特許第5989397号(P5989397)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5989397半導体装置の製造方法及び半導体接合用接着剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989397
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法及び半導体接合用接着剤
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20160825BHJP
【FI】
   H01L21/60 311S
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-107731(P2012-107731)
(22)【出願日】2012年5月9日
(65)【公開番号】特開2013-235974(P2013-235974A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2015年2月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】脇岡 さやか
(72)【発明者】
【氏名】中川 弘章
(72)【発明者】
【氏名】西村 善雄
【審査官】 堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】 再公表特許第2012/026431(JP,A1)
【文献】 特開2002−203427(JP,A)
【文献】 特開2011−214006(JP,A)
【文献】 特開2010−287836(JP,A)
【文献】 特開2011−202177(JP,A)
【文献】 特開2007−116079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
C09J 1/00 − 201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部が半田からなる突起電極が形成された半導体ウエハの突起電極形成面に、半導体接合用接着剤を供給する工程1、
前記半導体ウエハを個片化して、半導体接合用接着剤付き半導体チップを得る工程2、
前記半導体接合用接着剤付き半導体チップを裏面からボンディングツールに吸着保持させる工程3、
前記半導体接合用接着剤付き半導体チップと、基板とを位置あわせする工程4、
前記半導体接合用接着剤付き半導体チップを半田溶融点以上の温度に加熱して、前記半導体接合用接着剤付き半導体チップの突起電極と前記基板の電極部とを接合させると同時に、前記半導体接合用接着剤を仮接着させる工程5、及び、
前記半導体接合用接着剤を加圧雰囲気下で加熱して、ボイドを除去する工程6を有し、
前記半導体接合用接着剤は、熱硬化性樹脂、熱硬化剤及び高分子量化合物を含有し、常温(25℃)で液状の成分とガラス転移温度(Tg)が0℃以下の高分子量化合物とを合わせた含有量が5重量%以下であり、60〜100℃における溶融粘度が10kPa・s以下であり、かつ、プローブタック法で測定した25℃におけるタック値が10gf/5mmφ以下である
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
半導体接合用接着剤は、更に、無機フィラーを含有し、前記無機フィラーの含有量が40重量%以下であることを特徴とする請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
半導体接合用接着剤は、DSCにおける発熱開始温度が100℃以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の半導体装置の製造方法に用いられ、60〜100℃における溶融粘度が10kPa・s以下であり、かつ、プローブタック法で測定した25℃におけるタック値が10gf/5mmφ以下であることを特徴とする半導体接合用接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンディング装置への半導体接合用接着剤の付着及び汚染を抑制することができ、ボイドを抑制して高い信頼性を実現することができる半導体装置の製造方法に関する。また、本発明は、該半導体装置の製造方法に用いられる半導体接合用接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の小型化及び高密度化に伴い、半導体チップを基板に実装する方法として、表面に多数の突起電極が形成された半導体チップを用いたフリップチップ実装が注目され、急速に広まってきている。
フリップチップ実装においては、接合部分の接続信頼性を確保するための方法として、半導体チップの突起電極と基板の電極部とを接合した後に、半導体チップと基板との隙間に液状封止接着剤(アンダーフィル)を注入し、硬化させることが一般的な方法として採られている。しかしながら、アンダーフィルを用いたフリップチップ実装は、製造コストが高い、アンダーフィル充填に時間がかかる、電極間の距離及び半導体チップと基板との距離を狭めるのに限界がある等の問題を抱えている。
【0003】
