【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的に基づいて、本発明は、反対側の2つの壁面部分と、この2つの壁面部分を結合する少なくとも1つの補強要素とを有する燃料タンクであって、前記補強要素は、少なくとも1つの回転リンクによって連結される少なくとも2つの部分を含む、燃料タンクに関する。
【0011】
本発明の背後にある考え方は、(タンク内部の圧力変動によって誘起される)変形が制限されるべき方向への動きを除いて、すべての方向のあらゆる動きの自由度があることが(あるいはごく僅かな動きであっても)、応力の低減を可能にし得るという点である。
【0012】
回転リンクは、高衝撃試験の間にも、反対側のタンク面の若干の動きを可能にし、それによって、補強構造及びタンク外殻の応力を制限することによって、利点を付与する。この応力の制限は、高い衝撃エネルギーにおける燃料漏洩のリスクを低減し、アセンブリの取り扱い落下に対する抵抗力をも高める(衝突破壊リスクの低減)。
【0013】
このため、2つのタンク壁面間の間隔は、(少なくとも有意に言えば)低減され得るのみで、補強要素が真直である場合(曲げられていない場合)の補強要素の長さよりも有意に大きくなることはできない。さらに、要素は、一般的には、全体的な関節接合を一般的な製作公差を超えるレベルまでに制限するが、しかしなお、反対向きの方向へのタンクの変形を制限するように付加されるであろうことに留意するべきである。
【0014】
従って、本発明の枠内においては、「回転リンク」は、補強要素が曲がるのを可能にする関節接合を意味する。結果的に、微小な摺動動作も許容され得るが、その場合、それは好ましくは数mmに制限される。
【0015】
この回転リンクは、例えばユニバーサルジョイントのような剛性部品の機械的アセンブリとすることができ、あるいは、例えばサイレントブロックのような少なくとも1つの弾性(若干の変形可能な)部品を含むアセンブリとすることもできる。ユニバーサルジョイント、ユニバーサル継手、Uジョイント、カルダンジョイント、Hardy−Spicerジョイント、あるいはフックジョイントは、ロッドが任意の方向に「曲がる」ことが可能な剛性ロッドのジョイント又は継手であり、普通は回転運動を伝達する軸に用いられる。それは、一般的に、近接して一緒に配置され、互いに90°の方位に向けられ、かつ十字型の軸によって結合される1対のヒンジから構成される。
【0016】
本発明の「関節接合の」補強要素は、補強目的用としてのみ使用可能であること、あるいは、燃料送出ユニットの特定の領域において使用可能であることは注記しておく価値がある。つまりそのため、関心の対象となる特定の一領域は、適正な燃料の取り出し及び計量のために、タンクの頂面及び底面間の相対的な間隔が決定的に重要であるような燃料送出ユニット(又はポンプ/計量モジュール)の領域である。そのような領域においては、タンク上の平坦領域のサイズが伝統的に高く、そのため、その平坦領域は過度の変形に対してより敏感になる。従って、本発明は、燃料送出ユニットを封じ込める(取り囲む)ためにも使用できる。この実施形態においては、燃料送出ユニットは、好ましくはすべてが少なくとも1つの回転リンクを備えた、いくつかの補強要素によって取り囲まれる。本発明は、燃料送出ユニット近傍の局所的な変形を制限することに加えて、燃料送出ユニットのフランジを保持するように通常はタンク内に組み込まれる封止リングに対する応力の大幅な低減をもたらし、これによって外部に対する密封シールを形成する。
【0017】
「燃料タンク」という用語は、種々の異なる環境及び使用条件の下で燃料を貯蔵し得る非透過性のタンクを意味すると理解される。このようなタンクの例は自動車に装備されるタンクである。
【0018】
本発明による燃料タンクは、(内部の閉止された貯蔵容積を画定する)好ましくはプラスチック製の、すなわち少なくとも1つの合成樹脂ポリマーを含む材料から作製される壁体を有する。
【0019】
あらゆるタイプのプラスチックが適している可能性がある。特に、熱可塑性の範疇に属するプラスチックが適している。
【0020】
「熱可塑性」という用語は、熱可塑性のエラストマー及びその混合物を含む任意の熱可塑性ポリマーを意味すると理解される。「ポリマー」という用語は、ホモポリマー及びコポリマー(特に二成分又は三成分のコポリマー)の両者を意味すると理解される。このようなコポリマーの例は、非限定的に、ランダムコポリマー、直鎖型ブロックコポリマー、他のブロックコポリマー、及びグラフトコポリマーである。
