特許第5989493号(P5989493)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989493
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】オイルシール
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/3204 20160101AFI20160825BHJP
   F16J 15/3296 20160101ALI20160825BHJP
【FI】
   F16J15/3204 201
   F16J15/3296
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-220223(P2012-220223)
(22)【出願日】2012年10月2日
(65)【公開番号】特開2014-70728(P2014-70728A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年9月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(72)【発明者】
【氏名】中川 岳洋
【審査官】 杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−115375(JP,A)
【文献】 特開平07−208610(JP,A)
【文献】 実開昭63−175355(JP,U)
【文献】 実開平06−073545(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0127791(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/00 − 15/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングの軸孔内周に固定されるリップシール部材および前記軸孔に挿通する回転軸に固定されるスリンガーの組み合わせよりなり、機内の密封流体が機外へ漏洩するのを抑制するとともに機外のダストが機内へ浸入するのを抑制するオイルシールであって、
前記スリンガーは、前記回転軸に嵌合される筒状部の機内側端部に径方向外方へ向けてフランジ部を一体成形したものであって、前記フランジ部の機外側端面に径方向外方へ向けてポンピング作用をなすネジ溝を備え、
前記リップシール部材は、前記スリンガーにおけるフランジ部の機外側端面に摺動可能に密接して前記密封流体をシールするメインリップと、前記メインリップの機外側に配置されるとともに前記スリンガーにおける筒状部の外周面に摺動可能に密接して前記ダストの侵入を抑制するダストリップと、前記メインリップおよび前記ダストリップの中間に配置される中間リップとを備え、
前記ダストリップは、ゴム状弾性体よりなり、前記スリンガーにおける筒状部の外周面に対する接触部に突起部を備えてこの突起部をもって前記スリンガーに摺動可能に密接し、前記突起部は、円周上一部に切欠部を設けた環状突起よりなり、
前記中間リップは、ゴム状弾性体よりなり、そのリップ端を機内側へ向け、前記リップ端をもって全周に亙って前記スリンガーにおける筒状部の外周面に摺動可能に密接し、さらに前記スリンガーにおける筒状部の外周面に対する対向部に第2突起部を備え、前記第2突起部は、前記スリンガーにおける筒状部の外周面との間に微小間隙を形成して前記ダストが前記リップ端のほう通過しにくくする構造を備えることを特徴とするオイルシール。
【請求項2】
請求項1記載のオイルシールにおいて、
前記ダストリップに備えられる突起部は、円周上一部に切欠部を設けた環状突起が複数同心円状に設けられ、互いに隣り合う前記環状突起における前記切欠部は円周上変位して配置されていることを特徴とするオイルシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール技術に係る密封装置の一種であるオイルシールに関する。本発明のオイルシールは例えば、自動車(エンジン)関連の分野で用いられ、または一般産機の分野などで用いられる。
【背景技術】
【0002】
図5に示すように従来から、ダストリップとしてファブリック51を用いるオイルシールが知られており、このオイルシールは例えば、自動車エンジンの分野においてクランクシャフトの回りをシールするために用いられる。