そこで、近年、基板上にペースト状接着剤を塗布した後、半導体チップを搭載する方法、半導体ウエハ又は半導体チップ上に接着剤を供給した後、接着剤付き半導体チップを基板上に搭載する方法等のいわゆる先塗布型のフリップチップ実装が提案されている。特に接着剤付き半導体チップを基板上に搭載する場合には、半導体ウエハ上に接着剤を一括供給し、ダイシングによって接着剤付き半導体チップを一括で多量に生産できることから、大幅なプロセス短縮が期待される。
【0004】
しかしながら、先塗布型のフリップチップ実装では、半導体チップの突起電極と基板の電極部とを接触させる際に、半導体チップ又は基板と接着剤との間に空気を巻き込んでボイドを生じたり、半導体チップを基板上に搭載する際の熱圧着工程において、接着剤からの揮発成分によってボイドが生じたりすることがある。このようなボイドは、電極間の短絡を招いたり、接着剤中にクラックを発生させる要因となったりする。また、先塗布型のフリップチップ実装では、熱圧着工程において突起電極の接合と接着剤の熱硬化とを同時に行うことから、精度の高い突起電極の接合とボイドの抑制とを同時に行うことは困難である。
【0005】
ボイドを抑制するために、接着剤の熱硬化を加圧雰囲気下で行うことによりボイドを収縮させる方法、半導体チップと基板とを仮接合した後、仮接合体を加圧雰囲気下で加熱することによりボイドを小さくする方法等が提案されている(例えば、特許文献1〜3)。これらの方法は、基板上にペースト状接着剤を塗布した後、半導体チップを搭載する場合にはある程度有効性がある。しかしながら、接着剤付き半導体チップを基板上に搭載する場合には、基板の凹凸により空気を巻き込みやすいことから、ボイドを充分に抑制することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−311709号公報
【特許文献2】特開2009−004462号公報
【特許文献3】特許第4640380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ボンディング装置への半導体接合用接着剤の付着及び汚染を抑制することができ、ボイドを抑制して高い信頼性を実現することができる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、該半導体装置の製造方法に用いられる半導体接合用接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、先端部が半田からなる突起電極が形成された半導体ウエハの突起電極形成面に、半導体接合用接着剤を供給する工程1、前記半導体ウエハを個片化して、半導体接合用接着剤付き半導体チップを得る工程2、前記半導体接合用接着剤付き半導体チップを裏面からボンディングツールに吸着保持させる工程3、前記半導体接合用接着剤付き半導体チップと、基板とを位置あわせする工程4、前記半導体接合用接着剤付き半導体チップを半田溶融点以上の温度に加熱して、前記半導体接合用接着剤付き半導体チップの突起電極と前記基板の電極部とを接合させると同時に、前記半導体接合用接着剤を仮接着させる工程5、及び、前記半導体接合用接着剤を加圧雰囲気下で加熱して、ボイドを除去する工程6を有し、前記半導体接合用接着剤は、60〜100℃における溶融粘度が10kPa・s以下であり、かつ、プローブタック法で測定した25℃におけるタック値が10gf/5mmφ以下である半導体装置の製造方法である。
以下、本発明を詳述する。
【0009】
半導体接合用接着剤付き半導体チップの突起電極と基板の電極部とを接合させた後、半導体接合用接着剤を加圧雰囲気下で加熱してボイドを除去する方法において、加圧雰囲気下で加熱してボイドを小さくしようとすると、半導体接合用接着剤に流動性をもたせることが必要である。一方、半導体接合用接着剤付き半導体チップを裏面からボンディングツールに吸着保持させる際、半導体チップは、スライダーと呼ばれるチップ搬送ステージ上に半導体接合用接着剤側が接するようにして配置される。このため、半導体接合用接着剤の流動性を高くすると、スライダーに半導体接合用接着剤が付着してボンディングツールへの吸着不良が生じたり、ボンディングツールに半導体接合用接着剤が付着して実装に支障をきたしたりすることがある。
本発明者は、半導体接合用接着剤の60〜100℃における溶融粘度を所定範囲内とし、突起電極を確実に接合した後、適度な流動性のある状態で半導体接合用接着剤を加圧雰囲気下で加熱することで、精度の高い突起電極の接合とボイドの抑制とを同時に行うことができることを見出した。また、本発明者は、半導体接合用接着剤のプローブタック法で測定した25℃におけるタック値を所定範囲内とすることで、ボンディング装置(スライダー、ボンディングツール等)への半導体接合用接着剤の付着及び汚染を抑制できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の半導体装置の製造方法では、まず、先端部が半田からなる突起電極が形成された半導体ウエハの突起電極形成面に、半導体接合用接着剤を供給する工程1を行う。
上記半導体ウエハとして、例えば、シリコン、ガリウム砒素等の半導体からなり、先端部が半田からなる突起電極が表面に形成された半導体チップが挙げられる。なお、先端部が半田からなる突起電極は、先端部が半田からなっていれば、突起電極の一部が半田からなっていても、突起電極全体が半田からなってもよい。
【0011】
