(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上面に半導体素子が接合されるNi又はNi合金で形成された厚さ5μm以上のNi板の下面に、Al又はAl合金で形成されたAl板を拡散接合によって積層状に接合することにより、前記Ni板と前記Al板との接合体を得る拡散接合工程と、
前記拡散接合工程の後で、前記接合体の前記Al板と、前記Al板の下面側に配置されるセラミック板と、前記セラミック板の下面側に配置されるAl又はAl合金製応力緩和板と、前記応力緩和板の下面側に配置される放熱部材とを重ね合わせるとともに、これらを積層方向に一括して加圧した状態でろう付けによって積層状に一括接合するろう付け接合工程と、を備えている絶縁基板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本発明の幾つかの実施形態について図面を参照して以下に説明する。なお、以下の説明において、各図の上下を上下というものとする。
【0032】
本発明の第1実施形態に係る絶縁基板1Aは、
図1に示すように、半導体モジュール20に用いられるものである。この半導体モジュール20は、本第1実施形態の絶縁基板1Aと、半導体素子21とを備えている。
【0033】
半導体モジュール20は、IGBTモジュール、MOSETモジュール、サイリスタモジュール、ダイオードモジュール等である。
【0034】
半導体素子21は本第1実施形態の絶縁基板1A上に実装されている。この半導体素子21は、IGBTチップ、MOSETチップ、サイリスタチップ、ダイオードチップ等である。
【0035】
図2に示すように、本第1実施形態の絶縁基板1Aは、いわゆる放熱部材(例:ヒートシンク)一体型のものであり、詳述すると、Ni層としてのNi板2と、第1のAl層としての第1のAl板3と、第2のAl層としての第2のAl板6と、セラミック層としてのセラミック板7と、金属応力緩和層としての金属応力緩和板8と、放熱部材9とを備えている。
【0036】
この絶縁基板1Aにおいて、Ni板2と第1のAl板3と第2のAl板6とセラミック板7と金属応力緩和板8と放熱部材9は、絶縁基板1Aを構成する全ての板状部材に相当し、これら(2、3、6、7、8、9)のうち、第2のAl板6とセラミック板7と金属応力緩和板8と放熱部材9が、第1のAl板3の下面側に互いに積層状に配置され且つ絶縁基板1Aを構成する残りの複数の板状部材に相当している。
【0037】
絶縁基板1Aにおいて、各板2、3、6、7、8及び放熱部材9は水平状に且つ積層状に配置されており、更に平面視方形状に形成されている。
【0038】
放熱部材9は、半導体素子21の動作に伴い半導体素子21から発生した熱を放出して半導体素子21の温度を下げるためのものであり、具体的に示すと、空冷式又は液冷式のヒートシンクや冷却器等である。さらに、この放熱部材9は金属製であり、詳述すると例えばAl又はAl合金製である。本第1実施形態では、放熱部材9は複数の放熱フィン9aを有する空冷式のAl又はAl合金製ヒートシンクである。
【0039】
Ni板2は、Ni又はNi合金で形成されたものである。さらに、このNi板2は、その上面2aに半導体素子21がはんだ付けによって接合されるものであり、すなわち絶縁基板1Aの表面層を形成するものである。Ni板2の厚さは5μm以上である。
【0040】
第1のAl板3は、Al又はAl合金で形成されたものである。この第1のAl板3の材質は限定されるものではなく、例えば、JIS(日本工業規格)で規定されたアルミニウム合金記号A1100又はA3003である。そして、この第1のAl板3がNi板2の下面に拡散接合によって積層状に直接接合されており、これにより、Ni板2と第1のAl板3とが積層状に直接的に接合一体化されている。第1のAl板3の厚さは限定されるものではないが、第1のAl板3をNi板2の下面に拡散接合によって良好に接合できるようにするため、第1のAl板3の厚さは0.1〜1500μmの範囲に設定されるのが望ましく、特に望ましい第1のAl板3の厚さの下限は30μmであり、特に望ましい上限は100μmである。さらに、第1のAl板3の厚さは、後述するろう付け接合工程S2で第1のAl板3と第2のAl板6との接合に用いられるろう材層15aの厚さ以上であることが特に望ましい。ここで、このようにNi板2と第1のAl板3とが接合一体化されて形成されたものを、「接合体5」という。
【0041】
拡散接合としては、クラッド圧延や放電プラズマ焼結法等の固相拡散接合が特に好適に用いられる。
