【実施例】
【0053】
以下に、実施例、比較例およびこれらを用いた応用例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものでない。なお、以下文中の「部」および「%」は質量基準である。
【0054】
[実施例および比較例]
(実施例1)
水酸基価が56.1mgKOH/gの、1,5ペンタンジオール/1,6ヘキサンジオール=50/50(モル比)のコーポリカーボネートジオール(20℃で液状)を100部と、エチレングリコール6.2部とに、HDIを16.8部加えて、70℃で1時間反応させた。その後、触媒として、DBU−オクチル酸塩を300ppm添加して、さらに3時間反応させることで、固形分100%、水酸基価45.6mgKOH/gの、20℃で液状のウレタンプレポリマーを得た。
【0055】
上記で得たウレタンプレポリマーに、さらに、水酸基価が172.6mgKOH/gの、ポリ−THF(20℃で液状)を74.4部と、水酸基価が56.1mgKOH/gの、1,5ペンタンジオール/1,6ヘキサンジオール=50/50(モル比)のコーポリカーボネートジオール(20℃で液状)を73.6部、を加えた。これにより、組成物中のウレタンプレポリマーの含有率が45%で、平均水酸基価が83.3mgKOH/gであり、30℃で液状である本実施例のウレタンプレポリマー組成物を得た。
【0056】
(実施例2)
水酸基価が56.1mgKOH/gの、1,5ペンタンジオール/1,6ヘキサンジオール=50/50(モル比)のコーポリカーボネートジオール(20℃で液状)を100部と、エチレングリコール3.1部とに、HDIを12.6部加えて、70℃で1時間反応させた。その後、触媒として、2−エチルヘキシル酸亜鉛を250ppm添加して、さらに3.5時間反応させることで、固形分100%、水酸基価24.2mgKOH/gの、20℃で液状のウレタンプレポリマーを得た。
【0057】
上記で得たウレタンプレポリマーに、さらに、水酸基価が172.6mgKOH/gの、ポリ−THF(20℃で液状)を93部と、水酸基価が56.1mgKOH/gの、1,5ペンタンジオール/1,6ヘキサンジオール=50/50(モル比)のコーポリカーボネートジオール(20℃で液状)を117部、を加えた。これにより、組成物中のウレタンプレポリマーの含有率が36%で、平均水酸基価が78.0mgKOH/gの、30℃で液状である本実施例のウレタンプレポリマー組成物を得た。
【0058】
(実施例3)
水酸基価が224.4mgKOH/gの、1,5ペンタンジオール/1,6ヘキサンジオール=50/50(モル比)のコーポリカーボネートジオール(20℃で液状)を85部と、水酸基価が140.3mgKOH/gの、1,5ペンタンジオール/1,6ヘキサンジオール=50/50(モル比)のコーポリカーボネートジオール(20℃で液状)を15部と、エチレングリコール16.6部とに、TDI(−80)を46.5部加えて、100℃で1時間反応させた。その後、触媒として、DBU−オクチル酸塩を300ppm添加して、さらに3時間反応させることで、固形分100%、水酸基価92.0mgKOH/gの、20℃で液状のウレタンプレポリマーを得た。
【0059】
上記で得たウレタンプレポリマーに、さらに、水酸基価が172.6mgKOH/gの、ポリ−THF(20℃で液状)を110.7部と、水酸基価が224.4mgKOH/gの、1,5ペンタンジオール/1,6ヘキサンジオール=50/50(モル比)のコーポリカーボネートジオール(20℃で液状)を158.2部加えた。これにより、組成物中のウレタンプレポリマーの含有率が38%で、平均水酸基価が161.1mgKOH/gの、30℃で液状である本実施例のウレタンプレポリマー組成物を得た。
【0060】
(実施例4)
水酸基価が62.3mgKOH/gの、THF−ネオペンチルグリコール共重合ポリオール(20℃で液状)を100部と、1,4ブタンジオール15.0部とに、TDI(−80)29.0部を加えて、100℃で1時間反応させた。その後、触媒として、ジブチル錫ジラウレートを150ppm添加して、さらに2.5時間反応させることで、固形分100%、水酸基価43.3mgKOH/gの、20℃で液状のウレタンプレポリマーを得た。
