特許第5989406号(P5989406)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5989406-燃料圧力制御装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989406
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】燃料圧力制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 55/02 20060101AFI20160825BHJP
   F02M 37/08 20060101ALI20160825BHJP
   F02M 51/00 20060101ALI20160825BHJP
   F02D 41/04 20060101ALI20160825BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   F02M55/02 350P
   F02M37/08 B
   F02M51/00 F
   F02D41/04 345C
   F02D41/04 345H
   F02M37/00 Q
   F02M37/00 A
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-121176(P2012-121176)
(22)【出願日】2012年5月28日
(65)【公開番号】特開2013-245635(P2013-245635A)
(43)【公開日】2013年12月9日
【審査請求日】2015年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072604
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 軍一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140501
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 栄一郎
(72)【発明者】
【氏名】須田 享
(72)【発明者】
【氏名】徳田 和行
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 和孝
(72)【発明者】
【氏名】吉田 耕史
(72)【発明者】
【氏名】西部 秀明
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 寛史
【審査官】 寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−015067(JP,A)
【文献】 特開平11−050933(JP,A)
【文献】 特開平10−131820(JP,A)
【文献】 特開2011−196371(JP,A)
【文献】 特開2010−163971(JP,A)
【文献】 特開2001−099027(JP,A)
【文献】 特開2001−248517(JP,A)
【文献】 特開平09−303227(JP,A)
【文献】 特開2012−092715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00 − 71/04
F02D 41/00 − 41/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクに貯留されている燃料を、供給通路を介して内燃機関の燃料噴射弁が接続されたデリバリパイプに圧送する電動式の燃料ポンプと、
前記供給通路から分岐して前記供給通路内を流れる燃料の一部を前記燃料タンクに還流させるリターン通路と、
前記リターン通路に設けられ、通電により閉弁し、前記通電が解除されることにより開弁するノーマルオープン型の電磁弁で構成された減量弁と、を備え、
前記リターン通路と前記供給通路の分岐部と、前記デリバリパイプとの間に、前記デリバリパイプ側から前記燃料タンク側への燃料の逆流を阻止する逆止弁を設け
前記燃料ポンプは、摺動部分に異物の噛み込みが生じても駆動を維持可能な下限電圧以上の印加電圧で駆動されるよう構成され、
前記減量弁は、前記下限電圧で前記燃料ポンプを駆動した際の前記燃料ポンプの燃料吐出量と、前記内燃機関の運転状態に応じて前記内燃機関に要求される要求燃料消費量との差分燃料を前記燃料タンクに還流させる制御弁としての機能を有し、
