(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
  ところで、このような電動回転工具にあっては、工具保持部に保持される先端工具の突き出し長さを設定するシューが設けられている。このシューは、ハウジングに対して相対変位可能に取り付けられている。また、このような電動回転工具にあっては、駆動モータの電力源となる充電式のバッテリが装着される。このため、この電動回転工具には、バッテリを装着するためのバッテリ装着部が設けられている。
【0005】
  しかしながら、上記した電動回転工具に対してシューやバッテリが簡単に取り付けられるようにすると、電動回転工具を無駄に嵩張るものとしてしまうことがある。このため、このようなシューやバッテリを取り付ける位置等ついて、電動回転工具としての取回しを損なうことなく、設定することが要されている。
【0006】
  本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、本発明が解決しようとする課題は、取り付けられた先端工具をモータにより回転させて該先端工具にて被加工材を加工する電動回転工具において、使用者の取回しを鑑みてシューやバッテリの配置位置を設定して、電動回転工具としての取回しを良好にすることにある。
 
【課題を解決するための手段】
【0007】
  上記した課題を解決するにあたって、本発明に係る電動回転工具は次の手段をとる。
  本発明の第1の発明に係る電動回転工具は、第1の方向に延びる筒状のハウジングと、前記ハウジングの内部に収容されるモータと、前記モータの回転駆動を受けて回転するように構成され、且つ先端工具を保持可能に前記ハウジングの一端側から外部へ突き出される工具保持部と、前記ハウジングにて支持され、且つ前記工具保持部にて保持される先端工具の突き出し長さを設定するシューと、を有する電動回転工具であって、前記ハウジングの他端には、バッテリを装着するバッテリ装着部が設けられており、前記バッテリ装着部に対してのバッテリの装着は、前記第1の方向と交わる方向に延びる第2の方向に沿ってスライドさせることによる、ことを特徴とする。なお、上記した第1の方向は、モータの回転軸に沿った方向として設定できる。
  この第1の発明に係る電動回転工具によれば、バッテリ装着部に対してのバッテリの装着は、第1の方向と交わる方向に延びる第2の方向に沿ってスライドさせることによるので、電動回転工具として延びる方向(第1の方向)とは交差する方向(第2の方向)でスライドさせることによりバッテリを装着させることができる。これによって、電動回転工具の延びる方向を水平方向に倣わせて配置している場合では、この水平方向と交差する方向でバッテリをスライドさせることにより、このバッテリを装着することができることとなる。したがって、この電動回転工具によれば、バッテリの装着を容易に行えるようにして、電動回転工具としての取回しを良好にすることができる。
【0008】
  また、第2の発明に係る電動回転工具は、前記第1の発明に係る電動回転工具において、前記シューは、前記第1の方向に沿って移動させることにより前記ハウジングに対する相対位置を変位可能にされている、ことを特徴とする。この第2の発明に係る電動回転工具によれば、シューは、第1の方向に沿って移動させることによりハウジングに対する相対位置を変位可能にされているので、シューの配設構造をハウジングが延びる方向に一致させることができる。これによって、電動回転工具としての太さ構造のスリム化を図ることができ、使用者にとっての取回しを向上させる。
  また、第3の発明に係る電動回転工具は、前記第1または前記第2の発明に係る電動回転工具において、前記ハウジングは、前記ハウジングに対しての前記工具保持部の相対回転を規制するロック部と、前記ハウジングに対しての前記シューの相対位置を固定させるシュー固定部と、を有し、前記ロック部と前記シュー固定部とは、前記第1の方向に沿って延びる前記ハウジングの中心軸線に対して互いに対称方向となる配置位置で配設されている、ことを特徴とする。この第3の発明に係る電動回転工具によれば、ロック部とシュー固定部とは、第1の方向に沿って延びるハウジングの中心軸線に対して互いに対称方向となる配置位置で配設されているので、第1の方向への無駄な嵩張りを抑えることができる。これによって、電動回転工具としての長さ構造のスリム化を図ることができ、使用者にとっての取回しを向上させる。
  また、第4の発明に係る電動回転工具は、前記第3の発明に係る電動回転工具において、前記ロック部と前記シュー固定部との配置方向は、前記第1の方向および前記第2の方向の双方に交わる方向に延びる第3の方向に設定されている、ことを特徴とする。この第4の発明に係る電動回転工具によれば、ロック部とシュー固定部との配置方向は、第1の方向および第2の方向の双方に交わる方向に延びる第3の方向に設定されているので、このロック部とシュー固定部とを、3次元方向で効率良く配置することができて、電動回転工具としての無駄な嵩張りを省いて、使用者にとっての取回しを向上させる。
【0009】
  また、第5の発明に係る電動回転工具は、第1の方向に延びる筒状のハウジングと、前記ハウジングの内部に収容されるモータと、前記モータの回転駆動を受けて回転するように構成され、且つ先端工具を保持可能に前記ハウジングの一端側から外部へ突き出される工具保持部と、前記ハウジングにて支持され、且つ前記工具保持部にて保持される先端工具の突き出し長さを設定するシューと、を有する電動回転工具であって、前記シューは、前記第1の方向に沿って移動させることにより前記ハウジングに対する相対位置を変位可能にされており、前記シューの前記ハウジングに対しての位置を固定するシュー固定手段は、ワンタッチで前記ハウジングに対して固定可能に構成されている、ことを特徴とする。
  この第5の発明に係る電動回転工具によれば、シューは、ハウジングに対する相対位置を変位可能にされており、シュー固定手段は、ワンタッチ(1操作)でハウジングに対して固定可能に構成されているので、シューの位置を決めてから固定するにあたって、ワンタッチ(1操作)で行えることとなる。これによって、シューの位置固定を簡単に行えて、使用者にとっての取回しを向上させる。
【0010】
  また、第6の発明に係る電動回転工具は、第1の方向に延びる筒状のハウジングと、前記ハウジングの内部に収容されるモータと、前記モータの回転駆動を受けて回転するように構成され、且つ先端工具を保持可能に前記ハウジングの一端側から外部へ突き出される工具保持部と、前記ハウジングにて支持され、且つ前記工具保持部にて保持される先端工具の突き出し長さを設定するシューと、を有する電動回転工具であって、前記ハウジングは、前記ハウジングに対しての前記工具保持部の相対回転を規制するロック部と、前記ハウジングに対しての前記シューの相対位置を固定させるシュー固定部と、を有し、前記ロック部と前記シュー固定部とは、前記第1の方向に沿って延びる前記ハウジングの中心軸線に対して互いに対称方向となる配置位置で配設されており、前記モータの回転駆動に関する操作入力部は、前記ロック部と前記シュー固定部との配置方向と交わる方向で、前記ハウジングに配設されている、ことを特徴とする。
  この第6の発明に係る電動回転工具によれば、ロック部とシュー固定部とは、第1の方向に沿って延びるハウジングの中心軸線に対して互いに対称方向となる配置位置で配設されているので、第1の方向への無駄な嵩張りを抑えることができる。これによって、長さ構造のスリム化を図ることができ、使用者にとっての取回しを向上させる。ここで、モータの回転駆動に関する操作入力部は、ロック部とシュー固定部との配置方向と交わる方向で、ハウジングに配設されているので、この操作入力部を、ロック部とシュー固定部との配設スペースを邪魔することなく、効率良く設定することができる。したがって、取回しを鑑みて効率良く構成することができる。
 
