特許第5989441号(P5989441)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989441
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】塗装装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20160825BHJP
   B05C 11/04 20060101ALI20160825BHJP
   E04D 15/04 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   B05C5/00 102
   B05C11/04
   E04D15/04 Z
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-168400(P2012-168400)
(22)【出願日】2012年7月30日
(65)【公開番号】特開2014-24047(P2014-24047A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】506125720
【氏名又は名称】株式会社NSP KS
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 捷也
【審査官】 安積 高靖
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−002686(JP,A)
【文献】 実開平04−006055(JP,U)
【文献】 特開平11−207221(JP,A)
【文献】 特開昭61−291061(JP,A)
【文献】 特開昭63−036822(JP,A)
【文献】 実開平06−011867(JP,U)
【文献】 実開昭51−049778(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00
B05C 11/04
E04D 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向し合っていて、傾斜方向が逆となっている多数の傾斜面を有する折板屋根の、少なくとも互いに対向している一対の前記傾斜面を同時に塗装する塗装装置であって、
少なくとも互いに対向している一対の前記傾斜面とそれぞれ平行な一対の吐出口を有する塗料槽と、この塗料槽に取り付けられて、前記一対の傾斜面にそれぞれ平行な均し板と、を備えて、
移動時に、前記塗料槽内からの塗料を前記各吐出口から前記各傾斜面上に自然流下で吐出させて、前記傾斜面上に吐出された塗料を前記各均し板にて均すことにより、少なくとも前記一対の傾斜面を同時に塗装できるようにしたことを特徴とする塗装装置。
【請求項2】
互いに対向し合っていて、傾斜方向が逆となっている多数の傾斜面と、互いに対向し合う一対の傾斜面の間に連続する水平面と、を有する折板屋根の、少なくとも互いに対向している一対の前記傾斜面を同時に塗装する塗装装置であって、
少なくとも互いに対向している一対の前記傾斜面、及びこれらの間の前記水平面とそれぞれ平行な3つの吐出口を有する塗料槽と、この塗料槽に取り付けられて、前記一対の傾斜面と水平面とにそれぞれ平行な3つの均し板と、を備えて、
移動時に、前記塗料槽内からの塗料を前記各吐出口から前記各傾斜面及び水平面上に自然流下で吐出させて、前記傾斜面及び水平面上に吐出された塗料を前記各均し板にて均すことにより、少なくとも前記一対の傾斜面と水平面とを同時に塗装できるようにしたことを特徴とする塗装装置。
【請求項3】
前記塗装装置の移動を、当該塗装装置の外面に取り付けられて、前記被塗装面上に当接し得る転動部材によって可能となるようにし、当該塗装装置の移動によって、前記均し板による前記塗料の均しが自動的に行えるようにしたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の塗装装置。
【請求項4】
前記各均し板に、前記被塗装面上に吐出された塗料の厚さを規定する突起を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の塗装装置。
【請求項5】
前記吐出口及び均し板をそれぞれ備えた前記塗装装置の複数を、前記被塗装面上の形状に合わせて連結したことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の塗装装置。
【請求項6】
前記吐出口の開閉は、上下動可能に配置したハンドルと、このハンドルの上下動によって前後方向に進退する作動バーと、この作動バーに連結されて前記吐出口の開閉を行うシャッターと、前記作動バーを原位置に復帰させる復帰スプリングとを備えた開閉機構により行うようにしたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載の塗装装置。
【請求項7】
前記塗料槽に、これに連通して前記塗料の追加が行えるタンクを設けたことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の塗装装置。
【請求項8】
前記タンクに、当該タンク内の圧力が外気圧と同じになるようにする圧力調整器を設けたことを特徴とする請求項7に記載の塗装装置。
【請求項9】
流下してきた前記塗料を、その流下方向とは異なる方向に分散させる分散板を、前記塗料槽内に設けたことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載の塗装装置。
【請求項10】
当該塗装装置の一部に一端が連結された索条の巻き取りまたは巻き戻しを行うウインチを備えたことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載の塗装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗装装置に関し、特に、塗料が高粘性である場合に適した塗装装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に塗装装置を構成するためには、使用される塗料の粘性を考慮しなければならない。粘性が低いか、溶剤を用いて粘性を低くした塗料は、ポンプによってノズルから噴霧するように塗装装置を構成すればよいが、粘性が高いままの塗料は、装置内部で固化したり、洗浄を要する等の点で、ポンプやノズルを採用することは好ましくない。
【0003】
一方で、例えば自動車工業のような巨大な産業では、アクリル樹脂系塗料、ポリエステル樹脂系塗料、ウレタン樹脂系塗料、エポキシ樹脂系塗料、またはメラミン樹脂系塗料等の高粘性塗料であっても、これを塗布する装置とすることは比較的効率的に行える。被塗装物である自動車が、次から次へと塗装装置に向けて送られてくるからである。
【0004】
これに対して、高粘性塗料が使用される自動車産業用の塗装装置を、例えば、個人住宅用の倉庫や車庫の折板屋根のように、塗装面積もそんなに広くなく、かつ塗装を要する折板屋根がバラバラに存在している場合に適用することは、当然のことながら、非常に困難か、あるいは不可能である。
【0005】
