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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989425
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】点火プラグ
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/16 20060101AFI20160825BHJP
   H01T 13/20 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   H01T13/16
   H01T13/20 B
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-149931(P2012-149931)
(22)【出願日】2012年7月3日
(65)【公開番号】特開2014-13667(P2014-13667A)
(43)【公開日】2014年1月23日
【審査請求日】2015年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社日本自動車部品総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100134511
【弁理士】
【氏名又は名称】八田 俊之
(74)【代理人】
【識別番号】100128565
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼林 芳孝
(72)【発明者】
【氏名】安藤 彰浩
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 基正
(72)【発明者】
【氏名】中田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】能川 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 宏太朗
【審査官】 高橋 学
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−046234(JP,A)
【文献】 特開2008−108478(JP,A)
【文献】 特開2009−004257(JP,A)
【文献】 特開2013−143263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/00−13/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング部と、前記ハウジング部に保持される碍子と、前記碍子から露出した中心電極と、前記中心電極との間で放電ギャップ部を形成する接地電極とを備えるとともに、前記ハウジング部と前記碍子との間にプラグポケットを有し、
前記ハウジング部のうち、前記プラグポケットに隣接する部分に面積拡大加工が施されていない第1の非加工領域と、面積拡大加工が施された加工領域とを有し、
前記加工領域が前記第1の非加工領域よりも軸線方向において先端側に位置しており、
前記加工領域は前記非加工領域の内径よりも大きな内径を有している螺旋状の溝部を複数有する点火プラグ。
【請求項2】
ハウジング部と、前記ハウジング部に保持される碍子と、前記碍子から露出した中心電極と、前記中心電極との間で放電ギャップ部を形成する接地電極とを備えるとともに、前記ハウジング部と前記碍子との間にプラグポケットを有し、
前記ハウジング部のうち、前記プラグポケットに隣接する部分に面積拡大加工が施されていない第1の非加工領域と、面積拡大加工が施された加工領域とを有し、
前記加工領域が前記第1の非加工領域よりも軸線方向において先端側に位置しており、
前記ハウジング部のうち、前記プラグポケットに隣接する部分に面積拡大加工が施されていない第2の非加工領域をさらに有し、
前記第2の非加工領域が前記加工領域よりも軸線方向において先端側に位置する点火プラグ。
【請求項3】
請求項1記載の点火プラグであって、
前記ハウジング部の外周部に設けられ、内燃機関との締結に用いられるねじ部の山部に沿って延伸するように前記溝部を設けている点火プラグ。