【発明の効果】
【0011】
  第1の発明に係る電動回転工具によれば、バッテリの装着を容易に行えるようにして、電動回転工具としての取回しを良好にすることができる。
  第2の発明に係る電動回転工具によれば、太さ構造のスリム化を図ることができ、使用者にとっての取回しを向上させる。
  第3の発明に係る電動回転工具によれば、長さ構造のスリム化を図ることができ、使用者にとっての取回しを向上させる。
  第4の発明に係る電動回転工具によれば、無駄な嵩張りを省いて、使用者にとっての取回しを向上させる。
  第5の発明に係る電動回転工具によれば、シューの位置固定を簡単に行えて、使用者にとっての取回しを向上させる。
  第6の発明に係る電動回転工具によれば、取回しを鑑みて効率良く構成することができる。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施の形態]
  以下、本発明に係る電動回転工具を実施するための形態として3つの実施の形態について説明する。なお、以下に説明する電動回転工具は、石膏ボードの切り抜き作業等の加工作業に使用される、いわゆるカットアウトツールと称される電動回転工具である。
  先ず、本発明に係る電動回転工具を実施するための第1の実施の形態の電動回転工具10について、
図1〜
図7を参照しながら説明する。
図1は、電動回転工具10の外観側面図である。
図2は、
図1の電動回転工具10の内部を上下半割り形断面にて示す内部断面図である。
図3は、
図1の電動回転工具10の内部を左右半割り形断面にて示す内部断面図である。
図4は、電動回転工具10の前側の部分を拡大して示す拡大斜視図である。なお、以下に説明する電動回転工具10は、説明をする上で分かり易くするために、図示記載の通りで電動回転工具10の上下前後左右を規定している。また、
図1では、電動回転工具10のうち充電式バッテリ15が取り外された工具本体11のみが図示されている。また、この電動回転工具10は、手で握って使用する、いわゆる手持ち式の回転電動回転工具となっている。
 
【0014】
  すなわち、
図1〜
図4に示す電動回転工具10は、概略、工具本体11と、充電式バッテリ15と、シュー17とを備える。この工具本体11は、筒状のハウジングを具備して構成される。このハウジングは、駆動部20のハウジングをなすモータハウジング21と、出力部30のハウジングをなす前側ハウジング31と、により構成される。これらモータハウジング21と前側ハウジング31とは、第1の方向となる前後方向に延びる筒状をなしている。なお、モータハウジング21の内部には、ブラシモータ25が収容されている。なお、この電動回転工具10に関しての前後方向が、本発明に係る第1の方向に相当する。また、この電動回転工具10に関しての上下方向が、本発明に係る第2の方向に相当する。この電動回転工具10に関しての左右方向が、本発明に係る第3の方向に相当する。このため、第1の方向は、モータハウジング21の筒状が延びる方向となる。また、第2の方向は、第1の方向と交わる方向に延びている。また、第2の方向は、第1の方向と交わる方向に延びている。また、第3の方向は、第1の方向および第2の方向の双方に交わる方向に延びている。
  充電式バッテリ15は、この電動回転工具10の電源として工具本体11に装着される。充電式バッテリ15は、使用により放電した後には、不図示の専用充電器により充電される。工具本体11の他端側となる最後部には、バッテリ装着部13が設けられている。充電式バッテリ15は、このバッテリ装着部13に対して、上から下にスライドさせるようにして装着される。すなわち、バッテリ装着部13に対しての充電式バッテリ15の装着は、前後方向(第1の方向)と交わる方向に延びる上下方向(第2の方向)に沿ってスライドさせることによるものとなっている。
 
【0015】
  シュー17は、出力スピンドル35の先端の先に配設される。このシュー17は、工具本体11に対しての相対位置を決めることによりシュー17に対してのビットBの加工突出量を設定する。つまり、このシュー17は、ビット取付機構41にて保持されるビットBの突き出し長さを設定する。このビットBの突き出し長さは、ビットBの加工可能範囲に関連付けられる長さである。このため、シュー17は、工具本体11の最前部に配設されており、前側ハウジング31にて支持されている。
  シュー17は、加工材と対面するシュー本体171と、ツマミ螺子18により工具本体11に取り付けられる取付部172とを備える。なお、このシュー17のシュー本体171が、本発明に係る調節ベースとして機能する。シュー本体171と取付部172とは、互いに交差する方向に延在される。取付部172には、前後方向に延びる長孔173が設けられている。この取付部172は、前側ハウジング31に固定されるガイド部材174によりスライドがガイドされる。具体的には、前側ハウジング31には、螺子固定されるガイド部材174が設けられており、このガイド部材174には、取付部172の前後方向のスライドをガイドするガイドリブ175が設けられている。このようにシュー17は、前後方向に沿って移動させることにより前側ハウジング31に対する相対位置を変位可能にされている。
  このシュー17は、工具本体11に対して前後方向でスライドさせ、適宜に決められた位置にてツマミ螺子18により固定される。具体的には、ツマミ螺子18を締付け方向で螺子回しすると、上記したシュー17の取付部172をガイド部材174に押し付けるように作用する。そうすると、シュー17の取付部172は、ガイド部材174と一体化されるようにツマミ螺子18により押し付けられて固定される。このようにして、シュー17は、工具本体11に対して固定されることとなる。このように、ツマミ螺子18は、本発明に係るシュー固定部に相当し、モータハウジング21を含む工具本体11に対する相対位置が決められたシュー17を固定する機能を有する。
  また、後に説明するビット取付機構41にて取り付けられるビットBは、この配置調整されたシュー17から前側に突き出すこととなる。このビットBの突き出す長さは、シュー17の配置位置により決められる。なお、このビットBは、本発明に係る加工用の先端工具に相当する。また、充電式バッテリ15の装着方向(上下方向)と、シュー17の配置調整方向(前後方向)とは互いに直交交差する関係となっている。
 