【0042】
Ni板2と第1のAl板3との接合界面4には、拡散接合の際に形成された強度が弱くはんだ接合性が悪い合金層(詳述するとNi−Al合金相の層)(図示せず)が介在している。この合金層の厚さは通常0.1〜1μmである。この厚さは、第1のAl板3上にNi板2をろう付けによって接合した場合に両者2、3の接合界面4に形成される合金層の厚さ約6〜10μmよりもかなり薄い。
【0043】
第2のAl板6は、Al又はAl合金で形成されたものである。本第1実施形態では、この第2のAl板6の材質は限定されるものではなく、例えば、JISで規定されたアルミニウム合金記号A1100又はA3003である。そして、この第2のAl板6が第1のAl板3の下面にろう付けによって積層状に接合されている。第2のAl板6の厚さは限定されるものではないが、第1のAl板3及び第2のAl板6が絶縁基板1Aの配線層(回路層とも呼ばれている)として確実に機能しうるようにするため、100〜1000μmの範囲に設定されるのが特に望ましい。
【0044】
第1のAl板3と第2のAl板6との接合界面には、両板3、6を接合したろう材層15aが介在されている。このろう材層15aは、Al系ろう材(例:Al−Si系合金のろう材)の層であることが望ましく、またろう材層15aの厚さは例えば10〜100μmである。さらに、このろう材層15aは、第1のAl板3と第2のAl板6との接合の前に、第2のAl板6の上面にその全面に亘ってクラッド圧延等によって予め接合されていたものである。なおこれらの図では、このろう材層15aは、他の板又は層と区別し易くするためドットハッチングで図示されている。後述するその他のろう材層15b〜15dについても同様の理由によりドットハッチングで図示されている。
【0045】
セラミック板7は、電気絶縁層として機能するものであり、AlN(窒化アルミニウム)、Al
2O
3、Si
3N
4、Y
2O
3、CaO、BN、BeOからなる群より選択される1種又は2種以上のセラミックで形成されたものである。そして、このセラミック板7が第2のAl板6の下面にろう付けによって積層状に接合されている。セラミック板7の厚さは限定されるものではなく、例えば200〜1000μmである。このセラミック板7の長さ及び幅は、セラミック板7を電気絶縁層として確実に機能させるため、Ni板2、第1のAl板3、第2のAl板6及び金属応力緩和板8の長さ及び幅よりも若干大寸に設定されている。因みに、セラミック板7を形成するセラミックの融点又は分解点は、Ni板2、第1のAl板3、第2のAl板6及び金属応力緩和板8の融点よりも高い。
【0046】
第2のAl板6とセラミック板7との接合界面には、両板6、7を接合したろう材層15bが介在されている。このろう材層15bは、Al系ろう材(例:Al−Si系合金のろう材)の層であることが望ましく、またろう材層15bの厚さは例えば10〜100μmである。さらに、このろう材層15bは、第2のAl板6とセラミック板7との接合の前に、第2のAl板6の下面にその全面に亘ってクラッド圧延等によって予め接合されていたものである。
【0047】
金属応力緩和板8は、冷熱サイクル等によって絶縁基板1Aに発生する熱応力(熱歪み)を緩和するためのものであり、金属製である。詳述すると、本第1実施形態では、金属応力緩和板8は、複数の貫通孔8aがその厚さ方向に穿設されたAl又はAl合金製パンチングメタルから形成されている。そして、この金属応力緩和板8がセラミック板7の下面にろう付けによって積層状に接合されている。この金属応力緩和板8の厚さは限定されるものではなく、例えば600〜2000μmである。
【0048】
セラミック板7と金属応力緩和板8との接合界面には、両板7、8を接合したろう材層15cが介在されている。このろう材層15cは、Al系ろう材(例:Al−Si系合金のろう材)の層であることが望ましく、またろう材層15cの厚さは例えば10〜100μmである。
【0049】
放熱部材9は、上述したように金属製であり、詳述すると例えばAl又はAl合金製である。そして、この放熱部材9が金属応力緩和板8の下面にろう付けによって積層状に接合されている。
【0050】
金属応力緩和板8と放熱部材9との接合界面には、両者8、9を接合したろう材層15dが介在されている。このろう材層15dは、Al系ろう材(例:Al−Si系合金のろう材)の層であることが望ましく、またろう材層15dの厚さは例えば10〜100μmである。
【0051】
次に、本第1実施形態の絶縁基板1Aの製造方法について
