薄膜をエッチングにより全面除去した後の基板表面の欠陥情報を取得して、各種処理条件の選定やレジスト材料の選定を行ったがこれらに限らない。レジスト膜を全面除去した後の薄膜表面の欠陥情報を取得し、各種処理条件やレジスト材料と、欠陥情報との対応関係の中から好ましい処理条件、レジスト材料を選定しても良い。