【0016】
  次に、工具本体11について説明する。工具本体11は、主として駆動力を発生する駆動部20と、出力スピンドル35の回転を支持する出力部30とに、大まかに分けられる。駆動部20は、工具本体11の後部と中間部とに亘って構成され、主として電力を回転駆動力に変換する。駆動部20は、概略、外装をなすモータハウジング21の中に、各種の内装部材が装備されて構成される。モータハウジング21は、
図2に示すように、左右方向に半割りに成形される。モータハウジング21の最後部には、上記したバッテリ装着部13が設けられる。モータハウジング21には、後ろから前へ順に、コントローラ22、スイッチ23、ブラシモータ25、ファン29が、内装される。コントローラ22は、適宜の条件に応じて充電式バッテリ15からの電力供給等を制御する。スイッチ23は、外部に露出されるスライドスイッチ231の前後方向のスライド操作により操作入力される。具体的には、スライドスイッチ231は前後方向に長く形成されている。使用者がスライドスイッチ231を前方に移動させることにより、スライドスイッチ231の後端部の前面でスイッチ23の操作部の後端を操作することにより、スイッチをオンに入力することができる。このスライドスイッチ231は、ブラシモータ25の回転駆動に関する操作の入力を行う、本発明に係る操作入力部に相当する。このスライドスイッチ231は、モータハウジング21の上側に配設されている。このため、このスライドスイッチ231は、上下方向に延びる方向の上側に関するモータハウジング21に対して設けられている。なお、このモータハウジング21に対する上下方向は、左右方向と交わる方向である。
  ブラシモータ25は、広く利用されるブラシモータと同様に構成され、本発明に係るモータに相当する。ブラシモータ25は、回転駆動するモータ軸26を具備する。このモータ軸26は、後側のベアリング27と前側のベアリング28とにより、回転駆動が支持されている。このモータ軸26は、基端側からブラシモータ25の回転駆動力を受け、先端側にビットBを保持する出力スピンドル35が設けられている。なお、後側のベアリング27は、モータハウジング21により支持されており、前側のベアリング28は、前側ハウジング31により支持されている。
  ファン29は、モータ軸26に取り付けられている。このファン29は、遠心式ファンである。このファン29の回転により、モータハウジング21の内部には、後から前に向けて風が流れる。なお、ファン29による風は、主として、コントローラ22、スイッチ23、ブラシモータ25を、順に冷却させるモータ冷却風として機能する。このため、モータハウジング21の内部に導入される風は、モータハウジング21の後部に設けられる吸気口211から吸引され、コントローラ22、スイッチ23、ブラシモータ25を、順に冷却し、その後にファン29を通じて前側ハウジング31の内部に入り込む。このように前側ハウジング31の内部に入り込んだ風は、後に説明する電動回転工具10の前面に設けられる吹出し口36から吹き出されて外部に排気される。なお、送風路は、このファン29により吸気口211から工具本体11内部に吸気され、吹出し口36から工具本体11外部に排気される流路を形成する。なお、このモータ冷却風は本発明に係る排気風に相当し、この送風路は本発明に係る第1の送風路に相当する。なお、この吹出し口36も、前側ハウジング31の前面に設けられる本発明に係る排気口に含まれる。
 
【0017】
  次に、上記した駆動部20の前側に配置される出力部30について説明する。なお、
図5は、
図2における出力部30に関して拡大して示す内部断面図である。
図6は、
図5の操作機構60を操作した場合の内部断面図である。
  
図5および
図6に示すように、出力部30は、工具本体11の前側部として構成される。この出力部30は、電動回転工具10のうち、主としてビットBを把持して回転駆動させる部分である。この出力部30は、概略、前側ハウジング31と、出力スピンドル35、ビット取付機構41とを備える。出力部30の外装をなす前側ハウジング31は、
図4に示すように、4本の螺子部材19を介してモータハウジング21の前端に螺子止めされて、該モータハウジング21にて固定されている。この前側ハウジング31は、半割りに成形されるモータハウジング21と異なり、一体で形成される金属の成形品である。この前側ハウジング31は、後部および前部に開口された形状が設けられている。このため、
図5等に示すように、前側ハウジング31の内部には、後側からモータ軸26を入り込ませることができ、前側から出力スピンドル35を突き出させることができる。なお、この前側ハウジング31は、本発明に係る支持ハウジングに相当する。
  
図4等に示すように、前側ハウジング31の前面部分には、モータ冷却風を外部に吹き出させる吹出し口36が設けられる。この吹出し口36は、前側ハウジング31の前面に周方向に沿って等間隔で4つ設けられている。この吹出し口36は、吹き出すモータ冷却風がシュー17のシュー本体171に向くように、電動回転工具10の前面に設けられている。つまり、吹出し口36から吹き出すモータ冷却風は、ビットBにより加工される加工材に向けられて当てられる。
 
【0018】
  図5等に示すように、前側ハウジング31の右側面には、上記したシュー17の取付部172がツマミ螺子18を介して取り付けられている。また、
図3に示すように、この前側ハウジング31の左側面には、シャフトロック機構37が設けられている。つまり、取付部172を取り付けるツマミ螺子18の配設部位と、シャフトロック機構37の配設部位とは、前後方向(第1の方向)に沿って延びる前側ハウジング31の中心軸線に対して互いに対称方向となるように配置位置にて配設されている。言い換えれば、ツマミ螺子18の配設部位とシャフトロック機構37の配設部位とがなす配置方向は、前後方向および上下方向の双方に交わる左右方向に設定されている。このシャフトロック機構37は、ビットBを後に説明するビット取付機構41に取り付けるにあたって、出力スピンドル35の回転方向への動きを止めるように出力スピンドル35を固定する。つまり、このシャフトロック機構37は、本発明に係るロック部に相当し、前側ハウジング31に対してのビット取付機構41の相対回転を規制する機能を有する。このため、このシャフトロック機構37は、出力スピンドル35の4つ穴のうちの1つに挿入可能なピンを径方向に移動可能な操作体38と、常態時では押圧を解除する付勢ばね39とを備える。なお、操作体38は、シャフトを押圧する操作体本体381と、外装をなす押圧カバー382とを備える。
  ところで、
図5等に示すように、前側ハウジング31の内部には、モータハウジング21から前側に突き出されるモータ軸26の先端261が入り込んでいる。このモータ軸26の先端261は、出力スピンドル35の後端に設けられる後端嵌合孔351に圧入されている。このため、出力スピンドル35は、圧入されるモータ軸26と一体回転する。なお、この出力スピンドル35は、本発明に係る出力軸に相当する。この出力スピンドル35の先端に設けられる先端嵌合孔352には、後に説明する先端差込部材45が圧入されている。ここで、先端差込部材45が圧入される出力スピンドル35の外周面には、雄螺子形状に切られる雄螺子部353が設けられている。この雄螺子部353は、後に説明するナット部材51の雌螺子部513と螺合する。このようにモータ軸26と先端差込部材45とが一体にされる出力スピンドル35は、ベアリング28により回転駆動が支持されている。このベアリング28は、前側ハウジング31にて固定保持されている。
 