【0021】
よく用いられる1つのポリマーはポリエチレンである。高密度ポリエチレン(HDPE)によってすぐれた結果が得られてきた。タンクは、例えばEVOH(部分的に加水分解されたエチレン/ビニルアセテートコポリマー)のような燃料非透過性樹脂の層をも含むことが望ましい。代替的に、燃料に対して非透過性にするための表面処理(フッ素化又はスルホン化)をタンクに対して施すことができる。本発明は、特に、EVOH層を含むHDPEタンクに対して有用である。
【0022】
本発明によるタンクは、2つの反対側の壁面部分を結合する補強要素、すなわち互いに向き合うその壁面の2つの部分を結合する補強要素を含む。この2つの壁面部分は、下部壁面部分(車両において下向きに取り付けられる部分であって、燃料の重量を受けてクリープを生じる可能性がある部分)及び上部壁面部分(上向きに取り付けられる部分であって、使用中クリープがほとんど又は全く生じない部分)であることが望ましい。この要素は、規定によれば剛性であり、より具体的には、本発明によれば、タンク壁面に垂直な方向にのみ、上記の程度において、すなわちきわめて限定的に伸長させることができる。
【0023】
本発明においては、補強要素の2つの部分(回転リンクによって連結され、かつ一般的にはタンク壁面に直接固定される部分)は任意の形状を有することが可能である。
【0024】
好ましい一実施形態においては、それは平坦な支柱材の形状を有する。その実施形態においては、回転リンクを、2つの部分の互いに対する若干の動きを可能にするように変形可能な要素を含む2部分からなるクリップによって実現することが可能である。
【0025】
別の好ましい実施形態においては、補強要素の2つの部分が(好ましくは中空の)円筒状の支柱材又はロッドの形状を有する。この実施形態においては、回転リンクを、支柱材又はそれに取り付けられる部品と共にユニバーサルジョイントを構成し得る少なくとも1つの部品によって実現できる。
【0026】
補強要素の上記の部分及びリンクは、任意の耐燃料性材料、好ましくはプラスチック材料に基づいており、2つの主たる部分がタンクに溶接される場合には、それは、タンクの材料(少なくともその表面)に適合するプラスチックに基づくものであることが望ましい。
【0027】
バージンHDPE、あるいはガラス繊維又は任意の他のタイプの充填剤(天然又はポリマー繊維)を充填したHDPE、POM、PEEKなどが適していると言える。それらは、射出成形によって製作されるプラスチック部品であることが望ましい。
【0028】
本発明は、上記の燃料タンクの製作方法にも関する。それによれば、補強要素の2つの部分が2つの反対側の壁面部分に固定され、その2つの部分に回転リンクが設けられる。
【0029】
補強要素の2つの部分は、タンク内面の2つの異なる位置において固定されるが、通常互いに反対側に、互いに向き合う壁面の2つの部分に配置される。任意の固定方法をその目的に用いることができるが、それがタンクの成形中に固定される場合は、その固定方法は溶接及び/又はリベット止めであることが望ましい(本願出願人の名前による出願である国際公開第2006/008308号パンフレットを参照されたい。このパンフレットの内容は参照によって本願に組み込まれる)。
【0030】
補強要素の2つの部分は、タンクの壁面に同時に固定することが可能であるが、同時でなくてもよい。
【0031】
第1の実施形態においては、タンクが最初に成形され、続いて、開口(通常、燃料送出ユニットのような機能要素が導入される作業開口である)がその壁面に作製され、さらに続いて、完全に組み立てられた補強要素(回転リンク又は関節を備えた2つの部分)が、タンクの壁面部分における浮き彫り部分又は(例えば蟻継ぎのような)形状化された部分の内部に固定される。
この実施形態においては、方法は、一般的に、
− タンクを、その2つの部分に浮き彫り部分又は浮き彫り形状を有するように成形するステップと、
− そのタンクの壁面に開口を作製するステップと、
− 完全に組み立てられた補強要素を浮き彫り部分又は浮き彫り形状の内部に固定するステップと、
を含む。
【0032】
好ましい第2の実施形態においては、補強要素の2つの部分の少なくとも1つが、タンクの成形中にタンクの壁面に固定される。
【0033】
この実施形態においては、本発明の方法は次のステップを含むことが望ましい。すなわち、