【0003】
この従来技術において、ファブリック51はその初期的な内径寸法(スリンガー52挿入前の内径寸法)dをスリンガー52のファブリック摺動部分の外径寸法dより小さく設定され、これによりファブリック51は締め代を有し、スリンガー52が挿入されるとスリンガー52に沿ってファブリック51が拡がり、スリンガー52との接触幅を確保する構造となっている。
【0004】
したがってここでは、ファブリック51が円周上均一に押し拡げられるようにファブリック51の締め代が大きく設定されているため、またファブリック51自身の伸び荷重が高く、緊迫力が高くなるため、ファブリック51の摺動トルクが高く、燃費向上の妨げとなっている。
【0005】
また、ファブリック51は通気性を備えるため、以下の利点および難点を有している。
利点・・・・
ファブリック51およびメインリップ53間の空間54の圧力が低下する状況が発生する場合、ファブリック51が機外Bのエア(大気)を取り込む(通過させる)ことにより圧力の低下が抑制される。したがってファブリック51およびメインリップ53間の空間54の圧力が低下してメインリップ53がスリンガー52にベタ当たりするのを抑制することができる(ファブリックのエア取り込みによる利点)。
難点・・・・
オイルシール出荷時にエアリーク検査を行なうことがあり、検査は一般に機内側から正圧をかけてファブリック51側でエア漏れ量を測定することにより行なわれる。この場合、上記従来技術ではファブリック51がエアを放出する(通過させる)ため、オイルシールが正常であっても漏れ量がゼロとならない。したがって漏れ許容値を設定したうえで検査を行なう必要があり、漏れしきい値をゼロ設定とする簡易な検査を行なうことができない(ファブリックのエア放出による難点)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−115375号公報
【特許文献2】特開平7−208610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の点に鑑みて、ダストリップとしてファブリックを用いる場合と比較して摺動トルクを低減させることができ、しかもファブリックを用いなくてもファブリックのエア取り込みによる利点と同等の効果を実現することができ、さらにファブリックのエア放出による難点を解消することができるオイルシールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1によるオイルシールは、ハウジングの軸孔内周に固定されるリップシール部材および前記軸孔に挿通する回転軸に固定されるスリンガーの組み合わせよりなり、機内の密封流体が機外へ漏洩するのを抑制するとともに機外のダストが機内へ浸入するのを抑制するオイルシールであって、前記スリンガーは、前記回転軸に嵌合される筒状部の機内側端部に径方向外方へ向けてフランジ部を一体成形したものであって、前記フランジ部の機外側端面に径方向外方へ向けてポンピング作用をなすネジ溝を備え、前記リップシール部材は、前記スリンガーにおけるフランジ部の機外側端面に摺動可能に密接して前記密封流体をシールするメインリップと、前記メインリップの機外側に配置されるとともに前記スリンガーにおける筒状部の外周面に摺動可能に密接して前記ダストの侵入を抑制するダストリップと、前記メインリップおよび前記ダストリップの中間に配置される中間リップとを備え、前記ダストリップは、ゴム状弾性体よりなり、前記スリンガーにおける筒状部の外周面に対する接触部に突起部を備えてこの突起部をもって前記スリンガーに摺動可能に密接し、前記突起部は、円周上一部に切欠部を設けた環状突起よりなり、前記中間リップは、ゴム状弾性体よりなり、そのリップ端を機内側へ向け、前記リップ端をもって全周に亙って前記スリンガーにおける筒状部の外周面に摺動可能に密接し、さらに前記スリンガーにおける筒状部の外周面に対する対向部に第2突起部を備え、前記第2突起部は、前記スリンガーにおける筒状部の外周面との間に微小間隙を形成して前記ダストが前記リップ端のほう通過しにくくする構造を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2によるオイルシールは、上記した請求項1記載のオイルシールにおいて、前記ダストリップに備えられる突起部は、円周上一部に切欠部を設けた環状突起が複数同心円状に設けられ、互いに隣り合う前記環状突起における前記切欠部は円周上変位して配置されていることを特徴とする。
