(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989387
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】円筒状ゴム部材の成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 47/92 20060101AFI20160825BHJP
B29D 30/30 20060101ALI20160825BHJP
B29L 23/00 20060101ALN20160825BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20160825BHJP
【FI】
B29C47/92
B29D30/30
B29L23:00
B29L30:00
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-92853(P2012-92853)
(22)【出願日】2012年4月16日
(65)【公開番号】特開2013-220569(P2013-220569A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2015年4月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北村 崇
【審査官】
辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−234707(JP,A)
【文献】
特開2011−173369(JP,A)
【文献】
特開2008−023847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C47/00−47/96
B29D30/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出機により金型を介して押し出したゴムを回転支持体に巻き付け、巻き始め部と巻き終わり部を接合して円筒状に成形する円筒状ゴム部材の成形方法であって、
金型を回転支持体に接近させる準備工程と、
接近させた金型からゴムの押し出しを開始するのと同時に回転支持体の回転を開始し、ゴムの押出量を所定量まで徐々に増加させるとともに、金型の回転支持体からの距離を円筒状ゴム部材の所望の厚みと同一である所定距離まで徐々に大きくすることにより、断面楔状の巻き始め部を成形する巻き始め工程と、
ゴムの押出量を前記所定量に維持し、金型の回転支持体からの距離を前記所定距離に維持することにより、ゴムを巻き付けていく巻き付け工程と、
金型の回転支持体からの距離を前記所定距離に維持したまま、ゴムの押出量を前記所定量から徐々に減少させることにより、前記巻き始め部の上に断面楔状の巻き終わり部を成形する巻き終わり工程とを備えることを特徴とする円筒状ゴム部材の成形方法。
【請求項2】
単位時間あたりのゴムの押出量は、金型と回転支持体の表面との隙間を回転方向から見た面積に、回転による回転支持体の表面の単位時間あたりの移動距離を乗じた体積に等しくなるように設定されることを特徴とする請求項1に記載の円筒状ゴム部材の成形方法。
【請求項3】
一対のギアを有するギアポンプが押出機と金型の間に設けられており、プログラム運転された前記ギアの回転数に対してギアポンプの入口側の圧力が一定となるように、押出機に内蔵されたスクリューの回転数がPID制御され、前記PID制御のパラメータは、前記準備工程、巻き始め工程、巻き付け工程、及び巻き終わり工程の各工程でそれぞれ異なることを特徴とする請求項1又は2に記載の円筒状ゴム部材の成形方法。
【請求項4】
前記円筒状ゴム部材は、厚みが3.0mm以下、幅が150mm以上の薄肉幅広の断面形状を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の円筒状ゴム部材の成形方法。
【請求項5】
前記準備工程において、金型を回転支持体に0.1mm以下まで接近させることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の円筒状ゴム部材の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出機により金型を介して押し出したゴムを回転支持体に巻き付け、巻き始め部と巻き終わり部を接合して円筒状に成形する円筒状ゴム部材の成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤの製造方法において、例えばキャップトレッドでは、押出機からコンベア上にゴムを押し出してタイヤ1本分の長さに切断し、それを成形工程に搬送し、予め成形されたファーストケースと呼ばれるベルト部材上に円筒状に貼り合せて成形している(例えば、下記特許文献1)。