前記リターン通路よりも前記デリバリパイプ側で前記供給通路に接続され、前記供給通路と前記燃料タンクとを連通させるリリーフ通路と、
前記リリーフ通路に設けられ、前記供給通路内を流れる燃料の圧力が予め定められた所定圧力になると開弁するリリーフ弁と、をさらに備え、
前記逆止弁は、前記供給通路と前記リリーフ通路の分岐部と、前記リターン通路と前記供給通路の分岐部との間に設けられることを特徴とする燃料圧力制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料圧力制御装置に関し、特に車両等に搭載される内燃機関の燃料噴射弁に供給される燃料の圧力を制御する燃料圧力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の燃料圧力制御装置として、燃料供給通路を介して内燃機関に燃料を供給する電動式の燃料ポンプと、内燃機関に供給される燃料の圧力(以下、単に燃圧という)を所定の圧力に調整する燃圧レギュレータと、内燃機関の運転状態を検出し、検出された運転状態に基づき燃料ポンプの駆動を制御するECUとを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。より具体的には、この燃料圧力制御装置のECUは、内燃機関の運転状態が低回転低負荷運転状態にあると検出したときに、燃圧が燃圧レギュレータにより調整される所定の圧力より低い圧力となるように燃料ポンプの印加電圧を制御する。これにより、内燃機関の停止時にすでに燃圧を低下させておくことができるため、余分な電力を消費することなく内燃機関停止時のインジェクタからの燃料漏れを抑制することができる。
【0003】
ところで、こうした燃料ポンプの消費電力を低減するにあたっては、燃料ポンプの印加電圧を可能な限り低減することが望ましい。しかし、燃料ポンプの印加電圧を低下させ過ぎると、燃料中に含まれる異物が燃料ポンプの摺動部分に噛み込み、これが原因で電動ポンプに負荷が生ずることがある。このような異物噛み込みによる負荷は、電動ポンプの本来の吐出性能を損なわせる要因となる。
【0004】
このため、このような燃料ポンプには、上述したような異物噛み込みが生じた場合でも本来の吐出性能が発揮できるよう、印加電圧を所定の下限電圧以上としなければならないという制約がある。したがって、この燃料ポンプは、所定の下限電圧を下回る印加電圧で駆動されることがなく、多少の異物噛み込みがあっても本来の吐出性能を発揮することができる。
【0005】
ところが、こうした燃料ポンプでは、駆動領域が所定の下限電圧以上の領域であるため、燃料吐出量が所定の下限電圧に対応した最低の燃料吐出量以上に限定されてしまう。このような燃料ポンプでは、最低燃料吐出量を下回る燃料吐出量を実現することができない。したがって、このような燃料ポンプを備えた燃料圧力制御装置では、燃料噴射弁から噴射される燃料噴射量を下限電圧に対応した最低の燃料吐出量未満とすることができないという課題がある。
【0006】
そこで、こうした課題を解決するために、燃料供給通路から分岐した分岐通路上に燃圧レギュレータとは別に減量弁を設け、内燃機関において消費される燃料消費量が燃料ポンプで吐出可能な最低の燃料吐出量未満とされる場合に、減量弁を開弁させることにより分岐通路を介して燃料供給通路内の燃料を燃料タンクに戻す構成が考えられる。このような減量弁を設ければ、燃料消費量を下限電圧に対応した最低の燃料吐出量未満とすることができる。
【0007】
ここで、上述したような減量弁としては、例えば通常時には開弁し、駆動信号により閉弁する、いわゆるノーマルオープン型の電磁弁が考えられる。特に、このようなノーマルオープン型の減量弁を採用することで、例えば内燃機関の始動時等の必要なときにのみ通電して減量弁を閉弁させればよいので、電力消費量を抑制でき、ひいては燃費改善につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−207928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述したような減量弁としてノーマルオープン型の電磁弁を採用すると、次のような問題が生ずる。すなわち、内燃機関の運転停止時に減量弁に対する通電が解除されると、減量弁が開弁状態となり燃料供給通路内の燃圧を保持できない。したがって、このような減量弁では、内燃機関の運転停止時に燃圧を維持するためには減量弁への通電を維持しなければならない。このため、電力消費量を抑えることができず、結果として燃費向上を図ることができないという問題がある。