【0010】
上記構成を備える本発明のオイルシールにおいては、ダストリップがファブリックではなくゴム状弾性体よりなるものとされ、ゴム状弾性体よりなるダストリップは薄肉に成形可能であるとともに弾性変形しやすいため、ファブリックと同等の締め代でありながら緊迫力が低減される。またゴム状弾性体よりなるダストリップのスリンガーに対する接触部に突起部が設けられているため、スリンガーとの固体接触面積が減少される。したがってこれらのことからダストリップの摺動トルクを低減させることが可能とされる。
【0011】
また、本発明において、ファブリックのエア取り込みによる利点と同等の効果は、以下のように実現される。
【0012】
すなわち本発明においては、スリンガーにおけるフランジ部の機外側端面に径方向外方へ向けてポンピング作用をなすネジ溝が設けられているため、機内の密封流体に対して優れたシール効果が発揮されるが、このようなネジ溝が設けられると軸の回転時、ネジ溝のポンピング作用に伴ってメインリップおよび中間リップ間の空間の圧力が低下しやすく負圧が発生しやすく、メインリップがスリンガーにベタ当たりしやすい。
【0013】
これに対しては、ダストリップに設けた突起部が円周上一部に切欠部を設けた環状突起よりなるため、機外のエア(大気)が切欠部を経由してダストリップおよび中間リップ間の空間へ流入する。また中間リップはそのリップ端をもって全周に亙ってスリンガーに密接するが、リップ端を機内側へ向けているため、ダストリップおよび中間リップ間の空間へ機外のエア(大気)が流入するとその圧力によってリップ端が押し拡げられ、機外のエア(大気)が中間リップおよびメインリップ間の空間へ流入する。したがってこのような経路で機外のエア(大気)が中間リップおよびメインリップ間の空間へ流入するため、中間リップおよびメインリップ間の空間の圧力が極端に低下したり負圧が発生したりするのを抑制することができ、これによりメインリップがスリンガーにベタ当たりするのを抑制することが可能とされる。
【0014】
また、本発明において、ファブリックのエア放出による難点は、以下のように解消される。
【0015】
すなわち本発明においては、上記したようにスリンガーにおけるフランジ部の機外側端面に径方向外方へ向けてポンピング作用をなすネジ溝が設けられているため、機内の密封流体に対して優れたシール効果が発揮されるが、このようなネジ溝が設けられるとこのネジ溝を伝ってのエア流路が形成されるため、オイルシール出荷時にエアリーク検査を行なう場合、このエア流路を流れるエアが漏れとして検知されてしまう。
【0016】
これに対しては、メインリップおよびダストリップの間に中間リップが配置され、この中間リップはそのリップ端を機内側へ向け、リップ端をもって全周に亙ってスリンガーに密接するため、この中間リップがネジ溝を伝ってオイルシール内部へ入ってくるエアをダストリップに届かせることなく途中で堰き止めてシールする。したがってオイルシールが正常である場合、ダストリップ側でエア漏れは検知されないことになり、よってエア漏れのしきい値をゼロ設定とする簡易な検査を行なうことが可能とされる。
【0017】
また、ダストリップは機外のダストが機内へ浸入するのを抑制することを本来の機能とするところ、本発明においてはダストを以下のようにシールする。
【0018】
すなわち本発明においては、ダストリップが突起部を備え、突起部は円周上一部に切欠部を設けた環状突起よりなるため、切欠部からダストが浸入する可能性があるところ、メインリップおよびダストリップの間に中間リップが配置され、中間リップは第2突起部を備え、第2突起部はスリンガーとの間に微小間隙を形成してダストがリップ端のほう通過しにくくする構造を備えている。したがってこの第2突起部の微小間隙によるラビリンス構造により機外のダストが機内のほうへ浸入するのを抑制することが可能とされる。
【0019】