【0061】
上記で得たウレタンプレポリマー部に、さらに、水酸基価が62.3mgKOH/gの、THF−エチレングリコール共重合ポリオール(20℃で液状)を100部加えた。これにより、組成物中のウレタンプレポリマーの含有率が59%で、平均水酸基価が51.1mgKOH/gの、30℃で液状である本実施例のウレタンプレポリマー組成物を得た。
【0062】
(実施例5)
水酸基価が62.3mgKOH/gの、THF−ネオペンチルグリコール共重合ポリオール(20℃で液状)を100部と、1,4−ブタンジオールを10.0部とに、TDI(−80)を24.2部加えて、100℃で1時間反応させた。その後、触媒として、DBU−オレイン酸塩を250ppm添加して、さらに3.5時間反応させることで、固形分100%、水酸基価23.4mgKOH/gの、20℃で液状のウレタンプレポリマーを得た。
【0063】
上記で得たウレタンプレポリマーに、さらに、水酸基価が62.3mgKOH/gであるTHF−エチレングリコール共重合ポリオール(20℃で液状)を500部加えた。これにより、組成物中のウレタンプレポリマーの含有率が21%で、平均水酸基価が54.1mgKOH/gの、30℃で液状である本実施例のウレタンプレポリマー組成物を得た。
【0064】
(比較例1)
水酸基価が56.1mgKOH/gの、1,5ペンタンジオール/1,6ヘキサンジオール=50/50(モル比)のコーポリカーボネートジオール(20℃で液状)を80部と、水酸基価が62.3mgKOH/gの、THF−ネオペンチルグリコール共重合ポリオール(20℃で液状)を20部と、1,4ブタンジオール1.5部とに、TDI(−80)を24.2部加えて、100℃で1時間反応させた。その後、ジオクチル錫ジアセテートを150ppm添加して、さらに3時間反応させることで、固形分100%、水酸基価26.3mgKOH/gの、30℃で液状の比較例のウレタンプレポリマーを得た。
【0065】
(比較例2)
水酸基価が62.3mgKOH/gの、THF−ネオペンチルグリコール共重合ポリオール(20℃で液状)を100部と、1,3ブタンジオールを10.0部とに、4,4’−メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート29.1部を加えて、110℃で2時間反応させた。その後、触媒として、ジブチル錫ジラウレートを150ppm添加し、さらに2時間反応させて、固形分100%、水酸基価44.9mgKOH/gの、20℃で液状のウレタンプレポリマーを得た。
【0066】
上記で得たウレタンプレポリマーに、さらに、水酸基価が561.0mgKOH/gの、ポリエチレングリコール(20℃で液状)を300部加えた。これにより、平均水酸基価が397.5mgKOH/gの、組成物中のウレタンプレポリマーの含有率が32%で、30℃で液状である比較例のウレタンプレポリマー組成物を得た。
【0067】
(比較例3)
水酸基価が224.4mgKOH/gの、1,5ペンタンジオール/1,6ヘキサンジオール=50/50(モル比)のコーポリカーボネートジオール(20℃で液状)を100部と、1,6ヘキサンジオールを47.2部とに、HDIを67.2部加えて、70℃で4時間反応させることで、固形分100%、水酸基価104.9mgKOH/gの、20℃で液状のウレタンプレポリマーを得た。
【0068】
上記で得たウレタンプレポリマーに、さらに、水酸基価が172.6mgKOH/gの、ポリ−THF(20℃で液状)を74.4部と、水酸基価が56.1mgKOH/gの、1,5ペンタンジオール/1,6ヘキサンジオール=50/50(モル比)のコーポリカーボネートジオール(20℃で液状)を73.6部加えた。これにより、平均水酸基価が70.3mgKOH/gの、組成物中のウレタンプレポリマーの含有率が59%で、30℃で液状である比較例のウレタンプレポリマー組成物を得た。
【0069】
(比較例4)
