特許第5989575号(P5989575)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989575
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】無線通信システム及び無線通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 4/04 20090101AFI20160825BHJP
   H04W 16/14 20090101ALI20160825BHJP
【FI】
   H04W4/04 190
   H04W16/14
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-45571(P2013-45571)
(22)【出願日】2013年3月7日
(65)【公開番号】特開2014-175784(P2014-175784A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2015年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000153443
【氏名又は名称】株式会社 日立産業制御ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】水垣 健一
(72)【発明者】
【氏名】那須 清二
【審査官】 桑江 晃
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−5040(JP,A)
【文献】 特開2008−167438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00−99/00
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−2
CT WG1
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが機器と連携して所定の制御及び処理を行う、複数の端末と、
前記複数の端末との間で無線通信を行う基地局とをそれぞれ所定の領域内に配置し、
サーバを、前記それぞれ部屋の前記基地局とネットワークを介して接続した、無線通信システムであって、
前記基地局は、前記無線通信を行う通信期間とは別に設けられた電波環境測定期間内において、定期的に雑音電力を測定することにより電波雑音の発生状況測定を行い、
前記サーバは、前記発生状況測定の結果を継続的に記録し、その測定結果に基づいて電波環境の時系列的変化の傾向を把握して、定期的に生じている電波雑音の影響があると推定した場合に、前記電波雑音の影響を回避するように該当する前記端末と前記基地局の通信チャネルの変更を指示する
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記端末と前記基地局が電波状況を測定することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記無線通信システムにおいて、前記基地局は、電波雑音の発生状況測定をTime Slotted Channel Hopping方式の通信過程において、全体の通信試行回数に対し電波干渉を検出して通信をとりやめた回数の比率である干渉発生率を計測することで行うことを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記無線通信システムにおいて、前記サーバは、無線通信の障害となる電波雑音の発生状況測定結果を継続的に記録し、該記録から該電波雑音の発生周期を判断し、該発生周期に応じて無線機器に該電波雑音の影響を受けない通信チャネルへの変更を指示することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記無線通信システムにおいて、前記サーバは、無線通信の障害となる電波雑音の発生状況測定結果を継続的に記録し、該記録と周辺の機器の稼動状況の記録から該電波雑音の発生源の機器を判断し、該発生源の機器の稼動スケジュール応じて無線機器に該電波雑音の影響を受けない通信チャネルへの変更を指示することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記無線通信システムにおける前記サーバは、無線通信の障害となる電波雑音の発生状況測定結果を継続的に記録し、該記録から該電波雑音の発生周期を判断し、該発生周期に応じて無線機器に該電波雑音の影響を受けない通信チャネルへの変更を指示する機能を有することを特徴とする請求項記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記無線通信システムにおいて、前記サーバは、無線通信の障害となる電波雑音の発生状況測定結果を継続的に記録し、該記録と周辺の機器の稼動状況の記録から該電波雑音の発生源の機器を判断し、該発生源の機器が電波雑音を出す特性を本来持っているかを調べ、該電波雑音の発信が該機器の特性ではない場合、該機器が不調をきたしていると判断してユーザに対しその旨を通知することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項8】
前記無線通信システムにおける前記サーバは、無線通信の障害となる電波雑音の発生状況測定結果を継続的に記録し、該記録と周辺の機器の稼動状況の記録から該電波雑音の発生源の機器を判断し、該発生源の機器が電波雑音を出す特性を本来持っているかを調べ、該電波雑音の発信が該機器の特性ではない場合、該機器が不調をきたしていると判断してユーザに対しその旨を通知する機能を持つことを特徴とする請求項記載の無線通信システム。
【請求項9】
それぞれが機器と連携して所定の制御及び処理を行う、複数の端末と、
前記複数の端末との間で無線通信を行う基地局とをそれぞれ所定の領域内に配置し、
サーバを、前記それぞれ部屋の前記基地局とネットワークを介して接続した、無線通信システムにおける無線通信方法であって、
前記基地局は、データ通信間隔単位に含まれる、通信期間に前記少なくとも1つの端末との間で無線通信を行い、前記通信期間とは別に設けられた電波環境測定期間に定期的に雑音電力を測定し、雑音電力測定結果を前記サーバに送信し、
前記サーバは、前記それぞれの領域内の前記基地局から、雑音電力測定結果を受け取り、通信チャネルごとに前記雑音電力が基準値以上かどうかを判定し、
前記雑音電力が前記基準値以上となった時刻を前記基地局及び前記チャネルと対応付けて雑音発生案件として継続的に記録しその記録に基づいて電波環境の時系列的変化の傾向を把握して、
同じチャネル及び同じ基地局ごとに、前記雑音発生案件を抽出し、
前記抽出した雑音発生案件について規則性発見の処理を行って、チャネル回避の要否を判断し、
前記チャネルの回避先を決定することを特徴とする無線通信方法。
【請求項10】
前記サーバは、前記規則性発見の際に、
稼働期間が、前記雑音発生案件に含まれる雑音発生期間と類似している前記機器を抽出し、前記抽出した機器の前回の稼働期間が、前記抽出した雑音発生案件に含まれる雑音発生期間と同じ機器を雑音源として特定し、前記雑音源に関連する前記雑音発生案件に含まれるチャネルを変更するよう前記基地局に指示し、
前記稼働期間が、前記雑音発生案件に含まれる雑音発生期間と類似している前記機器がなければ、前記雑音発生期間に対して周期的な期間に雑音が発生しているかどうかを調べ、周期的に雑音が発生していれば、チャネル回避のための通信の日時を変更するよう前記基地局に指示することを特徴とする請求項記載の無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムにおいて定期的に発生している電波雑音の影響を回避して、通信失敗や遅延の少ない高信頼な無線通信を行う無線センサネットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線機器の小型化や低コスト化、および情報処理機器の発達や記憶装置の大容量化に伴い、多数の無線センサ端末から情報を収集しその情報を活用したサービスを提供するセンサネットシステムの需要が高まっている。従来はこのような無線システムを導入する場合、事前に設置環境での周波数利用状況を調査し、他のシステムや機器から生じる電波の影響を受けない周波数を選択していた。この様な調査は特許文献1に示されるような専用の機器を用いて短時間で行われ、一度決定された周波数はその後継続的に使用していた。このような無線システムにおいて他の機器との干渉を避ける技術として非特許文献1のように通信時に発生する干渉が多くなった場合に使用する周波数を変更する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2002−538743号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】水垣他 ”適応ダイバーシティによる干渉回避効果検証”,2011年電子情報通信学会ソサイエティ大会、B-19-5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の設置前の事前調査では、定期的に発信される電波雑音が存在しても、調査時にその雑音が発信されていなければ周波数利用時にその雑音の影響を避けることができなかった。このような雑音の影響を受けると送受信する情報にエラーの発生、あるいは、送信回避の発生による通信の遅延などの問題が生じた。また設置された機器に何らかの故障が生じて、本来意図していない電波を放射するようになった場合、その機器の不調を検出することができず、また機器から発生した電波により通信が影響を受けると言う問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
