特許第5989529号(P5989529)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989529
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】水素除去装置
(51)【国際特許分類】
   G21C 9/04 20060101AFI20160825BHJP
   G21C 9/00 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   G21C9/04
   G21C9/00 Z
   G21C9/00 K
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-264659(P2012-264659)
(22)【出願日】2012年12月3日
(65)【公開番号】特開2014-109521(P2014-109521A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年7月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】特許業務法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉井 敏浩
(72)【発明者】
【氏名】岩城 智香子
【審査官】 藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−510580(JP,A)
【文献】 特開2012−154644(JP,A)
【文献】 特開昭60−053782(JP,A)
【文献】 特開平07−098397(JP,A)
【文献】 特開2000−304895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 9/00−9/06
G21D 3/08
G21F 9/02
F28B 1/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からガスを内部に吸気する吸気口と前記内部のガスを前記外部へ排気する排気口とを接続する流路上に金属酸化物または水素を反応させる触媒が設置されており、前記金属酸化物または前記触媒を通過するガスから水素を除去する水素除去部と、
冷却材を貯える冷却材供給源と連通し、前記冷却材供給源から前記冷却材が流入する導入配管と一端が接続され、前記冷却材供給源と連通し、前記冷却材供給源へ前記冷却材を戻す戻り配管と他端が接続されており、前記冷却材を内部に流動させて、前記導入配管と前記戻り配管を介して前記冷却材供給源との間で前記冷却材を循環させる伝熱管を備え、前記ガスに含まれる水蒸気を前記伝熱管で凝縮させて水分を除去する水分除去部と
前記伝熱管が配設される領域内に設置され、前記伝熱管で凝縮した凝縮液を捕集する領域内トレイとを具備し、
原子炉格納容器の内部に前記伝熱管を、外部に前記冷却材供給源を配設し、かつ、前記冷却材供給源と前記戻り配管との接続位置を前記冷却材供給源と前記導入配管との接続位置よりも高い位置に設定し
前記領域内トレイは、前記ガスが前記水分除去部に進入する側の端部に捕集した凝縮液を下方に落下させる孔が設けられていることを特徴とする水素除去装置。
【請求項2】
前記領域内トレイは、前記水分除去部の入口側の端を他端に比べて低くして設置されることを特徴とする請求項1記載の水素除去装置。
【請求項3】
前記伝熱管が配設される領域の下方に設置され、前記伝熱管で凝縮した凝縮液を捕集する領域下方トレイをさらに具備することを特徴とする請求項1または2記載の水素除去装置。
【請求項4】
前記導入配管と前記伝熱管の各々と接続され、前記導入配管から流入する前記冷却材を前記伝熱管の各々に分配する分配ヘッダと、
前記伝熱管の各々と前記戻り配管と接続され、前記伝熱管の各々から流入する前記冷却材を収集して前記戻り配管に流入させる収集ヘッダと、をさらに具備することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の水素除去装置。
【請求項5】
前記冷却材供給源は、前記導入配管および前記戻り配管と連通し、前記冷却材が充填される容器および配管の何れか一方であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の水素除去装置。
【請求項6】
前記容器および配管の何れか一方は、水で満たされるプール中に設置されることを特徴とする請求項記載の水素除去装置。
【請求項7】
前記冷却材供給源は、前記導入配管および前記戻り配管と連通し、水で満たされるプールであることを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載の水素除去装置。
【請求項8】
前記プールは原子炉建屋内に設置される燃料プールであることを特徴とする請求項6または7に記載の水素除去装置。
【請求項9】
前記伝熱管の上方に前記伝熱管を跨ぐ仕切板をさらに設置したことを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の水素除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ガスから当該ガス中に含まれる水素を除去する水素除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、沸騰水型原子力発電所における沸騰水型原子炉の原子炉格納容器には、原子炉事故に備えて水素の濃度上昇を抑制する水素濃度制御装置が設置されている。沸騰水型原子炉の原子炉格納容器に設置される従来の水素濃度制御装置について、図7を参照して説明する。
【0003】
図7は、沸騰水型原子炉における原子炉格納容器1および沸騰水型原子炉に適用される従来の水素濃度制御装置10の構成を示す概略図である。
【0004】
図7に示されるように、原子炉格納容器1は、原子炉の炉心2を内蔵する原子炉圧力容器3を格納する。原子炉格納容器1は、原子炉圧力容器3を包囲する上部ドライウェル5、下部ドライウェル6およびウェットウェル7によって構成される。ウェットウェル7は、上部ドライウェル5とベント管8を介して接続されており、貯蔵水を保有するサプレッションプール9が形成される。また、原子炉圧力容器3の外側面は、生体遮蔽壁4によって包囲される。
【0005】
万一、原子炉圧力容器3に接続される主蒸気管11等の原子炉一次冷却系配管が破断した場合、原子炉格納容器内の上部ドライウェル5に高温・高圧の原子炉一次冷却材が放出され、上部ドライウェル5の圧力および温度が急激に上昇する。
【0006】
上部ドライウェル5に放出された高温・高圧の冷却材は、上部ドライウェル5内の気体と混合して、ベント管8を経由してサプレッションプール9内の貯蔵水の中に放出されて冷却される。このようにして、原子炉圧力容器3から放出された熱エネルギーの多くは、このサプレッションプール9内の貯蔵水中において冷却され吸収される。
【0007】
なお、原子炉圧力容器3の内部は、図示されない非常用炉心冷却系によってサプレッションプール9内の貯蔵水が注入されて炉心2が冷却される。炉心2に注入された冷却水は、長期的には炉心2から崩壊熱を吸収し、破断した配管の破断口から上部ドライウェル5へ流出される。
【0008】
上述したように、万一、原子炉一次冷却系配管が破断した場合には、上部ドライウェル5の内部における圧力と温度が、常にウェットウェル7よりも高い状態となり、ベント管8を経由してウェットウェル7内に水蒸気とガスが移動する。このとき、炉心2から放出され上部ドライウェル5の空間に存在していた核分裂生成物は、ベント管8を経由してサプレッションプール9内で捕捉される。
【0009】
原子炉一次冷却系配管が破断しない場合であっても、電源喪失等によって原子炉の冷却機能が喪失すると、原子炉圧力容器3の圧力が上昇し、主蒸気管11に設けられた安全弁12が作動して、原子炉圧力容器3内の水蒸気および核分裂生成物をサプレッションプール9内の貯蔵水中に放出する。ウェットウェル7の圧力がドライウェル5,6の圧力よりも高くなった場合には、真空破壊弁13が作動してウェットウェル内ガスがドライウェル5,6に流入する。
【0010】
このように長期的事象下では、軽水炉型原子力発電所の原子炉内では冷却材である水は放射線分解され、水素ガスと酸素ガスが発生する。さらに、炉心2の内部の燃料被覆管の温度が上昇する場合には、燃料被覆管材料のジルコニウムと水蒸気との間で反応(以下、「Metal−Water反応」と称する。)が起こり、短時間で水素ガスが発生する。
【0011】
このようにして発生する水素ガスは、発生後、破断した配管の破断口等から冷却材と共に原子炉格納容器1の内部に放出され、原子炉格納容器1の内部において水素ガスの濃度は次第に上昇する。また、水素ガスは非凝縮性であることから、原子炉格納容器1の内部圧力も上昇する。
【0012】
水素ガスが発生する状態に対して何等有効な対策を行うことができずに、水素濃度が4vol%かつ酸素濃度が5vol%以上に上昇、すなわち、水素濃度が可燃限界を超えた場合には、気体は可燃状態となる。さらに、水素濃度が上昇すると過剰な反応が発生する可能性が生じる。
【0013】
上述した水素濃度が上昇する事態への有効な対策として、従来の沸騰水型原子力発電設備の場合においては、圧力抑制式の原子炉格納容器1の内部を窒素ガスで置換して酸素濃度を低く維持する対策がとられている。上述のMetal−Water反応によって短時間で大量に発生する水素ガスに対しても、原子炉格納容器1の内部が可燃性雰囲気となることを厳しく防止して固有の安全性を達成している。
【0014】
また、水素ガスを除去するため、原子炉格納容器1の外部には、水素濃度制御装置10が設けられる。水素濃度制御装置10は、再結合器14およびブロア15を備え、原子炉格納容器1内の雰囲気を原子炉格納容器1の外部に吸引し、昇温させて雰囲気中の水素ガスと酸素ガスを再結合させて水に戻し、残りの気体を冷却してから原子炉格納容器1の内部へ戻すことによって、水素濃度の上昇を抑制している。
【0015】
また、上述の水素濃度制御装置10とは異なり外部電源、駆動部を必要とせず、静的に水素濃度を制御する方法としては、水素の酸化触媒を用いて再結合反応を促進させる触媒式再結合装置を原子炉格納容器1の内部に複数配置する方法等が提案されている。
【0016】
このような水素を除去する技術は、例えば、特開2005−3371号公報(特許文献1)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2005−3371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
Metal−Water反応によって大量の水素が発生する事象下において、上述の水素と酸素の再結合による従来の水素処理方法では、低酸素状態で水素の除去を行うことが困難である。水素除去が出来ない場合、原子炉格納容器内の圧力を低減することができず、事故を収束に導くことが困難となる。
