特許第5989418号(P5989418)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989418
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】カプセル内視鏡セット
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20160825BHJP
   A61B 5/07 20060101ALI20160825BHJP
   A61B 1/04 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   A61B1/00 320B
   A61B1/00 300B
   A61B5/07
   A61B1/04 370
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-140672(P2012-140672)
(22)【出願日】2012年6月22日
(65)【公開番号】特開2014-4072(P2014-4072A)
(43)【公開日】2014年1月16日
【審査請求日】2015年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083286
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100166408
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 邦陽
(72)【発明者】
【氏名】大瀧 拓真
【審査官】 北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−125441(JP,A)
【文献】 特開2009−148552(JP,A)
【文献】 特開2006−231072(JP,A)
【文献】 特開2009−195558(JP,A)
【文献】 特開2011−125534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 − 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセル内視鏡;及び
非起動状態の前記カプセル内視鏡を収納する収納部と、この収納部に収納された前記カプセル内視鏡を取り出すための開口と、この開口を閉塞するように前記収納部に接着される剥離可能な剥離部材とを有するカプセル収納部材;
を備えるカプセル内視鏡セットにおいて、
前記剥離部材に、前記開口を閉塞したままで前記カプセル収納部材内の前記カプセル内視鏡を起動させるためのカプセル起動用押圧部が設けられていること;
前記剥離部材の前記カプセル起動用押圧部と前記カプセル内視鏡にはそれぞれ、両者の位置関係に応じて前記カプセル内視鏡を起動させるための起動信号を非接触で送受信する起動信号送信部と起動信号受信部が設けられていること
前記起動信号送信部と前記起動信号受信部は、両者の間の距離が所定値以下であるときには前記起動信号の送受信を行い、両者の間の距離が所定値より大きいときには前記起動信号の送受信を行わないこと;及び
前記起動信号送信部と前記起動信号受信部は、前記剥離部材の前記カプセル起動用押圧部に外力を加えない状態では両者の間の距離が所定値より大きくなっていて前記起動信号を送受信せず、前記剥離部材の前記カプセル起動用押圧部が押圧変位されたときに両者の間の距離が所定値以下となって前記起動信号を送受信するような位置関係で、前記剥離部材の前記カプセル起動用押圧部と前記カプセル内視鏡にそれぞれ設けられていること;
を特徴とするカプセル内視鏡セット。
【請求項2】
請求項1記載のカプセル内視鏡セットにおいて、
前記剥離部材には、前記開口を開放して前記カプセル内視鏡を取り出すためのカプセル取出用押圧部が設けられており、
前記カプセル収納部材の前記収納部は、前記カプセル取出用押圧部が押圧されたときに、前記カプセル内視鏡の姿勢を変換して前記剥離部材の前記カプセル起動用押圧部を剥離することで前記開口を開放させる形状を有しているカプセル内視鏡セット。
【請求項3】
請求項2記載のカプセル内視鏡セットにおいて、