上記半導体ウエハの突起電極形成面に半導体接合用接着剤を供給する方法は特に限定されず、半導体接合用接着剤がペースト状である場合、例えば、スピンコート法等により上記半導体ウエハの突起電極形成面に半導体接合用接着剤を塗布して乾燥させる方法等が挙げられる。また、半導体接合用接着剤がフィルム状である場合、例えば、常圧下でのラミネート、真空ラミネート等により上記半導体ウエハの突起電極形成面に半導体接合用接着剤を貼り合せる方法等が挙げられる。常圧下でのラミネートでは空気が巻き込まれる場合があるが、上記工程1の後、ボイドを除去する工程6と同様の加圧キュアオーブン(例えば、PCO−083TA(NTTアトバンステクノロジ社製))等を用いて半導体接合用接着剤を加圧雰囲気下で加熱して、ボイドを除去してもよい。
【0012】
上記半導体接合用接着剤は、60〜100℃における溶融粘度が10kPa・s以下である。溶融粘度が10kPa・sを超えると、ボイドを除去する工程6において半導体接合用接着剤の流動性が低下し、ボイドを充分に除去することができない。溶融粘度の好ましい上限は9kPa・sである。なお、溶融粘度とは、回転式レオメーター(例えば、VAR−100(レオロジカ社製))を用いて、昇温速度5℃/分、周波数1Hz、歪み1%で測定した値を意味する。
上記半導体接合用接着剤の60〜100℃における溶融粘度の下限は特に限定されないが、好ましい下限は0.1kPa・sである。
【0013】
上記半導体接合用接着剤は、プローブタック法で測定した25℃におけるタック値が10gf/5mmφ以下である。タック値が10gf/5mmφを超えると、半導体チップをボンディングツールに吸着保持させる工程3においてボンディング装置(スライダー、ボンディングツール等)への半導体接合用接着剤の付着及び汚染を充分に抑制することができず、吸着不良等が生じる。このような不具合があると、連続的に半導体チップの実装を行うことが困難となり、量産性に支障をきたすことがある。タック値の好ましい上限は9gf/5mmφである。なお、プローブタック法で測定したタック値とは、プローブタック測定装置(例えば、タッキング試験機TAC−2(RHESCA社製))を用いて、プローブ径5mm、接触速さ120mm/分、テストスピード600mm/分、接触荷重10mN/mm、接触時間10秒で測定したタック値を意味する。
上記半導体接合用接着剤のプローブタック法で測定した25℃におけるタック値の下限は特に限定されないが、好ましい下限は1gf/5mmφである。
【0014】
上記半導体接合用接着剤は、DSCにおける発熱開始温度が100℃以上であることが好ましい。発熱開始温度が100℃未満であると、半導体接合用接着剤を仮接着させる工程5において半導体接合用接着剤の硬化が進み、電極間に半導体接合用接着剤を噛み込んで電極接合状態が悪くなることがある。また、ボイドを除去する工程6においてボイドが除去される前に半導体接合用接着剤の硬化が進んでしまい、ボイドを除去する工程6において半導体接合用接着剤の流動性が低下するため、ボイドを充分に除去できないことがある。
上記半導体接合用接着剤のDSCにおける発熱開始温度の上限は特に限定されないが、200℃未満であることが好ましい。発熱開始温度が200℃以上であると、半導体接合用接着剤の硬化のために多量の熱量を加えることとなり、揮発成分によりアウトガスが生じたり、半導体接合用接着剤が劣化したりすることがある。
【0015】
上記半導体接合用接着剤は、ペースト状であってもフィルム状であってもよく、熱硬化性樹脂、熱硬化剤及び高分子量化合物を含有することが好ましい。なかでも、プローブタック法で測定した25℃におけるタック値を上記範囲内とするためには、常温(25℃)で液状の成分とガラス転移温度(Tg)が0℃以下の高分子量化合物とを合わせた含有量が5重量%以下であることがより好ましい。なお、常温(25℃)で液状の成分は、熱硬化性樹脂であっても、熱硬化剤であっても、高分子量化合物であってもよく、これら以外の成分(例えば、希釈剤、カップリング剤、密着性付与剤等の添加剤等)であってもよい。
上記半導体接合用接着剤における上記常温(25℃)で液状の成分とガラス転移温度(Tg)が0℃以下の高分子量化合物とを合わせた含有量の下限は特に限定されないが、半導体接合用接着剤の製膜性、可撓性等の観点から、好ましい下限は1重量%である。
【0016】
上記熱硬化性樹脂は特に限定されず、例えば、付加重合、重縮合、重付加、付加縮合、開環重合等の反応により硬化する化合物が挙げられる。上記熱硬化性樹脂として、具体的には例えば、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、キシレン樹脂、アルキル−ベンゼン樹脂、エポキシアクリレート樹脂、珪素樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。なかでも、半導体接合用接着剤の硬化物の強度及び接合信頼性を確保する観点から、エポキシ樹脂、アクリル樹脂が好ましい。
【0017】
上記エポキシ樹脂は特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型等のノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ポリエーテル変性エポキシ樹脂、NBR変性エポキシ樹脂、CTBN変性エポキシ樹脂、及び、これらの水添化物等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
