特許第5989503号(P5989503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989503
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】光触媒樹脂膜材料、およびその接合方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/02 20060101AFI20160825BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20160825BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   B29C65/02
   B32B27/18 Z
   B32B27/12
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-233870(P2012-233870)
(22)【出願日】2012年10月23日
(65)【公開番号】特開2014-83751(P2014-83751A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年9月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204192
【氏名又は名称】太陽工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000239862
【氏名又は名称】平岡織染株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108604
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 義人
(72)【発明者】
【氏名】豊田 宏
(72)【発明者】
【氏名】四十物 暢高
【審査官】 大塚 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−295174(JP,A)
【文献】 特開平11−300833(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/02
B32B 27/12 − 27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然繊維の短繊維による紡績糸、又は前記天然繊維の短繊維を含む混紡糸を少なくとも一部に使用した織布又は編布により形成した基材と、
前記基材の両面を適当な厚さで覆う樹脂を主成分とする層である樹脂層と、
前記樹脂層の少なくとも一方の表面に設けられた、樹脂を主成分とする層である第2樹脂層と、
前記第2樹脂層の表面に接着層を介して設けられた、光触媒粒子を含む層である光触媒層と、
を含み、
他の光触媒樹脂膜材料と重ね合わせて接合される部分である任意の接合部分における前記光触媒層を削り取るための加工機で、その接合部分の光触媒層を削り取ってから、その接合部分で他の光触媒樹脂膜材料と重ね合わせ、熱溶着により接合されることが予定された光触媒樹脂膜材料であり、
前記第2樹脂層は、樹脂を主成分とするフィルムを、ラミネートすることにより設けられたものであり、
且つ、前記第2樹脂層の厚さは、前記基材の表面粗さの平均偏差値(μm)以上の厚さであるとともに
前記短繊維の繊維長の標準偏差(σ)が30〜70である、
光触媒樹脂膜材料。
【請求項2】
天然繊維の短繊維による紡績糸、又は前記天然繊維の短繊維を含む混紡糸を少なくとも一部に使用した織布又は編布により形成した基材と、
前記基材の両面を適当な厚さで覆う樹脂を主成分とする層である樹脂層と、
前記樹脂層の少なくとも一方の表面に設けられた、樹脂を主成分とする層である第2樹脂層と、
前記第2樹脂層の表面に接着層を介して設けられた、光触媒粒子を含む層である光触媒層と、
を含み、
他の光触媒樹脂膜材料と重ね合わせて接合される部分である任意の接合部分における前記光触媒層を削り取るための加工機で、その接合部分の光触媒層を削り取ってから、その接合部分で他の光触媒樹脂膜材料と重ね合わせ、熱溶着により接合されることが予定された光触媒樹脂膜材料であり、
前記第2樹脂層は、樹脂を主成分とするフィルムを、ラミネートすることにより設けられたものであり、
且つ、前記第2樹脂層の厚さは、前記基材の表面粗さの平均偏差値(μm)以上の厚さであるとともに
前記基材の表面粗さの平均偏差値(μm)が60μm以上である、
光触媒樹脂膜材料。
【請求項3】
前記第2樹脂層の厚さは、前記基材の表面粗さの平均偏差値(μm)の1.5倍以上である、
請求項1又は2記載の光触媒樹脂膜材料。
【請求項4】
前記第2樹脂層の厚さは、100μm以上である、
請求項1又は2記載の光触媒樹脂膜材料。
【請求項5】
前記第2樹脂層の厚さは、300μm以下である、
請求項1〜のいずれかに記載の光触媒樹脂膜材料。
【請求項6】
前記第2樹脂層と前記接着層との間に、
前記樹脂層及び前記第2樹脂層から前記光触媒層への、前記樹脂層及び前記第2樹脂層に含まれる可塑剤の移行を防ぐ、可塑剤移行防止層を備える、
請求項1〜のいずれかに記載の光触媒樹脂膜材料。
【請求項7】
前記樹脂層、及び前記第2樹脂層の主成分である樹脂がいずれも、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリウレタン(PU)、アクリル樹脂(PMMA)、シリコーン樹脂、フッ素樹脂のいずれかである、
請求項1又は2記載の光触媒樹脂膜材料。
【請求項8】
前記樹脂層、及び前記第2樹脂層の主成分である樹脂が共通である、
請求項1又は記載の光触媒樹脂膜材料。
【請求項9】
天然繊維の短繊維による紡績糸、又は前記天然繊維の短繊維を含む混紡糸を少なくとも一部に使用した織布又は編布により形成した基材に樹脂を塗布して、乾燥させることにより前記基材の両面を適当な厚さで覆う樹脂を主成分とする層である樹脂層を形成する過程、