前記カプセル収納部材の前記収納部は、外層部材と内層部材からなり、この内層部材が、前記カプセル取出用押圧部が押圧されたときに、前記カプセル内視鏡の姿勢を変換して前記剥離部材の前記カプセル起動用押圧部を剥離することで前記開口を開放させる形状を有しているカプセル内視鏡セット。
【請求項4】
請求項3記載のカプセル内視鏡セットにおいて、
前記カプセル内視鏡は、被写体を撮影して被写体画像を生成する画像生成部を有しており、
前記内層部材は、前記画像生成部により撮影されることで該画像生成部が生成する被写体画像のホワイトバランスを調整する、全体が白色の一体成形品からなるカプセル内視鏡セット。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか1項記載のカプセル内視鏡セットにおいて、
前記剥離部材には、前記カプセル起動用押圧部と前記カプセル取出用押圧部を区画するための指標が設けられているカプセル内視鏡セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセル内視鏡をカプセル収納部材に収納したカプセル内視鏡セットに関する。
【背景技術】
【0002】
カプセル内視鏡セットは、非起動状態のカプセル内視鏡をカプセル収納部材に収納し、使用時にカプセル収納部材から取り出して起動状態とする。カプセル内視鏡の起動は、カプセル収納部材の内部において行い、各種の画質調整処理(例えば、ホワイトバランス調整、カラーバランス調整、歪み調整、ガンマ調整など)が実行される。カプセル収納部材から取り出されたカプセル内視鏡は、被検者により飲み込まれ、その体内を通過する際に画像データを生成する。この画像データを処理することにより、体腔内の画像が生成され、消化器の内部等を観察することができる。
【0003】
例えば、特許文献1のカプセル内視鏡セットでは、カプセル収納部材に、カプセル内視鏡を収納する収納部と、この収納部からカプセル内視鏡を取り出すための開口とが備えられ、この開口がカプセル収納部材に接着された剥離部材によって閉塞されている。この剥離部材には、カプセル内視鏡の電源スイッチに連動した糸状部材と、画質調整のための複数の画質調整用チャートとが連結されている。カプセル内視鏡の使用時に剥離部材を剥離すると、糸状部材を介して電源スイッチが操作されてカプセル内視鏡が起動すると共に、複数の画質調整用チャートがカプセル収納部材の内部から外部に引き出され、カプセル内視鏡によって各画質調整用チャートを撮影することで各種の画質調整処理が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−195558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のカプセル内視鏡セットは、剥離部材に連結した糸状部材をカプセル内視鏡の電源スイッチに連動させるために、糸状部材の先端部に設けたピンをカプセル内視鏡の内部に設けた電気接点に接離させており、カプセル収納部材ひいてはカプセル内視鏡セットの部品点数が多く構造が複雑で組み付けも困難である。このため、カプセル内視鏡の起動から取り出しまでの作業を一連の流れの中で円滑に行うことができない。また、カプセル内視鏡の電気接点の近傍の防水構造が複雑かつ高コストになってしまう。
【0006】
本発明は、以上の問題意識に基づいてなされたものであり、カプセル収納部材ひいてはカプセル内視鏡セットを部品点数が少なく構造が簡単で組み付け容易に構成し、カプセル内視鏡の起動から取り出しまでの作業を一連の流れの中で円滑に行い、カプセル内視鏡の防水構造を簡単かつ低コストにすることができるカプセル内視鏡セットを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のカプセル内視鏡セットは、カプセル内視鏡;及び非起動状態の前記カプセル内視鏡を収納する収納部と、この収納部に収納された前記カプセル内視鏡を取り出すための開口と、この開口を閉塞するように前記収納部に接着される剥離可能な剥離部材とを有するカプセル収納部材;を備えるカプセル内視鏡セットにおいて、前記剥離部材に、前記開口を閉塞したままで前記カプセル収納部材内の前記カプセル内視鏡を起動させるためのカプセル起動用押圧部が設けられていること;前記剥離部材の前記カプセル起動用押圧部と前記カプセル内視鏡にはそれぞれ、両者の位置関係に応じて前記カプセル内視鏡を起動させるための起動信号を非接触で送受信する起動信号送信部と起動信号受信部が設けられていること;前記起動信号送信部と前記起動信号受信部は、両者の間の距離が所定値以下であるときには前記起動信号の送受信を行い、両者の間の距離が所定値より大きいときには前記起動信号の送受信を行わないこと;及び前記起動信号送信部と前記起動信号受信部は、前記剥離部材の前記カプセル起動用押圧部に外力を加えない状態では両者の間の距離が所定値より大きくなっていて前記起動信号を送受信せず、前記剥離部材の前記カプセル起動用押圧部が押圧変位されたときに両者の間の距離が所定値以下となって前記起動信号を送受信するような位置関係で、前記剥離部材の前記カプセル起動用押圧部と前記カプセル内視鏡にそれぞれ設けられていること;を特徴としている。
【0008】
前記剥離部材に、前記開口を開放して前記カプセル内視鏡を取り出すためのカプセル取出用押圧部を設けて、前記カプセル収納部材の前記収納部を、前記カプセル取出用押圧部が押圧されたときに、前記カプセル内視鏡の姿勢を変換して前記剥離部材の前記カプセル起動用押圧部を剥離することで前記開口を開放させる形状とすることができる。
【0009】
前記カプセル収納部材の前記収納部を外層部材と内層部材の二層構造として、この内層部材を、前記カプセル取出用押圧部が押圧されたときに、前記カプセル内視鏡の姿勢を変換して前記剥離部材の前記カプセル起動用押圧部を剥離することで前記開口を開放させる形状とすることができる。
【0010】
前記カプセル内視鏡に、被写体を撮影して被写体画像を生成する画像生成部を設けて、前記内層部材を、前記画像生成部により撮影されることで該画像生成部が生成する被写体画像のホワイトバランスを調整する、全体が白色の一体成形品から構成することができる。
【0011】
前記剥離部材には、前記カプセル起動用押圧部と前記カプセル取出用押圧部を区画するための指標を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、カプセル収納部材ひいてはカプセル内視鏡セットを部品点数が少なく構造が簡単で組み付け容易に構成し、カプセル内視鏡の起動から取り出しまでの作業を一連の流れの中で円滑に行い、カプセル内視鏡の防水構造を簡単かつ低コストにすることができるカプセル内視鏡セットが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明によるカプセル内視鏡セットの一実施形態を示す、カプセル内視鏡をカプセル収納部材に収納した状態を示す断面図である。
図2】本発明によるカプセル内視鏡の構成を示すブロック図である。
図3】剥離部材のカプセル起動用押圧部とカプセル取出用押圧部を示す上面図である。
図4】カプセル起動用押圧部を押圧してカプセル内視鏡を非起動状態から起動状態に切り替える様子を示す図である。
図5】カプセル取出用押圧部を押圧してカプセル内視鏡をカプセル収納部材から取り出す様子を示す図である。
図6】カプセル内視鏡を起動させてから被検者の体内を撮影するまでの処理工程を示すフローチャートである。
図7図1のVII−VII線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1ないし図7を参照して、本発明によるカプセル内視鏡セットCSの一実施形態について説明する。以下の説明における上下左右の各方向は、図中に記載した矢線方向を基準としている。
【0020】
図1に示すように、カプセル内視鏡セットCSは、カプセル内視鏡100と、このカプセル内視鏡100を収納するカプセル収納部材200とを備えている。カプセル内視鏡100は、非起動状態でカプセル収納部材200に収納されており、カプセル収納部材200から取り出されたときには起動状態とされる。図1はカプセル内視鏡100をカプセル収納部材200に収納した状態を描いている。
【0021】
まず、カプセル内視鏡100の構成について説明する。
【0022】
図1に示すように、カプセル内視鏡100は、一端が半球形状で閉じられ他端が開口した筒状ケース101と、この筒状ケース101の開口を閉塞する半球キャップ形状の先端光学部材102とからなる両端を半球形状とした滑らかな円筒形状の密閉カプセル103を備えている。筒状ケース101は各種の樹脂材料からなり、先端光学部材102は光透過性材料からなる。
【0023】
