(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施例を、
図1を参照しながら説明する。なお、矢印F方向を前方向として前後方向を規定する。本発明に係る作業車両をクローラトラクタ1として、全体構成から説明する。クローラトラクタ1は、後部に作業機用の昇降連結機構2が備えられ、昇降連結機構2を介して各種作業機を連結して昇降可能に構成している。
【0013】
クローラトラクタ1は、車体フレーム7上の前部に原動機としてエンジン3が配設され、該エンジン3の後方位置に運転部4が配設されている。運転部4はキャビン5により覆われ、キャビン5内に図示しないステアリングハンドルや、座席シートや、操作手段95となる変速レバーや、PTOレバーや昇降レバー等が配設されている。
【0014】
前記車体フレーム7は走行部6により支持され、走行部6は前後方向に伸延する走行フレーム10の前端部に駆動輪11を、後述する前部ミッションケース25を介して取り付けている。一方、走行フレーム10の後端部に従動輪12を取り付け、これら駆動輪11と従動輪12との間に、履帯14を巻回している。走行フレーム10の上部中央に上部転動輪15、走行フレーム10の下部にイコライザ16・16を配置している。
【0015】
図2に示すように、エンジン3の前方位置に、前部ギヤケース30を配置して、伝動シャフト、ユニバーサルジョイントを介して動力を伝達し、前部ギヤケース30の出力側に旋回用HST(静油圧式無段変速装置)32の入力側を連動連設し、旋回用HST32の出力側に前部ミッションケース25の入力側を連動連設している。
【0016】
前記エンジン3の後方位置に、後部ギヤケース33を介して走行用HST(静油圧式無段変速装置)34を連動連設し、走行用HST34の出力側に後部ミッションケース36の入力側を連動連結している。また、後部ミッションケース36の前方出力側には伝動シャフト、ユニバーサルジョイントを介して前部ミッションケース25の入力側と連動連結し、前部ギヤケース30からの旋回用の動力を合成可能としている。一方、後部ギヤケース33のもう一つの出力側に後部ミッションケース36に設けたサブギヤケース47と連動連結し、サブギヤケース47からPTO軸38を後方へ向けて突出させている。
【0017】
また、前記エンジン3の出力軸にはギヤケースを介して複数の油圧ポンプが接続され、エンジン3の始動時に同時に駆動される構成としている。詳述すると、
図3に示すように、エンジン3の前出力軸から前部ギヤケース30に動力が伝達され、該前部ギヤケース30に連動連結されている旋回用HST32の可変ポンプ40とチャージポンプ41が駆動される。一方、エンジン3の後出力軸から後部ギヤケース33に動力が伝達され、該後部ギヤケース33に連動連結されている、前記走行用HST34の可変ポンプ42とチャージポンプ43と、トランスファ潤滑用ポンプ44と、リフト用ポンプ45と、PTOクラッチ用ポンプ46と、が駆動される。但し、エンジン3から例えば一つのリフト用ポンプ45のみ駆動する場合には、ギヤケースを介さずに直接連結して駆動することも可能である。
【0018】
そして、前記可変ポンプ40とチャージポンプ41と可変ポンプ42とチャージポンプ43とトランスファ潤滑用ポンプ44とリフト用ポンプ45と
PTOクラッチ用ポンプ46は、エンジン3の始動時に駆動されるが、可変ポンプ40と可変ポンプ42はエンジン始動と同時に走行させることはないので、ニュートラル位置に操作され(または制御され)ており、圧油が送油されない軽負荷の状態となっている。他の複数の固定容量型のポンプの中で、最も容量の大きな油圧ポンプは作業用のリフト用ポンプ45としており、その入力軸45aには動力断接用のクラッチ50が介装され、エンジン3が設定温度以下の雰囲気ではクラッチ50を「断」とするように制御され、エンジン始動時の負荷を軽減して容易に始動できるようにしている。
【0019】