前記樹脂層の少なくとも一方の表面に、樹脂を主成分とするフィルムをラミネートして、樹脂を主成分とする層である第2樹脂層を形成する過程、
前記第2樹脂層の表面に、接着層を介して、光触媒粒子を含む層である光触媒層を形成する過程、
を含み、
他の光触媒樹脂膜材料と重ね合わせて接合される部分である任意の接合部分における前記光触媒層を削り取るための加工機でその接合予定部分の光触媒層を削り取ってから、その接合部分で他の光触媒樹脂膜材料と重ね合わせ、熱溶着により接合されることが予定された光触媒樹脂膜材料の製造方法であり、
前記第2樹脂層を形成するのに用いる前記フィルムとして、その厚さが、前記基材の表面粗さの平均偏差値(μm)以上の厚さであるものを用いるとともに
前記短繊維の繊維長の標準偏差(σ)を30〜70とする、
光触媒樹脂膜材料の製造方法。
【請求項10】
天然繊維の短繊維による紡績糸、又は前記天然繊維の短繊維を含む混紡糸を少なくとも一部に使用した織布又は編布により形成した基材に樹脂を塗布して、乾燥させることにより前記基材の両面を適当な厚さで覆う樹脂を主成分とする層である樹脂層を形成する過程、
前記樹脂層の少なくとも一方の表面に、樹脂を主成分とするフィルムをラミネートして、樹脂を主成分とする層である第2樹脂層を形成する過程、
前記第2樹脂層の表面に、接着層を介して、光触媒粒子を含む層である光触媒層を形成する過程、
を含み、
他の光触媒樹脂膜材料と重ね合わせて接合される部分である任意の接合部分における前記光触媒層を削り取るための加工機でその接合予定部分の光触媒層を削り取ってから、その接合部分で他の光触媒樹脂膜材料と重ね合わせ、熱溶着により接合されることが予定された光触媒樹脂膜材料の製造方法であり、
前記第2樹脂層を形成するのに用いる前記フィルムとして、その厚さが、前記基材の表面粗さの平均偏差値(μm)以上の厚さであるものを用いるとともに
前記基材の表面粗さの平均偏差値(μm)を60μm以上とする、
光触媒樹脂膜材料の製造方法。
【請求項11】
請求項1又は2記載の、その一方の表面のみに光触媒層を有する光触媒樹脂膜材料同士を接合する方法であって、
一方の光触媒樹脂膜材料の一部の光触媒層と接着層と第2樹脂層の中途部までとを、前記加工機で削り取る過程、
一方の光触媒樹脂膜材料の光触媒層と接着層と第2樹脂層の中途部までとを削り取った部分と、他方の光触媒樹脂膜材料の光触媒層のない側の面とを重ね合わせる過程、
その状態で、一方の光触媒樹脂膜材料と他方の光触媒樹脂膜材料の重ね合わせられた部分を加熱することにより、両者を熱溶着する過程、
を含む光触媒樹脂膜材料同士を接合する方法。
【請求項12】
請求項1又は2記載の、その双方の表面に光触媒層を有する光触媒樹脂膜材料同士を接合する方法であって、
一方の光触媒樹脂膜材料の一部の光触媒層と接着層と第2樹脂層の中途部までとを、前記加工機で削り取る過程、
他方の光触媒樹脂膜材料の一部の光触媒層と接着層と第2樹脂層の中途部までとを、前記加工機で削り取る過程、
一方の光触媒樹脂膜材料の光触媒層と接着層と第2樹脂層の中途部までとを削り取った部分と、他方の光触媒樹脂膜材料の光触媒層と接着層と第2樹脂層とを削り取った部分とを、削り取った面同士を対向させて重ね合わせる過程、
その状態で、一方の光触媒樹脂膜材料と他方の光触媒樹脂膜材料の重ね合わせられた部分を加熱することにより、両者を熱溶着する過程、
を含む光触媒樹脂膜材料同士を接合する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒樹脂膜材料同士を接合する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば二酸化チタンなどの光酸化作用を有する光触媒粒子を含む層である光触媒層をその一方の面又は双方の面に有する光触媒膜材料がある。このような光触媒膜材料は、光触媒層中の光触媒粒子が、太陽光などの光を受けて光酸化作用を発揮することにより、その光酸化作用に基づく、防汚、消臭、抗菌などの優れた機能を発揮する。
そして、数ある光触媒膜材料の中に、織布又は網布で形成した基材の両面を適当な厚さの樹脂を主成分とする層である樹脂層で被覆し、更にそれら樹脂層の一方の面又は双方の面の表面に、接着層を介して光触媒層を設けたものがある(なお、本願では、基材、その両面を被覆する樹脂層、及びそれら樹脂層の一方の面又は双方の面の表面に接着層を介して設けられた光触媒層を有する光触媒膜材料を特に、「光触媒樹脂膜材料」と呼ぶことにする。本願における光触媒樹脂膜材料は、基材、樹脂層、接着層、光触媒層以外の層を有していても構わないことに留意されたい。)。
このような光触媒樹脂膜材料は、中・大型テント、テント倉庫、トラック用の幌、看板用バックリットなどの産業用資材として極めて広範に利用されている。
【0003】
ところで、光触媒樹脂膜材料を使用する場合に、膜材料同士の接合、それも熱溶着による接合を行いたい場合がある。光触媒層がない、一般的な樹脂膜材料であれば、かかる熱溶着は容易である。樹脂膜材料の一部(例えば縁部)同士を適当な幅で重ね合わせて、その状態で両樹脂膜材料を押接しながら加熱することで、樹脂膜材料の熱溶着を容易に行える。
しかしながら、光触媒層を有する光触媒樹脂膜材料同士を接合する場合、例えば2枚の光触媒樹脂膜材料が共にその両面に光触媒層を有する場合には、2枚の光触媒樹脂膜材料を重ね合わせたときに、光触媒層同士が当接することになる。また、2枚の光触媒樹脂膜材料が共にその一方の面のみに光触媒層を有する場合であっても、光触媒樹脂膜材料の熱溶着を行う場合には、2枚の光触媒樹脂膜の光触媒層がある面の向きを揃えるのが通常であるから、2枚の光触媒樹脂膜材料の一方の光触媒層が、他方の光触媒樹脂膜材料の光触媒層のない側の面に当接することになる。
