(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書において「(メタ)アクリル」との表記は「アクリル、メタクリル」、「(メタ)アクリレート」との表記は「アクリレート、メタクリレート」の双方の表記を意味する。
【0023】
<電気泳動粒子>
本実施形態に係る電気泳動粒子は、
帯電基を有する高分子及び着色剤を含有する着色粒子と、
前記着色粒子に付着した、前記一般式(I)で表される単量体、前記一般式(II)で表される単量体、及び前記一般式(III)で表される単量体から選ばれる少なくとも1種と、反応性の単量体と、を共重合成分として含む分岐型シリコーン系高分子と、
を含んで構成される。
つまり、本実施形態に係る電気泳動粒子は、前記着色粒子に前記分岐型シリコーン系高分子が付着して構成された電気泳動粒子である。
本実施形態に係る電気泳動粒子は、電界に応じて移動する表示用粒子であり、分散媒に分散された状態において帯電特性を有し、形成された電界に応じて分散媒内を移動する。
そして、本実施形態に係る電気泳動粒子は、前記着色粒子に前記分岐型シリコーン系高分子が付着していることにより、直鎖型シリコーン系高分子または反応性共重合成分を含まない分岐型シリコーン系高分子が着色粒子に付着して構成された電気泳動粒子に比べて、着色粒子に付着した高分子の量が少なくても、粒径の小さい他の電気泳動粒子と共に分散媒に分散された状態において、当該他の電気泳動粒子との固着を抑制する。
この理由は定かではないが、以下に示す理由によるものと考えられる。
【0024】
従来、表示用粒子分散液中での電気泳動粒子の分散安定性を保つために、着色粒子の表面に高分子が付着して構成された電気泳動粒子が知られている。
しかし、粒径の異なる複数種類の電気泳動粒子を含む表示用粒子分散液においては、表示媒体の駆動を繰り返して電気泳動粒子の泳動を繰り返すと、粒径の大きい電気泳動粒子と、粒径の小さい電気泳動粒子とが、固着する場合があった。特に、粒径の大きい電気泳動粒子を構成する高分子の付着量がより少ない場合に、粒径の大きい電気泳動粒子と、粒径の小さい電気泳動粒子とが、固着しやすい傾向があった。
【0025】
これに対して、本実施形態に係る電気泳動粒子は、着色粒子に付着する高分子が、前記一般式(I)乃至(III)で表される単量体の少なくとも1種を共重合成分として含んでおり、したがって、主鎖(重合成分が連結した骨格)から伸びる側鎖として、主鎖に最も近いケイ素原子からシロキサン結合が複数個に枝分かれしている側鎖(「分岐型シリコーン側鎖」とも称する。)を有する。
この分岐型シリコーン側鎖は、例えば、主鎖に最も近いケイ素原子から1個のシロキサン結合が伸びた側鎖(「直鎖型シリコーン側鎖」とも称する。)に比べて、密に着色粒子を覆うものと考えられる。そのため、本実施形態に係る電気泳動粒子は、直鎖型シリコーン系高分子(直鎖型シリコーン側鎖を有し分岐型シリコーン側鎖を有しないシリコーン系高分子)が着色粒子に付着して構成された電気泳動粒子に比べて、着色粒子に付着した高分子の量が少なくても、分散液中で粒径の小さい他の電気泳動粒子との固着が抑制されるものと考えられる。
【0026】
また、本実施形態に係る電気泳動粒子は、着色粒子に付着する分岐型シリコーン系高分子が、反応性の単量体を共重合成分として含んでおり(反応性の単量体に由来する共重合成分を「反応性共重合成分」とも称する。)、反応性共重合成分の反応性基による例えば重合反応によって、分岐型シリコーン系高分子が着色粒子の表面に結合して付着している。
そのため、本実施形態に係る電気泳動粒子は、反応性共重合成分を含まない分岐型シリコーン系高分子が、着色粒子の表面に、例えば酸と塩基との相互作用によって付着する場合に比べて、密に着色粒子を覆うものと考えられる。
その結果、本実施形態に係る電気泳動粒子は、反応性共重合成分を含まない分岐型シリコーン系高分子が着色粒子に付着して構成された電気泳動粒子に比べて、着色粒子に付着した高分子の量が少なくても、分散液中で粒径の小さい他の電気泳動粒子との固着が抑制されるものと考えられる。
【0027】
以下に、本実施形態に係る電気泳動粒子を構成する構成要素、及び構成要素に含まれる原料成分について説明する。
【0028】
(着色粒子)
着色粒子は、帯電基を有する高分子と、着色剤と、必要に応じてその他の成分と、を含んで構成される。着色粒子は、帯電基を有する高分子中に着色剤が分散・配合された粒子であってもよいし、着色剤の粒子表面を、帯電基を有する高分子で被覆した粒子であってもよい。
【0029】
帯電基を有する高分子は、帯電基として例えばカチオン性基又はアニオン性基を有する高分子である。帯電基としてのカチオン性基としては、例えば、アミノ基、4級アンモニウム基が挙げられ(これらの基の塩も含む)、このカチオン性基によって粒子に正帯電極性が付与される。一方、帯電基としてのアニオン性基としては、例えば、フェノール基、カルボキシル基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、スルホン酸塩基、リン酸基、リン酸塩基及びテトラフェニルボロン基が挙げられ、このアニオン性基によって粒子に負帯電極性が付与される。
【0030】
帯電基を有する高分子としては、例えば、帯電基を有する単量体の単独重合体、帯電基を有する単量体とその他の単量体(帯電基を有しない単量体)との共重合体が挙げられる。
帯電基を有する単量体としては、カチオン性基を有する単量体(「カチオン性単量体」とも称する。)、アニオン性基を有する単量体(「アニオン性単量体」とも称する。)が挙げられる。
【0031】
カチオン性単量体としては、例えば、以下の単量体が挙げられる。具体的には、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ヒドロキシエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−オクチル−N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジヘキシルアミノエチル(メタ)アクリレート等の脂肪族アミノ基を有する(メタ)アクリレート類;ジメチルアミノスチレン、ジエチルアミノスチレン、ジメチルアミノメチルスチレン、ジオクチルアミノスチレン等の含窒素基を有する芳香族置換エチレン系単量体類;ビニル−N−エチル−N−フェニルアミノエチルエーテル、ビニル−N−ブチル−N−フェニルアミノエチルエーテル、トリエタノールアミンジビニルエーテル、ビニルジフェニルアミノエチルエーテル、N−ビニルヒドロキシエチルベンズアミド、m−アミノフェニルビニルエーテル等の含窒素ビニルエーテル単量体類;ビニルアミン、N−ビニルピロール等のピロール類;N−ビニル−2−ピロリン、N−ビニル−3−ピロリン等のピロリン類;N−ビニルピロリジン、ビニルピロリジンアミノエーテル、N−ビニル−2−ピロリドン等のピロリジン類;N−ビニル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;N−ビニルイミダゾリン等のイミダゾリン類;N−ビニルインドール等のインドール類;N−ビニルインドリン等のインドリン類;N−ビニルカルバゾール、3,6−ジブロム−N−ビニルカルバゾール等のカルバゾール類;2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピロジン等のピリジン類;(メタ)アクリルピペリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピペラジン等のピペリジン類;2−ビニルキノリン、4−ビニルキノリン等のキノリン類;N−ビニルピラゾール、N−ビニルピラゾリン等のピラゾール類;2−ビニルオキサゾール等のオキサゾール類;4−ビニルオキサジン、モルホリノエチル(メタ)アクリレート等のオキサジン類などが挙げられる。
汎用性の観点からは、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの脂肪族アミノ基を有する(メタ)アクリレート類が望ましく、特に重合前あるいは重合後に4級アンモニウム塩とした構造で使用されることが望ましい。4級アンモニウム塩化は、前記化合物をアルキルハライド類やトシル酸エステル類と反応させればよい。
【0032】
アニオン性単量体としては、例えば、以下の単量体が挙げられる。
具体的には、アニオン性単量体のうち、カルボン酸モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、又はそれらの無水物及びそのモノアルキルエステルやカルボキシエチルビニルエーテル、カルボキシプロピルビニルエーテルの如きカルボキシル基を有するビニルエーテル類等がある。
スルホン酸モノマーとしては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリックアシッドエステル、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコニックアシッドエステル等及びその塩がある。また、その他2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸の硫酸モノエステル及びその塩がある。
リン酸モノマーとしては、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、アシッドホスホキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホキシプロピル(メタ)アクリレート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジオクチル−2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート等がある。
望ましいアニオン性単量体としては、(メタ)アクリル酸やスルホン酸を持ったものであり、より望ましくは重合前あるいは重合後にアンモニウム塩となった構造のものである。アンモニウム塩は、3級アミン類あるいは4級アンモニウムハイドロオキサイド類と反応させることで得られる。
【0033】
その他の単量体としては、非イオン性単量体(ノニオン性単量体)が挙げられ、例えば、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリルアミド、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン、N−ジアルキル置換(メタ)アクリルアミド、スチレン、ビニルカルバゾール、スチレン、スチレン誘導体、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、イソプレン、ブタジエン、ビニルピロリドン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0034】
帯電基を有する単量体とその他の単量体との共重合比は、所望の粒子の帯電量に応じて変更される。通常は、帯電基を有する単量体とその他の単量体との共重合比は、そのモル比で1:100乃至100:0の範囲で選択される。
【0035】
帯電基を有する高分子の重量平均分子量としては、1000以上100万以下が望ましく、より望ましくは1万以上20万以下である。
【0036】
