(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
自動車において、手動式の駐車ブレーキに代えて、電動式の駐車ブレーキを搭載する傾向がある。
【0003】
電動式の駐車ブレーキでは、たとえばボタンを操作することで、モータなどのアクチュエータが駆動し、駐車ブレーキを作動または解除させる。また、たとえば、駐車時に駐車ブレーキを自動で作動させたり、坂道発進時に駐車ブレーキを自動で解除させたりすることもできる。そのためには、駐車ブレーキの状態(「作動」か「解除」か)をECU(電子制御装置)などで記憶しておく必要がある。
【0004】
下記の特許文献1〜4には、駐車ブレーキの制御装置や制御方法が開示されている。
【0005】
特許文献1では、ボタンの操作後に、駐車ブレーキが作動または解除へ移行状態であることを示すメモリエレメントが形成される。制御装置の故障後に、メモリエレメントがセットされていれば、モータにより駐車ブレーキを解除側へ動かして、再較正する。このとき、駐車ブレーキがストッパに衝突したのを、モータの消費電流に基づいて検知し、その位置から駐車ブレーキを所定量運動させる。
【0006】
特許文献2では、イグニッションスイッチがオン状態になると、モータなどのアクチュエータを作動して、駐車ブレーキに僅かなブレーキトルクを発生させ、このときのピストン位置を初期位置とする。また、初期位置から所定量だけピストンを戻した位置を原点とする。そして、指令により駐車ブレーキが作動した後、ピストンを原点に戻して、一定のパッドクリアランスを得ている。
【0007】
特許文献3では、駐車ブレーキの作動時または解除時に、力伝達装置や制動装置にかかる力と、力伝達装置に備わるモータなどのアクチュエータの位置とをセンサにより検出する。そして、検出値と設定値とに基づいて、アクチュエータの駆動を制御する。
【0008】
特許文献4では、駐車ブレーキの作動時または解除時に、マイクロスイッチ、ホールセンサ、もしくはリゾルバ、またはモータ電流により、アクチュエータの基準位置、基準座標、および実際座標を決定する。さらに、アクチュエータの解除端座標と操作端座標とから運動範囲を決定し、実際座標が運動範囲外にあれば、信号を出力する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照しながら説明する。各図において、同一の部分または対応する部分には、同一符号を付してある。
【0022】
まず、本実施形態の電動式駐車ブレーキシステム100の構成を、
図1を参照しながら説明する。以下では、「電動式駐車ブレーキ」を「EPKB」と表記する。
【0023】
EPKBシステム100は、自動車に搭載されている。EPKB制御装置10は、EPKBシステム100の制御系を構成している。EPKB−SW(EPKBスイッチ)7は、EPKBシステム100の操作系を構成している。モータ8L、8RとEPKB9L、9Rは、EPKBシステム100の機械系を構成している。
【0024】
EPKB−SW7は、たとえばタンブラタイプのスイッチから成り、自動車の運転席に設けられている。EPKB−SW7は、中立、作動、および解除の3つの状態に操作することができる。
【0025】
モータ8L、8Rは、ブラシと整流子を備えた直流モータから成り、流れる電流の方向に応じて正転または逆転する。
【0026】
モータ8LとEPKB9Lは、たとえば自動車の左前輪に設けられている。モータ8Lの正転または逆転の駆動力により、EPKB9Lは作動または解除される。モータ8RとEPKB9Rは、たとえば自動車の右前輪に設けられている。モータ8Rの正転または逆転の駆動力により、EPKB9Rは作動または解除される。
【0027】
EPKB9L、9Rを作動させることで、左右前輪の回転が阻止される。EPKB9L、9Rを解除させることで、左右前輪の回転が可能になる。
【0028】