つまり、本実施形態では、ギヤケースに複数連結されている固定容量型のポンプの中で前記リフト用ポンプ45の容量が最も大きく設定されている。該リフト用ポンプ45の入力軸45aと後部ギヤケース33の出力軸33aとの間にはクラッチ50が介装されており、該クラッチ50はアクチュエータとなるモータ51の作動により「断」「接」が切り換えられ、該モータ51は制御手段60と接続されて制御される。
【0020】
前記後部ギヤケース33の出力軸33aには、伝動軸、ユニバーサルジョイントを介してサブギヤケース47に動力が伝達される。サブギヤケース47は後部ミッションケース36に付設され、サブギヤケース47にはクラッチ50を介して作業用油圧アクチュエータを作動させるためのリフト用ポンプ45が取り付けられるとともに、PTOクラッチ用ポンプ46が並列に取り付けられる。
【0021】
リフト用ポンプ45の吐出側には、分流弁57を介して、昇降制御バルブ48と傾斜制御バルブ49とサブ制御バルブ58が接続されている。該昇降制御バルブ48には油圧アクチュエータとなるリフトシリンダ52が配管を介して接続され、傾斜制御バルブ49には傾斜シリンダ53が配管を介して接続され、サブ制御バルブ58には本実施形態では接続されていないが、フロントローダやモア等の油圧アクチュエータと接続可能としている。昇降制御バルブ48と傾斜制御バルブ49とサブ制御バルブ58は電磁バルブより構成され、昇降制御バルブ48と傾斜制御バルブ49とサブ制御バルブ58のソレノイドは制御手段60と接続されている(
図6参照)。運転部4の昇降レバーの操作により昇降制御バルブ48が切り換えられてリフトシリンダ52が伸縮駆動されて、昇降連結機構2に連結した作業機(ロータリ耕耘装置)を所望の高さに昇降でき、ロータリ耕耘装置が耕深制御されている場合には、設定深さとなるようにリフトシリンダ52が伸縮駆動される。また、運転部4の傾斜角度設定ダイヤルを操作することにより傾斜制御バルブ49が切り換えられて傾斜シリンダ53が伸縮駆動され、所望の傾斜角度に傾倒でき、水平制御されている場合には、機体が傾斜すると傾斜制御バルブ49が切り換えられて傾斜シリンダ53が伸縮駆動されて、作業機を水平に保つように制御される。前記サブ制御バルブ58は外部取り出し用の油圧バルブであり、フロントローダ等のアタッチメントを装着した場合に、サブ制御バルブ58の出力ポートに配管を介して油圧シリンダや油圧モータとうの油圧アクチュエータと接続して、サブ制御バルブ58を切り換えることでアタッチメントを作動可能としている。
【0022】
前記PTOクラッチ用ポンプ46の吐出側はPTO切換バルブ54を介してPTOクラッチ55と潤滑油路56とに接続されている。PTO切換バルブ54は電磁バルブより構成され、PTO切換バルブ54のソレノイドは制御手段60と接続されている。エンジン3が作動されると、PTOクラッチ用ポンプ46が駆動され、運転部4のPTO「入」操作が行われると、PTO切換バルブ54が切り換えられてPTOクラッチ55に圧油が送油されて、PTOクラッチ55が「接」となり、PTO軸38が回転駆動され、その余剰圧油が潤滑油路56に送油される。PTO「切」操作が行われると、PTO切換バルブ54が切り換えられてPTOクラッチ55が「断」となる。
【0023】
次に、前記クラッチ50をモータ51により作動させるための構成について、
図4、
図5より説明する。前記サブギヤケース47の前面には、前記クラッチ50を収納するクラッチケース70が固設され、該クラッチケース70の前面にリフト用ポンプ45が固設されている。前記クラッチケース70の上面から上方にクラッチ50を断接操作するためのクラッチ軸71が突出され、該クラッチ軸71上部にクラッチアーム72の一端が固設されている。該クラッチアーム72の他端の上部に操作カム73と当接するローラ74が回転自在に支持されている。クラッチ50は多板式のクラッチで構成され、通常(アクチュエータが作動されない状態)では「接」とされ、サブギヤケース47の出力軸47a上に設けた摩擦板とリフト用ポンプ45の入力軸45a(