折板屋根は、例えば図7の(a)に示すように、断面が、横部分と、その両端にて立ち上がって横部分に向けて傾斜する左右の傾斜部分とからなる3部分が繰り返し連続するようにしたものであり、平面視では、折れ線(横部分と傾斜部分の境界線)が互いに平行となるようになったものである。換言すれば、この折板屋根は、平らにはなっていないものであるから、その表面に塗装を行おうとすると、その凹凸が障害となって手間の掛かるものとなっているのである。
【0006】
このような凹凸のある折板屋根の塗装を効率的に行おうとする塗装装置が、例えば特許文献1〜特許文献3のように、種々提案されてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭59−16565号公報
【特許文献2】特開平11−207221号公報、要約
【特許文献3】特開2012−12886号公報、要約
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の「走行式自動屋根塗装機」は、「金属折板の屋根の塗装が自動的にきわめて能率良くできる走行式自動屋根塗装機を提供すること」を目的としてなされたもので、図9にも示すように、
「断面形状が台形又はV字形の金属折板を用いて構成された屋根の並列する突条部をレールとし、該突条部に沿って転動する車輪を有する台車に、前記車輪を駆動する駆動装置と、吹付け式塗装装置と、前記台車に揺動自在に取付けられた前記吹付け式塗装装置の噴射ノズルの揺動装置とが搭載され、かつ前記車輪がその車軸に軸方向移動可能に取り付けられていることを特徴とする走行式自動屋根塗装機」
である。
【0009】
この特許文献1の「走行式自動屋根塗装機」では、「金属折板を用いて構成された屋根の並列する突条部をレール」とすることから、塗装作業によって屋根を傷める可能性があるし、「噴射ノズル」及び「その揺動装置」が必要なことから、全体が非常に複雑化するものと考えられる。それだけでなく、「噴射ノズル」を使用することから、粘性の高い塗料を採用することは殆どできない。
【0010】
また、特許文献2の「折板屋根表面塗装装置」は、「塗装作業を容易に行うことができると共に、単位時間当たりの塗装面積も飛躍的に増大することができる折板屋根表面塗装装置を提供する」を目的としてなされたもので、図10にも示すように、「走行車輪19、20を長尺溝11内に転動させて塗料吹付装置14を搭載する走行台車13を縦方向に移動させる際には、リフト機構24、25によって走行履帯22、23を長尺突条10の上端面21から離隔し、走行履帯22、23を長尺突条10の上端面21を移動させて走行台車13を横方向に移動させる際には走行車輪19、20を長尺溝11から離隔すると共に長尺突条10の上端面21より上方に位置させる」ようにしたものである。
【0011】
この特許文献2の装置も、「塗料吹付装置14を搭載する」とともに、次の塗装箇所に移る際に、「走行台車13」を移動させる複雑な機構を有しているから、全体的に非常に複雑で作業のし辛いものとなっており、上記特許文献1の装置と同様、粘性の高い塗料を採用することは殆どできないと考えられる。
【0012】
一方、この特許文献2の段落0003には、
「近年、長尺突条又は長尺溝に沿って走行台車を移動しながら、走行台車上に搭載した塗装スプレー装置を駆動して折板屋根の外表面に塗料を吹き付ける塗装装置が提示されている。しかし、この塗装装置においては、各長尺突条又は長尺溝の塗装が終了した後、隣接する長尺突条又は長尺溝を塗装する際には、数人の作業者が手で重量物である塗装装置を持ち抱えて次の長尺突条又は長尺溝に横移動する必要がある、このような横移動作業は作業者に重労働を強いることになり、また、塗装作業の連続性が途切れるので、単位時間当たりの塗装面積も、手作業に比較すれば増大することができるが、限られたものとなる。」
ことも記載されている。
【0013】
さらに、特許文献3の「屋根塗装装置」は、「折板屋根に容易に設置でき、効率よく塗装することが可能な屋根塗装装置を提供する」ことを目的としてなされたものであり、図11にも示すように、「折板屋根Rに塗料Pの吹付けをおこなう屋根塗装装置1である。そして、折板屋根に対して着脱自在な固定具4を有する第1レール2と、第1レールと間隔を置いて略平行に設置される固定具4を有する第2レール3と、第1レールと第2レールに対して略直交する方向に向けて差し渡されるとともに第1レール及び第2レールに沿って移動可能な第3レール5と、塗料吹付けノズル61を有するとともに第3レールに沿って移動可能な吹付け部6とを備えている」といった複雑な構造のものであり、粘性の高い塗料を採用することは殆どできないものとなっていると考えられる。
【0014】
そこで、本発明者等は、粘性の高い塗料を使用することができて、塗装面積が限られている折板屋根のような被塗装面に対する塗装が行える塗装装置として、もっと簡単な構成で、塗装作業も一人で行えるようにするにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【0015】
すなわち、本発明の目的とするところは、高粘性の塗料を使用することができて、被塗装面全体への塗装を容易に行うことができ、しかも全体の構成を簡単なものとすることのできる折板屋根用の塗装装置を提供することにある。
【0016】
また、本発明のさらに目的とするところは、一回の移動で複数の被塗装面の塗装が同時にできるようにして、これを繰り返し行えば被塗装面全体の塗装が一人の作業者で行うことができる塗装装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する実施形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
互いに対向し合っていて、傾斜方向が逆となっている多数の傾斜面220を有する折板屋根の、少なくとも互いに対向している一対の傾斜面220を同時に塗装する塗装装置100であって、
少なくとも互いに対向している一対の傾斜面220とそれぞれ平行な一対の吐出口11を有する塗料槽10と、この塗料槽10に取り付けられて、一対の傾斜面220にそれぞれ平行な均し板20と、を備えて、
移動時に、塗料槽10内からの塗料を各吐出口11から各傾斜面220上に自然流下で吐出させて、傾斜面220上に吐出された塗料を各均し板20にて均すことにより、少なくとも一対の傾斜面220を同時に塗装できるようにしたことを特徴とする塗装装置100」
であり、また、請求項2に係る発明の採った手段は、同様に、
互いに対向し合っていて、傾斜方向が逆となっている多数の傾斜面220と、互いに対向し合う一対の傾斜面220の間に連続する水平面210と、を有する折板屋根の、少なくとも互いに対向している一対の傾斜面220を同時に塗装する塗装装置100であって、
少なくとも互いに対向している一対の傾斜面220、及びこれらの間の水平面210とそれぞれ平行な3つの吐出口11を有する塗料槽10と、この塗料槽10に取り付けられて、一対の傾斜面220と水平面210とにそれぞれ平行な3つの均し板20と、を備えて、
