(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施例1]
〔パワーステアリング装置の構成〕
図1は実施例1のパワーステアリング装置90の模式図である。パワーステアリング装置90は、運転者により操舵操作されるステアリングホイール91と、ステアリングホイール91の操舵操作に伴い左右の転舵輪92l,92rを転舵させる操舵機構93と、操舵機構93に設けられ運転者の操舵操作力に対してアシスト力を発生させるパワーシリンダ94と、パワーシリンダ94に作動液を供給する可変容量形ベーンポンプ1と、可変容量形ベーンポンプ1から吐出された作動液をパワーシリンダ94または作動液を貯留するリザーバタンク25に供給するロータリバルブ99を有している。
操舵機構93は、ステアリングホイール91と一体に回転するステアリングシャフト95と、ステアリングシャフト95の先端に設けられたピニオン96と、ピニオン96と噛み合うラック97とから構成されている。ステアリングホイール91の回転運動がピニオン96とラック97とによって直線運動に変換され、ラック97の運動により転舵輪92を転舵させている。
【0009】
パワーシリンダ94の内部は、ラック97と一体に運動するピストン98によって左液圧室94lと右液圧室94rとに隔成されている。ステアリングシャフト95にはロータリバルブ99が設けられている。
ロータリバルブ99は、可変容量形ベーンポンプ1から吐出された作動液を、ステアリングホイール91の操舵方向および操舵量に応じてパワーシリンダ94の左液圧室94l、右液室94rまたはリザーバタンク25に供給する。具体的には、ステアリングホイール91の操舵量がゼロ付近(すなわち非操舵時)のときには、作動液をリザーバタンク25に排出する。ステアリングホイール91を左操舵したときには、操舵量に応じて右液圧室94rに供給する作動油量を調整して、パワーシリンダ94により左操舵方向のアシスト力を発生させる。ステアリングホイール91を右操舵したときには、操舵量に応じて左液圧室94lに供給する作動液を調整して、パワーシリンダ94により右操舵方向のアシスト力を発生させる。作動液量の調整後、不要な作動油はリザーバタンク25に排出される。
〔ベーンポンプの概要〕
図2は、実施例1の可変容量形ベーンポンプ1の軸方向断面図(
図3のI-I断面図)、
図3は可変容量形ベーンポンプ1の径方向断面図(
図2のII-II断面図)である。
図3はカムリング4が最もy軸負方向に位置する場合(偏心量最大)を示す。
実施例1の可変容量形ベーンポンプ1は、図外のエンジンにベルト等を介して駆動されるプーリに駆動軸2が連結されている。
図3の断面図は、ポンプ機能の説明を簡便にするべく、油路構成等を概略的に示すものである。なお、駆動軸2の軸方向をx軸とし、ポンプボディ10に対して駆動軸が挿入される方向を正方向とする。また、カムリング4の揺動を規制するカムスプリング201(
図3参照)の軸方向であってカムリング4を付勢する方向をy軸負方向、x,y軸と直行する軸であって吸入通路26側をz軸正方向とする。実施例1のベーンポンプは、リザーバタンクから吸入した作動液を必要な圧に昇圧し、必要な流量をパワーステアリング装置に供給する。
【0010】
可変容量形ベーンポンプ1は、駆動軸2と、ロータ3と、カムリング4と、アダプタリング5と、ポンプボディ10とを有する。駆動軸2はポンプボディ10に回転自在に支持される。駆動軸2のx軸負方向側端部にはプーリが連結されている。駆動軸2のロータ3が設けられる部分にはセレーション24が形成されている。またロータ3の内周面にもセレーション34が形成されている。駆動軸2のセレーション24とロータ3のセレーション34とが嵌め合うことにより駆動軸2の回転駆動力がロータ3に伝達される。なお、駆動軸2のセレーション24の軸方向長さは、ロータ3の軸方向長さよりも短く形成されている。ロータ3の外周には軸方向溝である複数のスリット31が放射状に形成されている。この各スリット31には、ロータ3と略同じx軸方向長さを有する板状のベーン32が径方向に進退自在に挿入される。また、各スリット31の内径側端部には背圧室33が設けられ、作動液が供給されてベーン32を径方向外側に付勢する。
【0011】
ポンプボディ10はフロントボディ11およびリアボディ12から形成されている。フロントボディ11はx軸正方向側に開口する有底カップ形状であり、フロントボディ11の内周部には筒状のポンプ要素収容部112が形成されている。ポンプ要素収容部112のx軸負方向側は底部111によって閉塞されている。この底部111には円盤状のプレッシャプレート6が収装されている。フロントボディ11とリアボディ12は複数のボルトによって締結固定されている。ポンプ要素収容部112内であって、プレッシャプレート6のx軸正方向側には、アダプタリング5、カムリング4およびロータ3が収装されている。リアボディ12は、x軸正方向側からアダプタリング5、カムリング4およびロータ3と液密に当接し、アダプタリング5、カムリング4およびロータ3はプレッシャプレート6およびリアボディ12に狭持される。