着色剤としては、有機若しくは無機の顔料や、油溶性染料等を使用してよい。例えば、マグネタイト、フェライト等の磁性紛、カーボンブラック、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、フタロシアニン銅系シアン色材、アゾ系イエロー色材、アゾ系マゼンタ色材、キナクリドン系マゼンタ色材、レッド色材、グリーン色材、ブルー色材等の公知の着色剤が挙げられる。具体的には、アニリンブルー、カルコオイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3、等が挙げられる。
【0037】
着色剤の配合量としては、帯電基を有する高分子に対し10質量%以上99質量%以下が望ましく、より望ましくは30質量%以上99質量%以下である。
【0038】
その他の成分としては、例えば、帯電制御剤、磁性材料が挙げられる。
帯電制御剤としては、電子写真用トナー材料に使用される公知のものが使用でき、例えば、セチルピリジルクロライド、BONTRON P−51、BONTRON P−53、BONTRON E−84、BONTRON E−81(以上、オリエント化学工業社製)等の第4級アンモニウム塩、サリチル酸系金属錯体、フェノール系縮合物、テトラフェニル系化合物、酸化金属粒子、各種カップリング剤で表面処理された酸化金属粒子が挙げられる。
【0039】
磁性材料としては、必要に応じて着色した無機磁性材料や有機磁性材料を使用する。透明な磁性材料、特に、透明有機磁性材料は、着色顔料の発色を阻害せず、比重も無機磁性材料に比べて小さく、望ましい。
着色した磁性材料として、例えば、特開2003−131420号公報に記載の小径着色磁性粉が挙げられ、核となる磁性粒子と該磁性粒子表面上に積層された着色層とを備えたものが用いられる。着色層としては、顔料等によって磁性粉を不透過に着色するなどしてよく、例えば光干渉薄膜を用いるのが望ましい。この光干渉薄膜とは、SiO
2やTiO
2等の無彩色材料を光の波長と同等な厚みを有する薄膜にしたものであり、薄膜内の光干渉によって光の波長を選択的に反射するものである。
【0040】
(分岐型シリコーン系高分子)
分岐型シリコーン系高分子は、下記一般式(I)で表される単量体、下記一般式(II)で表される単量体、及び下記一般式(III)で表される単量体から選ばれる少なくとも1種(それぞれを「分岐型シリコーン鎖単量体」とも称し、これらを合わせて「分岐型シリコーン鎖単量体」とも称する。)と、反応性の単量体と、必要に応じてその他の単量体と、を共重合成分として含んで構成される。
【0044】
一般式(I)、一般式(II)、及び一般式(III)中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
9及びR
10はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基、又は炭素数1以上4以下のフルオロアルキル基を表す。R
8は、水素原子、又はメチル基を表す。p、q及びrはそれぞれ独立に、1以上1000以下の整数を表す。xは、1以上3以下の整数を表す。
【0045】
一般式(I)乃至(III)で表される分岐型シリコーン鎖単量体は、分岐型シリコーン系高分子を合成する際の重合性の観点や、分散媒中で粒径の小さい他の電気泳動粒子との固着をより抑制する観点から、下記の態様が望ましい。
R
1、R
4及びR
5は、炭素数1以上4以下のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基)が望ましく、直鎖状の炭素数1以上4以下のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基)がより望ましい。
R
2、R
6及びR
9は、炭素数1以上3以下のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基)が望ましく、直鎖状の炭素数1以上3以下のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基)がより望ましい。
R
3、R
7及びR
10は、炭素数1以上3以下のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基)、又は炭素数1以上3以下のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基)の末端の炭素原子がすべてフルオロ化された炭素数1以上3以下のフルオロアルキル基が望ましく、直鎖状の炭素数1以上3以下のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基)、又は直鎖状の炭素数1以上3以下のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基)の末端の炭素原子がすべてフルオロ化された直鎖状の炭素数1以上3以下のフルオロアルキル基がより望ましい。
R
8は、水素原子又はメチル基である。
p、q及びrはそれぞれ独立に、1以上5以下の整数が望ましく、1以上4以下の整数がより望ましい。
xは、2又は3が望ましく、3がより望ましい。
【0046】
一般式(I)で表される単量体は、分岐型シリコーン系高分子を合成する際の重合性の観点や、分散媒中で粒径の小さい他の電気泳動粒子との固着をより抑制する観点から、下記の態様が望ましい。
R
1及びR
5は、炭素数1以上4以下のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基)が望ましく、直鎖状の炭素数1以上4以下のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基)がより望ましい。
R
2及びR
6は、炭素数1以上3以下のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基)が望ましく、直鎖状の炭素数1以上3以下のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基)がより望ましく、メチル基又はエチル基が更に望ましい。
R
3及びR
7は、炭素数1以上3以下のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基)、又は炭素数1以上3以下のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基)の末端の炭素原子がすべてフルオロ化された炭素数1以上3以下のフルオロアルキル基が望ましく、直鎖状の炭素数1以上3以下のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基)、又は直鎖状の炭素数1以上3以下のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基)の末端の炭素原子がすべてフルオロ化された直鎖状の炭素数1以上3以下のフルオロアルキル基がより望ましい。
R
4は、炭素数1以上4以下のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基)が望ましく、直鎖状の炭素数1以上4以下のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基)がより望ましく、メチル基又はエチル基が更に望ましい。
R
8は、水素原子又はメチル基であり、メチル基が望ましい。
p及びqはそれぞれ独立に、1以上5以下の整数が望ましく、2以上4以下の整数がより望ましい。
xは、2又は3が望ましく、3がより望ましい。
【0047】
一般式(II)で表される単量体は、分岐型シリコーン系高分子を合成する際の重合性の観点や、分散媒中で粒径の小さい他の電気泳動粒子との固着をより抑制する観点から、下記の態様が望ましい。
R
1、R
4及びR
5は、炭素数1以上4以下のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基)が望ましく、直鎖状の炭素数1以上4以下のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基)がより望ましく、メチル基又はエチル基が更に望ましい。
R
2、R
6及びR
9は、炭素数1以上3以下のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基)が望ましく、直鎖状の炭素数1以上3以下のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基)がより望ましく、メチル基又はエチル基が更に望ましい。
R
3、R
7及びR
10は、炭素数1以上3以下のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基)が望ましく、直鎖状の炭素数1以上3以下のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基)がより望ましく、メチル基又はエチル基が更に望ましい。
R
8は、水素原子又はメチル基であり、水素原子が望ましい。
p、q及びrはそれぞれ独立に、1以上5以下の整数が望ましく、1以上3以下の整数がより望ましい。
xは、2又は3が望ましく、3がより望ましい。
【0048】
一般式(III)で表される単量体は、分岐型シリコーン系高分子を合成する際の重合性の観点や、分散媒中で粒径の小さい他の電気泳動粒子との固着をより抑制する観点から、下記の態様が望ましい。
R
1、R
4及びR
5は、炭素数1以上4以下のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基)が望ましく、直鎖状の炭素数1以上4以下のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基)がより望ましく、メチル基又はエチル基がより望ましい。
R
2、R
6及びR
9は、炭素数1以上3以下のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基)が望ましく、直鎖状の炭素数1以上3以下のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基)がより望ましく、メチル基又はエチル基がより望ましい。
R
3、R
7及びR
10は、炭素数1以上3以下のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基)が望ましく、直鎖状の炭素数1以上3以下のアルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基)がより望ましく、メチル基又はエチル基がより望ましい。
p、q及びrはそれぞれ独立に、1以上5以下の整数が望ましく、1以上3以下の整数がより望ましい。
【0049】
一般式(I)で表される単量体としては、例えば、Gelest社製のMCS−M11、MFS−M15等が挙げられる。
一般式(II)で表される単量体としては、例えば、Gelest社製のRTT−1011、信越化学工業社製のX22−2404等が挙げられる。
一般式(III)で表される単量体としては、例えば、Gelest社製のVTT−106等が挙げられる。
以下に上記の単量体の構造式を示す。