【請求項4】
ハウジング部と、前記ハウジング部に保持される碍子と、前記碍子から露出した中心電極と、前記中心電極との間で放電ギャップ部を形成する接地電極とを備えるとともに、前記ハウジング部と前記碍子との間にプラグポケットを有し、
前記ハウジング部のうち、前記プラグポケットに隣接する部分に面積拡大加工が施されていない第1の非加工領域と、面積拡大加工が施された加工領域とを有し、
前記加工領域が前記第1の非加工領域よりも軸線方向において先端側に位置しており、
前記ハウジング部のうち、前記プラグポケットに隣接する部分に面積拡大加工が施されていない第2の非加工領域をさらに有するとともに、前記加工領域に螺旋状の溝部が設けられており、
前記第2の非加工領域が前記加工領域よりも軸線方向において先端側に位置し、
前記ハウジング部の外周部に設けられ、内燃機関との締結に用いられるねじ部の山部に沿って延伸するように前記溝部を設けている点火プラグ。
【請求項5】
請求項3記載の点火プラグであって、
前記ハウジング部の先端部のうち、周方向において前記溝部の先端側の端部が位置する部分の内側にテーパ部を設けている点火プラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は点火プラグに関する。
【背景技術】
【0002】
点火プラグを備える内燃機関ではプレイグニッションが発生することがある。特許文献1では筒状軸部の内面にセレーションを形成したスパークプラグシェルが開示されている。このセレーションは放熱面積を広げ、放熱効果を向上させるために形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−59365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プレイグニッションにはハウジング部と碍子との間に形成されるプラグポケットに滞留する混合気が受熱し、高温になることで発生する態様があることがわかってきた。そして、かかる態様で発生するプレイグニッションを抑制するには、例えばハウジング部のうちプラグポケットに隣接する部分の面積を拡大し、プラグポケットからの放熱を促進することが考えられる。
【0005】
ところが、ハウジング部のうちプラグポケットに隣接する部分の面積を軸線方向に沿って全体的に拡大した場合には、軸線方向に沿った各位置における当該部分の径方向に沿った断面積が小さくなる。このためこの場合には、当該部分のうち例えば軸線方向における中央の部分から軸線方向において接地電極が設けられている側とは反対側に向う熱の移動が制限される虞がある。結果、当該部分からの放熱が制限される分、プラグポケットからの放熱も制限される虞がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑み、プラグポケットに滞留する混合気に起因するプレイグニッションの発生を好適に抑制可能な点火プラグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はハウジング部と、前記ハウジング部に保持される碍子と、前記碍子から露出した中心電極と、前記中心電極との間で放電ギャップ部を形成する接地電極とを備えるとともに、前記ハウジング部と前記碍子との間にプラグポケットを有し、前記ハウジング部のうち、前記プラグポケットに隣接する部分に面積拡大加工が施されていない第1の非加工領域と、面積拡大加工が施された加工領域とを有し、前記加工領域が前記第1の非加工領域よりも軸線方向において先端側に位置しており、前記加工領域は前記非加工領域の内径よりも大きな内径を有している螺旋状の溝部を複数有する点火プラグである。
【0008】
本発明はハウジング部と、前記ハウジング部に保持される碍子と、前記碍子から露出した中心電極と、前記中心電極との間で放電ギャップ部を形成する接地電極とを備えるとともに、前記ハウジング部と前記碍子との間にプラグポケットを有し、前記ハウジング部のうち、前記プラグポケットに隣接する部分に面積拡大加工が施されていない第1の非加工領域と、面積拡大加工が施された加工領域とを有し、前記加工領域が前記第1の非加工領域よりも軸線方向において先端側に位置しており、前記ハウジング部のうち、前記プラグポケットに隣接する部分に面積拡大加工が施されていない第2の非加工領域をさらに有し、前記第2の非加工領域が前記加工領域よりも軸線方向において先端側に位置する構成とすることができる。