移動時に、塗料槽10内からの塗料を各吐出口11から各傾斜面220及び水平面210上に自然流下で吐出させて、傾斜面220及び水平面210上に吐出された塗料を各均し板20にて均すことにより、少なくとも一対の傾斜面220と水平面210とを同時に塗装できるようにしたことを特徴とする塗装装置100」
である。
【0018】
ここで、上記の請求項1と請求項2の各発明は、塗装すべき対象を「折板屋根」にしたものであるが、これらの請求項1と請求項2の各発明の違いは、まず、請求項1の発明の対象が、傾斜方向が逆となっている多数の傾斜面220が互いに対向し合うものとなっている「折板屋根」であることである。これに対して、請求項2の発明の対象が、傾斜方向が逆となっている多数の傾斜面220と、互いに対向し合う一対の傾斜面220の間に連続する水平面210と、を有する「折板屋根」であることである。
【0019】
この塗装装置100は、図1にも示すように、その下部に吐出口11を有したものであり、この吐出口11は、塗料槽10から送られてきた塗料30を、自然落下を利用して被塗装面200に向けて吐出するものである。従って、この塗装装置100では、塗料30として高粘性のものが採用されたとしても、この塗料30は、自然落下によって、吐出口11から被塗装面200に向けて吐出されるのであり、駆動源や清掃の必要なポンプやノズルを必要としていないものである。
【0020】
なお、塗料供給源としては、塗料30が供給できてその自然落下が適用できるのであれば何であってもよく、後述する塗料槽10は勿論、例えば塗料缶につないだパイプであってもよい。
【0021】
また、この塗装装置100自身は、自走するための機構や装置を備えていないものであり、人力もしくは後述するウインチ70等の引っ張り力により、被塗装面200上を移動するものである。換言すれば、この塗装装置100は、上述したポンプやノズルは勿論、走行のための装置を有していないものであり、非常にコンパクトに構成されているのである。
【0022】
そして、この塗装装置100においては、図2等に示すように、均し板20を備えたものであり、この均し板20は、吐出口11が開放されて当該塗装装置100が移動されたとき、吐出口11から被塗装面200上に吐出された塗料30の均しを行うものである。換言すれば、この均し板20は、被塗装面200上に吐出された塗料30の均しを積極的あるいは自動的に行うものではなく、当該塗装装置100の移動によって、言わば従動的に塗料30の均しを行うものである。
【0023】
高粘性の塗料30を使用し、かつこの塗料30の自然落下を使用した場合、この塗料30が塗布されたままの被塗装面200には当然のことながら塗料30による凹凸ができる。しかしながら、本発明に係る塗装装置100は均し板20を有しているのであるから、この塗料30の凹凸は、当該塗装装置100の移動に伴って均し板20によって自然に解消される。つまり、自然流下によって吐出口11から吐出された塗料30の表面の凹凸は、均し板20によって均されて、刷毛塗りしたような平らな塗装面となるのである。
【0024】
従って、これらの請求項1及び請求項2に係る塗装装置100は、まず、高粘性の塗料30を使用することができて、被塗装面200全体への塗装を容易に行うことができ、しかも全体の構成が簡単なものとなっているのである。
【0025】
これらの請求項1及び請求項2に係る塗装装置100は、図3図8に示すように、少なくとも傾斜面220を有する折板屋根に適したものとしたものであるが、折板屋根としては、図7の(a)に示すように、一つの水平面210の両側に傾斜面220を有して、これらが交互に連続するタイプ(請求項2の発明に係る塗装装置100が対象としている)と、図7の(b)に示すように、二つの傾斜面220が交互に連続するタイプ(請求項1の発明に係る塗装装置100が対象としている)とがある。何れのタイプも、傾斜面220を有したものであり、請求項1に係る塗装装置100は、少なくともこの傾斜面220を対象としているが、これらの傾斜面220と同時に水平面210についても塗装を行うものが請求項2に係る塗装装置100である。
【0026】
また、これらの請求項1及び請求項2に係る塗装装置100の吐出口11は、少なくとも傾斜面220上に開口する複数のものとしたことから、図7の(a)及び(b)の何れのタイプの折板屋根についても、当該塗装装置100を1回移動させる際に、当該塗装装置100の両側にある2つの傾斜面220の塗装を行えるのである。勿論、請求項2の塗装装置100は、図7の(a)に示すように、折板屋根が水平面210を有するものであれば、この水平面210に対する塗装も行えるものとすることができることは言うまでもない。
【0027】
従って、これらの請求項1及び請求項2に係る塗装装置100は、上述した機能を発揮する他、少なくとも傾斜面220を有する折板屋根の塗装が、単に塗装装置100を移動させるという手段によって効率的に行えるものとなっているのである。
【0028】
さらに、これらの請求項1及び請求項2に係る塗装装置100は、所定容量を有する塗料槽10を備えたものであり、この塗料槽10下側面に吐出口11を開口させるとともに、均し板20を塗料槽10に連結したものである。これにより、この塗装装置100は、本発明の必須要素である吐出口11と均し板20とを塗料槽10にコンパクトに固定化できるものであり、塗料30の吐出と、被塗装面200である水平面210や傾斜面220への塗装作業の安定化ができるものである。
【0029】
また、これらの請求項1及び請求項2に係る塗装装置100は、その塗料槽10の下側面に吐出口11を開口させたものであるが、この吐出口11の数や被塗装面200に対する対向角度は、塗料槽10の下面側の形状を変えることによって簡単に行えるものとなっている。例えば、対象となっている被塗装面200が図7の(a)に示すような折板屋根である場合には、塗料槽10の下面形状を図3及び図4に示すようにして、1つの水平面210に対向する1つの吐出口11と、この吐出口11の両側に傾斜して位置する2つの吐出口11の、合計3つの吐出口11を形成できるようにするのである。
【0030】
一方、対象となっている被塗装面200が図7の(b)に示すような折板屋根である場合には、塗料槽10の下面形状を図6に示すようにして、塗料槽10の下端が2つの傾斜面220の間の「谷部分」内に入り得るようにするとともに、この「谷部分」の両側の傾斜面220に対向する2つの吐出口11のみを、塗料槽10の下面に形成できるようにするのである。
【0031】
さらに、この塗装装置100において、所定容量を有する塗料槽10は、塗料30が高粘性のものである場合に、重要な役割を果たす。上述したように、吐出口11が複数あって、それぞれの吐出口11が水平に開口していない場合に、高粘性である塗料30が、各吐出口11の全部分から均等に自然落下することはなかなか困難なのであるが、塗料槽10内に一旦蓄えられることによって、この高粘性の塗料30は重力により水平に均され、各吐出口11からの自然落下による均等な吐出ができるのである。
【0032】
従って、これらの請求項1及び請求項2に係る塗装装置100は、上記の機能を発揮する他、より一層コンパクトで均等吐出が行えるものとなっているのである。
【0033】
上記課題を解決するために、請求項3に係る発明の採った手段は、上記請求項1または請求項2のいずれかに記載の塗装装置100について、