水酸基価が56.1mgKOH/gの、ポリプロピレングリコール100部と、エチレングリコール1.9部とに、TDI(T−80)を12.2部加えて、100℃で1時間反応させた。その後、ジオクチル錫ジアセテートを120ppm添加し、さらに3時間反応させることで、固形分100%、水酸基価9.9mgKOH/gの、100℃で高粘度の比較例のウレタンプレポリマーを得た。該プレポリマーは、30℃でゲル化物を生じた。
【0070】
(比較例5)
水酸基価が56.1mgKOH/gの、1,5−ペンタンジオール/1,6ヘキサンジオール=50/50(モル比)のコーポリカーボネートジオール(20℃で液状)を100部と、エチレングリコール6.2部とに、HDIを16.8部を加えて、70℃で1時間反応させた。その後、触媒として、DBU−オクチル酸塩を250ppm添加して、さらに3時間反応させることで、固形分100%、水酸基価45.6mgKOH/gの、20℃で液状のウレタンプレポリマーを得た。
【0071】
上記で得たウレタンプレポリマーに、さらに、水酸基価が172.6mgKOH/gの、ポリ−THF(20℃で液状)を223.7部と、水酸基価が56.1mgKOH/gの、1,5ペンタンジオール/1,6ヘキサンジオール=50/50(モル比)のコーポリカーボネートジオール(20℃で液状)を422.1部加えた。これにより、平均水酸基価が83.3mgKOH/gの、ウレタンプレポリマーを16%含む、比較例のウレタンプレポリマー組成物を得た。このときのエチレングリコール含有率は2.3%であった。
【0072】
(比較例6)
比較例5のウレタンプレポリマー組成物100部に、さらに、エチレングリコールを11.7部加えることにより、実施例1のウレタンプレポリマー組成物と同じエチレングリコール含有率になるように調整して、平均水酸基価114.1mgKOH/gの、比較例のウレタンプレポリマー組成物を得た。
【0073】
(各例の特性)
以上のようにして得られた、実施例および比較例の各ウレタンプレポリマー組成物についての特性を、表1および表2に、それぞれ纏めて示した。具体的には、各ウレタンプレポリマー組成物の、30℃の温度における外観、表1に示した各液温度における粘度、塗布適性、ウレタンプレポリマーの平均水酸基価、組成物中におけるウレタンプレポリマーの含有率、および、各組成物を構成するウレタンプレポリマーに混合させたオリゴマーの水酸基価を、それぞれ纏めて示した。
【0074】
【0075】
【0076】
[応用例]
上記した実施例および比較例のウレタンプレポリマー組成物を使用して、下記のいずれか方法で合成擬革を作成し、後述する方法で評価した。
(1)まず、評価対象の組成物を離型紙に塗布した後、加熱硬化して皮膜(表皮層)を形成する。その後、得られた皮膜をポリウレタンレザー基材表面に加熱圧着して表皮を造面し、表皮層を形成して合成擬革を製造する方法。
(2)評価対象の組成物を基材に直接塗布した後、加熱硬化して表皮層を作製し、合成擬革を製造する方法。
(3)まず、評価対象の組成物を離型紙に塗布した後、加熱硬化して皮膜(表皮層)を形成する。その後、形成された表皮層の表面(離型紙に接している面の反対側の面)に、さらに評価対象の組成物を塗布して半硬化した接着剤層を形成する。最後に、形成した接着剤層面を、織物などの基材に貼り合わせた後、加熱硬化して合成擬革を製造する方法。
【0077】
(応用例1)
実施例3のウレタンプレポリマー組成物を70℃に保ちながら、当該組成物100部に、ポリイソシアネート架橋剤としてNCOの含有量が22.8%のルプラネートMP−102(BASF社製)を、反応基当量の105%量となる55.5部と、FTR−5570ブラック(大日精化工業(株)社製:固形分100%着色剤)2部を混合し、硬化前組成物−1を製造した。次いで、離型紙(商品名:DNTP−155T−FLAT、大日本印刷(株)社製)に、厚さが50μmとなるように、コーターを100℃に加温しながら上記硬化前組成物−1をシート状に塗布した。塗布後、150℃/5分の条件で硬化させて、離型紙上に硬化フィルムを形成した。
【0078】
