(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989440
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】インバータ故障自動切換システム
(51)【国際特許分類】
H02M 7/493 20070101AFI20160825BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20160825BHJP
【FI】
H02M7/493
H02M7/48 L
H02M7/48 J
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-168293(P2012-168293)
(22)【出願日】2012年7月30日
(65)【公開番号】特開2014-27838(P2014-27838A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年2月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 隆
【審査官】
宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭56−004340(JP,U)
【文献】
特開2006−090175(JP,A)
【文献】
特開2006−311679(JP,A)
【文献】
特開2006−288142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42−7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動するモータの容量に応じた定数等から成る設定値が設定された複数種のインバータユニットを備えたインバータ装置と、
前記インバータユニットと切換可能な複数種の予備インバータユニットを備えた実装予備インバータ装置と、
前記設定値を前記インバータユニット毎に保持し、前記インバータユニットのいずれかの故障を検出した場合には、故障した前記インバータユニットの設定値を前記実装予備インバータ装置内の対応する前記予備インバータユニットに設定するとともに、前記予備インバータユニットへの設定値の設定が正常にできた後、故障した前記インバータユニットから前記予備インバータユニットに接続を切換えるインバータ切換盤と、
前記インバータユニットのいずれかが故障の場合、前記インバータ装置が制御するモータとの接続を遮断する切換遮断器とを、
備えることを特徴とするインバータ故障自動切換システム。
【請求項2】
前記インバータ切換盤は、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)で構成し、切換制御用の処理プログラム及び前記設定値を不揮発性メモリに保持していることを特徴とする請求項1に記載のインバータ故障自動切換システム。
【請求項3】
前記インバータ装置は、前記インバータユニットを多段積みで備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインバータ故障自動切換システム。
【請求項4】
前記インバータ切換盤は、前記インバータユニットの故障を検出した場合には、アラーム信号を出力することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のインバータ故障自動切換システム。
【請求項5】
前記予備インバータユニットに切換後、自動で再起動するかあるいはオペレータの手動操作を介して再起動するかを選択可能な請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のインバータ故障自動切換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ故障自動切換システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インバータ装置で誘導電動機(モータ)を可変速運転する駆動装置は、ファンあるいはポンプなどの各種機械(負荷)を可変速駆動するのに広く用いられている。そして、故障等による停止の影響を回避するため、インバータ装置を二重化し、一方が故障したときに他方のインバータ装置に切り換え、負荷の停止を短時間で済むようにしている。
【0003】
例えば、インバータ装置の故障時に他のインバータ装置に切り換える場合、電動機の端子電圧の周波数と位相を常時検出し、故障時に切換インバータに設定するものである(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、並列運転される複数台のインバータシステムにおいて、インバータの故障を検出し、系統を切り換えることが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
複数種類のモータの制御を有するインバータ装置において、インバータユニットが1台でも故障した場合は、インバータ装置を一旦停止して、故障したインバータユニットを手動で取外し該当箇所に予備インバータユニットを実装し、駆動するモータの容量に応じた定数等から成る所定の設定値(パラメータ)を設定する必要があった。
【0006】
故障が起きた場合には、主回路を遮断し、安全を確認後、故障した該当インバータユニットを取り外し、予備インバータユニットに対して所定の設定値を設定し、予備インバータユニットへの切換OKの確認後、システムを再起動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−5624号公報
【特許文献2】特開平8−289475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
あるユニットに故障が起きた場合であっても、例えば製造ラインを早期に復帰させる要請がある一方、故障そのものはいつ起きるか予測不可能である。
【0009】
この為、場合によってはインバータユニットの交換に時間がかかり設備を長時間止めたり、慣れない作業で設定ミスが発生して後戻りや、間違った設定で電動機及び機械設備の故障にまで至ってしまうこともあった。インバータシステムの故障したインバータユニットを交換する場合は、インバータシステムを停止して、予備のインバータユニットに取り替えざるを得ないという問題点があった。
【0010】
そこで、本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、インバータシステムの故障を監視し、故障したインバータユニットがあれば、予備インバータユニット側に自動で切換えることにより設備の早期立ち上げをすることができるインバータ故障自動切換システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態によれば、駆動するモータの容量に応じた定数等から成る設定値が設定された複数種のインバータユニットを備えたインバータ装置と、前記インバータユニットと切換可能な複数種の予備インバータユニットを備えた実装予備インバータ装置と、前記設定値を前記インバータユニット毎に保持し、前記インバータユニットのいずれかの故障を検出した場合には、故障した前記インバータユニットの設定値を前記実装予備インバータ装置内の対応する前記予備インバータユニットに設定する