上述したような状態で、2枚の光触媒樹脂膜材料の熱溶着を行おうとしても、光触媒層に無機物である光触媒粒子等(一般的には酸化チタンが多用される)が大量に存在するから、そのまま光触媒樹脂膜材料同士を熱溶着することは、現実的に不可能である。
【0004】
そのような問題を解決するため、例えば特許第2889224号で開示された方法を応用することが考えられる。
同特許に開示された方法は、その一方の表面に光触媒層を有する2枚の光触媒膜材料同士を熱溶着により接合する場合に、他方の光触媒膜材料の光触媒層のない側の面に当接することになる部分の、一方の光触媒膜材料の光触媒層を予め削り取り、その後に両光触媒膜材料同士を溶着するというものである。
光触媒樹脂膜材料同士の熱溶着による接合の場合にも、その一方の光触媒樹脂膜材料の表面の接合したい部分に存在する光触媒層等、熱溶着するにあたって問題となる部分を予め削り取ることにより、その下層の樹脂層を露出させてから樹脂層同士を当接し、熱溶着を行うということを正しく行えれば、上述の如き、熱溶着出来ないという問題は生じない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、天然繊維の短繊維による紡績糸、又は前記天然繊維の短繊維を含む混紡糸を少なくとも一部に使用した織布又は編布により形成した基材を用いた光触媒樹脂膜材料に、特許第2889224号で開示された方法を応用するのはそう簡単ではない。
光触媒樹脂膜材料の少なくとも一方の面を覆う光触媒層は、主に製造コスト削減という観点から、光触媒層がその機能を発揮できる範囲でできる限り薄く作られる。したがって、熱溶着するために接合を予定している部分の下層の樹脂層を表面に露出させようとして光触媒樹脂膜材料の光触媒層のみを削り取り、樹脂層を表面に出そうとした場合、どうしても光触媒層が僅かに残ってしまう可能性がある。よって、光触媒層の下には、接着層等他の層が存在することもあるがこれらの層まで削り取りを行う場合でも、接合性能に影響する光触媒層や接着層がわずかに残る場合があった。
また、樹脂層も、光触媒層と同様、必要な設計条件を満たすのを条件に可能な限り薄くされている。したがって、光触媒層等の削り取りを行う場合、必要以上に樹脂層を削り取ってしまうと、樹脂層に被覆された基材が傷つくおそれがある。そのような状態で光触媒樹脂膜材料同士を熱溶着した場合には、接合部強度が低下する可能性がないとはいえない。
この可能性は、基材が、天然繊維の短繊維による紡績糸、又は前記天然繊維の短繊維を含む混紡糸を少なくとも一部に使用した織布又は編布でできている場合に高まる。その理由は、以下の通りである。
光触媒樹脂膜材料の樹脂層の加工は、一般的に、基材となる織布や編布に樹脂をディップコート法、あるいは、ナイフコート法、ロールコート法、グラビアコート法等によって塗布加工することにより形成される。上記加工の工程は、樹脂層の厚みが所望した程度になるまで繰り返し行われることもあるが、樹脂層の厚みを適正なものとしても、基材を構成する糸に太さむらや毛羽立ちがあった場合には、樹脂層の表層に近い部分に糸や糸を構成する繊維が存在しやすい。糸や糸を構成する繊維が樹脂層の表層に近い部分に存在した場合には、光触媒層やその他の層を削りとった場合に、樹脂層の過度の削りとりがなかったとしても、糸や糸を構成する繊維が傷つく可能性が高まる。
基材を構成する糸が合成繊維のみの場合には、一般的に長繊維を使用することができるから、糸の太さのむらや毛羽立ちは殆ど発生しないが、短繊維であり、かつその繊維長さを一定にするのが困難な天然繊維を使用した糸を少なくとも一部に使用した基材の場合には、上述したように、糸に太さむらや毛羽立ちができ、樹脂層の表層に近い部分に糸や糸を構成する繊維が存在する可能性がより大きくなる。そのため、天然繊維が基材を構成する糸の少なくとも一部に使用された場合には、光触媒層の削りとりに伴い樹脂層の削りとりが行われた場合に、糸や糸を構成する繊維が傷つく可能性が大きくなるのである。
【0006】
本発明は、光触媒層を削り取ってから熱溶着することによって行う光触媒樹脂膜材料の接合を、接合強度に影響を与えず、かつ基材を傷つけずに行えるようにするための技術を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の課題を解決するため、本願発明者は以下の発明を提案する。
その発明は、以下のようなものである。
本願発明は、天然繊維の短繊維による紡績糸、又は前記天然繊維の短繊維を含む混紡糸を少なくとも一部に使用した織布又は編布により形成した基材と、前記基材の両面を適当な厚さで覆う樹脂を主成分とする層である樹脂層と、前記樹脂層の少なくとも一方の表面に設けられた、樹脂を主成分とする層である第2樹脂層と、前記第2樹脂層の表面に接着層を介して設けられた、光触媒粒子を含む層である光触媒層と、を含む光触媒樹脂膜材料であり、他の光触媒樹脂膜材料と重ね合わせて接合される部分である任意の接合部分における前記光触媒層を削り取るための加工機でその接合部分の光触媒層を削り取ってから、その接合部分で他の光触媒樹脂膜材料と重ね合わせ、熱溶着により接合されることが予定された光触媒樹脂膜材料である。