図1図2に示すように、密閉カプセル103の内部には、カプセル内視鏡100の動作全般を制御するCPU104と、カプセル内視鏡100の各構成要素に駆動電力を供給する電池(バッテリ)105とが設けられている。また、密閉カプセル103の内部には、先端光学部材102の先端側から順に、撮影レンズ(画像生成部)106と、撮像素子(画像生成部)107とが設けられており、撮影レンズ106の撮影光軸を挟んだ両側には一対の白色LED108が設けられている。さらに、密閉カプセル103の内部には、A/Dコンバータ109と、画像処理回路110とが設けられている。
【0024】
カプセル内視鏡100の起動状態で一対の白色LED108から照明光が発せられると、この照明光が先端光学部材102を透過して被写体に向かって出射され、被写体からの反射光が再び先端光学部材102を透過して撮影レンズ106を介して撮像素子107に入射する。その結果、撮像素子107上には被写体の光学像が形成され、その撮像データである被写体画像が生成される。撮像素子107で生成された被写体画像のデータには、A/Dコンバータ109によってアナログデジタル変換処理が施され、画像処理回路110によってホワイトバランス処理などの各種の画質調整処理が施される。これらの処理が施された被写体画像のデータは、密閉カプセル103の内部に設けられた送信アンテナ(図示せず)から外部機器(図示せず)に向けて無線送信される。
【0025】
密閉カプセル103の内部には、起動信号受信部(検知回路)120が設けられている。この起動信号受信部120は、後述するカプセル収納部材200の起動信号送信部270との間の距離が所定値以下であるときには、起動信号送信部270から送信された起動信号(例えば磁気信号)を非接触で受信し、起動信号送信部270との間の距離が所定値より大きいときには、起動信号送信部270から送信された起動信号を受信しない。起動信号受信部120は、起動信号送信部270からの起動信号の受信の有無をCPU104に通知する。密閉カプセル103の内部には、起動信号送信部270と起動信号受信部120との間で起動信号の送受信が可能になる所定距離の判定値を保持するROM111が設けられている。
【0026】
図1において起動信号受信部120は、起動信号送信部270と平面的な位置が一致する位置だけに設けられているように描かれている。しかし、実際には図7に示すように、起動信号受信部120は、密閉カプセル103の筒状ケース101の内壁面に帯状に巻かれて設けられており、カプセル内視鏡100の回転角度位置にかかわらず、起動信号受信部120と起動信号送信部270が対向するようになっている。つまり図1では、帯状に巻かれた起動信号受信部120のうち、起動信号送信部270に対向する部分だけが描かれている。
【0027】
CPU104は、ROM111を参照しつつ、起動信号受信部120から通知された起動信号の受信の有無に基づいて、カプセル内視鏡100の起動状態と非起動状態とを制御する。より具体的にCPU104は、カプセル内視鏡100の非起動状態において、起動信号受信部120から起動信号を受信した旨の通知を受けたときは、カプセル内視鏡100を非起動状態から起動状態に切り替える。カプセル内視鏡100が起動状態になると、電池105を介して、撮像素子107、一対の白色LED108、A/Dコンバータ109、画像処理回路110などに駆動電力が供給されて被写体画像の生成が可能になる。CPU104は、カプセル内視鏡100を非起動状態から起動状態に切り替えると、たとえその後に起動信号受信部120による起動信号の受信が途絶えたとしても、カプセル内視鏡100の起動状態を維持する。一方、CPU104は、カプセル内視鏡100の非起動状態において、起動信号受信部120から起動信号を受信していない旨の通知を受けたときは、カプセル内視鏡100の非起動状態を維持する。起動信号受信部120は、カプセル内視鏡100の起動状態と非起動状態の如何を問わず、電池105を介して駆動電力が供給されて、起動信号送信部270からの起動信号の受信が可能な状態となっている。
【0028】
続いて、カプセル収納部材200の構成について説明する。
【0029】
図1に示すように、カプセル収納部材200は、カプセル内視鏡100を収納する収納部210と、この収納部210に収納されたカプセル内視鏡100を取り出すための開口240と、この開口240を閉塞する剥離部材250とを備えている。
【0030】
収納部210は、外層部材220と、この外層部材220の内側に嵌め込まれた内層部材230との二層構造となっている。