【0051】
MCS−M11は、上記の構造式においてnが2以上4以下の整数であり、その分子量が800以上1000以下である。
【0053】
MFS−M15は、上記の構造式で表わされる化合物である。
【0055】
RTT−1011は、上記の構造式で表わされる化合物である。
【0057】
X22−2404は、上記の構造式で表わされる化合物である。
【0059】
VTT−106は、上記の構造式で表わされる化合物である。
【0060】
反応性の単量体としては、例えば、エポキシ基、イソシアネート基などの反応性基を有する単量体が挙げられる。具体的には、グリシジル(メタ)アクリレート(別名;(メタ)アクリル酸グリシジル)、イソシアネート系モノマー(昭和電工製、カレンズAOI、カレンズMOI)などが挙げられる。
【0061】
その他の単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシドユニットを持ったモノマー、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート等のアルキルオキシオリゴエチレングリコールの(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールの片末端(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、N,N−ジアルキルアミノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0062】
また、その他の単量体として、直鎖型シリコーン系モノマーが挙げられる。直鎖型シリコーン系モノマーの具体例としては、片末端に(メタ)アクリレート基を持ったジメチルシリコーン化合物(例えば、チッソ社製:サイラプレーンFM−0711,サイラプレーンFM−0721,サイラプレーンFM−0725等、信越化学工業社製:X−22−174DX,X−22−2426,X−22−2475等)等が挙げられる。
【0063】
分岐型シリコーン系高分子は、分岐型シリコーン鎖単量体と、反応性の単量体とが必須の共重合成分であり、その他の単量体は必要に応じて共重合成分として含まれる。
分岐型シリコーン系高分子において、分岐型シリコーン鎖単量体の共重合比は、分散液中で粒径の小さい他の電気泳動粒子との固着がより抑制される観点から、60質量%以上であることが望ましく、80質量%以上であることがより望ましく、90質量%以上であることが更に望ましい。
また、反応性の単量体の共重合比は、0.1質量%以上10質量%以下の範囲であることが望ましい。0.1質量%以上であると、分岐型シリコーン系高分子が着色粒子に付着しやすく、10質量%以下であると、電気泳動粒子に反応性基が残存しにくく、電気泳動粒子どうしの凝集を起こし難い。
【0064】
分岐型シリコーン系高分子の重量平均分子量としては、1000以上100万以下が望ましく、より望ましくは1万以上100万以下である。
【0065】
本実施形態に係る電気泳動粒子において、分岐型シリコーン系高分子の付着量(着色粒子の質量に対する分岐型シリコーン系高分子の質量)は、特に制限されないが、0.01質量%以上100質量%以下が望ましく、0.1質量%以上50質量%以下がより望ましい。0.01質量%以上であると、分散媒中で粒径の小さい他の電気泳動粒子との固着がより抑制され、100質量%以下であると、着色粒子の帯電量が保たれ、電界応答性がよい。
分岐型シリコーン系高分子の付着量は、例えば、電気泳動粒子を遠心沈降させその質量を測定し、着色粒子に対する増加量分として算出する。ほかに、電気泳動粒子の組成分析から付着量を算出することもできる。
【0066】
本実施形態に係る電気泳動粒子において、着色粒子の表面全体に対する分岐型シリコーン系高分子が覆っている表面の割合(被覆率)は、特に制限されない。分散媒中で粒径の小さい他の電気泳動粒子との固着がより抑制される観点から、10%以上が望ましく、30%以上がより望ましく、50%以上が更に望ましく、特に望ましくは70%以上100%以下である。
被覆率は、例えば、電子顕微鏡像によって検出できる。
【0067】
本実施形態に係る電気泳動粒子の製造方法は、例えば、周知の手法(コアセルベーション法、分散重合法、懸濁重合法など)によって着色粒子を形成した後、当該着色粒子を、分岐型シリコーン系高分子を含む溶媒中に分散させ、分岐型シリコーン系高分子を反応させて着色粒子の表面に付着させる手法を採用してよい。
着色粒子表面に分岐型シリコーン系高分子を付着させる手法としては、例えば、分岐型シリコーン系高分子が有する反応性基(例えばエポキシ基)と、着色粒子表面の官能基(例えばアミノ基やアンモニウム基)とを、加熱などによって重合反応させ結合する手法が挙げられる。
【0068】
<表示用粒子分散液>
本実施形態に係る表示用粒子分散液は、電気泳動粒子を含む第1の粒子群と、電気泳動粒子を含む第2の粒子群と、これら粒子群を分散するための分散媒と、を含んで構成される。
ここで、第1の粒子群は、帯電基を有する高分子及び着色剤を含有する着色粒子と、前記着色粒子に付着した、前記一般式(I)で表される単量体、前記一般式(II)で表される単量体、及び前記一般式(III)で表される単量体から選ばれる少なくとも1種と、反応性の単量体と、を共重合成分として含む分岐型シリコーン系高分子と、を含む第1の電気泳動粒子(「大径泳動粒子」とも称する。)で構成される。即ち、第1の粒子群は、本実施形態に係る電気泳動粒子で構成される。
第2の粒子群は、第1の電気泳動粒子とは異なる色を呈し、且つ、第1の電気泳動粒子よりも粒径が小さい第2の電気泳動粒子(「小径泳動粒子」とも称する。)で構成される。
本実施形態に係る表示用粒子分散液は、上記構成によって、第1の電気泳動粒子が、直鎖型シリコーン系高分子または反応性共重合成分を含まない分岐型シリコーン系高分子が着色粒子に付着して構成された電気泳動粒子である場合に比べて、第1の電気泳動粒子と第2の電気泳動粒子との固着が抑制される。
【0069】
理由は定かではないが、粒径の異なる2種類の電気泳動粒子群において、粒径の小さい方の粒子群を本実施形態に係る電気泳動粒子で構成し、粒径の大きい方の粒子群を本実施形態に係る電気泳動粒子以外の電気泳動粒子で構成しても、粒径の異なる電気泳動粒子間の固着が抑制されない場合がある。
本実施形態に係る表示用粒子分散液は、粒径の異なる2種類の電気泳動粒子群において、粒径の大きい方の粒子群を本実施形態に係る電気泳動粒子で構成することが必要である。粒径の小さい方の粒子群は、本実施形態に係る電気泳動粒子で構成してもよいし、本実施形態に係る電気泳動粒子以外の電気泳動粒子で構成してもよい。
【0070】
本実施形態に係る表示用粒子分散液において、第1の粒子群は、色によって、さらに、複数種類の群に群分けされてもよい。また、第2の粒子群も、色によって、さらに、複数種類の群に群分けされてもよい。
本実施形態に係る表示用粒子分散液は、本実施形態に係る電気泳動粒子以外の電気泳動粒子で構成された、第1の粒子群よりも粒径の大きい粒子群(以下「第3の粒子群」とも称する。)を含んでいてもよい。
以上のことを具体的な構成例を示して説明すると、下記のとおりである。
【0071】
本実施形態に係る表示用粒子分散液が、互いに色の異なる3種類の電気泳動粒子群(マゼンタ色のマゼンタ粒子群M、シアン色のシアン粒子群C、及びイエロー色のイエロー粒子群Y)を含み、これらの粒子群の粒径が、マゼンタ粒子群M>シアン粒子群C>イエロー粒子群Yの順に大きい場合を例にして説明する。この場合、例えば、以下の構成例が挙げられる。
(1)構成例の一つとして、マゼンタ粒子群Mを、本実施形態に係る電気泳動粒子で構成された粒子群とし、シアン粒子群C及びイエロー粒子群Yを、本実施形態に係る電気泳動粒子以外の電気泳動粒子で構成された粒子群とする構成が挙げられる。
この構成例においては、マゼンタ粒子群Mが第1の粒子群であり、シアン粒子群C及びイエロー粒子群Yが第2の粒子群である。
この構成例では、マゼンタ粒子群Mとシアン粒子群Cとの間、及びマゼンタ粒子群Mとイエロー粒子群Yとの間で、電気泳動粒子の固着が抑制される。
(2)構成例の一つとして、マゼンタ粒子群M及びイエロー粒子群Yを、本実施形態に係る電気泳動粒子で構成された粒子群とし、シアン粒子群Cを、本実施形態に係る電気泳動粒子以外の電気泳動粒子で構成された粒子群とする構成が挙げられる。
この構成例においては、マゼンタ粒子群Mが第1の粒子群であり、シアン粒子群C及びイエロー粒子群Yが第2の粒子群である。
この構成例では、マゼンタ粒子群Mとシアン粒子群Cとの間、及びマゼンタ粒子群Mとイエロー粒子群Yとの間で、電気泳動粒子の固着が抑制される。
(3)構成例の一つとして、マゼンタ粒子群M及びシアン粒子群Cを、本実施形態に係る電気泳動粒子で構成された粒子群とし、イエロー粒子群Yを、本実施形態に係る電気泳動粒子以外の電気泳動粒子で構成された粒子群とする構成が挙げられる。
この構成例においては、マゼンタ粒子群Mとシアン粒子群C及びイエロー粒子群Yとの間では、マゼンタ粒子群Mが第1の粒子群であり、シアン粒子群C及びイエロー粒子群Yが第2の粒子群である。また、シアン粒子群Cとイエロー粒子群Yとの間では、シアン粒子群Cが第1の粒子群であり、イエロー粒子群Yが第2の粒子群である。
この構成例では、マゼンタ粒子群Mとシアン粒子群Cとの間、マゼンタ粒子群Mとイエロー粒子群Yとの間、及びシアン粒子群Cとイエロー粒子群Yとの間で、電気泳動粒子の固着が抑制される。
(4)構成例の一つとして、マゼンタ粒子群M、シアン粒子群C及びイエロー粒子群Yを、本実施形態に係る電気泳動粒子で構成された粒子群とする構成が挙げられる。
この構成例においては、マゼンタ粒子群Mとシアン粒子群C及びイエロー粒子群Yとの間では、マゼンタ粒子群Mが第1の粒子群であり、シアン粒子群C及びイエロー粒子群Yが第2の粒子群である。また、シアン粒子群Cとイエロー粒子群Yとの間では、シアン粒子群Cが第1の粒子群であり、イエロー粒子群Yが第2の粒子群である。
この構成例では、マゼンタ粒子群Mとシアン粒子群Cとの間、マゼンタ粒子群Mとイエロー粒子群Yとの間、及びシアン粒子群Cとイエロー粒子群Yとの間で、電気泳動粒子の固着が抑制される。
(5)構成例の一つとして、シアン粒子群Cを、本実施形態に係る電気泳動粒子で構成された粒子群とし、マゼンタ粒子群M及びイエロー粒子群Yを、本実施形態に係る電気泳動粒子以外の電気泳動粒子で構成された粒子群とする構成が挙げられる。
この構成例においては、シアン粒子群Cが第1の粒子群であり、イエロー粒子群Yが第2の粒子群である。そして、マゼンタ粒子群Mが第3の粒子群である。
この構成例では、シアン粒子群Cとイエロー粒子群Yとの間で、電気泳動粒子の固着が抑制される。
(6)構成例の一つとして、シアン粒子群C及びイエロー粒子群Yを、本実施形態に係る電気泳動粒子で構成された粒子群とし、マゼンタ粒子群Mを、本実施形態に係る電気泳動粒子以外の電気泳動粒子で構成された粒子群とする構成が挙げられる。
この構成例においては、シアン粒子群Cが第1の粒子群であり、イエロー粒子群Yが第2の粒子群である。そして、マゼンタ粒子群Mが第3の粒子群である。
この構成例では、シアン粒子群Cとイエロー粒子群Yとの間で、電気泳動粒子の固着が抑制される。
【0072】