【0019】
この場合、現行のシステムでは格納容器内雰囲気を環境に放出して格納容器内圧力を低減し、事故を収束することが計画されているが、同時に放射性廃棄物を環境に放出する恐れがある。そこで酸素濃度が低く再結合を行うのが難しい場合にも水素を除去する方法として、水素吸蔵合金の利用が提案されている。
【0020】
しかし、水素吸蔵合金が吸蔵する水素の重量は高々その合金重量の数%にすぎない。例えば、Ti−Fe合金の吸蔵水素量は合金重量の約1.8%である。よって、大量の水素発生に対処するには膨大な量の水素吸蔵合金が必要とされる。
【0021】
また、水素を窒素との触媒反応で除去する場合、特にRu(ルテニウム)金属を使用する触媒においては、空気中にある酸素により水素と窒素の反応が阻害されるため、触媒本来の性能が発揮されず原子炉格納容器内の水素を除去しきれない可能性が生じる。
【0022】
特許文献1に記載されるように、水素と窒素のRu系反応触媒の本来の性能を発揮させて水素を効果的に除去し、水素による原子炉格納容器の内圧上昇を抑制する原子炉格納容器の水素除去方法および装置が提案されているが、水素と窒素の反応触媒として典型的なRu系触媒は、水蒸気により活性が低下することが知られている。このため、過酷事故時に、原子炉格納容器の内部に存在する大量の水蒸気が、Ru系触媒層に直接導かれ、触媒活性が著しく損なわれるといった課題がある。
【0023】
本発明の実施形態は上記課題に鑑みなされたもので、水蒸気により水素除去性能が低下することのない水素除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の実施形態に係る水素除去装置は、外部からガスを内部に吸気する吸気口と前記内部のガスを前記外部へ排気する排気口とを接続する流路上に金属酸化物または水素を反応させる触媒が設置されており、前記金属酸化物または前記触媒を通過するガスから水素を除去する水素除去部と、冷却材を貯える冷却材供給源と連通し、前記冷却材供給源から前記冷却材が流入する導入配管と一端が接続され、前記冷却材供給源と連通し、前記冷却材供給源へ前記冷却材を戻す戻り配管と他端が接続されており、前記冷却材を内部に流動させて、前記導入配管と前記戻り配管を介して前記冷却材供給源との間で前記冷却材を循環させる伝熱管を備え、前記ガスに含まれる水蒸気を前記伝熱管で凝縮させて水分を除去する水分除去部と、前記伝熱管が配設される領域内に設置され、前記伝熱管で凝縮した凝縮液を捕集する領域内トレイとを具備し、原子炉格納容器の内部に前記伝熱管を、外部に前記冷却材供給源を配設し、かつ、前記冷却材供給源と前記戻り配管との接続位置を前記冷却材供給源と前記導入配管との接続位置よりも高い位置に設定し、前記領域内トレイは、前記ガスが前記水分除去部に進入する側の端部に捕集した凝縮液を下方に落下させる孔が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明の実施形態によれば、水素除去の前段で被処理ガスから水分を取り除くことができるため、被処理ガスに含まれる水分に起因する水素除去部での水素除去量の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係る水素除去装置の斜視図。
図2】本発明の実施形態に係る水素除去装置の冷却材供給源の一例である冷却材容器以外の例を示す説明図であり、(A)は冷却材供給源がプールに沈められている冷却材容器である場合を説明する説明図、(B)は冷却材供給源がプールである場合の例を説明する説明図、(C)は冷却材供給源が配管である場合の例を説明する説明図。
図3】本発明の実施形態に係る水素除去装置を原子炉格納容器の内部に設置した様子を示す水素除去装置および原子炉格納容器の断面図。
図4】本発明の第1の実施形態に係る水素除去装置の断面図。
図5】本発明の第2の実施形態に係る水素除去装置の断面図。
図6】本発明の第3の実施形態に係る水素除去装置の断面図。
図7】沸騰水型原子炉における原子炉格納容器および沸騰水型原子炉に適用される従来の可燃性ガス濃度制御装置の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態に係る水素除去装置について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明においては、上、下、左、右等の方向を示す言葉は、図示した状態または通常の使用状態を基準とする。
【0028】
図1は本発明の実施形態に係る水素除去装置の一例である水素除去装置50(50A,50B,50C)の斜視図である。
【0029】
水素除去装置50は、水素除去装置50の内部に導入(吸気)したガス(以下、「被処理ガス」と称する。)17から水分を除去する水分除去部51と、水分除去部51で水分除去後のガスから水素を除去する水素除去部52と、を具備する。
【0030】
水素除去装置50では、被処理ガス17の流れ方向を基準とすると、水分除去部51が水素除去部52の上流側に設置されており、まず、水分除去部51で被処理ガス17から水分が除去され、続いて、水素除去部52で水素が除去される。水分除去部51および水素除去部52で水分および水素が除去された被処理ガス(以下、「処理済ガス」と称する。)18は、水素除去装置50の外部へ排気される。
【0031】