【0010】
本発明は、上述のような問題を解決するためになされたもので、燃料消費量を電動式の燃料ポンプの最低の燃料吐出量未満に制御するための減量弁としてノーマルオープン型の電磁弁を採用した場合であっても、電力消費量を抑制しつつ内燃機関停止時の燃圧を保持できる燃料圧力制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る燃料圧力制御装置は、上記目的達成のため、(1)燃料タンクに貯留されている燃料を、供給通路を介して内燃機関の燃料噴射弁が接続されたデリバリパイプに圧送する電動式の燃料ポンプと、前記供給通路から分岐して前記供給通路内を流れる燃料の一部を前記燃料タンクに還流させるリターン通路と、前記リターン通路に設けられ、通電により閉弁し、前記通電が解除されることにより開弁するノーマルオープン型の電磁弁で構成された減量弁と、を備え、前記リターン通路と前記供給通路の分岐部と、前記デリバリパイプとの間に、前記デリバリパイプ側から前記燃料タンク側への燃料の逆流を阻止する逆止弁を設け、前記燃料ポンプは、摺動部分に異物の噛み込みが生じても駆動を維持可能な下限電圧以上の印加電圧で駆動されるよう構成され、前記減量弁は、前記下限電圧で前記燃料ポンプを駆動した際の前記燃料ポンプの燃料吐出量と、前記内燃機関の運転状態に応じて前記内燃機関に要求される要求燃料消費量との差分燃料を前記燃料タンクに還流させる制御弁としての機能を有し、前記リターン通路よりも前記デリバリパイプ側で前記供給通路に接続され、前記供給通路と前記燃料タンクとを連通させるリリーフ通路と、前記リリーフ通路に設けられ、前記供給通路内を流れる燃料の圧力が予め定められた所定圧力になると開弁するリリーフ弁と、をさらに備え、前記逆止弁は、前記供給通路と前記リリーフ通路の分岐部と、前記リターン通路と前記供給通路の分岐部との間に設けた構成を有する。
【0012】
この構成により、本発明に係る燃料圧力制御装置は、減量弁が設けられたリターン通路と供給通路の分岐部と、デリバリパイプとの間に逆止弁を設けたので、内燃機関の運転停止時に、ノーマルオープン型の電磁弁で構成された減量弁に対する通電が解除されても逆止弁により供給通路内の燃料の圧力(以下、燃圧という)を維持することができる。このため、内燃機関の運転停止時に燃圧を維持するために減量弁に対する通電を維持する必要がなく、例えば内燃機関の始動時等の必要なときのみ通電させればよいので、電力消費量を抑えることができ、燃費向上に寄与することができる。このように、本発明に係る燃料圧力制御装置は、燃料消費量を電動式の燃料ポンプの最低の燃料吐出量未満に制御するための減量弁としてノーマルオープン型の電磁弁を採用した場合であっても、電力消費量を抑制しつつ内燃機関停止時の燃圧を保持できる。
【0014】
この構成により、本発明に係る燃料圧力制御装置は、燃料ポンプが下限電圧以上の印加電圧で駆動されるので、燃料ポンプが異物噛み込みにより駆動停止することを防止することができる。また、減量弁が、燃料ポンプを下限電圧で駆動した際の燃料ポンプの燃料吐出量と要求燃料消費量との差分燃料を燃料タンクに還流させる制御弁として機能を有するので、燃料ポンプの印加電圧を下限電圧以上に維持しつつも、要求燃料消費量を下限電圧に対応した最低の燃料吐出量未満とすることができる。したがって、過剰な燃料消費を抑えることができ、燃費向上を図ることができる。
【0016】
この構成により、本発明に係る燃料圧力制御装置は、供給通路とリリーフ通路の分岐部と、リターン通路と供給通路の分岐部との間に逆止弁を設けたので、リリーフ弁を介して供給通路内の燃圧を所定圧力以下に制御することができる。ここで、リリーフ弁の開弁圧である所定圧力は、供給通路内の燃圧の異常上昇を防止するための圧力に設定されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、燃料消費量を電動式の燃料ポンプの最低の燃料吐出量未満に制御するための減量弁としてノーマルオープン型の電磁弁を採用した場合であっても、電力消費量を抑制しつつ内燃機関停止時の燃圧を保持できる燃料圧力制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係る燃料圧力制御装置が適用される車両の概略構成図である。