上述のごとく、本実施形態に係る表示用粒子分散液は、第3の粒子群を含んでいてもよいが、含まないほうが望ましい。つまり、本実施形態に係る表示用粒子分散液に含まれる電気泳動粒子を色で群分けしたときに、最大の粒径を有する粒子群は、第1の粒子群であること、即ち、本実施形態に係る電気泳動粒子で構成される粒子群であることが望ましい。
【0073】
本実施形態に係る表示用粒子分散液は、必要に応じて、背景色を表示するための電界応答性が低い表示用粒子(「絶縁性粒子」とも称する。)で構成される粒子群を含んでいてもよい。この場合、絶縁性粒子群は、第1の粒子群よりも粒径が大きくてもよいし、小さくてもよいが、応答性の観点からは、第1の粒子群よりも粒径が小さいことが望ましい。
【0074】
なお、表示用粒子および表示用粒子群の粒径とは、体積平均粒径を意味し、粒径アナライザー(大塚電子株式会社製FPAR−1000、または堀場製作所社製LA300)で測定される値である。
【0075】
以下に、本実施形態に係る表示用粒子分散液を構成する構成要素、及び構成要素に含まれる原料成分について説明する。
【0076】
(大径泳動粒子と小径泳動粒子)
大径泳動粒子と小径泳動粒子とは、その組み合わせとして、例えば、小径泳動粒子の体積平均粒径が大径泳動粒子の体積平均粒径の5分の1以下であることが望ましく、10分の1以下であることがより望ましい。このような組み合わせであると、大径泳動粒子群の間隙を通って、小径泳動粒子が泳動しやすい。
大径泳動粒子の直径は、特に制限されないが、例えば、体積平均粒径が1μm以上20μm以下であり、5μm以上15μm以下が望ましい。小径泳動粒子の直径は、特に制限されないが、例えば、体積平均粒径が0.1μm以上1μm以下であり、0.3μm以上1μm以下が望ましい。
【0077】
大径泳動粒子は、本実施形態に係る電気泳動粒子であり、その構成要素、及び構成要素に含まれる原料成分は既述したとおりである。
【0078】
小径泳動粒子は、電界に応じて移動する粒子であり、分散媒に分散された状態において帯電特性を有し、形成された電界に応じて分散媒内を移動する粒子である。
小径泳動粒子は、例えば、帯電基を有する高分子及び着色剤を含有する着色粒子を含み、必要に応じて、前記着色粒子の表面に付着した高分子を含んで構成される。
【0079】
小径泳動粒子を構成する、帯電基を有する高分子及び着色剤を含有する着色粒子としては、大径泳動粒子の構成要素である着色粒子の構成、原料成分及び製造方法を採用してよく、ただし、大径泳動粒子とは異なる色にする。
前記着色粒子の表面に付着した高分子としては、例えば、前述の分岐型シリコーン系高分子や、直鎖型シリコーン鎖単量体と反応性の単量体とを必須成分とし、必要に応じてその他の単量体を共重合成分として含む、直鎖型シリコーン系高分子が挙げられる。直鎖型シリコーン系高分子における反応性の単量体とその他の単量体としては、前述の分岐型シリコーン系高分子に用いられる単量体が挙げられ、直鎖型シリコーン鎖単量体としては、片末端に(メタ)アクリレート基を持ったジメチルシリコーンモノマー(例えば、チッソ社製:サイラプレーンFM−0711,サイラプレーンFM−0721,サイラプレーンFM−0725等、信越化学工業社製:X−22−174DX,X−22−2426,X−22−2475等)が挙げられる。
【0080】
小径泳動粒子は、帯電基を有する高分子、又は着色粒子の表面に付着した高分子がシリコーン系高分子である態様が望ましい。シリコーン系高分子は、共重合成分として、片末端に(メタ)アクリレート基を持ったジメチルシリコーンモノマー(例えば、チッソ社製:サイラプレーンFM−0711,サイラプレーンFM−0721,サイラプレーンFM−0725等、信越化学工業社製:X−22−174DX,X−22−2426,X−22−2475等)等を含んで構成すればよい。
【0081】
(分散媒)
分散媒としては、表示媒体用に利用される各種分散媒が適用されるが、低誘電溶媒(例えば誘電率5.0以下、望ましくは3.0以下)が選択されることがよい。分散媒は、低誘電溶媒以外の溶媒を併用してもよいが、50体積%以上の低誘電溶媒を含むことがよい。なお、低誘電溶媒の誘電率は、誘電率計(日本ルフト製)を用いて求められる。
【0082】
低誘電溶媒としては、例えば、パラフィン系炭化水素溶媒、シリコーンオイル、フッ素系液体など石油由来高沸点溶媒が挙げられるが、大径泳動粒子の構成要素である分岐型シリコーン系高分子に応じて、分散媒としてシリコーンオイルを選択することがよい。無論、これに限られるわけではない。
【0083】
シリコーンオイルとして具体的には、シロキサン結合に炭化水素基が結合したシリコーンオイル(例えば、ジメチルシリコーンオイル、ジエチルシリコーンオイル、メチルエチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル等)が挙げられる。これらの中も、ジメチルシリコーンが特に望ましい。
【0084】
パラフィン系炭化水素溶媒としては、炭素数20以上(沸点80℃以上)のノルマルパラフィン系炭化水素、イソパラフィン系炭化水素が挙げられるが、安全性、揮発性等の理由から、イソパラフィンを用いることが望ましい。具体的には、シェルゾル71(シェル石油製)、アイソパーO、アイソパーH、アイソパーK、アイソパーL、アイソパーG、アイソパーM(アイソパーはエクソン社の商品名)やアイピーソルベント(出光石油化学製)等が挙げられる。
【0085】
(その他の成分)
本実施形態に係る表示用粒子分散液は、必要に応じて、酸、アルカリ、塩、分散剤、分散安定剤、酸化防止や紫外線吸収などを目的とした安定剤、抗菌剤、防腐剤、帯電制御剤などを含んで構成されてもよい。
【0086】
帯電制御剤としては、イオン性若しくは非イオン性の界面活性剤、親油性部と親水性部からなるブロック若しくはグラフト共重合体類、環状、星状若しくは樹状高分子(デンドリマー)等の高分子鎖骨格をもった化合物、サリチル酸の金属錯体、カテコールの金属錯体、含金属ビスアゾ染料、テトラフェニルボレート誘導体、重合性シリコーンマクロマー(チッソ社製サイラプレーン)とアニオン性モノマー若しくはカチオン性モノマーとの共重合体等が挙げられる。
イオン性及び非イオン性の界面活性剤としては、より具体的には以下が挙げられる。非イオン性の界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド等が挙げられる。アニオン性の界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタリンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸等が挙げられる。カチオン性の界面活性剤としては、第1級ないし第3級のアミン塩、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。
帯電制御剤は、表示用粒子の固形分に対して0.01質量%以上20質量%以下の範囲で用いられることが望ましく、0.05質量%以上10質量%以下の範囲で用いられることがより望ましい。
【0087】
本実施形態に係る電気泳動粒子及び表示用粒子分散液は、電気泳動方式の表示媒体などに利用される。
【0088】
<表示媒体、表示装置>
図1は、本実施形態に係る表示装置を示す概略構成図の一例である。なお、本実施形態に係る表示装置は以下で説明する構成に限定されるものではない。
本実施形態に係る表示装置10は、その表示媒体12の分散媒50と粒子群34とを含む粒子分散液として、本実施形態に係る表示用粒子分散液を適用する形態である。
【0089】
本実施形態に係る表示装置10は、
図1に示すように、表示媒体12と、電圧印加部16と、制御部18とを含んで構成されている。制御部18は、電圧印加部16に信号授受可能に接続されている。
【0090】
制御部18は、装置全体の動作を司るCPU(中央処理装置)と、各種データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)と、装置全体を制御する制御プログラムや処理ルーチンによって示されるプログラムを含む各種プログラムが予め記憶されたROM(Read Only Memory)と、を含むマイクロコンピュータとして構成されている。
【0091】
なお、表示媒体12が本発明の表示媒体に相当し、表示装置10が本発明の表示装置に相当し、電圧印加部16が、本発明の表示装置の電圧印加手段に相当する。
【0092】
電圧印加部16は、表面電極40及び背面電極46に電気的に接続されている。なお、本実施の形態では、表面電極40及び背面電極46の双方が、電圧印加部16に電気的に接続されている場合を説明するが、表面電極40及び背面電極46の一方が接地されており、他方が電圧印加部16に接続されていてもよい。
【0093】
電圧印加部16は、表面電極40及び背面電極46に電圧を印加するための電圧印加装置であり、制御部18の制御に応じた電圧を表面電極40及び背面電極46間に印加する。
【0094】
以下、表示媒体12について詳細に説明する。
表示媒体12は、
図1に示すように、表示面とされる表示基板20、表示基板20に間隙をもって対向する背面基板22、これらの基板間を所定の間隔に保持すると共に、表示基板20と背面基板22との間を複数のセルに区画する間隙部材24、及び各セル内に封入された粒子群34を含んで構成されている。
【0095】
上記セルとは、表示基板20と、背面基板22と、間隙部材24と、によって囲まれた領域を示している。このセル中には、分散媒50が封入されている。粒子群34は、この分散媒50中に分散され、セル内に形成された電界強度に応じて表示基板20と背面基板22との間を移動する。
【0096】
なお、この表示媒体12に画像を表示したときの各画素に対応するように間隙部材24を設け、各画素に対応するようにセルを形成することで、表示媒体12を、画素毎の色表示が可能となるように構成してもよい。
また、セルは
図1に示す以外に、基板内に分散媒を封入したカプセルを保持することでも形成可能である。この場合は、基板は一対である必要ではなく1つで構わない。
【0097】
表示媒体12の分散媒50中には、互いに色が異なる複数種類の粒子群34が分散されている。複数種類の粒子群34は、基板間を電気泳動する粒子であり、電界に応じて移動するために必要な電圧の絶対値が各色の粒子群でそれぞれ異なる。
例えば、
図1に示すように、表示媒体12の同一セル内に封入されている粒子群34として、マゼンタ色のマゼンタ粒子群34M、シアン色のシアン粒子群34C、及びイエロー色のイエロー粒子群34Yの3色の粒子群34が封入されており、マゼンタ粒子群34M>シアン粒子群34C>イエロー粒子群34Yの順に粒径が大きいものとして、構成例を説明する。
構成例の一つとして、マゼンタ粒子群Mを第1の粒子群とし、シアン粒子群C及びイエロー粒子群Yを第2の粒子群とする構成が挙げられる。
構成例の一つとして、マゼンタ粒子群Mを第1の粒子群とし、マゼンタ粒子群Mに対しシアン粒子群C及びイエロー粒子群Yを第2の粒子群とし、さらに、シアン粒子群Cを第1の粒子群とし、シアン粒子群Cに対しイエロー粒子群Yを第2の粒子群とする構成が挙げられる。
構成例の一つとして、シアン粒子群Cを第1の粒子群とし、イエロー粒子群Yを第2の粒子群とし、マゼンタ粒子群Mを第3の粒子群とする構成が挙げられる。
【0098】