EPKB制御装置10には、駆動部1L、1R、制御部2、記憶部3、判定部4L、4R、IG検出部5、および車速記憶部6が備わっている。
【0029】
駆動部1Lは、左側のモータ8Lに電流を流して、モータ8Lを正転または逆転駆動し、左側のEPKB9Lを作動または解除させる。駆動部1Rは、右側のモータ8Rに電流を流して、モータ8Rを正転または逆転駆動し、右側のEPKB9Rを作動または解除させる。制御部2は、駆動部1L、1Rの動作を制御する。
【0030】
記憶部3は、EPKB9L、9Rの状態(「作動」または「解除」)を記憶する。制御部2は、EPKB9L、9Rを作動または解除するように駆動部1L、1Rを制御する度に、記憶部3に記憶されたEPKB9L、9Rの状態を更新する。
【0031】
判定部4Lは、左側のモータ8Lに流れる電流に基づいて、左側のEPKB9Lの状態を判定する。判定部4Rは、右側のモータ8Rに流れる電流に基づいて、右側のEPKB9Rの状態を判定する。
【0032】
IG検出部5は、IG−SW(イグニッションスイッチ)11がオン操作されて、電源+Bから通電されることで、IG−SW11のオン状態を検出する。また、IG検出部5は、IG−SW11がオフ操作されて、電源+Bから遮断されることで、IG−SW11のオフ状態を検出する。IG検出部5は、本発明の「検出部」の一例である。
【0033】
車速記憶部6は、車速検出手段12により検出された車速情報を随時記憶する。制御部2は、車速記憶部6に記憶された車速情報に基づいて、自動車が走行中であるか否かを判断する。
【0034】
次に、駆動部1L、1Rの具体的構成を、
図2を参照しながら説明する。適宜、
図3も参照する。
【0035】
駆動部1L、1Rにはそれぞれ、デューティ算出部13、PWM回路14、インバータ回路15、および電流検出部16が備わっている。
【0036】
デューティ算出部13は、制御部2からの指令値(電圧)と、電源+Bの電圧値とに基づいて所定の演算を行い、モータ8L、8Rを駆動するためのPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)信号のデューティを算出する。
【0037】
PWM回路14は、デューティ算出部13で算出されたデューティに応じたPWM信号を生成し、該PWM信号をインバータ回路15へ出力する。また、PWM回路14は、モータ8L、8Rの正転・逆転を表す情報を、符号として電流検出部16へ出力する。
【0038】
インバータ回路15は、4個のスイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4がブリッジ接続されたHブリッジ回路から成る。スイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4は、たとえばMOS型FETから成る。
【0039】
スイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4の各ゲートには、PWM回路14からそれぞれPWM信号(PWM1、PWM2、PWM3、PWM4)が入力される。スイッチング素子Q1、Q2、Q3、Q4は、そのPWM信号に基づいて、オン・オフのスイッチング動作を行い、電源+Bからモータ8L、8Rへ電流を供給する。
【0040】
電流検出部16は、演算増幅器17と乗算器18とを有している。演算増幅器17は、電流検出抵抗Rに流れるモータ電流によって当該抵抗Rの両端に生じる電圧を取り込み、これに所定のゲインを乗算することで、電流値に変換する。
【0041】
乗算器18は、演算増幅器17の出力に対し、PWM回路14から与えられる符号(1または−1)を乗算して、正負の符号を持った検出電流値を出力する。
【0042】
上記の符号は、モータ8L、8Rに流れる電流の方向によって決まる。