次いで、実施例1のウレタンプレポリマー組成物を70℃に保ちながら、当該組成物100部に、ポリイソシアネート架橋剤としてNCOの含有量が22.8%のルプラネートMP−102(BASF社製)を、反応基当量の100%量となる27.4部混合し、硬化前組成物−2を製造した。そして、上記で作製した硬化フィルム上に、厚さが50μmとなるように、コーターを100℃に加温しながら、上記硬化前組成物−2をシート状に塗布した。塗布後、120℃/2分の条件で半硬化させて、2種類のウレタンプレポリマー組成物で形成した、硬化/半硬化フィルムの積層体を作製した。次いで、該積層体の半硬化フィルム側を基材(織物)に重ね合わせた。基材と重ね合わせた状態の全厚み(離型紙を含む)は、1,200μmであったが、これを、120℃に加熱した500μmの隙間をあけたラミネートロールで加圧密着させた。次いで、150℃/5分の条件で硬化させ、その後に離型紙から剥離して合成皮革(擬革)を製造した。
【0079】
さらに、上記で得た合成皮革に、水系表面処理剤のレザロイドD−7602(大日精化工業(株)社製)を100メッシュのグラビアロール2パスで7〜10g/m
2・Dryの条件で付着させた。その後、200℃で型押することにより、凹凸が鮮明なエンボス仕上げの合成擬革(皮革)が得られた。
【0080】
(応用例2)
実施例4のウレタンプレポリマー組成物を60℃に保ちながら、当該組成物100部に、ポリイソシアネート架橋剤としてNCOの含有量が23.5%のデュラネート24A−100(旭化成ケミカルズ(株)社製)を、反応基当量の98%量となる16.9部と、架橋反応促進剤としてジブチル錫ジラウレート25ppmと、FTR−5501ホワイト(大日精化工業(株)社製:固形分100%着色剤)3部とを混合し、硬化前組成物−3を製造した。次いで、離型紙(商品名:AR−99SG、旭ロール(株)社製)に、厚さが50μmとなるように、コーターを90℃に加温しながら、上記で調製した硬化前組成物−3をシート状に塗布した。塗布後、150℃/7分の条件で硬化させて、離型紙上に硬化フィルムを形成した。
【0081】
次いで、実施例5で得られたウレタンプレポリマー組成物を50℃に保ちながら、当該組成物100部に、ポリイソシアネート架橋剤としてNCOの含有量が33.3%のルプラネートMI(BASF社製)を、反応基当量の102%量となる12.4部を混合し、硬化前組成物−4を製造した。そして、上記で作製した硬化フィルム上に、厚さが75μmとなるように、コーターを80℃に加温しながら、上記硬化前組成物−4をシート状に塗布した。塗布後、120℃/3分の条件で半硬化させて、2種類のウレタンプレポリマー組成物で形成した、硬化/半硬化フィルムの積層体を作製した。次いで、該積層体の半硬化フィルム側を基材(織物)に重ね合わせた。基材と重ね合わせた状態の全厚み(離型紙を含む)は1,150μmであったが、これを、100℃に加熱した500μmの隙間をあけたラミネートロールで加圧密着させた。次いで、150℃/7分の条件で硬化させ、その後に離型紙から剥離して合成皮革(擬革)を製造した。
【0082】
(応用例3)
実施例3のウレタンプレポリマー組成物を70℃に保ちながら、当該組成物100部に、ポリイソシアネート架橋剤としてNCOの含有量が22.8%のルプラネートMP−102(BASF社製)を、反応基当量の105%量となる55.1部と、応用例1で使用したと同様のFTR−5570ブラック2部を混合し、硬化前組成物−5を製造した。次いで、離型紙(商品名:AR−99SG)に、厚さが75μmとなるように、コーターを100℃に加温しながら上記硬化前組成物−5をシート状に塗布した後、150℃/5分の条件で硬化させて、離型紙上に硬化フィルムを形成させた。
【0083】
次いで、基材(織物)上に湿式ポリウレタン樹脂のフォーム層を造面してなる原反に、上記で作製した硬化フィルムを離型紙側から170℃の熱をかけて加圧貼り合わせを行った。その後、離型紙から剥離して合成擬革を製造した。
【0084】
(応用例4)