【0031】
外層部材220は、平面視矩形で上面が開放された箱型部材であり、カプセル収納部材210の強度を確保するために、例えば熱硬化性プラスチックなどの硬質材料で構成されている。ここで熱硬化性プラスチックとしては、例えば、エポキシ樹脂やメラミン樹脂などが挙げられる。
【0032】
内層部材230は、収納部210に収納されたカプセル内視鏡100に直接接触して保持する部材であり、カプセル内視鏡100が故障しないよう保護するために、例えばウレタン樹脂、発泡スチロールや発泡ポリプロピレンなどの軟質材料で構成されている。このため、内層部材230は、加えられた外力に応じてある程度変形することができる。さらに内層部材230は、全体が白色の一体成形品から構成されている。
【0033】
内層部材230は、左壁面部(内壁面部)231、下壁面部(内壁面部)232及び右壁面部(内壁面部、ホワイトバランス調整部)233を有し、これらが外層部材220の内側に最小のクリアランスで嵌め込まれている。また内層部材230は、外層部材220の上面開放部の右側の略半分を覆う上壁面部234を有している。外層部材220の上面開放部のうち内層部材230の上壁面部234に覆われていない左側の略半分が、カプセル収納部210に収納されたカプセル内視鏡100を取り出すための開口240を形成している。内層部材230の下壁面部232と上壁面部234には、それぞれ、カプセル内視鏡100の曲面形状に対応した曲面支持部232aと曲面支持部234aが形成されている。この曲面支持部232aと支持曲面部234aの右側には、右壁面部233に向かって下壁面部232と上壁面部234の距離を広げる方向に傾斜する傾斜面部232bと234bが形成されている。
【0034】
カプセル内視鏡100は、図1に示すように、筒状ケース101側の先端部が内層部材230の左壁面部231に接触し、先端光学部材102側の先端部が内層部材230の右壁面部233に向かって露出し、かつ、先端光学部材102側の曲面部が内層部材230の下壁面部232と上壁面部234の曲面支持部232aと曲面支持部234aによって上下から挟み込まれた状態で、カプセル収納部材200の収納部210に収納される。この収納状態では、図7に示すように、内層部材230がカプセル内視鏡100の図1の紙面垂直方向の両端部に当接しており、カプセル内視鏡100の図1の紙面垂直方向への移動が規制されている。また、撮影レンズ106の撮影光軸は、内層部材230の右壁面部233に対して直交している。以下では、この収納状態におけるカプセル内視鏡100の姿勢位置を「基準姿勢位置」と呼ぶ。
【0035】
なお、図7では、図1のVII−VII線に沿う断面に実際に存在する構成要素(密閉カプセル103、一対の白色LED108、外層部材220、内層部材230、剥離部材250)を実線で描き、図1のVII−VII線に沿う断面には存在しないが図1の左右方向の対応する位置に存在する構成要素(CPU104、電池105、撮影レンズ106、起動信号受信部120)を破線で描いている。
【0036】
カプセル収納部材200に基準姿勢位置で収納されたカプセル内視鏡100が起動状態になると、撮影レンズ106と撮像素子107によって、内層部材230の右壁面部233を撮影することができる。撮影レンズ106の画角α(カプセル内視鏡100の撮影領域)は、内層部材230の右壁面部233の範囲内となるように設定されている。上述したように、内層部材230は全体が白色の一体成形品からなるため、内層部材230の右壁面部233を撮影することで、撮影レンズ106と撮像素子107によって撮影する被写体画像のホワイトバランスを調整することができる。
【0037】
ここで、撮影レンズ106と撮像素子107によって生成された被写体画像が、内層部材230の右壁面部(ホワイトバランス調整部)233によるホワイトバランス調整用の画像であるか否かは、CPU104により判定される。より具体的にCPU104は、生成された被写体画像の画像データを、予めROM111に格納されている画像データと比較することにより、生成された被写体画像がホワイトバランス調整用の画像であるか否かを判定する。
【0038】
剥離部材250は、例えば通気性のないアルミシートからなり、開口240を閉塞するように、接着剤により適度な強度で収納部210(外層部材220と内層部材230)の上端部に剥離可能に接着されている。