【0012】
アダプタリング5は、筒状部であるポンプ要素収容部112内に設けられ、内部にカムリング収容部54が形成される円環状の部材である。なお、アダプタリング5の形状は、内部に収容空間が形成されるように少なくとも円弧形状の部分を備えていればよく、リング状に限らずCの字状に形成されていてもよい。アダプタリング5のy軸正方向端部には、径方向貫通孔51が設けられている。また、フロントボディ11のy軸正方向端部にはプラグ部材挿入孔114が設けられ、有底カップ形状のプラグ部材73が螺合されてフロントボディ11と外部との液密性を確保する。このプラグ部材73の内周にはカムスプリング201がy軸方向に伸縮可能に挿入され、アダプタリング5の径方向貫通孔51を貫通してカムリング4に当接し、y軸負方向へ付勢する。カムスプリング201は揺動量が最大となる方向にカムリング4を付勢し、圧力の安定しないポンプ始動時において吐出流量(カムリング揺動位置)を安定させるものである。
【0013】
アダプタリング5のカムリング収容部54内にはカムリング4が収容されている。カムリング4の内周面(カムリング内周面41)にはベーン32の先端が当接しながら回転し、カムリング内周面41、ロータ3およびベーン32により複数のポンプ室13を形成する。カムリング4は、アダプタリング5のカムリング収容部54内に駆動軸2に対して移動可能に設けられる。
アダプタリング5とカムリング4との間には、ピン40aが設けられている。このピン40aによりポンプ駆動時にアダプタリング5がフロントボディ11内で回転しないようにしている。
【0014】
カムリング収容部54のz軸正方向端部にはシール部材50が設けられ、z軸負方向端部には支持面Nが形成され、支持面Nには支持板40が設けられている。カムリング4は支持板40上をy軸方向に揺動可能に設けられている。支持板40とシール部材50により、カムリング4とアダプタリング5との間の第1流体圧室A1と第2流体圧室A2との隔成している。第1流体圧室A1は、カムリング収容部54内で、かつ、カムリング4の外周側に設けられ、複数のポンプ室13の容積が増大する方向にカムリング4が移動するとき内部容積が減少する側に形成されている。第2流体圧室A2は、カムリング収容部54内で、かつ、カムリング4の外周側に設けられ、複数のポンプ室13の容積が増大する方向にカムリング4が移動するとき内部容積が増大する側に形成されている。
アダプタリング5のz軸正方向側であってシール部材50のy軸負方向側には貫通孔52が設けられている。この貫通孔52はそれぞれフロントボディ11内に設けられたカム制御圧導入通路113を介してスプール70へ連通し、y軸負方向側の第1流体圧室A1とスプール70を接続する。
【0015】
〔フロントボディの構成〕
フロントボディ11には、駆動軸2を軸支する軸支部117が形成されている。この軸支部117は底部111に貫通形成されている。軸支部117と駆動軸2との間には円筒状の第1ブッシュ14(滑り軸受け)が設けられている。軸支部117のプーリ9側端部にはオイルシール15が設けられ、ポンプ内の液密性を確保している。フロントボディ11のz軸正方向側には第1流体圧室A1内の圧力を制御することによりカムリング4の偏心量を制御する圧力制御手段であるスプール70を収装する制御バルブ収容孔116と、吸入通路26からの作動液をスプール70に導入する制御弁用吸入油路115と、第1流体圧室A1内に制御圧を吐出するカム制御圧導入通路113とを有する。
また底部111には、後述するプレッシャプレート6の第2吸入口62と対向する位置に窪ませて形成された吸入溝111bと、第2吐出口63と対向する位置に窪ませて形成された吐出溝111aと、吸入側背圧溝64のx軸負方向側面に対向する吐出圧導入溝111cと、吐出溝111aに接続されパワーステアリング装置に作動液を送出する吐出通路20とを有する。吸入溝111bには吸入圧が作用し、吐出溝111aと吐出圧導入溝111cには吐出圧が作用する。吸入溝111bには潤滑油路118がx軸に対して斜めに穿設され、第1ブッシュ14と駆動軸2との間を潤滑するため作動液を供給している。
【0016】
〔プレッシャプレートの構成〕
プレッシャプレート6は、筒状部であるポンプ要素収容部112内に設けられ、アダプタリング5と底部111との間に配置されている。また、プレッシャプレート6は、アダプタリング5の軸方向一方側の端面と当接する当接面61と、駆動軸2が貫通可能に形成された孔部であって駆動軸2と軸方向に相対移動可能となるように形成された貫通孔66を有する。