水分除去部51は、例えば、外部から被処理ガス17を吸気する吸気口54よりも被処理ガス17の流れに対して上流側に配設され、例えば、水等の冷却材19を貯える冷却材容器55a等の冷却材供給源55から供給される冷却材19が内部を流動する伝熱管56を備える。
【0032】
伝熱管56の一端には、冷却材供給源55の冷却材19を伝熱管56に流入させる導入配管57が接続され、他端には伝熱管56から流出する冷却材19を冷却材供給源55に戻す戻り配管58が接続される。すなわち、水素除去装置50では、冷却材供給源55と伝熱管56とが、導入配管57および戻り配管58で連通しており、冷却材供給源55から導入配管57、伝熱管56、および戻り配管58を経由して、再び冷却材供給源55に戻る循環流路が形成されている。
【0033】
冷却材供給源55においては、冷却材19の自然循環を促す観点から、流入側の圧力よりも流出側の圧力が高くなるように導入配管57と戻り配管58とを設置することが好ましい。戻り配管58の接続位置の高さを導入配管57の接続位置の高さよりも高く設置することは、戻り配管58の接続位置と導入配管57の接続位置との間で水圧差(水頭差)を生じさせることになるので、冷却材19の自然循環を促す作用を生じる。
【0034】
また、伝熱管56は、冷却水の流入する端部が他方の端部に比べて低くなるように傾けて配設される。
【0035】
水分除去部51では、導入配管57と複数の伝熱管56の入口側との間に導入配管57から導かれる冷却材19を各伝熱管56に分配する分配ヘッダ59aが設置される。また、複数の伝熱管56の出口側と戻り配管58との間に各伝熱管56から流出する冷却材19を戻り配管58に合流させる収集ヘッダ59bが設置される。なお、分配ヘッダ59aおよび収集ヘッダ59bは、冷却材の分配機能および収集機能を損なわない限り形状は任意である。
【0036】
また、水分除去部51では、分配ヘッダ59aと収集ヘッダ59bとの間、かつ、伝熱管56の上方には、伝熱管56を跨ぐ仕切板60が設置される。仕切板60は水分除去部51に流入する被処理ガス17が伝熱管56の上方から進入するのを防ぎ、側方(または下方)から進入するように被処理ガス17の流動する方向を制限する。すなわち、仕切板60を設置することによって、被処理ガス17の流入および流出をよりスムーズにすることができる。
【0037】
さらに、水分除去部51では、伝熱管56と接する被処理ガス17に含まれる水蒸気等が凝縮した凝縮液(図1において省略)を、伝熱管56が配設される領域、すなわち、被処理ガス17と伝熱管56内を流動する冷却材との間で熱交換が行われる領域(以下、「熱交換領域」と称する。)の下方(熱交換領域の外部)で捕集する第1のトレイ61が設置される。
【0038】
水素除去部52では、例えば、上下方向等の少なくとも2箇所が開口した筐体63によって、吸気口54と内部のガスを外部へ排気する排気口66とを接続する流路が形成される。筐体63の内部、すなわち、吸気口54と排気口66とを接続する流路上には、水素と酸素とを反応させる水素/酸素触媒層64およびRu系触媒等の水素と窒素を反応させる水素/窒素触媒層65が設置される。
【0039】
水素除去部52では、吸気口54から導入されたガスは、触媒層64,65を通過し、その過程で水素が除去される。触媒層64,65を通過したガス、すなわち、処理済ガス18は、触媒層64,65から排気口66に導かれ、排気口66から外部へ排気される。ここで、符号67は排気口66に取り付けられる蓋部、符号68は水分除去部51および水素除去部52と冷却材供給源55が配設される領域とを隔離する隔壁68である。
【0040】
このように構成される水素除去装置50では、水素を含んだ水蒸気が水分除去部51の伝熱管56で水蒸気が凝縮されて水分が除去され、その後、水素除去部52で水素が除去された後、排気口66から排気される。
【0041】
このとき、水素除去部52で生じる水素と酸素との再結合反応(発熱反応)、および窒素と水素とのアンモニア生成反応(発熱反応)によって生じる反応熱が、ガスの浮力を発生させて、ガスの自然循環作用を発生および促進させる。
【0042】
なお、上述した水素除去装置50は、伝熱管56が複数の直管で構成される例であるが、ガスと伝熱管56内の冷却材19との間で熱交換可能であれば、図1に示される例に限らず任意に構成することができる。
【0043】
例えば、伝熱管56を単一の蛇行配管とし、伝熱管56の入口側を導入配管57と接続し、伝熱管56の出口側を戻り配管58と接続する構成としても良い。また、伝熱管56内を流動させる冷却材19の出入りを考えて、伝熱管56を2重管とし、伝熱管56内を流れる冷却材19の入口と出口とを一端に設置するようにしてもよい。
【0044】
また、上述した水素除去装置50では、冷却水の流入する端部が他方の端部に比べて低くなるように傾けて伝熱管56が配設されているが、特に傾きを設けずに配設されていても良い。
【0045】
さらに、上述した水素除去装置50は、水素除去部52において、水素/酸素触媒層64の上に水素/窒素触媒層65が配設されている(図1)が、水素/酸素触媒層64および水素/窒素触媒層65の配置は、図1に示される状態と上下逆の状態でも良い。
【0046】
さらにまた、上述した水素除去装置50は、第1のトレイ61が設置されている例であるが、第1のトレイ61は必ずしも設置されている必要はない。
【0047】
また、上述した水素除去装置50は、冷却材供給源55が冷却材容器55aである場合の例であるが、冷却材供給源55は冷却材容器55aに限らず、冷却材19を循環可能な構成である限り任意である。