上記エポキシ樹脂は、常温で液状のエポキシ樹脂であっても、常温で固体のエポキシ樹脂であってもよく、これらを適宜組み合わせて用いてもよい。
上記常温で液状のエポキシ樹脂のうち、市販品として、例えば、EPICLON 840、840−S、850、850−S、EXA−850CRP(以上、DIC社製)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、EPICLON 830、830−S、EXA−830CRP(以上、DIC社製)等のビスフェノールF型エポキシ樹脂、EPICLON HP−4032、HP−4032D(以上、DIC社製)等のナフタレン型エポキシ樹脂、EPICLON EXA−7015(DIC社製)、EX−252(ナガセケムテックス社製)等の水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、EX−201(ナガセケムテックス社製)等のレゾルシノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0019】
上記常温で固体のエポキシ樹脂のうち、市販品として、例えば、EPICLON 860、10550、1055(以上、DIC社製)等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、EPICLON EXA−1514(DIC社製)等のビスフェノールS型エポキシ樹脂、EPICLON HP−4700、HP−4710、HP−4770(以上、DIC社製)等のナフタレン型エポキシ樹脂、EPICLON HP−7200シリーズ(DIC社製)等のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、EPICLON HP−5000、EXA−9900(以上、DIC社製)等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0020】
上記熱硬化剤は特に限定されず、従来公知の熱硬化剤を上記熱硬化性樹脂に合わせて適宜選択することができる。上記熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、上記熱硬化剤として、例えば、酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、ジシアンジアミド等の潜在性硬化剤、カチオン系触媒型硬化剤等が挙げられる。これらの熱硬化剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、硬化速度、硬化物の物性等に優れることから、酸無水物系硬化剤が好ましい。
【0021】
上記酸無水物系硬化剤のうち、市販品として、例えば、YH−306、YH−307(以上、三菱化学社製、常温(25℃)で液状)、YH−309(三菱化学社製、酸無水物系硬化剤、常温(25℃)で固体)等が挙げられる。
【0022】
上記熱硬化剤の含有量は特に限定されず、常温(25℃)で液状の成分とガラス転移温度(Tg)が0℃以下の高分子量化合物とを合わせた含有量を上記範囲内とすることが好ましい。上記熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用い、エポキシ基と等量反応する熱硬化剤を用いる場合、上記熱硬化剤の含有量は、半導体接合用接着剤中に含まれるエポキシ基の総量に対する好ましい下限が60当量、好ましい上限が110当量である。含有量が60当量未満であると、半導体接合用接着剤を充分に硬化させることができないことがある。含有量が110当量を超えても、特に半導体接合用接着剤の硬化性には寄与せず、過剰な熱硬化剤が揮発することによってボイドの原因となることがある。含有量のより好ましい下限は70当量、より好ましい上限は100当量である。
【0023】
上記半導体接合用接着剤は、硬化速度、硬化物の物性等を調整する目的で、更に、硬化促進剤を含有してもよい。
上記硬化促進剤は特に限定されず、例えば、イミダゾール系硬化促進剤、3級アミン系硬化促進剤等が挙げられる。なかでも、硬化速度、硬化物の物性等の調整をするための反応系の制御をしやすいことから、イミダゾール系硬化促進剤が好ましい。
【0024】
上記イミダゾール系硬化促進剤は特に限定されず、例えば、フジキュア7000(T&K TOKA社製、常温(25℃)で液状)、イミダゾールの1位をシアノエチル基で保護した1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、イソシアヌル酸で塩基性を保護したイミダゾール系硬化促進剤(商品名「2MA−OK」、四国化成工業社製、常温(25℃)で固体)、2MZ、2MZ−P、2PZ、2PZ−PW、2P4MZ、C11Z−CNS、2PZ−CNS、2PZCNS−PW、2MZ−A、2MZA−PW、C11Z−A、2E4MZ−A、2MAOK−PW、2PZ−OK、2MZ−OK、2PHZ、2PHZ−PW、2P4MHZ、2P4MHZ−PW、2E4MZ・BIS、VT、VT−OK、MAVT、MAVT−OK(以上、四国化成工業社製)等が挙げられる。これらのイミダゾール系硬化促進剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
