(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示される乗り物用シート装置では、シートの起立部の一部であるヘッドレストのクッション部材内にダイナミックダンパの球状又は円筒状の重錘を埋設しており、その際、重錘は、着座者の頭部に違和感を与えないように、クッション部材内の最後部に配置して、重錘より前方のクッション部材の肉厚を極力厚くしている。
【0005】
しかしながら、ヘッドレスト
のコンパクト化を図ったり、ダイナミックダンパの制振性能を高めるべく重錘を重量増加(大型化)させる場合に、特許文献1のダイナミックダンパを採用すると、重錘前方のクッション部材の肉厚が必然的に薄くなり、重錘が球状又は円筒状であることにより、着座者の頭部がヘッドレストの前面に強く当接したときや、重錘の振動時に、重錘前端の曲率が大きい凸状部が着座者に違和感を与えることになる。
【0006】
本発明は、かゝる事情に鑑みてなされたもので、重錘前方のクッション部材の肉厚が比較的薄い場合でも、着座者に違和感を与えることがないようにした前記乗り物用シート装置
を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、
本発明は、乗り物に設置されるシートの、シートバックを含む起立部にダイナミックダンパを付設してなる、乗り物用シート装置において、前記ダイナミックダンパ
を、着座者にクッション部材を介して接するように配設
されるダンパケースと、このダンパケース内に振動可能に収容される重錘と、この重錘と前記ダンパケースの内面との間に介装される弾性部材とで構成し、前記重錘の、
着座者側と反対側の後面を凸状の湾曲面に形成する一方、着座者側を向く前面を平
面もしくは曲率が前記後面より小さい湾曲面に形成
し、前記ダンパケースの、着座者側と反対側の後壁を凸状の湾曲面に形成する一方、
着座者側を向く前壁を平面もしくは曲率が前記後壁より小さい湾曲面に形成したことを第1の特徴とする
。
【0008】
また本発明は、第1の特徴に加えて
、前記
重錘の前面を
、凸状の湾曲面に形成したことを第
2の特徴とする。
【0009】
さらにまた本発明は、第1
または第
2の特
徴に加えて前記重錘を、その重心が、該重錘の中心より上方にずれて位置するように形成したことを第
3の特徴とする。
【0010】
さらにまた
本発明は、第1〜第
3の特徴の何れかに加えて、前記起立部を、シートバックと、その上端部に支持されるヘッドレストとで構成し、そのヘッドレストのクッション部材に前記
ダンパケースを埋設したことを第
4の特徴とする
。
【0011】
さらにまた本発明は、第
4の特徴に加えて、
前記ダンパケースの前壁をヘッドレストの前面に沿った凸状湾曲面に形成し
たことを第
5の特徴とする。
【0012】
さらにまた本発明は、第1〜第5の特徴の何れかに加えて、前記弾性部材を、前記重錘の前面を包む一枚の弾性シートで形成したことを第6の特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の特徴によれば、前記ダイナミックダンパ
を、着座者にクッション部材を介して接するように配設
されるダンパケースと、このダンパケース内に振動可能に収容される重錘と、この重錘と前記ダンパケースの内面との間に介装される弾性部材とで構成し、前記重錘の、
着座者側と反対側の後面を凸状の湾曲面に形成する一方、着座者側を向く前面を平
面もしくは曲率が前記後面より小さい湾曲面に形成
し、前記ダンパケースの、着座者側と反対側の後壁を凸状の湾曲面に形成する一方、
着座者側を向く前壁を平面もしくは曲率が前記後壁より小さい湾曲面に形成した
ので、重錘の振動時、その振動は、ダンパケースによってクッション部材への伝達が抑えられて、着座者に違和感を与えない。
【0014】
またダンパケースはフレームに近接して配置されることで、ダンパケース前方のクッション部材の肉厚は必然的に薄くなるが、ダンパケースの、着座者側を向く前面は平
面もしくは曲率が後面より小さい湾曲面に形成されている
から、衝撃や反動により、着座者が
ダンパケース前方のクッション部材に強く押しつけられるときや、重錘の振動時でも、
ダンパケースは比較的広い面積で着座者
を支承することになり、その着座者に及ぼす圧力の上昇を極力抑えることができ、これにより着座者が重錘
及びダンパケースより受ける違和感を解消し、もしくは軽減することができる。