センサ端末からの情報を定期的に収集する無線センサネットシステムにおいて、基地局が継続的に雑音の発生状況を測定し、その結果に基づいて電波環境の時系列的変化の傾向を把握して、定期的に生じている電波雑音の影響を回避するように端末と基地局の通信チャネルの変更を指示する。また不調の機器が意図しない電波を発生した場合、電波の発生時間や場所の情報と機器の設置位置や稼働時間などの情報を勘案してどの機器が電波を発生しているかを特定し、その機器の検査やメンテナンスを促す。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、定期的に発生している電波雑音の影響を回避して、通信失敗や遅延の少ない高信頼な無線通信を行う無線センサネットシステムを実現できる。また不調のため意図しない電波を発生している機器を早期に発見し、その機器の検査やメンテナンスを促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】システム構成を示す図である。
図2】端末の構成図である。
図3】基地局の構成図である。
図4】電波環境測定手順を示す図である。
図5】サーバの構成図である。
図6】センサ管理テーブルの例を示す図である。
図7】機器管理テーブルの例を示す図である。
図8】基地局管理テーブルの例を示す図である。
図9】端末管理テーブルの例を示す図である。
図10】雑音発生案件管理テーブルの例を示す図である。
図11】電波環境測定結果テーブルの例を示す図である。
図12】雑音発生判断のアルゴリズムの例を示す図である。
図13】規則性発見のアルゴリズムの例を示す図である。
図14】周波数チャネル変更指示のメッセージフローの例を示す図である。
図15】サーバの構成図である。
図16】故障診断アルゴリズムの例を示す図である。
図17】電波環境測定結果テーブルの例を示す図である。
図18】雑音発生判断のアルゴリズムの例を示す図である。
図19】雑音発生箇所の表示画面の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を用いながら説明する。なお以下の説明で述べる通信方式とは、例えば無線LANのIEEE802.11a方式やIEEE802.11b方式、Zigbee(登録商標)やUWB(Ultra Wideband)方式、ISA100.11a方式を示す。またシステム内の全端末、基地局は時刻同期しており、共通の時間軸を持つ。
【0010】
以下の説明ではモータなどの機器に付けられた振動センサや温度センサなどの測定結果を、無線端末を通じてサーバに送り、機器の稼動状況管理や異常検出を行うセンサネットシステムへの本発明の適用事例について説明する。本発明はセンサネットシステム以外にも、機器の消費電力を測定して出力を制御するエネルギーマネージメントシステムなどにも適用可能である。即ち、本発明は、センサに特化しないシステムにも適用できる。
【実施例1】
【0011】
(システム構成)
図1は本実施例のシステム構成を示している。本実施例は複数の端末(100)、基地局(200)、及びサーバ(300)で構成される。端末(100)は、端末(100)と有線で接続されたセンサ(101)の測定結果を、無線を通じて基地局(200)へと送信する。基地局(200)は端末(100)からの情報を、ネットワークを介してサーバ(300)へ送り、サーバからの命令を端末(100)に伝える。また基地局(200)は自局周辺の電波環境を測定し、その結果をサーバ(300)に送信する。サーバ(300)は基地局(200)経由で得られたセンサ(101)の測定結果を記録し、機器管理のサービスを提供する。またサーバ(300)は、基地局(200)が測定した電波環境の測定結果を基に雑音の発生状況を判断し、通信チャネルの変更指示を行う。図1の例では部屋ごとに基地局(200a - 200h)が設置され、その部屋の中にある複数の端末(100a - 100n)との通信を行う。