電界に応じて移動するために必要な電圧の絶対値が異なる複数種の粒子群34の各粒子としては、上記実施形態に係る粒子分散液の製造方法において、例えば、「イオン性高分子」の種類を変える等して、帯電量の異なる粒子を含む粒子分散液をそれぞれ作製し、これを混合することで得られる。
【0099】
ここで、上記セル中の全質量に対する粒子群34の含有量(質量%)としては、所望の色相が得られる濃度であれば特に限定されるものではなく、セルの厚さによって含有量を調整することが、表示媒体12としては有効である。即ち、所望の色相を得るために、セルが厚い場合には含有量は少なく、セルが薄い場合には含有量を多くしてもよい。一般的には、0.01質量%以上50質量%以下である。
【0100】
以下、表示媒体12の各構成部材について説明する。
【0101】
表示基板20は、支持基板38上に、表面電極40及び表面層42を順に積層した構成となっている。背面基板22は、支持基板44上に、背面電極46及び表面層48を順に積層した構成となっている。
【0102】
上記支持基板38及び支持基板44としては、ガラスや、プラスチック、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂等が挙げられる。
【0103】
背面電極46及び表面電極40には、インジウム、スズ、カドミウム、アンチモン等の酸化物、ITO等の複合酸化物、金、銀、銅、ニッケル等の金属、ポリピロールやポリチオフェン等の有機導電性材料等を使用してもよい。これらは単層膜、混合膜あるいは複合膜として使用でき、蒸着法、スパッタリング法、塗布法等で形成される。また、その厚さは、蒸着法、スパッタリング法によれば、通常100オングストローム以上2000オングストローム以下である。背面電極46及び表面電極40は、従来の液晶表示素子あるいはプリント基板のエッチング等従来公知の手段によって、所望のパターン、例えば、マトリックス状、あるいはパッシブマトリックス駆動を可能とするストライプ状に形成される。
【0104】
また、表面電極40を支持基板38に埋め込んでもよい。同様に、背面電極46を支持基板44に埋め込んでもよい。この場合、支持基板38及び支持基板44の材料が粒子群34の各粒子の帯電特性や流動性に影響を及ぼすことがあるので、粒子群34の各粒子の組成等に応じて選択する。
【0105】
なお、背面電極46及び表面電極40各々を表示基板20及び背面基板22と分離させ、表示媒体12の外部に配置してもよい。この場合、背面電極46と表面電極40との間に表示媒体12が挟まれる構成となるため、背面電極46と表面電極40との間の電極間距離が大きくなって電界強度が小さくなるため、所望の電界強度が得られるように表示媒体12の支持基板38及び支持基板44の厚みや、支持基板38と支持基板44との基板間距離を小さくする等の工夫が必要である。
【0106】
なお、上記では、表示基板20と背面基板22の双方に電極(表面電極40及び背面電極46)を備える場合を説明したが、何れか一方にのみ設けるようにしてもよい。
【0107】
また、アクティブマトリックス駆動を可能にするために、支持基板38及び支持基板44は、画素毎にTFT(薄膜トランジスタ)を備えていてもよい。配線の積層化及び部品実装が容易であることから、TFTは表示基板ではなく背面基板22に形成することが好ましい。
【0108】
なお、表示媒体12を単純マトリクス駆動とすると、表示媒体12を備えた後述する表示装置10の構成を簡易な構成とすることができ、TFTを用いたアクティブマトリックス駆動とすると、単純マトリクス駆動に比べて表示速度が速い。
【0109】
上記表面電極40及び背面電極46が、各々支持基板38及び支持基板44上に形成されている場合、表面電極40及び背面電極46の破損や、粒子群34の各粒子の固着を招く電極間のリークの発生を防止するため、必要に応じて表面電極40及び背面電極46各々上に誘電体膜としての表面層42及び/又は表面層48を形成することが好ましい。
【0110】
この表面層42及び/又は表面層48を形成する材料としては、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド、エポキシ、ポリイソシアネート、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリブタジエン、ポリメチルメタクリレート、共重合ナイロン、紫外線硬化アクリル樹脂、フッ素樹脂等を用いてもよい。
【0111】
また、上記した絶縁材料の他に、絶縁性材料中に電荷輸送物質を含有させたものも使用され得る。電荷輸送物質を含有させることによって、粒子への電荷注入による粒子帯電性の向上や、粒子の帯電量が極度に大きくなった場合に粒子の電荷を漏洩させ、粒子の帯電量を安定させるなどの効果が得られる。
【0112】
電荷輸送物質としては、例えば、正孔輸送物質であるヒドラゾン化合物、スチルベン化合物、ピラゾリン化合物、アリールアミン化合物等が挙げられる。また、電子輸送物質であるフルオレノン化合物、ジフェノキノン誘導体、ピラン化合物、酸化亜鉛等も使用してもよい。さらに、電荷輸送性を有する自己支持性の樹脂を用いてもよい。
具体的には、ポリビニルカルバゾール、米国特許第4806443号に記載の特定のジヒドロキシアリールアミンとビスクロロホルメートとの重合によるポリカーボネート等が挙げられる。誘電体膜は、粒子の帯電特性や流動性に影響を及ぼすことがあるので、粒子の組成等に応じて選択する。基板の一方である表示基板は光を透過する必要があるので、上記各材料のうち透明のものを使用することが好ましい。
【0113】
表示基板20と背面基板22との間隙を保持するための間隙部材24は、表示基板20の透明性を損なわないように形成され、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化樹脂、光硬化樹脂、ゴム、金属等で形成される。
【0114】
間隙部材24には、セル状のものと、粒子状のものがある。セル状のものとしては、例えば、網がある。網は入手が容易で安価であり、厚さも比較的均一であることから、安価な表示媒体12を製造する場合に有益である。網は微細な画像の表示には不向きであり、高い解像度が必要とされない大型の表示装置に使用することが好ましい。また、他のセル状の間隙部材24としては、エッチングやレーザー加工等によってマトリックス状に穴を開けたシートが挙げられ、このシートでは、網に比べ、厚さ、穴の形状、穴の大きさなどが容易に調整される。このため、シートは微細な画像を表示するための表示媒体に使用し、コントラストをより向上させるのに効果的である。
【0115】
間隙部材24は表示基板20及び背面基板22の何れか一方と一体化されてもよく、支持基板38又は支持基板44をエッチング処理したり、レーザー加工したり、予め作製した型を使用し、プレス加工、印刷等によって、任意のサイズのセルパターンを有する支持基板38又は支持基板44、及び間隙部材24が作製される。
この場合、間隙部材24は、表示基板20側、背面基板22側のいずれか、又は双方に作製し得る。
【0116】
間隙部材24は有色でも無色でもよいが、表示媒体12に表示される表示画像に悪影響を及ぼさないように無色透明であることが好ましく、その場合には、例えば、ポリスチレンやポリエステルやアクリルなどの透明樹脂等を使用してもよい。
【0117】
また、粒子状の間隙部材24は、透明であることが好ましく、ポリスチレン、ポリエステル又はアクリル等の透明樹脂粒子の他、ガラス粒子も使用される。
【0118】
表示媒体12においては、各セル中に絶縁性粒子36が封入されている。絶縁性粒子36は、同一のセル内に封入されている粒子群34とは異なる色で且つ絶縁性の粒子である。
絶縁性粒子36は、粒子群34の各粒子各々が通過可能な間隙を持って、分散媒50に浮遊している。または、絶縁性粒子36は、粒子群34の各粒子各々が通過可能な間隙を持って、背面基板22と表示基板20との対向方向に略直交する方向に添って配列されている。
絶縁性粒子36と背面基板22との間、及び表示基板20と絶縁性粒子36との間には、同一セルに含まれる粒子群34の各粒子を背面基板22と表示基板20との対向方向に複数積層可能な程度の間隔が設けられている。
【0119】
粒子群34の各粒子は、絶縁性粒子36の間隙を通って、背面基板22側から表示基板20側、又は表示基板20側から背面基板22側へ移動する。絶縁性粒子36の色としては、例えば、背景色となるように白色又は黒色を選択することが好ましい。
【0120】
絶縁性粒子36としては、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物の球状粒子、ベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド縮合物の球状粒子、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物の球状粒子(日本触媒製エポスター)、酸化チタン含有架橋ポリメチルメタクリレートの球状粒子(積水化成品工業製MBX−ホワイト)、架橋ポリメチルメタクリレートの球状粒子(綜研化学製ケミスノーMX)、ポリテトラフルオロエチレンの粒子(ダイキン工業製ルブロンL、Shamrock Technologies社製SST−2)、フッ化炭素の粒子(日本カーボン製CF−100、ダイキン工業製CFGL,CFGM)、シリコーン樹脂粒子(東芝シリコーン製トスパール)、酸化チタン含有ポリエステルの粒子(日本ペイント製ビリューシアPL1000ホワイトT)、酸化チタン含有ポリエステル・アクリルの粒子(日本油脂製コナックNo181000ホワイト)、シリカの球状粒子(宇部日東化成製ハイプレシカ)等が挙げられる。上記に限定せずに、酸化チタン等の白色顔料を樹脂に混合分散したのち、所望の粒子径に粉砕、分級したものでもよい。
【0121】
絶縁性粒子36は、上述のように表示基板20と背面基板22との間に設けるために、セルの表示基板20と背面基板22との対向方向の長さに対して、1/5乃至1/100となる体積平均一次粒径がよく、このセルの体積に対して含有量が1体積%乃至50体積%であることがよい。
【0122】
表示媒体12における上記セルの大きさとしては、表示媒体12の解像度と密接な関係にあり、セルが小さいほど高解像度な表示媒体を作製することができ、通常、10μm以上1mm以下程度である。
【0123】
表示基板20及び背面基板22を固定するには、ボルトとナットの組み合わせ、クランプ、クリップ、基板固定用の枠等の固定手段を使用することができる。また、接着剤、熱溶融、超音波接合等の固定手段も使用することができる。
【0124】
表示媒体12は、画像の保存及び書換えが可能な掲示板、回覧版、電子黒板、広告、看板、点滅標識、電子ペーパー、電子新聞、電子書籍、及び複写機・プリンタと共用できるドキュメントシート等に使用することができる。
【0125】
表示媒体12では、表示基板20と背面基板22との間に印加する印加電圧(V)を変えることによって、異なる色を表示する。
【0126】
表示媒体12では、表示基板20と背面基板22との間に形成された電界に応じて移動することによって、表示媒体12の各画素に対応するセル毎に、画像データの各画素に応じた色を表示することができる。
【0127】
ここで、表示媒体12において、上述のように、