図3)上に設けた摩擦板がバネ等の付勢部材により圧接されて動力が伝達される。アクチュエータの作動によりクラッチアーム72が回動されてクラッチ軸71が回動されると、クラッチケース70内のクラッチ軸71上に設けたフォークが回動され、出力軸47a上の摩擦板と入力軸45a上の摩擦板が離間され、動力の伝達が絶たれて「断」となる。ただし、クラッチ50は摩擦板式に限定するものではなく、噛み合い式等であってもよい。
【0024】
前記操作カム73はカム軸76の下端に偏心して固設され、操作カム73は前記ローラ74の外周面と当接可能にローラ74と略同じ高さ位置に配設される。前記カム軸76は上下中途部が支持ボス83に回転自在に支持され、支持ボス83はクラッチケース70上に固設されたブラケット75に支持ステー84を介して支持されている。カム軸76の上部は位置調整部61、減速ギヤボックス85を介してモータ51と連動連結される。但し、減速ギヤボックス85を設けずにモータ51より直接駆動する構成とすることもできる。こうして、モータ51の作動により位置調整部61を介してカム軸76が回転されると、操作カム73が回転されてローラ74を介してクラッチアーム72を回転させ、クラッチ50を「断」とすることができる。
【0025】
前記カム軸76とモータ51との間に介装された位置調整部61は、モータ51の出力が伝達される減速ギヤボックス85の出力軸85aとカム軸76との間で、組立誤差等によって発生する軸心のズレを吸収するものであり、組立調整作業を省き、作動時に無理な力がかからずカム軸76をスムーズに回転できるようにするものである。
【0026】
位置調整部61は、カム軸76の上部に一端が固定される第一アーム77と、出力軸85aの下部に一端が固定される第二アーム78と、第一アーム77の他端と第二アーム78の他端を連結するピン79から構成される。第一アーム77と第二アーム78は略同じ長さに構成され、第一アーム77の他端に長手方向と平行に長孔77aが開口され、第二アーム78の他端にピン79が下方に突設して設けられる。そして、位置調整部61の組立時には、カム軸76の上方に出力軸85aが軸心が略一致するように減速ギヤボックス85(モータ51)がブラケット75に固定され、ピン79を長孔77aに挿入することで第一アーム77と第二アーム78が連結される。但し、第一アーム77にピン79を、第二アーム78に長孔を設けてもよい。こうして、カム軸76と出力軸51aの軸心がわずかにずれていてもピン79が長孔77a内で移動して誤差を吸収することができ、モータ51を作動させて出力軸85aを回動したとき、カム軸76に無理な力がかかることなく略同期して回動させることができるようにしている。
【0027】
また、モータ51に故障や異常が発生した非常時に、前記クラッチアーム72を手動で回動してクラッチ50「断」とすることができる、手動操作手段62が前記操作カム73の近傍に設けられている。手動操作手段62は、前記クラッチアーム72の側面に当接可能に配設される解除アーム80と、該解除アーム80の一端を固設するアーム軸81と、該アーム軸81の上部を回転時自在に支持する上支持板82等により構成される。手動操作手段62はブラケット75上における前記操作カム73と同じ側のクラッチアーム72の側方に配置される。アーム軸81は下部がブラケット75に開口した支持孔に回転自在に支持され、上部が上支持板82の先端に回転自在に支持される。そして、アーム軸81の上下中途部には、操作孔81aが直径(水平)方向に貫通開口される。操作孔81aはドライバーなどの工具を挿入できる大きさに構成している。操作孔81aの下部に解除アーム80の一端が固設され、解除アーム80とクラッチアーム72が略同じ高さで近接して配設される。こうして、モータ51が故障した場合等の非常時において、クラッチ50を「断」に切り換えることができず、エンジン3を始動することができないときには、前記操作孔81aにドライバーなどを差し込んで、アーム軸81を手動で回動することで、解除アーム80が回動され、解除アーム80の先端側面がクラッチアーム72の側面に当接して押されてクラッチアーム72が回動され、クラッチ50を「断」とすることができる。従って、エンジン始動時にアーム軸81を手動で回動することにより、リフト用ポンプ45は駆動されることがなく、負荷が軽減されて容易にエンジン3を始動することができる。