【0012】
端末(100)の構成を図2に示す。端末(100)は温度センサや振動センサなど各種のセンサ(101)と接続するための外部I/F(102)、センサ(101)から得られた測定結果や無線通信の過程で得られた情報を処理しサーバ(300)に送るメッセージを作成するデータ処理部(103)、メッセージを基地局(200)に送信する無線通信部(104)から構成される。また基地局(200)から送られてくる制御情報(1000)に従って通信チャネルを指定された時刻に変更する機能を持つ。
【0013】
基地局(200)の構成を図3に示す。基地局(200)は端末(100)と通信するための無線通信部(201)、自局に接続している端末を管理する端末管理部(202)、及びネットワーク(400)経由でサーバ(300)との通信を行うサーバ通信部(203)を持つ。基地局(200)は自局に接続している端末(100)から送られてきたセンサ測定情報(1010)と、後述する電波環境測定結果をまとめた測定結果報告(1020)を作成し、サーバ(300)へ送信する。
【0014】
制御情報(1000)、センサ測定情報(1010)及び測定結果報告(1020)の関係は後述する図14を用いて説明する。
【0015】
センサ測定結果のリアルタイム性が要求される場合は、端末(100)からのセンサ測定情報(1010)を受信するごとにサーバ(300)に測定結果報告(1020)を送信する。この場合、電波環境測定結果もセンサ測定結果と同様に測定後すぐに測定結果報告(1020)としてサーバ(300)に送信してもよい。またセンサ測定情報(1010)の測定結果の変化分だけを送るなど、得られた情報を基地局(200)内でフィルタリング処理してサーバ(300)に送信してもよい。
【0016】
基地局(200)は定期的に自局周辺の電波環境を測定する。その手順を、図4を用いて説明する。全ての端末(100)はあらかじめ定められたデータ通信間隔単位(2000)の整数倍の間隔でセンサ(101)の測定結果をまとめたセンサ測定情報(1010)を基地局(200)に送信する。このデータ通信間隔単位(2000)は電波環境測定期間(2010)と通信期間(2020)で構成されており、電波環境測定期間(2010)は全ての端末(100)、及び基地局(200)は互いに通信を行わない。端末(100)と基地局(200)間の通信は全て通信期間(2020)でのみ行う。基地局(200)はこの電波環境測定期間(2010)に使用可能な全ての通信チャネルに対して雑音電力の測定を行い、得られた全チャネルの雑音電力測定結果を測定結果報告(1020)としてサーバ(300)に送る。雑音電力の測定は、基地局(200)の無線通信部(201)を用いて、それぞれのチャネルの受信電力を測定することで求める。測定は複数回行ってその平均を算出する方法がある。あるいは測定結果の中から最大の測定値を選出する方法も使用することができる。
【0017】
サーバ(300)の構成を図5に示す。サーバ(300)は通信部(301)雑音発生判断部(302)、チャネル変更判断部(303)、センサ情報データベース(DB)(304)、基地局・端末情報DB(305)、電波環境情報DB(306)から構成される。
【0018】
(各テーブルの説明)
センサ情報DB(304)には各センサに関する情報を保持するセンサ管理テーブル(3010)と各機器の稼働状況を保持する機器管理テーブル(3020)が記録されている。センサ管理テーブル(3010)の例を図6に示す。センサ管理テーブル(3010)には、設置されているセンサ(101)のID(3011)や種類(3012)、センサが接続されている機器(3015)とセンサに接続している端末ID(3013)、センサの測定間隔(3014)の情報が記録されている。
【0019】
機器管理テーブル(3020)の例を図7に示す。機器管理テーブル(3020)には機器のID(3016)、稼動日(3021)、稼動開始時刻(3022)、稼動終了時刻(3023)、異常動作の有無(3024)、動作時に生じる雑音の有無(3025)が記載されている。機器の稼動開始時刻(3022)、終了時刻(3023)、異常動作の有無(3024)は接続しているセンサの出力の変化から判断する。後述する雑音発生判断部過程で対象の機器が雑音発生源と目された場合、機器動作時に雑音が生じることも記録する。
【0020】