上記硬化促進剤の含有量は特に限定されず、常温(25℃)で液状の成分とガラス転移温度(Tg)が0℃以下の高分子量化合物とを合わせた含有量を上記範囲内とすることが好ましいが、熱硬化剤100重量部に対する好ましい下限が5重量部、好ましい上限が50重量部である。含有量が5重量部未満であると、半導体接合用接着剤の熱硬化のために高温で長時間の加熱を必要とすることがある。含有量が50重量部を超えると、半導体接合用接着剤の貯蔵安定性が不充分となったり、過剰な硬化促進剤が揮発することによってボイドの原因となったりすることがある。含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は30重量部である。
【0026】
上記高分子量化合物は、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下の高分子量化合物であっても、ガラス転移温度(Tg)が0℃を超える高分子量化合物であっても、これらの混合物であってもよい。上記高分子量化合物を用いることで、半導体接合用接着剤に製膜性、可撓性等を付与するとともに、半導体接合用接着剤の硬化物に強靭性を持たせ、高い接合信頼性を確保することができる。
上記高分子量化合物は特に限定されず、例えば、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、キシレン樹脂、アルキル−ベンゼン樹脂、エポキシアクリレート樹脂、珪素樹脂、ウレタン樹脂等の公知の高分子量化合物が挙げられる。なかでも、エポキシ基を有する高分子量化合物が好ましい。
【0027】
上記エポキシ基を有する高分子量化合物を添加することで、半導体接合用接着剤の硬化物は、優れた可撓性を発現する。即ち、上記半導体接合用接着剤の硬化物は、上記熱硬化性樹脂としてのエポキシ樹脂に由来する優れた機械的強度、耐熱性及び耐湿性と、上記エポキシ基を有する高分子量化合物に由来する優れた可撓性とを兼備することとなるので、耐冷熱サイクル性、耐ハンダリフロー性、寸法安定性等に優れるものとなり、高い接合信頼性及び高い導通信頼性を発現することとなる。
【0028】
上記エポキシ基を有する高分子量化合物は、末端及び/又は側鎖(ペンダント位)にエポキシ基を有する高分子量化合物であれば特に限定されず、例えば、エポキシ基含有アクリルゴム、エポキシ基含有ブタジエンゴム、ビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂、エポキシ基含有フェノキシ樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂、エポキシ基含有ウレタン樹脂、エポキシ基含有ポリエステル樹脂等が挙げられる。なかでも、エポキシ基を多く含む高分子化合物を得ることができ、硬化物の機械的強度及び耐熱性がより優れたものとなることから、エポキシ基含有アクリル樹脂が好ましい。これらのエポキシ基を有する高分子量化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
上記高分子量化合物として、上記エポキシ基を有する高分子量化合物、特に、エポキシ基含有アクリル樹脂を用いる場合、上記エポキシ基を有する高分子量化合物の重量平均分子量の好ましい下限は1万、好ましい上限は100万である。重量平均分子量が1万未満であると、半導体接合用接着剤の製膜性が不充分となったり、半導体接合用接着剤の硬化物の可撓性が充分に向上しなかったりすることがある。重量平均分子量が100万を超えると、半導体ウエハに半導体接合用接着剤を供給する工程1において半導体接合用接着剤を一定の厚みに供給することが困難となったり、ボイドを除去する工程6において半導体接合用接着剤の溶融粘度が高くなりすぎ、ボイドを充分に除去できなかったりすることがある。
【0030】
上記高分子量化合物として、上記エポキシ基を有する高分子量化合物、特に、エポキシ基含有アクリル樹脂を用いる場合、上記エポキシ基を有する高分子量化合物のエポキシ当量の好ましい下限が200、好ましい上限が1000である。エポキシ当量が200未満であると、半導体接合用接着剤の硬化物の可撓性が充分に向上しないことがある。エポキシ当量が1000を超えると、半導体接合用接着剤の硬化物の機械的強度又は耐熱性が不充分となることがある。
【0031】
上記半導体接合用接着剤における上記高分子量化合物の含有量は特に限定されず、常温(25℃)で液状の成分とガラス転移温度(Tg)が0℃以下の高分子量化合物とを合わせた含有量を上記範囲内とすることが好ましいが、上記半導体接合用接着剤における好ましい下限は3重量%、好ましい上限は30重量%である。含有量が3重量%未満であると、熱ひずみに対する充分な信頼性が得られないことがある。含有量が30重量%を超えると、半導体接合用接着剤の耐熱性が低下することがある。
【0032】
上記半導体接合用接着剤は、更に、無機フィラーを含有することが好ましい。なかでも、60〜100℃における溶融粘度を上記範囲内とするためには、上記無機フィラーの含有量が40重量%以下であることが好ましい。含有量が40重量%を超えると、ボイドを除去する工程6において半導体接合用接着剤の流動性が低下し、ボイドを充分に除去することができないことがある。
上記半導体接合用接着剤における上記無機フィラーの含有量の下限は特に限定されないが、半導体接合用接着剤の硬化物の強度及び接合信頼性を確保する観点から、好ましい下限は10重量%である。
【0033】