尚、上記したようにダストリップが備える突起部における切欠部は、ここからダストが浸入する可能性があるところ、円周上一部に切欠部を設けた環状突起を複数同心円状に設けるとともに互いに隣り合う環状突起における切欠部を円周上変位して配置すると、ここにダストを通過させにくくする迷路のごとき構造が設けられるため、これによってもダストを侵入させにくくすること可能とされる。この場合、ダストは切欠部を通過してもそこから円周上移動しなければ次の切欠部に達することができない。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0021】
すなわち、本発明においては以上説明したようにダストリップがファブリックではなく、薄肉に成形可能であるとともに弾性変形しやすいゴム状弾性体よりなるものとされるため、ダストリップの摺動トルクを低減させることが可能とされる。
【0022】
また、円周上一部に切欠部を設けた環状突起よりなる突起部を備えたダストリップと機外のエア(大気)圧力によって拡開可能な中間リップとの組み合わせによって機外のエア(大気)を中間リップおよびメインリップ間の空間に導入するため、中間リップおよびメインリップ間の空間の圧力が極端に低下したり負圧が発生したりするのを抑制することができ、これによりメインリップがスリンガーにベタ当たりするのを抑制することが可能とされる。
【0023】
また、オイルシール出荷時にエアリーク検査を行なう場合、中間リップがネジ溝を伝ってオイルシール内部へ入ってくるエアをダストリップに届かせることなく途中でシールするため、オイルシールが正常であればダストリップ側でエア漏れは検知されないことになる。したがってエア漏れのしきい値をゼロ設定とする簡易な検査を行なうことが可能とされる。
【0024】
また、メインリップおよびダストリップ間に中間リップが配置され、中間リップは第2突起部を備え、第2突起部はスリンガーとの間に微小間隙を形成してダストがリップ端のほう通過しにくくする構造を備えているため、この第2突起部の微小間隙によるラビリンス構造により機外のダストが機内のほうへ浸入するのを抑制することが可能とされる。
【0025】
更にまた、円周上一部に切欠部を設けた環状突起を複数同心円状に設けるとともに互いに隣り合う環状突起における切欠部を円周上変位して配置する場合にはその迷路のごとき構造により、ダストを一層侵入させにくくすること可能とされる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施例に係るオイルシールの要部断面図
図2】同オイルシールにおけるリップシール部材をスリンガーと組み合わせる前の状態を示す要部断面図
図3図1におけるC方向矢視図であって同オイルシールにおけるネジ溝の説明図
図4図2におけるD方向矢視図であって同オイルシールにおける突起部の説明図
図5】従来例に係るオイルシールの要部断面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施例に係るオイルシール1の要部断面を示しており、図2は同オイルシール1におけるリップシール部材11をスリンガー31と組み合わせる前の状態を示している。
【0029】
図1に示すオイルシール1は、ハウジング(図示せず)の軸孔内周に固定されるリップシール部材11と、前記軸孔に挿通する回転軸(図示せず)に固定されるスリンガー31との組み合わせよりなり、機内Aの密封流体が機外Bへ漏洩するのを抑制するとともに機外Bのダストが機内Aへ浸入するのを抑制する。
【0030】
スリンガー31は、金属材よりなり、回転軸の外周面に嵌合される筒状部31aの機内側端部に径方向外方へ向けてフランジ部31bを一体成形したものであって、フランジ部31bの機外側端面31cに、径方向外方へ向けてのポンピング作用をなすネジ溝32(図3参照)が設けられている。図3に示すようにネジ溝32は右4条ネジよりなり、すなわち内側(内径側)から外側(外径側)へかけて右回転で進む4等配の溝とされ、このようなネジ溝32がフランジ部31bにおける屈曲部31dから先端部31eへかけての範囲に設けられている。
【0031】
リップシール部材11は、取付環12と、この取付環12に被着されたゴム状弾性体13とを備えている。取付環12は、金属材よりなり、ハウジングの軸孔内周面に嵌合される筒状部12aの機外側端部に径方向内方へ向けてフランジ部12bを一体成形したものである。ゴム状弾性体13は、取付環12に被着された被着ゴム部14と、この被着ゴム部14に支持されてスリンガー31におけるフランジ部31bの機外側端面31cに摺動可能に密接して密封流体をシールするメインリップ(サイドリップ)15と、同じく被着ゴム部14に支持されてメインリップ15の機外側に配置されるとともにスリンガー31における筒状部31aの外周面に摺動可能に密接してダストの侵入を抑制するダストリップ16と、同じく被着ゴム部14に支持されてメインリップ15およびダストリップ16の中間に配置されるとともにスリンガー31における筒状部31aの外周面に摺動可能に密接する中間リップ17とを一体に備えている。