基地局・端末情報DB(305)には各基地局に関する情報を保持する基地局管理テーブル(3030)と各端末の接続状況を保持する端末管理テーブル(3040)が記録されている。基地局管理テーブル(3030)の例を図8に示す。基地局管理テーブル(3030)にはサーバ(300)に接続している基地局のID(3031)と基地局設置場所(3032)やその座標(3033)、測定結果報告メッセージ(1020)の送信間隔(3037)、その基地局に接続している端末の情報(3036)、現在使用している通信チャネル(3034)及び今後の通信チャネル切り替えスケジュール(3035)などが記載されている。
【0021】
端末管理テーブル(3040)の例を図9に示す。端末管理テーブル(3040)には端末ID(3041)と接続している基地局のID(3044)や接続しているセンサのID(3046)、センサ測定情報(1010)の送信間隔(3045)、現在使用している通信チャネル(3042)及び今後の通信チャネル切り替えスケジュール(3043)が記載されている。
【0022】
電波環境情報DB(306)にはこれまでの雑音発生案件を記録した雑音発生案件管理テーブル(3050)と、基地局(200)で測定された電波環境測定結果が記録された電波環境測定結果テーブル(3060)が記録されている。雑音発生案件管理テーブル(3050)の例を図10に、電波環境測定結果テーブル(3060)の例を図11に示す。
【0023】
雑音発生案件管理テーブル(3050)には雑音発生案件に対して雑音発生判断部(302)が付けた案件ID(3051)、その案件を検出した基地局のID(3052)と検出した通信チャネル(3053)、雑音案件の発生時刻(3054)と終了時刻(3055)、雑音発生判断部(302)により判定されたその雑音案件の関連機器(3056)、関連案件(3057)、周期性(3058)が記録される。
【0024】
電波環境測定結果テーブル(3060)には電波環境を測定した基地局(もしくは端末)のID(3063)、観測日時(3061)と各チャネルで測定された雑音電力(3062)が記録される。
【0025】
(動作の説明)
次にサーバ(300)の動作を説明する。
【0026】
サーバ(300)はネットワーク(400)経由で複数の基地局(200)との通信を行う。基地局(200)から送られてきた測定結果報告(1020)からセンサ(101)の測定結果に関する情報を取り出してセンサ情報DB(304)に記録し、電波環境測定結果に関する部分を取り出して電波環境情報DB(306)に記録する。
【0027】
雑音発生判断部(302)は電波環境情報DB(306)の記録に基づいて雑音が発生したことを検知し、その雑音が突発的に生じたものか、定期的に発生しているものかを判断する。定期的に発生していると判断した場合、次に雑音が発生する時期や時刻を推定する。
【0028】
チャネル変更判断部(303)はその時間までに影響範囲内の端末(100)、基地局(200)に対して雑音の影響を受けない通信チャネルに変更し、雑音の発生終了が推定される時刻以降に再度通信チャネルを変更する指示を行う。また、雑音発生判断部(302)が、特定の機器が動作すると雑音が発生していると判断した場合、チャネル変更判断部(303)は、次にその機器が動作するときに対象基地局と端末にチャネル変更を指示する。
【0029】
雑音発生判断部(302)における雑音発生判断のアルゴリズムを、図12を用いて説明する。
【0030】
雑音発生判断部(302)は、基地局(200)から送られてくる測定結果報告(1020)に記録されている雑音電力測定結果(3062)を通信チャネルごとにチェックする。そのチャネルの雑音電力測定結果(3062)が基準値A以上であれば(1201)、雑音が発生していると判断し、発生開始時刻(3054)を記録して(1202)雑音電力の変化を期間T1の間観測する(1203)。この期間に雑音電力がAを超えた割合が基準値B以上であれば(1204)、雑音が継続的に発生していると判断してさらにT1の期間観測を延長する。雑音電力がAを超えた割合が基準値B以下であれば、雑音の発生は終了したと判断し、その時刻を終了時刻(3055)として記録する(1205)。これを雑音発生案件として、案件ID(3051)を付与した上で雑音を記録した基地局ID(3052)、チャネル(3053)、雑音発生開始時刻(3054)、終了時刻(3055)を電波環境情報DB(306)に登録する。次に電波環境情報DB(306)に登録されている他の雑音発生案件の中から、同じチャネル、同じ基地局で発生した雑音発生案件をピックアップする(1206)。これらの案件に対して、今回発生した雑音との間に規則性を見出せるものをセンサ情報DB(304)と電波環境情報DB(306)を用いて探す(1207)。
【0031】
(規則性発見のアルゴリズム)