上記無機フィラーは特に限定されず、例えば、シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化珪素、炭化珪素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等が挙げられる。なかでも、流動性に優れることから球状シリカが好ましく、メチルシランカップリング剤、フェニルシランカップリング剤等で表面処理された球状シリカがより好ましい。表面処理された球状シリカを用いることで、半導体接合用接着剤の増粘を抑えることができ、ボイドを除去する工程6において極めて効率的にボイドを除去することができる。
【0034】
上記無機フィラーの平均粒子径は特に限定されないが、半導体接合用接着剤の透明性、流動性、接合信頼性等の観点から、0.01〜1μm程度が好ましい。
【0035】
上記半導体接合用接着剤は、必要に応じて、更に、希釈剤、チキソトロピー付与剤、溶媒、無機イオン交換体、ブリード防止剤、イミダゾールシランカップリング剤等の接着性付与剤、密着性付与剤、ゴム粒子等の応力緩和剤等のその他の添加剤を含有してもよい。
【0036】
上記半導体接合用接着剤を製造する方法は特に限定されず、例えば、熱硬化性樹脂、熱硬化剤及び高分子量化合物に、必要に応じて硬化促進剤、無機フィラー及びその他の添加剤を所定量配合して混合する方法が挙げられる。上記混合の方法は特に限定されず、例えば、ホモディスパー、万能ミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー等を使用する方法が挙げられる。
【0037】
本発明の半導体装置の製造方法では、次いで、上記半導体ウエハを個片化して、半導体接合用接着剤付き半導体チップを得る工程2を行う。
上記半導体ウエハを個片化する方法は特に限定されず、例えば、突起電極形成面に上記半導体接合用接着剤が供給された半導体ウエハをダイシングテープにマウントした後、従来公知のブレードダイシング、レーザーダイシング等の方法を用いて個片化する方法等が挙げられる。
【0038】
本発明の半導体装置の製造方法では、次いで、上記半導体接合用接着剤付き半導体チップを裏面からボンディングツールに吸着保持させる工程3を行う。
上記工程3では、上記工程2にて得られた半導体接合用接着剤付き半導体チップをピックアップして取り出し、スライダーと呼ばれるチップ搬送ステージ上に半導体接合用接着剤側が接するようにして配置させる。その後、半導体接合用接着剤付き半導体チップをスライダーによってボンディングツール下方に搬送し、裏面からボンディングツールに吸着保持させる。これにより、半導体接合用接着剤付き半導体チップは、スライダーからボンディングツールへ受け渡される。本発明の半導体装置の製造方法では、上記半導体接合用接着剤のプローブタック法で測定した25℃におけるタック値を上記範囲内とすることで、ボンディング装置(スライダー、ボンディングツール等)への半導体接合用接着剤の付着及び汚染を抑制することができる。
【0039】
本発明の半導体装置の製造方法では、次いで、上記半導体接合用接着剤付き半導体チップと、基板とを位置あわせする工程4を行う。
上記工程4では、通常、半導体接合用接着剤付き半導体チップを吸着保持しているボンディングツールと、基板が配置されているボンディングステージとの間にカメラを挿入し、上記半導体接合用接着剤付き半導体チップの突起電極、基板の電極部、並びに、半導体チップ及び基板上に設けられたアライメントマークの位置をカメラに認識させることで、X、Y方向及び回転方向(θ方向)に自動的に位置あわせを行う。
【0040】
本発明の半導体装置の製造方法では、次いで、上記半導体接合用接着剤付き半導体チップを半田溶融点以上の温度に加熱して、上記半導体接合用接着剤付き半導体チップの突起電極と上記基板の電極部とを接合させると同時に、上記半導体接合用接着剤を仮接着させる工程5を行う。
上記工程5では、半導体接合用接着剤付き半導体チップを吸着保持しているボンディングツールを、基板が配置されているボンディングステージに向かって下降させ、上記半導体接合用接着剤付き半導体チップを半田溶融点以上の温度に加熱することで、上記半導体接合用接着剤付き半導体チップの突起電極と上記基板の電極部とを接合させると同時に、上記半導体接合用接着剤を仮接着させる。
【0041】
半田溶融点は、通常、225〜235℃程度である。上記半田溶融点以上の温度の好ましい下限は240℃、好ましい上限は300℃である。温度が240℃未満であると、半田が充分に溶融せず、電極接合が形成されないことがある。温度が300℃を超えると、半導体接合用接着剤から揮発成分が発生してボイドを増加させることがある。また、ボイドを除去する工程6においてボイドが除去される前に半導体接合用接着剤の硬化が進んでしまい、ボイドを除去する工程6において半導体接合用接着剤の流動性が低下するため、ボイドを充分に除去できないことがある。
【0042】
上記半導体接合用接着剤付き半導体チップを半田溶融点以上の温度に加熱する時間(保持時間)は、好ましい下限が1秒、好ましい上限が3秒である。保持時間が1秒未満であると、半田が充分に溶融せず、電極接合が形成されないことがある。保持時間が3秒を超えると、半導体接合用接着剤から揮発成分が発生してボイドを増加させることがある。また、ボイドを除去する工程6においてボイドが除去される前に半導体接合用接着剤の硬化が進んでしまい、ボイドを除去する工程6において半導体接合用接着剤の流動性が低下するため、ボイドを充分に除去できないことがある。