図2に示すように、粒子群34においては、色毎に、粒子群34が基板間を電気泳動する際の電界に応じて移動するために必要な電圧の絶対値がそれぞれ異なる。そして、各色の粒子群34は、色毎に各色の粒子群34を移動させるために必要な電圧範囲を有し、当該電圧範囲がそれぞれ異なる。言い換えれば、当該電圧の絶対値は、当該電圧範囲を有し、粒子群34の色毎に当該電圧範囲がそれぞれ異なる。
【0128】
なお、本実施の形態では、表示媒体12の同一セル内に封入されている粒子群34としては、
図1に示すように、マゼンタ色のマゼンタ粒子群34M、シアン色のシアン粒子群34C、及びイエロー色のイエロー粒子群34Yの3色の粒子群34が封入されているとして説明する。
【0129】
また、マゼンタ色のマゼンタ粒子群34M、シアン色のシアン粒子群34C、及びイエロー色のイエロー粒子群34Yの3色の粒子群各々が移動を開始するときの電圧の絶対値として、マゼンタ色のマゼンタ粒子群34Mが|Vtm|、シアン色のシアン粒子群34Cが|Vtc|、イエロー色のイエロー粒子群34Yが|Vty|であるとして説明する。また、各色粒子群34のゼンタ色のマゼンタ粒子群34M、シアン色のシアン粒子群34C、及びイエロー色のイエロー粒子群34Yの3色の粒子群各々をほぼ全て移動させるための最大電圧の絶対値として、マゼンタ色のマゼンタ粒子群34Mが|Vdm|、シアン色のシアン粒子群34Cが|Vdc|、イエロー色のイエロー粒子群34Yが|Vdy|であるとして説明する。
【0130】
なお、以下で説明するVtc、−Vtc、Vdc、−Vdc、Vtm、−Vtm、Vdm、−Vdm、Vty、−Vty、Vdy、及び−Vdyの絶対値は、|Vtc|<|Vdc|<|Vtm|<|Vdm|<|Vty|<|Vdy|の関係であるとして説明する。
【0131】
具体的には、
図2に示すように、例えば、粒子群34はすべて同極性に帯電され、シアン粒子群34Cを移動させるために必要な電圧範囲の絶対値|Vtc≦Vc≦Vdc|(VtcからVdcの間の値の絶対値)、マゼンタ粒子群34Mを移動させるために必要な電圧範囲の絶対値|Vtm≦Vm≦Vdm|(VtmからVdmの間の値の絶対値)、及びイエロー粒子群34Yを移動させるために必要な電圧範囲の絶対値|Vty≦Vy≦Vdy|(VtyからVdyの間の値の絶対値)が、この順で重複することなく、大きくなるように設定されている。
【0132】
また、各色の粒子群34を独立駆動するために、シアン粒子群34Cをほぼ全て移動させるための最大電圧の絶対値|Vdc|が、マゼンタ粒子群34Mを移動させるために必要な電圧範囲の絶対値|Vtm≦Vm≦Vdm|(VtmからVdmの間の値の絶対値)、及びイエロー粒子群34Yを移動させるために必要な電圧範囲の絶対値|Vty≦Vy≦Vdy|(VtyからVdyの間の値の絶対値)よりも小さく設定されている。また、マゼンタ粒子群34Mをほぼ全て移動させるための最大電圧の絶対値|Vdm|が、イエロー粒子群34Yを移動させるために必要な電圧範囲の絶対値|Vty≦Vy≦Vdy|(VtyからVdyの間の値の絶対値)よりも小さく設定されている。
【0133】
即ち、本実施形態では、各色の粒子群34を移動させるために必要な電圧範囲が重ならないように設定することによって、各色の粒子群34が独立駆動されるようにしている。
【0134】
なお、「粒子群34を移動させるために必要な電圧範囲」とは、粒子が移動開始するために必要な電圧と移動開始からさらに電圧及び電圧印加時間を増加させても、表示濃度の変化が生じなくなり、表示濃度が飽和するまでの電圧範囲を示す。
また、「粒子群34をほぼ全て移動させるために必要な最大電圧」とは上記の移動開始からさらに電圧及び電圧印加時間を増加させても、表示濃度の変化が生じなくなり、表示濃度が飽和する電圧を示す。
また、「ほぼ全て」とは、各色の粒子群34の特性ばらつきがあるため、一部の粒子群34の特性が表示特性に寄与しない程度異なるものがあることを表す。すなわち上述した移動開始からさらに電圧及び電圧印加時間を増加させても、表示濃度の変化が生じなくなり、表示濃度が飽和した状態である。
また、「表示濃度」は、表示面側における色濃度(光学濃度、Optical Density=OD)をX−rite社の反射濃度計で測定しながら、表示面側と背面側との間に電圧を印加して且つこの電圧を測定濃度が増加する方向に徐々に変化(印加電圧を増加又は減少)させて、単位電圧あたりの濃度変化が飽和し、且つその状態で電圧及び電圧印加時間を増加させても濃度変化が生じず、濃度が飽和したときの濃度を示している。
【0135】
そして、本実施形態に係る表示媒体12では、表示基板20と背面基板22との基板間に0Vから電圧を印加して除々に印加電圧の電圧値を上昇させて、基板間に印加された電圧が+Vtcを超えると、表示媒体12においてシアン粒子群34Cの移動によって表示濃度に変化が現れ始める。さらに、電圧値を上昇させて、基板間に印加された電圧が+Vdcとなると、表示媒体12においてシアン粒子群34の移動による表示濃度の変化が止まる。
【0136】
さらに電圧値を上昇させて、表示基板20と背面基板22との基板間に印加された電圧が+Vtmを超えると、表示媒体12においてマゼンタ粒子群34Mの移動による表示濃度の変化が現れ始める。さらに電圧値を上昇させて、表示基板20と背面基板22との基板間に印加された電圧が+Vdmとなると、表示媒体12においてマゼンタ粒子群34Mの移動による表示濃度の変化が止まる。
【0137】
さらに、電圧値を上昇させて、基板間に印加された電圧が+Vtyを超えると、表示媒体12においてイエロー粒子群34Yの移動による表示濃度の変化が現れ始める。さらに電圧値を上昇させて、基板間に印加された電圧が+Vdyとなると、表示媒体12においてイエロー粒子群34Yの移動による表示濃度の変化が止まる。
【0138】
反対に、表示基板20と背面基板22との基板間に0Vからマイナス極の電圧を印加して除々に電圧の絶対値を上昇させ、基板間に印加された電圧−Vtcの絶対値を超えると、表示媒体12においてイエロー粒子群34Cの基板間の移動によって表示濃度に変化が現れ始める。さらに、電圧値の絶対値を上昇させ、表示基板20と背面基板22との基板間に印加された電圧が−Vdc以上となると、表示媒体12においてシアン粒子群34Cの移動による表示濃度の変化が止まる。
【0139】
さらに電圧値の絶対値を上昇させてマイナス極の電圧を印加し、表示基板20と背面基板22との基板間に印加される電圧が−Vtmの絶対値を超えると、表示媒体12においてマゼンタ粒子群34Mの移動による表示濃度の変化が現れ始める。さらに電圧値の絶対値を上昇させて、表示基板20と背面基板22との基板間に印加された電圧が−Vdmとなると、表示媒体12においてマゼンタ粒子群34Mの移動による表示濃度の変化が止まる。
【0140】
さらに電圧値の絶対値を上昇させてマイナス極の電圧を印加し、表示基板20と背面基板22との基板間に印加される電圧が−Vtyの絶対値を超えると、表示媒体12においてイエロー粒子群34Yの移動によって表示濃度に変化が現れ始める。さらに電圧値の絶対値を上昇させて、基板間に印加された電圧が−Vdyとなると、表示媒体12においてイエロー粒子群34Cの移動による表示濃度の変化が止まる。
【0141】
すなわち、本実施の形態では、
図2に示すように、基板間に印加される電圧が−VtcからVtcの範囲内(電圧範囲|Vtc|以下)となる電圧が表示基板20と背面基板22との基板間に印加された場合には、表示媒体12の表示濃度に変化が発生する程度の粒子群34(シアン粒子群34C、マゼンタ粒子群34M、及びイエロー粒子群34Y)の粒子の移動は生じていないといえる。そして、基板間に、電圧+Vtc及び電圧−Vtcの絶対値以上の電圧が印加されると、3色の粒子群34の内のシアン粒子群34Cについて表示媒体12の表示濃度に変化が発生する程度の粒子の移動が生じはじめて表示濃度に変化が生じはじめ、電圧−Vdc及び電圧Vdcの絶対値|Vdc|以上の電圧が印加されると、単位電圧あたりの表示濃度に変化は生じなくなる。
【0142】
さらに、基板間に印加される電圧が−VtmからVtmの範囲内(電圧範囲|Vtm|以下)となる電圧が表示基板20と背面基板22との基板間に印加された場合には、表示媒体12の表示濃度に変化が発生する程度のマゼンタ粒子群34M及びイエロー粒子群34Yの粒子の移動は生じていないといえる。そして、基板間に、電圧+Vtm及び電圧−Vtmの絶対値以上の電圧が印加されると、マゼンタ粒子群34M及びイエロー粒子群34Yの内のマゼンタ粒子群34Mについて、表示媒体12の表示濃度に変化が発生する程度の粒子の移動が生じはじめて単位電圧あたりの表示濃度に変化が生じはじめ、電圧−Vdm及び電圧Vdmの絶対値|Vdm|以上の電圧が印加されると、表示濃度に変化は生じなくなる。
【0143】
さらに、基板間に印加する電圧が−VtyからVtyの範囲内(電圧範囲|Vty|以下)となる電圧が表示基板20と背面基板22との基板間に印加された場合には、表示媒体12の表示濃度に変化が発生する程度のイエロー粒子群34Yの粒子の移動は生じていないといえる。そして、基板間に、電圧+Vty及び電圧−Vtyの絶対値以上の電圧が印加されると、イエロー粒子群34Yについて、表示媒体12の表示濃度に変化が発生する程度の粒子の移動が生じ始めて表示濃度に変化が生じ始め、電圧−Vdy及び電圧Vdyの絶対値|Vdy|以上の電圧が印加されると、表示濃度に変化は生じなくなる。
【0144】
次に、
図3を参照して、本発明の表示媒体12に画像を表示するときの粒子移動のメカニズムを説明する。
【0145】
例えば、表示媒体12に、複数種類の粒子群34として、
図2を用いて説明したイエロー粒子群34Y、マゼンタ粒子群34M、シアン粒子群34Cが封入されているとして説明する。
【0146】
また、以下では、イエロー粒子群34Yを構成する粒子が移動開始するために必要な電圧の絶対値より大きく、且つイエロー粒子群34Yの上記最大電圧以下で基板間に印加する電圧を「大電圧」と称し、マゼンタ粒子群34Mを構成する粒子が移動開始するために必要な電圧の絶対値より大きく、且つマゼンタ粒子群34Mの上記最大電圧以下で基板間に印加する電圧を「中電圧」と称し、シアン粒子群34Cを構成する粒子が移動開始するために必要な電圧の絶対値より大きく、且つシアン粒子群34Cの上記最大電圧以下で基板間に印加する電圧を「小電圧」と称して説明する。
【0147】
また、表示基板20側に背面基板22側よりも高い電圧を基板間に印加する場合には、各々の電圧を、「+大電圧」、「+中電圧」、及び「+小電圧」各々と称する。また、背面基板22側に表示基板20側よりも高い電圧を基板間に印加する場合には、各々の電圧を、「−大電圧」、「−中電圧」、及び「−小電圧」各々と称して説明する。
【0148】
図3(A)に示すように、初期状態では全ての粒子群としてのマゼンタ粒子群34M、シアン粒子群34C、及びイエロー粒子群34Yの全てが背面基板22側に位置されるとすると、この初期状態から、表示基板20と背面基板22との間に「+大電圧」を印加させると、全ての粒子群として、マゼンタ粒子群34M、シアン粒子群34C、及びイエロー粒子群34Yが表示基板20側に移動する。この状態で、電圧印加を解除しても、各粒子群各々は表示基板20側に付着したまま移動せずに、マゼンタ粒子群34M、シアン粒子群34C、及びイエロー粒子群34Yによる減色混合(マゼンタと、シアンと、イエロー色の減色混合)によって黒色を表示したままの状態となる。(
図3(B)参照)。
【0149】
次に、