図3(a)に示すように、スイッチング素子のうち、Q1がオン状態で、Q2およびQ3がオフ状態にあり、Q4がPWM信号でスイッチング動作しているときは、矢印の経路でモータ8L、8Rに電流が流れ、モータ8L、8Rが正転する。この場合、PWM回路14から電流検出部16へ符号「1」が出力され、EPKB9L、9Rが作動される。
【0043】
一方、
図3(b)に示すように、スイッチング素子のうち、Q3がオン状態で、Q1およびQ4がオフ状態にあり、Q2がPWM信号でスイッチング動作しているときは、矢印の経路でモータ8L、8Rに電流が流れ、モータ8L、8Rが逆転する。この場合、PWM回路14から電流検出部16へ符号「−1」が出力され、EPKB9L、9Rが解除される。
【0044】
モータ8L、8Rの駆動中は、ブラシと摺接する整流子が切り替わる度に、電流検出部16から出力されるモータ電流にリップルが発生する。このため、制御部2は、モータ電流をローパスフィルタ(図示省略)で処理して、リップルを除去した電流値を検出する。
【0045】
また、制御部2は、モータ電流をバンドパスフィルタ(図示省略)で処理して、リップルを抽出し、パルス生成回路(図示省略)によりパルスを生成する。さらに、このパルスに基づいて、モータ8L、8Rの回転速度と回転位置を算出する。
【0046】
そして、制御部2は、モータ8L、8Rの回転位置、回転速度、および電流値に基づいて所定の処理を行うことで、駆動部1L、1Rのデューティ算出部13への指令値を決定する。このように、モータ8L、8Rは、制御部2と駆動部1L、1Rによってフィードバック制御される。
【0047】
次に、EPKB−SW7の操作時のEPKB制御装置10の動作を、
図4および
図5を参照しながら説明する。
【0048】
図4は、作動操作時のフローチャートである。自動車の運転手がEPKB−SW7を作動操作すると(
図4のステップS1:YES)、制御部2は記憶部3からEPKB9L、9Rの状態を読み込む(ステップS2)。このとき、記憶部3に記憶されたEPKB9L、9Rの状態が「解除」であれば(ステップS3:解除)、制御部2は、駆動部1L、1Rを制御して、EPKB9L、9Rを作動させる(ステップS4)。そして、制御部2は、記憶部3に記憶されたEPKB9L、9Rの状態を「作動」に更新する(ステップS5)。
【0049】
対して、記憶部3に記憶されたEPKB9L、9Rの状態が「解除」ではなく、「作動」であれば(ステップS3:作動)、制御部2は、駆動部1L、1RによりEPKB9L、9Rを動かさない(ステップS6)。また、記憶部3に記憶されたEPKB9L、9Rの状態を「作動」に維持する(ステップS7)。
【0050】
図5は、解除操作時のフローチャートである。運転手がEPKB−SW7を解除操作すると(
図5のステップS11:YES)、制御部2は記憶部3からEPKB9L、9Rの状態を読み込む(ステップS12)。このとき、記憶部3に記憶されたEPKB9L、9Rの状態が「作動」であれば(ステップS13:作動)、制御部2は、駆動部1L、1Rを制御して、EPKB9L、9Rを解除させる(ステップS14)。そして、制御部2は、記憶部3に記憶されたEPKB9L、9Rの状態を「解除」に更新する(ステップS15)。
【0051】
対して、記憶部3に記憶されたEPKB9L、9Rの状態が「作動」ではなく、「解除」であれば(ステップS13:解除)、制御部2は、駆動部1L、1RによりEPKB9L、9Rを動かさない(ステップS16)。また、記憶部3に記憶されたEPKB9L、9Rの状態を「解除」に維持する(ステップS17)。
【0052】
次に、IG−SW11のオン時のEPKB制御装置10の動作を、
図6を参照しながら説明する。適宜、
図3および
図7も参照する。
【0053】
IG−SW11がオフからオン状態に切り替わったことを、IG検出部5により検出すると(
図6のステップS21:YES)、駆動部1L、1Rが、EPKB9L、9Rを作動させる方向の電流をモータ8L、8Rに流す(ステップS22)。これにより、
図3(a)に矢印で示す経路でモータ8L、8Rに電流が流れて、モータ8L、8Rが正転しようとする。