【0009】
本発明は前記ハウジング部の外周部に設けられ、内燃機関との締結に用いられるねじ部の山部に沿って延伸するように前記溝部を設けている構成とすることができる。
【0010】
本発明はハウジング部と、前記ハウジング部に保持される碍子と、前記碍子から露出した中心電極と、前記中心電極との間で放電ギャップ部を形成する接地電極とを備えるとともに、前記ハウジング部と前記碍子との間にプラグポケットを有し、前記ハウジング部のうち、前記プラグポケットに隣接する部分に面積拡大加工が施されていない第1の非加工領域と、面積拡大加工が施された加工領域とを有し、前記加工領域が前記第1の非加工領域よりも軸線方向において先端側に位置しており、前記ハウジング部のうち、前記プラグポケットに隣接する部分に面積拡大加工が施されていない第2の非加工領域をさらに有するとともに、前記加工領域に螺旋状の溝部が設けられており、前記第2の非加工領域が前記加工領域よりも軸線方向において先端側に位置し、前記ハウジング部の外周部に設けられ、内燃機関との締結に用いられるねじ部の山部に沿って延伸するように前記溝部を設けている構成とすることができる。
【0011】
本発明は前記ハウジング部の先端部のうち、周方向において前記溝部の先端側の端部が位置する部分の内側にテーパ部を設けている構成とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、プラグポケットに滞留する混合気に起因するプレイグニッションの発生を好適に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1の点火プラグの要部を示す図である。
図2】点火時期の最大進角量の比較図である。
図3】点火時期の最大進角量の変化傾向を示す図である。
図4】実施例2の点火プラグの要部を示す図である。
図5】実施例3の点火プラグの要部を示す図である。
図6】実施例4の点火プラグの要部を示す図である。
図7】実施例5の点火プラグの要部を示す図である。
図8】実施例6の点火プラグの要部を示す図である。
図9】実施例7の点火プラグの要部を示す図である。
図10】実施例8の点火プラグの要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を用いて、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0015】
図1は点火プラグ1Aの要部を示す図である。図1(a)は点火プラグ1Aの断面図を示す。図1(b)は点火プラグ1Aの下面図(接地電極5側から軸線方向に沿って見た図)を示す。図1(a)、図1(b)では内燃機関のシリンダヘッド10に設けた状態で点火プラグ1Aの要部を示す。
【0016】
点火プラグ1Aはハウジング部2Aと碍子3と中心電極4と接地電極5とを備えている。ハウジング部2Aは筒状の形状を有しており、碍子3を保持している。碍子3は中心電極4の周囲に設けられている。中心電極4は軸線方向に沿って延伸している。そして、先端側(点火プラグ1Aをその中心軸線に直交する方向に沿って見た場合に、軸線方向において接地電極5が設けられている側)で碍子3から露出している。接地電極5はハウジング部2Aに設けられている。接地電極5は中心電極4との間で放電ギャップ部Gを形成している。
【0017】
点火プラグ1Aはシリンダヘッド10に設けられる。具体的には点火プラグ1Aはガスケット6を介してシリンダヘッド10に締結される。この点、ハウジング部2Aの外周部には内燃機関(具体的にはシリンダヘッド10)との締結に用いられるねじ部Sが設けられている。シリンダヘッド10は図示しないシリンダブロックやピストンとともに燃焼室Cを形成する。燃焼室Cには放電ギャップ部Gが配置される。
【0018】
燃焼室Cには放電ギャップ部Gを通過する気流Fが生成される。気流Fは具体的にはタンブル流となっている。気流Fは点火プラグ1Aが設けられる内燃機関の吸気行程および圧縮行程のうち、少なくともいずれかにおいて放電ギャップ部Gを通過する気流とすることができる。気流Fは必ずしもタンブル流に限られず、例えばスワール流などの旋回気流であってもよい。点火プラグ1Aが設けられる内燃機関において、点火プラグ1Aはハウジング部2Aが燃焼室Cに突出しないように設けられる。