そして、この光触媒樹脂膜材料における前記第2樹脂層は、樹脂を主成分とするフィルムを、ラミネートすることにより設けられたものであり、且つ、前記第2樹脂層の厚さは、前記基材の表面粗さの平均偏差値(μm)以上の厚さである。この光触媒樹脂膜材料は、前記基材の表面粗さの平均偏差値(μm)以上の厚さの第2樹脂層を有している。したがって、加工機を用いて光触媒層等を削り取る際に、削り取りの対象となる厚さを設定して、実際に削り取りを行ったときに誤差が生じて、多少厚く削り取りが行われてしまったとしても、削り取られる範囲の最も深い部分を、略第2樹脂層の厚みの中に収めることができる。つまり、この光触媒樹脂膜材料は、熱溶着による接合を行うに先立って光触媒層や接着層等を削り取るときに、光触媒層や接着層が残る可能性もないし、樹脂層まで削り取ることを防止することが可能となるから、基材を構成する糸や糸を構成する繊維を傷める可能性も、それにより接合部強度に影響を与える可能性も低い。しかも、この光触媒樹脂膜材料の第2樹脂層は、樹脂を主成分とするフィルムを前記樹脂層の少なくとも一方の前記表面にラミネートすることにより設けられたものであるから、ディップコート法、あるいは、ナイフコート法、ロールコート法、グラビアコート法等によって樹脂を基材に塗布して乾燥させることにより層を形成したときとは異なり、その内部に糸が存在する可能性がない。つまり、第2樹脂層の存在により、削り取られる可能性のある部分と、基材を構成する糸や糸を構成する繊維との間に距離を開けることが可能となる。したがって、加工機を用いて光触媒層等を削り取る際に、基材の中の糸を傷める可能性が殆ど無い状態で、削り取りたい部分を残さず削り取ることが可能になる。
また、第2樹脂層の厚さは、前記表面粗さの平均偏差値(μm)の1.5倍以上の厚さとするのが好ましい。第2樹脂層をこのような厚さにすることで、削り取られる範囲の最も深い部分を、より確実に第2樹脂層の厚みの中に収めることができるから、基材を構成する糸及び糸を構成する繊維を傷つける可能性が更に低くなる。
【0008】
上述したように、第2樹脂層の厚さは、前記基材の表面粗さの平均偏差値(μm)以上の厚さであれば良い。より好ましくは、第2樹脂層の厚さは、前記基材の表面粗さの平均偏差値(μm)の1.5倍以上の厚さとする。具体的な数値は、使用する基材の表面粗さや、光触媒層の削り取りを行う際に用いられる加工機の性能との兼ね合いで決めることができるが、例えば、前記第2樹脂層の厚さは、100μm以上とすることができる。
第2樹脂層をこの程度の厚さにすれば、基材が、天然繊維の短繊維による紡績糸、又は前記天然繊維の短繊維を含む混紡糸を少なくとも一部に使用した織布又は編布であったとしても、第2樹脂層の厚さが、前記基材表面粗さの平均偏差値(μm)以上の厚さとなることが略確実であるから、大抵の加工機を用いて光触媒層や接着層等の削り取りを行ったときにおいても、光触媒層や接着層の一部が残ったり、基材を構成する糸を傷つけることが略なくなる。
また、前記第2樹脂層の厚さは、300μm以下とすることができる。第2樹脂層の厚さが厚すぎると、光触媒樹脂膜の可撓性に影響を与えるおそれがあり、またコストの上昇に繋がるおそれがある。そのような点を考慮すると第2樹脂層の厚さは300μm以下、好ましくは250μm以下とするのが良い。
なお、前記表面粗さの平均偏差値(μm)の測定は、基材断面を光学顕微鏡等により拡大する事により基材表面の凹凸の差を実測した測定結果から算出しても良いし、表面試験機(例えば、カトーテック株式会社製:KES−FB4)を用いて表面粗さの平均偏差値(SMD)を計測しても良い。
【0009】
本願の光触媒樹脂膜材料は、前記第2樹脂層と前記接着層との間に、前記樹脂層及び前記第2樹脂層から前記光触媒層への、前記樹脂層及び前記第2樹脂層に含まれる可塑剤の移行を防ぐ、可塑剤移行防止層を備えていても良い。
既存の光触媒樹脂膜材料では、樹脂に可撓性を与えるために可塑剤が加えられている。同様に、本願の樹脂層、第2樹脂層にも可塑剤が加えられている。樹脂層、第2樹脂層に添加された可塑剤が光触媒層に移行すると光触媒層中の光触媒粒子が持つ光酸化機能が害される可能性がある。第2樹脂層と接着層の間に可塑剤移行防止層があれば、光触媒粒子が持つ光酸化機能が可塑剤によって低下する可能性を抑制できる。
なお、本願における樹脂層と、第2樹脂層はいずれも、「樹脂を主成分とする」ものとなっており、樹脂のみでできているものとはなっていない。もっとも、樹脂層と、第2樹脂層には、上述したように可塑剤やその他にも防炎剤や着色剤等が含まれる場合もあるので、樹脂層と、第2樹脂層はいずれも、「樹脂を主成分とする」ものであることに間違いはない。樹脂が主成分であるとするには、本願では、樹脂層又は第2樹脂層に存在する樹脂に占める樹脂の量が、重量比で80%以上であることを意味するものとする。
【0010】
上述のように基材は、天然繊維の短繊維による紡績糸、又は前記天然繊維を含む混紡糸を少なくとも一部に使用した織布又は編布により形成したものである。基材は、ポリエステル繊維等の合成繊維による糸や、ガラス繊維等の無機繊維による糸と、上記天然繊維の短繊維による紡績糸、又は前記天然繊維を含む混紡糸とを混織や混編して作られていてもよいし、上記天然繊維の短繊維を使用した紡績糸および又は混紡糸のみを混織や混編して作られていてもよい。
上述のように、基材を構成する少なくとも一部の糸の繊維が天然繊維である場合には、糸の太さむらや毛羽立ちが生じやすいが、このような基材を用いた場合であっても本願発明の光触媒樹脂膜材料によれば、糸が第2樹脂層に入り込むことがまずないのに加え、削り取りたい部分と、基材を構成する糸や糸を構成する繊維との間に距離を開けることが可能となるから、光触媒層等の削り取りを行う際に糸が傷つく可能性が極めて小さい。
基材の少なくとも一部に用いる糸を構成する天然繊維が短繊維である場合であり、且つその短繊維の繊維長の標準偏差(σ)が20以上、より詳しくは、30〜70となるような、比較的繊維長のばらつきの大きな繊維が用いられる場合がある。また、前記基材の表面粗さの平均偏差値(μm)が60μm以上と、比較的基材の表面粗さが大きい場合がある。本願発明は、このような基材を適用する場合に特に、その効果が非常に高い。これは大雑把にいうと、短繊維の繊維長のばらつきが比較的大きいことで糸の太さむらや毛羽立ちが大きかったり、また、例えばそのような短繊維を使用した紡績糸やそれを含む混紡糸を少なくとも一部に使用した織布又は編布による表面粗さが比較的大きい基材が用いられる場合に特に、本願発明の光触媒樹脂膜材料は、光触媒層等を削り取った場合に、光触媒層や接着層等が一部残ったり、糸を傷つけたりすることがまずない、という作用効果をより発揮しやすいということである。