【0015】
一方、上記重錘
及びダンパケースの後面は
、曲率が重錘の前面より大きい凸状
の湾曲面に形成
されるので、重錘に所望の重量を付与し、ダイナミックダンパの制振機能を高めることができる
とともに、ダンパケースは、内部容積を充分に確保して、所望重量の重錘を収容することができ、ダイナミックダンパの制振機能を高めることができる。
【0016】
本発明の第
2の特徴によれば、重錘の前面を
、凸状の湾曲面に形成したので、重錘の重量を、その前面の膨らみ分、増加させることができて、ダイナミックダンパの制振機能を高めることができる。
しかも重錘の前面は、その後面より曲率の小さい凸状の湾曲面であるから、着座者が重錘より受ける違和感を解消し、もしくは軽減することができる。
【0017】
本発明の第
3の特徴によれば、重錘を、その重心が、該重錘の中心より上方にずれて位置するように形成したので、重錘の重心は、シートの起立部の支持点から上方へ極力離れることになり、したがって比較的小質量の重錘をもってダイナミックダンパは、上記起立部に対して有効な制振機能を発揮することができる。
【0018】
本発明の第
4の特徴によれば、起立部を、シートバックと、その上端部に支持されるヘッドレストとで構成し、そのヘッドレストのクッション部材に
ダンパケースを埋設したので、
ダンパケース内の重錘の重心は、シートの起立部の支持点から上方へ遠く離れた位置を占めることになり、したがって比較的小質量の重錘をもってダイナミックダンパは、上記起立部に対して有効な制振機能を発揮することができる
。
【0019】
またヘッドレストのクッション部材にダンパケースを埋設したとき、ダンパケースにより、その内部へのクッション部材の侵入を防ぐことができ、その侵入によるダイナミックダンパの制振特性の狂いを未然に防ぐことができる。
【0020】
本発明の第
5の特徴によれば
、ダンパケースの前壁をヘッドレストの前面に沿った凸状湾曲面に形成したので、ダンパケース前方のクッション部材の肉厚を一定にして、着座者のクッション部材前面への当たり心地を良好にすることができる。しかも、ダンパケースの前壁の膨らみにより、その容積が拡張し、その分、重錘の重量
増が可能で、制振機能の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
先ず、
図1〜
図5に示す本発明の
参考形態より説明する。尚、以下の説明中、前後、左右とは、本発明を適用する乗り物としての自動車を基準にしていうことにする。
【0023】
図1において、自動車用シートSは、シートクッション2、シートバック3及びヘッドレスト4とよりなっている。シートクッション2は、下部に複数の支持脚7,7を形成したシートクッションフレーム6を有しており、その支持脚7,7が自動車の床Fに固着される。
【0024】
シートクッションフレーム6の後端部には上方に突出する左右一対のブラケット8が連設され、これらブラケット8に、シートバック3が有するシートバックフレーム10が枢軸9を介してリクライニング可能に連結される。
【0025】
またシートバックフレーム10の上端部には、左右一対の支持筒11,11が固設されており、これら支持筒11,11によってヘッドレスト4が昇降及び固定可能に支持される。
【0026】
而して、シートバック3及びヘッドレスト4は、シートクッションフレーム6に枢軸9を支持点とする起立した起立部5を構成するもので、この起立部5の振動を抑えるべく、ヘッドレストフレーム12にダイナミックダンパDが取り付けられる。
【0027】
図2〜
図4に示すように、ヘッドレスト4は、ヘッドレストフレーム12と、それに支持される発泡ウレタン製のクッション部材13と、その表面を被覆する表皮14とよりティアドロップ型に構成される。
【0028】
ヘッドレストフレーム12は、パイプ材を屈曲させてなるもので、前記一対の支持筒11,11に支持される左右一対の主骨部材12a,12aと、これら主骨部材12a,12aの上端から前方へ屈曲した上骨部材12b,12bと、これら上骨部材12b,12bの前端から下方へ屈曲して延びる左右一対の前縦骨部材12c,12cと、これら前縦骨部材12c,12cの下端部を相互に一体に連結する前横骨部材12dとで構成され、左右の前縦骨部材12c,12cには、上記パイプ材より小径の補強用クロスバー19が橋渡されるように溶接される。而して、主骨部材12a,12aの上部から前横骨部材12dまでに亙りヘッドレストフレーム12を包むようにクッション部材13が形成され、このクッション部材13は表皮14で被覆される。