図2】本発明の実施の形態に係る減量弁の概略図であって、(a)は開弁状態、(b)は閉弁状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
図1に示すように、車両1は、エンジン10と、燃料供給機構20と、ECU(Electronic Control Unit)100とを含んで構成されている。
【0021】
エンジン10は、例えばガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力可能な内燃機関として構成されている。なお、エンジン10に用いられる燃料は、エタノール等のアルコールとガソリンとを混合したアルコール燃料であってもよい。
【0022】
本実施の形態では、エンジン10は、#1、#2、#3、#4で示すように直列に4つの気筒11を配置した、いわゆる直列4気筒のガソリンエンジンによって構成されている。なお、エンジン10としては、直列4気筒エンジンに限らず、例えば直列6気筒エンジン、V型6気筒エンジン、V型12気筒エンジンまたは水平対向6気筒エンジン等の種々の型式のエンジンによって構成されていてもよい。
【0023】
また、本実施の形態において、エンジン10は、図示しないピストンが2往復する間に吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程からなる一連の4行程を行う、4サイクルのガソリンエンジンによって構成されているものとして説明する。
【0024】
さらに、エンジン10における#1、#2、#3、#4で示す4つの各気筒11には、それぞれ吸気ポート12が設けられている。また、エンジン10は、この吸気ポート12内に燃料を噴射するためのポート噴射インジェクタ13を備えている。
【0025】
ポート噴射インジェクタ13は、ECU100からの噴射指令信号Iqによって制御されるソレノイドコイルと、ニードルバルブと、噴口部とを有している。ポート噴射インジェクタ13には、所定の圧力で燃料が供給されている。ポート噴射インジェクタ13は、ECU100によってソレノイドコイルが通電されると、ニードルバルブを開いて、吸気ポート12内に燃料を噴射するようになっている。本実施の形態におけるポート噴射インジェクタ13は、本発明に係る燃料噴射弁を構成する。
【0026】
燃料供給機構20は、燃料タンク30から燃料を加圧して汲み上げる燃料ポンプ21と、燃料ポンプ21によって汲み上げられた燃料を燃料配管22を通して導入するデリバリパイプ23とを備えている。燃料配管22には、燃料を燃料ポンプ21からデリバリパイプ23に供給するための供給通路22aが形成されている。
【0027】
この構成により、燃料供給機構20は、エンジン10の吸気通路15のうち複数の気筒11に対応する複数の吸気ポート12の内部にそれぞれ燃料を噴射する複数のポート噴射インジェクタ13に燃料を供給するようになっている。
【0028】
燃料ポンプ21は、ECU100によって出力される制御信号に応じて駆動される電動式の燃料ポンプであり、燃料タンク30に貯留されている燃料を汲み上げ、これを燃料配管22内の供給通路22aを介してポート噴射インジェクタ13が接続されたデリバリパイプ23に圧送するようになっている。
【0029】
具体的には、燃料ポンプ21は、ECU100によって出力される制御信号に応じた印加電圧によって回転速度が変化するモータと、このモータの回転力によって回転するインペラとを有している。燃料ポンプ21は、インペラを回転させることにより、燃料タンク30から燃料を加圧して汲み上げるようになっている。したがって、燃料ポンプ21は、モータに印加される印加電圧の大きさに応じてモータの回転力が調整され、吐出する燃料の燃料吐出量が可変とされる。
【0030】
また、燃料ポンプ21は、燃料中に含まれる比較的大きな異物を除去するサクションフィルタの機能と燃料中に含まれる比較的小さな異物やモータ異物を除去するフューエルフィルタの機能とを兼ね備えた統合フィルタを備えている。
【0031】
デリバリパイプ23は、複数の気筒11の直列配置方向の一端側で燃料配管22に接続され、複数のポート噴射インジェクタ13に独立して燃料を供給するように形成されている。また、デリバリパイプ23には、デリバリパイプ23内の燃料の圧力(以下、燃圧という)を検出する燃料圧力センサ25が設けられている。
【0032】
また、燃料供給機構20は、燃料配管22から分岐して同燃料配管22内を流れる燃料の一部を燃料タンク30に還流させるリリーフ用配管26と、リターン用配管27とを備えている。
【0033】