これらのように、糸を構成する天然繊維が短繊維であるとか、短繊維の繊維長にばらつきがあるとか、糸の太さにむらがあるとか、基材表面粗さが大きいとかの原因によって、従来の製法による光触媒樹脂膜材料であれば樹脂層の表面に近い部分に糸や糸を構成する繊維が位置する可能性が高くなるような場合であっても、本願の光触媒樹脂膜材料であれば、元々フィルムである第2樹脂層の存在により、削り取りたい部分と、基材を構成する糸や糸を構成する繊維との間に距離を開けることが可能となるため、光触媒層や接着層を削りとる際に糸を傷つける可能性がほぼ無い。
よって、このような場合でも安定した効果を奏する本願発明による光触媒樹脂膜材料の価値は大きい。
また、上記樹脂層及び第2樹脂層に用いられる樹脂としては、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリウレタン(PU)、アクリル樹脂(PMMA)、シリコーン樹脂、フッ素樹脂が挙げられる。樹脂層と第2樹脂層に用いられる樹脂が相違していても良いが、両層に用いられる樹脂は同一であることが好ましい。
【0011】
本願の光触媒樹脂膜材料は、例えば以下の製造方法により作ることができる。
それは、天然繊維の短繊維による紡績糸、又は前記天然繊維を含む混紡糸を少なくとも一部に使用した織布又は編布により形成した基材に、可塑剤等の必要な添加剤を添加した樹脂を、例えばディップコート法により塗布して乾燥し、前記基材の両面を適当な厚さで覆う樹脂を主成分とする層である樹脂層を形成する過程、前記樹脂層の少なくとも一方の表面に、樹脂を主成分とするフィルムをラミネートして、樹脂を主成分とする層である第2樹脂層を形成する過程、前記第2樹脂層の表面に、接着層を介して、光触媒粒子を含む層である光触媒層を形成する過程、を含む、他の光触媒樹脂膜材料と重ね合わせて接合される部分である任意の接合部分における前記光触媒層を削り取るための加工機でその接合予定部分の光触媒層を削り取ってから、その接合部分で他の光触媒樹脂膜材料と重ね合わせ、熱溶着により接合されることが予定された、光触媒樹脂膜材料の製造方法である。この製造方法では、前記第2樹脂層を形成するのに用いる前記フィルムとして、その厚さが、前記基材の表面粗さの平均偏差値(μm)以上の厚さであるものを用いる。
【0012】
また、本願発明は、以上で説明した光触媒樹脂膜材料の接合方法をも提案する。
接合方法の一例は、その一方の表面のみに光触媒層を有する本願発明による光触媒樹脂膜同士を接合する方法であって、一方の光触媒樹脂膜材料の一部の光触媒層と接着層と第2樹脂層の中途部までとを、前記加工機で削り取る過程、一方の光触媒樹脂膜材料の光触媒層と接着層と第2樹脂層の中途部までとを削り取った部分と、他方の光触媒樹脂膜材料の光触媒層のない側の面とを重ね合わせる過程、その状態で、一方の光触媒樹脂膜材料と他方の光触媒樹脂膜材料の重ね合わせられた部分を加熱することにより、両者を熱溶着する過程、を含む光触媒樹脂膜材料同士を接合する方法である。
また、接合方法の他の例は、その双方の表面に光触媒層を有する本願発明による光触媒樹脂膜材料同士を接合する方法であって、一方の光触媒樹脂膜材料の一部の光触媒層と接着層と第2樹脂層の中途部までとを、前記加工機で削り取る過程、他方の光触媒樹脂膜材料の一部の光触媒層と接着層と第2樹脂層の中途部までとを、前記加工機で削り取る過程、一方の光触媒樹脂膜材料の光触媒層と接着層と第2樹脂層の中途部までとを削り取った部分と、他方の光触媒樹脂膜材料の光触媒層と接着層と第2樹脂層の中途部までとを削り取った部分とを、削り取った面同士を対向させて重ね合わせる過程、その状態で、一方の光触媒樹脂膜材料と他方の光触媒樹脂膜材料の重ね合わせられた部分を加熱することにより、両者を熱溶着する過程、を含む光触媒樹脂膜材料同士を接合する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態による光触媒樹脂膜材料の構成を模式的に示す断面図。
図2】第1実施形態による光触媒樹脂膜材料の接合の方法を概念的に示す断面図。
図3】第1実施形態による光触媒樹脂膜材料の光触媒層を削り取る方法を模式的に示す図。
図4】第2実施形態による光触媒樹脂膜材料の構成を模式的に示す断面図。
図5】第2実施形態による光触媒樹脂膜材料の接合の方法を概念的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい第1、第2実施形態を説明する。
各実施形態において共通する対象には共通する符号を付すものとし、共通する説明は場合により省略するものとする。
【0015】
≪第1実施形態≫
<第1実施形態の光触媒樹脂膜材料の構成>
第1実施形態の光触媒樹脂膜材料100の構成を図1の断面図に示す。
光触媒樹脂膜材料100は、基材10を備えている。基材10は、糸11を織った織布、又は編んだ編布でできている。この実施形態の基材10はこれには限られないが、織布でできている。その織り方は、例えば平織りである。糸11のうち、図1中11Aの符号が付されたのが縦糸、11Bの符号が付されたのが横糸である。また、この実施形態の基材10は、これには限られないが、基材の表面粗さの平均偏差値、例えば、KES−FB4の表面試験機によるSMDが30μm以上である。もっとも基材10のSMDは、60μm以上であることが効果的であり、この実施形態ではそうなっている。
基材10のKES−FB4の表面試験機によるSMDの測定は、例えば、400gの一軸張力がかけられた20cm×20cmの試料に0.5mm径のピアノ線からなる接触子を試料の表面に10gfの圧力で接触させ、1mm/secの速度で試料の表面上をなぞるように20mm移動させた場合に試料の凹凸によって生ずる接触子の上下動の量を検出し、検出された接触子の上下動の量から求めることが可能である。