【0019】
  次に、上記した出力スピンドル35に対して設けられるビット取付機構41について説明する。なお、ビット取付機構41は、本発明に係る工具保持部(取付機構)に相当する。また、このビット取付機構41は、本発明に係る固定部材に相当する。このビット取付機構41は、回転駆動する出力スピンドル35にビットBを取り付ける。このビット取付機構41は、概略、先端差込部材45と、ナット部材51とを備える。なお、先端差込部材45は、本発明に係る差込部材に相当する。また、このナット部材51は、本発明に係る締結部材に相当する。
  すなわち、ビット取付機構41は、ブラシモータ25の回転駆動を受けて回転するように構成される。また、ビット取付機構41は、ビットBを保持可能に前側ハウジング31の前端側から外部へ突き出されるようにして配設されている。なお、電動回転工具10に関しての前端側が本発明に係る一端側に相当し、これとは反対側となる後端側が本発明に係る他端側に相当する。
  
図7(a)は、先端差込部材45についての斜視図である。
図7(b)は、(a)に図示される先端差込部材45についての(b)−(b)断面図である。
図8(a)は、ナット部材51についての斜視図である。
図8(b)は、(a)に図示されるナット部材51についての(b)−(b)断面図である。
  
図7の(a)および(b)にも示すように、出力スピンドル35の先端嵌合孔352に圧入される先端差込部材45は、出力スピンドル35の回転軸線40(
図1等参照)上でビットBが配置されるように、ビットBを差込み可能とする嵌挿孔として設定される。具体的には、この先端差込部材45は、前端に開口部46が設けられて内部に通じる孔形状を有する。この孔形状をなす先端差込部材45の内周径は、この先端差込部材45に差し込まれたビットBを把持するように縮小可能に形成される。具体的には、この先端差込部材45は、回転軸線40方向に延びるスリット451が等間隔で4つ設けられている。この等間隔で設けられた4つのスリット451により、先端差込部材45は、内外方向に揺動可能な4つに分離された爪形状を有して形成される。また、この先端差込部材45の外周面の前端近傍には、テーパ形状をなすテーパ部452が設けられている。
 
【0020】
  図5等に示すように、ナット部材51は、上記した先端差込部材45の外周に配置される。このナット部材51の前端には、ビットBを挿し込む開口部52が設けられている。
図8の(a)および(b)にも示すナット部材51の内周面には、雌螺子形状に切られる雌螺子部513が設けられている。この雌螺子部513は、出力スピンドル35の外周面に設けられた雄螺子部353と螺合する。また、ナット部材51の内周面の前端近傍には、上記したテーパ部452と傾斜形状が一致する縮径部512が設けられている。この縮径部512は、雄螺子部353に対する雌螺子部513の螺合位置に応じて、上記した先端差込部材45のテーパ部452に対して当接状態となったり非当接状態となったりする。この縮径部512がテーパ部452に対して当接状態となっている場合に、出力スピンドル35に対してナット部材51を締結方向に更に螺子回しすると、この縮径部512は、先端差込部材45のテーパ部452を内側に押圧することとなる。そうすると、この先端差込部材45の先端の内径は縮小方向に作用することとなる。つまり、この先端差込部材45に開口部46に差し込まれたビットBを把持するように、この先端差込部材45の内周面はビットBの外周面を押圧することとなる。なお、この際、ナット部材51は、先端差込部材45に対して螺子締結される位置(ビット把持位置)に位置する。
  また、ナット部材51が、先端差込部材45に対して螺子外しされる位置(ビット外し位置)に位置している場合には、上記した先端差込部材45の内周径は通常どおりの内周径となる。このビット外し位置に位置するナット部材51は、ビット把持位置と比較して前側に配置されるものとなっている。この際、ナット部材51の縮径部512は、テーパ部452を内側に押圧せずに位置する。このため、先端差込部材45の内周面もビットBの外周面を押圧せず、先端差込部材45の内周側に差し込まれるビットBは先端差込部材45によって把持されることがなくなる。つまり、このビットBは、先端差込部材45から抜き差しできる状態となる。このようにして、縮径部512は、雄螺子部353に対する雌螺子部513の螺合位置に応じて、先端差込部材45の内径を縮小させるように先端差込部材45の外周面を内側に押圧したり押圧しなかったりすることができる。なお、ナット部材51の回転軸線は、上記した出力スピンドル35の回転軸線40と同一の回転軸線となっている。
 
【0021】
  図5等に示すように、ナット部材51は、上記した先端差込部材45の外周に配置される。このナット部材51の前端には、ビットBを挿し込む開口部52が設けられている。
図8の(a)および(b)にも示すナット部材51の内周面には、雌螺子形状に切られる雌螺子部513が設けられている。この雌螺子部513は、出力スピンドル35の外周面に設けられた雄螺子部353と螺合する。また、ナット部材51の内周面の前端近傍には、上記したテーパ部452と傾斜形状が一致する縮径部512が設けられている。この縮径部512は、雄螺子部353に対する雌螺子部513の螺合位置に応じて、上記した先端差込部材45のテーパ部452に対して当接状態となったり非当接状態となったりする。この縮径部512がテーパ部452に対して当接状態となっている場合に、出力スピンドル35に対してナット部材51を締結方向に更に螺子回しすると、この縮径部512は、先端差込部材45のテーパ部452を内側に押圧することとなる。そうすると、この先端差込部材45の先端の内径は縮小方向に作用することとなる。つまり、この先端差込部材45に開口部46に差し込まれたビットBを把持するように、この先端差込部材45の内周面はビットBの外周面を押圧することとなる。なお、この際、ナット部材51は、先端差込部材45に対して螺子締結される位置(ビット把持位置)に位置する。
  また、ナット部材51が、先端差込部材45に対して螺子外しされる位置(ビット外し位置)に位置している場合には、上記した先端差込部材45の内周径は通常どおりの内周径となる。このビット外し位置に位置するナット部材51は、ビット把持位置と比較して前側に配置されるものとなっている。この際、ナット部材51の縮径部512は、テーパ部452を内側に押圧せずに位置する。このため、先端差込部材45の内周面もビットBの外周面を押圧せず、先端差込部材45の内周側に差し込まれるビットBは先端差込部材45によって把持されることがなくなる。つまり、このビットBは、先端差込部材45から抜き差しできる状態となる。このようにして、縮径部512は、雄螺子部353に対する雌螺子部513の螺合位置に応じて、先端差込部材45の内径を縮小させるように先端差込部材45の外周面を内側に押圧したり押圧しなかったりすることができる。なお、ナット部材51の回転軸線は、上記した出力スピンドル35の回転軸線40と同一の回転軸線となっている。
 