【0019】
ハウジング部2Aと碍子3との間にはプラグポケットPが形成されている。プラグポケットPは碍子3の周囲に形成されるとともに、燃焼室Cに開口している。一方、プラグポケットPとの関係において、ねじ部Sはハウジング部2Aのうち、プラグポケットPの周囲に位置する部分を含む部分の外周部に設けられている。ねじ部Sは具体的にはハウジング部2Aのうち、ガスケット6が設けられる部分から先端側に位置する筒状部の外周部に設けられている。当該筒状部はプラグポケットPの周囲に位置する部分を含んでいる。
【0020】
点火プラグ1Aはハウジング部2Aのうち、プラグポケットPに隣接する部分に面積拡大加工が施されていない第1の非加工領域である領域R1と、面積拡大加工が施された加工領域である領域R2とを有している。領域R2は領域R1よりも軸線方向において先端側に位置している。領域R1、R2は軸線方向に沿って互いに隣接している。軸線方向に沿った長さは領域R2のほうが領域R1よりも大きく設定されている。領域R2は軸線方向におけるハウジング部2Aの先端位置から後端側(点火プラグ1Aをその中心軸線に直交する方向に沿って見た場合に、軸線方向において接地電極5が設けられている側とは反対側)に広がる領域として設定されている。領域R1には円筒内面状の面が設けられている。
【0021】
領域R2には溝部D1が設けられている。溝部D1は軸線方向に沿って延伸している。また、その垂直断面において四角形状の空間を形成するように設けられている。溝部D1は周方向においてハウジング部2Aのうち接地電極5が設けられている部分以外の部分に設けられている。溝部D1は当該部分において周方向に沿って均等に複数(ここでは11個)設けられている。複数の溝部D1は当該部分において周方向に沿って隣り合う溝部D1同士が互いに所定の間隔を有して配置されるように設けられている。
【0022】
次に点火プラグ1Aの主な作用効果について説明する。点火プラグ1Aはハウジング部2AのうちプラグポケットPに隣接する部分に領域R1、R2を有するとともに、領域R2が領域R1よりも軸線方向において先端側に位置する構成となっている。このため、点火プラグ1Aは領域R2で面積を拡大することにより、プラグポケットPからの放熱を促進することができる。
【0023】
同時に点火プラグ1Aは領域R1が設定されている部分において径方向に沿ったハウジング部2Aの断面積も確保できる。このため、点火プラグ1Aは軸線方向において領域R2側から領域R1側に向かったハウジング部2Aの熱の移動も確保できる。結果、かかる熱の移動が制限されることに起因して、プラグポケットPからの放熱が制限されることも回避できる。このため、点火プラグ1AはプラグポケットPに滞留する混合気に起因するプレイグニッションの発生を好適に抑制できる。
【0024】
図2は点火時期の最大進角量の比較図である。図3は点火時期の最大進角量の変化傾向を示す図である。図2図3では所定の条件下で運転中の内燃機関で点火を中止した際にプレイグニッションが発生しない最大進角量を示す。図2ではかかる最大進角量を点火プラグ1Aと点火プラグ1A´との場合について示す。図3ではプラグポケットPの容積を等容積としたまま、ハウジング部2AのうちプラグポケットPに隣接する部分の面積を溝部D1の軸線方向に沿った長さによって変更した場合の最大進角量の変化傾向を示す。図3において縦軸は点火プラグ1A´を基準にした最大進角量を示し、横軸は点火プラグ1A´を基準とした面積拡大倍率を示す。点火プラグ1A´は溝部D1を特段備えることなく、ハウジング部2AのうちプラグポケットPに隣接する部分の内径を拡大することにより、プラグポケットPの容積を点火プラグ1Aと等容積とした等容積プラグとなっている。
【0025】
図2に示すように点火プラグ1Aは点火プラグ1A´よりも点火時期の最大進角量を大きくすることができることがわかる。図3に示すように点火時期の最大進角量は面積を拡大するほど、次第に増加度合いを減少させるようにして大きくなることがわかる。この点、点火時期の最大進角量でプレイグニッションの発生し難さを評価した場合、点火プラグ1A´と比較して最大進角量が1°CA大きければ、プレイグニッションの抑制効果が十分得られていると判断できる。このため、点火プラグ1Aは次に示す条件を満たす構成とすることができる。