【0029】
ダイナミックダンパDは、左右の前縦骨部材12c,12cと前横骨部材12dとに囲まれ
たスペースに位置するようにクッション部材13に埋設される。このダイナミックダンパDは、重錘15と、この重錘15を包む、クッション部材13より軟質のゴム又はエラストマ製の弾性部材16とよりなっており、その弾性部材16がクッション部材13に埋設される。こうしてダイナミックダンパDは、ヘッドレストフレーム12に近接してクッション部材13に埋設され、弾性部材16は重錘15をその全方向において弾性支持するようになっている。
【0030】
上記重錘15は鋳鉄製で、前後方向に偏平な六面体をなしており、着座者側を向いてその前面15f
は平面もしくはそれに近い凸状の湾曲面に形成され、それと反対側の後面15rは凸状に形成され、具体的には、曲率が前面15fより大きい凸曲面に形成される。図示例では、重錘15の前面15fは、クッション部材13の前面の凸状の湾曲面に沿うように形成される。
【0031】
さらに重錘15は、その前後方向の肉厚が上方に向かって漸増し、また左右方向の幅も上方に向かって漸増するように形成され、これによって重錘15の重心Gは、重錘15の中心Cよりも上方にe1だけ、また後方にe2だけ、ずれた位置を占めることになる。この重錘15は、正面視では逆台形をなすることになる。
【0032】
次に、上記ダイナミックダンパDの、ヘッドレスト4への埋設方法について
図5により説明する。
【0033】
機台35の下面には、ヘッドレストフレーム12を除くヘッドレスト4の外形に対応するキャビティ36を形成する、上下開閉可能な成形型37a,37bが取り付けられており、そのキャビティ36の内面には、予めヘッドレスト4の袋状の表皮14を密着させておく。
【0034】
表皮14には、その上面に開口する発泡性合成樹脂流し込み口38が設けられており、成形台35の上面に固定される支持板39には、発泡材流し込み口38に挿入されるノズルガイド筒40が設けられる。また支持板39には、ノズルガイド筒40にノズル41を挿入させる発泡材供給装置40を取り付ける。さらに支持板39上に設けられるブラケット43には、ノズルガイド筒40内に配置されるヘッドレストフレーム12の主骨部材12a,12aを支持させる。また前横骨部材12dの中央部に係止した所定長さの糸45にダイナミックダンパDを接続し、これを左右の前縦骨部材12c,12c間に吊るす。この場合、ダイナミックダンパDの鉄製の重錘15に吸引力を付与してダイナミックダンパDを、左右の前縦骨部材12c,12c及び前横骨部材12dに囲まれる定位置に安定されるマグネットMを下部の成形型37bに付設する。尚、上記成形型37a,37bは、マグネットMの重錘15への磁力作用を阻害しないように、非磁性の合成樹脂製とする。
【0035】
而して、発泡材供給装置42からノズル41を通してウレタン等の発泡材44をキャビティ36の内面に密着した袋状の表皮14内に注入し、それを発泡させることにより、表皮14内に、ヘッドレスト4及びダイナミックダンパDを包むクッション部材13を形成することができる。こうして製造されたヘッドレスト4は、成形型37a,37bを上下に開くことにより、型外に取り出すことができる。尚、前記糸45は、ヘッドレスト4の成形後、クッション部材13に弾性変形を与えてダイナミックダンパDを移動させることにより、必要に応じて切断することができる。
【0036】
次に、この
参考形態の作用について説明する。
【0037】
自動車の走行中、自動車の振動が床Fからシートクッションフレーム6及び枢軸9を経てシートバックフレーム10及びヘッドレストフレーム12に伝達し、さらにクッション部材13を介してダイナミックダンパDに伝達し
たとき、ダイナミックダンパDにおいて重錘22が弾性シート16の弾性変形を伴って共振して、シートバック3及びヘッドレスト4よりなる起立部5の振動エネルギを代替吸収することで、上記起立部5を制振することができる。
【0038】
その際、ダイナミックダンパDの重錘15は、ヘッドレストフレーム12の左右の前縦骨部材12c,12c及び前横骨部材12dに囲まれるスペースでクッション部材13に埋設されるので、重錘15はヘッドレストフレーム12の前部に極めて近接しており、したがってヘッドレストフレーム12及びダイナミックダンパD間での振動伝達効率がよく、重錘15は制振機能を有効に発揮することができる。