プレッシャプレート6のx当接面61には、z軸正方向側に円弧状に配置された第2吸入口62と、z軸負方向側に円弧状に配置された第2吐出口63と、背圧室33に吐出圧を導入する吸入側背圧溝64および吐出側背圧溝65とが形成されている。第2吸入口62は、カムリング4の軸方向一端面に対向するように配置され、駆動軸2の回転に伴い複数のポンプ室13の容積が増大する吸入領域に開口するように形成されている。
またプレッシャプレート6は、吐出溝111aと吐出圧導入溝111cの吐出圧がx軸負方向側面67に作用することによりアダプタリング5側に付勢される。
【0017】
〔リアボディの構成〕
リアボディ12には、作動液を貯留するリザーバタンクから第1吸入口122に作動液を導入する吸入通路12aがz軸方向に形成されている。吸入通路12aのz軸正方向側にはスプール70に作動液を供給する油路12dが形成されている。リアボディ12の略中心部には駆動軸2を軸支する有底状の軸支部12cが形成されている。軸支部12cと駆動軸2との間には円筒状の第2ブッシュ16(滑り軸受け)が設けられている。吸入通路12aの下端には軸支部12cと連通する潤滑油路12bが形成され、第2ブッシュ16と駆動軸2との間を潤滑するため作動液を供給している。
リアボディ12のx軸負方向側には円形状に隆起したポンプ形成面120を有する。ポンプ形成面120には、カムリング4のx軸正方向側側面に対向するように配置され、吸入領域に開口するように第1吸入口122が形成されている。また、カムリング4のx軸方向側側面に対向するように配置され、吐出領域に開口するように第1吐出口123が形成されている。また、ポンプ形成面120には、背圧室33に吐出圧を導入する吸入側背圧溝124および吐出側背圧溝125が形成されている。
【0018】
〔制御部の構成〕
可変容量形ベーンポンプ1の制御部は、第1流体圧室A1、第2流体圧室A2、制御バルブ7と吐出通路20から構成されている。
吐出通路20は、ポンプボディ10内において各部を接続する作動液の通路である。フロントボディ11には、y軸方向に延びる略円筒状の制御バルブ収容孔116が形成されており、制御バルブ収容孔116には制御バルブ7が収容される。
制御バルブ7はスプール70の位置を変位させることで、第1流体圧室A1への作動液の供給を切り替える。
図3の状態では、カム制御圧導入通路113と後述する低圧室116bが連通した状態となっており、第1流体圧室A1には吸入圧が作用している。
【0019】
図4は制御バルブ7部分の拡大断面図である。スプール70のy軸正方向側にはバルブスプリング71が圧縮状態で設置され、スプール70をy軸負方向側に常時付勢している。スプール70のy軸負方向側には制御バルブ収容孔116の開口部を閉塞するプラグ部材72が螺合されている。
スプール70は、y軸負方向側から順に、第1小径部70a、第1ランド部70b、第2小径部70c、第2ランド部70dが形成されている。第1ランド部70bと第2ランド部70dの外径は制御バルブ収容孔116の内径とほぼ同径に形成されており、また、第1小径部70aと第2小径部70cの外径は制御バルブ収容孔116の内径よりも小径に形成されている。制御バルブ収容孔116内は、制御バルブ収容孔116の内周、第1小径部70aの外周、プラグ部材72、第1ランド部70bに囲まれた空間により高圧室116aが形成されている。また制御バルブ収容孔116の内周、第2小径部70cの外周、第1ランド部70b、第2ランド部70dに囲まれた空間により低圧室116bが形成されている。また制御バルブ収容孔116の内周およびy軸正方向側端面、第2ランド部70dにより中圧室116cが形成されている。
【0020】
高圧室116aと中圧室116cは共に吐出通路20と連通している。吐出通路20は吐出溝111aに連通し、通路21と通路22に分岐する。通路21は高圧室116aに接続し、通路22は中圧室116cおよびロータリバルブ99に接続している。通路22の途中にメータリングオリフィス23が設けられている。メータリングオリフィス23により、可変容量形ベーンポンプ1の吐出流量が多くなるほど、メータリングオリフィス23の前後の差圧が大きくなる。すなわち、吐出流量が多くなるほど、高圧室116aとの圧力に対して中圧室116cの圧力は低くなる。低圧室116bは制御弁用吸入油路115を介して吸入通路26と接続している。すなわち、低圧室116bには吸入圧が作用することとなる。
【0021】
スプール70の内部にはy軸正方向側が開口するリリーフバルブ収容孔70eが形成されている。リリーフバルブ収容孔70eには、リリーフバルブ8が収容される。リリーフバルブ8は、中圧室116cの圧力が高くなりすぎたときに中圧室116cと低圧室116bとを連通するものである。リリーフバルブ8はy軸負方向側から順に、バルブスプリング80、スプリング保持部材81、ボールプラグ82、シート部材83が設けられている。シート部材83は軸方向に貫通する貫通孔83aが形成されており、リリーフバルブ収容孔70e内に圧入されている。バルブスプリング80はリリーフバルブ収容孔70eのy軸負方向側の底面と、スプリング保持部材81との間に圧縮した状態で設けられており、スプリング保持部材81を介してボールプラグ82をシート部材83方向に付勢している。