【0026】
すなわち、ここで点火プラグ1Aが点火プラグ1A´と比較して1°CA大きな最大進角量を得るには、図3に示すようにハウジング部2AのうちプラグポケットPに隣接する部分に1.3倍の面積を確保する必要がある。一方、点火プラグ1A´は具体的にはねじ部Sのねじサイズが14mmで、プラグポケットPに隣接する部分の面積が320mmの点火プラグとなっている。このため、1°CA大きな最大進角量を得るには320×1.3、すなわち416mmの面積が必要となる。さらにねじサイズの異なる点火プラグへの適用を考慮すると、必要面積はねじサイズをAとして416×A/14、すなわちおよそ29.7×Aとなる。
【0027】
したがって、点火プラグ1Aは最大進角量による評価の観点から具体的にはハウジング部2AのうちプラグポケットPに隣接する部分に29.7×A以上の面積を有する構成とすることができる。なお、このことは後述する点火プラグ1Bから1Hについても同様である。
【0028】
点火プラグ1Aは次に示す条件を満たす構成とすることもできる。ここで、図1(a)、図1(b)に示すように溝部D1の径方向に沿った深さをL1とし、軸線方向に沿った長さをKとすると、面積は溝部D1一つ当たりおよそ2×L1×Kだけ増加する。一方、ハウジング部2AのうちプラグポケットPに隣接する部分の面積は半径をrとし、プラグポケットPの軸線方向に沿った長さをUとすると、2×3.14×r×U、すなわち6.28×r×Uとなる。そしてこの面積の1.3倍は8.16×r×Uとなる。
【0029】
したがって、1°CA大きな最大進角量を得るには8.16×r×U−6.28×r×U、すなわち1.88×r×Uの面積増加が必要となる。このため、必要な溝部D1の数をNとすると次の式(1)が成立する。また、式(1)を整理することで次の式(2)が得られる。このため、点火プラグ1Aは最大進角量による評価の観点から具体的には式(2)を満たす構成とすることもできる。同時に点火プラグ1Aは周方向に沿って隣り合う溝部D1同士の間隔を0.5mm以上とする構成とすることができる。
N≧1.88×r×U/(2×L1×K) ・・・(1)
N≧0.94×r×U/(L1×K) ・・・(2)
【0030】
点火プラグ1Aは具体的には領域R2に溝部D1が設けられた構成であることで、燃焼室CからプラグポケットPに流入する気流FにプラグポケットPで乱れを生じさせることもできる。結果、プラグポケットPに滞留する混合気と溝部D1との間で行われる熱交換を促進することで、プラグポケットPからの放熱を促進することもできる。
【実施例2】
【0031】
図4は点火プラグ1Bの要部を示す図である。図4(a)、図4(b)は図1(a)、図1(b)と同様に点火プラグ1Bを示す。点火プラグ1Bはハウジング部2Aの代わりにハウジング部2Bを備える点以外、点火プラグ1Aと実質的に同一となっている。ハウジング部2Bは溝部D1の代わりに溝部D2を備える点以外、ハウジング部2Aと実質的に同一となっている。溝部D2はその垂直断面において三角形状の空間を形成するように設けられている点と、周方向に沿って隣り合う溝部D2同士が互いに隣接して配置されるように複数の溝部D2が設けられる点以外、溝部D1と実質的に同一となっている。
【0032】
次に点火プラグ1Bの主な作用効果について説明する。点火プラグ1Bは点火プラグ1Aと同様に領域R1、R2を有するとともに、領域R2が領域R1よりも軸線方向において先端側に位置する構成となっている。このため、点火プラグ1Bは点火プラグ1Aと同様にプレイグニッションの発生を好適に抑制できる。一方、点火プラグ1Bは具体的には領域R2に溝部D2が設けられた構成となっている。この点、このように構成された点火プラグ1Bでも面積の拡大および乱れの促進によってプラグポケットPからの放熱を促進できる。
【0033】
点火プラグ1Bは周方向に沿って隣り合う溝部D2同士が互いに隣接して配置されるように複数の溝部D2を設けている構成とすることで、面積の拡大を好適に図ることもできる。
【実施例3】
【0034】