【0022】
  次に、上記したビット取付機構41を操作可能とする、操作機構60について説明する。この操作機構60は、本発明に係る操作部に相当する。
図5および
図6に示すように、操作機構60は、前側ハウジング31に対して設けられている。この操作機構60は、概略、係合部材61と、ストッパ部材71と、付勢ばね75とを備える。係合部材61は、
図4に示すように、略円環状に形成される。係合部材61は、概略、ガイド部62と、結合部63と、係合部64とを備える。ガイド部62は、この係合部材61のスライドをガイドするように機能する。ガイド部62は、前側ハウジング31の前端から突き出されるガイド周縁32を外側および内側で挟み込むようにする二重構造にて形成される。このガイド周縁32は、略円環形状にて形成されている。これに応じてガイド部62も、略円環形状をなす外周環621と内周環622との二重構造をなしている。この外周環621と内周環622とは、前側の折返し部623により折り返されるように互いが結合されている。このガイド部62の内周環622の後端縁の近傍に結合部63が設けられている。この結合部63は、次に説明するストッパ部材71の結合部73が結合される。具体的には、この係合部材61に設けられる結合部63は、ストッパ部材71に設けられる雄形の結合部73と嵌合する雌形をなしている。また、内周環622の内周面は、係合部64として形成される。この係合部64は、上記したナット部材51の外周と係合可能に形成される。この係合部64が係合するナット部材51の外周との係合は、ナット部材51の回転軸線40(
図5等参照)に沿う螺子回しを可能とする。
  また、
図5に示すように、係合部材61の外周環621の後端624と、前側ハウジング31の前面311とは、付勢ばね75の付勢力により互いに接触されるようになっている。これにより、内装される付勢ばね75の配設範囲に、外部から粉塵が浸入してしまうのを抑制することができる。また、この係合部材61の内周環622の内周側には、径方向内側に延びる突起部625が設けられている。また、ストッパ部材71の結合部73の外周面と、内周環622の結合部63の内周面とを、互いに対面させている。ここで、突起部625は、これら対面する結合部63,73の内周面と外周面との前端側にて、これらの隙間を閉塞させるように配置されている。これにより、これら対面する結合部63,73の内周面と外周面と間には、粉塵が入り込み難いようになっている。
 
【0023】
  ストッパ部材71も、略円環状に形成される。このストッパ部材71は、概略、結合部73と、外フランジ部74とを備える。外フランジ部74は、前側ハウジング31の内周面に摺接可能な外フランジ形状にて形成されている。この外フランジ部74は、この前側ハウジング31の内周面に対しての摺接により、係合部材61を含むストッパ部材71の前後方向へのスライドを案内する案内部となっている。また、この外フランジ部74は、付勢ばね75を保持する構造も有して形成される。結合部73は、上記した係合部材61に設けられる結合部63に嵌合する雄形をなす。つまり、ストッパ部材71は、このストッパ部材71の結合部73を係合部材61の結合部63に嵌合させることにより係合部材61と結合する。このように、ストッパ部材71は、係合部材61と一体化されて係合部材61の一部として機能するようになっている。つまり、ストッパ部材71は、本発明に係る係合部材側を構成している。外フランジ部74は、結合部73の後側に配置され、外フランジ形状にて形成される。外フランジ部74には、付勢ばね75の他端となる付勢ばね75の後端が当接する。付勢ばね75は、コイルスプリングであり、本発明に係る弾性体に相当する。この付勢ばね75は、ビット取付機構41に対しての係合部材61の係合を外すように係合部材61を付勢する。この付勢ばね75は、上記した出力スピンドル35を保持する前側ハウジング31に保持されている。具体的には、付勢ばね75は、前側ハウジング31ガイド周縁32と、係合部材61の内周環622との間に配置されている。付勢ばね75は、一端となる前端が前側ハウジング31側となる内フランジ部33に当接している。この内フランジ部33は、ガイド周縁32から内周環622に向けて突き出されるようにして形成されている。なお、この内フランジ部33は、本発明に係る突出部に相当する。また、付勢ばね75は、他端となる後端が係合部材61側となる外フランジ部74に当接する。このようにして、付勢ばね75は、係合部材61側をなす係合部材61およびストッパ部材71の両者を、工具本体11後側に向けて付勢する。なお、この付勢ばね75の両端は、これらの両端が当接する内フランジ部33および外フランジ部74に対して、摺動可能に当接するようになっている。なお、この操作機構60の一部を構成する付勢ばね75の付勢方向は、シャフトロック機構37の一部を構成する付勢ばね39の付勢方向と直交する方向に設定されている。
 
【0024】
  ところで、係合部材61側をなす係合部材61およびストッパ部材71の両者の、付勢ばね75の付勢による工具本体11後側への移動は、係合部材61の折返し部623がガイド周縁32の前端に当接することにより止められている。つまり、
図5に示す係合部材61の止められる位置が、係合部材61の退避位置(P1)となっている。この退避位置(P1)の係合部材61は、ナット部材51の螺子回しが不可となるようにナット部材51の外周面に対して非係合となっている。これに対して、
図6に示すように、この係合部材61を前側に移動させていくと、ナット部材51の外周に対して、この係合部材61の係合部64が係合することとなる。なお、このナット部材51の外周面は、六角形の角柱形状をなしている。
  このように係合部64がナット部材51の外周に対して係合した際には、係合部材61は係合位置(P2)に位置することとなる。ここで係合位置(P2)は、退避位置(P1)と比較して、前側ハウジング31に対して相対的に離間移動させた位置となっている。この係合位置(P2)に位置する係合部材61は、ナット部材51に係合しているので、この係合部材61を回転軸線40に沿った回転させることにより、ナット部材51も一体で回転させることができる。つまり、この係合部材61を回転させることにより、先端差込部材45に対するナット部材51の相対的な螺子回しをすることが可能となる。ここで、係合部材61の退避位置(P1)と係合位置(P2)との関係は、ナット部材51の回転軸線40に沿う方向で、前後にずらされることにより設定されている。具体的には、係合部材61の係合位置(P2)は、係合部材61の退避位置(P1)に比して、回転軸線40に沿って前側に移動させた位置になっている。
 