リリーフ用配管26は、リターン用配管27よりもデリバリパイプ23側で燃料配管22に接続され、供給通路22aと燃料タンク30とを連通させるリリーフ通路26aが内部に形成されている。
【0034】
リリーフ用配管26には、燃料配管22の燃圧が予め設定された所定の燃圧(例えば、数百kPaなど)を超えたときに燃料配管22から燃料タンク30に燃料を戻すリリーフ弁28が設けられている。すなわち、リリーフ弁28は、供給通路22a内の燃圧が予め定められた所定圧力になると開弁するようになっている。このリリーフ弁28は、燃料配管22の燃圧の異常上昇を防止するために設けられたものである。したがって、リリーフ弁28の開弁圧である上記所定圧力は、供給通路22a内の燃圧の異常上昇を防止するための圧力(例えば、600kPa)に設定されている。
【0035】
リターン用配管27は、供給通路22aから分岐して同供給通路22a内を流れる燃料の一部を燃料タンク30に還流させるリターン通路27aが内部に形成されている。
【0036】
リターン用配管27には、通電により閉弁し、通電が解除されることにより開弁する、いわゆるノーマルオープン型の電磁弁で構成された減量弁29が設けられている。
【0037】
詳しくは、図2(a)に示すように、減量弁29は、電磁ソレノイド29aと、弁体29bと、コイルスプリング29cとを含んで構成されている。減量弁29は、電磁ソレノイド29aが通電されていない状態、すなわち通電が解除された状態ではコイルスプリング29cの付勢力により弁体29bが開弁方向(図中、下方)に付勢され、開弁状態を維持するようになっている。これにより、リターン通路27aが連通状態となり、減量弁29に流入する燃料が弁体29bに形成された連通孔29dを介して燃料タンク30側に流れる。つまり、減量弁29が開弁状態とされると、燃料配管22内を流れる燃料の一部、例えば後述するように余剰分の燃料がリターン通路27aを介して燃料タンク30(図1参照)に戻される。
【0038】
一方、図2(b)に示すように、減量弁29は、ECU100からの指令信号に応じて電磁ソレノイド29aに通電されると、弁体29bがコイルスプリング29cの付勢力に抗して閉弁方向(図中、上方)に移動し、閉弁状態となる。これにより、リターン通路27aが非連通状態となる。
【0039】
さらに、図1に示すように、燃料供給機構20は、供給通路22aとリターン通路27aの分岐部42と、デリバリパイプ23との間の供給通路22a上に、逆止弁40が設けられている。
【0040】
逆止弁40は、より詳細には供給通路22aとリリーフ通路26aの分岐部41と、分岐部42との間に設けられている。
【0041】
逆止弁40は、供給通路22aにおいてデリバリパイプ23側から燃料タンク30側への燃料の逆流を阻止するようになっている。この逆止弁40の作用については後述する。
【0042】
ECU100は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えるマイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUは、RAMの一時記憶機能を利用するとともにROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うようになっている。ROMには、各種制御定数や各種マップ等が予め記憶されている。
【0043】
また、ECU100には、前述した燃料圧力センサ25、回転速度センサ101、吸気量センサ102およびアクセル開度センサ103等の各種センサ類や、ポート噴射インジェクタ13、燃料ポンプ21および減量弁29が接続されている。
【0044】
燃料圧力センサ25は、デリバリパイプ23内の燃圧を検出する。回転速度センサ101は、エンジン10のエンジン回転速度Neを検出する。吸気量センサ102は、吸入空気量GAを検出する。アクセル開度センサ103は、アクセルペダルの踏み込み量に応じたアクセル操作量ACCを検出する。これら各センサは、検出結果に応じた信号をECU100に送信するようになっている。
【0045】
ECU100は、これら各種センサから入力される信号に基づき各種演算を実行し、その演算結果に基づき各種制御を実行するようになっている。
【0046】
