(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989555
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】曝気撹拌装置及びオキシデーションディッチ
(51)【国際特許分類】
C02F 3/16 20060101AFI20160825BHJP
C02F 3/12 20060101ALI20160825BHJP
B01F 3/04 20060101ALI20160825BHJP
B01F 7/16 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
C02F3/16
C02F3/12 A
B01F3/04 D
B01F7/16 G
B01F7/16 L
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-12233(P2013-12233)
(22)【出願日】2013年1月25日
(65)【公開番号】特開2014-140833(P2014-140833A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2015年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】507036050
【氏名又は名称】住友重機械エンバイロメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】柄澤 俊康
【審査官】
富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭53−140274(JP,A)
【文献】
特開2012−157829(JP,A)
【文献】
特開平09−141288(JP,A)
【文献】
特開昭60−114397(JP,A)
【文献】
特開平11−169883(JP,A)
【文献】
特開2002−001379(JP,A)
【文献】
米国特許第04269709(US,A)
【文献】
米国特許第03510110(US,A)
【文献】
米国特許第05084167(US,A)
【文献】
特開2013−022509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00−3/34
B01F 7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水面付近に設置され略鉛直方向の軸線回りに回転するインペラと、
前記インペラの側方に離間して配置され、前記インペラの下流側が開放されると共に、前記インペラの少なくとも上流側を側方から覆うことにより、前記インペラの回転による上流側への噴出流を前記インペラの下流側へ誘導するガイド板と、を備えた曝気撹拌装置において、
前記ガイド板は、鉛直方向に延在しており、
前記ガイド板の上面高さを、運転時の水面高さ以下としたことを特徴とする曝気撹拌装置。
【請求項2】
無終端状に形成された循環水路の直線状水路に、請求項1記載の曝気撹拌装置を備えたことを特徴とするオキシデーションディッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曝気撹拌装置及びこれを備えたオキシデーションディッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無終端状の循環水路が形成されたオキシデーションディッチ槽の直線状水路に、縦軸型の曝気撹拌機をインペラの一部を水面上に出した状態で配置すると共に、インペラの側方に離間した位置においてインペラの下流側を開放すると共にインペラの上流側を側方から覆うガイド板を配置し、具体的には、その下端が水没しインペラの下端を側方から覆うと共にその上端が水面上に突出しインペラの上端を側方から覆うガイド板を配置し、曝気撹拌機のインペラを回転させて表面曝気を行うと共に、ガイド板によって、インペラの回転による上流側への噴出流(撹拌流)を堰き止めつつガイド板の形状に沿ってインペラの下流側へ誘導し、オキシデーションディッチ槽内全体に効率良く循環撹拌流を形成し得るものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、上記ガイド板を設けると、ガイド板の上流側の外側の位置に、当該ガイド板によりスカムが堰き止められて堆積し水面の流れが阻害されるため、上記特許文献1にあっては、ガイド板の上部に、当該ガイド板の内外を連通する連通部であるスリットを設け、このスリットを通じてガイド板の内側の撹拌流による吸引を作用させてガイド板の外側のスカムを当該ガイド板の内側に移動させて下流側に誘導し、スカムの堆積を防止するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−157829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記ガイド板のスリットでは、スカムがガイド板の外側に多少残る可能性がある。また、曝気性能をより一層向上することも望まれている。