【0039】
またダイナミックダンパDはヘッドレストフレーム12の前部に近接配置されることで、ダイナミックダンパDの重錘15前方のクッション部材13の肉厚は必然的に薄くなるが、重錘15の、着座者側を向く前面15fは平
面に近い湾曲面に形成されているから、急ブレード時や衝突時などで、衝撃や反動により、着座者の頭部が重錘15前方のクッション部材13に強く押しつけられるときや、重錘15の振動時に、重錘15は比較的広い面積で着座者の頭部を支承することになり、その頭部に及ぼす圧力の上昇を極力抑えることができ、これにより着座者が重錘15より受ける違和感を解消し、もしくは軽減することができる。一方、重錘15の後面15rは凸状に形成されるので、重錘15に所望の重量を付与し、ダイナミックダンパDの制振機能を高めることができる。
【0040】
その際、重錘15の後面15rを、曲率が重錘15の前面15fより大きい凸曲面に形成することは、重錘15の重量を確保しつゝ、その成形を容易に行うことができる。
【0041】
特に、図示例のように、重錘15の前面15fを平面に近い凸状の湾曲面に形成すると、その前面15fの膨らみ分、重錘15の重量増加を得ることができ、ダイナミックダンパDの制振機能を高めることができ、またその前面15fをクッション部材13の前面に沿った凸状の湾曲面にすることで、重錘15前方のクッション部材13の肉厚を一定にして、着座者のクッション部材13前面への当たり心地を良好にすることができる。
【0042】
また重錘15がヘッドレスト4に配設されること、並びにその重錘15の重心Gが重錘15の中心Cより上方にe1、ずれて位置していることにより、重錘22の重心Gは、シートクッション2及びヘッドレスト4よりなる起立部5の支持点、即ち枢軸9から上方へ遠く離れた位置を占めることになり、したがって比較的小質量の重錘22をもってダイナミックダンパDは、上記起立部5に対して有効な制振機能を発揮することができる。
【0043】
また重錘15の重心Gが重錘15の中心Cより後方にe2、ずれて位置していることにより、上記e2分、重錘15の振動中心がヘッドレスト4の前面より後方へずれることになるため、重錘15の振動時、その振動により着座者の頭部に与える違和感を極力少なくすることができる。
【0044】
重錘15の重心Gが重錘15の中心Cより上方にずれて位置するようにした重錘15としては、上記
参考形態中の重錘15の他に、
図6の(A)〜(C)に示すような重錘15を使用することができる。即ち、
図6(A)の重錘15では、その下部に減肉用の貫通孔53又は凹部や切欠きを設けて、その重心Gを、重錘15の中心Cより上方へずらしており、
図6(B)の重錘15では、これを逆三角形に形成することで、その重心Gを、重錘15の中心Cより上方へずらしており、
図6(C)の重錘15では、これをT字状に形成して、その重心Gを、重錘15の中心Cより上方へずらしている。またこれら形状を組合せた重錘15を用いることもできる。
【0045】
次に、
図7〜
図12に示す本発明の第
1実施形態について説明する。
【0046】
この第
1実施形態では、ヘッドレストフレーム12の前縦骨部材12c,12cと前横骨部材12dを利用してダイナミックダンパDが取り付けられる。そのダイナミックダンパDは、重錘15と、この重錘15を、その全面に重なるように包む、弾性部材としての弾性シート16と、これら重錘15及び弾性シート16を収容するダンパケース17とよりなっており、ダンパケース17は、弾性シート16を介して重錘15を全方向において弾性支持するようになっている。
【0047】
上記重錘15は鋳鉄製で、前
参考形態中の重錘15と同様な形状をなしている。
【0048】
弾性シート16はウレタンフォーム製であって、重錘の後面15rに対応する方形の中央部16aから四枚のシート片16b〜16eを張り出してなるもので、この弾性シート16により重錘15を包むに当たっては、弾性シート16の中央部16aに重錘15の前面15fを載せた後、四枚のシート片16b〜16eをそれぞれ起立させてから重錘15の後面15r側に折って、その前面15fに両面接着テープ18を介して接着する。こうして弾性シート16で包んだ重錘15は、前後二つ割りのダンパケース17内に収容される。而して、重錘15は、弾性シート16を介してダンパケース17に支持されることになる。