例えば、ECU100は、吸入空気量GAやエンジン回転速度Ne、アクセル操作量ACC等に基づいて、目標燃料噴射量Qを算出する。ECU100は、算出した目標燃料噴射量Qを実現することができるように燃圧に基づき、ポート噴射インジェクタ13の開弁期間、つまり噴射期間を設定する。ECU100は、設定した噴射期間に応じて各ポート噴射インジェクタ13に個別に開弁指令を出力する。これにより、エンジン10の運転状態に見合う量の燃料が各ポート噴射インジェクタ13から噴射されるようになる。このとき、ECU100は、目標燃料噴射量Q分の燃料がポート噴射インジェクタ13から噴射されるように、燃料ポンプ21の燃料吐出量を調整すべく燃料ポンプ21に印加する印加電圧を制御するようになっている。
【0047】
また、ECU100は、目標とする燃圧(以下、目標燃圧という)を確保するために必要な最低限の吐出能力が得られるように、目標燃圧の大きさに応じて燃料ポンプ21に印加する印加電圧を制御する。ここで、目標燃圧は、例えばエンジン10の運転状態や燃料噴射量に応じた最適な燃圧である。
【0048】
より詳細には、ECU100は、所定の下限電圧Vmin以上で上記印加電圧を制御する。所定の下限電圧Vminは、燃料ポンプ21の摺動部分、例えばインペラとポンプカバーとの間の隙間部分に異物の噛み込みが生じても燃料ポンプ21の駆動を維持可能な駆動トルクを発生させることができる電圧とされる。つまり、燃料ポンプ21は、上述した摺動部分に異物の噛み込みが生じても駆動を維持可能な下限電圧Vmin以上の印加電圧で駆動されるようになっている。したがって、燃料ポンプ21が上記のような異物の噛み込みにより駆動停止することを防止することができる。
【0049】
ここで、燃料ポンプ21は、上述の下限電圧Vminによって制限されているため、下限電圧Vmin未満の印加電圧で駆動させることができない。この場合、燃料ポンプ21の燃料吐出量の最低量は、下限電圧Vminに応じた燃料吐出量となる。したがって、燃料ポンプ21は、下限電圧Vminに応じた最低の燃料吐出量未満の燃料吐出量で燃料を吐出することができない。このため、例えばアイドル運転時等のように要求される燃料消費量(要求燃料消費量)が小さい場合には、要求燃料消費量に対して上述の最低の燃料吐出量が大きくなってしまい、所望の要求燃料消費量を得ることができないという問題がある。ここでいう要求燃料消費量は、例えば目標燃料噴射量Qを得るためにエンジン10で消費される燃料消費量である。
【0050】
また、これに伴い、デリバリパイプ23内の実際の燃圧(以下、実燃圧という)も目標燃圧を超えて上昇してしまい、実燃圧を目標燃圧に維持できない。
【0051】
そこで、本実施の形態では、このような問題を解決するために、燃料噴射機構20に上述した減量弁29を設けた。これにより、下限電圧Vminで燃料ポンプ21を駆動した際の最低の燃料吐出量と、エンジン10の運転状態に応じて要求される要求燃料消費量との差分燃料がある場合には、減量弁29を開弁状態とすることにより差分燃料を燃料タンク30に還流させることができる。このように減量弁29は、制御弁としての機能を有する。
【0052】
次に、図1および図2を参照して、本実施の形態に係る減量弁29および逆止弁40の作用について説明する。
【0053】
エンジン10が運転停止時あるいは始動時等でない通常の運転状態にあるとき、減量弁29は、電磁ソレノイド29aが非通電状態とされているため、コイルスプリング29cの付勢力により開弁状態に維持されている。このとき、燃料ポンプ21から吐出される燃料吐出量は、減量弁29を介して燃料タンク30に戻される燃料量を考慮した吐出量に設定されている。
【0054】
ここで、エンジン10が例えばアイドル運転状態となると、エンジン10に供給する燃料を減量するべく、燃料ポンプ21の印加電圧を下限電圧Vminまで低下させて燃料吐出量を最低量とする。このとき、アイドル運転状態でエンジン10に要求される要求燃料消費量が燃料ポンプ21の下限電圧Vminに応じた最低の燃料吐出量を下回ることとなる。本実施の形態では、このような場合であっても減量弁29が開弁状態とされているため、最低の燃料吐出量と要求燃料消費量との差分燃料がリターン通路27aおよび減量弁29を介して燃料タンク30に戻される。これにより、エンジン10で消費される燃料消費量を所望の要求燃料消費量とすることができる。
【0055】
次いで、エンジン10が通常の運転状態から運転停止されると、燃料ポンプ21の駆動も停止することから供給通路22a内の燃圧が低下することとなる。このとき、本実施の形態では、逆止弁40が閉弁し、エンジン10の運転停止後の供給通路22a内の燃圧が維持される。ここで、逆止弁40が分岐部42よりもデリバリパイプ23側、つまり燃料の供給方向下流側に設けられているので、エンジン10の運転停止時に開弁している減量弁29による燃圧低下が防止される。これにより、燃圧がエンジン10の運転停止時の燃圧に維持される。したがって、次回始動時は、燃圧を速やかに目標燃圧まで上昇させることができる。