【0048】
図2は水素除去装置50の冷却材供給源55の一例である冷却材容器55a以外の例を示す説明図であり、図2(A)は冷却材供給源55がプール55bに沈められている冷却材容器55aである場合を説明する説明図、図2(B)は冷却材供給源55がプール55bである場合の例を説明する説明図、図2(C)は冷却材供給源55が一般的な配管55cである場合を説明する説明図である。
【0049】
冷却材供給源55は、例えば、図2(A)に示されるように、冷水で満たしたプール55bの中に配置される冷却材容器55aでも良いし、図2(B)に示されるように、プール55bでも良いし、図2(C)に示されるように、一般的な配管55cでも良い。なお、符号55dは配管継手である。
【0050】
図2(A)に示される例では、伝熱管56、分配ヘッダ59a、または収集ヘッダ59bなどが万一破損した場合に、当該破損箇所を経由して水素除去装置50を覆う雰囲気がプール55b内に到達することを防ぐことができる。すなわち、冷却材供給源55側と水分除去部51および水素除去部52側との隔離状態を維持することができる。この利点は、後述する図3に示されるような水素除去装置50を原子炉格納容器1の内部の雰囲気から水素を除去する際に適用する場合に特に有効である。
【0051】
図2(B)に示される例では、冷却材容器55aに充填される冷却材19の代わりにプール55bに貯水されるプール水を冷却材19として利用するものであり、冷却材容器55aを使用する場合と比較して構成を簡素化できる。
【0052】
なお、図2(C)に示される例において、冷却材容器55aの代わりに導入配管57と戻り配管58とを接続する配管55cを、図2(A)に示される冷却材容器55aのように、冷水で満たしたプール55bの中に配置しても良い。この場合、図2(A)に示される例と同様の効果を奏することができる。
【0053】
図3は水素除去装置50を原子炉格納容器1の内部に設置した様子を示す水素除去装置50および原子炉格納容器1の断面図である。
【0054】
なお、図3では図を簡略化する観点から冷却材供給源55、導入配管57、および戻り配管58等の一部構成を省略して示している。
【0055】
水素除去装置50は、例えば、原子炉格納容器1の内部の雰囲気から水素を除去する際に適用することができる。この場合、水素除去装置50の隔壁68を原子炉格納容器1の容器壁68aとし、水分除去部51および水素除去部52を原子炉格納容器1の内部(例えば、上部ドライウェル5)に配設する一方、冷却材供給源55(図1)を原子炉格納容器1の外部に配設する。
【0056】
導入配管57および戻り配管58(何れも図1)は、容器壁68aを貫通しており、水分除去部51との間で冷却材19(図1)を循環可能に接続される。
【0057】
また、水素除去装置50を原子炉格納容器1の内部の雰囲気から水素を除去するのに適用する場合には、冷却材容器55a(図1図2(A))または配管55c(図2(C))を冷却するプール55b(図2(B))として、燃料プール(図3において省略)を使用することができる。
【0058】
冷却材容器55aまたは配管55cを冷却するプール55bとして、燃料プールを使用する場合、図2(A)に示されるように、冷却材19が循環する流路とプール55bとは隔離される形態の方が好ましい。伝熱管56、分配ヘッダ59a、または収集ヘッダ59bなどが万一破損した場合に放射性物質を含み得る原子炉格納容器1の内部のガス等が当該破損箇所を経由して原子炉格納容器1の外部にある燃料プールへ到達することを防ぐことができるためである。
【0059】
上述した水素除去装置50では、導入配管57および戻り配管58の高低差や冷却材容器55aで冷却される冷却材19と戻り配管58から冷却材容器55a等の冷却材供給源55内に戻る加熱された冷却材19との温度差により生じる比重差に起因して、冷却材供給源55、導入配管57、伝熱管56、および戻り配管58を接続する循環流路において冷却材19の自然対流を生じさせることができる。
【0060】
すなわち、水素除去装置50では、静的に冷却材供給源55と伝熱管56が配設される水分除去部51との間の熱交換を行うことができるので、水分除去部51で行う水分の除去と、水素除去部52で行う水素除去とを、外部電源、駆動部を必要とすることなく、継続的に行うことができる。
【0061】
また、水素除去装置50では、水素を含んだ水蒸気が水分除去部51の伝熱管56で水分が凝縮されて除去され、その後、水素除去部52の触媒層64,65で水素が除去された後、排気口66から排気される。従って、水素除去装置50では、水蒸気によるRu系触媒の触媒活性の低下が最小限に抑制でき、高い水素除去量を維持することができる。
【0062】
続いて、本発明の各実施形態に係る水素除去装置について、説明する。
【0063】
[第1の実施形態]
図4は、本発明の第1の実施形態に係る水素除去装置の一例である水素除去装置50Aの断面図である。
【0064】
なお、後述する第1の実施形態では、水素除去装置50Aを原子炉格納容器1(図3)の内部の雰囲気から水素を除去する場合に適用する例を説明するとともに、図を簡略化する観点から、図4では図1に示される冷却材供給源55、導入配管57、および戻り配管58等の一部構成を省略して示している。また、符号Rは被処理ガス17との熱交換が行われる熱交換領域を示している。
【0065】
水素除去装置50Aは、水素除去装置50Aの内部に導入(吸気)した被処理ガス17から水分を除去する水分除去部51と、水分除去部51で水分除去後のガスから水素を除去する水素除去部52とを具備する。