【0003】
また、押出機から押し出されたストリップ状のリボンゴムを、成形ドラムにて螺旋状に巻き付けながら所望の形状に積層して成形する方法も知られている(例えば、下記特許文献2)。
【0004】
さらに、円筒状基礎部材を成形した後の成形ドラムの外周面上に複数台のダイスを配置して、これらのダイスに近接した押出機からゴムを押し出し、ドラムを回転駆動させながらダイスにより挟圧して円筒状基礎部材上に巻き付ける方法もある(例えば、下記特許文献3)。
【0005】
特許文献1の成形方法では、タイヤ1本分の長さにゴムを切断するために切断装置が別途必要であり、さらに、切断したゴムを貯蔵・搬送するためのスペースや搬送設備が必要な場合もあり、コストが嵩んでしまう問題がある。
【0006】
また、切断装置を用いて切断すると切断部付近で応力緩和が起こることにより、寸法変化が発生し、タイヤユニフォミティの悪化に繋がる。さらに、巻き始めと巻き終わりの接合部(ジョイント部)の厚みが増加してタイヤユニフォミティが悪化したり、接合部に段差が発生する事により加硫時のエアー入りや接合部の割れや剥離が生じたりする。
【0007】
特許文献2のストリップ状にリボンゴムを押し出してドラムに螺旋状に何周も巻き付ける工法ではサイクルタイムが長くなる傾向があり、それを避けるために高速の押出(せん断)速度で押し出しており、発熱によるゴムのヤケが懸念される。
【0008】
特許文献3の成形方法では、押出機からダイスまでの距離が離れているので、溶融されたゴム温度が狭圧するまでに下がる事によりゴム粘度が上昇する。その為所望のゴム厚みとなるようにゴムをダイスにより狭圧するのが難しく、特に接合部では段差が発生する事が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−71587号公報
【特許文献2】特開2002−46194号公報
【特許文献3】特開2004−82436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記のような実情に鑑みてなされたもので、その課題は、幅を一定に保ち、かつ巻き始めと巻き終わりの接合部での段差を無くして全周に亘って所望の厚みに成形可能な円筒状ゴム部材の成形方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため本発明に係る円筒状ゴム部材の成形方法は、押出機により金型を介して押し出したゴムを回転支持体に巻き付け、巻き始め部と巻き終わり部を接合して円筒状に成形する円筒状ゴム部材の成形方法であって、金型を回転支持体に接近させる準備工程と、接近させた金型からゴムの押し出しを開始するのと同時に回転支持体の回転を開始し、ゴムの押出量を所定量まで徐々に増加させるとともに、金型の回転支持体からの距離を円筒状ゴム部材の所望の厚みに相当する所定距離まで徐々に大きくすることにより、断面楔状の巻き始め部を成形する巻き始め工程と、ゴムの押出量を前記所定量に維持し、金型の回転支持体からの距離を前記所定距離に維持することにより、ゴムを巻き付けていく巻き付け工程と、金型の回転支持体からの距離を前記所定距離に維持したまま、ゴムの押出量を前記所定量から徐々に減少させることにより、前記巻き始め部の上に断面楔状の巻き終わり部を成形する巻き終わり工程とを備えることを特徴とする。
【0012】