図3(B)の状態から、表示基板20と背面基板22との間に「−中電圧」を印加させると、全ての色の粒子群34の内、マゼンタ粒子群34Mと、シアン粒子群34Cと、が背面基板22側に移動する。このため、表示基板20側にはイエロー粒子群34Yのみが付着した状態となることから、イエロー色表示がなされる(
図3(C)参照)。
【0150】
さらに、
図3(C)の状態から、表示基板20と背面基板22との間に「+小電圧」を印加させると、背面基板22側に移動したマゼンタ粒子群34M及びシアン粒子群34Cの内、シアン粒子群34Cが表示基板20側に移動する。このため、表示基板20側には、イエロー粒子群34Y及びシアン粒子群34Cが付着した状態となり、イエローとシアンとの減色混合による緑色が表示される(
図3(D)参照)。
【0151】
また、上記
図3(B)の状態から、表示基板20と背面基板22との間に「−小電圧」を印加させると、全ての粒子群34のシアン粒子群34Cが背面基板22側に移動する。このため、表示基板20側にはイエロー粒子群34Yとマゼンタ粒子群34Mが付着した状態となることから、イエローとマゼンタの加色混合による赤色表示がなされる(
図3(I)参照)。
【0152】
一方、
図3(A)に示す上記初期状態から、表示基板20と背面基板22との間に「+中電圧」を印加させると、全ての粒子群34(マゼンタ粒子群34M、シアン粒子群34C、及びイエロー粒子群34Y)の内、マゼンタ粒子群34Mとシアン粒子群34Cとが表示基板20側に移動する。このため、表示基板20側には、マゼンタ粒子群34Mとシアン粒子群34Cとが付着するので、マゼンタとシアンの減色混合による青色が表示される(
図3(E)参照)。
【0153】
この
図3(E)の状態から、表示基板20と背面基板22との間に「−小電圧」を印加させると、表示基板20側に付着しているマゼンタ粒子群34Mとシアン粒子群34Cの内の、シアン粒子群34Cが背面基板22側に移動する。
このため、表示基板20側には、マゼンタ粒子群34Mのみが付着した状態となるので、マゼンタ色が表示される(
図3(F)参照)。
【0154】
この
図3(F)の状態から、表示基板20と背面基板22との間に「−大電圧」を印加させると、表示基板20側に付着しているマゼンタ粒子群34Mが背面基板22側に移動する。
このため、表示基板20側には、何も付着しない状態となるため、絶縁性粒子36の色としての白色が表示される(
図3(G)参照)。
【0155】
また、上記
図3(A)に示す上記初期状態から、表示基板20と背面基板22との間に「+小電圧」を印加させると、全ての粒子群34(マゼンタ粒子群34M、シアン粒子群34C、及びイエロー粒子群34Y)の内、シアン粒子群34Cが表示基板20側に移動する。このため、表示基板20側には、シアン粒子群34Cが付着するので、シアン色が表示される(
図3(H)参照)。
【0156】
さらに、上記
図3(I)に示す状態から、表示基板20と背面基板22との間に「−大電圧」を印加させると、
図3(G)に示すように全ての粒子群34が背面基板22側に移動して白色表示がなされる。
同様に、上記
図3(D)に示す状態から、表示基板20と背面基板22との間に「−大電圧」を印加させると、
図3(G)に示すように全ての粒子群34が背面基板22側に移動して白色表示がなされる。
【0157】
このように、本実施形態では、各粒子群34に応じた電圧を基板間に印加することで、当該電圧による電界に応じて選択的に所望の粒子を移動させるので、所望の色以外の色の粒子が分散媒50中を移動することを抑制することができ、所望の色以外の色が混じる混色を抑制され、表示媒体12の画質劣化を抑制しつつ、カラー表示がなされる。なお、各粒子群34は、互いに電界に応じて移動するために必要な電圧の絶対値が異なれば、互いに電界に応じて移動するために必要な電圧範囲が重なっていても、鮮明なカラー表示が実現されるが、当該電圧範囲が互いに異なるほうが、より混色を抑制してカラー表示が実現される。
【0158】
また、シアン、マゼンタ、イエローの3色の粒子群34を分散媒50中に分散することによって、シアン、マゼンタ、イエロー、青色、赤色、緑色、及び黒色を表示することができるとともに、白色の絶縁性粒子36によって白色を表示することができ、所望のカラー表示を行うことが可能となる。
【実施例】
【0159】
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。
以下において「部」は、特に断りのない限り質量基準である。
【0160】
(白色粒子の作製)
還流冷却管を取り付けた100ml三口フラスコに、2−ビニルナフタレン5部、サイラプレーンFM−0721(直鎖型シリコーン系モノマー、重量平均分子量5000、チッソ社製)5部、過酸化ラウロイル(重合開始剤、和光純薬工業社製)0.3部、及びジメチルシリコーンオイル(信越化学工業社製KF−96L−1CS)20部を入れ、窒素ガスによるバブリングを15分間行った後、窒素雰囲気下にて65℃、24時間の重合を行った。得られた白色粒子を上記シリコーンオイルにて固形分濃度33質量%に調製し、白色粒子分散液とした。白色粒子の体積平均粒径は、0.45μmであった。
【0161】
(シアン粒子C1の作製)
サイラプレーンFM−0725(直鎖型シリコーン系モノマー、重量平均分子量10000、チッソ社製)19部、サイラプレーンFM−0721(直鎖型シリコーン系モノマー、重量平均分子量5000、チッソ社製)29部、メタクリル酸メチル9部、メタクリル酸オクタフルオロペンチル5部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル38部を、イソプロピルアルコール300部に混合し、アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤、アルドリッチ社製AIBN)1部を溶解し、窒素下で70℃、6時間重合を行った。これによる生成物を、ヘキサンを再沈殿溶媒として精製、乾燥しシリコーン系高分子Aを得た。
【0162】
イソプロピルアルコール9gにシリコーン系高分子A0.5gを加え、溶解させた後、シアン顔料(山陽色素製シアニンブルー4973)0.5gを添加し、直径0.5mmのジルコニアボールを使用し、48時間分散させ、顔料含有高分子溶液を得た。
この顔料含有高分子溶液を3g量り取り、これを40℃に加熱させた後、超音波を印加させながら、ジメチルシリコーンオイル(信越化学工業社製KF−96L−2CS)12gを少量ずつ滴下し、シリコーン系高分子Aを顔料表面に析出させた。その後、溶液を60℃に加温・減圧し、イソプロピルアルコールを蒸発させ、シリコーン系高分子Aが顔料表面に付着したシアン粒子C1を得た。その後、遠心分離機で、溶液の粒子を沈降させ、上澄み液を除去し、上記シリコーンオイル5gを加え、超音波を印加して洗浄した。その後、遠心分離機で粒子を沈降させ、上澄み液を除去して、上記シリコーンオイル5gを加えシアン粒子分散液C1を得た。シアン粒子C1の体積平均粒径は、0.3μmであった。
シアン粒子C1の帯電極性を、2枚の電極基板間にシアン粒子分散液C1を封入し、直流電圧を印加して泳動方向を観察して評価したところ、負帯電であった。
【0163】
(シアン粒子C2の作製)
サイラプレーンFM−0725及びサイラプレーンFM−0721の全量に替えてMCS−M11(Gelest社製)48部を用いた以外は、シリコーン系高分子Aの調製と同様にして、シリコーン系高分子Bを調製した。
【0164】
シリコーン系高分子Aに替えてシリコーン系高分子Bを用いた以外は、シアン粒子C1及びシアン粒子分散液C1の調製と同様にして、シアン粒子C2及びシアン粒子分散液C2を調製した。
シアン粒子C2の体積平均粒径は0.3μmであり、帯電極性は負帯電であった。
【0165】
(シアン粒子C3の作製)
スチレンアクリル系ポリマーX345(星光PMC社製)7.2g、シアン顔料PB15:3の水分散液Emacol SF Blue H524F(山陽色素社製、固形分26質量%)18.8g、蒸留水24.1gを60℃に加温しながら混合し、インク固形分濃度が15%、乾燥後の顔料濃度が50%となるように分散相を調製した。
界面活性剤KF−6028(信越化学工業社製)3.5g、シリコーンオイルKF−96L−2cs(信越化学工業社製)346.5gを混合して連続相を準備した。
上記分散相50gと、上記連続相350gとを混合し、内歯式卓上分散機ROBOMICS(特殊機化工業社製)を用い回転数10,000rpm、温度30℃で10分間乳化を行った。その結果、乳化液滴径が約2μmの乳化液を得た。これをロータリーエバポレーターを用いて真空度20mbar、水浴温度40℃で18時間乾燥を行った。得られた粒子懸濁液を6,000rpmで15分間遠心分離し、上澄み液を除去した後、シリコーンオイルKF−96L−2CSを用いて再分散させる洗浄工程を3回繰り返した。このようにしてコア粒子を得た。SEM画像解析した結果、コア粒子の平均粒径は0.6μmであった。
【0166】
サイラプレーンFM−0721(チッソ社製)50g、ヒドロキシエチルメタクリレート(アルドリッチ社製)32g、フェノキシ基を含むモノマーAMP−10G(新中村化学社製)18g、ブロックイソシアネート基を含むモノマー・カレンズMOI−BP(昭和電工社製)2g、イソプロピルアルコール(関東化学社製)200g、アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤、アルドリッチ社製AIBN)0.2gを混合し、窒素下で70℃、6時間重合を行なった。得られた生成物を、シクロヘキサンを再沈殿溶媒として精製、乾燥しシェル樹脂を得た。このシェル樹脂2gをt−ブタノール溶媒20gに溶解し、シェル樹脂溶液を作製した。
【0167】
コア粒子1gを200mLのナスフラスコに取り、シリコーンオイルKF−96L−2csを15g加え、超音波を加えながら攪拌分散した。これに、t−ブタノール7.5g、上記シェル樹脂溶液22g、シリコーンオイルKF−96L−2cs 12.5gを順次加えた。投入速度は全て2mL/sとした。上記ナスフラスコをロータリーエバポレーターに接続し、真空度20mbar、水浴温度50℃で1時間、t−ブタノール除去を行った。
これをさらに攪拌しながらオイルバス中で加温した。まず100℃で1時間加温し、残留水分と残留するt−ブタノールを除いた後、続けて130℃で1.5時間の加熱を行い、ブロックイソシアネート基のブロック基を脱離させ、シェル材料の架橋反応を行った。
冷却後、得られた粒子懸濁液を6,000rpmで15分間遠心分離し,上澄み液を除去した後、シリコーンオイルKF−96L−2CSを用いて再分散させる洗浄工程を3回繰り返した。最後にシリコーンオイルにて粒子固形分濃度8質量%に調製して、シアン粒子分散液C3を得た。
シアン粒子分散液C3に含まれるシアン粒子C3の体積平均粒径は、0.62μmであり、帯電極性は正帯電であった。
【0168】
(赤色粒子R1の作製)
メタクリル酸メチル44.5部、メタクリル酸2−(ジエチルアミノ)エチル0.5部、赤色顔料(山陽色素製Pigment Red 3090)5部を混合し、直径10mmのジルコニアボールを用いてボールミル粉砕を20時間実施して分散液A−1を調製した。次に、炭酸カルシウム40部、水60部を混合し、上記と同じくボールミルにて粉砕して炭酸カルシウム分散液A−2を調製した。次に、炭酸カルシウム分散液A−2の4gと、20%食塩水60gとを混合し、超音波機で脱気を10分間行い、次いで乳化機で攪拌して混合液A−3を調製した。