スプール70には小径部70cを径方向に貫通する低圧室連通孔70fが形成されている。すなわち、リリーフバルブ収容孔70eのボールプラグ82よりy軸負方向側は低圧室116bと連通し、吸入圧が作用している。また、第1小径部70aを径方向に貫通するバイパス通路70gが形成されている。このバイパス通路70gは、低圧室連通孔70fに比べて十分小径に形成されている。リリーフバルブ収容孔70e内は高圧室116aと連通することとなるが、リリーフバルブ収容孔70e内は低圧室116bとも連通しているため、リリーフバルブ収容孔70e内はほぼ吸入圧に保たれている。一方、高圧室116a内は吐出圧に比べて圧力は若干下がるものの、バイパス通路70gは低圧室連通孔70fに比べて十分小径に形成されているため、吸入圧よりは十分に高い圧力が作用している。
【0022】
〔作用〕
(第1および第2流体圧室への作動液の供給)
次に、作動液の供給に関する作用について説明する。
可変容量形ベーンポンプ1の吐出流量が多くなるほど、高圧室116aと中圧室116cとの差圧が大きくなる。この差圧とスプール70のy軸正方向側に設けられたバルブスプリング71の付勢力によってスプール70の位置が制御され、制御圧を生成する。
【0023】
具体的には、可変容量形ベーンポンプ1の吐出流量が少ないときには、高圧室116aと中圧室116cとの差圧は小さい。そのため、スプール70が中圧室116c内の圧力とバルブスプリング71から受けるy軸負方向の付勢力に対して、高圧室116a内の圧力から受けるy軸正方向の付勢力が小さく、スプール70はy軸負方向側に移動している(スプール70は
図3に示す位置に位置する)。このとき第1流体通路A1は低圧室116bと連通し、制御圧として吸入圧が導入されることとなる。
【0024】
可変容量形ベーンポンプ1の吐出流量が多くなると、高圧室116aと中圧室116cとの差圧が大きくなる。そのため、スプール70が中圧室116c内の圧力とバルブスプリング71から受けるy軸負方向の付勢力に対して、高圧室116a内の圧力から受けるy軸正方向の付勢力が大きくなり、スプール70はy軸正方向側に移動し始める。スプール70がy軸正方向側に移動すると、第1ランド部70bによって低圧室116bに開口するカム制御圧導入通路113の開口面積が徐々に小さくなり、逆に高圧室116aに開口するカム制御圧導入通路113の開口面積が徐々に大きくなる。最後には、低圧室116bとカム制御圧導入通路113との連通は遮断され、高圧室116aとカム制御圧導入通路113とが連通されることとなる。このとき第1流体圧室A1には制御圧として吐出圧が導入されることとなる。なおカム制御圧導入通路113が、高圧室116aと低圧室116bの両方に開口しているときには、それぞれの開口割合に応じた圧力に調圧されたものが制御圧として第1流体圧室A1に導入される。
前述のように、第1流体圧室A1にはスプール70の位置に応じた制御圧が導入される。一方、第2流体圧室A2は第2吸入口62と第1吸入口122と連通し、吸入圧が導入される。したがって、第2流体圧室A2には常時吸入圧が導入され、これにより可変容量形ベーンポンプ1は第1流体圧室A1の圧力P1のみ制御される。第2流体圧室A2の圧力P2は制御されず常時圧力P2=吸入圧となるため、第2流体圧室A2は安定した圧力を得ることが可能となり、圧力外乱を防止して安定したカムリング4の揺動制御が実行可能となる。
【0025】
(カムリングの偏心動作)
固定容量形ポンプでは、エンジン始動直後などの低回転時には吐出流量が安定せず、十分なアシスト力を付与できないことがある。一方、エンジン高回転時には吐出流量が多すぎ、ロータリバルブ99においてリザーバタンク25に排出される量が多く、その分、無駄なエンジン負荷となっていた。
実施例1の可変容量形ベーンポンプ1は、エンジン低回転時には、ロータ3に対するカムリング4の偏芯量を大きくしてロータ3の1回転当たりの吐出流量を増大させ、吐出流量が早期に安定するようにしている。また、エンジン回転数が高回転になるに従ってカムリング4の偏芯量を小さくしてロータ3の1回転当たりの吐出流量を減少させ、吐出流量をほぼ一定に保つようにしている。
【0026】
前述のように、可変容量形ベーンポンプ1の吐出流量が少ないときには、第1流体通路A1には制御圧として吸入圧が導入される。このとき、カムリング4が第1流体圧室A1の圧力P1から受けるy軸正方向の付勢力が、第2流体圧室A2の油圧P2とカムスプリング201から受けるy軸負方向の付勢力の和よりも小さい。そのため、カムリング4はy軸負方向側に位置し、偏芯量は大きくなる。