【0066】
水分除去部51は、被処理ガス17の流れに対して、水素除去部52の上流側に配設され、被処理ガス17と熱交換する伝熱管56を備える。また、熱交換領域Rの下方には、被処理ガス17との熱交換により伝熱管56の表面に生じ、伝熱管56から落下する凝縮液71を受け止めて捕集する第1のトレイ61が設置される。さらに、伝熱管56の上方には、被処理ガス17の流入方向を制限し、水素除去装置50A内でのガスの流動をスムーズにする観点から、伝熱管56を跨ぐように仕切板60が設置される。
【0067】
水分除去部51では、流入した被処理ガス17が熱交換領域Rを抜ける過程で、熱交換領域Rに配設される伝熱管56を介して伝熱管56の内部を流動する冷却材と被処理ガス17とが熱交換され、被処理ガス17が冷却される。すると、伝熱管56の表面に被処理ガス17に含まれる水蒸気が凝縮し、被処理ガス17に含まれる水分が凝縮液71として除去される。伝熱管56の表面に生じた凝縮液71は、やがて、自然落下し、第1のトレイ61で捕集される。
【0068】
水素除去部52は、例えば、下側の開口部を吸気口54とし、上側の開口部を排気口66とする筐体63内に水素/酸素触媒層64および水素/窒素触媒層65を設置して構成される。水素/酸素触媒層64および水素/窒素触媒層65は、例えば筺体63内の支持部72で支持される。
【0069】
水素除去部52では、水分除去部51を通過して水分が除去された被処理ガス17が吸気口54から導入された被処理ガス17は、水素/酸素触媒層64で水素と酸素との再結合反応によって水素が消費(除去)される。続いて、水素/窒素触媒層65で被処理ガス17に含まれている窒素と水素とを反応させ、不燃性のアンモニアに変化させることによって水素が消費(除去)される。触媒層64,65を通過し、水素が除去された処理済ガス18は、排気口66に導かれ、排気口66から外部へ排気される。
【0070】
このように構成される水素除去装置50Aでは、水素除去部52の前段に水分を除去する水分除去部51が設置されているため、水素除去部52が水素を除去する前に水分除去部51で被処理ガス17から水分を除去することができる。
【0071】
従って、水素除去部52に適用される水素と反応させる触媒として、水蒸気によって活性が低下することが知られている水素と窒素の反応触媒として典型的なRu系反応触媒を用いたとしても、Ru系反応触媒の活性低下が抑制されるので、水蒸気が含有される水素を被処理ガス17とする場合においても、水素除去量を低下させることなく、水素除去を継続的に行うことができる。
【0072】
次に、本発明の第1の実施形態に係る水素除去装置を用いた水素除去方法(以下、「第1の水素除去方法」と称する。)について説明する。
【0073】
第1の水素除去方法は、例えば、水素除去装置50Aを用いて行われる。第1の水素除去方法は、被処理ガス17を水分除去部51に流入させ、水分除去部51で、被処理ガス17に含まれる水蒸気を伝熱管56で凝縮させて被処理ガス17から水分を除去する水分除去ステップと、水分除去ステップを経て水分が除去され吸気口54から流入する被処理ガス17を水素除去部52に内蔵される触媒層64,65を通過させて被処理ガス17から水素を除去する水素除去ステップと、を具備する。
【0074】
水素除去装置50Aを用いて、原子炉格納容器1の内部の雰囲気から水素を除去する第1の水素除去方法では、なんらかの原因により、燃料被覆管の温度が上昇し、水蒸気と燃料被覆管材料であるジルコニウムとの間で反応(Metal−Water反応)が生じて水素が発生し、大量の蒸気とともに原子炉圧力容器2から漏洩する。原子炉圧力容器2から原子炉格納容器1内に漏洩した水蒸気および水素が水素除去装置50A内に流入する。
【0075】
水素除去装置50Aでは、まず、水素除去装置50A内に流入する水素を含んだ水蒸気である被処理ガス17は、冷却材19を通水した伝熱管56の表面で熱交換されて凝縮し、凝縮液71として除去される(水分除去ステップ)。
【0076】
水分が除去された被処理ガス17は、吸気口54から筐体63の内部に流入し、筐体63に内蔵される水素/酸素触媒層64および水素/窒素触媒層65を通過する。水素/酸素触媒層64では水素と酸素との再結合反応によって被処理ガス17中の水素が消費され、水素/窒素触媒層65では窒素と水素とのアンモニア生成反応によって被処理ガス17中の水素が消費される。
【0077】
すなわち、再結合反応およびアンモニア生成反応の過程で、水素が消費されて水素が除去される(水素除去ステップ)。水素除去ステップで水素/酸素触媒層64および水素/窒素触媒層65で水素が除去された処理済ガス18は、排気口66から排気される。
【0078】
このように、第1の水素除去方法では、水素除去ステップに先立ち、水分除去ステップを行うため、水素と反応させる触媒としてRu系反応触媒を用いたとしても、Ru系反応触媒の活性低下が抑制され、水蒸気が含有される水素を被処理ガス17とする場合においても、水素除去量を低下させることなく、水素除去を継続的に行うことができる。
【0079】
水素除去装置50Aおよび水素除去装置50Aを用いた水素除去方法(第1の水素除去方法)によれば、水素除去部52で水素除去する前に水分除去部51で被処理ガス17から水分を除去するため、水蒸気によって活性が低下することが知られている水素と窒素の反応触媒として典型的なRu系反応触媒を用いたとしても、Ru系反応触媒の活性低下を抑制するので、水蒸気が含有される水素を被処理ガス17とする場合においても、水素除去量を低下させることなく、水素除去を継続的に行うことができる。