かかる構成による円筒状ゴム部材の成形方法の作用効果を説明する。押出機により押し出したゴムを回転支持体に巻き付ける場合、押し出されたゴムが、金型と回転支持体の表面との隙間を擦り付けられるように通過すると、通過したゴムはその隙間の厚みとなる。すなわち、巻き始め工程では、ゴムの押出量を所定量まで徐々に増加させるとともに、金型の回転支持体からの距離を所定距離まで徐々に大きくすることにより、幅を一定に保ちながら、厚みが円筒状ゴム部材の所望の厚みまで徐々に厚くなった断面楔状の巻き始め部を成形することができる。また、巻き付け工程では、ゴムの押出量を所定量に維持し、金型の回転支持体からの距離を所定距離に維持することにより、幅を一定に保ちながら、巻き付けられたゴムを所望の厚みとすることができる。また、巻き終わり工程でも、金型の回転支持体からの距離を所定距離に維持することにより、巻き付けられたゴムを所望の厚みとすることができる。さらに、巻き終わり工程において、ゴムの押出量を所定量から徐々に減少させることにより、厚みが徐々に薄くなった断面楔状の巻き終わり部を成形することができ、この巻き終わり部を巻き始め部の上に重ねることで、幅を一定に保ちながら、巻き始めと巻き終わりの接合部での段差を無くすことができる。以上により、幅を一定に保ち、かつ巻き始めと巻き終わりの接合部での段差を無くして全周に亘って所望の厚みに円筒状ゴム部材を成形することができる。タイヤの製造において、本発明に係る円筒状ゴム部材の成形方法を用いることで、接合部での段差が無くなるため、加硫時のエアー入りが発生せず、かつユニフォミティの向上にも繋がる。
【0013】
本発明に係る円筒状ゴム部材の成形方法において、単位時間あたりのゴムの押出量は、金型と回転支持体の表面との隙間を回転方向から見た面積に、回転による回転支持体の表面の単位時間あたりの移動距離を乗じた体積に等しくなるように設定されることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、金型と回転支持体の表面との隙間を通過するゴムが、押出機により過不足なく押し出されるので、巻き始め工程、巻き付け工程、巻き終わり工程のいずれにおいてもゴムの幅を一定に保つことができる。
【0015】
本発明に係る円筒状ゴム部材の成形方法おいて、一対のギアを有するギアポンプが押出機と金型の間に設けられており、プログラム運転された前記ギアの回転数に対してギアポンプの入口側の圧力が一定となるように、押出機に内蔵されたスクリューの回転数がPID制御され、前記PID制御のパラメータは、前記準備工程、巻き始め工程、巻き付け工程、及び巻き終わり工程の各工程でそれぞれ異なることが好ましい。
【0016】
ギアポンプの入口側の圧力を一定としながらギアポンプを回転駆動させると、ギアの回転数に応じた量のゴムを金型から押し出すことができる。本発明によれば、各工程で押出量が異なる場合であっても、ギアポンプの入口側の圧力を安定して一定に保つことができる。これにより、巻き始め工程や巻き終わり工程において押出量を変化させる場合であっても、ギアの回転数を変化させるだけで正確に所望の押出量でゴムを押し出すことができるため、断面楔状の巻き始め部や巻き終わり部を精度良く成形できる。
【0017】
本発明は、厚みが3.0mm以下、幅が150mm以上の薄肉幅広の断面形状を有する円筒状ゴム部材の成形に特に有用である。例えば、薄肉幅広の断面形状を有する円筒状ゴム部材を成形するために、この断面形状に対応する形状の開口を有する金型を用いてゴムを押し出そうとすると、金型の入口圧や出口圧が非常に高くなるため金型を大きくして強度を上げる必要が生じたり、また、ゴム温度が高くなるためヤケが発生したりする可能性がある。しかし、上述した作用効果を奏する本発明によれば、金型の回転支持体からの距離によってゴムの厚みを決定できるため、薄肉幅広の断面形状を有する円筒状ゴム部材であっても、金型を大きくする必要はなく、またゴムのヤケも抑制できる。また、従来の押出では薄肉幅広の均一な厚みのゴムを得るには金型から吐出される際のゴム流速を揃える必要がある。しかしながら一般的に知られているコンピュータ解析では実現象と完全には一致せず、どうしても作業者の勘に頼ったりトライアル&エラーで金型流路調整の試行錯誤を繰り返さなければならならず、時間とコストがかかるばかりであった。本発明はゴム流速に関して解析結果と実現象を必ずしも一致させる必要はなく、押出幅方向に亘って少なくとも30%未満の差異であれば押し出されたゴムを擦り付ける方法でゴム厚みを均一にする事が出来る。
【0018】
本発明に係る円筒状ゴム部材の成形方法では、前記準備工程において、金型を回転支持体に0.1mm以下まで接近させることが好ましい。
【0019】
準備工程において金型を回転支持体の表面近くにまで接近させることで、巻き始め部を先端が略ゼロの断面楔状とすることができるため、接合部での段差を効果的に無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】円筒状ゴム部材を成形するための成形設備の構成の一例を示す模式図
【
