【実施例】
【0015】
以下に、回転電機のステータ用のバスリングにかかる実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の回転電機のステータ1用のバスリング4U,4V,4Wは、
図1、
図2に示すごとく、ステータコア2のスロット21にU相、V相及びW相の3相のコイル3U,3V,3Wを配置して形成される回転電機のステータ1において、各相のコイル3U,3V,3Wごとに複数の単コイル31を並列に接続して、該各相のコイル3U,3V,3Wの一端側を結束したケーブル端子部42を形成するためのものである。
【0016】
図3に示すごとく、各相のバスリング4U,4V,4Wは、ステータ1の軸方向端部(3相のコイル3U,3V,3Wのコイルエンド部)に配置され、略同一の断面積が連続し、各単コイル31からケーブル端子部42までそれぞれ個別に形成された条線41A〜41Cを、互いに平行に重ね合わせて形成されている。また、各相のバスリング4U,4V,4Wの条線41A〜41Cは、ケーブル端子部42に近づくに従って、重ね合わされる本数が増加している。
【0017】
以下に、本例の本例の回転電機のステータ1用のバスリング4U,4V,4Wにつき、
図1〜
図7を参照して詳説する。
図1、
図3に示すごとく、ステータコア2には、U相、V相、W相の各相のコイル3U,3V,3Wが順次繰り返し同じ数だけ配置されている。各相のバスリング4U,4V,4Wは、2つの他相の単コイル31を飛ばす状態で、各単コイル31のコイル端部311Aをケーブル端子部42へ結束する条線41A〜41Cを重ね合わせて形成されている。
【0018】
図2に示すごとく、3相のバスリング4U,4V,4Wは、回転電機のステータ1における軸方向一端側の端部において、3相のコイル3U,3V,3Wそれぞれについて、3本が配置される。3相のコイル3U,3V,3Wはスター結線されるものであり(
図7参照)、ステータ1における軸方向一端側の端部には、中性点を形成する中性点用バスリング5も配置される。各バスリング4U,4V,4W及び中性点用バスリング5は、導通性の良い、銅、アルミニウム等の導体によって形成されている。
なお、
図7は、3相の単コイル3U,3V,3Wを、各相のバスリング4U,4V,4W及び中性点用バスリング5によってスター結線する状態を配線図として示す。同図において、中性点を符号Xによって示す。
【0019】
図1、
図2に示すごとく、ステータ1の軸方向一端側の端部には、各バスリング4U,4V,4Wの各相間の絶縁性を確保するための絶縁体6が配置されている。絶縁体6は、径方向に4段に分かれて配置される。そして、内外周の絶縁体6同士の間に形成される隙間にバスリング4U,4V,4Wがそれぞれ配置され、最外周側の絶縁体6の外周側に中性点用バスリング5が配置される。
なお、
図2は、3相のコイル3U,3V,3Wがステータコア2に配置された組付体10に対し、中性点用バスリング5、絶縁体6、3相のバスリング4U,4V,4Wを配置する状態を示す。
【0020】
中性点用バスリング5は、互いに隣接する他相の単コイル31を順次接続するリング形状に形成されている。中性点用バスリング5は、各相の単コイル31の中性点側のコイル端部311Bを接続する複数の接続部51を周方向に等間隔に有している。3相のバスリング4U,4V,4W及び中性点用バスリング5はともに、ケーブル端子部42が設けられた周方向位置とは反対側の周方向位置において切り離されており、円弧形状に形成されている。
本例の3相のバスリング4U,4V,4Wは、ステータ1の軸方向一端側の端部において、径方向に重なるように配置されている。これ以外にも、3相のバスリング4U,4V,4Wは、ステータ1の軸方向一端側の端部において、軸方向に重なるように配置することもできる。
【0021】
図3は、U相の単コイル31の全体を並列接続する複数の条線41A〜41CによるU相のバスリング4Uを示す。同図に示すごとく、U相のバスリング4Uは、単コイル31の一端側が接続される部分に、U字状に折り返された接続部43を有している。この接続部43は、条線41A〜41Cの端部において、ステータコア2の軸方向に直交する平面方向において折曲げ加工を行って形成されている。各接続部43は、径方向に伸びる径方向部分430の先端部において、内周側部分431と外周側部分432とを互いに対向させる状態で形成されている。各条線41A〜41Cにおいて、各接続部43は、U字状に折り返す方向が周方向の同じ側に位置するように形成されている。