分散液A−1の20gと、ジメタクリル酸エチレングリコール0.6gと、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル(重合開始剤、和光純薬工業社製V−601)0.2gとを充分混合し、超音波機で脱気を10分間行った。これを混合液A−3に加え、乳化機で乳化を実施した。次に、この乳化液をフラスコに入れ、シリコーン栓をし、注射針を使用して減圧脱気を充分行い、窒素ガスで封入した。次に65℃で15時間反応させ粒子を調製した。冷却後、粒子を濾過し、得られた粒子粉をイオン交換水中に分散させ、塩酸で炭酸カルシウムを分解させ、濾過を行った。その後、充分な蒸留水で粒子を洗浄し、目開き:15μm、10μmのナイロン篩にかけ、粒度を揃えた。得られた粒子は、体積平均粒径が13μmであった。
上記で得られた赤色粒子を、赤色粒子R0と称する。
その後、赤色粒子R0に対して、以下の表面処理を行った。
【0169】
VTT−106(Gelest社製、前記一般式(III)で表される単量体)95部、メタクリル酸グリシジル2部、メタクリル酸メチル3部を、イソプロピルアルコール300部に混合し、アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤、アルドリッチ社製AIBN)1部を溶解し、窒素下で70℃、6時間重合を行った。その後、ジメチルシリコーンオイル(信越化学工業社製KF−96L−2CS)300部を加えた後、イソプロピルアルコールを減圧除去し、分岐型シリコーン系高分子を得た。この分岐型シリコーン系高分子を、表面処理剤B−1と称する。
【0170】
次に、赤色粒子R0の2部と、表面処理剤B−1の25部と、トリエチルアミン0.01部とを混合し、100℃の温度で5時間攪拌した。その後、遠心沈降させ溶媒を除去し、さらに減圧乾燥させ、赤色粒子R0の表面に分岐型シリコーン系高分子が結合して付着した赤色粒子R1を得た。
赤色粒子R1の体積平均粒径は13μmであり、帯電極性は正帯電であった。
【0171】
(赤色粒子R2の作製)
VTT−106に替えてRTT−1011(Gelest社製、前記一般式(II)で表される単量体)を用いた以外はすべて赤色粒子R1の作製と同様にして、赤色粒子R2を作製した。赤色粒子R2の体積平均粒径は13μmであり、帯電極性は正帯電であった。
【0172】
(赤色粒子R3の作製)
VTT−106に替えてMCS−M11(Gelest社製、前記一般式(I)で表される単量体)を用いた以外はすべて赤色粒子R1の作製と同様にして、赤色粒子R3を作製した。赤色粒子R3の体積平均粒径は13μmであり、帯電極性は正帯電であった。
【0173】
(赤色粒子R4の作製)
VTT−106に替えてMFS−M15(Gelest社製、前記一般式(I)で表される単量体)を用いた以外はすべて赤色粒子R1の作製と同様にして、赤色粒子R4を作製した。赤色粒子R4の体積平均粒径は13μmであり、帯電極性は正帯電であった。
【0174】
(赤色粒子R5の作製)
VTT−106に替えてX22−2404(信越化学工業社製、前記一般式(II)で表される単量体)を用いた以外はすべて赤色粒子R1の作製と同様にして、赤色粒子R5を作製した。赤色粒子R5の体積平均粒径は13μmであり、帯電極性は正帯電であった。
【0175】
(赤色粒子R01の作製)
赤色粒子R0に表面処理を行わず、赤色粒子R01とした。赤色粒子R01の体積平均粒径は13μmであり、帯電極性は正帯電であった。
【0176】
(赤色粒子R02の作製)
赤色粒子R0に下記の表面処理を行った。
サイラプレーンFM−0711(直鎖型シリコーン系モノマー、チッソ社製)95部、メタクリル酸グリシジル2部、メタクリル酸メチル3部を、イソプロピルアルコール300部に混合し、アゾビスイソブチロニトリル(重合開始剤、アルドリッチ社製AIBN)1部を溶解し、窒素下で70℃、6時間重合を行った。その後、ジメチルシリコーンオイル(信越化学工業社製KF−96L−2CS)300部を加えた後、イソプロピルアルコールを減圧除去して、直鎖型シリコーン系高分子を得た。この直鎖型シリコーン系高分子を、表面処理剤B−2と称する。
次に、赤色粒子R0の2部と、表面処理剤B−2の25部と、トリエチルアミン0.01部とを混合し、100℃の温度で5時間攪拌した。その後、遠心沈降させ溶媒を除去し、さらに減圧乾燥させ、赤色粒子R0の表面に直鎖型シリコーン系高分子が結合して付着した赤色粒子R02を得た。
赤色粒子R02の体積平均粒径は13μmであり、帯電極性は正帯電であった。
【0177】
(赤色粒子R03の作製)
MCS−M11(Gelest社製、前記一般式(I)で表される単量体)45部、メタクリル酸(和光純薬工業社製)5部を、イソプロピルアルコール100部に混合し、アゾビスジメチルバレロニトリル(重合開始剤、和光純薬工業社製V−65)0.2部を溶解し、窒素下で60℃、6時間重合を行った。その後、ジメチルシリコーンオイル(信越化学工業社製KF−96L−2CS)300部を加えた後、イソプロピルアルコールを減圧除去し、分岐型シリコーン系高分子を得た。この分岐型シリコーン系高分子を、表面処理剤B−3と称する。表面処理剤B−3は、反応性共重合成分を含まない分岐型シリコーン系高分子である。
次に、赤色粒子R0の2部と、表面処理剤B−3の25部とを混合し、5時間攪拌混合した。その後、遠心沈降させ溶媒を除去し、さらに減圧乾燥させ、赤色粒子R03を得た。
赤色粒子R03は、赤色粒子R0が有するアミノ基と表面処理剤B−3が有するカルボキシル基との酸塩基相互作用によって、赤色粒子R0の表面が表面処理剤B−3で覆われている粒子と考えられる。
赤色粒子R03の体積平均粒径は13μmであり、帯電極性は正帯電であった。
【0178】
(黄色粒子Y1の作製)
赤色顔料(山陽色素製Pigment Red3090)5部に替えて黄色顔料(山陽色素社製FY7416)5部を用いた以外は、赤色粒子R0の調製と同様にして、黄色粒子Y0を調製した。黄色粒子Y0は、体積平均粒径が13μmであった。
【0179】
黄色粒子Y0の2部と、表面処理剤B−1の25部と、トリエチルアミン0.01部とを混合し、100℃の温度で5時間攪拌した。その後、遠心沈降させ溶媒を除去し、さらに減圧乾燥させ、黄色粒子R0の表面に分岐型シリコーン系高分子が結合して付着した黄色粒子Y1を得た。黄色粒子Y1の体積平均粒径は13μmであり、帯電極性は正帯電であった。
【0180】
<実施例1>
厚さ0.7mmのガラスからなる基板上に電極としてITO(酸化スズインジウム)をスパッタリング法で50nmの厚さで成膜した。このITO/ガラス基板を2枚用意し、第1基板(第1電極)と第2基板(第2電極)とした。50μmのテフロン(登録商標)シートをスペーサーとして、第1基板上に第2基板を重ね合わせて、クリップにて固定した。
その後、白色粒子分散液10部と、シアン粒子分散液C1の2部と、赤色粒子R1の2.1部とを混合した混合液を上記基板間の間隙に注入し、評価用セルとした。
【0181】
上記評価用セルを用いて、第2電極がプラスとなるように両電極に30Vの電圧を1秒間印加した。シアン粒子(負帯電)はプラス側電極、即ち第2電極側へ移動し、赤色粒子(正帯電)はマイナス側電極、即ち第1電極側へ移動し、第2基板側から観察するとシアン色が観察された。
その後、第2電極がマイナスとなるように両電極に30Vの電圧を1秒間印加したところ、赤色粒子はマイナス側電極、即ち第2電極側へ移動し、シアン粒子はプラス側電極、即ち第1電極側へ移動し、第2基板側から観察すると表示色として赤色が観察された。
赤色が観察された状態で、光学顕微鏡にて第2電極を観察したところ、赤色粒子のみが観察され、シアン粒子は見られなかった。
さらに、ミノルタ社製分光測色計CM−2022を用いて、波長650nmと波長500nmの反射率を測定した。結果を表1に示す。
【0182】
<実施例2〜5>
実施例1において、赤色粒子R1に替えて赤色粒子R2〜R5のいずれかを用いた以外はすべて実施例1と同様にして、表示色の観察および光学顕微鏡による観察を行い、反射率を測定した。結果を表1に示す。
【0183】
<実施例6>
実施例1において、シアン粒子分散液C1に替えてシアン粒子分散液C2を用いた以外はすべて実施例1と同様にして、表示色の観察と光学顕微鏡観察を行い、反射率を測定した。結果を表1に示す。
【0184】
<比較例1〜3>
実施例1において、赤色粒子R1に替えて赤色粒子R01〜R03のいずれかを用いた以外はすべて実施例1と同様にして、表示色の観察および光学顕微鏡による観察を行い、反射率を測定した。結果を表1に示す。
【0185】
【表1】
【0186】
表1に示す評価結果から、本実施例の赤色粒子は、比較例の赤色粒子に比べ、赤色粒子よりも粒径の小さいシアン粒子との固着が抑制されたことがわかる。
【0187】
<実施例7>
実施例1において、赤色粒子R1に替えて黄色粒子Y1を用いた以外はすべて実施例1と同様にして、表示色の観察と光学顕微鏡観察を行った。結果を表2に示す。
【0188】
【表2】
【0189】
表2に示す評価結果から、本実施例の黄色粒子は、黄色粒子よりも粒径の小さいシアン粒子との固着が抑制されたことがわかる。
【0190】
<実施例8>
実施例1において、シアン粒子分散液C1に替えてシアン粒子分散液C3を用いた以外はすべて実施例1と同様にして、評価用のセルを作製した。
【0191】
上記評価用セルを用いて、第2電極がプラスとなるように両電極に30Vの電圧を1秒間印加した。シアン粒子と赤色粒子(いずれも正帯電)はマイナス側電極、即ち第1電極側へ移動し、第2基板側から観察すると白色が観察された。
その後、第2電極がマイナスとなるように両電極に30Vの電圧を1秒間印加したところ、シアン粒子と赤色粒子はマイナス側電極、即ち第2電極側へ移動し、第2基板側から観察すると減色混合による表示色として黒色が観察された。
第2基板側から観察して表示色が黒色の状態で、第2電極がプラスとなるように両電極に30Vの電圧を1秒間印加したところ、シアン粒子と赤色粒子はマイナス側電極、即ち第1電極側へ移動し、第2基板側から観察すると白色が観察された。
第2基板側から観察して表示色が白色の状態で、第2電極がマイナスとなるように両電極に30Vの電圧を0.5秒間印加したところ、赤色粒子はマイナス側電極、即ち第2電極側へ移動し、第2基板側から観察すると赤色が観察された。
赤色が観察された状態で、光学顕微鏡にて第2電極を観察したところ、赤色粒子のみが観察され、シアン粒子は見られなかった。
【0192】
<比較例4>
実施例8において、赤色粒子R1に替えて赤色粒子R01を用いた以外は全て実施例8と同様にして、表示色の観察および光学顕微鏡による観察を行った。その結果、赤色粒子の周辺にシアン粒子が少数見られた。
【0193】
【表3】
【0194】
最後の電圧印加(30V/0.5秒間)は、赤色粒子の移動は起こるが、シアン粒子自体の移動が起こらないように印加時間を短くした。
それにもかかわらず、比較例4においては、赤色粒子の周辺にシアン粒子が少数見られたことから、赤色粒子とシアン粒子との固着が生じていると考えられた。
実施例8においては、赤色粒子の周辺にシアン粒子が観察されず、赤色粒子とシアン粒子との固着が抑制されていることが示された。