図2】成形設備の制御システムの機能を示すブロック図
【
図3】円筒状ゴム部材を成形する際の手順の一例を示すフローチャート
【
図5】(a)は成形ドラムの回転角度とゴムの押出量との関係を示すグラフ、(b)は成形ドラムの回転角度と金型から成形ドラムまでの距離との関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、円筒状ゴム部材を成形するための成形設備の構成の一例を示す模式図である。
図1に示す成形設備は、押出機1、ギアポンプ10、金型11、成形ドラム(回転支持体に相当)2、及び制御装置3を備えている。
【0022】
押出機1は、円筒形のバレル1aと、バレル1aの供給口に接続されたホッパー1bと、ゴムを混練して先端側に送り出すスクリュー1cと、スクリュー1cを回転駆動させるスクリュー用モータ1dとを有する。スクリュー用モータ1dは、後述するように制御装置3により回転数が制御される。
【0023】
押出機1の押出方向先端側にはギアポンプ10が接続され、ギアポンプ10の先端側は金型11に接続されている。押出機1により混練されたゴム材料は、ギアポンプ10に供給され、ギアポンプ10は、金型11に対して定量のゴムを供給する。金型11からは所定の押出量でゴムSが押し出される。
【0024】
ギアポンプ10は、一対のギア10aを有しており、金型11に向けて出口側にゴムを送り出す機能を有する。一対のギア10aは、それぞれギア用モータ(不図示)によって回転駆動され、その回転数は、制御装置3により制御される。ギア用モータの回転数、及びスクリュー用モータ1dの回転数を制御装置3により連動させて制御することで、金型11から押し出されるゴムSの押出量を制御することができる。なお、図示の都合上、1対のギア10aは、
図1の上下方向に並べられているが、実際は平面方向(ギア10aの回転軸が
図1の上下となる方向)に並べてもよい。
【0025】
ギアポンプ10の入口側、すなわち押出機1に近い側には、第1圧力センサー12が設けられ、押出機1から供給されてくるゴムの圧力を検出する。また、ギアポンプ10の出口側には、第2圧力センサー13が設けられ、金型11から押し出されるゴムSの圧力を検出する。
【0026】
ギアポンプ10の入口側の圧力は、ギアポンプ10のギア10aと押出機1のスクリュー1cによるゴム送り量によって決定される。この入口側の圧力を一定に保つことで、ギアポンプ10は定量のゴムを金型11へ供給でき、金型11からの押出量も安定する。しかし、入口側の圧力が不安定であると、金型11からの押出量にばらつきが生じ、所望の寸法の円筒状ゴム部材を成形することが困難となる。
【0027】
ギアポンプ10の入口側の圧力を制御する方法としては、ギアポンプ10のギア10aの回転数と押出機1のスクリュー1cの回転数とをPID制御することが知られている。このPID制御は、一般的にゴムを定量で連続的に押し出す際に使用される。本発明の成形方法は、後述する準備工程、巻き始め工程、巻き付け工程、及び巻き終わり工程のような複数の工程を備えており、各工程でゴムの押出量が異なる。このような場合、ギア10aの回転数を固定してゴムを所定量で連続的に押し出す巻き付け工程におけるPID制御のパラメータを、ギア10aの回転数を大きく変化させて押出量を大きく変化させる巻き始め工程及び巻き終わり工程において用いると、入口側の圧力を一定に保つことができない。そのため、本実施形態では、PID制御のパラメータを、準備工程、巻き始め工程、巻き付け工程、及び巻き終わり工程の各工程でそれぞれ異ならせている。より具体的には、準備工程では、ギア10aは回転せずに停止しているが、それにも関わらず、入口側の圧力を一定に保つ必要があるため、スクリュー1cは微動し、回転数の変化量は少ない。よってPID制御が鈍感に反応する様にパラメータを定める。巻き付け工程では、ギア10aは高速で回転し、かつ入口側の圧力を一定に保つ必要があるため、スクリュー1cも高速で回転する。その際、混練作用により徐々にゴムが発熱し、ゴム粘度も低下していく。その影響で入口側の圧力も低下気味になり、それを補う様に高速域で外乱の影響に追従する様にPID制御を行なう。一方、巻き始め工程では、ギア10aの回転数の変化量が大きく、静止状態から瞬時に高速域までプログラム運転され、それにも関わらず入口圧側の圧力を一定に保つため、スクリュー1cの回転数も瞬時に追従する様な敏感に反応するパラメータを定める必要がある。巻き終わり工程は、巻き始め工程とは逆にギア10aの変化が高速域から静止状態まで瞬時に低下する様にプログラム運転される。その際にも、入口側の圧力を一定に保つため、スクリュー1cの回転数も瞬時に追従する様な敏感に反応するパラメータを定める必要がある。これらにより、すべての工程でギアポンプ10の入口側の圧力を略一定に安定して保つことができる。