また、可変容量形ベーンポンプ1の吐出流量が多くなると、第1流体通路A1には制御圧とし、吐出圧、または吐出圧と吸入圧とが調圧された圧が導入される。このとき、カムリング4が第1流体圧室A1の圧力P1から受けるy軸正方向の付勢力が、第2流体圧室A2の油圧P2とカムスプリング201から受けるy軸負方向の付勢力の和よりも大きくなってくる。そのため、カムリング4はy軸正方向側に移動し、偏芯量は小さくなる。
【0027】
(操舵操作時の吐出流量増大)
ステアリングホイール91を操舵していないとき(非操作時)にはアシスト力は必要なく、可変容量形ベーンポンプ1から吐出された作動液はリザーバタンク25に排出される。一方、操舵しているとき(操舵時)にはアシスト力が必要であり、可変容量形ベーンポンプ1から吐出された作動液はパワーシリンダ94に供給される。つまり、非操舵時に吐出された作動液はほとんど排出されるため吐出流量は小さく、操舵時にはアシスト力が比つ量とされるため吐出流量が大きくなることが望ましい。
しかし、従来の可変容量形ベーンポンプでは、ステアリングホイール91の操舵、非操舵に関わらず、エンジン回転数とカムリング4の偏芯量によって吐出流量が決まっていた。
【0028】
そこで実施例1では、ステアリングホイール91の操舵、非操舵に応じて可変容量形ベーンポンプ1の吐出流量を可変にするようにした。具体的には、高圧室116aの作動液を低圧室116bにバイパスするバイパス通路70gを形成した。
非操舵時にはロータリバルブ99により可変容量形ベーンポンプ1の通路22とリザーバタンク25とが接続され、操舵時にはロータリバルブ99により可変容量形ベーンポンプ1の通路22とパワーシリンダ94とが接続される。そのため、パワーシリンダ94の負荷により、非操舵時に比べて操舵時の吐出圧が上昇する。すなわち、ロータリバルブ99と接続する通路22のメータリングオリフィス23の下流側の圧力が上昇し、また通路22と接続する通路21および高圧室116aの圧力も上昇する。
高圧室116aの圧力が上昇すると、高圧室116aからバイパス通路70gを通って低圧室116bに流れる流量(バイパス流量)が増大する。バイパス流量が増大すると、高圧室116a内の圧力が下がり、高圧室116aと中圧室116cとの差圧が小さくなる。そのため、スプール70はy軸負方向側に移動して、低圧室116bから第1流体通路A1への作動液の流入量が増大する。したがって、ロータ3の1回転当たりの吐出流量が増大し、エンジン回転数が一定であったとしても可変容量形ベーンポンプ1の吐出流量が増大する。
【0029】
〔効果〕
以下、実施例1から把握される本発明の可変容量形ベーンポンプ1の効果を列挙する。
(1) 車両のパワーステアリング装置90に作動液を供給する可変容量形ベーンポンプ1であって、内部にポンプ要素収容部112を有するポンプハウジング10と、ポンプハウジング10に軸支される駆動軸2と、ポンプ要素収容部112内に収容され、周方向に複数個並んで形成されたスリット31を有し、駆動軸2に回転駆動されるロータ3と、スリット31に出没自在に設けられたベーン32と、ポンプ要素収容部112内に移動可能に設けられ、環状に形成され、ロータ3およびベーン32と共に複数のポンプ室13を形成するカムリング4と、ポンプハウジング10に設けられ、複数のポンプ室13のうちロータ3の回転に伴い容積が徐々に増大する領域に開口するように形成された第1吸入口122(吸入口)と、ポンプハウジングに設けられ、複数のポンプ室のうち前記ロータの回転に伴い容積が徐々に減少する領域に開口するように形成された第1吐出口123(吐出口)と、ポンプハウジング10に設けられ、リザーバタンクに貯留された作動液を第1吸入口122に供給する吸入通路12aと、ポンプハウジング10に設けられ、第1吐出口123から吐出された作動液をポンプハウジング10の外部に供給する吐出通路20と、カムリング4とポンプ要素収容部112との間に形成される一対の空間であって、カムリング4がロータ3に対する偏心量が増大する方向に移動するとき容積が減少する側に形成された第1流体圧室A1と、増大する側に形成された第2流体圧室A2と、吐出通路20に設けられたメータリングオリフィス23と、ポンプハウジング10に設けられ、カム制御圧導入通路113を介して第1流体圧室A1と連通するように形成された制御バルブ収容孔116と、第1吐出口123と制御バルブ収容孔116とを接続する通路21(高圧導入通路)と、制御バルブ収容孔116内に移動可能に設けられたスプール70(弁体)と、スプール70の移動方向を軸方向としたとき、スプール70の軸方向の一方側に設けられ制御バルブ収容孔116とスプール70との間の隙間における作動液の流動が抑制されるように形成された第1ランド部