ステップ1207の規則性発見のアルゴリズムの例を図13に示す。まず対象となる雑音発生案件の雑音発生開始時刻(3054)と機器管理テーブル(3020)に登録されている機器の稼動開始時刻(3022)の差、及び雑音発生終了時刻(3055)と機器の稼動終了時刻(3023)の差が基準値C以下の機器がないか確認する(1301、1302)。
【0032】
条件に合致する機器が存在する場合、電波環境情報DB(306)の中から基準となる雑音発生案件と同じチャネル、同じ基地局(200)という条件でピックアップされた雑音発生案件の中にその機器の前回の稼動時刻及び前々回の稼動時刻と雑音発生時刻が一致する案件が存在しないか確認する(1303)。もし存在すれば、雑音発生判断部(302)はその機器が雑音発生源となっている可能性が高いと判断し、それに対する処理をチャネル変更判断部(303)に指示する(1304)。
【0033】
該当する雑音発生案件がない、もしくは該当する機器がない場合、雑音発生と機器との関連はないと判断し、雑音発生判断部(302)は外部からの雑音発生要因の影響の検討を行う。この場合、外部からの要因により雑音が定期的に発生していないかを検討する。
【0034】
まずは毎日同じ時刻に雑音が発生していないかを確認するため、前日及び前々日に雑音が発生している案件が無かったか、電波環境情報DB(306)の中から基準となる雑音発生案件と同じチャネル、同じ基地局(200)でピックアップされた雑音発生案件を確認する(1306、1307)。
【0035】
それがなければ、特定の曜日に雑音が発生している可能性を考慮して、前週及び前々週に雑音が発生していなかったかを確認する(1308、1309)。ここでも規則性を見つけ出せない場合、月ごとに雑音が発生していないかを確認するため、前月及び前々月の同じ日付で雑音が発生していないかを確認する(1310、1311)。この過程で規則性が見つかった雑音発生案件に関してはその規則性(3058)を電波環境情報DBに登録する(1209)。
【0036】
上記の例では規則性や関連性の判断のために過去2回同様の雑音が発生していることを判断の基準としたが、この回数は要求される通信品質や周波数の使用状況に応じて変更可能である。また規則性の探索方法に関して、機器の操作を行う作業員の位置情報と雑音の発生状況をチェックして作業員由来の雑音が発生していないかを確認する方法も適用可能である。
【0037】
図12のステップ1208において、それぞれの条件に合う雑音発生案件があった場合、チャネル変更判断部(303)はその条件に基づいた次の雑音発生予想時刻を推定し、影響を受ける端末(100)及び基地局(200)に対して、その時刻は該当する通信チャネルを回避して別の通信チャネルをに切り替えるように指示する。
【0038】
図13のステップ1306〜1311において規則性が見つからなかった場合(1312)、図12に示すように、上記の規則性は満たさないが、雑音発生を回避できるチャネル回避期間をその都度更新する(1210)。ステップ1209又は1210で得られた結果を雑音発生案件として登録する(1211)。
【0039】
なお、図13のステップ1304、1307、1309、1311及び1312の後は、図12のステップ1209に続く。
【0040】
(通信チャネル変更指示)
本発明での、端末(100)及び基地局(200)に対する通信チャネル変更指示(1030)のメッセージフローの例を図14に示す。ここでは基地局(200)に対して端末A(100A)及び端末B(100B)の2つの端末が接続している場合を例に説明する。基地局(200)は端末A(100A)及び端末B(100B)からセンサ測定情報(1010)を受け取り、それに対するAck(肯定応答)(1040)を返す。これらのセンサ測定結果及びその間に基地局(200)が測定した電波環境測定結果をまとめた測定結果報告(1020)をサーバ(300)に送信する。サーバ(300)の雑音発生判断部(302)はこの測定結果も含めた電波環境情報DB(306)内の過去の測定結果より、雑音発生の有無を判断し、その雑音発生案件の規則性を推測する。その雑音発生案件に規則性を見出し、次の雑音発生時刻が推定できた場合、サーバ(300)のチャネル変更判断部(303)は対象となる基地局(200)にチャネル変更指示(1030)を送る。チャネル変更指示には変更時刻と変更するチャネルの内容が記載されている。
【0041】