【0043】
上記工程5では、上記半導体接合用接着剤付き半導体チップに対して圧力をかけることが好ましい。圧力は、電極接合が形成される圧力であれば特に限定されないが、0.3〜3MPaが好ましい。
【0044】
本発明の半導体装置の製造方法では、次いで、上記半導体接合用接着剤を加圧雰囲気下で加熱して、ボイドを除去する工程6を行う。
加圧雰囲気下とは、常圧(大気圧)より高い圧力雰囲気下を意味する。本発明の半導体装置の製造方法では、上記半導体接合用接着剤の60〜100℃における溶融粘度を上記範囲内とし、突起電極を確実に接合した後、適度な流動性のある状態で半導体接合用接着剤を加圧雰囲気下で加熱することで、精度の高い突起電極の接合とボイドの抑制とを同時に行うことができる。上記工程6では、ボイドを単に成長させないだけではなく、積極的に除去できるものと考えられることから、本発明の半導体装置の製造方法では、仮に半導体接合用接着剤に空気が巻き込まれた場合であってもボイドを除去することができる。
【0045】
上記半導体接合用接着剤を加圧雰囲気下で加熱する方法として、例えば、加圧キュアオーブン(例えば、PCO−083TA(NTTアトバンステクノロジ社製))を用いる方法等が挙げられる。
上記加圧キュアオーブンの圧力の好ましい下限は0.1MPa、好ましい上限は10MPaである。圧力が0.1MPa未満であると、ボイドを充分に除去することができないことがある。圧力が10MPaを超えると、半導体接合用接着剤自体の変形が生じ、半導体装置の信頼性に悪影響を及ぼすことがある。圧力のより好ましい下限は0.3MPa、より好ましい上限は1MPaである。
【0046】
上記半導体接合用接着剤を加圧雰囲気下で加熱する際の加熱温度の好ましい下限は60℃、好ましい上限は150℃である。ただし、上記半導体接合用接着剤を加圧雰囲気下で加熱する際には、一定温度及び一定圧力で保持してもよいし、昇温及び/又は昇圧しながら段階的に温度及び/又は圧力を変化させてもよい。
また、ボイドをより確実に除去するためには、上記半導体接合用接着剤を加圧雰囲気下で加熱する際の加熱時間は、10分以上であることが好ましい。
【0047】
本発明の半導体装置の製造方法では、ボイドを除去する工程6を行った後、半導体接合用接着剤を完全に硬化させる工程7を行ってもよい。
上記半導体接合用接着剤を完全に硬化させる方法として、例えば、ボイドを除去する工程6を行った後、加圧雰囲気下でそのまま温度を上げて半導体接合用接着剤を完全に硬化させる方法、常圧下で半導体接合用接着剤を加熱して完全に硬化させる方法等が挙げられる。上記半導体接合用接着剤を完全に硬化させる際の加熱温度は特に限定されないが、150〜200℃程度が好ましい。
【0048】
本発明の半導体装置の製造方法によれば、半導体接合用接着剤の60〜100℃における溶融粘度を上記範囲内とし、突起電極を確実に接合した後、適度な流動性のある状態で半導体接合用接着剤を加圧雰囲気下で加熱することで、精度の高い突起電極の接合とボイドの抑制とを同時に行うことができる。また、半導体接合用接着剤のプローブタック法で測定した25℃におけるタック値を上記範囲内とすることで、ボンディング装置(スライダー、ボンディングツール等)への半導体接合用接着剤の付着及び汚染を抑制することができる。本発明の半導体装置の製造方法に用いられ、60〜100℃における溶融粘度が10kPa・s以下であり、かつ、プローブタック法で測定した25℃におけるタック値が10gf/5mmφ以下である半導体接合用接着剤もまた、本発明の1つである。
【発明の効果】
【0049】
本発明によれば、ボンディング装置への半導体接合用接着剤の付着及び汚染を抑制することができ、ボイドを抑制して高い信頼性を実現することができる半導体装置の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、該半導体装置の製造方法に用いられる半導体接合用接着剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0051】
(実施例1〜6及び比較例1〜5)
(1)半導体接合用接着剤の製造
表1に記載の配合組成に従って、各材料を溶媒としてのMEKに添加し、ホモディスパーを用いて攪拌混合することにより半導体接合用接着剤溶液を製造した。得られた半導体接合用接着剤溶液を、アプリケーターを用いて離型PETフィルム上に乾燥後の厚みが30μmとなるように塗工し、乾燥することにより、フィルム状の半導体接合用接着剤を製造した。使用時まで、得られた接着剤層の表面を離型PETフィルム(保護フィルム)で保護した。
【0052】
(2)溶融粘度の測定
回転式レオメーター(VAR−100、レオロジカ社製)を用いて、昇温速度5℃/分、周波数1Hz、歪み1%で半導体接合用接着剤の溶融粘度を測定し、半導体接合用接着剤の60℃、80℃及び100℃における溶融粘度を求めた。
【0053】
(3)プローブタック法によるタック値の測定
プローブタック測定装置(タッキング試験機TAC−2、RHESCA社製)を用いて、プローブ径5mm、接触速さ120mm/分、テストスピード600mm/分、接触荷重10mN/mm、接触時間10秒で25℃における半導体接合用接着剤表面のタック値を測定した。
【0054】
(4)DSCにおける発熱開始温度の測定