図3〜5を参照して以下に説明する。
【0052】
図3に示すように、本第1実施形態の絶縁基板1Aの製造方法は、拡散接合工程S1とろう付け接合工程S2とを備える。ろう付け接合工程S2は拡散接合工程S1の後で行われる。
【0053】
拡散接合工程S1は、Ni板2の下面にAl板3を拡散接合によって積層状に接合する工程である。拡散接合としては、上述したようにクラッド圧延、放電プラズマ焼結法等が用いられる。
【0054】
ここで、放電プラズマ焼結(Spark Plasma Sintering:SPS)法は、一般的に、粉体を焼結するため又は部材同士を接合するために適用されるものであり、本第1実施形態では部材同士としてNi板2と第1のAl板3とを接合するために適用されている。なお、この放電プラズマ焼結法は、「SPS法」、「放電プラズマ接合法」、「パルス通電圧接法(Pulsed Current Hot Pressing:PCHP)」等とも呼ばれている。
【0055】
Ni板2と第1のAl板3とを拡散接合としてのクラッド圧延によって接合する場合には、両板2、3同士を確実に接合できるようにするため、冷間ないし温間クラッド圧延によって両板3、5を接合するのが望ましい。すなわち、
図4に示すように、互いに平行に配置された上下一対の圧延ロール31、31を具備したクラッド圧延装置30を用い、互いに重ね合わされたNi板2と第1のAl板3とを両圧延ロール31、31間に通して両圧延ロール31、31でNi板2と第1のAl板3とを挟圧することにより、Ni板2の下面に第1のAl板3を接合(クラッド)する。これにより、Ni板2と第1のAl板3との接合体5が得られる。この接合の際に、Ni板2と第1のAl板3との接合時の熱によって両板2、3の接合界面4にてNi板2のNiと第1のAl板3のAlとが拡散するとともに、拡散したNiとAlとが合金化してNi−Al合金相を含む層(即ち、強度が弱くはんだ接合性が悪い合金層)が両板2、3の接合界面4に薄く形成される。この接合の条件は、Ni板2と第1のAl板3とをクラッド圧延により接合可能な条件であれば良く、限定されるものではないが、クラッド温度:室温〜300℃、圧下率:30〜70%であることが、強度が弱くはんだ接合性が悪い合金層を確実に薄く形成し得る点で、特に望ましい。
【0056】
Ni板2と第1のAl板3とを拡散接合としての放電プラズマ焼結法によって接合する場合には、
図5に示すように、まず、放電プラズマ焼結装置40に備えられた筒状ダイ41内にNi板2と第1のAl板3とを互いに重ね合わせて積層状に配置する。これにより、両板2、3の周囲がダイ41で包囲される。ダイ41は導電性を有するものであり、例えば黒鉛製である。次いで、両板2、3をその積層方向に上下一対のパンチ42、42で挟む。各パンチ42は導電性を有するものであり、例えば黒鉛製である。また、各パンチ42の基部には電極43が電気的に接続されている。そして、例えば1〜10Paの真空雰囲気中、又は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中にて、両パンチ42、42で両板2、3をその積層方向に加圧しつつ、両パンチ42、42間の通電を確保した状態で両パンチ42、42間にパルス電流を通電することで両板2、3を加熱し、これによりNi板2の下面に第1のAl板3を接合する。これにより、Ni板2と第1のAl板3との接合体5が得られる。この接合の際に、Ni板2と第1のAl板3との接合時の熱によって両板2、3の接合界面4にてNi板2のNiと第1のAl板3のAlとが拡散するとともに、拡散したNiとAlとが合金化してNi−Al合金相を含む層(即ち、強度が弱くはんだ接合性が悪い合金層)が両板2、3の接合界面4に薄く形成される。この接合の条件は、Ni板2と第1のAl板3とを放電プラズマ焼結法により接合可能な条件であれば良く、限定されるものではないが、加熱温度400〜550℃、加熱温度の保持時間0〜5min、室温から加熱温度への昇温速度20〜50℃/min、両板2、3への加圧力10〜20MPaであることが、合金層を確実に薄く形成し得る点で、特に望ましい。
【0057】
ろう付け接合工程S2は、拡散接合工程1Sの後で、接合体5の第1のAl板3と、第2のAl板6と、セラミック板7と、金属応力緩和板8と、放熱部材9とをろう付けによって積層状に一括接合する工程であり、具体的にその説明をすると次のとおりである。
【0058】
まず、