【0054】
そして、駆動部1L、1Rの電流検出部16(
図2)が、モータ8L、8Rに流れる電流を検出し(ステップS23)、判定部4L、4Rが、その検出電流値に基づいて、EPKB9L、9Rの状態を判定する(ステップS24)。
【0055】
IG−SW11がオン状態になる前から、EPKB9L、9Rが解除状態にあった場合は、モータ8L、8Rの検出電流値が、
図7(a)に示すように変化する。詳しくは、モータ8L、8Rに電流が流れ始めると(時点t0)、検出電流値は突入電流のため一時的に上昇する。そして、モータ8L、8Rで電力が消費されることで、検出電流値は低いレベルALで推移する。その後、モータ8L、8Rの駆動力でEPKB9L、9Rが作動して、ブレーキパッドとディスクが接触すると(時点t2)、検出電流値は上昇して行く。
【0056】
一方、IG−SW11がオン状態になる前から、EPKB9L、9Rが作動状態にあった場合は、モータ8L、8Rの検出電流値が、
図7(b)に示すように変化する。詳しくは、モータ8L、8Rに電流が流れ始めると(時点t0)、検出電流値は急上昇する。そして、ブレーキパッドとディスクが既に接触しているので、検出電流値は高いレベルAhで推移する。
【0057】
また、IG−SW11がオン状態になる前から、左右のEPKB9L、9Rの状態が異なっていた場合は、モータ8L、8Rのうち、一方の検出電流値が、
図7(a)に示すように変化し、他方の検出電流値が、
図7(b)に示すように変化する。
【0058】
判定部4L、4Rは、
図6のステップS24で、たとえば、時点t0でモータ8L、8Rに電流が流れ始めてから、所定時間経過した時点t1(t0<t1<t2)でのモータ8L、8Rの検出電流値と、予め設定されたしきい値As(AL<As<Ah)とを比較する。そして、
図7(a)のように、時点t1でのモータ8L、8Rの検出電流値が、しきい値Asより小さければ、EPKB9L、9Rが解除状態にあると判定する。また、
図7(b)のように、時点t1でのモータ8L、8Rの検出電流値が、しきい値As以上であれば、EPKB9L、9Rが作動状態にあると判定する。
【0059】
そして、判定部4L、4Rによる判定の結果、左右のEPKB9L、9Rの状態が一致していなければ(ステップS25:不一致)、制御部2は、続けて駆動部1L、1Rを制御して、EPKB9L、9Rを作動状態にする(ステップS29)。この後、制御部2は、記憶部3に記憶されたEPKB9L、9Rの状態を「作動」に維持、または「作動」に更新する(図示省略)。「作動」に維持するのは、記憶部3に記憶された状態が「作動」の場合であり、「作動」に更新するのは、記憶部3に記憶された状態が「解除」の場合である。
【0060】
一方、判定部4L、4Rによる判定の結果、左右のEPKB9L、9Rの状態が一致していれば(ステップS25:一致)、制御部2は、該一致状態が「作動」であるか「解除」であるかを確認する(ステップS26)。
【0061】
そして、判定結果のEPKB9L、9Rの状態が「作動」あれば(ステップS26:作動)、制御部2は記憶部3からEPKB9L、9Rの状態を読み込む(ステップS27)。このとき、記憶部3に記憶されたEPKB9L、9Rの状態も「作動」であれば(ステップS28:作動)、制御部2は、駆動部1L、1Rを制御して、EPKB9L、9Rを引き続き作動状態にする(ステップS29)。
【0062】
また、記憶部3に記憶されたEPKB9L、9Rの状態が「解除」であれば(ステップS28:解除)、制御部2は、駆動部1L、1Rを制御して、EPKB9L、9Rを解除状態にする(ステップS30)。つまり、
図3(a)に矢印で示す経路でモータ8L、8Rに電流を流すのを止めた後、
図3(b)に矢印で示す経路でモータ8L、8Rに電流を流して、モータ8L、8Rを逆転させ、EPKB9L、9Rを解除させる。
【0063】