【0049】
ダンパケース17は、上記重錘15の外形に相似する形状をなすもので、したがって前後方向に偏平な箱型をなしており、その前壁17fは、重錘15の前面15fに対応して平
面もしくはそれに近い湾曲面に形成され、それと反対側の後壁17rは、重錘15の後面15rに対応して凸状に形成される。図示例では、ダンパケース17の前壁17fは、重錘15の前面15fと同様に、クッション部材13の前面に沿った凸状の湾曲面に形成される。
【0050】
このダンパケース17は、前側の第1ケース半体17Aと、後側の第2ケース半体17Bとに二分割され、各ケース半体17A、17Bは、それぞれ合成樹脂で成形される。両ケース半体17A,17Bの対向面の一方と他方には、互いに嵌合し得る方形の嵌合溝20と嵌合突壁21とがそれぞれ形成され、また嵌合突壁21の先端部には、外側方へ突出する複数の連結爪22,22…が形成され、これら連結爪22,22…が弾性的にスナップ係合し得る複数の連結孔23,23…が嵌合溝20の底部に形成される。
【0051】
第2ケース半体17Bの左右両側壁に第1及び第2弾性支持部24A,24Bが一体に形成される。これら第1及び第2弾性支持部24A,24Bは、それぞれ第2ケース半体17Bの左右両側壁から外方へ突出する板状のアーム25a,25bと、このアーム25a,25bの先端に連設されて前記前縦骨部材12c,12cに、それを把持するようにスナップ係合し得る優弧状の把持爪26a,26bとで構成される。即ち、優弧状の把持爪26a,26bは、前縦骨部材12c,12cを、それぞれの半周を超えて弾性的に把持することができる。この優弧状の把持爪26a,26bは、前縦骨部材12c,12cに前方から係合するように、各開口部27a,27bを後方へ向けている。したがって、乗員の頭部からの後向き荷重は、第1及び第2弾性支持部24A,24Bの把持爪26a,26bを前縦骨部材12c,12cに係合させる方向に作用することになり、把持爪26a,26bの離脱を防ぐことができる。またアーム25a,25bの長さの選定により、両把持爪26a,26bの中心間距離を、両前縦骨部材12c,12cの中心間距離に一致させ、把持爪26a,26bの前縦骨部材12c,12cへの係合を的確に行わせることができる。
【0052】
優弧状の把持爪26a,26bは、それらの内径D1,D2が互いに異なるように形成される。図示例では、第2弾性支持部24Bの把持爪26bの内径D2は、第1弾性支持部24Aの把持爪26aの内径D1より大きく設定される。また優弧状の把持爪26a,26bは、それらの剛性が互いに異なるように形成される。図示例では、第1弾性支持部24Aの把持爪26aの剛性を、第2弾性支持部24Bの把持爪26bより低くするように、第1弾性支持部24Aの把持爪26aの先端部に切欠き28が設けられ、或いは把持爪26aの肉厚が把持爪26bより薄く設定される。また上記第1及び第2弾性支持部24A,24Bは、前記重錘15の重心Gを挟むように配置される。
【0053】
また各把持爪26a,26bには窓孔29が設けられ、この窓孔29から、各把持爪26a,26bと前縦骨部材12c,12cとの係合状態を目視で確認し得るようになっている。
【0054】
一方、第1ケース半体17Aの下側壁には位置決め支持部30が一体に形成される。この位置決め支持部30は、第1ケース半体17Aの下側壁から下方へ突出する板状のアーム30aと、このアーム30aの下端に連設されて前記前横骨部材12dに当接係合し得るU字状の当接爪30bとで構成され、この当接爪30bが、前横骨部材12dに後方から当接係合することで、前記把持爪26a,26bと左右の前縦骨部材12c,12cとの係合位置が規定される。こうしてヘッドレストフレーム12上でのダンパケース17の取り付け位置が決定される。
【0055】
第1,第2弾性支持部24B及び位置決め支持部30のアーム25a,25bの根元には、その根元の剛性を強化する増肉部31が形成され、さらに、第1,第2弾性支持部24A,24Bのアーム25a,25bに当接してそれらの前方への撓み、即ち把持爪26a,26bの開口部27a,27bと反対側へアーム25a,25bの撓みを規制する一対のストッパ32,32が第1ケース半体17Aの左右両側壁に形成される。各ストッパ32は、対応する把持爪26a,26bの背面に直線的に当接する中央壁部32aと、この中央壁部32aの両側端に連なっていて対応するアーム25a,25bから把持爪26a,26bの背面にわたる湾曲面に当接する一対の側壁部32b,32bとで、断面コ字状に構成される。このような構成のストッパ32は、剛性が高い上、対応するアーム25a,25bから把持爪26a,26bにわた