【0025】
  次に、係合保持機構80について説明する。係合保持機構80は、ナット部材51の外周に係合部材61の係合部64が係合した際の係合部材61を、この係合位置(P2)において保持する機能を有する。なお、この係合保持機構80による、係合位置(P2)においての係合部材61の保持は、係合保持機構80が解除操作されるまで維持される。また、この係合位置(P2)に位置する係合部材61は、係合部64がナット部材51の外周に係合しているので、この係合部材61を回転軸線40に沿って回転させることにより、ナット部材51も一体で回転させることができる。
  すなわち、係合保持機構80は、本発明に係る係合保持部材に相当する。この係合保持機構80は、前側ハウジング31に対して設けられている。なお、
図9は、
図4に示す係合保持機構80を拡大して示す斜視図である。
図10は、
図5に示す係合保持機構80を拡大して示す断面図である。
図11は、
図6に示す係合保持機構80を拡大して示す断面図である。係合保持機構80は、係合部材61の外周環621に対して設けられている。この係合保持機構80は、概略、外周環621に対して設けられる軸支部81と、この軸支部81にて回転可能に軸支持される保持係合体83と、この保持係合体83を係合保持方向に回転付勢する付勢ばね87と、を備える。軸支部81は、
図9に示すように、外周環621の外周面に対して、外側に突き出されるように形成されている。軸支部81には、軸支ピン82が設けられている。軸支ピン82は、保持係合体83を回転可能に軸支持する。
 
【0026】
  保持係合体83は、
図10および
図11に示すように、操作壁部84と当接壁部85とにより、断面視く字状に折曲された形状を有して形成される。操作壁部84は、外周環621の外周面と同様に、使用者が押込み操作することができるように外部に面して形成される。この操作壁部84の前側には、付勢ばね87が当接されている。この付勢ばね87は、コイルばねであり、操作壁部84を外側に向けて付勢する。この付勢ばね87は、外周環621に設けられる保持凹部88により保持されている。また、操作壁部84の後部には、この外周環621の内周側に入り込む当接壁部85が設けられている。この当接壁部85は、外周環621の内周側に入り込むことができるように、操作壁部84に対して交差する方向に延在されている。当接壁部85は、
図10および
図11に示すように、外周環621の内周側に入ってガイド周縁32の当接端34に対して当接できるように内周側に張り出して形成されている。なお、外周環621には、この当接壁部85を外周環621の内周側に入り込ませる連通孔89が設けられている。この連通孔89は、内外を連通させる開口形状を外周環621に設けることにより形成される。この連通孔89から、当接壁部85は、外周環621の内周側に入り込んで、ガイド周縁32の当接端34に対して前後方向で当てることができるようになっている。つまり、保持係合体83は、付勢ばね87の回転付勢力を受けることによって軸支ピン82を回転軸として回転し、ガイド周縁32の当接端34に当接壁部85を当接させるようになっている。
  このようにして、係合部材61が退避位置(P1)に位置している場合には、保持係合体83の当接壁部85は、
図10に示すように、ガイド周縁32の当接端34に当接せずに、ガイド周縁32の外周側に配置される。この際、保持係合体83の操作壁部84は、
図10に示すように、外周環621の外周面に対して平行方向で延在するように配置されている。これに対して、係合部材61が係合位置(P2)に位置している場合には、保持係合体83の当接壁部85は、
図11に示すように、ガイド周縁32の当接端34に当接することとなる。このように、当接壁部85が当接端34に当接している場合には、この係合部材61が、付勢ばね75の付勢力により係合位置(P2)から退避位置(P1)に戻ってしまうのを規制することができる。つまり、係合部材61を係合位置(P2)に配置させたままとすることができる。この際、保持係合体83の操作壁部84は、外周環621の外周面に対して、交差斜め方向で延在するように配置されている。
 
【0027】
  つまり、使用者は、外周環621の外周面に対する、保持係合体83の操作壁部84の延在方向を判別することにより、係合部材61が退避位置(P1)あるいは係合位置(P2)のいずれかの位置であるかを判別することができる。具体的には、使用者は、保持係合体83の操作壁部84の延在方向が、外周環621の外周面に対して平行方向である場合に、係合部材61が退避位置(P1)に位置していると判別することができる。また、使用者は、保持係合体83の操作壁部84の延在方向が、外周環621の外周面に対して交差斜め方向である場合に、係合部材61が係合位置(P2)に位置していると判別することができる。このように、使用者は、操作壁部84を含む保持係合体83の外周環621の外周面に対しての延在方向により、係合部材61がビット取付機構41と係合しているか否かを判別することができる。この操作壁部84を含む保持係合体83は、本発明に係る判別手段に相当する。より詳しく言えば、係合部材61の退避位置(P1)あるいは係合位置(P2)について、例えば適宜の目印を設ける等して、上記した保持係合体83の操作壁部84の延在方向の判別に関する識別力を上げることができる。このように係合部材61がビット取付機構41と係合しているか否かを判別する判別手段の識別力を上げると、使用者にとって係合部材61の位置をより判別し易くなる。さらに言えば、このような判別に関する分かり易さを向上させると、ビット取付機構41と係合部材61とが係合した状態を報知するように機能することとなって便利となる。具体的には、上記した外周環621の外周面に対しての、操作壁部84を含む保持係合体83の延在方向を、ランプ表示装置等の出力装置により出力報知させる場合には、使用者にとって上記した判別がより分かり易いものとなる。つまり、上記した操作壁部84を含む保持係合体83は、本発明に係る報知手段に相当する。
 
【0028】
  上記した第1の実施の形態の電動回転工具10によれば、バッテリ装着部13に対しての充電式バッテリ15の装着は、前後方向と直交交差する上下方向に沿って、上から下にスライドさせることによる。これによって、電動回転工具10として延びる前後方向とは交差する上から下へスライドさせることにより充電式バッテリ15を装着させることができる。したがって、電動回転工具10の延びる前後方向を水平方向に倣わせて配置している場合では、この水平方向と交差する方向で充電式バッテリ15をスライドさせることにより、この充電式バッテリ15をバッテリ装着部13に装着することができることとなる。このようにして、この電動回転工具10によれば、充電式バッテリ15の装着を容易に行えるようにして、電動回転工具10としての取回しを良好にすることができる。
  また、上記した電動回転工具10によれば、シュー17は、前後方向(第1の方向)に沿って移動させることにより工具本体11(モータハウジング21)に対する相対位置を変位可能にされている。これによって、シュー17の配設構造を前側ハウジング31が延びる方向に一致させることができる。これによって、電動回転工具10としての太さ構造のスリム化を図ることができ、使用者にとっての取回しを向上させる。
  また、上記した電動回転工具10によれば、シャフトロック機構37とツマミ螺子18は、前後方向に沿って延びるモータハウジング21の中心軸線に対して互いに対称方向となる配置位置で配設されているので、前後方向への無駄な嵩張りを抑えることができる。これによって、電動回転工具10としての長さ構造のスリム化を図ることができ、使用者にとっての取回しを向上させる。
  また、上記した電動回転工具10によれば、シャフトロック機構37とツマミ螺子18との配置方向は、前後方向および上下方向の双方に交わる方向に延びる左右方向に設定されているので、このシャフトロック機構37とツマミ螺子18とを、3次元方向で効率良く配置することができて、電動回転工具10としての無駄な嵩張りを省いて、使用者にとっての取回しを向上させる。
 