【0028】
また、前記クラッチ50と操作カム73との間には、クラッチ50の「接」を徐々に行わせるディレイ機構が設けられている。このディレイ機構は操作カム73がクラッチアーム72と当接する外周の外形形状(操作カム73のプロフィル形状)によって決められる。つまり、クラッチ50を「断」から「接」とする」操作カム73の回動範囲において、徐々に操作カム73の当接部の半径が小さくなるように構成され、半クラッチとなる部分が設けられて徐々に「接」となってリフト用ポンプ45が急に回転駆動することを防止している。つまり、クラッチ50の「接」時にエンジン3に大きな負荷がかかったり、衝撃を与えることを防止している。なお、ディレイ機構は、操作カム73のプロフィル形状を変更する構成の代わりに、クラッチ50の摩擦板を圧接する付勢部材となる戻しバネを二重としたり、バネ力の異なるバネを複数組み合わせることにより構成することもできる。
【0029】
また、操作カム73にクラッチ50のディレイ機構を設ける代わりに、前記モータ51を制御する制御手段60に、クラッチの「接」を徐々に行わせるディレイ手段60aを設けることもできる。つまり、ディレイ手段60aはクラッチ50の「接」を徐々に行わせるためにモータ51の時間当たりの回転数を減少させて、クラッチアーム72の回動速度を減少させるのである。こうして、クラッチ50は急激に「接」とならず、リフト用ポンプ45が急に作動することがなくなり、操作手段95が上昇側に操作されていてもリフトシリンダ52が急に作動して作業機が上昇することもないのである。
【0030】
次に、制御構成について、
図6より説明する。前記アクチュエータとなるモータ51はクラッチ50を切り換える駆動源となるものであり、制御手段60と接続されて制御される。制御手段60には、エンジン3に関する温度を検知する温度検知手段が接続される。エンジン3に関する温度とは、エンジン3の温度、エンジン3に付設される付属品としての発電機や油圧ポンプや冷却ポンプやガバナやコントローラ等の温度、エンジン周囲温度、エンジン3に連動連結されるトランスミッションやギヤケース等の動力伝達部材の温度等である。前記エンジン3の温度には、冷却水の温度や、潤滑油の温度や、吸気温度や、排気温度や、供給燃料温度や、オイルパンの表面温度等を含む。本実施形態の温度検知手段として冷却水温度を検知する水温センサ90が制御手段60に接続されている。
【0031】
制御手段60には、エンジン3の回転数検知手段となる回転数センサ91が接続されている。制御手段60は低温始動制御時において、エンジン回転数が解除設定回転数以上となると、クラッチ50を「接」とするように制御する。この解除設定回転数は、制御手段60に接続された解除設定回転数変更手段92により変更可能としている。制御手段60には、表示手段93が接続されている。表示手段93はエンジン回転数やエラー等を表示するとともに、前記解除設定回転数の値や低温始動制御が行われているか否か(または、前記クラッチ50の「断」「接」の状態)を表示する。表示手段93は運転部4に設けられている。こうして、作業者は、低温始動制御が行われているかどうかが容易に認識でき、低温始動制御が行われている時に、油圧リフトや作業機を作動できないことも容易に認識できるようになる。制御手段60には低温始動制御を実行するか禁止するかを選択する低温始動制御選択手段96が接続されている。エンジン始動と同時に作業機を作動させたい場合や作業機を昇降させたい場合等では、低温始動制御選択手段96をオフとするのである。