一方、判定部4L、4Rの判定結果のEPKB9L、9Rの状態が「解除」であれば(ステップS26:解除)、制御部2は記憶部3からEPKB9L、9Rの状態を読み込む(ステップS31)。このとき、記憶部3に記憶されたEPKB9L、9Rの状態も「解除」であれば(ステップS32:解除)、制御部2は、駆動部1L、1Rを制御して、EPKB9L、9Rを引き続き解除状態にする(ステップS30)。
【0064】
また、記憶部3に記憶されたEPKB9L、9Rの状態が「作動」であれば(ステップS32:作動)、制御部2は、駆動部1L、1Rを制御して、EPKB9L、9Rを作動状態にする(ステップS29)。
【0065】
次に、自動車走行時のEPKB制御装置10の動作を、
図8を参照しながら説明する。
【0066】
自動車が走行すると、車速検出手段12により車速が検出され(ステップS41)、該車速を示す車速情報が車速記億部6に記憶される(ステップS42)。そして、運転手の操作により、IG−SW11が一旦オフになった(ステップS43:YES)後、オンになったのをIG検出部5により検出すると(ステップS44:YES)、制御部2は車速記憶部6から車速情報を読み込む(ステップS45)。
【0067】
車速記憶部6に記憶された車速情報が、車速=0を示していれば(ステップS46:YES)、制御部2は、自動車が駐車中であると判断し、
図6のステップS22〜S32の処理を実行する。
【0068】
一方、車速記憶部6に記憶された車速情報が、車速≠0(0以外)を示していれば(ステップS46:NO)、制御部2は、自動車が走行中であると判断する。この場合、駆動部1L、1Rによりモータ8L、8Rに電流を流さず、判定部4L、4RによりEPKB9L、9Rの状態を判定しない(ステップS47)。
【0069】
上記実施形態によると、IG−SW11のオン時に、EPKB9L、9Rの作動方向へ流したモータ8L、8Rの電流に基づいて、EPKB9L、9Rが作動または解除のいずれの状態にあるか判定される(
図6のステップS21〜S24)。そして、この判定結果と、記憶部3に記憶されたEPKB9L、9Rの状態とが一致すると、EPKB9L、9Rが、引き続き当該一致状態となるように制御される(ステップS26、S28、S29;ステップS26、S32、S30)。また、上記判定結果と、記憶部3に記憶されたEPKB9L、9Rの状態とが一致しなければ、EPKB9L、9Rが、記憶部3に記憶された状態となるように制御される(ステップS26、S28、S30;ステップS26、S32、S29)。
【0070】
したがって、EPKB9L、9Rやモータ8L、8Rなどの機械系が、修理や交換などのため、車体からいったん取り外された後に再び取り付けられた場合、EPKB9L、9Rは、以下のように動作する。
【0071】
判定部4L、4Rで判定されたブレーキ状態(機械系のブレーキ状態)と、記憶部3のブレーキ状態(制御系のブレーキ状態)とが共に「作動」で一致すれば、EPKB9L、9Rは、引き続き作動状態となるように制御され、一致したブレーキ状態どおりの動作が行われる(ステップS26:作動、S28:作動、S29)。また、判定部4L、4Rで判定されたブレーキ状態と、記憶部3のブレーキ状態とが共に「解除」で一致すれば、EPKB9L、9Rは、引き続き解除状態となるように制御され、一致したブレーキ状態どおりの動作が行われる(ステップS26:解除、S32:解除、S30)。よって、EPKB9L、9Rを、機械系のブレーキ状態と制御系のブレーキ状態とが一致した状態で動作させることができる。
【0072】