【0029】
[第2の実施の形態]
  次に、上記した第1の実施の形態とは相違する第2の実施の形態の電動回転工具10Aについて、
図12〜
図17を参照しながら説明する。
図12は、第2の実施の形態の電動回転工具10Aの外観側面図である。
図13は、
図12の電動回転工具10Aの前側の部分を拡大して示す拡大斜視図である。
図14は、
図12の電動回転工具10Aの内部を左右半割り形断面にて示す内部断面図である。
図15は、固定解除時の
図12に対応する外観側面図である。
図16は、固定解除時の
図13に対応する拡大斜視図である。
図17は、固定解除時の
図14に対応する内部断面図である。
  なお、この第2の実施の形態の電動回転工具10Aにあっては、上記した第1の実施の形態の電動回転工具10と比較して、シュー17を固定する構造が相違する。つまり、上記した第1の実施の形態においてシュー17を固定する構造では、シュー17の取付部172を、ツマミ螺子18を締付け方向で螺子回しすることにより、ツマミ螺子18によりガイド部材174と一体化されるように押し付けて、工具本体11に対するシュー17の相対位置を固定していた。これに対して、この第2の実施の形態においてシュー17を固定する構造では、ワンタッチ固定機構90により工具本体11に対するシュー17の相対位置を固定する。このワンタッチ固定機構90は、本発明に係るシュー固定手段に相当する。また、ワンタッチ固定機構90は、前側ハウジング31に対してワンタッチ(1操作)で固定することができるように構成されている。
  このため、この第2の実施の形態の電動回転工具10Aにあっては、上記した第1の実施の形態の電動回転工具10におけるツマミ螺子18の構成を、ワンタッチ固定機構90の構成に置換するものとなっている。このため、この第2の実施の形態の電動回転工具10Aのうち、第1の実施の形態における電動回転工具10と同一にされる構成については、上記した第1の実施の形態において説明した同一符号を図に付して説明を省略する。
 
【0030】
  すなわち、
図12〜
図17に示すように、ワンタッチ固定機構90は、概略、固定ガイドプレート91と、固定螺子93と、操作レバー95と、付勢ばね97とを備える。
  固定ガイドプレート91は、上記した第1の実施の形態のガイド部材174と同様、前側ハウジング31に螺子固定されている。この固定ガイドプレート91も、図示するように、ガイド部材174と同様、シュー17の取付部172を囲う形状を有している。このため、この固定ガイドプレート91も、シュー17の取付部172の前後方向のスライドをガイドする機能を有する。固定螺子93は、固定ガイドプレート91の螺子孔92に対して螺子回し可能に螺合されている。固定螺子93には、操作レバー95が取り付けられている。この操作レバー95は、固定螺子93と一体化されている。このため、この操作レバー95を螺子回し操作することにより、固定螺子93も一体に螺子回しされる。この操作レバー95と固定ガイドプレート91との間には、付勢ばね97が介装されている。この付勢ばね97の付勢力は、上記した固定螺子93の押し付け作用を解除するように操作レバー97に対して作用するものである。このため、操作レバー95は、この付勢ばね97の付勢力により、締め付け方向と反対方向に螺子回しするように作用している。
 
【0031】
  ところで、
図12〜
図14に示すように、上記した操作レバー95を、付勢ばね97の付勢力に抗して締め付け方向に螺子回し操作すると、固定螺子93は螺子孔92に対して螺子回しされる。そうすると、この螺子孔92から、固定螺子93の押圧端94が突き出されることとなり、この押圧端94は、シュー17の取付部172を固定ガイドプレート91に押し付けるように作用することとなる。これによって、このシュー17の取付部172は、固定ガイドプレート91と一体化されるように固定螺子93により押し付けられて固定される。このようにして、シュー17は、工具本体11に対して固定されることとなる。つまり、ワンタッチ固定機構90は、操作レバー95のワンタッチ操作(1操作)により、工具本体11に対する相対位置が決められたシュー17を固定する。
  これに対して、
図15〜
図17に示すように、上記した操作レバー95を、付勢ばね97の付勢力に順じた固定解除方向に螺子回し操作すると、付勢ばね97の付勢力を受けながら固定螺子93は螺子孔92に対して螺子回しされる。そうすると、この螺子孔92から、固定螺子93の押圧端94が退避されることとなり、この押圧端94は、シュー17の取付部172を固定ガイドプレート91から離間することとなる。これによって、このシュー17の取付部172の、固定ガイドプレート91に対しての固定が解除される。つまり、シュー17は、前後方向に沿って移動させることができ、前側ハウジング31に対する相対位置を変位させることができる。なお、このワンタッチ固定機構90の固定解除の操作も、操作レバー95のワンタッチ操作(1操作)により行うことができる。
  この電動回転工具10Aによれば、シュー17は、工具本体11(前側ハウジング31)に対する相対位置を変位可能にされており、ワンタッチ固定機構90は、ワンタッチ(1操作)で工具本体11(前側ハウジング31)に対して固定可能に構成されているので、シュー17の位置を決めてから固定するにあたって、ワンタッチ(1操作)で行えることとなる。これによって、シュー17の位置固定を簡単に行えて、使用者にとっての取回しを向上させる。
 