図3に示すように、第2のAl板6を心材としてその両面にそれぞれろう材層15a、15bが接合されたブレージングシートを準備する。各ろう材層15a、15bは、当該第2のAl板6の上面又は下面にAl系ろう材板が常法に従ってクラッド圧延によって接合(クラッド)されて形成されたものある。第2のAl板6の厚さは限定されるものではないが、100〜1000μmの範囲に設定されるが特に望ましい。各ろう材層15a、15bの厚さは限定されるものではないが、10〜100μmの範囲に設定されるのが特に望ましい。
【0059】
次いで、接合体5の第1のAl板3と、第2のAl板6と、セラミック板7と、金属応力緩和板8と、放熱部材9とを重ね合わせる。このとき、セラミック板7と金属応力緩和板8との間と、金属応力緩和板8と放熱部材9との間とに、それぞれ、ろう材層15c、15dとしてAl系ろう材板を配置する。各ろう材板の厚さは例えば10〜100μmである。次いで、これらを所定の加圧装置(図示せず)によって積層方向に一括して加圧する。そして、この加圧を維持した状態のままでこれらを炉内ろう付け等のろう付けによって真空中などで一括して接合する。これにより、第1実施形態の絶縁基板1Aを得る。
【0060】
なおその後、必要に応じて、絶縁基板1Aを焼き鈍し処理しても良い。こうすることにより、絶縁基板1Aの製造過程で絶縁基板1Aに蓄積された熱応力を除去することができる。
【0061】
この絶縁基板1Aを用いて半導体モジュール20を製造する場合には、半導体素子21は絶縁基板1AのNi板2の上面2aにはんだ付けによって接合される。これにより半導体モジュール20が得られる。
【0063】
本第1実施形態の絶縁基板1Aの製造方法によれば、半導体素子21が接合される上面層(表面層)がNi板2で形成された絶縁基板1Aが得られる。そのため、この絶縁基板1Aは、はんだ接合性が良好であり、したがって半導体素子21をはんだ付けによって良好に接合することができる。
【0064】
さらに、拡散接合工程S1においてNi板2の下面に第1のAl板3を拡散接合によって接合することにより、Ni板2と第1のAl板3との接合界面4に強度が弱くはんだ接合性が悪い合金層(Ni−Al合金相の層)が形成されるが、上述したようにこの合金層の厚さは薄い。そのため、拡散接合工程S1の後で行われるろう付け接合工程S2の際にこの合金層で生じる割れは微小で且つ部分的であり、この微小で部分的な割れは、ろう付け接合工程S2の際に熱応力開放の効果をもたらす。さらに、絶縁基板1Aの使用時においても合金層で大きな割れや剥離の発生が防止されるし、セラミック板7の割れの発生も防止される。しかも、Ni板2の厚さが5μm以上であることにより、この合金層がNi板2の上面2aにまで形成されるのが防止される。そのため、良好なはんだ接合性を維持することができるし、Ni板2の上面2aの変形(凹凸)の発生を防止できる。
【0065】
なお、Ni板2の厚さの上限は限定されるものではないが、特に50μmであることが、絶縁基板1Aの熱伝導特性の大幅な低下を防止できる点などで望ましい。
【0066】
さらに、Ni板2と第1のAl板3との間にTi板等のTi層が介在していないので、Ti層が介在することによる絶縁基板1Aの熱伝導特性の低下及び絶縁基板1Aの製造コストの増加を防止できる。すなわち、Niの熱伝導率は90.7W/m・K、Alの熱伝導率は236W/m・K、Tiの熱伝導率は21.9W/m・Kであり、したがってTiの熱伝導率はNi及びAlの熱伝導率よりも低い。そのため、もしTi層がNi板2と第1のAl板3との間に介在している場合には、絶縁基板1Aの熱伝導特性が低下する。さらに、Ti板は一般的にAl板及びNi板よりも高価である。これに対して、本第1実施形態の絶縁基板1Aでは、Ni板2と第1のAl板3との間にTi板等のTi層が介在していない。そのため、絶縁基板1Aの熱伝導特性の低下及び絶縁基板1Aの製造コストの増加を防止できるのである。
【0067】
さらに、ろう付け接合工程S2において第1のAl板3と複数の板状部材(即ち、第2のAl板6、セラミック板7、金属応力緩和板8、放熱部材9)とをろう付けによって積層状に一括接合することにより、絶縁基板1Aを効率良く製造することができる。
【0068】