例えば図8では、時刻t1の後に雑音発生が予想されるとして基地局(C)と端末(f、g)に、時刻t1に通信チャネルをch12からch15に切り替えるよう指示している。チャネル変更指示(1030)を受け取った基地局(200)は対象となる端末(100A、100B)にチャネル変更指示を送る準備をして、それぞれの端末(100A、100B)からセンサ測定情報(1010)が送られてくるのを待つ。端末(100A、100B)からセンサ測定情報(1010)を受け取ったら、基地局(200)はそのAckとしてチャネル変更を指示する制御情報(1000)を返信する。
【0042】
ここで、端末(100)に対しAckメッセージを用いて指示を伝達するのは、端末(100)が消費電力抑制のためにスリープモードに入っていて指示を受信できないことを防ぐためである。このため、端末(100)が常時受信可能なシステムでは、サーバ(300)からの指示を受け取った時点で基地局(200)から対象端末にチャネル変更指示を含む制御情報(1000)を送信してもよい。指示を受けた端末(100A、100B)及び基地局(200)は、サーバ(300)から指定された時刻t1に、指定された通信チャネルに切り替える。
【0043】
上記の実施例により雑音発生箇所を特定、もしくは推定した結果を画面表示した例を、図19に示す。図19では、各部屋の配置と、各部屋に設置されている基地局(200)と端末(100)が表示されており、雑音発生箇所として特定、もしくは推定された端末(100)が識別表示されている。雑音発生箇所としては、端末(100)、あるいは、端末と有線で接続されたセンサの測定対象である機器の何れかであるが、図19の画面表示例では、実際の雑音発生箇所が機器であっても、その機器のセンサが接続されている端末(100)を雑音発生個所として表示する。図19では、部屋Bの端末(100d)、及び部屋Gの端末(100m)が雑音発生箇所として特定、もしくは推定された場合を示している。
【0044】
また、図19に示した端末(100)の何れかを、利用者が画面上で指定した時に、指定された端末に関して、図13に示した規則性発見のアルゴリズムによって得られた雑音発生案件の規則性に関する情報、あるいは、通信チャネル変更に関する情報などを画面表示してもよい。
【0045】
図19に示すように、雑音発生箇所を、複数の部屋の配置、及び各部屋の中の端末及び基地局の配置とともに表示することにより、実際の雑音発生箇所(機器)の特定、もしくは推定、及び雑音の影響を回避するための知見として役立てることができる。即ち、無線通信では電波が空間を伝搬するため、無線通信で検知される雑音発生箇所を把握する上で、端末や基地局などの各種機器の配置が重要である。
【実施例2】
【0046】
前記の実施例1では機器から電波雑音が生じていた場合、周辺の端末(100)や基地局(200)の通信チャネルの変更を行うのみであった。しかし機器が意図的でない電波を放出しだしたということは、その機器が何らかの不調を抱えている可能性が高い。この情報を利用すれば機器の故障早期発見や事前検出が可能となる。この故障診断機能を持ったサーバ(300)の構成図を図15に示す。図5に示した前記のサーバの構成に加え、機器の故障を診断する故障診断部(307)を持つ。
【0047】
図16に、本実施例における故障診断部(307)の処理フローを示す。図16の処理フローは、機器をリストアップする処理(1601〜1606)と雑音と機器との関連をチェックする処理(1607〜1611)からなる。
【0048】
故障診断部(307)は、雑音案件の要因として機器を選定(1601〜1611)した場合、その機器がこれまで雑音を発生していたかを機器管理テーブル(3020)の機器に関連する雑音の有無(3025)の項にチェックがあるかどうかで確認する。チェックがあれば、その機器は雑音を出す特性を持つと判断し、故障ではないと判断する。チェックが無ければその機器が以前は雑音を発生していなかったということなので、機器内部に何らかの不調が発生したと判断し、その機器の検査やメンテナンスの必要性をユーザに対して警告する。
【実施例3】
【0049】
前記実施例1では電波環境の測定を基地局(200)が行ってきた。しかし、雑音源の位置や雑音の大きさによっては基地局(200)では検出できなくとも端末(100)には影響を与えるものも存在する。本実施例では、端末(100)が電波環境測定を行う場合について説明する。
【0050】
基地局(200)及び端末(100)は定期的に自局周辺の電波環境を測定する。その手順を、図4を用いて説明する。基地局(200)及び端末(100)は電波環境測定期間(2010)に使用可能な全ての通信チャネルに対して雑音電力の測定を行う。端末(100)はその測定時刻と測定結果をセンサの測定結果と共にセンサ測定情報(1010)として基地局(200)に送る。基地局(200)は自身の測定結果および端末(100)から送られてきた全チャネルの雑音電力測定結果をまとめて測定結果報告(1020)としてサーバ(300)に送る。サーバ(300)は、その結果に基づいて雑音発生判定部(302)で雑音発生案件の有無を判断する。