【0032】
このうちメインリップ15は、そのリップ端15aを機内側であって且つ径方向外方へ向けて斜めに設けられており、このリップ端15aをもってスリンガー31におけるフランジ部31bの機外側端面31cに摺動可能に密接する。
【0033】
ダストリップ16は、図2に示すようにスリンガー31との組み合わせ前の状態において、そのリップ端16aを径方向内方へ向けて薄肉の軸直角平面状に設けられており、スリンガー31と組み合わされるとその締め代により図1に示すように円筒状に拡がってリップ端16aを機外側(軸方向一方)へ向け、この状態でその内周面(接触部)をもってスリンガー31における筒状部31aの外周面に摺動可能に密接する。また図2の状態におけるダストリップ16の機内側端面には予め突起部18が設けられているため、ダストリップ16はこの突起部18をもってスリンガー31における筒状部31aの外周面に摺動可能に密接する。
【0034】
図4に示すように、突起部18は、円周上一部に切欠部20を設けた環状突起19により形成されている。円周上一部に切欠部20を設けた環状突起19は複数が同心円状に設けられ、互いに隣り合う環状突起19における切欠部20は円周上変位して配置されている。図4では1本の環状突起19につき切欠部20が円周上3箇所に等配状に設けられている。環状突起19の断面形状は断面三角形とされている。また図4では環状突起19が4本同心円状に設けられ、互いに隣り合う環状突起19における切欠部20が円周上60度変位して配置されている。
【0035】
中間リップ17は、そのリップ端17aを機内側であって且つ径方向内方へ向けて斜めに設けられており、このリップ端17aをもって全周に亙りスリンガー31における筒状部31aの外周面に摺動可能に密接する。またこの中間リップ17の内周面(対向部)に第2突起部21が設けられ、この第2突起部21はスリンガー31における筒状部31aの外周面との間に微小間隙を形成してダストがリップ端17aのほう通過しにくくする構造を備えている。第2突起部21は環状突起22により形成され、環状突起22は複数(例えば2本)が同心円状に設けられている。環状突起22の断面形状は断面三角形とされている。尚、図2に示す第2突起部21では円周上一部に切欠部23が設けられているが、このように切欠部23が設けられることにより中間リップ17はスリンガー31の筒状部31aに対する緊迫力が低減されている。
【0036】
上記構成のオイルシール1は例えば、自動車エンジンにおけるクランクシャフトの軸回りをシールするために用いられ、上記したように機内Aの密封流体(オイル)が機外Bへ漏洩するのを抑制するとともに機外Bのダストが機内Aへ浸入するのを抑制する。オイルシール1は上記構成を備えるため、以下の作用効果が発揮される。
【0037】
すなわち上記構成のオイルシール1においては、ダストリップ16がファブリックではなくゴム状弾性体よりなるものとされ、ゴム状弾性体よりなるダストリップ16は薄肉に成形可能であるとともに弾性変形しやすいため、ファブリックと同等の締め代でありながら緊迫力が低減される。またゴム状弾性体よりなるダストリップ16のスリンガー31に対する接触部に突起部18が設けられているため、スリンガー31との固体接触面積が減少される。したがってこれらのことからダストリップ16の摺動トルクを低減させることができる。
【0038】
また、上記構成のオイルシール1において、ファブリックのエア取り込みによる利点と同等の効果は、以下のように実現されている。
【0039】
すなわち上記構成のオイルシール1においては、スリンガー31におけるフランジ部31bの機外側端面31cに径方向外方へ向けてのポンピング作用をなすネジ溝32が設けられているため、機内Aの密封流体に対して優れたシール効果が発揮されるが、このようなネジ溝32が設けられると軸の回転時、ネジ溝32のポンピング作用に伴ってメインリップ15および中間リップ17間の空間41の圧力が低下しやすく負圧が発生しやすく、メインリップ15がスリンガー31にベタ当たりしやすい。