図5は点火プラグ1Cの要部を示す図である。図5(a)、図5(b)は図1(a)、図1(b)と同様に点火プラグ1Cを示す。点火プラグ1Cはハウジング部2Aの代わりにハウジング部2Cを備える点以外、点火プラグ1Aと実質的に同一となっている。ハウジング部2Cは溝部D1の代わりに溝部D3を備える点以外、ハウジング部2Aと実質的に同一となっている。
【0035】
溝部D3は溝部D1と同様に領域R2に設けられている。一方、溝部D3は周方向に沿って延伸するとともに一周に亘ってリング状に設けられている。溝部D3はその垂直断面において三角形状の空間を形成するように設けられている。溝部D3は軸線方向に沿って複数設けられている。複数の溝部D3は軸線方向に沿って隣り合う溝部D3同士が互いに隣接して配置されるように設けられている。複数の溝部D3は軸線方向に沿って隣り合う溝部D3同士が互いに所定の間隔を有して配置されるように設けられてもよい。
【0036】
次に点火プラグ1Cの主な作用効果について説明する。点火プラグ1Cは点火プラグ1Aと同様に領域R1、R2を有するとともに、領域R2が領域R1よりも軸線方向において先端側に位置する構成となっている。このため、点火プラグ1Cは点火プラグ1Aと同様にプレイグニッションの発生を好適に抑制できる。一方、点火プラグ1Cは具体的には領域R2に溝部D3が設けられた構成となっている。この点、このように構成された点火プラグ1Cでも面積の拡大および乱れの促進によってプラグポケットPからの放熱を促進できる。
【0037】
点火プラグ1Cは最大進角量による評価の観点から具体的には次に示す条件を満たす構成とすることができる。すなわち、ここで溝部D3の径方向に沿った深さをL2とすると、面積は溝部D3一つ当たりおよそ2×2×π×r×L2、すなわち4×π×r×L2だけ増加する。一方、1°CA大きな最大進角量を得るには416×A/14−320×A/14、すなわちおよそ6.71×Aの面積増加が必要となる。したがって、必要な溝部D3の数をMとすると次の式(3)が成立する。また、式(3)を整理することで次の式(4)が得られる。このため、点火プラグ1Cは式(4)を満たす構成とすることができる。
M≧6.71×A/(4×π×r×L2) ・・・(3)
M≧1.68×A/(π×r×L2) ・・・(4)
【実施例4】
【0038】
図6は点火プラグ1Dの要部を示す図である。図6(a)、図6(b)は図1(a)、図1(b)と同様に点火プラグ1Dを示す。点火プラグ1Dはハウジング部2Aの代わりにハウジング部2Dを備える点以外、点火プラグ1Aと実質的に同一となっている。ハウジング部2Dは溝部D1の代わりに溝部D4を備える点以外、ハウジング部2Aと実質的に同一となっている。
【0039】
溝部D4は溝部D1と同様に領域R2に設けられている。一方、溝部D4は螺旋状の溝部となっている。溝部D4はねじ部Sの山部に沿って延伸するよう設けられている。溝部D4はその垂直断面、或いは点火プラグ1Dの中心軸線を含む面による断面において三角形状の空間を形成するように設けられている。
【0040】
次に点火プラグ1Dの主な作用効果について説明する。点火プラグ1Dは点火プラグ1Aと同様に領域R1、R2を有するとともに、領域R2が領域R1よりも軸線方向において先端側に位置する構成となっている。このため、点火プラグ1Dは点火プラグ1Aと同様にプレイグニッションの発生を好適に抑制できる。一方、点火プラグ1Dは具体的には領域R2に溝部D4が設けられた構成となっている。この点、このように構成された点火プラグ1Dでも面積の拡大および乱れの促進によってプラグポケットPからの放熱を促進できる。点火プラグ1Dは最大進角量による評価の観点から溝部D4の径方向に沿った深さをL2として、式(4)を満たす構成とすることもできる。
【0041】
点火プラグ1Dはねじ部Sの山部に沿って溝部D4を延伸するように設けることで、次に説明するようにハウジング部2Dの強度や伝熱性が低下することも抑制できる。すなわち、ここで例えば点火プラグ1Aでは溝部D1からねじ部Sへの径方向に沿った距離が軸線方向に沿った位置に応じて大きくなったり小さくなったりする。結果、離間距離が小さくなる位置でハウジング部2Aの強度が低下する虞がある。また、離間距離が小さくなる位置で軸線方向において領域R2側から領域R1側に向かったハウジング部2Aの熱の移動(伝熱性)が抑制される虞がある。