【0032】
[第3の実施の形態]
  次に、上記した第2の実施の形態の変形例となる第3の実施の形態の電動回転工具10Bについて、
図18〜
図23を参照しながら説明する。
図18は、第3の実施の形態の電動回転工具10Bの外観側面図である。
図19は、
図18の電動回転工具10Bの前側の部分を拡大して示す拡大斜視図である。
図20は、
図18の電動回転工具10Bの内部を左右半割り形断面にて示す内部断面図である。
図21は、固定解除時の
図18に対応する外観側面図である。
図22は、固定解除時の
図19に対応する拡大斜視図である。
図23は、固定解除時の
図20に対応する内部断面図である。
  なお、この第3の実施の形態の電動回転工具10Bにあっては、上記した第2の実施の形態の電動回転工具10Aと比較して、ワンタッチ固定機構90に関して相違する構成となっている。この第3の実施の形態の電動回転工具10Bでは、トグル機構を利用したワンタッチ固定機構90Aにより、工具本体11に対するシュー17の相対位置を固定する。このワンタッチ固定機構90Aも、本発明に係るシュー固定手段に相当する。また、このワンタッチ固定機構90Aも、前側ハウジング31に対してワンタッチ(1操作)で固定することができるように構成されている。
  このため、この第3の実施の形態の電動回転工具10Bは、上記した第2の実施の形態の電動回転工具10Aにおけるワンタッチ固定機構90の構成を、トグル機構を利用したワンタッチ固定機構90Aの構成に置換するものとなっている。このため、この第3の実施の形態の電動回転工具10Bのうち、第2の実施の形態における電動回転工具10Aと同一にされる構成については、上記した第1および第2の実施の形態において説明した同一符号を図に付して説明を省略する。
 
【0033】
  すなわち、
図18〜
図23に示すように、ワンタッチ固定機構90Aは、概略、固定ガイドプレート91Aと、締結クランプ93Aと、クランプ保持部材95Aと、トグル操作レバー97Aとを備える。
  固定ガイドプレート91Aは、上記した第2の実施の形態の固定ガイドプレート91と略同様に構成され、前側ハウジング31に螺子固定されている。この固定ガイドプレート91Aも、図示するように、シュー17の取付部172を囲う形状を有している。このため、この固定ガイドプレート91Aも、シュー17の取付部172の前後方向のスライドをガイドする機能を有する。この固定ガイドプレート91Aの外側には、後に説明するトグルローラ99Aが転動する転動プレート92Aが取り付けられている。締結クランプ93Aは、図示するように略棒状に形成される。この締結クランプ93Aは、一端となる下端がクランプ保持部材95Aに保持されており、他端となる上端がシュー17の取付部172の上面に当接するようになっている。このため、この締結クランプ93Aの上端には、拡径された係止フランジ94Aが設けられている。この係止フランジ94Aは、シュー17の取付部172に対して下から上に挿し込まれた締結クランプ93Aの上端に設けられるものである。このため、係止フランジ94Aは、締結クランプ93Aの下側に向かった引下げに応じて、シュー17の取付部172を下側に向けて押し下げるように作用するようになっている。なお、この締結クランプ93Aの下端は、ナット部材96Aによって螺子止めされ、このナット部材96Aは、クランプ保持部材95Aにて保持されている。つまり、締結クランプ93Aの下端は、クランプ保持部材95Aにて保持されている。このクランプ保持部材95Aの後側には、回動軸98Aが設けられている。この回動軸98Aは、トグル操作レバー97Aを回動可能に軸支持している。また、このトグル操作レバー97Aのうち、回動軸98Aに近接される上側部位には、トグルローラ99Aが設けられている。このトグルローラ99Aは、上記した転動プレート92Aの上を転がることができるようになっている。このトグルローラ99Aは、トグル操作レバー97Aの操作によって転動プレート92Aの上を転がって配置位置が切り換わる。なお、このトグルローラ99Aと回動軸98Aとの距離に基づいて、締結クランプ93Aは、下側に向けて押し下げられたり或いは押し下げられなかったりする。
 
【0034】
  つまり、
図18〜
図20に示すように、上記したトグル操作レバー97Aを上側に引上げ操作することによって、トグルローラ99Aは、転動プレート92Aに対して後側に転動して相対的に後側に位置することとなる。そうすると、このトグルローラ99Aと回動軸98Aとの間の距離は相対的に長くなって、締結クランプ93Aを下側に向けて引き下げる。そうすると、締結クランプ93Aの上端に設けられる係止フランジ94Aは、シュー17の取付部172を下側に向けて押し下げるように作用することとなる。これによって、このシュー17の取付部172は、固定ガイドプレート91と一体化されるように係止フランジ94Aにより押し付けられて固定される。このようにして、シュー17は、工具本体11に対して固定されることとなる。つまり、ワンタッチ固定機構90は、操作レバー95のワンタッチ操作(1操作)により、工具本体11に対する相対位置が決められたシュー17を固定することができる。
  これに対して、
図21〜
図23に示すように、上記したトグル操作レバー97Aを下側に引下げ操作することによって、トグルローラ99Aは、転動プレート92Aに対して前側に転動して相対的に前側に位置することとなる。そうすると、このトグルローラ99Aと回動軸98Aとの間の距離は相対的に短くなって、締結クランプ93Aの下側に向けた引下げが解除される。そうすると、締結クランプ93Aの上端に設けられる係止フランジ94Aの下側に向けた押下げ作用は解除されることとなる。これによって、このシュー17の取付部172の、固定ガイドプレート91に対しての固定が解除される。つまり、シュー17は、前後方向に沿って移動させることができ、前側ハウジング31に対する相対位置を変位させることができる。なお、このワンタッチ固定機構90の固定解除の操作も、操作レバー95のワンタッチ操作(1操作)により行うことができる。
  この電動回転工具10Bによっても、シュー17は、工具本体11(前側ハウジング31)に対する相対位置を変位可能にされており、ワンタッチ固定機構90Aは、ワンタッチ(1操作)で工具本体11(前側ハウジング31)に対して固定可能に構成されているので、シュー17の位置を決めてから固定するにあたって、ワンタッチ(1操作)で行えることとなる。これによって、シュー17の位置固定を簡単に行えて、使用者にとっての取回しを向上させる。
 
【0035】
  なお、本発明に係る電動回転工具にあっては、上記した実施の形態の電動回転工具の構成に限定されるものではなく、適宜変更が加えられて構成されるものであってもよい。
  すなわち、上記した実施の形態では、いわゆるカットアウトツール(防じんボートトリマ)と称される電動回転工具を例示して説明するものであった。しかしながら、本発明に係る電動回転工具としては、このような例に限定されることなく、ビットBが取り付けられる機構(取付機構)を有する電動回転工具であれば、適宜の用途に用いられる適宜の構成の電動回転工具において採用することができる。
  また、上記した実施の形態にて説明した、シュー17、シュー固定部としてのツマミ螺子18、シュー固定手段としてワンタッチ固定機構90,90A等は、本発明を説明するにあたっての例示である。このため、本発明に係るシュー、本発明に係るシュー固定部、本発明に係るシュー固定手段としては、上記した実施の形態にて説明した形状および構造に限定されることなく、適宜変更が加えられて構成されるものであってもよい。