さらに、絶縁基板1Aは第2のAl板6を備えているので、第1のAl板3と第2のAl板6とを合計した厚いAl層を配線層として利用可能な絶縁基板1Aを得ることができる。さらに、この厚いAl層は、ろう付け接合工程S2の前では第1のAl板3と第2のAl板6とに分けられていることから、拡散接合工程S1において、第1のAl板3の厚さを、第1のAl板3をNi板2の下面に良好に接合可能な厚さに設定することができる。例えば、拡散接合工程S1においてNi板2の下面に第1のA板3をクラッド圧延によって接合する場合、各板2、3の物性値によって両板2、3を良好に接合可能なクラッド率の範囲が決定されるので、厚い第1のAl板3はNi板2の下面に良好に接合できないことがある。そこで、Ni板2の下面にクラッド圧延によって良好に接合可能な薄い第1のAl板3を準備しておき、最初にこれをNi板2の下面にクラッド圧延によって接合し、次いで、第1のAl板3の下面に厚い第2のAl板6を接合することでAl層の厚さを増加させる。これにより、配線層として確実に機能しうる厚さを有するAl層を形成することができる。さらに、第1のAl板3及び第2のAl板6の材質をそれぞれ機能、作用、目的等に応じて選択可能となる。
【0069】
図6及び7は、本発明の第2実施形態に係る絶縁基板1Bの製造方法を説明する図である。これらの図では、上記第1実施形態の絶縁基板1Aと同等の構成要素に同じ符号が付されている。
【0070】
本第2実施形態の絶縁基板1Bは、
図6に示すように、上記第1実施形態の絶縁基板1Aの第2のAl板6を備えておらず、つまり接合体5の第1のAl板3の下面にセラミック板7がろう付けによって積層状に接合されている。その他の構成は上記第1実施形態の絶縁基板1Aと同じである。
【0071】
図7に示すように、本第2実施形態の絶縁基板1Bの製造方法の拡散接合工程S1は、上記第1実施形態の拡散接合工程と同じである。
【0072】
ろう付け接合工程2Sでは、接合体5の第1のAl板3と、セラミック板7と、金属応力緩和板8と、放熱部材9とをろう付けによって積層状に一括接合する。具体的にその説明をすると次のとおりである。
【0073】
接合体5の第1のAl板3と、セラミック板7と、金属応力緩和板8と、放熱部材9とを重ね合わせる。このとき、第1のAl板3とセラミック板7との間と、セラミック板7と金属応力緩和板8との間と、金属応力緩和板8と放熱部材9との間とに、それぞれ、ろう材層15b、15c、15dとしてAl系ろう材板を配置する。各ろう材板の厚さは例えば10〜100μmである。次いで、これらを所定の加圧装置(図示せず)によって積層方向に一括して加圧する。そして、この加圧を維持した状態のままでこれらを炉内ろう付け等のろう付けによって真空中などで一括して接合する。これにより、第2実施形態の絶縁基板1Bが得られる。
【0074】
図8及び9は、本発明の第3実施形態に係る絶縁基板1Cの製造方法を説明する図である。これらの図では、上記第1実施形態の絶縁基板1Aと同等の構成要素に同じ符号が付されている。
【0075】
本第3実施形態の絶縁基板1Cでは、
図8に示すように、接合体5の第1のAl板3の下面側に、DBA(Direct Brazed Aluminum)板10と金属応力緩和板8と放熱部材9とがこの順に配置されている。
【0076】
DBA板10は、セラミック板(詳述するとAlN板)7の上面及び下面にそれぞれAl板11、12が積層状に直接接合されたものであり、市販されているものである。各Al板11、12はAl又はAl合金で形成されている。そして、第1のAl板3の下面にDBA板10の上側(一方)のAl板11がろう付けによって接合されるとともに、DBA板10の下側(他方)のAl板12の下面に金属応力緩和板8がろう付けによって接合されている。さらに、金属応力緩和板8の下面に放熱部材9がろう付けによって接合されている。
【0077】
図9に示すように、本第3実施形態の絶縁基板1Cの製造方法の拡散接合工程S1は、上記第1実施形態の拡散接合工程と同じである。
【0078】
ろう付け接合工程2Sでは、接合体5の第1のAl板3と、DBA板10と、金属応力緩和板8と、放熱部材9とをろう付けによって積層状に一括接合する。具体的にその説明をすると次のとおりである。
【0079】
接合体5の第1のAl板3と、DBA板10と、金属応力緩和板8と、放熱部材9とを重ね合わせる。このとき、第1のAl板3とDBA板10の上側のAl板11との間と、DBA板10の下側のAl板12と金属応力緩和板8との間と、金属応力緩和板8と放熱部材9との間とに、それぞれ、ろう材層15b、15c、15dとしてAl系ろう材板を配置する。各ろう材板の厚さは例えば10〜100μmである。次いで、これらを所定の加圧装置(図示せず)によって積層方向に一括して加圧する。そして、この加圧を維持した状態のままでこれらを炉内ろう付け等のろう付けによって真空中などで一括して接合する。これにより、第3実施形態の絶縁基板1Cが得られる。
【0080】