【0032】
制御手段60には、エンジン始動手段となるキースイッチ等で構成される始動スイッチ97やセルモータ98が接続される。エンジン3を始動させるときに始動スイッチ97を操作し、セルモータ98を作動させる。制御手段60はエンジン始動後には図示しない燃料噴射装置等を制御して、作業者が設定した設定回転数となるように制御する。制御手段60には、負荷検知手段60bが設けられ、負荷増減に応じて設定回転数となるように燃料噴射量を制御している。負荷は設定回転数と実回転数の差より演算することもでき、負荷の検知手段は限定するものではない。
【0033】
また、制御手段60には操作手段95が接続される。操作手段95は回転数設定レバー(アクセルればー)や、変速レバーや、PTOレバーや、昇降レバーや、耕深設定ダイヤルや、傾斜角度設定ダイヤル等であり、それぞれの回動角度や操作量が検知されて操作手段95に入力される。制御手段60には前記昇降制御バルブ48、傾斜制御バルブ49、PTO切換バルブ54、サブ制御バルブ58と接続され、運転部4に設けた操作手段95の操作に応じて切り換えられる。制御手段60には、リフトアームの位置を検出するリフト位置センサ99と接続され、制御手段60は操作手段95により設定した位置(高さ)となるように昇降制御バルブ48を切り換える。制御手段60には、作業機の傾斜を検出する傾斜センサ94と接続され、制御手段60は操作手段95により設定した傾斜となるように傾斜制御バルブ49を切り換える。
【0034】
次に、低温始動制御について、
図7より説明する。エンジン3を始動させるために、始動スイッチ97をオンすると(S1)、操作手段95は、低温始動制御選択手段96がオン(実施)に切り換えられているか判断し(S2)、オフである場合にはセルモータ98を作動させてエンジン3を始動させる(S3)。このとき低温であれば始動できない場合がある。始動後は設定回転となるように通常の回転数制御が行われる(S3)。
【0035】
ステップS2において、オンの(低温始動制御を行う)場合、ステップS11に移行し、水温センサ90により水温T1を検出し(S11)、水温T1が設定温度T0以上であるか判断する(S12)。なお、水温に限定するものではなく、油温(潤滑油または作動油)や周囲温度等を検知して低温であるか判断してもよい。水温T1が設定値T0以上である場合セルモータ98を作動させてエンジン3を始動させ(S13)、負荷を検出する(S14)。負荷が設定値以上かどうか判断し(S15)、設定値以上の場合、モータ51を作動させクラッチ50を「断」として(S16)、ステップ14に戻る。負荷が設定値未満の場合、クラッチ50を「接」として(S17)、通常のエンジン運転制御を行う(S18)。これは、作業中過負荷でエンストしそうになった時、例えば、牽引作業中や防除作業中に登り坂にさしかかったときや、耕耘作業中に深く耕耘しすぎた場合等では、クラッチ50を「断」として、リフト用ポンプ45の駆動を停止し、その動力を走行や作業に回すことができて、エンストを回避できるのである。
【0036】
ステップ12において、水温T1が設定値T0以上でない(水温T1が設定値T0未満)場合、低温と判断しモータ51を作動させてクラッチ50を「断」とし(S21)、セルモータ98を作動させてエンジン3を始動させる(S22)。そして、エンジン3が始動された後に、現在のエンジン3の回転数N1と低温始動制御を解除する解除設定回転数Nを読み込んで(S23)、回転数N1と解除設定回転数Nを比較し(S24)、回転数N1が解除設定回転数N未満の場合、エンジン3が暖まっておらず負荷が大きい状態であるため、クラッチ50を切った状態でエンジン3を作動させ、回転数N1が解除設定回転数Nよりも大きくなると、クラッチ50を「接」とし(S25)、エンジン3は通常運転に制御される(S26)。この解除設定回転数は解除設定回転数変更手段92により変更可能であり、本実施形態では