これには限られないが、縦糸にはすべて合成繊維であるポリエステル繊維糸を使用し、横糸には、合成繊維であるポリエステル繊維糸3本毎に、天然繊維であるケナフの短繊維による紡績糸を1本使用し、これらにより織布を構成している。天然繊維の例としては、麻、ジュート、ケナフを挙げることができる。天然繊維の糸を構成する各短繊維の長さは、例えば、JIS L 1015 8.4.1 直接法の方法で測定することができる。この実施形態では、天然繊維の糸を構成する短繊維の長さは、凡そ50〜400mmであり、また、その繊維長の標準偏差(σ)は20以上、より詳しくは30〜70である。天然繊維である短繊維を紡績して得られる紡績糸である糸11は、太さにバラつきがあり、また毛羽立ちがある場合がある。この実施形態では、糸を構成する短繊維の太さは、例えば、顕微鏡を用いた直径の測定により求めることができる。この実施形態の糸を構成する短繊維の太さは、凡そ70〜140μmである。そして、糸は、これら短繊維を紡績したものである。また、基材10の厚さは、0.2〜0.5mmである。
なお、基材10は、それを作るすべての糸11が天然繊維の短繊維による紡績糸、又は天然繊維を含む混紡糸であっても良いが、少なくともその一部に天然繊維の短繊維による紡績糸、又は天然繊維を含む混紡糸が使用されている。天然繊維の短繊維による紡績糸、又は天然繊維を含む混紡糸を基材10である織物又は編物の一部に使用しているのであれば、基材10の残部にポリエステル繊維等の合成繊維による糸や、ガラス繊維等の無機繊維による糸が使用されていても構わない。
【0016】
基材10は、樹脂層20にその両面を覆われている。本実施形態では、これに限定されないが樹脂層20の樹脂としてPVCを使用している。樹脂層20は後述するようにディップコート法により塗布し乾燥することにより形成されているので、基材10の織り目の間にも入り込み、基材10全体を包み込むようにして、基材10の両面を覆っている。
樹脂層20は、樹脂を主成分としており、また、公知の可塑剤等その他の添加剤を含んでいる。
基材10を挟んだ樹脂層20の厚さは、これには限られないが、この実施形態では0.4〜1.5mmである。
なお、樹脂層20を構成する樹脂は、必ずしもPVCである必要はなく、例えば、PE、PP、EVA、PU、PMMA、シリコーン樹脂、フッ素樹脂であっても構わない。
【0017】
樹脂層20の一方の面は、第2樹脂層30で覆われている。
第2樹脂層30は、樹脂を主成分とし、公知の可塑剤等を含むフィルムを、樹脂層20の一方の面に、後述するようにラミネートすることによって設けられている。本実施形態では、これに限定されないが上記第2樹脂層30の樹脂としてPVCを使用している。もっとも、第2樹脂層30を構成する樹脂は、必ずしもPVCである必要はなく、樹脂層20を構成することのできる樹脂として既に挙げた樹脂を用いることができる。また、第2樹脂層30を構成する樹脂は、樹脂層20を構成する樹脂と同じでも良いし、同じでなくても良い。
この光触媒樹脂膜材料100は、後述するように、光触媒樹脂膜材料の表層から光触媒層と第2樹脂層30の中途部までを削り取ってから熱溶着される。第2樹脂層30の厚さは、光触媒層を削り取るのに用いられる後述する加工機で光触媒層と第2樹脂層を削り取った場合に、基材10を構成する糸や糸を構成する繊維が傷つかないようにする、ということに主眼を置いて決められる。第2樹脂層30の厚さは、基材10の表面粗さの平均偏差値(μm)以上の厚さとされる。より好ましくは、その厚さは、基材10の表面粗さの平均偏差値(μm)の値の1.5倍以上である。この実施形態で用いられる基材10の表面粗さの平均偏差値(μm)は、上述の通り60μm以上である。したがって、この実施形態では第2樹脂層30の厚さは、少なくとも60μmとされる。もっとも、第2樹脂層の厚さは、基材10の表面粗さの平均偏差値(μm)の1.5倍以上とするのが好ましい。つまり、この実施形態では、第2樹脂層30の厚さは、少なくとも90μmとするのが好ましい。
もっとも、第2樹脂層30の厚さは、100μm以上とするのがより好ましい。第2樹脂層30の厚さが100μm以上であれば、第2樹脂層30の厚さは、基材10の表面粗さの平均偏差値(μm)以上の厚さであると、基材10の表面粗さの平均偏差値(μm)を測定しなくとも、大抵の基材10について言えることになり、また、大抵の加工機を用いて光触媒樹脂膜材料の表層から第2樹脂層の中途部までの削り取り(この削り取りについては後述する。)を行った場合においても、基材10乃至それに含まれる糸11及び糸を構成する繊維が傷つけられることはないという効果が得られることになる。
他方、この実施形態では、第2樹脂層30の厚さは、300μm以下とされている。このようにするのは、光触媒樹脂膜材料100の可撓性に影響を与えないため、或いはコストを抑制するためである。もっとも、第2樹脂層30の厚さは、250μm以下とするのがより好ましい。
これには限られないが、この実施形態の第2樹脂層30の厚さは、好ましくは130〜200μmとされるが、この実施形態では150μmである。
【0018】
第2樹脂層30の表面は、可塑剤移行防止層40にて覆われている。
可塑剤移行防止層40は、樹脂層20及び第2樹脂層30に含まれた可塑剤が後述する光触媒層に移行するのを防止する機能を有する層である。その厚さは、例えば、1〜30μmである。また、その組成については、後述する。
【0019】
可塑剤移行防止層40の表面は、接着層50にて覆われている。接着層50の表面は、光触媒層60にて覆われている。
接着層50は、可塑剤移行防止層40に光触媒層60を接着するためのものであり、その厚さは、例えば、0.3〜10μmである。また、接着層50の組成については後述する。
光触媒層60は、光触媒粒子を含む層である。その厚さは、0.3〜10μmである。また、その組成については後述する。
【0020】
<第1実施形態の光触媒樹脂膜材料の製造方法>
第1実施形態の光触媒樹脂膜材料100の製造方法は以下の通りである。