以上で本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々に変更可能である。
【0081】
例えば、上記実施形態では、放熱部材9はヒートシンクであるが、本発明では、放熱部材はその他に例えば液冷式や空冷式等の冷却器であっても良い。
【0082】
また本発明では、上記実施形態のように絶縁基板は放熱部材9を一体に備えているものであることが特に望ましいが、必ずしも放熱部材9を備えていることを要しない。
【0083】
また本発明は、上記実施形態に適用された技術的思想のうち2つ以上を組み合わせて構成しても良い。
【実施例】
【0084】
次に、本発明の具体的な幾つかの実施例を以下に示す。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0085】
<実施例1>
本実施例1では、
図2に示した第1実施形態の絶縁基板1Aを製造した。その具体的な製造方法は以下のとおりである。
【0086】
Ni板2、第1のAl板3、第2のAl板6、セラミック板7、金属応力緩和板8及び放熱部材9として、それぞれ次の板を準備した。
【0087】
・Ni板2 :長さ25mm×幅25mm×厚さ30μmの純Ni板
・第1のAl板3 :長さ25mm×幅25mm×厚さ80μmのAl合金板
・第2のAl板6 :長さ25mm×幅25mm×厚さ600μmのAl合金板
・セラミック板7 :長さ29mm×幅29mm×厚さ0.6mmのAlN板
・金属応力緩和板8:長さ25mm×幅25mm×厚さ1.6mmの高純度Al製パンチングメタル板
・放熱部材9 :長さ50mm×幅50mm×厚さ5mmのAl合金板。
【0088】
Ni板2用純Ni板の純度はJIS1種である。第1のAl板3用Al合金板の材質はA1100である。
【0089】
第2のAl板6用Al合金板の材質はA3003である。さらにこのAl合金板の両面にはそれぞれAl系ろう材板がクラッド圧延によって接合(クラッド)されており、これにより、このAl合金板の両面にその全面に亘ってそれぞれろう材層15a、15bが接合されており、すなわちこのAl合金板はブレージングシート化されている。各ろう材層15a、15bの材質はAl−10質量%Siであり、その厚さは20μmである。
【0090】
金属応力緩和板8用高純度Al製パンチングメタル板の純度は4N(即ち99.99質量%)である。放熱部材9用Al合金板の材質はA3003である。
【0091】
そして、拡散接合工程S1では、Ni板2の下面に第1のAl板3を冷間ないし温間クラッド圧延によって接合した。これにより、Ni板2と第1のAl板3との接合体5を得た。その際に適用した接合条件は、クラッド温度200℃、圧下率50%である。
【0092】
次いで、ろう付け接合工程S2を次のように行った。
図3に示すように、接合体5の第1のAl板3と、第2のAl板6と、セラミック板7と、金属応力緩和板8と、放熱部材9とを積層状に重ね合わせた。このとき、セラミック板7と金属応力緩和板8との間と、金属応力緩和板8と放熱部材9との間とに、それぞれ、ろう材層15c、15dとしてAl系ろう材板(長さ25mm×幅25mm×厚さ50μm)を配置した。ろう材板の材質はいずれもAl−10質量%Siである。そして、これらを積層方向に加圧した状態で真空中にて炉内ろう付けによって積層状に一括して接合した。この際のろう付け接合条件は、積層方向の加圧力:490Pa(5gf/cm
2)、ろう付け温度:600℃、ろう付け温度の保持時間:20min、真空度:4×10
−4Paである。
【0093】
こうして得られた絶縁基板1Aに対して−40〜125℃の冷熱サイクル試験を1000回繰り返して行った。その結果、絶縁基板1Aにおける各接合界面に割れの進展は見られず、各接合界面での剥離、セラミック板7の割れ及びNi板2の上面2aの変形(凹凸)は発生しなかった。また、この絶縁基板1Aは、Ni板2を備えていない絶縁基板との間で有意な熱抵抗の差は確認されなかった。
【0094】
<実施例2>
本実施例2では、
図6に示した第2実施形態の絶縁基板1Bを製造した。その具体的な製造方法は以下のとおりである。
【0095】
Ni板2、第1のAl板3、セラミック板7、金属応力緩和板8及び放熱部材9として、それぞれ次の板を準備した。
【0096】
・Ni板2 :長さ25mm×幅25mm×厚さ30μmの純Ni板
・第1のAl板3 :長さ25mm×幅25mm×厚さ80μmのAl合金板
・セラミック板7 :長さ29mm×幅29mm×厚さ0.6mmのAlN板