実施例2のウレタンプレポリマー組成物を70℃に保ちながら、当該組成物100部に、ポリイソシアネート架橋剤としてNCOの含有量が29.5%のルプラネートMM103(BASF社製)を、反応基当量の102%量となる20.2部と、FTR−5570ブラック2部を混合し、硬化前組成物−6を製造した。
【0085】
次いで、基材(織物)上に湿式ポリウレタン樹脂のフォーム層を造面した原反に、上記で得た硬化前組成物−6を、厚みが75μmとなるように、コーターを100℃に加温ししながら上記硬化前組成物−6をシート状に塗布した。その後、150℃/7分の条件で硬化させて、硬化フィルムを形成させた。
【0086】
次いで、上記で得た硬化フィルムに、実施例1で用いたと同様のレザロイドD−7602を100メッシュのグラビアロール2パスで7〜10g/m
2・Dryの条件で付量させた。その後、170℃で型押することにより、凹凸が鮮明なエンボス仕上げの合成擬革が得られた。
【0087】
(応用比較例1)
比較例4のウレタンプレポリマーは、表2に示したように、合成中に高粘度状態となり、ゲル化物の塊が発生してしまい、オリゴマーとの混合組成物を製造することができなかった。
【0088】
(応用比較例2)
比較例1のウレタンプレポリマー組成物を120℃に保ちながら、当該組成物100部に、ポリイソシアネート架橋剤としてNCOの含有量が21.1%のデュラネートTLA−100(旭化成ケミカルズ(株)社製)を、反応基当量の100%量となる9.5部を混合し、硬化前組成物を製造した。しかしながら、該硬化前組成物は、混合後、2〜3分で粘度が大きく上昇してしまったため、塗布することができなかった。
【0089】
(応用比較例3)
比較例3のウレタンプレポリマー組成物を50℃に保ちながら、当該組成物100部に、ポリイソシアネート架橋剤としてNCOの含有量が22.8%のルプラネートMP−102(BASF社製)を、反応基当量の105%量となる55.1部と、架橋反応促進剤としてDBN−オクチル酸塩300ppmと、FTR−5570ブラック2部を混合し、硬化前組成物−7を製造した。そして、離型紙(商品名:DNTP−155T−FLAT、大日本印刷(株)社製)に、厚さが50μmとなるように、コーターを80℃に加温しながら上記硬化前組成物−7をシート状に塗布した後、150℃/5分の条件で硬化させて、離型紙上に硬化フィルムを形成した。得られた硬化後のフィルムを目視で観察したところ、塗膜の流れ現象が発生していた。
【0090】
次いで、実施例1のウレタンプレポリマー組成物を70℃に保ちながら、当該組成物100部に、ポリイソシアネート架橋剤としてNCOの含有量が22.8%のルプラネートMP−102(BASF社製)を、反応基当量の100%量となる27.4部を混合し、硬化前組成物−8を製造した。そして、上記で作製した塗膜の流れ現象が見られたフィルム上に、厚さが50μmとなるように、コーターを100℃に加温しながら上記硬化前組成物−8をシート状に塗布した。その後、120℃/2分の条件で半硬化させて、比較例3と実施例1の2種類のウレタンプレポリマー組成物で形成した、硬化/半硬化フィルムの積層体を作製した。次いで、該積層体の半硬化フィルム側を基材(織物)に重ね合わせた。積層体を基材と重ね合わせた状態の全厚み(離型紙を含む)は、1,200μmであったが、これを、120℃に加熱した500μmの隙間をあけたラミネートロールで加圧密着させた。次いで、150℃/5分の条件で硬化させ、その後に離型紙から剥離して合成皮革を製造した。しかしながら、得られた合成皮革の表皮を目視で観察したところ、硬化フィルムの作製時に生じた塗膜の流れ現象により、穴が随所に発生し、均一な皮膜となっていなかった。
【0091】
(応用比較例4)
比較例2のウレタンプレポリマー組成物を60℃に保ちながら、当該組成物100部に、ポリイソシアネート架橋剤としてNCOの含有量が33.3%のルプラネートMI(BASF社製)を、反応基当量の102%量となる91.2部と、架橋反応促進剤としてジブチル錫ジラウレート25ppmと、FTR−5501ホワイト3部とを混合し、硬化前組成物−9を製造した。次いで、離型紙(商品名:AR−99SG)に、厚さが50μmとなるように、コーターを90℃に加温しながら上記硬化前組成物−9をシート状に塗布した。塗布後、150℃/7分の条件で硬化させて、硬化フィルムを形成させた。