【0040】
これに対して上記構成のオイルシール1においては、ダストリップ16に設けた突起部18が円周上一部に切欠部20を設けた環状突起19よりなるため、機外Bのエア(大気)が切欠部20を経由してダストリップ16および中間リップ17間の空間42へ流入する。また中間リップ17はそのリップ端17aをもって全周に亙ってスリンガー31に密接するが、リップ端17aを機内側へ向けているため、ダストリップ16および中間リップ17間の空間42へ機外Bのエア(大気)が流入するとその圧力によってリップ端17aが押し拡げられ、機外Bのエア(大気)が中間リップ17およびメインリップ15間の空間41へ流入する。したがってこのような経路で機外Bのエア(大気)が中間リップ17およびメインリップ15間の空間41へ流入するため、中間リップ17およびメインリップ15間の空間41の圧力が極端に低下したり負圧が発生したりするのを抑制することができ、これによりメインリップ15がスリンガー31にベタ当たりするのを抑制することができる。
【0041】
また、上記構成のオイルシール1において、ファブリックのエア放出による難点は、以下のように解消されている。
【0042】
すなわち上記構成のオイルシール1においては、上記したようにスリンガー31におけるフランジ部31bの機外側端面31cに径方向外方へ向けてのポンピング作用をなすネジ溝32が設けられているため、機内Aの密封流体に対して優れたシール効果が発揮されるが、このようなネジ溝32が設けられるとこのネジ溝32を伝ってのエア流路が形成されるため、オイルシール1の出荷時にエアリーク検査を行なう場合、このエア流路を流れるエアが漏れとして検知されてしまう。
【0043】
これに対して上記構成のオイルシール1においては、メインリップ15およびダストリップ16間に中間リップ17が配置され、この中間リップ17はそのリップ17a端を機内側へ向け、リップ端17aをもって全周に亙ってスリンガー31に密接するため、この中間リップ17が、ネジ溝32を伝ってオイルシール1の内部へ入ってくるエアをダストリップ16に届かせることなく途中で堰き止めてシールする。したがってオイルシール1が正常である場合、ダストリップ16側でエア漏れは検知されないことになり、よってエア漏れのしきい値をゼロ設定とする簡易な検査を行なうことができる。
【0044】
また、ダストリップ16は機外Bのダストが機内Aへ浸入するのを抑制することを本来の機能とするところ、上記構成のオイルシール1はダストを以下のようにシールする。
【0045】
すなわち上記構成のオイルシール1においては、ダストリップ16が突起部18を備え、突起部18は円周上一部に切欠部20を設けた環状突起19よりなるため、切欠部20からダストが浸入する可能性があるところ、メインリップ15およびダストリップ16間に中間リップ17が配置され、中間リップ17は第2突起部21を備え、第2突起部21はスリンガー31との間に微小間隙を形成してダストがリップ端17aのほう通過しにくくする構造を備えている。したがってこの第2突起部21の微小間隙によるラビリンス構造により機外Bのダストが機内Aのほうへ浸入するのを抑制することができる。
【0046】
またこれに加えて上記構成のオイルシール1においては、ダストリップ16に設けた突起部18について、円周上一部に切欠部20を設けた環状突起19が複数同心円状に設けられるとともに互いに隣り合う環状突起19における切欠部20が円周上変位して配置され、これによりダストを通過させにくくする迷路のごとき構造が設けられるため、これによってもダストを侵入させにくくすることができる。この場合、ダストは切欠部20を通過してもそこから円周上移動しなければ次の切欠部20に達することができず、よってダストが侵入しにくくなるものである。
【符号の説明】
【0047】
1 オイルシール
11 リップシール部材
12 取付環
12a,31a 筒状部
12b,31b フランジ部
13 ゴム状弾性体
14 被着ゴム部
15 メインリップ
15a,16a,17a リップ端
16 ダストリップ
17 中間リップ
18 突起部
19,22 環状突起
20,23 切欠部
21 第2突起部
31 スリンガー
31c 機外側端面
31d 屈曲部
31e 先端部
32 ネジ溝
A 機内
B 機外
図1
図2
図3
図4
図5