【0039】
図3に示すように、剥離部材250には、カプセル起動用押圧部251と、カプセル取出用押圧部252とが設けられている。カプセル起動用押圧部251には算用数字の「1」からなる指標251aが設けられており、カプセル取出用押圧部252には算用数字の「2」からなる指標252aが設けられていて、この指標251aと252aによって、カプセル起動用押圧部251とカプセル取出用押圧部252とが視覚によって識別できるように区画されている。以下では、剥離部材250(カプセル起動用押圧部251とカプセル取出用押圧部252)のうち、カプセル内視鏡100とは反対側の面を「表面」と呼び、カプセル内視鏡100側の面を「裏面」と呼ぶ。
【0040】
カプセル起動用押圧部251の裏面には、例えば連続気泡の発泡体(スポンジ)からなる保持部材260が接着されており、この保持部材260の下面に起動信号送信部270が設けられている。起動信号送信部270は、密閉カプセル103の筒状ケース101の内壁面に帯状に巻かれて設けられた起動信号受信部120に対向しており、起動信号受信部120に対して、カプセル内視鏡100を起動させるための起動信号(例えば磁気信号)を非接触で送信する。
【0041】
図1に示すように、非起動状態のカプセル内視鏡100が基準姿勢位置でカプセル収納部材200に収納され且つ剥離部材250に外力を加えない状態では、起動信号送信部270と起動信号受信部120との間の距離は十分に確保されている。このため、起動信号受信部120は、起動信号送信部270から送信された起動信号を受信することができず、CPU104の制御の下、カプセル内視鏡100の非起動状態が維持される。
【0042】
一方、図4に示すように、カプセル起動用押圧部251の表面を押圧変位させると、起動信号送信部270と起動信号受信部120との間の距離が縮まって所定値以下となる。このため、起動信号受信部120は、起動信号送信部270から送信された起動信号を非接触で受信することができ、CPU104の制御の下、カプセル内視鏡100が非起動状態から起動状態に切り替えられる。このように、カプセル起動用押圧部251の表面を押圧変位させることで、開口240を閉塞したままでカプセル収納部材200内のカプセル内視鏡100を起動させることができる。
【0043】
カプセル取出用押圧部252の裏面は、内層部材230の上壁面部234の上面に接着固定されている。図5に示すように、カプセル取出用押圧部252の表面を押圧すると、カプセル内視鏡100の先端光学部材102側の先端部が内層部材230の下壁面部232に沿って円弧運動することで、カプセル内視鏡100の筒状ケース101側の先端部が上方に起き上がる。これにより、カプセル起動用押圧部251が剥離されて開口240が開放され、この開口240からカプセル内視鏡100の筒状ケース101側の先端部が顔を出す。つまり内層部材230は、カプセル取出用押圧部252の表面が押圧されたときに、カプセル内視鏡100の姿勢を基準姿勢位置から変換してカプセル起動用押圧部251を剥離することで開口240を開放させる形状を有している。
【0044】
以上のように構成されたカプセル内視鏡セットCSは、次のようにして使用する。
【0045】
図1に示すように、カプセル内視鏡セットCSの非使用時(使用前)には、非起動状態のカプセル内視鏡100が基準姿勢位置でカプセル収納部材200に収納されている。カプセル内視鏡100の非起動状態では、電池105を介して起動信号受信部120のみに駆動電力が供給され、撮像素子107、一対の白色LED108、A/Dコンバータ109、画像処理回路110などには駆動電力が供給されない。また、剥離部材250に外力が加えられておらず、起動信号送信部270と起動信号受信部120との間の距離は十分に確保されているので、起動信号受信部120は、起動信号送信部270から送信された起動信号を受信することができず、CPU104の制御の下、カプセル内視鏡100の非起動状態が維持される。
【0046】
カプセル内視鏡セットCSの使用時には、まず図4に示すように、カプセル起動用押圧部251の表面を押圧変位させることで、起動信号送信部270と起動信号受信部120との間の距離を縮めて所定値以下とする。すると、起動信号受信部120は、起動信号送信部270から送信された起動信号を非接触で受信することができ、CPU104の制御の下、カプセル内視鏡100が非起動状態から起動状態に切り替えられる。カプセル内視鏡100が起動状態になると、電池105を介して、撮像素子107、一対の白色LED108、A/Dコンバータ109、画像処理回路110などに駆動電力が供給されて被写体画像の生成が可能になる。