「塗装装置100の移動を、当該塗装装置100の外面に取り付けられて、被塗装面200上に当接し得る転動部材40によって可能となるようにし、当該塗装装置100の移動によって、均し板20による塗料30の均しが自動的に行えるようにしたこと」
である。
【0034】
この請求項3の塗装装置100は、図3図8に示すように、その移動を、当該塗装装置100の外面に取り付けられて、被塗装面200上に当接し得る転動部材40によって可能となるようにしたものである。塗装装置100の外面とは、当該塗装装置100を構成する部分の外面であればどこであってもよいことを意味するものであるが、後述する実施形態では、塗料槽10の外面が最も適したものとなっている。
【0035】
転動部材40は、当該塗装装置100を被塗装面200に対して支えることができて、塗装装置100の移動を補助できるのであればどのようなものであってもよい。例えば、図1に示すように、被塗装面200が平面的なものであれば、この転動部材40としては一般的なローラーや車輪であればよく、被塗装面200が図7の(a)や(b)に示すような折板屋根であれば、「山部分」上に係合し得る「転動溝41」を有したローラーや車輪であればよい。
【0036】
この転動部材40は、当該塗装装置100の移動を補助するものであるから、当該塗装装置100の側面、つまり塗装装置100の進行方向に直交する方向の側面に取り付けられ、被塗装面200や傾斜面220の近傍に直接当接するものであるが、転動部材40とは別の位置、例えば塗装装置100の背面に、この転動部材40とは異なる補助輪を設けるようにしてもよい。
【0037】
従って、この請求項3の塗装装置100は、上記請求項1〜2のそれと同様な機能を発揮する他、転動部材40によって塗装装置100の移動を円滑にし得るものとなっている。
【0038】
上記課題を解決するために、請求項4に係る発明の採った手段は、上記請求項1〜請求項3のいずれかに記載の塗装装置100について、
「各均し板20に、被塗装面200上に吐出された塗料30の厚さを規定する突起21を設けたこと」
である。
【0039】
均し板20は、対応する吐出口11から自然落下によって吐出されてきた塗料30の均しを行うものであったが、この均し厚さを常に均等にしたり変更したい場合があるが、そのような機能を発揮するようにしたのが各均し板20に設けた突起21である。突起21としては、各均し板20に形成されて被塗装面200に向かう単なる凸状物であってもよいが、均し板20からの突出量調整可能な「ピン」や、「ネジ」であってもよいものである。
【0040】
この突起21は、当該塗装装置100の使用時に、その先端が均し板20から突出して被塗装面200や水平面210あるいは傾斜面220に当接することによって、これらの被塗装面200や水平面210あるいは水平面210と、各均し板20との間の隙間量を規定する。つまり、この突起21は、被塗装面200等の上に吐出された塗料30の厚さを規定することになるものであり、当該塗装装置100による塗装作業中において、塗料30の厚さを一定にするのである。勿論、この突起21は、その先端の、均し板20からの突出量を調整できるものであれば、塗料30の厚さを所望の厚さに調整できることは言うまでもない。
【0041】
また、この突起21が形成されるべき均し板20は、後述する実施形態の場合、バネ板22によって塗料槽10に取り付けられるものであるが、当該塗装装置100を被塗装面200に対して設置した場合、これらの均し板20が被塗装面200に対して常に正しい位置に設置されるとは限らない。特に、吐出口11が複数あることに伴って均し板20も複数になる場合、各均し板20の被塗装面200に対する位置は、必ずしも同一になる訳ではないし、塗装作業中に塗装装置100自体が揺れることもある。そのような場合に、各突起21によって、均し板20と被塗装面200との間の寸法が一定に保たれ、あるいは調整できることは、塗料30の層厚さを一定にする上で重要である。
【0042】
従って、この請求項4に係る塗装装置100は、上記請求項1〜3のそれと同様な機能を発揮する他、突起21によって塗料30の層厚さを一定に、かつ調整可能にし得るものとなっているのである。
【0043】
上記課題を解決するために、請求項5に係る発明の採った手段は、上記請求項1〜請求項4のいずれかに記載の塗装装置100について、
「吐出口11及び均し板20をそれぞれ備えた塗装装置100の複数を、被塗装面200上の形状に合わせて連結したこと」
である。
【0044】
この請求項5の塗装装置100は、例えば図5に示すように、複数の塗装装置100を互いに連結して、1回の移動でより広い面積の塗装を行えるようにしたものである。連結されるべき各塗装装置100は、上記請求項1〜4に定義したものである。
【0045】
各塗装装置100を連結するには種々な手段が採用できるが、後述する実施形態では、各塗装装置100にそれぞれ取り付けた連結アーム14a及び係合部14bが使用される。これらの連結アーム14a及び係合部14bは、図5に示すように、例えば塗料槽10の左右両側面のそれぞれに固定されるものであり、例えば連結アーム14aは係合部14bに上から係合することのできる爪状のものである。係合部14bは、この連結アーム14aを受け止めて固定することのできるバー状のものである。これらの連結アーム14a及び係合部14bを各塗装装置100がそれぞれ有していれば、1つの塗装装置100に対して他の塗装装置100を上から乗せるようにして隣接させれば、図5に示すような連結状態が簡単に形成できるのである。
【0046】
従って、この請求項5の塗装装置100は、上記請求項1〜4のそれと同様な機能を発揮する他、単独時よりも広い面積の塗装を一括して行える。
【0047】
上記課題を解決するために、請求項6に係る発明の採った手段は、上記請求項1〜請求項5のいずれかに記載の塗装装置100について、
「吐出口11の開閉は、上下動可能に配置したハンドル51と、このハンドル51の上下動によって前後方向に進退する作動バー52と、この作動バー52に連結されて吐出口11の開閉を行うシャッター53と、作動バー52を原位置に復帰させる復帰スプリング54とを備えた開閉機構50により行うようにしたこと」
である。
【0048】
上述してきた塗装装置100における各吐出口11は、塗装作業が始まるときに開放されなければならないが、この請求項6の塗装装置100では、図2及び図4に示すようなシャッター53が採用される。換言すれば、この請求項6の塗装装置100では、その各吐出口11は開口したままのものであって、塗料30を吐出させたいときに各吐出口11からシャッター53を後退させて当該吐出口11の開放を行うようにしたものである。
【0049】
このシャッター53による吐出口11の開閉操作は開閉機構50によってなされる。開閉機構50は、図2及び図4に示すように、上下動可能に塗装装置100に配置したハンドル51と、このハンドル51の上下動によって前後方向に進退する作動バー52と、この作動バー52に連結されて吐出口11の開閉を行うシャッター53と、作動バー52を原位置に復帰させる復帰スプリング54とを備えたものであり、ハンドル51を押し下げたとき、シャッター53が各吐出口11を開くようにしたものである。
【0050】