・金属応力緩和板8:長さ25mm×幅25mm×厚さ1.6mmの高純度Al製パンチングメタル板
・放熱部材9 :長さ50mm×幅50mm×厚さ5mmのAl合金板。
【0097】
Ni板2用純Ni板の純度はJIS1種である。第1のAl板3用Al合金板の材質はA1100である。
【0098】
金属応力緩和板8用高純度Al製パンチングメタル板の純度は4N(即ち99.99質量%)である。放熱部材9用Al合金板の材質はA3003である。
【0099】
そして、拡散接合工程S1では、Ni板2の下面に第1のAl板3を冷間ないし温間クラッド圧延によって接合した。これにより、Ni板2と第1のAl板3との接合体5を得た。その際に適用した接合条件は、上記実施例1の拡散接合工程S1で適用した接合条件と同じである。
【0100】
次いで、ろう付け接合工程S2を次のように行った。
図7に示すように、接合体5の第1のAl板3と、セラミック板7と、金属応力緩和板8と、放熱部材9とを積層状に重ね合わせた。このとき、第1のAl板3とセラミック板7との間と、セラミック板7と金属応力緩和板8との間と、金属応力緩和板8と放熱部材9との間とに、それぞれ、ろう材層15b、15c、15dとしてAl系ろう材板(長さ25mm×幅25mm×厚さ50μm)を配置した。ろう材板の材質はいずれもAl−10質量%Siである。そして、これらを積層方向に加圧した状態で真空中にて炉内ろう付けによって積層状に一括して接合した。この際のろう付け接合条件は、上記実施例1のろう付け接合工程S2で適用したろう付け接合条件と同じである。
【0101】
こうして得られた絶縁基板1Bに対して−40〜125℃の冷熱サイクル試験を1000回繰り返して行った。その結果、絶縁基板1Bにおける各接合界面に割れの進展は見られず、各接合界面での剥離、セラミック板7の割れ及びNi板2の上面2aの変形(凹凸)は発生しなかった。また、この絶縁基板1Bは、Ni板2を備えていない絶縁基板との間で有意な熱抵抗の差は確認されなかった。
【0102】
<実施例3>
本実施例3では、
図8に示した第3実施形態の絶縁基板1Cを製造した。その具体的な製造方法は以下のとおりである。
【0103】
Ni板2、第1のAl板3、金属応力緩和板8及び放熱部材9として、それぞれ次の板を準備した。また、セラミック板7としてDBA板10を準備した。
【0104】
・Ni板2 :長さ25mm×幅25mm×厚さ30μmの純Ni板
・第1のAl板3 :長さ25mm×幅25mm×厚さ80μmのAl合金板
・DBA板10 :(後述する)
・金属応力緩和板8:長さ25mm×幅25mm×厚さ1.6mmの高純度Al製パンチングメタル板
・放熱部材9 :長さ50mm×幅50mm×厚さ5mmのAl合金板。
【0105】
Ni板2用純Ni板の純度はJIS1種である。第1のAl板3用Al合金板の材質はA1100である。
【0106】
DBA板10は市販されているものであり、セラミック板7としてのAlN板(長さ27mm×幅27mm×厚さ0.6mm)の上面及び下面にそれぞれAl板(長さ25mm×幅25mm×厚さ0.6mm)11、12が積層状に直接接合されている。
【0107】
金属応力緩和板8用高純度Al製パンチングメタル板の純度は4N(即ち99.99質量%)である。放熱部材9用Al合金板の材質はA3003である。
【0108】
そして、拡散接合工程S1では、Ni板2の下面に第1のAl板3を冷間ないし温間クラッド圧延によって接合した。これにより、Ni板2と第1のAl板3との接合体5を得た。その際に適用した接合条件は、上記実施例1の拡散接合工程S1で適用した接合条件と同じである。
【0109】
次いで、ろう付け接合工程S2を次のように行った。
図9に示すように、接合体5の第1のAl板3と、DBA板10と、金属応力緩和板8と、放熱部材9とを積層状に重ね合わせた。このとき、第1のAl板3とDBA板10の上側のAl板11との間と、DBA板10の下側のAl板12と金属応力緩和板8との間と、金属応力緩和板8と放熱部材9との間とに、それぞれ、ろう材層15b、15c、15dとしてAl系ろう材板(長さ25mm×幅25mm)を配置した。なお、ろう材板の材質はいずれもAl−10質量%Siである。また、ろう材層15bのろう材板の厚さは20μmであり、ろう材層15c、15dのろう材板の厚さは50μmである。そして、これらを積層方向に加圧した状態で真空中にて炉内ろう付けによって積層状に一括して接合した。この際のろう付け接合条件は、上記実施例1のろう付け接合工程S2で適用したろう付け接合条件と同じである。