【0042】
これに対し、点火プラグ1Dはねじ部Sの山部に沿って溝部D4を螺旋状に延伸するように設けることで、溝部D4からねじ部Sへの径方向に沿った距離が軸線方向に沿った位置に応じて変化することも抑制できる。結果、ハウジング部2Dの強度や伝熱性が低下することも抑制できる。
【実施例5】
【0043】
図7は点火プラグ1Eの要部を示す図である。図7(a)、図7(b)は図1(a)、図1(b)と同様に点火プラグ1Eを示す。点火プラグ1Eはハウジング部2Aの代わりにハウジング部2Eを備える点以外、点火プラグ1Aと実質的に同一となっている。ハウジング部2Eは溝部D1の代わりに突起部Bを備える点以外、ハウジング部2Aと実質的に同一となっている。
【0044】
ハウジング部2Eでは領域R2に溝部D1の代わりに突起部Bが設けられている。突起部Bは棒状の突起部であり、径方向に沿って延伸している。突起部Bは周方向および軸線方向に沿って均等に複数設けられている。突起部Bを設けるにあたり、領域R2におけるハウジング部2Eの内径は領域R1におけるハウジング部2Eの内径よりも大きくなるように設定することができる。
【0045】
次に点火プラグ1Eの主な作用効果について説明する。点火プラグ1Eは点火プラグ1Aと同様に領域R1、R2を有するとともに、領域R2が領域R1よりも軸線方向において先端側に位置する構成となっている。このため、点火プラグ1Eは点火プラグ1Aと同様にプレイグニッションの発生を好適に抑制できる。一方、点火プラグ1Eは具体的には領域R2に突起部Bが設けられた構成となっている。この点、このように構成された点火プラグ1Eでも面積の拡大および乱れの促進によってプラグポケットPからの放熱を促進できる。
【実施例6】
【0046】
図8は点火プラグ1Fの要部を示す図である。図8(a)、図8(b)は図1(a)、図1(b)と同様に点火プラグ1Fを示す。点火プラグ1Fはハウジング部2Aの代わりにハウジング部2Fを備える点以外、点火プラグ1Aと実質的に同一となっている。ハウジング部2Fは溝部D1の代わりに穴部Hを備える点以外、ハウジング部2Aと実質的に同一となっている。ハウジング部2Fでは領域R2に溝部D1の代わりに穴部Hが設けられている。穴部Hは径方向に沿って延伸している。また、周方向および軸線方向に沿って均等に複数設けられている。
【0047】
次に点火プラグ1Fの主な作用効果について説明する。点火プラグ1Fは点火プラグ1Aと同様に領域R1、R2を有するとともに、領域R2が領域R1よりも軸線方向において先端側に位置する構成となっている。このため、点火プラグ1Fは点火プラグ1Aと同様にプレイグニッションの発生を好適に抑制できる。一方、点火プラグ1Fは具体的には領域R2に穴部Hが設けられた構成となっている。この点、このように構成された点火プラグ1Fでも面積の拡大および乱れの促進によってプラグポケットPからの放熱を促進できる。
【実施例7】
【0048】
図9は点火プラグ1Gの要部を示す図である。図9(a)、図9(b)は図1(a)、図1(b)と同様に点火プラグ1Gを示す。点火プラグ1Gはハウジング部2Aの代わりにハウジング部2Gを備える点以外、点火プラグ1Aと実質的に同一となっている。ハウジング部2GはプラグポケットPに隣接する部分に面積拡大加工が施されていない第2の非加工領域である領域R3をさらに有する点以外、ハウジング部2Aと実質的に同一となっている。同様の変更は例えば点火プラグ1Bから1Fに適用することもできる。
【0049】
領域R3は領域R2よりも軸線方向において先端側に位置している。この点、点火プラグ1Gはハウジング部2GのうちプラグポケットPに隣接する部分に先端側から領域R3、領域R2、領域R1の順にこれらを有している。領域R1、R2、R3のうち、軸線方向に沿って隣り合う領域同士は互いに隣接している。領域R3の軸線方向に沿った長さはハウジング部2Gの先端位置におけるハウジング部2G、碍子3間の径方向に沿ったクリアランスΔdより大きく設定されている。領域R3はハウジング部2Gの先端位置から後端側に広がる領域として設定されている。
【0050】