る背面との当接面積を広く確保し得るので、集中応力を極力回避しつゝ、アーム25a,25bの撓みを効果的に規制することができる。したがって、乗員の頭部からダンパケース17に大きな後向きの荷重が作用しても、ストッパ32,32がアーム25a,25bの前面に当接して、アーム25a,25bの前方への撓みを規制することになり、ダンパケース17の無用な後方移動を規制することができる。
【0056】
また上記ストッパ32は、前記嵌合溝20の外側壁に一体に連結されるので、嵌合溝20の外側壁の剛性強化に寄与することにもなる。
【0057】
また位置決め支持部30のアーム部30aには、第1ケース半体17Aの下側壁と当接爪30bとの間を連結する複数条の補強リブ33が形成される。
【0058】
こうしてヘッドレストフレーム12の前縦骨部材12c,12c及び前横骨部材12dに取り付けられたダイナミックダンパDは、
参考形態の
図5に示すものと基本的に同様の方法でクッション部材13に埋設される。但し、この第
1実施形態では、ダンパケース17が予め前縦骨部材12c,12c及び前横骨部材12dの所定位置に取り付けられるので、ダイナミックダンパDを所定位置に保持するために
参考形態で用いた糸45やマグネットM等の特別な位置決め手段は不要である。
【0059】
その他の構成は、
参考形態と同様であるので、
図7〜
図12中、
参考形態と対応する部分には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0060】
この第
1実施形態の作用について説明する。
【0061】
ダイナミックダンパDの組み立てに当たっては、前述のように弾性シート16で包んだ重錘15をダンパケース17の第1ケース半体17A又は第2ケース半体17Bに嵌め込んでから、両ケース半体17A,17Bの開口部を合わせて、一方の開口部の嵌合溝20に他方の開口部の嵌合突壁21を深く嵌入すると、連結爪22,22…と係止孔23,23…との係合により、両ケース半体17A,17Bをねじ類を用いることなく、簡単に結合することができ、同時に重錘15を、その全方向において弾性シート16を介してダンパケース17に支持させることができる。
【0062】
こうして組み立てたダイナミックダンパDをヘッドレストフレーム12に取り付けるに当たっては、先ず、第1及び第2弾性支持部24A,24Bの把持爪26a,26bをヘッドレストフレーム12の左右の前縦骨部材12c,12cに対して前方から押圧すると、左右の把持爪26a,26bは、左右の前縦骨部材12c,12cにスナップ係合して前縦骨部材12c,12cを把持することができる。したがって、ねじ類を用いることなく、ダンパケース17をヘッドレストフレーム12に簡単、容易に取り付けることができ、しかも把持爪26a,26bのスナップ係合のために、左右の前縦骨部材12c,12cに特別な加工を施す必要もない。
【0063】
その際、第1弾性支持部24Aの把持爪26aの内径D1よりも、第2弾性支持部24Bの把持爪26bの内径D2が大きく設定され、把持爪26a,26bは、その剛性が互いに異なっているので、左右の前縦骨部材12c,12cの中心間距離と、左右の把持爪26a,26bの中心間距離との製作誤差を、左右の把持爪26a,26bの比較的少ない弾性変形により吸収することができ、したがって前記製作誤差にも拘らず、両把持爪26a,26bを両前縦骨部材12c,12cに容易、確実に取り付けることができる。
【0064】
次いで、前述の方法でヘッドレスト4の、発泡材よりなるクッション部材13にダンパケース17を埋設したとき、ダンパケース17により、その内部へのクッション部材13の侵入を防ぐことができるので、その侵入によるダイナミックダンパDの制振特性の狂いを未然に防ぐことができる。
【0065】
自動車の走行中、自動車の振動が床Fからシートクッションフレーム6及び枢軸9を経てシートバックフレーム10及びヘッドレストフレーム12に伝達し、さらに第1及び第2弾性支持部24A,24Bを介してダイナミックダンパDのダンパケースに伝達すると、ダンパケース17内の重錘22が弾性シート16の弾性変形を伴って共振して、シートバック3及びヘッドレスト4よりなる起立部5の振動エネルギを代替吸収することで、上記起立部5を制振することができる。