アイドリング回転数に設定している。つまり、
アイドリング回転数まで上昇すると、クラッチ50を「接」としてエンジン3を通常運転する。ただし、回転数をクラッチ50の切換判断の対象とする代わりに、水温や油温や負荷とすることも、これら複数を組み合わせてもよい。例えば、ステップS23で水温を検出し、ステップS24で検出した水温が設定温度以上であるか判断し、設定温度以上となるとクラッチ50を「接」としたり、ステップS23で負荷を検出し、ステップS24で検出した負荷が設定負荷以下であるか判断し、設定負荷以下となるとクラッチ50を「接」としたり、または、ステップS24でエンジン回転数が設定回転以上、かつ、油温が設定温度以上となった場合にクラッチ50を「接」としたりすることができる。
【0037】
前記クラッチ50が「接」となると、リフト用ポンプ45が作動されるため、リフトシリンダ52が駆動されて、昇降連結機構2に装着した作業機が意図せず上昇または下降することがある。これを防止するために、次のように制御している。クラッチ50を「接」とした後に(S25)、リフト位置センサ99により作業機の高さを検知する。リフト位置センサ99はリフトシリンダ52に設けてそのストロークを検知しても、昇降連結機構2のリフトアームの回動角度を検出してもよい。また、運転部4の操作手段95となる昇降レバーの操作位置または設定ダイヤルの値を読み込み(S27)、リフト位置センサ99の検出値と操作手段95の操作位置の値と比較して一致しているか判断する(S28)。一致しているとそのままの状態を保持して操作待ちとなり、作業者が操作手段95を操作すると、昇降制御バルブ48が切り換えられて作業機を昇降させる(S30)。
【0038】
リフト位置センサ99の検出値と操作手段95の操作位置の値が一致していなければ、リフト停止とする(S31)。つまり、リフト位置センサ99の検出値と操作手段95の操作位置の値が一致していなければ、制御手段60は一致させようとバルブを切り換え制御を行うため、不意に動くことになる。この意図せず作業機の昇降を防止するため、クラッチ「接」直後においてリフト位置センサ99の検出値と操作手段95の操作位置の値が一致しない場合は昇降制御バルブ48を作動させないようにする。ただし、下降は禁止し、上昇は可能とするように制御することもできる。また、これを選択できるようにすることもできる。なお、前記昇降制御バルブ48の制御は、傾斜制御バルブ49及びサブ制御バルブ58においても同様に制御可能である。サブ制御バルブ58の場合、例えば、機体前部にフロントローダを装着し、フロントローダの高さを設定する手段と、フロントローダの高さを検知する手段を制御手段60と接続する。そして、エンジン始動時に、前述の制御を行うのである。以上の制御は、再始動のときも同様に制御される。
【0039】
以上の如く、エンジン3の出力軸から動力伝達手段を介して油圧ポンプに動力が伝達される構成において、エンジン始動手段と、エンジン3に関する温度を検知する温度検知手段と、動力の伝達を断接するクラッチ50と、前記クラッチ50を断接駆動するアクチュエータとなるモータ51と、前記アクチュエータとなるモータ51を制御する制御手段60とを備え、制御手段60はエンジン始動時にエンジン3の温度が設定値よりも低いときにアクチュエータとなるモータ51を作動させて前記クラッチ50を断とし、前記クラッチ50はエンジン3の出力軸と油圧ポンプ45の入力軸45aとの間の動力伝達経路上に配置されるので、エンジン3を始動する場合、油圧ポンプ45による負荷が動力伝達経路から切り離されて負荷を軽減し、容易に始動することができる。よって、油圧ポンプ45からの吐出油をバイパスさせる油路や切換バルブ等を設ける必要がなく、作動油の流量を減少させるような制御も不要となり、簡単に負荷を大きく軽減できて、確実に始動できる。