【0047】
このようにしてカプセル収納部材200に基準姿勢位置で収納されたカプセル内視鏡100が起動状態になると、撮影レンズ106と撮像素子107によって内層部材230の右壁面部(ホワイトバランス調整部)233を撮影することで、撮影レンズ106と撮像素子107によって撮影する被写体画像のホワイトバランスが調整される。
【0048】
次いで図5に示すように、カプセル取出用押圧部252の表面を押圧すると、カプセル内視鏡100の先端光学部材102側の先端部が内層部材230の下壁面部232に沿って円弧運動することで、カプセル内視鏡100の筒状ケース101側の先端部が上方に起き上がる。これにより、カプセル起動用押圧部251が剥離されて開口240が開放され、この開口240からカプセル内視鏡100の筒状ケース101側の先端部が顔を出す。そして、カプセル内視鏡100の筒状ケース101側の先端部を摘み上げることで、カプセル内視鏡100をカプセル収納部材200から取り出すことができる。
【0049】
このようにして取り出したカプセル内視鏡100は、被検者により飲み込まれ、その体内を通過する際に画像データを生成する。この画像データを処理することにより、体腔内の画像が生成され、消化器の内部等を観察することができる。
【0050】
図6は、カプセル内視鏡100を起動させてから被検者の体内を撮影するまでの処理工程を示すフローチャートである。
【0051】
まずステップS1では、カプセル内視鏡100による撮影のフレームレートが第1のフレームレート(例えば30fps)である初期設定モードが設定される。この初期設定モードでは、一対の白色LED108が、点灯時間が消灯時間よりも短くなるように(例えばデューティー比が10パーセント程度)、かつ第1のフレームレートに対応するように発光する。
【0052】
次いでステップS2では、撮影レンズ106と撮像素子107によって内層部材230の右壁面部(ホワイトバランス調整部)233を撮影する。
【0053】
次いでステップS3では、CPU104により、内層部材230の右壁面部(ホワイトバランス調整部)233の撮影データから算出されたホワイトバランス補正値(ゲイン値)が、予めROM111に格納されている上限値と下限値の間の適切な範囲内にあるか否か(生成された被写体画像がホワイトバランス調整用の画像であるか否か)が判定される。
【0054】
CPU104は、ホワイトバランス補正値が適当な値である(生成された被写体画像がホワイトバランス調整用の画像である)と判定したときは(ステップS3:YES)、ステップS4において、生成されたホワイトバランス調整用被写体画像に基づいて、撮影レンズ106と撮像素子107によって撮影する被写体画像のホワイトバランスを調整する。
【0055】
ステップS4のホワイトバランス調整が終了すると、ステップS5において、カプセル内視鏡100による撮影のフレームレートが第2のフレームレート(例えば2fps)である通常モードが設定される。この通常モードでは、一対の白色LED108が、比較的長い点灯時間(例えばデューティー比が50パーセント)で、かつ第2のフレームレートに対応するように発光する。
【0056】
最後にステップS6において、カプセル内視鏡100が被検者により飲み込まれ、その体内を通過する際に生成された画像データが生成される。
【0057】
一方、CPU104は、ホワイトバランス補正値が適当な値ではない(生成された被写体画像がホワイトバランス調整用の画像ではない)と判定したときは(ステップS3:NO)、ステップS7において、ユーザに不具合を知らせるためのエラー通知を行う。このエラー通知は、例えば、被写体画像を受信する受信ユニット(図示せず)における警告表示によって行うことができる。
【0058】