【0110】
こうして得られた絶縁基板1Cに対して−40〜125℃の冷熱サイクル試験を1000回繰り返して行った。その結果、絶縁基板1Cにおける各接合界面に割れの進展は見られず、各接合界面での剥離、セラミック板7の割れ及びNi板2の上面2aの変形(凹凸)は発生しなかった。また、この絶縁基板1Cは、Ni板2を備えていない絶縁基板との間で有意な熱抵抗の差は確認されなかった。
【0111】
<比較例1>
本比較例1では、
図10に示した構成の絶縁基板101を製造した。この絶縁基板101と上記第1実施形態の絶縁基板1Aとの相異点は次のとおりである。
【0112】
すなわち、本比較例1の絶縁基板101では、Ni板102の下面にTi板113がクラッド圧延によって直接接合されており、更に、Ti板113の下面に第1のAl板103がクラッド圧延によって直接接合されている。その他の構成は、上記第1実施形態の絶縁基板1Aと同じである。すなわち、第1のAl板103の下面に第2のAl板106がろう付けによって接合されており、第2のAl板106の下面にセラミック板107がろう付けによって接合されており、セラミック板107の下面に金属応力緩和板108がろう付けによって接合されていおり、金属応力緩和板108の下面に放熱部材109がろう付けによって接合されている。なお、108aは金属応力緩和板108の貫通孔、109aは放熱部材109の放熱フィンである。また、Ni板102とTi板113との接合界面には、Ni板102とTi板113との接合時の熱によってNi板102のNiとTi板113のTiとが合金化したNi−Ti系超弾性合金層(図示せず)が薄く形成されている。
【0113】
本比較例1の絶縁基板101の具体的な製造方法は以下のとおりである。
【0114】
Ni板102、Ti板113、第1のAl板103、第2のAl板106、金属応力緩和板108及び放熱部材109として、それぞれ次の板を準備した。
【0115】
・Ni板102 :長さ25mm×幅25mm×厚さ30μmの純Ni板
・Ti板113 :長さ25mm×幅25mm×厚さ20μmの純Ti板
・第1のAl板103 :長さ25mm×幅25mm×厚さ80μmのAl合金板
・第2のAl板106 :長さ25mm×幅25mm×厚さ600μmのAl合金板
・セラミック板107 :長さ29mm×幅29mm×厚さ0.6mmのAlN板
・金属応力緩和板108:長さ25mm×幅25mm×厚さ1.6mmの高純度Al製パンチングメタル板
・放熱部材109 :長さ50mm×幅50mm×厚さ5mmのAl合金板。
【0116】
Ni板102用純Ni板の純度はJIS1種である。Ti板113用純Ti板の純度はJIS1種である。第1のAl板103用Al合金板の材質はA1100である。
【0117】
第2のAl板106用Al合金板の材質はA3003である。さらにこのAl合金板の両面にはそれぞれAl系ろう材板がクラッド圧延によって接合(クラッド)されており、これにより、このAl合金板の両面にその全面に亘ってそれぞれろう材層115a、115bが接合されており、すなわちこのAl合金板はブレージングシート化されている。各ろう材層115a、115bの材質はAl−10質量%Siであり、その厚さは20μmである。
【0118】
金属応力緩和板108用高純度Al製パンチングメタル板の純度は4N(即ち99.99質量%)である。放熱部材109用Al合金板の材質はA3003である。
【0119】
そして、
図11に示すように、Ni板102の下面にTi板113をクラッド圧延によって接合した。この工程を「第1拡散接合工程S101a」という。その際に適用した接合条件は、クラッド温度450℃、圧下率30%である。
【0120】
次いで、Ti板113の下面に第1のAl板103を冷間ないし温間クラッド圧延によって接合した。この工程を「第2拡散接合工程S101b」という。その際に適用した接合条件は、クラッド温度200℃、圧下率50%である。
【0121】
次いで、ろう付け接合工程S102を上記実施例1のろう付け接合工程S2と同様に行った。
【0122】
こうして得られた絶縁基板101に対して−40〜125℃の冷熱サイクル試験を1000回繰り返して行った。その結果、絶縁基板101における各接合界面での剥離、セラミック板107の割れ及びNi板102の上面102aの変形は発生しなかった。しかし、この絶縁基板101の熱抵抗は、実施例1の絶縁基板1Aの熱抵抗と比べて約3%増加した。その原因は、比較例1の絶縁基板101がTi層(即ちTi板113)を含んでいるからである。