【0040】
前記エンジン3の出力軸と油圧ポンプの間にギヤケースが介装され、該ギヤケース30・33・47には複数の油圧ポンプ40・41・42・43・44・45・46・が取り付けられ、前記クラッチ50は、複数の油圧ポンプのうち最も容量が大きい油圧ポンプとなるリフト用ポンプ45とサブギヤケース47との間に配置されるので、低温時にエンジンを始動する場合、負荷の大きい油圧ポンプが切り離されるため、容易に始動することができる。また、始動時に必要な油圧源は停止されないので、安全かつ適正な始動ができる。
【0041】
また、前記アクチュエータはモータ51で構成され、モータ51からの出力軸85aには位置調整部61を介して操作カム73が取り付けられて回動可能とし、該操作カム73は前記クラッチ50を「断」「接」作動させるクラッチアーム72と当接されるので、モータ51と操作カム73との間で製造誤差や組立誤差等が生じても位置調整部61において吸収することができて、モータ51を作動させたときに無理な力がかかり変形等が生じることがなく保護でき、確実にクラッチ50を「断」「接」作動させることができ、組立後の調整作業をなくすことができる。また、モータ51によりクラッチアーム72を直接駆動する構成に比べて、製造・組立精度を低くでき、コスト低減化が図れる。また、操作カム73でクラッチアーム72を回動してクラッチ50を断接するので、モータ51の容量を小さくでき、既存のパワーモータを使用することができるためコスト低減化が図れる。
【0042】
前記クラッチ50と操作カム73との間には、クラッチ50の「接」を徐々に行わせるディレイ機構が設けられるので、クラッチ50を「接」とするときの衝撃を小さくでき、リフト用ポンプ45が急に作動することがなくなり、作業機の不意な急上昇もなく、油圧ポンプの耐久性を向上できる。そして、クラッチ50の「接」を徐々に行わせるタイミングは、ディレイ機構を構成する操作カム73のプロフィル形状、または、クラッチ50の戻しバネの変更で容易に実現できる。
【0043】
また、前記モータ51を制御する制御手段60は、クラッチの「接」を徐々に行わせるディレイ手段60aが備えられるので、制御手段60のプログラムにより、安価で容易にクラッチ50を徐々に「接」とすることができ、リフト用ポンプ45が急に作動することもないのである。
【0044】
また、前記操作カム73近傍には、手動操作手段62が設けられるので、クラッチ操作部を集中して配置できて位置が分かりやすく、操作カム73とは切り離された別の操作手段で、言い換えれば、モータ51の駆動伝達系とは別の経路で操作でき、故障等の緊急時に、手動操作でクラッチ50を「断」としてエンジン3を始動させることができる。
【0045】
前記エンジン3の回転数を検知する回転数検知手段となる回転数センサ91が備えられ、前記クラッチ50はエンジン回転数がアイドリング回転数と略同じ設定回転数で「接」とされるので、エンジン3が安定した回転数でクラッチ50は「接」となり、油圧ポンプ45を無理なく作動でき、油圧アクチュエータとなるリフトシリンダ52を確実に作動させることができる。
【0046】
前記クラッチ50を「接」とするエンジン3の設定回転数を変更可能とする解除設定回転数変更手段92を設けたので、オペレータの感覚に合わせて、「接」とするタイミングを設定して操作性・作業性を向上できる。そして、前記クラッチ50の「断」「接」の状態を表示する表示手段93を運転部4に設けるので、低温始動時の制御が行われているか、クラッチ50が「断」となって油圧ポンプが停止中であるか、モータ51や油圧ポンプ等が故障状態であるか等を、容易に認識することができる。
【0047】