なお、光触媒樹脂膜材料100の製造方法は、第2樹脂層30のラミネートの工程を除き、従来の光触媒樹脂膜材料の製法と同様で構わない。以下に示す光触媒樹脂膜材料100の製造方法は、その一例であると理解されたい。
【0021】
まず、布状の基材10に、ディップコート法により、樹脂層20を形成する。
基材10を浸漬させるのに用いたのは、ペースト塩化ビニル樹脂と可塑剤等とを含む樹脂組成物の溶剤希釈液である。その溶剤希釈液中に基材10を公知の方法で浸漬し、基材10に樹脂組成物の溶剤希釈液を含浸させてから基材を引き上げると同時にマングルローラーでニップ(圧搾)し、150℃で1分間乾燥させた後、185℃で1分間熱処理を行い、その後熱ロールにて熱プレスする。そのようにして、基材10に対しPVCを付着させて、基材10の両面に亘る樹脂層を形成した。なお、樹脂層20の厚さが不十分である場合には、浸漬、乾燥、熱処理の上述の過程を繰り返し行なってもよい。
樹脂組成物の溶剤希釈液の配合の一例を配合Aとして以下に示す。
[配合A]
ペースト塩化ビニル樹脂 100重量部
DOP(可塑剤) 70重量部
エポキシ化大豆油 4重量部
炭酸カルシウム 10重量部
Ba−Zn系安定剤 2重量部
顔料(TiO2) 5重量部
トルエン(溶剤) 20重量部
【0022】
次に、樹脂層20の一方の面に、PVCを主成分とするフィルムを、ラミネートすることにより、第2樹脂層30を形成する。
第2樹脂層30となるフィルムは、下記配合Bに示した配合による樹脂組成物を、170℃のカレンダーロールを通過させて圧延しすることにより作成した。その厚さは、上述した通り60〜300μmであるが、ここでは150μmとされている。
[配合B]
ストレート塩化ビニル樹脂 100重量部
高分子可塑剤 55重量部
アジビン酸ポリエステル 35重量部
エポキシ化大豆油 4重量部
炭酸カルシウム 10重量部
Ba−Zn系安定剤 2重量部
顔料(TiO2) 5重量部
【0023】
樹脂層20の全面を覆う形状、大きさの上述の如きフィルム(必ずしも一枚物である必要はない。)を樹脂層20の一方の上に配し、160℃に設定した熱ロールと赤外線ヒーターとを備えたラミネーターを用いて熱圧着法により、加熱しながら圧着することによって、ラミネートする。
元々固体であるフィルムによって形成された第2樹脂層30の中に、基材10を構成する糸が入り込んでくる余地はない。
【0024】
次いで、第2樹脂層30の表面に、可塑剤移行防止層40を設ける。可塑剤移行防止層40は、合成シリカ(吸油量120ml/100g)20重量%を含有するビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体樹脂塗布液として、下記配合3の樹脂組成物の溶剤希釈液を生成し、グラビヤコーターを用いてそれを第2樹脂層30の表面前面に塗布し、120℃で1分間乾燥後冷却することにより形成した。その厚さは上述の通り1〜30μmであるが、例えば約10μmである。
[配合C]
ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体 20重量部
合成シリカ(吸油量120ml/100g) 5重量部
MEK(溶剤) 80重量部
【0025】
次いで、可塑剤移行防止層40の上に、接着層50を介して、光触媒層60を設ける。
接着層50は、可塑剤移行防止層40の上に、光触媒層60に対する接着剤として機能する樹脂を含む接着層用処理液を例えばグラビヤコーターで塗布し、100℃で1分間乾燥し、その後冷却することで形成する。 これには限定されないが、本実施例では、日本曹達株式会社製の商品名ビストレイターL、品番NRC−350Aを接着層用処理液として使用し、その塗布厚さは、上述した通り0.3〜10μmであるが、例えば1μmである。
光触媒層60は、光触媒粒子を含む光触媒層用塗布液を、接着層50の上に、例えばグラビヤコーターで塗布し、100℃で1分間乾燥後冷却して形成する。これには限定されないが、本実施例では、日本曹達株式会社製の商品名ビストレイターL、品番NRC−360Cを光触媒層用塗布液として使用した。その塗布厚さは、光触媒層60の厚さが、上述のように0.3〜10μmとなるようなものであり、ここでは1μmである。
【0026】
<第1実施形態による光触媒樹脂膜材料の接合>
第1実施形態による光触媒樹脂膜材料100同士の接合の方法について説明する。
光触媒樹脂膜材料100同士の接合は、2枚の光触媒樹脂膜材料100同士を一定かどうかは不問の所定の幅で重ね合わせ、その重ね合わせた部分同士を適当な圧で押圧しながら、少なくとも樹脂の融点を超える温度で加熱することにより行う。そうすることにより、2枚の光触媒樹脂膜材料100は熱溶着により接合される。
光触媒樹脂膜材料100同士の接合は、図2に示したように、2枚の光触媒樹脂膜材料100の光触媒層60が存在する面の向きを揃えて行なわれる。
そして、この実施形態では、本来であればその光触媒層60が他方の光触媒樹脂膜材料100の光触媒層60がない側の面に当接してしまうその光触媒層60を、少なくとも上述の重ね合わせが行なわれる部分について予め削り取る。
その削り取りは、例えば、図3にその概略を示したような加工機で行なわれる。加工機500は、第1ローラ501と第2ローラ502を備えている。第1ローラ501の外周面には周知の研磨材が付着されている。第2ローラ502の外周面は平滑である。第1ローラ501の幅は、光触媒樹脂膜材料100の光触媒層60が削り取られる幅に対応しており、第2ローラ502の幅は、光触媒樹脂膜材料100の後述する送り方向における幅に対応している。