一方、判定部4L、4Rで判定されたブレーキ状態(機械系のブレーキ状態)が「作動」であり、記憶部3のブレーキ状態(制御系のブレーキ状態)が「解除」であって、両者が一致しない場合は、EPKB9L、9Rは解除状態となるように制御される(ステップS26:作動、S28:解除、S30)。このため、機械系のブレーキ状態は、作動から解除へ変更されて、制御系のブレーキ状態と一致する。また、判定部4L、4Rで判定されたブレーキ状態が「解除」であり、記憶部3のブレーキ状態が「作動」であって、両者が一致しない場合は、EPKB9L、9Rは作動状態となるように制御される(ステップS26:解除、S32:作動、S29)。このため、機械系のブレーキ状態は、解除から作動へ変更されて、制御系のブレーキ状態と一致する。よって、これらの場合も、EPKB9L、9Rを、機械系のブレーキ状態と制御系のブレーキ状態とが一致した状態で動作させることができる。
【0073】
また、上記実施形態では、制御部2が、EPKB9L、9Rを作動または解除するように、駆動部1L、1Rを制御する度に、記憶部3に記憶されたEPKB9L、9Rの状態を更新する(
図4のステップS5、
図5のステップS15)。このため、制御系で動かしたEPKB9L、9Rの状態を正しく記憶することができる。
【0074】
また、上記実施形態では、IG−SW11のオン時に、左右のEPKB9L、9Rの状態が一致しなければ、EPKB9L、9Rが両方とも作動状態になるので(
図6のステップS25:不一致、S29)、自動車の安全を確保することができる。
【0075】
さらに、上記実施形態では、自動車の走行中に、IG−SW11が一旦オフになった後オンになっても、モータ8L、8Rに電流が流れず、EPKB9L、9Rの状態が判定されないので(
図8のステップS47)、EPKB9L、9Rが急に作動状態になるのを防ぐことができる。
【0076】
本発明は、上述した以外にも種々の実施形態を採用することができる。たとえば、
図6の実施形態では、判定部4L、4Rで判定したEPKB9L、9Rの状態と、記憶部3のEPKB9L、9Rの状態とが一致しなかったときに、EPKB9L、9Rが記憶部3のブレーキ状態となるように制御される例を示したが、本発明はこれのみに限定するものではない。これ以外に、たとえば
図9に示すようにしてもよい。
【0077】
図9では、判定部4L、4Rによる判定結果のEPKB9L、9Rの状態が「作動」であり(ステップS26:作動)、かつ、記憶部3のEPKB9L、9Rの状態が「解除」であれば(ステップS28:解除)、制御部2は、駆動部1L、1Rを制御して、EPKB9L、9Rを作動状態にする(ステップS33)。そして、記憶部3のEPKB9L、9Rの状態を「作動」に更新する(ステップS34)。
【0078】
また、
図6の場合と同様に、判定部4L、4Rによる判定結果のEPKB9L、9Rの状態が「解除」であり(ステップS26:解除)、かつ、記憶部3のEPKB9L、9Rの状態が「作動」であれば(ステップS32:作動)、制御部2は、駆動部1L、1Rを制御して、EPKB9L、9Rを作動状態にする(ステップS29)。なお、
図9のステップS35は、
図6のステップS30に対応している。
【0079】
つまり、
図9では、判定部4L、4Rで判定したEPKB9L、9Rの状態(機械系のブレーキ状態)と、記憶部3のEPKB9L、9Rの状態(制御系のブレーキ状態)とが一致しなかったときに、EPKB9L、9Rを作動状態にする。これにより、IG−SW11のオン時に、機械系と制御系でEPKB9L、9Rの状態が異なっていても、EPKB9L、9Rが作動状態にされるので、意図しない自動車の発進を防いで、安全を確保することができる。
【0080】
また、
図8の実施形態では、IG−SW11が一旦オフからオンになった場合に(ステップS44:YES)、車速が0であれば(ステップS46:YES)、
図6のステップS22〜S32を実行する例を示したが、これに代えて、
図9のステップS22〜S35を実行するようにしてもよい。
【0081】
さらに、以上の実施形態では、自動車の左右前輪を制動するEPKB9L、9RおよびEPKB制御装置10に本発明を適用した例を挙げたが、これに限るものではない。これ以外の車両の前方または後方の車輪を制動する電動式駐車ブレーキおよび電動式駐車ブレーキ制御装置に対しても、本発明を適用することは可能である。