【0056】
これら運転状態および運転停止状態に対して、エンジン10の始動時は、減量弁29が閉弁される。具体的には、ECU100が、例えばイグニッションスイッチやスタータのON信号に基づきエンジン始動要求を検知し、これに応じて減量弁29の電磁ソレノイド29aに通電を行う。この通電により減量弁29が開弁状態から閉弁状態に移行する。これにより、エンジン10の始動時における燃圧を速やかに上昇させることができ、始動性の向上に寄与する。エンジン10の始動が完了すると、電磁ソレノイド29aへの通電が解除され、減量弁29が開弁する。
【0057】
本実施の形態では、エンジン10が通常の運転状態にあるときは、減量弁29を開弁し、始動時にのみ閉弁する例について説明したが、これに限らず、例えばスロットル全開(WOT)状態等の高負荷運転時にも減量弁29を閉弁するようにしてもよい。この場合、減量弁29を閉弁することによりエンジン10に供給される燃料量を早期に増大させることができ、運転者の高負荷運転要求にレスポンスよく応えることができる。
【0058】
以上のように、本実施の形態に係る燃料圧力制御装置は、分岐部42とデリバリパイプ23との間に逆止弁40を設けたので、エンジン10の運転停止時に、ノーマルオープン型の電磁弁で構成された減量弁29に対する通電が解除されても逆止弁40により供給通路22a内の燃圧を維持することができる。このため、エンジン10の運転停止時に燃圧を維持するために減量弁29に対する通電を維持する必要がなく、例えばエンジン10の始動時やスロットル全開時等の必要なときのみ通電させればよいので、電力消費量を抑えることができ、燃費向上に寄与することができる。このように、本実施の形態に係る燃料圧力制御装置は、燃料消費量を電動式の燃料ポンプ21の最低の燃料吐出量未満に制御するための減量弁29としてノーマルオープン型の電磁弁を採用した場合であっても、電力消費量を抑制しつつエンジン10の運転停止時の燃圧を保持できる。
【0059】
また、本実施の形態に係る燃料圧力制御装置は、燃料ポンプ21が下限電圧Vmin以上の印加電圧で駆動されるので、燃料ポンプ21が異物噛み込みにより駆動停止することを防止することができる。また、減量弁29が、燃料ポンプ21を下限電圧Vminで駆動した際の燃料ポンプ21の最低の燃料吐出量と要求燃料消費量との差分燃料を燃料タンク30に還流させる制御弁として機能を有するので、燃料ポンプ21の印加電圧を下限電圧Vmin以上に維持しつつも、要求燃料消費量を下限電圧Vminに対応した最低の燃料吐出量未満とすることができる。したがって、過剰な燃料消費を抑えることができ、燃費向上を図ることができる。
【0060】
さらに、本実施の形態に係る燃料圧力制御装置は、分岐部41と分岐部42との間に逆止弁40を設けたので、リリーフ弁28を介して供給通路22a内の燃圧を、燃圧の異常上昇を防止するために規定された所定圧力以下に制御することができる。
【0061】
なお、本実施の形態では、エンジン10は、吸気ポート内に燃料を噴射するポート噴射のみを行う内燃機関で構成したが、これに限らず、気筒内の燃焼室に直接に燃料を噴射する筒内噴射と、気筒に対応する吸気ポート内に燃料を噴射するポート噴射とを併用するデュアル噴射方式の内燃機関で構成してもよい。
【0062】
以上説明したように、本発明に係る燃料圧力制御装置は、燃料消費量を電動式の燃料ポンプの最低の燃料吐出量未満に制御するための減量弁としてノーマルオープン型の電磁弁を採用した場合であっても、電力消費量を抑制しつつ内燃機関停止時の燃圧を保持でき、車両等に搭載される内燃機関の燃料噴射弁に供給される燃料の圧力を制御する燃料圧力制御装置に有用である。
【符号の説明】
【0063】
1 車両
10 エンジン(内燃機関)
13 ポート噴射インジェクタ(燃料噴射弁)
20 燃料供給機構
21 燃料ポンプ
22 燃料配管
22a 供給通路
23 デリバリパイプ
26 リリーフ用配管
26a リリーフ通路
27 リターン用配管
27a リターン通路
28 リリーフ弁
29 減量弁
29a 電磁ソレノイド
29b 弁体
29c コイルスプリング
30 燃料タンク
40 逆止弁
41、42 分岐部
100 ECU
図1
図2