【0092】
次いで、実施例1のウレタンプレポリマー組成物を70℃に保ちながら、当該組成物100部に、ポリイソシアネート架橋剤としてNCOの含有量が22.8%のルプラネートMP−102(BASF社製)を、反応基当量の100%量となる27.4部を混合し、硬化前組成物−10を製造した。そして、上記で作製した硬化フィルム上に、厚さが50μmとなるように、コーターを100℃に加温しながら上記硬化前組成物−10をシート状に塗布した後、120℃/2分での条件で半硬化させて、比較例2と実施例1の2種類のウレタンプレポリマー組成物で形成した、硬化/半硬化フィルムの積層体を作製した。次いで、該積層体の半硬化フィルム側を基材(織物)に重ね合わせた。基材と重ね合わせた状態の全厚み(離型紙を含む)は、1,200μmであったが、これを、100℃に加熱した500μmの隙間をあけたラミネートロールで加圧密着させた。次いで、150℃/5分の条件で硬化させ、その後に離型紙から剥離して合成皮革(擬革)を製造した。しかし、得られた合成皮革は風合いが硬かった。
【0093】
(応用比較例5)
比較例5のウレタンプレポリマー組成物を60℃に保ちながら、当該組成物100部に、ポリイソシアネート架橋剤としてNCOの含有量が22.8%のルプラネートMP−102(BASF社製)を、反応基当量の102%量となる29.6部と、FTR−5570ブラック2部を混合し、硬化前組成物−11を製造した。次いで、離型紙(商品名:AR−99SG)に、厚さが50μmとなるように、コーターを90℃に加温しながら上記で調製した硬化前組成物−11をシート状に塗布した。塗布後、150℃/5分の条件で硬化させて、硬化フィルムを形成した。
【0094】
次いで、実施例1のウレタンプレポリマー組成物を70℃に保ちながら、当該組成物100部に、ポリイソシアネート架橋剤としてNCOの含有量が22.8%のルプラネートMP−102(BASF社製)を、反応基当量の100%量となる27.4部混合し、硬化前組成物−12を製造した。そして、上記で作製した硬化フィルム上に、厚さが50μmとなるように、コーターを100℃に加温しながら上記硬化前組成物−12をシート状に塗布した後、120℃/2分で半硬化させて、2種類のオリゴマー/ウレタンプレポリマーで形成した、硬化/半硬化フィルムの積層体を作製した。次いで、該積層体の半硬化フィルム側を基材(織物)に重ね合わせた。重ね合わせたフィルム(離型紙を含む)と基材の総厚は、1150μmであった。そしてこの重ね合わせたものを、120℃に加熱した500μmの隙間をあけたラミネートロールで加圧密着した。その後、150℃/5分の条件で硬化させた後、離型紙から剥離して合成皮革を得た。得られた合成皮革は表面滑性が低かった。
【0095】
(応用比較例6)
比較例6のウレタンプレポリマー組成物を60℃に保ちながら、当該組成物100部に、ポリイソシアネート架橋剤としてNCOの含有量が22.8%のルプラネートMP−102(BASF社製)を、反応基当量の102%量となる38.2部と、FTR−5570ブラック2部を混合し、硬化前組成物−13を製造した。そして、離型紙(商品名:AR−99SG)に、厚さが50μmとなるように、コーターを90℃に加温しながら上記硬化前組成物−13をシート状に塗布した後、150℃/5分の条件で硬化させて、硬化フィルムを形成した。
【0096】
次いで、実施例1のウレタンプレポリマー組成物を70℃に保ちながら、当該組成物100部に、ポリイソシアネート架橋剤としてNCOの含有量が22.8%のルプラネートMP−102(BASF社製)を、反応基当量の100%量となる27.4部を混合し、硬化前組成物−14を製造した。そして、上記で作製した硬化フィルム上に、厚さが50μmとなるように、コーターを100℃に加温しながら上記硬化前組成物−14をシート状に塗布した後、120℃/2分の条件で半硬化させて、比較例6と実施例1の2種類のウレタンプレポリマー組成物で形成した、硬化/半硬化フィルムの積層体を作製した。次いで、該積層体の半硬化フィルム側を基材(織物)に重ね合わせた。基材と重ね合わせた状態の全厚み(離型紙を含む)は、1,150μmであったが、これを、120℃に加熱した500μmの隙間をあけたラミネートロールで加圧密着させた。次いで、150℃/5分の条件で硬化させた後、離型紙から剥離して合成皮革を製造した。