また、エンジン3からの動力により駆動される複数の油圧ポンプと、前記複数の油圧ポンプのうち作業用油圧ポンプとなるリフト用ポンプ45の入力軸側に配置されて動力の断接を行うクラッチ50と、前記エンジン3に関する温度を検知する温度検知手段(水温センサ90または油温センサ)と、前記クラッチ50を作動するアクチュエータとなるモータ51と、前記アクチェータとなるモータ51を制御する制御手段60とを備え、前記制御手段60は、温度検知手段の検出値が設定温度以下の低温時の場合、エンジン始動時に、アクチュエータとなるモータ51を作動させて前記クラッチを「断」とするので、回転負荷が大きい油圧ポンプを駆動させず、エンジン始動時の負荷を軽減して、容易に始動できるようになる。そして、エンジン始動時の負荷が低減されるので、エンジンの小型化が可能となり、機体のコンパクト化やコスト低減化が可能となる。
【0048】
前記制御手段60に負荷検知手段60bが設けられ、前記エンジン3の始動後において、制御手段60は、前記エンジン負荷が設定値以下となったとき、アクチュエータとなるモータ51を作動させて前記クラッチ50を「接」とするので、エンジン3の負荷が軽減し安定回転となった状態でクラッチ50が「接」とされ、エンジン3の負担が抑えられ、エンジン3の耐久性を向上でき、油圧ポンプを確実に駆動できる。
【0049】
前記制御手段にエンジン回転数検知手段となる回転数センサ91が設けられ、前記エンジン3の始動後において、制御手段60は、前記エンジン回転数が設定回転数以上となったとき、アクチュエータとなるモータ51を作動させて前記クラッチを「接」とするので、エンジン3が安定した回転となった後で油圧ポンプを作動することになり、エンジン3の耐久性を向上でき、油圧ポンプを確実に駆動できる。
【0050】
前記エンジン3の始動後において、制御手段60は、前記エンジン負荷が設定値以下、かつ、エンジン回転数が設定回転数以上となったときアクチュエータとなるモータ51を作動させて前記クラッチ50を「接」とするので、エンジン3が安定した回転となった後で油圧ポンプを作動することになり、始動時の負担が更に軽減されて、エンジン3の耐久性を向上でき、油圧ポンプを確実に駆動できる。
【0051】
前記エンジン3の始動後において、制御手段60は、前記温度検知手段の検出値が設定温度以上となったとき、アクチュエータとなるモータ51を作動させて前記クラッチ50を「接」とするので、エンジン3が暖まり、安定した回転となった後で油圧ポンプを作動することになり、エンジン3の耐久性を向上でき、油圧ポンプを確実に駆動できる。
【0052】
前記制御手段60には作業機のリフト位置検知手段と昇降操作位置検知手段と油圧アクチュエータへの送油を切り換える制御バルブと接続され、前記クラッチ50が「接」となった時、制御手段は、作業機のリフト位置と昇降操作位置を検出して比較し、リフト位置と操作位置が一致しない場合、油圧アクチュエータを制御する昇降制御バルブ48の作動を停止するので、クラッチ50が「接」となったと同時に、リフトシリンダ52が作動することがなく、意図せず作業機が昇降することもなく、周囲の機器等に損傷を及ぼすことがない。
【0053】
前記クラッチ50が「接」となった時、制御手段60は、作業機のリフト位置と昇降操作位置を検出して比較し、リフト位置と操作位置が一致しない場合、油圧アクチュエータによるリフト下降作動は禁止し、上昇作動は許可するので、クラッチ50が「接」となったと同時に、作業機が下降することがなく、誤って作業機の下方に位置した機器等を押しつぶすことがなく、また、クラッチ50が「接」となったと同時に、作業機が設定位置にない場合上昇されるので、作業開始の準備がスムーズに行える。
【0054】
前記温度検知手段は、冷却水温度または潤滑油または作動油の温度を検知するので、エンジン3が低温で始動が容易にできるかを適切に判断することが可能となる。前記制御手段60には、低温時エンジン始動制御の実施と不実施を選択する低温始動制御選択手段96が接続され、任意に低温時エンジン始動制御を選択可能としたので、エンジン始動と同時に油圧アクチュエータを作動させるか、不要で作動させないかを選択でき、作業に応じて選択することができる。