後述する実施形態の開閉機構50では、ハンドル51の下部はクランク状に曲げられていて、図2及び図4に示すように、当該ハンドル51の上下方向線に対して下部だけが前方(図2及び図4では図示左方)にズラしてある。図2及び図4では、この前方にズレた下部に作動バー52が係合している状態であるから、作動バー52は前進端に位置しているものであり、ハンドル51は上昇端に位置しているものである。このとき、復帰スプリング54はシャッター53が閉じる方向に作動バー52を付勢している。換言すれば、作動バー52の原位置は、シャッター53が吐出口11を閉じているときの位置であり、復帰スプリング54はシャッター53が閉じられる方向に作動バー52を付勢しているものである。
【0051】
この開閉機構50を使用してシャッター53を後退させて各吐出口11を開放するには、図2及び図4に示すハンドル51を図示状態から押し下げる。そうすると、ハンドル51の上部が下動してくるから、それに伴って作動バー52を後方、つまり図示右方に、復帰スプリング54の付勢力に抗して引くことになる。作動バー52にはシャッター53が連結してあるから、このシャッター53も後方、つまり図示右方に引かれて、吐出口11を開放することになり、塗装作業を開始できる状態となる。
【0052】
塗装すべき部分の作業が終われば、当該塗装装置100を次の塗装箇所に移動させるべく、各吐出口11を閉じなければならない。その閉じ作業は、開閉機構50のハンドル51を上動することにより行われる。つまり、ハンドル51を引き上げると、ハンドル51の下部が図2及び図4に示す位置に上動してきて、作動バー52が復帰スプリング54の付勢力によって前方向(当該塗装装置100が進む方向)に動き、この作動バー52に連結されているシャッター53が吐出口11を閉鎖するのである。このときの状態が、例えば図4に示した状態であり、復帰スプリング54が作動バー52及びシャッター53を図示状態に押していることになる。
【0053】
各シャッター53の閉じ操作がハンドル51を上動することによって行えるようにしてあることは意味がある。上述したように、塗装すべき部分の作業が終わって当該塗装装置100を次の塗装箇所に移動させる場合には、塗料30が吐出口11から余分に吐出されることを防止しながら行わなければならないし、当該塗装装置100を移動させるには、例えばハンドル51によって塗装装置100を持ち上げなければならない。このハンドル51の持ち上げ時にシャッター53の閉じが行われるのであれば、移動時の塗料30の零れを気にしなくても済むことになるが、この請求項6の塗装装置100では、それが実現されていることになるからである。
【0054】
従って、この請求項6に係る塗装装置100は、上記請求項1〜5のそれと同様な機能を発揮する他、吐出口11のシャッター53による開閉を確実かつ自然に行えるものとなっているのである。
【0055】
上記課題を解決するために、請求項7に係る発明の採った手段は、上記請求項1〜請求項6のいずれかに記載の塗装装置100について、
塗料槽10に、これに連通して塗料30の追加が行えるタンク60を設けたこと」
である。
【0056】
すなわち、この請求項7に係る塗装装置100は、図1または図3中の仮想線、あるいは図5に示すように、塗料槽10に、これに連通して塗料30の追加が行えるタンク60を設けたものであり、これにより、塗料30の追加時間を短縮できるようにしたものである。また、当該塗装装置100を使用して一人で作業を行う場合の塗料30の追加を、塗料槽10と当該タンク60とに分けて行うことができるから、無理なく行うことができるのである。
【0057】
従って、この請求項7に係る塗装装置100は、上記請求項1〜6のそれと同様な機能を発揮する他、塗料30の追加が無理なく行えるものとなっている。
【0058】
上記課題を解決するために、請求項8に係る発明の採った手段は、上記請求項7に記載の塗装装置100について、
「タンク60に、当該タンク60内の圧力が外気圧と同じになるようにする圧力調整器61を設けたこと」
である。
【0059】
タンク60内の塗料30が消費されていけば、当該タンク60内の圧力はそのままでは下がっていき、塗料30の自然落下による吐出口11からの吐出に支障を来たすことがある。特に、塗料30が高粘性のものであれば、自然流下に時間が掛かるから、吐出口11からの吐出支障(吐出しにくいこと)は塗装作業に大きく悪影響を与える。
【0060】
その点、この請求項8に係る塗装装置100では、タンク60に圧力調整器61を設けたから、この圧力調整器61によって、当該タンク60内の圧力が外気圧と同じになるから、当該タンク60内の圧力が下がることはない。従って、この塗装装置100は、吐出口11からの吐出支障も、塗装作業への悪影響もないものとなっている。
【0061】
従って、この請求項8に係る塗装装置100は、上記請求項7のそれと同様な機能を発揮する他、吐出口11からの吐出支障も、塗装作業への悪影響もないものとなっている。
【0062】
上記課題を解決するために、請求項9に係る発明の採った手段は、上記請求項1〜請求項8のいずれかに記載の塗装装置100について、
「流下してきた塗料30を、その流下方向とは異なる方向に分散させる分散板13を、前記塗料槽10内に設けたこと」
である。
【0063】
この請求項9に係る塗装装置100では、例えば図5に示すように、塗料槽10やタンク60等の塗料供給部内に分散板13を設けたものであるが、この分散板13は、図5中の矢印線にて示すように、流下してきた塗料30をその流下方向とは異なる方向に分散させるものである。
【0064】
粘性の高い塗料30は、塗料槽10やタンク60等の内壁に付着し易く、そのままでは消費部分である吐出口11に均等に流れ込みにくい。その点、この請求項9に係る塗装装置100では、塗料槽10やタンク60等の塗料供給部内に分散板13が設けてあるから、この分散板13によって塗料30が各所に分散され、各吐出口11からの均等な吐出が確保されるのである。このため、吐出口11からの吐出支障も、塗装作業への悪影響もないのである。
【0065】
従って、この請求項9に係る塗装装置100は、上記請求項1〜8のそれと同様な機能を発揮する他、吐出口11からの吐出支障も、塗装作業への悪影響もないものとなっている。
【0066】
上記課題を解決するために、請求項10に係る発明の採った手段は、上記請求項1〜請求項9のいずれかに記載の塗装装置100について、
「当該塗装装置100の一部に一端が連結された索条71の巻き取りまたは巻き戻しを行うウインチ70を備えたこと」
である。
【0067】
この請求項10に係る塗装装置100は、例えば図8に示すように、ウインチ70をも備えたものであり、このウインチ70の索条71を当該塗装装置100の一部に連結したものである。このウインチ70は人力に代わって塗装装置100の移動が行えるものであり、索条71の巻き取りあるいは巻戻しを行うことによって、塗装装置100の移動を行うことになる。なお、図8では、ウインチ70は、索条71の巻き取りで塗装装置100の移動を行う例が示してある。
【0068】
従って、この請求項10の塗装装置100は、上記請求項1〜10と同様な機能を発揮する他、塗装装置100の移動をウインチ70によって助けることができるものとなっている。