【0006】
そこで本発明は、インペラ及びガイド板を備えた曝気撹拌装置において、スカムの堆積を防止できると共に曝気性能を向上できる曝気撹拌装置、及び、これを備えたオキシデーションディッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による曝気撹拌装置は、水面付近に設置され略鉛直方向の軸線回りに回転するインペラと、インペラの側方に離間して配置され、インペラの下流側が開放されると共に、インペラの少なくとも上流側を側方から覆うことにより、インペラの回転による上流側への噴出流をインペラの下流側へ誘導するガイド板と、を備えた曝気撹拌装置において、ガイド板の上面高さを、運転時の水面高さ以下としたことを特徴としている。
【0008】
このような曝気撹拌装置によれば、インペラの回転による上流側への噴出流(撹拌流)は、インペラの上流側を側方から覆うガイド板で堰き止められつつガイド板の形状に沿ってインペラの下流側へ誘導され、その結果、効率良く下流側への撹拌流が形成され、撹拌性能を十分発揮できる。このとき、ガイド板の上面高さが運転時の水面高さ以下とされるため、インペラの回転により生じる飛沫は、ガイド板に邪魔されることなくガイド板を飛び越え、ガイド板の外側のスカムに衝突して当該スカムを破砕でき、スカムの堆積を防止できる。また、このように、飛沫の届く範囲が、ガイド板の上端が水面上に突出し飛沫も下流側へ誘導する従来技術に比して拡大されるため、曝気性能を向上できる。
【0009】
ここで、無終端状に形成された循環水路の直線状水路に上記曝気撹拌装置を備えるオキシデーションディッチとするのが好ましい。このオキシデーションディッチによれば、効率良く下流側への撹拌流を形成できる上記曝気撹拌装置が、循環水路の直線状水路に配置されるため、上記作用・効果に加えて、循環水路内全体に、効率良く撹拌循環流を形成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、撹拌性能を十分発揮しつつ、スカムの堆積を防止できると共に曝気性能を向上できる曝気撹拌装置及びオキシデーションディッチを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る曝気撹拌装置をオキシデーションディッチの循環水路に配置した状態を示す平面図である。
【
図2】
図1中の曝気撹拌装置を循環水路の上流側から見た正面図である。
【
図3】インペラの回転により発生しガイド板により整流された噴出流及び飛沫を示す平面図である。
【
図4】インペラの回転により発生する飛沫及びガイド板の関係を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る曝気撹拌装置をオキシデーションディッチの循環水路に配置した状態を示す平面図、
図2は、
図1中の曝気撹拌装置を循環水路の上流側から見た正面図、
図3は、インペラの回転により発生しガイド板により整流された噴出流及び飛沫を示す平面図、
図4は、インペラの回転により発生する飛沫及びガイド板の関係を示す側面図であり、本実施形態の曝気撹拌装置は、排水処理を行うオキシデーションディッチに適用されているものである。
【0013】
図1に示すように、曝気撹拌装置1は、排水等の被処理水Wが導入されるオキシデーションディッチ槽2に設けられる。オキシデーションディッチ槽2は、平面視長円形に形成された周囲壁10と、被処理水Wが満たされたオキシデーションディッチ槽2内を中央で仕切り平面視直線状に延在する区画壁11と、を備えて無終端状の循環水路を形成しており、区画壁11の両側は直線状水路13となっている。
【0014】
曝気撹拌装置1は、
図1〜
図3に示すように、曝気撹拌機3及びガイド板4を備え、循環水路の直線状水路13の区画壁11寄りに配置される。
【0015】
曝気撹拌機3は、
図2に示すように、略鉛直方向の軸線回りに回転する撹拌羽根を備えたインペラ5と、略鉛直方向の軸線を有し下部にインペラ5が設けられた回転軸6と、インペラ5を回転駆動させるための回転駆動力を生じる電動機7と、この電動機7からの回転駆動力を回転軸6に伝達し回転軸6を回転させる減速機8と、を備える。
【0016】