【0051】
チャネル変更判断部(303)は雑音発生判断部(302)が判断した雑音発生案件の内容に基づいて、影響を受ける端末(100)及び基地局(200)に対して、雑音発生が予想される時刻までに該当する通信チャネルを回避して別の通信チャネルに切り替えるように指示する。このとき、一部の端末のみが影響を受ける雑音発生案件であっても、その端末が接続している基地局(200)と、その基地局に接続している全ての端末(100)に対し、通信チャネルの切り替えを指示する。それにより、基地局(200)が複数の通信チャネルを同時に使用しなければいけない事態を防止する。
【実施例4】
【0052】
前記の実施例1では通信チャネルの雑音の有無について、雑音電力を測定することで判断していた。しかし、この方式では変動の激しい雑音に対しては、測定のタイミングによって雑音電力が大きく変化してしまうため通信への影響を正しく評価できない可能性があった。これに対し、ISA100.11aなどの無線方式で採用されているTime Slotted Channel Hopping(TSCH)方式を用いることで、通常の通信を行いながら全ての通信チャネルにおける雑音が通信に与える影響を評価することができる。本実施例ではTSCH方式を用いた電波環境評価の方法を示す。
【0053】
TSCH方式では端末(100)と基地局(200)があらかじめ定められたパターンにしたがって通信チャネルを切り替えながら通信を行う方式である。この方式では基地局(200)はチャネルパターンが一巡する間に使用可能な全ての通信チャネルを用いて通信を行うこととなる。この際に、基地局(200)は全ての通信について信号の送信を試行した回数と送信前に雑音を検出して送信を回避した回数を記録する。この記録を前記実施例の雑音電力測定結果の代わりに測定結果報告としてサーバ(300)に送る。サーバはこのデータから各チャネルの干渉発生率を算出する。干渉発生率は送信回避回数/送信試行回数で算出される。このとき、端末(100)もそれぞれ送信試行回数と送信回避回数及びそのときのチャネルを記録して基地局(200)に通知し、基地局(200)は端末(100)の測定結果と基地局自身の測定結果を合わせて干渉発生率を計算する方法も適用可能である。
【0054】
サーバ(300)は基地局(200)から送られてきた測定結果報告(1020)電波環境測定結果に関する部分を取り出して電波環境情報DB(306)の電波環境測定結果テーブル(3070)に記録する。干渉発生率(3072)を記録した電波環境測定結果テーブル(3070)の例を図17に示す。15:00から16:00の間、基地局Cに接続する通信チャネル12における干渉発生率が高いことが分かる。
【0055】
干渉発生率を基準とした雑音発生判断のアルゴリズムの例を、図18を用いて説明する。雑音発生判断部(302)は、電波環境測定結果テーブル(3070)に記載されている干渉発生率(3072)を通信チャネルごとにチェックする。そのチャネルの干渉発生率(3072)が基準値A以上であれば、雑音が発生していると判断し(1801)、発生開始時刻を記録して干渉発生率の変化を期間T1の間観測する(1802、1803)。この期間に干渉発生率がAを超えた割合が基準値B以上であれば(1804)、雑音が継続的に発生していると判断してさらにT1の期間観測を延長する。干渉発生率がAを超えた割合が基準値B以下であれば、雑音の発生は終了したと判断し、その時刻を終了時刻として記録する(1805)。これを雑音発生案件として、案件ID(3051)を付与した上で雑音を記録した基地局ID(3052)、チャネル(3053)、雑音発生開始時刻(3054)、終了時刻(3055)を電波環境情報DB(306)に登録する(1806〜1811)。ステップ1807〜1811は、図12のステップ1207〜1211と同様である。
【符号の説明】
【0056】
100:端末、101:センサ、102:外部I/F、103: データ処理部、104:無線通信部、200:基地局、201:無線通信部、202:端末管理部、203:サーバ通信部、300:サーバ、301:通信部、302:雑音発生判断部、303:チャネル変更判断部、304:センサ情報データベース、305:基地局・端末情報データベース、306:電波環境情報データベース、400:ネットワーク
図1
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