【0097】
[参考例]
従来から合成擬革の製造に使用されている、以下の配合の調液からなる溶剤型表皮剤と溶剤型接着剤とを用い、下記に示す条件で表皮層と接着剤層を形成し、以下に示す基材(織物)に貼り合わせて、参考例1の合成擬革を製造した。
【0098】
(参考例1)
下記の合成擬革の作成条件で、上記の条件で塗膜を形成し、表皮層と接着剤層とし、熟成した後、離型紙から剥離して参考例1の合成擬革を製造した。
<表皮層>
(調液)
・レザミンME−8106(大日精化工業(株)社製、溶剤70%含有品) 100部
・DMF 33部
(離型紙)AR−99SG
(塗布量)250μm/wet
(乾燥条件)100℃/2分→120℃/3分
(膜厚)約50μm
【0099】
<接着剤層>
(調液)
・レザミンUD−750SA(大日精化工業(株)社製、溶剤25%含有品) 100部
・レザミンUD−架橋剤(大日精化工業(株)社製、溶剤25%含有品) 15部
・レザミンUD−102促進剤(大日精化工業(株)社製、溶剤98%含有品) 10部
・DMF 20部
・MEK 20部
(塗布量)100μm/wet
(予備乾燥条件)80℃/2分
(膜厚)約50μm
(基材との貼合わせ)織物にラミネートロールで、温度40℃/0μm、にて圧着
(熟成)50℃×48時間
【0100】
(参考例2)
合成擬革作成条件
従来から合成擬革の製造に使用されている、以下の配合の調液からなる溶剤型の表皮剤を用い、下記の条件で造面した湿式ポリウレタン樹脂面に、下記の条件で離型紙上に形成した表皮層用の膜を、離型紙側から170℃の熱をかけて加圧貼り合わせを行い、その後、離型紙から剥離して参考例2の合成擬革を製造した。
【0101】
<湿式ポリウレタン樹脂の造面>
(調液)
・レザミンCU−9443(大日精化工業(株)社製、溶剤70%含有品) 100部
・DMF 140部
・レザミンCUT−102(大日精化工業(株)社製) 3部
・セイカセブンBS−780(S)ブラック(大日精化工業(株)社製) 5部
(基材)織物
(塗布量)1,000μm/wet
(凝固)DMF5%aq/25℃/10分
(乾燥)120℃/5分
【0102】
<表皮層>
(調液)
・レザミンME−8106(大日精化工業(株)社製、溶剤70%含有品) 100部
・DMF 33部
(離型紙)AR−99SG
(塗布量)350μm/wet
(乾燥条件)100℃/2分→120℃/3分
(膜厚)約75μm
【0103】
上記のようにして無溶剤原料を用いて得た、応用例、比較応用例、参考例の環境対応型合成擬革について、後述する方法および基準で、耐寒伸縮性、耐摩耗性、柔軟性を評価し、得られた評価結果を表3に示した。
【0104】
【0105】
[評価方法]
(耐寒伸縮性試験)
各合成擬革について、−10℃の温度条件下、72%〜108%に伸縮させることを3万回繰り返した後、合成擬革の表面状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。評価結果を表3に示した。
○:亀裂なし
△:2〜3箇所で亀裂発生
×:亀裂多数発生
【0106】
(耐摩耗性)
学振型摩耗試験機を用い、各合成擬革の耐摩耗性を評価した。具体的には、1cm巾に裁断した各合成擬革で、荷重1kgにて6号帆布を繰り返し擦った場合に、擬革が摩滅するまでの回数をカウントした。評価結果を表3に示した。
【0107】
(柔軟性)
各合成擬革の柔軟性について、参考例1の合成擬革を基準とし、手で触った感触で比較し、以下の基準で判定し、それぞれ評価した。評価結果を表3に示した。
◎:参考例1の合成擬革よりも柔らかい
○:参考例1の合成擬革と同等
△:参考例1の合成擬革よりも少し硬い
×:参考例1の合成擬革に比べて大幅に硬い