次に点火プラグ1Gの主な作用効果について説明する。ここで、点火プラグ1Aの場合、領域R2がハウジング部2Aの先端位置から後端側に広がる領域として設定されている。ところが、このように設定された領域R2で面積を拡大すると、炎核のエネルギがハウジング部2Aに吸収され易くなる結果、着火性が悪化する虞がある。これに対し、点火プラグ1Gは領域R3を有することで、点火プラグ1Aと比較してさらに着火性の悪化を抑制できる。点火プラグ1Gは具体的には領域R3の軸線方向に沿った長さを初期火炎の進入クリアランスとなるクリアランスΔdよりも大きく設定することで、着火性の悪化を好適に抑制できる。
【実施例8】
【0051】
図10は点火プラグ1Hの要部を示す図である。図10(a)、図10(b)は図1(a)、図1(b)と同様に点火プラグ1Hを示す。点火プラグ1Hはハウジング部2Dの代わりにハウジング部2Hを備える点以外、点火プラグ1Dと実質的に同一となっている。ハウジング部2Hはテーパ部Tをさらに備える点以外、ハウジング部2Dと実質的に同一となっている。テーパ部Tはハウジング部2Hの先端部のうち、周方向において溝部D4の先端側の端部が位置する部分の内側に設けられている。溝部D4の先端側の端部は先端側から軸線方向に沿って見た場合にハウジング部2Hの先端部のうち、接地電極5に対向する部分に設けられている。
【0052】
次に点火プラグ1Hの主な作用効果について説明する。点火プラグ1Hは点火プラグ1Dと同様にプレイグニッションの発生を好適に抑制できる。また、点火プラグ1Dと同様にハウジング部2Hの強度や伝熱性が低下することも抑制できる。一方、点火プラグ1Hはテーパ部Tを備えることで、さらに燃焼室CからプラグポケットPに流入する気流Fの流入抵抗を減らすとともに、溝部D4に沿った気流の流れを強化できる。結果、プラグポケットPで好適に乱れを生じさせることで、プラグポケットPからの放熱を好適に促進することもできる。
【0053】
点火プラグ1Hをシリンダヘッド10に設けるにあたり、接地電極5の周方向に沿った位置は一般に所定の位置には定まらない。この点、図10(b)に示すように点火プラグ1Hをシリンダヘッド10に設けた状態で、接地電極5はその開放端部が先端側から軸線方向に沿って見た場合に気流Fに対向するように配置されることがある。一方、このように接地電極5が配置される場合には次に説明するようにプラグポケットPに滞留する混合気に起因してプレイグニッションが発生し易くなる。
【0054】
すなわち、この場合には接地電極5がプラグポケットPに流入しようとする気流とプラグポケットPから流出しようとする気流のうち、プラグポケットPから流出しようとする気流の流出を妨げることになる。また、プラグポケットPからの気流の流出が妨げられることで、気流の流入出のバランス上、プラグポケットPへの気流の流入も生じ難くなる。結果、プラグポケットPに混合気が滞留し易くなることから、プラグポケットPに滞留する混合気に起因してプレイグニッションが発生し易くなる。
【0055】
これに対し、点火プラグ1Hは先端側から軸線方向に沿って見た場合にハウジング部2Hの先端部のうち、接地電極5に対向する部分に溝部D4の先端側の端部を設ける構成とすることで、当該部分にテーパ部Tを設けることができる。このため、点火プラグ1Hはかかる構成とすることで、燃焼室Cにおける接地電極5の位置に応じて特に混合気がプラグポケットPに滞留し易くなる場合に気流Fの流入を促進でき、これによりプレイグニッションの発生を好適に抑制することもできる。
【0056】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば溝部はその垂直断面において必ずしも三角形状や四角形状の空間を形成するように設けられていなくてもよく、その他の形状の空間を形成するように設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0057】
点火プラグ 1A、1A´、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1H
ハウジング部 2A、2B、2C、2D、2E、2F、2G、2H
碍子 3
中心電極 4
接地電極 5
ガスケット 6
シリンダヘッド 10
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10