このように本実施形態によれば、剥離部材250にカプセル起動用押圧部251を設け、このカプセル起動用押圧部251とカプセル内視鏡100に起動信号を非接触で送受信する起動信号送信部270と起動信号受信部120を設け、カプセル起動用押圧部251を押圧変位させて起動信号送信部270と起動信号受信部120を接近させるだけで、カプセル内視鏡100を起動させることができるので、カプセル収納部材200ひいてはカプセル内視鏡セットCSを部品点数が少なく構造が簡単で組み付け容易に構成することができる。また、剥離部材250に設けたカプセル起動用押圧部251とカプセル取出用押圧部252をこの順番で押圧するだけで、カプセル内視鏡100の起動から取り出しまでの作業を一連の流れの中で円滑に行うことができる。さらに、カプセル内視鏡100の密閉構造に特別な工夫を施す必要がなく、カプセル内視鏡100の防水構造を簡単かつ低コストにすることができる。
【0059】
また、ホワイトバランス調整用の別部材を設けることなく、カプセル収納部材200の収納部210を外層部材220と内層部材230の二層構造とし、この内層部材230を全体が白色の一体成形品から構成してその右壁面部(ホワイトバランス調整部)233を撮影することでホワイトバランス調整を行っている。これにより、カプセル収納部材200のサイズ(厚み)をカプセル内視鏡のサイズ(厚み)に極限まで近づけることで、カプセル収納部材200のサイズ(厚み)を小さくして複数のカプセル内視鏡セットCSをスペース効率よく保管し、カプセル収納部材200を部品点数が少なく構造が簡単で組み付け容易に構成し、カプセル収納部材200の洗浄に対する耐久性を高めることができる。
【0060】
以上の実施形態では、カプセル起動用押圧部251を押圧してカプセル内視鏡100を起動させた後に、カプセル取出用押圧部252を押圧して開口240を開放させる場合を例示して説明した。しかし、カプセル起動用押圧部251を押圧してカプセル内視鏡100を起動させた後であれば、開口240を開放させる方法はこれに限定されず、例えば、剥離部材250の端部を捲り上げてカプセル起動用押圧部251を剥離することで、開口240を開放することも可能である。
【0061】
以上の実施形態では、カプセル起動用押圧部251を押圧して起動信号送信部270と起動信号受信部120との間の距離が所定値以下となったときに、起動信号受信部120が起動信号を受信する場合を例示して説明した。しかし、カプセル起動用押圧部251を押圧したときにのみ起動信号受信部120が起動信号を受信できればよく、そのための具体的構成には自由度がある。例えば、カプセル起動用押圧部251を押圧して起動信号送信部270からの起動信号が所定の信号強度を超えたときに、起動信号受信部120が起動信号を受信するようにしてもよいし、カプセル起動用押圧部251を押圧したときにのみ起動信号送信部270が起動信号を送信して起動信号受信部120がこれを受信するようにしてもよい。
【0062】
以上の実施形態では、カプセル起動用押圧部251とカプセル取出用押圧部252を区画するための指標として、算用数字の「1」と「2」を設けた場合を例示して説明した。しかし、指標の態様はこれに限定されず、例えば、「起動用」と「取出用」の文字を設けてカプセル起動用押圧部251とカプセル取出用押圧部252を区画してもよいし、カプセル起動用押圧部251とカプセル取出用押圧部252を異なる色にすることで両押圧部を区画してもよい。
【0063】
以上の実施形態では、円筒形状のカプセル内視鏡100を例示して説明したが、カプセル内視鏡の形状はこれに限定されず、例えば球状または断面視楕円形状などの他の形状とすることもできる。
【符号の説明】
【0064】
CS カプセル内視鏡セット
100 カプセル内視鏡
101 筒状ケース
102 先端光学部材
103 密閉カプセル
104 CPU
105 電池(バッテリ)
106 撮影レンズ(画像生成部)
107 撮像素子(画像生成部)
108 白色LED
109 A/Dコンバータ
110 画像処理回路
111 ROM
120 起動信号受信部(検知回路)
200 カプセル収納部材
210 収納部
220 外層部材
230 内層部材
231 左壁面部(内壁面部)
232 下壁面部(内壁面部)
232a 曲面支持部
232b 傾斜面部
233 右壁面部(内壁面部、ホワイトバランス調整部)
234 上壁面部
234a 曲面支持部
234b 傾斜面部
240 開口
250 剥離部材
251 カプセル起動用押圧部
251a 指標
252 カプセル取出用押圧部
252a 指標
260 保持部材
270 起動信号送信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7