加工機500は、同期して回転させられる第1ローラ501と第2ローラ502の間に光触媒樹脂膜材料100を挟み込んだ状態で、第1ローラ501と第2ローラ502をそれぞれ、図3の矢印X1、X2で示した方向に回転させ、第1ローラ501と、第2ローラ502の間を、光触媒樹脂膜材料100を矢印Yの方向に通過させることで、光触媒層60の削り取りを行う。このときの光触媒樹脂膜材料100の向きは、光触媒層60が第1ローラ501と当接する向きである。第1ローラ501と第2ローラ502の間隔は調整可能となっており、その調整を行うことで第1ローラ501が光触媒樹脂膜材料100に加える圧を変化させることにより、光触媒樹脂膜材料100の光触媒層60が存在する側の表面をどの程度の厚さで削るかを選択できる。
この実施形態では、必ずしもこの限りではないが、図3に示したように、光触媒樹脂膜材料100の一縁部の光触媒層60が削り取られる。光触媒樹脂膜材料100の削り取られた部分は、図3の101の符号が付された部分である。
より正確には、図2に示したように、一方の光触媒樹脂膜材料100の重ね合わせが行なわれる部分に対応した光触媒層60、接着層50、可塑剤移行防止層40のすべてと、第2樹脂層30の光触媒層60側の中途部(一部)までとが削り取られることになる。
【0027】
このようにして熱溶着を行えば、熱溶着された部分、つまり2枚の光触媒樹脂膜材料100の重ね合わせられた部分の内部に光触媒層60が残存することもない。また、上述したように、第2樹脂層30の中には基材10中の糸が存在する余地がないのであるから、上述の如き光触媒層60の削り取りを行ったとしても、基材10中の糸を傷めることもない。
【0028】
≪第2実施形態≫
<第2実施形態の光触媒樹脂膜材料の構成>
第2実施形態の光触媒樹脂膜材料200の構成を図4の断面図に示す。
第2実施形態の光触媒樹脂膜材料200は、第1実施形態における光触媒樹脂膜材料100とその構成の殆どを同じくしている。
異なるのは、第2実施形態の光触媒樹脂膜材料200は、第1実施形態の光触媒樹脂膜材料100ではその片面のみにあった、第2樹脂層30、可塑剤移行防止層40、接着層50、及び光触媒層60を、その両面に備えているという点である。
【0029】
基材10、樹脂層20、第2樹脂層30、可塑剤移行防止層40、接着層50、及び光触媒層60の組成を含めた構成、機能は、第1実施形態の場合と同じで良い。
【0030】
<第2実施形態の光触媒樹脂膜材料の製造方法>
第2実施形態の光触媒樹脂膜材料200の製造方法は、第1実施形態の光触媒樹脂膜材料100の製造方法と基本的には同じである。
ただし、上述した通り、第2実施形態の光触媒樹脂膜材料200は、第2樹脂層30、可塑剤移行防止層40、接着層50、及び光触媒層60を、その両面に備えているので、第2樹脂層30、可塑剤移行防止層40、接着層50、及び光触媒層60を、第1実施形態で説明したのと同様の方法で、樹脂層20の両面に順に設けていくことになる。
【0031】
<第2実施形態による光触媒樹脂膜材料の接合>
第2実施形態による光触媒樹脂膜材料200同士の接合の方法について説明する。
第2実施形態による光触媒樹脂膜材料200は、上述した通り、その両面に光触媒層60を備える。
したがって、2枚の光触媒樹脂膜材料200を所定の幅で重ねて、光触媒層60の削り取りを行なわないで熱溶着を行った場合には、その双方の光触媒樹脂膜材料200の光触媒層60が、重ね合わせられた部分の内部に残ることになる。それを防ぐため、第2実施形態では、重ね合わせが行なわれる部分における光触媒層60、接着層50、可塑剤移行防止層40、及び一部の第2樹脂層30の削り取りを、2枚の光触媒樹脂膜材料200の重ね合わせられたときに対向する側の面に対して行う。
その状態で、削り取りを行われた部分同士を、図5に示したように重ね合わせてから、第1実施形態の場合と同様に熱溶着を行うことで、第2実施形態による光触媒樹脂膜材料200は接合される。
【0032】
<実験例>
[実験例1]
第1実施形態及び第2実施形態の光触媒樹脂膜材料の基材として、KES−FB4の表面試験機によるSMD(表面粗さ)が30μmのものを用い、第2樹脂層の厚さを20〜350μmの範囲で変えた8種類の光触媒樹脂膜材料を作製し、各光触媒樹脂膜材料の可撓性(実用上問題ない柔軟性を有しているかどうか)を目視で確認、及び各光触媒樹脂膜材料ともに同じ条件で加工機により表面を削り取った後の光触媒樹脂膜材料の表面を光学顕微鏡で目視により確認した結果について、光触媒樹脂膜材料の可撓性については、実用上問題ないものを○、略問題ないものを△、問題があるものを×とした。また、削り取り後の基材の損傷度合については、第2樹脂層20の中途部までの削り取りができているものを○、第2樹脂層20の中途部であるものの樹脂層との略境界まで削り取られたものを△、基材が損傷したものを×として以下表1に示した。
なお、基材に使用されたケナフ糸を構成する短繊維の繊維長の標準偏差(σ)は、55のものを用いた。
また、樹脂層と第2樹脂層の主成分である樹脂はともに、PVCとした。
【表1】
[実験例2]
第1実施形態及び第2実施形態の光触媒樹脂膜材料の基材として、KES−FB4の表面試験機によるSMD(表面粗さ)が60μmのものを用い、その他は実験例1と同じ条件で8種類の光触媒樹脂膜材料を作製し、同様の評価を行った結果を表2に示した。
【表2】
[実験例3]
第1実施形態及び第2実施形態の光触媒樹脂膜材料の基材として、KES−FB4の表面試験機によるSMD(表面粗さ)が90μmのものを用い、その他は実験例1及び実験例2と同じ条件で8種類の光触媒樹脂膜材料を作製し、同様の評価を行った結果を表3に示した。
【表3】
上記各表から、×が付いているものは実施不可とし、△が付いているものは、実施可能ではあるが実用上可撓性や基材の損傷に問題が生じる可能性を多少残すもの、○が付いているものは如何なる場合でも問題となる可能性が小さいものと判断した。
【符号の説明】
【0033】
10 基材
20 樹脂層
30 第2樹脂層
40 可塑剤移行防止層
50 接着層
60 光触媒層
100 光触媒樹脂膜材料
200 光触媒樹脂膜材料
500 加工機
図1
図2
図3
図4
図5