1.2つの別個の部分を備えたプラスチックのパリソンを開放型2キャビティ金型の中に差し込むステップと、
2.コア体をパリソンの内部に差し込むステップであって、前記コア体は、補強要素の2つの部分の少なくとも1つを支持するステップと、
3.パリソンを、(一般的には、コア体を通るブロー及び/又はキャビティ背後の吸引形成によって)金型キャビティに対して固く押し付けるステップと、
4.補強要素の少なくとも1つの部分を、コア体を用いてパリソンの2つの位置の一方に固定するステップと、
5.コア体を引き抜くステップと、
6.金型を再度閉じて、パリソンの2つの部分を一緒に溶接するために金型の2つのキャビティの周縁の回りにパリソンの2つの部分を把持するような態様で、金型の2つのキャビティを合体させるステップと、
7.パリソンを金型キャビティに対して固く押し付けるために、加圧流体を金型の中に注入する、及び/又は、金型キャビティの背後に真空部分を創出するステップと、
8.金型を開放してタンクを取り出すステップと、
を含むことが望ましい。
【0034】
第1の副次的実施形態においては、完全な補強要素が、タンクの成形中にタンクに組み込まれかつ固定される。この副次的実施形態においては、第1の可能性は、完全な補強要素が、ステップ4の間にパリソンの1つの部分に固定され、その後、ステップ6の間にパリソンのもう一方の部分に固定されるということである。第2の可能性は、ステップ4の間に補強要素の各部分がパリソンの1つの部分に固定され、その場合、回転リンクは補強要素の2つの部分の(一方の)部品であり、ステップ6の間に、補強要素の両部分が回転リンクを中間に入れて組み立てられる。この実施形態においては、両部分及び/又は回転リンクには、例えばクリップのようなクイック結合システムによってそれらの部分を組み立てることが可能な装置が設けられる。
【0035】
上記の第1の可能性の場合には、回転リンクを成形プロセスの後まで動かないようにするブロック部分(又は機構)を使用し、その後、回転/関節接合を可能にするために前記ブロック部分を取り除く開口をタンクに作製することが有利であり得る。
【0036】
第2の副次的実施形態においては、補強要素の2つの主要部分のみがタンクの壁面に成形中に固定され、回転リンクは、後刻に、タンク壁面に作製される開口を通して入れられる。この副次的実施形態においては、方法が、次のステップを含むことが望ましい。すなわち、
1.2つの別個の部分を備えたプラスチックのパリソンを開放型2キャビティ金型の中に差し込むステップと、
2.コア体をパリソンの内部に差し込むステップであって、前記コア体は、補強要素の2つの主要部分を支持するステップと、
3.パリソンを、(一般的には、コア体を通るブロー及び/又はキャビティ背後の吸引形成によって)金型キャビティに対して固く押し付けるステップと、
4.補強要素の2つの部分を、コア体を用いてパリソンの2つの位置に固定するステップと、
5.コア体を引き抜くステップと、
6.金型を再度閉じて、パリソンの2つの部分を一緒に溶接するために金型の2つのキャビティの周縁の回りにパリソンの2つの部分を把持するような態様で、金型の2つのキャビティを合体させるステップと、
7.パリソンを金型キャビティに対して固く押し付けるために、加圧流体を金型の中に注入する、及び/又は、金型キャビティの背後に真空部分を創出するステップと、
8.金型を開放してタンクを取り出すステップと、
9.タンクの壁面に開口を作製するステップと、
10.前記開口を通して、2つの最初の部分を一緒に連結/結合するために回転リンクを所定位置に装着するステップと、
を含むことが望ましい。
【0037】
上記の本発明の実施形態によれば、パリソン(parison)は、別個に製作されたものであり得るか、あるいは、筒形パリソンを反対側の2本の母線に沿って切り開いた結果生じ得る、2つの部分又はシートである。
【0038】
続いて、2つの部分からなるパリソンを、タンクの外面に適合する内面を有する2つのキャビティと、補強要素の2つの最初の部分を前記パリソンに取り付けることを可能にするコア体とを含む金型内で成形する。
【0039】
「コア体」という用語は、金型キャビティの間に差し込むのに適すると共に、パリソンの2つの部分が最初の金型閉止の間に一緒に溶接されるのを防止するのに適した寸法及び形状の部品を意味すると理解される。このような部品は、例えば英国特許第1,410,215号明細書に記載されており、その内容は、この目的に関しては参照によって本願に組み込まれる。