【0066】
而して、重錘15を収容するダンパケース17は、ヘッドレストフレーム12の左右の前縦骨部材12c,12c及び前横骨部材12dに囲まれるスペースに配置されると共に、第1及び第2弾性支持部24A,24Bを介して左右の前縦骨部材12c,12cに取り付けられるので、ヘッドレストフレーム12及びダイナミックダンパD間での振動伝達効率がよく、重錘15は制振機能を有効に発揮することができる。しかも重錘15の振動は、ダンパケース17によってクッション部材13への伝達が抑えられるので、着座者に違和感を与えない。
【0067】
またこの第
1実施形態においても、ダンパケース17はヘッドレストフレーム12の前部に近接配置されることで、ダンパケース17前方のクッション部材13の肉厚は必然的に薄くなるが、ダンパケース17の、着座者側を向く前面15fは平
面に近い湾曲面に形成されているから、急ブレード時や衝突時などで、衝撃や反動により、着座者の頭部がダンパケース17前方のクッション部材13に強く押しつけられることがあっても、ダンパケース17は比較的広い面積で着座者の頭部を支承することになり、その頭部に及ぼす圧力の上昇を極力抑えることができ、これにより着座者がダンパケース17より受ける違和感を解消し、もしくは軽減することができる。
【0068】
一方、ダンパケース17の後面15rは凸状に形成されるので、ダンパケース17は、内部容積を充分に確保して、所望重量の重錘15を収容することができ、ダイナミックダンパDの制振機能を高めることができる。
【0069】
またダンパケース17がヘッドレスト4に配設されること、並びにダンパケース17内の重錘15の重心Gが重錘15の中心Cより上方にずれて位置していることにより、
参考形態と同様に、重錘22の重心Gは、シートクッション2及びヘッドレスト4よりなる起立部5の支持点、即ち枢軸9から上方へ遠く離れた位置を占めることになり、したがって比較的小質量の重錘22をもってダイナミックダンパDは、上記起立部5に対して有効な制振機能を発揮することができる。
【0070】
またダンパケース17の前壁17fをヘッドレスト4の前面に沿った凸状の湾曲面に形成すると、ダンパケース17前方のクッション部材13の肉厚を一定にして、着座者のクッション部材13前面への当たり心地を良好にすることができる。しかも、ダンパケース17の前壁の膨らみにより、その容積が拡張し、その分、重錘15の重量が可能で、制振機能の向上を図ることができる。
【0071】
またダンパケース17の前壁17f及び後壁17rを、重錘15の前面15f及び後面15rにそれぞれ沿った凸状の湾曲面に形成すると、ダンパケース17の容積を最大限有効利用して、大なる重量の重錘15を収容することができ、ダイナミックダンパDの制振機能の向上に一層寄与し得る。
【0072】
次に、
図13に示す本発明の第
2実施形態について説明する。
【0073】
この第
2実施形態では、シートバックフレーム10の左右の縦骨部材10a,10aの上部間を一体に連結する波状骨部材49の中央部で互いに反対方向へ傾斜した一対の傾斜骨部49a,49aに、ダンパケース17の左右両側面に形成される一対の弾性支持部24A,24Bがそれぞれスナップ係合される。その際、一対の弾性支持部24A,24Bは、一対の傾斜骨部49a,49aに対応して斜めに配置され、これにより一対の弾性支持部24A,24Bは、一対の傾斜骨部49a,49aでの上下動が阻止される。ダイナミックダンパDの基本構造は、第
1実施形態のものと同じである。こうしてシートバックフレーム10の上部且つ中央部に取り付けられる一個のダイナミックダンパDの作用により、シートバック3の制振を効果的に行うことができる。
【0074】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、第
1実施形態中、ダンパケース17を構成する第1及び第2半体17A,17Bの一方を、開口部を有する箱状に、他方を、上記開口部を閉鎖する蓋状に形成することもでき、またダンパケース17は、第1及び第2弾性支持部24A,24Bを用いずにクッション部材13に埋設することもできる。また本発明のシート装置は、自動車用に限らず、鉄道車両、航空機等にも適用可能である。またシートSは、乗り物の壁面から張り出して設置することもできる。