【0080】
[第2の実施形態]
図5は、本発明の第2の実施形態に係る水素除去装置の一例である水素除去装置50Bの断面図である。
【0081】
なお、後述する第2の実施形態では、水素除去装置50Bを原子炉格納容器1(図3)の内部の雰囲気から水素を除去する場合に適用する例を説明するとともに、図を簡略化する観点から、図5では図4と同様に冷却材供給源55、導入配管57、および戻り配管58等の一部構成を省略して示している。
【0082】
水素除去装置50Bは、水素ガス除去装置50Aに対して、伝熱管56が配設される領域、すなわち、熱交換領域内に第1のトレイ61と同様の第2のトレイ73をさらに具備する点で相違するが、その他の点では実質的に相違しない。そこで、本実施形態の説明では、上記相違点を中心に説明し、水素ガス除去装置50Aと同一の構成要素には同一の符号を付して、説明を省略する。
【0083】
水素除去装置50Bは、水分除去部51と、水素除去部52とを具備し、水分除去部51内の熱交換領域Rの下方に第1のトレイ61が設置される水素除去装置50Aに対して、さらに、熱交換領域Rの内部に第2のトレイ73が追設されて構成される。
【0084】
第2のトレイ73は、例えば、図5における手前側に位置する分配ヘッダ59a(図1)側と図5における奥側に位置する収集ヘッダ59b(図1)側で支持され、また、分配ヘッダ59a側および収集ヘッダ59b側の何れか一方が低くなるように傾斜させて設置される。このように第2のトレイ73を傾斜させて設置することで、捕集された凝縮液71を他の伝熱管56に垂らすことなく、低部に案内し、最終的には第1のトレイ61内に捕集することができる。
【0085】
このように構成される水素除去装置50Bでは、水素除去装置50Aと同様の効果を奏するとともに、一の伝熱管56に凝縮した凝縮液71を当該伝熱管56の下方に配設される他の伝熱管56に垂らすことがないので、伝熱管56表面に凝縮液膜が形成されるのを防ぎ、伝熱性能の劣化を抑制することができる。
【0086】
次に、本発明の第2の実施形態に係る水素除去装置を用いた水素除去方法(以下、「第2の水素除去方法」と称する。)について説明する。
【0087】
第2の水素除去方法は、例えば、水素除去装置50Bを用いて行われ、第1の水素除去方法に対して、伝熱管56に凝縮した凝縮液71の捕集方法が異なるが、被処理ガス17から水分を除去する水分除去ステップ、および被処理ガス17から水素を除去する水素除去ステップについては、第1の水素除去方法と実質的に同様であるため、水分除去ステップおよび水素除去ステップについては説明を省略する。
【0088】
第2の水素除去方法で行われる凝縮液71の捕集方法は、熱交換領域Rの下方(外部)に設置される第1のトレイ61に加えて、熱交換領域Rの内部に配設される第2のトレイ73でも凝縮液71を捕集する。
【0089】
このように、第2の水素除去方法では、熱交換領域Rの内部でも凝縮液71を捕集することによって、一の伝熱管56に凝縮した凝縮液71を当該伝熱管56の下方に配設される他の伝熱管56に垂らすことがないので、伝熱管56表面に凝縮液膜が形成されるのを防ぎ、伝熱性能の劣化を抑制することができる。
【0090】
なお、上述した水素除去装置50Bの例は、設置される第2のトレイ73の数量が1個の場合であるが、水素除去装置50Bに設置される第2のトレイ73の数量は、必ずしも1個でなくても良く、複数個であっても良い。
【0091】
[第3の実施形態]
図6は、本発明の第3の実施形態に係る水素除去装置の一例である水素除去装置50Cの断面図である。
【0092】
なお、後述する第3の実施形態では、水素除去装置50Cを原子炉格納容器1の内部の雰囲気から水素を除去する場合に適用する例を説明するとともに、図を簡略化する観点から、図6では図4,5と同様に冷却材供給源55、導入配管57、および戻り配管58等の一部構成を省略して示している。
【0093】
水素除去装置50Cは、水素ガス除去装置50Bに対して、第2のトレイ73の代わりに第3のトレイ76をさらに具備する点で相違するが、その他の点では実質的に相違しない。そこで、本実施形態の説明では、上記相違点を中心に説明し、水素ガス除去装置50Bと同一の構成要素には同一の符号を付して、説明を省略する。
【0094】
水素除去装置50Cは、水分除去部51と、水素除去部52とを具備し、水分除去部51内の熱交換領域Rの下方に第1のトレイ61が設置されるとともに、熱交換領域Rの内部に第3のトレイ76が追設されて構成される。第3のトレイ76は、第2のトレイ73に対して、被処理ガス17が流入する側の端部にトレイ内に捕集した凝縮液71を下方に落下させる孔が追設されたものである。
【0095】
このように構成される水素除去装置50Cでは、水素除去装置50Bと同様の効果を奏するとともに、水分除去部51の被処理ガス17の流入口近傍で落下する凝縮液71が水分除去部51に流入する被処理ガス17に含まれる水分を凝縮させるため、水分除去効果をより高めることができる。
【0096】
次に、本発明の第3の実施形態に係る水素除去装置を用いた水素除去方法(以下、「第3の水素除去方法」と称する。)について説明する。
【0097】