【0022】
そして、
図1、
図3に示すごとく、軸方向外方に引き出される2つの単コイル31のコイル端部311Aを、接続部43の内周側部分431と外周側部分432との間に挟み込み、ヒュージング等の溶接を行って、2つのコイル端部311Aと接続部43とを接合することができる。なお、V相及びW相のバスリング4V,4Wは、ステータコア2の周方向に沿って配置される外径、及び接続部43の径方向部分430の長さ等が異なる以外は、U相のバスリング4Uと同様の形状を有している。
【0023】
図3に示すごとく、本例の3相のコイル3U,3V,3Wは、同相のコイル3U(3V又は3W)ごとにそれぞれ6つの単コイル31を並列に接続して形成されている。同相の各単コイル31に接続される複数の条線41A〜41Cは、ケーブル端子部42から最も遠い単コイル31に接続される条線41Aが最も内周側に配置され、ケーブル端子部42に近い単コイル31に接続される条線41B,41Cになるほど外周側に配置されて、内外周に互いに重ね合わされている。
【0024】
ここで、
図4は、同相の複数の単コイル31のうち、ケーブル端子部42から最も遠い単コイル31に接続される条線41Aを示す。
図5は、同相の複数の単コイル31のうち、ケーブル端子部42から2番目に遠い単コイル31に接続される条線41Bを示す。
図6は、同相の複数の単コイル31のうち、ケーブル端子部42に最も近い単コイル31に接続される条線41Cを示す。
【0025】
図3に示すごとく、本例の条線41A〜41Cは、断面略長方形状の角線であり、各相のバスリング4U,4V,4Wは、条線41A〜41Cにおける広い方の側面を互いに平行に対面させて形成されている。各相のバスリング4U,4V,4Wは、ケーブル端子部42を挟む周方向の両側に均等の数だけ各条線41A〜41Cを接続するよう構成されている。
【0026】
図4に示すごとく、本例のケーブル端子部42は、周方向に伸びる条線41A〜41Cの端部を径方向に引き伸ばして形成されている。本例においては、ケーブル端子部42を中心として、周方向の一方側においてケーブル端子部42から最も遠くに位置する単コイル31に接続される条線41Aと、周方向の他方側においてケーブル端子部42から最も遠くに位置する単コイル31に接続される条線部分41Aとが1本の導体で形成されている。この1本の導体による条線41Aは、ケーブル端子部42を形成する位置において円形状に屈曲して、ビス等を挿通させることができる取付部421を形成している。
また、
図5、
図6に示すごとく、他の条線41B,41Cについても、条線41Aと同様に1本の導体で形成されている。
【0027】
なお、各条線41A,41B,41Cは、1つの単コイル31に対して1本ずつ用い、ケーブル端子部42において圧着端子等を用いて結束することもできる。この場合、取付部421は、圧着端子等の取付部となる。
また、絶縁体6を用いる代わりに、各相のバスリング4U,4V,4Wの各条線41A,41B,41Cをまとめて巻き付ける絶縁テープ等の絶縁部材を用いることもできる。この場合には、絶縁体6を用いないことにより、ステータ1の小型化を図ることができる。
【0028】
本例の回転電機のステータ1用のバスリング4U,4V,4Wは、各相のコイル3U,3V,3Wを形成する各単コイル31について個別に条線41A〜41Cを設け、この条線41A〜41Cを互いに平行に重ね合わせて形成している。そのため、各条線41A〜41Cは各単コイル31に流れる電流を許容できればよく、各条線41A〜41Cの太さをできるだけ細くすることができる。
また、全長に亘って略同一の断面積が連続する条線41A〜41Cを用いることにより、材料に打抜き加工を行う必要がなく、バスリング4U,4V,4Wを製造する材料の歩留まりを向上させることができる。また、バスリング4U,4V,4Wは、条線41A〜41Cを折り曲げて形成することができる。そのため、異なる種類の回転電機を形成する場合、あるいは回転電機の仕様が変わった場合であっても、条線41A〜41Cの長さ、条線41A〜41Cを折り曲げる位置等を変更することによって容易に対応することができ、バスリング4U,4V,4Wを製造する設備の汎用化を図ることができる。
【0029】
それ故、本例の回転電機のステータ1用のバスリング4U,4V,4Wによれば、細線化及び歩留りの向上を図ることができ、製造設備の汎用化を図ることができる。