【発明の効果】
【0069】
以上、説明したとおり、本発明においては、
互いに対向し合っていて、傾斜方向が逆となっている多数の傾斜面220を有する折板屋根の、少なくとも互いに対向している一対の傾斜面220を同時に塗装する塗装装置100であって、
少なくとも互いに対向している一対の傾斜面220とそれぞれ平行な一対の吐出口11を有する塗料槽10と、この塗料槽10に取り付けられて、一対の傾斜面220にそれぞれ平行な均し板20と、を備えて、
移動時に、塗料槽10内からの塗料を各吐出口11から各傾斜面220上に自然流下で吐出させて、傾斜面220上に吐出された塗料を各均し板20にて均すことにより、少なくとも一対の傾斜面220を同時に塗装できるようにしたこと」
あるいは、
互いに対向し合っていて、傾斜方向が逆となっている多数の傾斜面220と、互いに対向し合う一対の傾斜面220の間に連続する水平面210と、を有する折板屋根の、少なくとも互いに対向している一対の傾斜面220を同時に塗装する塗装装置100であって、
少なくとも互いに対向している一対の傾斜面220、及びこれらの間の水平面210とそれぞれ平行な3つの吐出口11を有する塗料槽10と、この塗料槽10に取り付けられて、一対の傾斜面220と水平面210とにそれぞれ平行な3つの均し板20と、を備えて、
移動時に、塗料槽10内からの塗料を各吐出口11から各傾斜面220及び水平面210上に自然流下で吐出させて、傾斜面220及び水平面210上に吐出された塗料を各均し板20にて均すことにより、少なくとも一対の傾斜面220と水平面210とを同時に塗装できるようにしたこと」
にその構成上の主たる特徴があり、これにより、高粘性の塗料30を使用することができて、被塗装面200全体への塗装が容易に行うことができ、しかも全体の構成を簡単なものとすることのできる折板屋根用の塗装装置100を提供することができるのである。
【0070】
また、本発明は、一回の移動で少なくとも2つの傾斜面220の塗装が同時にできて、これを繰り返し行えば、折板屋根のような被塗装物200全体の塗装が一人の作業者で行うことができる塗装装置100を提供することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1】本発明の第1実施例に係る塗装装置100の正面図である。
図2】同側面図である。
図3】本発明の第2実施例に係る塗装装置100の正面図である。
図4】同側面図である。
図5】本発明の第3実施例に係る塗装装置100の正面図である。
図6】本発明の第4実施例に係る塗装装置100の正面図である。
図7】本発明に係る塗装装置100と折板屋根との関係を例示する図であって、(a)は折板屋根が2つの傾斜面220とその間の水平面210との繰り返しである場合の部分正面図、(b)は折板屋根が2つの傾斜面220のみの繰り返しである場合の部分正面図である。
図8】本発明に係る塗装装置100がウインチ70を有している場合の斜視図である。
図9】特許文献1に示された技術を示す部分正面図である。
図10】特許文献2に示された技術を示す部分正面図である。
図11】特許文献3に示された技術を示す部分正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0072】
次に、上述した各請求項に係る発明を、図面に示した実施の形態である塗装装置100について説明するが、この実施形態の塗装装置100は、図1及び図2に示した第1実施例と、図3及び図4に示した第2実施例と、図5に示した第3実施例と、図6に示した第4実施例と、図8に示した第5実施例とがあるので、以下各実施例に従って順次説明していくこととする。
【0073】
(第1実施例)
図1及び図2には本発明の第1実施例に係る塗装装置100が示してあるが、この塗装装置100は、塗料30の自然流下を利用して、被塗装面200上の塗装を移動しながら行うものであって、塗料槽10から自然流下してきた塗料30を吐出させる吐出口11と、この吐出口11から被塗装面200上に吐出された塗料30の均しを行う均し板20と、を備えたものである。
【0074】
この第1実施例に係る塗装装置100の塗料供給源としては、塗料30が供給できてその自然落下が適用できるのであれば何であってもよく、例えば塗料缶につないだパイプであってもよい。この第1実施例においては、図1に示したように、塗料供給源としては塗料槽10を採用しており、この塗料槽10上にタンク60が設置できるようにしてある。
【0075】
塗料槽10は、図1に示したように、その下部の両側が窄むように傾斜しているものであり、下端部には水平に開口する吐出口11が形成してある。この塗料槽10の傾斜面には、図1に示したように、転動部材40が設けてあって、この転動部材40は、当該塗装装置100を人力もしくは後述するウインチ70等の引っ張り力により移動させるに際して、被塗装面200上での移動をし易くするものである。換言すれば、この第1実施例に係る塗装装置100は、自走するための機構や装置を備えていないものであり、非常にコンパクトになるように構成してある。
【0076】
転動部材40としては、当該塗装装置100の、被塗装面200上での移動をし易くするものであれば何であってもよく、図1に示したような単なる転動ローラは勿論、図3等に示したような、2つの傾斜面220の互いに交差する上端部に係合する転動溝41を有する係合ローラであってもよいものである。
【0077】
一方、塗料槽10の下端に設けた吐出口11は、図1の仮想線にて示した被塗装面200の一部に対向するものであり、塗料槽10の両傾斜面に取り付けた上記転動部材40によって、被塗装面200より僅かに上方に位置するように支えられている。勿論、この吐出口11は、塗料30を被塗装面200上に効率よく吐出するために、当該塗装装置100の進行方向に対して直交する辺が十分長い長四角形状のものとして開口したものである。
【0078】
この吐出口11は開口したままであると、塗料槽10から自然流下してきた塗料30が不用意に吐出してしまうから、何らかの方法で開閉できるようにしておく必要がある。この第1実施例における吐出口11の開閉は、図2に示したように、吐出口11の近傍に設けたシャッター53によって行うようにしてある。
【0079】
シャッター53の開閉操作は、電気的アクチュエータ等の種々な手段によって行えるものであるが、本第1実施例に係る塗装装置100では、開閉機構50によって行うようにしている。この開閉機構50は、図2に示したように、当該塗装装置100に対して上下動可能に配置したハンドル51と、このハンドル51の上下動によって前後方向に進退する作動バー52と、この作動バー52に連結されて吐出口11の開閉を行うシャッター53と、作動バー52を原位置に復帰させる復帰スプリング54とを備えたものである。
【0080】