第3の水素除去方法は、例えば、水素除去装置50Cを用いて行われ、第2の水素除去方法に対して、熱交換領域Rの内部に配設される第3のトレイ76内に捕集された凝縮液71をさらに利用し、水分除去部51の被処理ガス17の流入口近傍で落下させることによって、当該凝縮液71が通過する被処理ガス17の水分の一部を凝縮させるステップをさらに具備する点、すなわち、水分除去ステップが異なる。
【0098】
その一方で、第3の水素除去方法における水素除去ステップは、第1の水素除去方法および第2の水素除去方法と実質的に同様である。そこで、水素除去ステップについては説明を省略し、水分除去ステップを中心に説明する。
【0099】
第3の水素除去方法における水分除去ステップは、二段階で行われる。まず、第1の段階として、水分除去部51の被処理ガス17の流入口近傍で落下する凝縮液71を通過させることによって、被処理ガス17の水分の一部を凝縮させる第1の水分除去ステップと、第1,2の水素除去方法における水分除去ステップと同様の第2の水分除去ステップと、を備える。
【0100】
このように、第3の水素除去方法では、第1,2の水素除去方法に対して、水分除去部51の被処理ガス17の流入口近傍で落下する凝縮液71を通過させることによって、被処理ガス17の水分の一部を凝縮させるステップ(第1の水分除去ステップ)をさらに、備えるため、被処理ガス17に含まれる水分の除去効果をより高めることができる。
【0101】
水素除去装置50Cおよび水素除去装置50Cを用いた水素除去方法(第3の水素除去方法)によれば、水素除去装置50Aおよび水素除去装置50Aを用いた水素除去方法(第1の水素除去方法)と同様の効果を奏するとともに、水分除去部51の被処理ガス17の流入口近傍で落下する凝縮液71が水分除去部51に流入する被処理ガス17に含まれる水分を凝縮させるため、水分除去効果をより高めることができる。
【0102】
以上、水素除去装置50(50A,50B,50C)および水素除去装置50(50A,50B,50C)を用いて行う水素除去方法によれば、水素除去の前段で被処理ガスから水分を取り除くことができるため、水素除去を行う水素除去部に水分の少ない乾燥した被処理ガスを供給することができ、水蒸気によるRu系触媒の活性低下を抑制できる。
【0103】
すなわち、原子炉建屋内のような過酷事故発生時に大量の水蒸気とともに水素が充満し得るような環境下に水素除去装置50(50A,50B,50C)を設置して適用する場合においても、水素除去部52に設置される水素/酸素触媒層64に適用されるRu系触媒の活性が著しく損なわれることがなく、水素除去部52での水素除去量低下を抑制することができる。
【0104】
また、水素除去装置50Bおよび水素除去装置50Bを用いた水素除去方法によれば、水素除去装置50Aおよび水素除去装置50Aを用いた水素除去方法と同様の効果を奏するとともに、一の伝熱管56に凝縮した凝縮液71が当該伝熱管56の下方に配設される他の伝熱管56に液垂れすることを防止できるので、伝熱管56表面に凝縮液膜が形成されるのを防ぎ、伝熱性能の劣化を抑制することができる。
【0105】
また、水素除去装置50Cおよび水素除去装置50Cを用いた水素除去方法によれば、水素除去装置50Aおよび水素除去装置50Aを用いた水素除去方法と同様の効果を奏するとともに、水分除去部51の被処理ガス17の流入口近傍で落下する凝縮液71が水分除去部51に流入する被処理ガス17に含まれる水分を凝縮させるため、水分除去効果をより高めることができる。
【0106】
さらに、各実施形態ではRu系触媒を用いた水素除去装置50について説明してきたが、これに限られない。例えば、内部に金属酸化物(例えば、過酸化マンガン(Mn)、酸化コバルト(Co)、酸化銅(CuO)等)または過酸化金属を備え、金属酸化物または過酸化金属に含まれるOと水素ガスが結合して水を生成することで水素を除去する水素除去装置であってもよい。
【0107】
この場合も、金属酸化物または過酸化金属の表面に水滴が付着すると水素ガスの除去性能が低下するため、被処理ガス17の水蒸気を予め取り除くことによって水素除去装置の性能低下を抑制することができる。
【0108】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階では、上述した実施例以外にも様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、追加、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0109】
1…原子炉格納容器、2…炉心、3…原子炉圧力容器、4…生体遮蔽壁、5…上部ドライウェル、6…下部ドライウェル、7…ウェットウェル、8…ベント管、9…サプレッションプール、10…従来の可燃性ガス濃度制御装置、11…主蒸気管、12…安全弁、13…真空破壊弁、14…再結合器、15…ブロア、17…被処理ガス、18…処理済ガス、19…冷却材(水)、50(50A,50B,50C)…水素除去装置、51…水分除去部、52…水素除去部、54…吸気口、55…冷却材供給源、55a…冷却材容器、55b…プール、55c…配管、55d…配管継手、56…伝熱管、57…導入配管、58…戻り配管、59a…分配ヘッダ、59b…収集ヘッダ、60…仕切板、61…第1のトレイ、63…筐体、64…水素/酸素触媒層、65…水素/窒素触媒層、66…排気口、67…蓋部、68…隔壁、68a…容器壁、71…凝縮液、72…支持部、73…第2のトレイ、76…第3のトレイ、R…熱交換領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7