【0028】
なお、本実施形態では、押出機1の押出方向先端側にギアポンプ10が接続された、いわゆる外付けギアポンプを用いる例を示している。ただし、これに替えて、押出機内にギアポンプを内蔵したギアポンプ内蔵型押出機を用いるようにしてもよい。ギアポンプ内蔵型押出機は、
図6の模式図に示すように、スクリュー1cの先端部にギア溝1eがあり、このギア溝1eとギアポンプ10のギア10aが噛み合うことにより、スクリュー1cの回転に伴ってギアポンプ10のギア10aが回転する構造になっており、スクリュー1cの回転を制御するだけでギアポンプ10の回転を制御することができ、定量で押し出すことができる。本発明において、ギアポンプ内蔵型押出機は、外付けギアポンプを接続した押出機に比べ、押出量を容易に制御することができ、なおかつギア用モータが不要なので押出機先端部がコンパクトになりより好ましい。
【0029】
成形ドラム2は、サーボモータ20(
図2参照)によりR方向に回転可能に構成されている。サーボモータ20の回転数は、制御装置3により制御される。成形ドラム2には、金型11を介して押し出されたゴムが供給され、ゴムが貼り付いた状態で成形ドラム2をR方向に回転駆動することにより、ゴムを周方向に沿って巻き付けることができる。なお、成形ドラム2に供給されたゴムを圧着する不図示の圧着ローラを設けてもよい。
【0030】
次に、本実施形態に係る成形設備の制御システムの機能に関して、
図2のブロック図により説明する。制御装置3は、成形設備の各部の動作を制御する機能を有する。
【0031】
スクリュー用モータ制御手段31は、第1圧力センサー12で検出されたギアポンプ10の入口側の圧力に基づいて、押出機1のスクリュー用モータ1dの回転数を制御する。ギア用モータ制御手段32は、予め定められた(時間の係数による)制御プログラムに基づいて、ギア用モータ10bの回転数を制御する。サーボモータ制御手段33は、サーボモータ20の回転数を制御する。
【0032】
押出機1、ギアポンプ10及び金型11は、一体として前後駆動装置14により押出方向の前後に移動可能に構成されており、成形ドラム2に対して近付いたり遠ざかったりすることができる。かかる前後の移動も、制御装置3の前後駆動装置制御手段34によって制御される。
【0033】
<円筒状ゴム部材の成形方法>
次に、上記の成形設備を用いて円筒状ゴム部材を成形する方法について説明する。本発明に係る円筒状ゴム部材の成形方法は、金型11を成形ドラム2に接近させる準備工程と、接近させた金型11からゴムSの押し出しを開始するのと同時に成形ドラム2の回転を開始し、ゴムSの押出量を所定量まで徐々に増加させるとともに、金型11の成形ドラム2からの距離を円筒状ゴム部材の所望の厚みに相当する所定距離まで徐々に大きくすることにより、断面楔状の巻き始め部を成形する巻き始め工程と、ゴムSの押出量を所定量に維持し、金型11の成形ドラム2からの距離を所定距離に維持することにより、ゴムSを巻き付けていく巻き付け工程と、金型11の成形ドラム2からの距離を所定距離に維持したまま、ゴムSの押出量を所定量から徐々に減少させることにより、巻き始め部の上に断面楔状の巻き終わり部を成形する巻き終わり工程とを備える。
【0034】
図3は、円筒状ゴム部材を成形する際の手順の一例を示すフローチャートである。
図4は、円筒所ゴム部材を成形する様子を示す概略図である。また、成形ドラム2の回転角度とゴムSの押出量との関係を
図5(a)に示す。また、成形ドラム2の回転角度と、金型11から成形ドラム2までの距離との関係を
図5(b)に示す。
【0035】
まず、押出機1、ギアポンプ10及び金型11を一体として前進させ(#1)、
図4(a)に示すように金型11を成形ドラム2に接近させる。このとき、金型11は、成形ドラム2の表面に所定の間隔D1まで接近させられる。D1は、0.1mm以下が好ましい。なお、金型11を成形ドラム2に接近させるタイミングは、ゴムSが金型11から押し出されるまでに前記の所定間隔が設けられるものであれば、特に制限されない。
【0036】