インペラ5は、被処理水Wの水面付近に設置され、その上部の一部が水面上に突出すると共にそれより下部が被処理水Wに浸漬するように配置される。そして、このインペラ5を回転することで噴出流が発生し、この噴出流により、飛沫が大気中に飛ばされて水面上を飛散し空気を取り込む曝気機能が発揮され、水中では撹拌流が形成されてオキシデーションディッチ槽2内全体に循環流を形成する。ここでは、インペラ5は、
図1の反時計回りに回転し、槽2内に矢印で示す図示左回りの撹拌循環流を形成する(詳しくは後述)。
【0017】
このオキシデーションディッチ槽2にあっては、ここでは、所定時間曝気撹拌することでオキシデーションディッチ槽2全体を好気性領域とし、その後所定時間インペラ5を低速回転させ撹拌のみを行うことでオキシデーションディッチ槽2全体を無酸素領域とし、これを繰り返す。インペラ5としては、例えば特開平11−290885号公報又は特開2010−203351号公報等に開示されている昇降可能なものを用い、所定時間曝気撹拌することで槽全体を好気性領域とし、その後所定時間インペラ5を被処理水Wに浸漬して撹拌のみを行うことで槽全体を無酸素領域とし、これを繰り返すオキシデーションディッチとすることもできる。さらに、インペラ5の下流側の所定領域を好気性領域とし、そこからインペラ5の上流側までを無酸素領域とするオキシデーションディッチとすることもできる。
【0018】
図1〜
図3に示すように、曝気撹拌装置1において、ガイド板4は、インペラ5の側方に離間して配置され区画壁11(
図2参照)又は直線状水路13の底に固定される。このガイド板4は、インペラ5の下流側が開放されると共に、インペラ5の少なくとも上流側を側方から覆うように構成され、その形状は、インペラ5の回転による上流側への噴出流をインペラ5の下流側へ誘導する形状とされている。
【0019】
具体的には、ガイド板4の形状は、平面視において曲線を呈しており、インペラ5の回転に沿う方向(
図1及び
図3の反時計回り方向)に延びるに連れて曲率が連続的に徐々に小さくなると共にインペラ5との離間距離が大きくなる形状とされている。なお、ガイド板4は、例えば曲率半径の異なる弧を組み合わせた場合のように、インペラ5の回転に沿う方向に延びるにつれて曲率が段階的に小さくなる形状でも良く、直線部分を含んだ形状でも良い。また、ガイド板4は、例えば、円弧形状であると共に、ガイド板の中心とインペラの中心をずらして配置することで離間距離が大きくなるようにしても良い。
【0020】
そして、特に本実施形態にあっては、ガイド板4は、その上面高さが、
図1及び
図4に示すように、曝気撹拌機3の運転時(オキシデーションディッチの運転時)の水面高さWL以下とされている。
【0021】
このような曝気撹拌装置1を備えるオキシデーションディッチでは、インペラ5が、
図1及び
図3の反時計回りに回転し、この回転に伴い、直線状水路13の上流側へ向かう噴出流は、インペラ5の上流側を側方から覆うガイド板4で堰き止められつつ、
図3に黒矢印で示すように、ガイド板4の形状に沿ってインペラ5の下流側へ誘導される。このため、インペラ5の回転による噴出流は、ガイド板4に従い下流側へ向かい、これにより、効率良く下流側への撹拌流が形成され、撹拌性能を十分発揮できる。
【0022】
このとき、ガイド板4の上面高さが運転時の水面高さWL以下とされているため、インペラ5の回転により生じる曝気のための飛沫F(
図3及び
図4の白矢印参照)は、ガイド板4に邪魔されることなく(ガイド板4に制限されることなく)ガイド板4を飛び越え、ガイド板4の外側のスカムSに衝突して当該スカムSを破砕でき、スカムSの堆積を防止できる。また、このように曝気のための飛沫Fの届く範囲が、ガイド板の上端が水面上に突出し飛沫も下流側へ誘導する(飛散を遮る)従来技術に比して拡大されるため、曝気性能を向上できる。
【0023】
また、本実施形態においては、効率良く下流側への撹拌流を形成できる上記曝気撹拌装置1(曝気撹拌機3及びガイド板4)が、オキシデーションディッチ槽2の直線状水路13に配置されているため、オキシデーションディッチ槽(循環水路)2内全体に、効率良く撹拌循環流を形成することができる。
【0024】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、曝気撹拌装置1を、長円形の循環水路を有するオキシデーションディッチに対して適用しているが、馬蹄形等の他の無終端状の循環水路を有するオキシデーションディッチに対しても適用でき、また、オキシデーションディッチ以外の循環しない水路や槽に対しても適用でき、さらには、曝気撹拌のみを対象とする水処理設備に対しても適用できる。
【符号の説明】
【0025】
1…曝気撹拌装置、2…オキシデーションディッチ槽、3…曝気撹拌機、4…ガイド板、5…インペラ、13…直線状水路、W…被処理水、WL…水面高さ。