とともに、前記予備インバータユニットへの設定値の設定が正常にできた後、故障した前記インバータユニットから前記予備インバータユニットに接続を切換えるインバータ切換盤と、前記インバータユニットのいずれかが故障の場合、前記インバータ装置が制御するモータとの接続を遮断する切換遮断器とを、備えることを特徴とするインバータ故障自動切換システムが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、故障したインバータユニットを予備インバータユニット側に自動で切換えることにより、一連の交換が遅滞なく実行されるので、設備の早期立ち上げをすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るインバータ故障自動切換システムの構成を示す構成図である。
【
図2】制御処理の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付すとともに、重複した説明は省略する。
【0015】
本実施形態に係るインバータ故障自動切換システムは、インバータ装置において、使用中のインバータユニットが故障したことを検出して実装予備のインバータユニットに自動で切換える。また、故障したインバータユニットの設定値を自動で設定することで、手動による交換が不要でかつ交換時間の短縮を可能とする。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るインバータ故障自動切換システムの構成を示す図である。
【0017】
図1に示すように、インバータ故障自動切換システム10は、主として、インバータ装置1と、インバータ切換盤2と、実装予備インバータ装置3と、切換遮断器4と、制御するモータMから構成されている。
【0018】
インバータ装置1は、複数台のモータを制御するもので、直流電圧を変換するコンバータ(図示しない)等の他にそれぞれのモータの容量に対応したインバータユニット5a、5b、5c・・・を多段積みで備えている。各インバータユニット5a、5b、5c・・・は、駆動するモータの容量に応じた定数等から成る設定値がそれぞれ設定されている。
【0019】
実装予備インバータ装置3は、インバータ装置1の予備機として機能するものである。実装予備インバータ装置3は、インバータ装置1が備えているのと同様な構成の複数のインバータユニット6a、6b、6c・・・を備えている。インバータユニット6aは、インバータユニット5aと同じ設定値を設定することにより、代替ユニットの機能を発揮する。同様に、インバータユニット6bは、インバータユニット5bと同じ設定値を設定することにより、代替ユニットの機能を発揮する。
【0020】
インバータ切換盤2は、インバータ装置1内のインバータユニット5a、5b、5c・・・の故障の有無を判定し、故障の場合には、実装予備インバータ装置3内のインバータユニット6a、6b、6c・・・との切換を制御する。インバータ切換盤2は、例えばPLC(プログラマブルロジックコントローラ)で構成し、切換制御用の処理プログラムの他に、インバータユニット5a、5b、5c・・・の設定値を不揮発性メモリに保持している。不揮発性メモリとしては、例えば電気的に消去・書換可能なEEPROMが好適である。処理プログラムは、多段積みされたインバータユニットのうち、いずれが故障しているかを自己診断する。切換制御の詳細は、後述する。
【0021】
切換遮断器4は、実装予備インバータ装置3内のインバータユニット6a、6b、6c・・・への切換の際、安全確保のため、制御するモータMとの接続を遮断する。
【0022】
次に、以上のように構成されたインバータ故障自動切換システムの制御処理について説明する。
図2は、制御処理の流れを説明するフローチャートである。
【0023】
まず、インバータ装置1が異常か否かを判定する(ステップS21)。
【0024】
インバータ装置1が異常の場合(ステップS21でYes)には、故障しているインバータユニット5aを電動機から切り離す(ステップS22)。インバータユニット5aの故障要因としては、例えば、過電流、内蔵ファンの回転不良、ヒューズ断等が予想される。
【0025】
さらには、アラーム信号を出力する(ステップS23)。一般的に、システムの運用状況は、操作盤を介してオペレータによって監視されている。そこで、アラーム信号を操作盤に対して出力し、例えば操作盤上に設けられるグラフィックパネルで、インバータユニットの故障の発生を知らしめるものである。
【0026】
尚、インバータ装置1が異常でない場合(ステップS21でNo)には、ステップS21を繰り返す。
【0027】
次に、故障しているインバータユニット5aの設定値を、実装予備インバータ装置3内のインバータユニット6aに設定する(ステップS24)。設定する設定値は、インバータ切換盤2内に備えた不揮発性メモリに保持している。
【0028】
次いで、設定値を正常に設定できたか否かを判定する(ステップS25)。このステップを設けるのは、例えば、システム内の断線等による支障の有無を調べるためである。また、設定値の設定には若干の時間を要するので、設定時間を確保する狙いもある。
【0029】
設定値を正常に設定できた場合には、予備のインバータユニット6aに接続を切換える(ステップS26)。
【0030】
次に、自動あるいは手動の選択の確認を実行する(ステップS27)。システムが一旦停止しているので、再起動に際してオペレータの確認等を要する場合がある。そこで、自動あるいは手動の選択を、例えば、操作盤上に設けられる押しボタン等の状況で確認する。
【0031】
次いで、「自動」が選択されたか否かを判定する(ステップS28)。「自動」が選択された場合(ステップS28でYes)には、インバータ故障自動切換システムの再起動を実行する(ステップS29)。
【0032】
「自動」が選択されない場合(ステップS28でNo)には、操作者による「手動」操作を確認後、インバータ故障自動切換システムの再起動を実行する(ステップS30)。
【0033】
本実施形態によれば、故障した制御装置(ユニット)を、予備インバータユニット(ユニット)側に自動で切換えることにより一連の交換作業を手動で実施しない為、設備の早期立ち上げをすることができる。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
1・・・インバータ装置
2・・・インバータ切換盤
3・・・実装予備インバータ装置
4・・・切換遮断器
5a、5b、5c・・・インバータユニット
6a、6b、6c・・・インバータユニット