この開閉機構50は、ハンドル51を押し下げたとき、シャッター53が各吐出口11を開くようにしたものであるが、この開閉機構50を構成しているハンドル51は、その下部がクランク状に曲げたものであり、図2及び図4に示したように、当該ハンドル51の上下方向線に対して下部だけが前方(図2及び図4では図示左方)にズレたものとしてある。図2及び図4では、この前方にズレた下部に作動バー52が係合している状態であるから、作動バー52は前進端に位置しているものであり、ハンドル51は上昇端に位置しているものである。このとき、復帰スプリング54はシャッター53が閉じる方向に作動バー52を付勢している。換言すれば、作動バー52の原位置は、シャッター53が吐出口11を閉じているときの位置であり、復帰スプリング54はシャッター53が閉じられる方向に作動バー52を付勢しているものである。
【0081】
この開閉機構50を使用してシャッター53を後退させて各吐出口11を開放するには、図2及び図4に示したハンドル51を図示状態から押し下げる。そうすると、ハンドル51の上部が下動してくるから、それに伴って作動バー52を後方、つまり図示右方に、復帰スプリング54の付勢力に抗して引くことになる。作動バー52にはシャッター53が連結してあるから、このシャッター53も後方、つまり図示右方に引かれて、吐出口11を開放することになり、塗装作業を開始できる状態となる。
【0082】
次に、吐出口11を閉じる場合には、開閉機構50のハンドル51を上動する。つまり、ハンドル51を引き上げると、ハンドル51の下部が図2及び図4に示した位置に上動してきて、作動バー52が復帰スプリング54の付勢力によって前方向(当該塗装装置100が進む方向)に動き、この作動バー52に連結されているシャッター53が吐出口11を閉鎖するのである。このときの状態が、例えば図2に示した状態であり、復帰スプリング54が作動バー52及びシャッター53を図示状態に押していることになる。
【0083】
以上のように構成した開閉機構50によって、この第1実施例に係る塗装装置100では、図1に示したように、その下部に設けた吐出口11が開閉されるのであり、吐出口11の開放時には、塗料槽10から送られてきた塗料30を、自然落下を利用して被塗装面200に向けて吐出するものである。換言すれば、この塗装装置100は、塗料30として高粘性のものが採用されたとしても、この塗料30を自然落下によって、吐出口11から被塗装面200に向けて吐出するものであり、駆動源や清掃の必要なポンプやノズルを必要としていないものである。
【0084】
そして、この第1実施例に係る塗装装置100は、図2等に示したように、均し板20を備えたものであり、この均し板20は、吐出口11が開放されて当該塗装装置100が移動されたとき、吐出口11から被塗装面200上に吐出された塗料30の均しを従動的に行うものである。この第1実施例に係る均し板20は、図2に示したように、バネ板22を介して塗料槽10に取り付けたものであり、このバネ板22の弾性力によって、対向する被塗装面200に対して弾発的に支持されている。
【0085】
一般的には、高粘性の塗料30を使用し、かつこの塗料30の自然落下を使用した場合、この塗料30が塗布されたままの被塗装面200には当然のことながら塗料30による凹凸ができる。しかしながら、この第1実施例に係る塗装装置100は勿論、後述する各実施例に係る塗装装置100は、均し板20を有しているのであるから、この塗料30の凹凸は、当該塗装装置100の移動に伴って均し板20によって自然に解消される。つまり、自然流下によって吐出口11から吐出された塗料30の表面の凹凸は、均し板20によって均されて、刷毛塗りしたような平らな塗装面となるのである。
【0086】
また、この第1実施例に係る塗装装置100においては、図2にも示したように、各均し板20に、被塗装面200上に吐出された塗料30の厚さを規定する突起21が設けてある。
【0087】
前述した均し板20は、対応する吐出口11から自然落下によって吐出されてきた塗料30の均しを行うものであったが、この均し厚さを常に均等にしたり変更したい場合があるが、そのような機能を発揮するようにしたのが各均し板20に設けた突起21である。突起21としては、各均し板20に形成されて被塗装面200に向かう単なる凸状物であってもよいが、均し板20からの突出量調整可能な「ピン」や、「ネジ」であってもよい。
【0088】
この突起21は、当該塗装装置100の使用時に、その先端が均し板20から突出して被塗装面200や水平面210あるいは傾斜面220に当接することによって、これらの被塗装面200や水平面210あるいは水平面210と、各均し板20との間の隙間量を規定する。つまり、この突起21は、被塗装面200等の上に吐出された塗料30の厚さを規定するのであり、当該塗装装置100による塗装作業中において、塗料30の厚さを一定にするのである。
【0089】
また、この突起21が形成されるべき均し板20は、後述する実施形態の場合、バネ板22によって塗料槽10に取り付けられるものであるが、当該塗装装置100を被塗装面200に対して設置した場合、これらの均し板20が被塗装面200に対して常に正しい位置に設置されるとは限らない。特に、吐出口11が複数あることに伴って均し板20も複数になる場合、各均し板20の被塗装面200に対する位置は、必ずしも同一になる訳ではないし、塗装作業中に塗装装置100自体が揺れることもある。そのような場合に、各突起21によって、均し板20と被塗装面200との間の寸法が一定に保たれ、あるいは調整できることは、塗料30の層厚さを一定にする上で重要である。
【0090】
そして、この第1実施例に係る塗装装置100では、図1中の仮想線に示したように、塗料槽10の上にタンク60を設置することがある。タンク60は、塗料槽10の容量を増大させたい場合に使用されるものであり、例えば、塗料槽10側の上蓋を外して、この上蓋に代えて塗料槽10上に設置できるようにしたものである。
【0091】
本発明に係る塗装装置100は、作業者が一人であっても、例えば折板屋根の水平面210や傾斜面220の塗装が行えるようにすることを基本思想とするものであり、塗料30の収納箇所を塗料槽10とタンク60とに分けたのは、折板屋根のような高所作業となる塗装作業を、できるだけ安全かつ一人作業でも十分行えるようにするためである。
【0092】
このタンク60が使用されるのは、折板屋根等の被塗装面200が比較的緩やかな傾斜の場合が多い。当該塗装装置100に対する塗料30の追加は、当該塗装装置100が一人作業でもできる形態としてあることから頻繁に行わなければならないが、当該塗装装置100がタンク60を備えていれば、その回数を減らすことができるからである。
【0093】
これに対して、折板屋根等の被塗装面200の傾斜が急であると、タンク60への塗料30の追加は危険を伴うから、その場合には、当該タンク60を外して塗料槽10だけで塗料30の収納を行えばよい。この第1実施例に係る塗装装置100は、その意味で、現場の様子を考慮して、タンク60を使用するか塗料槽10だけで行くかの選択が行えるのであり、現場状況に応じた作業が行えるようにしてあるのである。
【0094】
(第2実施例)
図3及び図4には、第2実施例に係る塗装装置100が示して在るが、この第2実施例に係る塗装装置100は、図7に示したような、折板屋根を構成している水平面210及び傾斜面220の塗装が行えるようにしたものである。なお、この第2実施例に係る塗装装置100は、上述した第1実施例に係る塗装装置100の構成の一部を備えているものであるため、その共通する構成については、図3及び図4中に第1実施例で使用したのと同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0095】