70bと、スプール70の第1ランド部70bよりも軸方向の他方側に設けられ、制御バルブ収容孔116とスプール70との間の隙間における作動液の流動が抑制されるように形成された第2ランド部70dと、軸方向において第1ランド部70bと第2ランド部70dの間の領域であって、制御バルブ収容孔116とスプール70との間に空間が形成されるように第1ランド部70bおよび第2ランド部70dよりも小径に形成された第2小径部70c(小径部)と、制御バルブ収容孔116内に形成される3つの空間であって、第1ランド部70bの軸方向一方側に設けられ通路21を介してメータリングオリフィス23の上流側の作動液が供給される高圧室116aと、第2ランド部70dの軸方向他方側に設けられメータリングオリフィスの下流側の作動液が供給される中圧室116cと、第1ランド部70bと第2ランド部70dの間に設けられ制御バルブ収容孔116と第2小径部70cの間に形成された空間であって吸入通路12aと連通する低圧室16bと、制御バルブ収容孔116内に設けられスプール70を軸方向の一方側に付勢するバルブスプリング71(付勢部材)と、から構成され、スプール70の移動に伴いカム制御圧導入通路113が高圧室116aに連通する連通量と低圧室116bに連通する連通量とを可変制御することにより第1流体圧室A1の圧力を制御し、カムリング4の偏心量を制御する制御バルブ7と、高圧室116a、通路21、および吐出通路20のうちメータリングオリフィス23よりも上流側の領域における作動液を、吸入通路12a側または吐出通路20のうちメータリングオリフィス23よりも下流側の領域にバイパスさせると共に、パワーステアリング装置90の操舵操作に伴うメータリングオリフィス23よりも下流側の圧力の上昇によってバイパス流量が増大するように形成され、バイパス流量を増大させることにより高圧室116aと中圧室116cの間の差圧を減少させ、この差圧の減少に伴いスプール70を軸方向一方側に移動させることによりカム制御圧導入通路113と低圧室116bとの連通量を増大させ、第1流体圧室A1内の圧力を低下させることによりカムリング4の偏心量を増大させるバイパス通路70gと、を有することした。
よって、ステアリングホイール91の操舵時に可変容量形ベーンポンプ1の吐出流量を増大させることができ、一方、非操舵時には吐出流量を小さくすることができるため、必要流量の確保と、エンジン効率を高めエネルギーロスの削減の両立を図ることができる。
【0030】
(2) バイパス通路70gを、制御バルブ収容孔116と第1ランド部70bとの間の隙間以外の部分に設けられ高圧室116aと低圧室116とを連通するように形成した。
よって、制御バルブ7の制御圧である高圧室116aの圧力を低圧側に逃がすことにより、操舵操作に対する制御バルブ7の作動の応答性を高めることができる。
【0031】
(3) 車両に搭載されるパワーステアリング装置90であって、ステアリングホイール91の操舵操作に伴い転舵輪92を転舵させる操舵機構93と、操舵機構93に設けられ、1対の液圧室を備えたパワーシリンダ94と、パワーシリンダ94に作動液を供給するポンプ装置1と、ポンプ装置から供給される作動液を選択的に1対の液圧室に供給するロータリバルブ99と、を備え、ポンプ装置1は、車両のパワーステアリング装置90に作動液を供給する可変容量形ベーンポンプ1であって、内部にポンプ要素収容部112を有するポンプハウジング10と、ポンプハウジング10に軸支される駆動軸2と、ポンプ要素収容部112内に収容され、周方向に複数個並んで形成されたスリット31を有し、駆動軸2に回転駆動されるロータ3と、スリット31に出没自在に設けられたベーン32と、ポンプ要素収容部112内に移動可能に設けられ、環状に形成され、ロータ3およびベーン32と共に複数のポンプ室13を形成するカムリング4と、ポンプハウジング10に設けられ、複数のポンプ室13のうちロータ3の回転に伴い容積が徐々に増大する領域に開口するように形成された第1吸入口122(吸入口)と、ポンプハウジングに設けられ、複数のポンプ室のうち前記ロータの回転に伴い容積が徐々に減少する領域に開口するように形成された第1吐出口123(吐出口)と、ポンプハウジング10に設けられ、リザーバタンクに貯留された作動液を第1吸入口122に供給する吸入通路12aと、ポンプハウジング10に設けられ、第1吐出口123から吐出された作動液をポンプハウジング10の外部に供給する吐出通路20と、カムリング4とポンプ要素収容部112との間に形成される一対の空間であって、カムリング4がロータ3に対する偏心量が増大する方向に移動するとき容積が減少する側に形成された第1流体圧室A1と、増大する側に形成された第2流体圧室A2と、吐出通路20に設けられたメータリングオリフィス23と、ポンプハウジング10に設けられ、カム制御圧導入通路113を介して第1流体圧室A