次に、前工程にて調整されたゴムSのゴム材料が、押出機1のホッパー1bに投入される。ここで、ゴム材料としては特に制限がなく、例えば、天然ゴム、スチレンーブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)などの汎用のゴム原料に、配合材料を常法にて混練し、加熱架橋を可能に調製したものが挙げられる。また、投入されるゴム材料の形状としては、特に制限がなく、例えば、リボン状、シート状、ペレット状などの形状が挙げられる。
【0037】
ホッパー1bに投入されたゴム材料は、押出機1のスクリュー1cによって混練され、押出方向先端側に送り出されてギアポンプ10に供給される(#2、3)。そして、ギアポンプ10に供給されたゴム材料は、回転する一対のギア10aによって、金型11に向けて出口側に送り出される(#4)。
【0038】
金型11に供給されたゴム材料は、金型11の開口からゴムSとして押し出される(#5)。
図4(b)のように、押し出されたゴムSの先端部が、成形ドラム2の外表面に貼り付いて固定された状態となると、
図4(c)のように、成形ドラム2の回転駆動が開始される(#6)。実際には、金型11からゴムSの押し出しを開始すると同時に(もしくは略同時に)成形ドラム2の回転を開始する。
【0039】
また、成形ドラム2の回転駆動の開始とほぼ同時に、ギア10aの回転数及びスクリュー1cの回転数を制御することで、金型11から押し出されるゴムSの押出量を所定量まで徐々に増加させる(#7)。さらに、ゴムSの押出量の増加とともに、
図4(c)のように金型11を徐々に後退させて、金型11の成形ドラム2からの距離を徐々に大きくする(#7)。これにより、ゴムSの巻き始め部S1は、断面楔状となる。
【0040】
より具体的には、
図5(a)のように、成形ドラム2の回転角度がθ度となるまで、ゴムSの押出量を所定量Q1まで徐々に増加させる。また、
図5(b)のように、成形ドラム2の回転角度がθ度となるまで金型11は徐々に後退し、金型11の成形ドラム2からの距離をD1から所定距離D2まで徐々に大きくする。
【0041】
その後は、ゴムSの押出量を所定量Q1に維持し、金型11の成形ドラム2からの距離を所定距離D2に維持したまま、成形ドラム2は回転駆動され続ける。ここで所定距離D2は、成形したい円筒状ゴム部材の所望の厚みに相当し、押し出されたゴムSは、金型11と成形ドラム2の表面との隙間を通過して、D2の厚みとなる。これにより、ゴムSは、巻き始め部S1が断面楔状となり、その後は、
図4(d)のように一定の厚みD2となる。
【0042】
そして、
図4(e)に示すように、ゴムSの巻き始め部S1が金型11に近づくと、ギア10aの回転数及びスクリュー1cの回転数を制御することで、金型11から押し出されるゴムSの押出量を所定量Q1から徐々に減少させる(#8)。
【0043】
より具体的には、
図5(a)のように、成形ドラム2の回転角度が360°となるまではゴムSの押出量を所定量Q1に維持し、回転角度が(360+θ)度になるまでに、ゴムSの押出量を所定量Q1から徐々に減少させる。このとき、
図5(b)のように、金型11の成形ドラム2からの距離は所定距離D2に維持する。これにより、
図4(f)に示すように、ゴムSは、巻き終わり部S2が断面楔状となり、この巻き終わり部S2を巻き始め部S1の上に重ねて成形する。これにより、巻き始め部S1と巻き終わり部S2の接合部の厚みがその他の部分の厚みと略同じとなった円筒状ゴム部材が成形される。
【0044】
最後に、
図4(g)に示すように、金型11は後退して、円筒状ゴム部材の成形が終了する(#9)。
【0045】
<別実施形態>
なお、本発明において、押し出したゴムSを成形ドラム2(回転支持体)に直接巻き付けるだけではなく、すでに成形ドラム2(回転支持体)に別のゴムが巻き付けられている場合には、その別のゴムの外表面にゴムSを巻き付けていくこともできる。
【0046】
また、上記の実施形態では、押出機1を前後に移動させて成形ドラム2に対して近付けたり遠ざけたりしているが、成形ドラム2を前後に移動させて押出機1に対して近付けたり遠ざけたりしても構わない。
【符号の説明】
【0047】
1 押出機
1c スクリュー
2 成形ドラム
3 制御装置
10 ギアポンプ
10a ギア
11 金型
12 第1圧力センサー
13 第2圧力センサー
14 前後駆動装置
20 サーボモータ
D2 所定距離
Q1 所定量
S ゴム
S1 巻き始め部
S2 巻き終わり部