この第2実施例に係る塗装装置100は、塗装の対象である被塗装面200を、少なくとも傾斜面220を有する折板屋根の上面とするものであって、吐出口11を、図3にも示したように、互いに上端で連続する2つの傾斜面220上に開口する2つと、折板屋根の水平面210上に開口する1つとの、合計3つとしたものである。勿論、各吐出口11の近傍には、図4に示したように、それぞれ対応する均し板20が形成してある。
【0096】
また、この実施例に係る塗装装置100では、上記3つの吐出口11を1つの水平面210及び2つの傾斜面220に対向させるために、各転動部材40を塗料槽10の両側面上部に取り付け、当該塗料槽10の下部が2つの傾斜面220の間に落とし込めるようにしてある。換言すれば、この第2実施例で採用している転動部材40の転動面は、図3に示したように、2つの傾斜面220の上端連結部が嵌り込むことができるような凹面となっているものである。
【0097】
(第3実施例)
図5には、第3実施例に係る塗装装置100が示してあるが、この第3実施例の塗装装置100は、上述してきた各実施例の塗装装置100を2台連結したものであり、折板屋根の2つの傾斜面220とその間の水平面210からなる組の2組の部分を同時に塗装できるようにしたものである。
【0098】
また、この図5に示した第3実施例に係る塗装装置100では、その各塗料槽10内の分散板13の直下に整流筒15が配置してあり、これらの整流筒15によって、分散板13によって外側に流下してきた塗料30を、当該塗料槽10内の中央下に流下させるようにしたものである。
【0099】
2つの塗装装置100の連結は、各塗料槽10の側面に設けた連結アーム14a及び係合部14bによって行う。これらの連結アーム14a及び係合部14bは、図5に示したように、例えば連結アーム14aは係合部14bに上から係合することのできる爪状のものであり、係合部14bは、この連結アーム14aを受け止めて固定することのできるバー状のものである。これらの連結アーム14a及び係合部14bを各塗装装置100がそれぞれ有していれば、1つの塗装装置100に対して他の塗装装置100を上から乗せるようにして隣接させれば、図5に示したような連結状態が簡単に形成できるのである。
【0100】
また、この第3実施例に係る塗装装置100は、それぞれがタンク60を有したものであり、これらの各タンク60内には、図5に示したように、当該タンク60内の圧力が外気圧と同じになるようにする圧力調整器61が設けてある。
【0101】
各タンク60内の塗料30が消費されていけば、当該タンク60内の圧力はそのままでは下がっていき、塗料30の自然落下による吐出口11からの吐出に支障を来たすことがある。特に、塗料30が高粘性のものであれば、自然流下に時間が掛かるから、吐出口11からの吐出支障(吐出しにくいこと)は塗装作業に大きく悪影響を与える。
【0102】
その点、この第3実施例に係る塗装装置100では、タンク60に圧力調整器61を設けておいて、この圧力調整器61によって、当該タンク60内の圧力が外気圧と同じになるようにして、当該タンク60内の圧力が外気圧と常に同じになるようにしてある。つまり、この第3実施例の塗装装置100は、吐出口11からの吐出支障も、塗装作業への悪影響もないものとなっている。
【0103】
さらに、この第3実施例に係る2連の塗装装置100は、図5に示したように、その塗料槽10やタンク60内に分散板13が設けてある。この分散板13は、図5中の矢印線にて示したように、塗料槽10やタンク60内に流下してきた塗料30を、その流下方向とは異なる方向に分散させるものであり、各吐出口11からの塗料30の吐出を均等にするものである。
【0104】
そして、この第3実施例に係る2連の塗装装置100では、図5に示したように、塗料槽10内に整流部材80がもうけてある。この整流部材80は、折板屋根の水平面210に対向する吐出口11を上から覆うような箱形のものであり、下面は吐出口11に向けて開放され、上面は完全に閉じられている。また、この整流部材80の側面には、複数の開口81が形成してあって、この開口81から塗料30が自然落下により当該整流部材80内に流れ込んで、水平面210に対向している吐出口11から吐出されるのである。
【0105】
つまり、この第3実施例に係る塗装装置100の整流部材80は、上記分散板13と同様に、主として塗料槽10内での塗料30の分散を行うものであり、水平面210に向かい整流部材80の内側になっている吐出口11、及びこの整流部材80の外側になっている各吐出口11からの塗料30の吐出を、全て均等にするものである。
【0106】
(第4実施例)
図6には、本発明の第4実施例に係る塗装装置100が示してあるが、この塗装装置100では、折板屋根の水平面210部分に対向する吐出口11を備えていないものとしたものである。換言すれば、この塗装装置100の正面からみた下部の様子が、図6に示したように、「逆三角形」となっているものであり、この逆三角形部分が、図7の(b)に示した折板屋根のように、2つの傾斜面220が交互に連続する部分の「谷部分」に挿入できるようにしたものである。その他の構成は、上述した各実施例に係る塗装装置100と同じである。
【0107】
(第5実施例)
図8には、本発明の第5実施例に係る塗装装置100が示してあるが、この塗装装置100は、当該塗装装置100の一部に一端が連結された索条71の巻き取りまたは巻き戻しを行うウインチ70を備えたこと以外は、上述してきた各実施例の塗装装置100と同じである。
【0108】
ウインチ70は、索条71の巻取り及び巻戻しが行えるのであれば、手動に限らず電動のもの、エンジン駆動されるもの等、どのようなタイプのものであってもよい。このウインチ70は、図8に示したように、通常折板屋根の上側部分に設置され、索条71の巻き取りによって塗装装置100を上側に引き上げながら上り塗装を行い、場所を変えて索条71の巻戻しを行うことによって、塗装装置100の下り塗装を行うのである。
【0109】
このようなウインチ70を有する場合、転動部材40とは別の位置、例えば図8中の点線にて示したように、塗装装置100の背面に、この転動部材40とは異なる補助輪を設けるようにしてもよい。このような補助輪は、ウインチ70からの力が当該塗装装置100に懸かった場合の安定を確保するものであり、各輪転動部材40だけでは得られない当該塗装装置100の移動の補助を行う。
【符号の説明】
【0110】
100 塗装装置
10 塗料槽
11 吐出口
13 分散板
14a 連結アーム
14b 係合部
15 整流筒
20 均し板
21 突起
22 バネ板
30 塗料
40 転動部材
41 転動溝
50 開閉機構
51 ハンドル
52 作動バー
53 シャッター
54 復帰スプリング
60 タンク
61 圧力調整器
70 ウインチ
71 索条
80 整流部材
81 開口
200 (折板屋根を含む)被塗装面
210 (折板屋根の)水平面
220 (折板屋根の)傾斜面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11