1と連通するように形成された制御バルブ収容孔116と、第1吐出口123と制御バルブ収容孔116とを接続する通路21(高圧導入通路)と、制御バルブ収容孔116内に移動可能に設けられたスプール70(弁体)と、スプール70の移動方向を軸方向としたとき、スプール70の軸方向の一方側に設けられ制御バルブ収容孔116とスプール70との間の隙間における作動液の流動が抑制されるように形成された第1ランド部70bと、スプール70の第1ランド部70bよりも軸方向の他方側に設けられ、制御バルブ収容孔116とスプール70との間の隙間における作動液の流動が抑制されるように形成された第2ランド部70dと、軸方向において第1ランド部70bと第2ランド部70dの間の領域であって、制御バルブ収容孔116とスプール70との間に空間が形成されるように第1ランド部70bおよび第2ランド部70dよりも小径に形成された第2小径部70c(小径部)と、制御バルブ収容孔116内に形成される3つの空間であって、第1ランド部70bの軸方向一方側に設けられ通路21を介してメータリングオリフィス23の上流側の作動液が供給される高圧室116aと、第2ランド部70dの軸方向他方側に設けられメータリングオリフィスの下流側の作動液が供給される中圧室116cと、第1ランド部70bと第2ランド部70dの間に設けられ制御バルブ収容孔116と第2小径部70cの間に形成された空間であって吸入通路12aと連通する低圧室116bと、制御バルブ収容孔116内に設けられスプール70を軸方向の一方側に付勢するバルブスプリング71(付勢部材)と、から構成され、スプール70の移動に伴いカム制御圧導入通路113が高圧室116aに連通する連通量と低圧室116bに連通する連通量とを可変制御することにより第1流体圧室A1の圧力を制御し、カムリング4の偏心量を制御する制御バルブ7と、高圧室116a、通路21、および吐出通路20のうちメータリングオリフィス23よりも上流側の領域における作動液を、吸入通路12a側または吐出通路20のうちメータリングオリフィス23よりも下流側の領域にバイパスさせると共に、パワーステアリング装置90の操舵操作に伴うメータリングオリフィス23よりも下流側の圧力の上昇によってバイパス流量が増大するように形成され、バイパス流量を増大させることにより高圧室116aと中圧室116cの間の差圧を減少させ、この差圧の減少に伴いスプール70を軸方向一方側に移動させることによりカム制御圧導入通路113と低圧室116bとの連通量を増大させ、第1流体圧室A1内の圧力を低下させることによりカムリング4の偏心量を増大させるバイパス通路70gと、を有することした。
よって、ステアリングホイール91の操舵時に可変容量形ベーンポンプ1の吐出流量を増大させることができ、一方、非操舵時には吐出流量を小さくすることができるため、必要流量の確保と、エンジン効率を高めエネルギーロスの削減の両立を図ることができる。
【0032】
[実施例2]
実施例2では、バイパス通路58aを開閉する開閉バルブ60を設けた。実施例1と同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。
〔構成〕
図5は制御バルブ7部分の拡大断面図である。スプール70の内部にはリリーフバルブ収容孔70eと開閉バルブ収容孔70hが形成されている。リリーフバルブ収容孔70eはy軸正方向側に、開閉バルブ収容孔70hはy軸負方向側に形成されており、リリーフバルブ収容孔70eと開閉バルブ収容孔70hとの間にはばね座部70iが設けられている。
リリーフバルブ収容孔70eには、リリーフバルブ8が収容されている。リリーフバルブ8は、中圧室116cの圧力が高くなりすぎたときに中圧室116cと低圧室116bとを連通するものである。リリーフバルブ8はy軸負方向側から順に、バルブスプリング80、スプリング保持部材81、ボールプラグ82、シート部材83が設けられている。
【0033】
シート部材83には軸方向に貫通する貫通孔83aが形成されており、リリーフバルブ収容孔70e内に圧入されている。バルブスプリング80は、ばね座部70iとスプリング保持部材81との間に圧縮した状態で設けられており、スプリング保持部材81を介してボールプラグ82をシート部材83方向に付勢している。スプール70には小径部70cとリリーフバルブ収容孔を連通する低圧室連通孔70fが形成されている。これにより、リリーフバルブ収容孔70eのボールプラグ82よりy軸負方向側は低圧室116bと連通し、吸入圧が作用している。
開閉バルブ収容孔70hには、開閉バルブ60が収容されている。開閉バルブ60は、ステアリングホイール91を操舵し高圧室116a内の圧力が高くなったときに、高圧室116a内の作動液を低圧室116b側に逃がすことで高圧室116aの圧力を低下させて、高圧室116aと中圧室116cとの差圧を小さくするものである。開閉バルブ60にはy軸正方向側から順に、バルブスプリング56、スプリング保持部材55、ボールプラグ57、シート部材58が設けられている。