DSC6220(セイコーインツル社製)を用いて、30℃から300℃まで10℃/minで昇温し、半導体接合用接着剤の熱分析を行った。検出された発熱ピークにおける発熱開始温度を測定した。
【0055】
(5)半導体装置の製造
(5−1)工程1、工程2
先端部が半田からなる突起電極が50μmピッチでペリフェラル状に形成された半導体ウエハ(WALTS−TEG MB50−0101JY、半田溶融点235℃、ウォルツ社製)を用意した。
半導体接合用接着剤の片面の保護フィルムを剥がし、真空ラミネーター(ATM−812M、タカトリ社製)を用いて、ステージ温度80℃、真空度80Paで半導体ウエハの突起電極形成面に半導体接合用接着剤を貼り合わせた(工程1)。次いで、研削装置(DFG8560、ディスコ社製)を用いて、厚みが100μmとなるまで半導体ウエハの裏面を研削した。半導体ウエハの研削した面にダイシングテープを貼り付け、ダイシング装置(DFD651、ディスコ社製)を用いて、送り速度20mm/秒で半導体ウエハを個片化して、厚みが30μmの半導体接合用接着剤が付着した半導体接合用接着剤付き半導体チップ(7.6mm□)を得た(工程2)。
【0056】
(5−2)工程3、工程4、工程5
Ni/Au電極を有する基板(WALTS−KIT MB50−0101JY、ウォルツ社製)を用意した。
フリップチップボンダ(FC−3000、東レエンジニアリング社製)を用いて、得られた半導体接合用接着剤付き半導体チップをスライダー上に配置し、裏面からボンディングツールに吸着保持させた(工程3)。次いで、半導体接合用接着剤付き半導体チップを、ボンディングステージ上に配置された基板に対して位置あわせし(工程4)、ボンディングステージ温度120℃の条件下で、160℃接触で280℃まで昇温し、0.8MPaで2秒間荷重をかけ、半導体接合用接着剤付き半導体チップの突起電極と基板の電極部とを接合させると同時に、半導体接合用接着剤を仮接着させた(工程5)。
【0057】
(5−3)工程6、工程7
得られた仮接着体を、加圧キュアオーブン(PCO−083TA、NTTアドバンステクノロジ社製)に投入し、以下の加圧、加熱条件により半導体接合用接着剤を加圧雰囲気下で加熱して、ボイドを除去するとともに(工程6)、半導体接合用接着剤を完全に硬化させて(工程7)、半導体装置を得た。ただし、比較例5においては、工程6は行わず、得られた仮接着体を常圧170℃オーブンで30分間保持することにより半導体接合用接着剤を完全に硬化させて(工程7)、半導体装置を得た。
<加圧、加熱条件>
STEP1:25℃から80℃まで10分で一定昇温、0.5MPa
STEP2:80℃で60分保持、0.5MPa
STEP3:80℃から170℃まで一定昇温、0.5MPa
STEP4:170℃で10分保持、0.5MPa
STEP5:170℃から25℃まで30分で降温、0.5MPa
STEP6:室温まで60分で一定降温、0.5MPa
【0058】
<評価>
実施例及び比較例で得られた半導体装置について、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0059】
(1)ボンディングツールへの吸着不良の有無
半導体チップをボンディングツールに吸着保持させる工程3において、スライダー又はボンディングツールへの半導体接合用接着剤の付着及び汚染がなく、半導体チップを吸着保持できた場合を○、半導体チップを吸着保持することはできたものの、実装後に確認するとスライダー又はボンディングツールの一部に半導体接合用接着剤の付着が見られた場合を△、スライダーに半導体接合用接着剤が付着し、半導体チップを吸着保持できなかった場合を×とした。
【0060】
(2)電極接合状態
研磨機を用いて半導体装置を断面研磨し、マイクロスコープを用いて電極接合部の電極接合状態を観察した。上下電極間に半導体接合用接着剤の噛み込みが無く、電極接合状態が良好であった場合を○、上下電極間にわずかに半導体接合用接着剤の噛み込みがあるものの、上下電極が接合していた場合を△、上下電極間に半導体接合用接着剤の噛み込みがあり、上下電極が全く接合していなかった場合を×とした。
【0061】
(3)ボイドの有無
超音波探査映像装置(C−SAM D9500、日本バーンズ社製)を用いて半導体装置のボイドを観察し、ボイドの有無を評価した。半導体チップ面積に対するボイド発生部分の面積が1%未満であった場合を○、1%以上5%未満であった場合を△、5%以上であった場合を×とした。
【0062】
(4)信頼性評価(TCT試験)
半導体装置について−55℃〜125℃(30分/サイクル)の冷熱サイクル試験を行い、100サイクルごとに導通抵抗値を測定した。導通抵抗値が、冷熱サイクル試験前の初期導通抵抗値に比べ5%以上変化した時点をNG判定とし、5%未満の導通抵抗値が保たれていたサイクル数を評価した。サイクル数が1000サイクル以上であった場合を○、300サイクル以上1000サイクル未満であった場合を△、300サイクル未満であった場合を×とした。
【0063】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によれば、ボンディング装置への半導体接合用接着剤の付着及び汚染を抑制することができ、ボイドを抑制して高い信頼性を実現することができる半導体装置の製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、該半導体装置の製造方法に用いられる半導体接合用接着剤を提供することができる。