【0034】
シート部材58には軸方向に貫通するバイパス通路58aが形成されており、開閉バルブ収容孔70h内に圧入されている。バルブスプリング56は、ばね座部70iとスプリング保持部材81との間に圧縮した状態で設けられており、スプリング保持部材55を介してボールプラグ57をシート部材58方向に付勢している。バルブスプリング56の付勢力は、高圧室116aと低圧室116bとの差圧が所定値以上となったときに、開閉バルブ60が開弁するように設定されている。すなわち、ステアリングホイール91を微小操舵したことにより高圧室116aの圧力が微増した程度では開閉バルブ60は開弁しないように設定されている。ばね座部70iの中心部には、リリーフバルブ収容孔70eと開閉バルブ収容孔70hとを連通する連通孔70jが設けられている。これにより、開閉バルブ収容孔70hのボールプラグ57よりもy軸正方向側は低圧室116bと連通し、吸入圧が作用している。
〔作用〕
ステアリングホイール91を操舵すると高圧室116a内の圧力が上昇し、開閉バルブ60が開弁してバイパス通路58aを通って低圧室116bに流れる流量(バイパス流量)が増大する。バイパス流量が増大すると、高圧室116a内の圧力が下がり、高圧室116aと中圧室116cとの差圧が小さくなる。そのため、スプール70はy軸負方向側に移動して、低圧室116bから第1流体圧室A1への作動液の流入量が増大する。したがって、ロータ3の1回転当たりの吐出流量が増大し、エンジン回転数が一定であったとしても可変容量形ベーンポンプ1の吐出流量が増大する。
開閉バルブ60を設けることにより操舵時にのみバイパス通路58aが連通し、非操舵時にはバイパス通路58aは非連通となる。そのため、非操舵時には、高圧室116aと中圧室116cの差圧を確保し、カムリング4を偏芯させ、可変容量形ベーンポンプ1の吐出流量を小さくすることができる。
【0035】
またバルブスプリング56の付勢力を、ステアリングホイール91を微小操舵したことにより高圧室116aの圧力が微増した程度では開閉バルブ60は開弁しないように設定した。そのため、可変容量形ベーンポンプ1の吐出流量を増大させる必要のない微小操舵時には高圧室116aと中圧室116cの差圧を確保し、カムリング4を偏芯させ、可変容量形ベーンポンプ1の吐出流量を小さくすることができる。
また、開閉バルブ60を制御バルブ7のスプール70内に設けるようにした。そのため、
開閉バルブ60を設けたとしても可変容量形ベーンポンプ1の大型化を避けることができる。
またバルブスプリング56により、ボールプラグ57をシート部材58方向に付勢しているため、高圧室116a内の圧力が高圧になるほどバイパス通路58aの開口面積(流路断面積)が大きくなる。そのため、パワーステアリング装置90の負荷が高くパワーシリンダ94側で作動液量が必要となるときに吐出流量を増大することができる。
【0036】
〔効果〕
(4) バイパス通路58aは、バイパス通路58aの途中に設けられ、メータリングオリフィス23よりも下流側の圧力の上昇によって開弁する開閉バルブ60を更に有するようにした。
よって、非操舵時には、高圧室116aと中圧室116cの差圧を確保し、カムリング4を偏芯させ、可変容量形ベーンポンプ1の吐出流量を小さくすることができる。
(5) 開閉バルブ60を、開閉バルブ60に作用する圧力が所定圧以上のとき開弁するように形成した。
よって、微小操舵時には、高圧室116aと中圧室116cの差圧を確保し、カムリング4を偏芯させ、可変容量形ベーンポンプ1の吐出流量を小さくすることができる。
【0037】
(6) 開閉バルブ60を、制御バルブ7のスプール70内に設けた。
よって、開閉バルブ60を設けたとしても可変容量形ベーンポンプ1の大型化を避けることができる。
(7) バイパス通路58aを制御バルブ7に設け、バイパス通路58aの流路断面積を開閉バルブ60の移動に伴い可変制御するようにした。
よって、パワーステアリング装置90の負荷が高いほど吐出流量を増大することができる。
【0038】
[実施例3]
実施例2では、開閉バルブ60の開弁量を規制するストッパ70lを設けた。実施例1と同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。
〔構成〕
図6は制御バルブ7部分の拡大断面図である。スプール70の内部にはリリーフバルブ収容孔70eと開閉バルブ収容孔70hが形成されている。リリーフバルブ収容孔70eはy軸正方向側に、開閉バルブ収容孔70hはy軸負方向側に形成されており、リリーフバルブ収容孔70eと開閉バルブ収容孔70hとの間にはばね座部70iが設けられている。
リリーフバルブ収容孔70eには、リリーフバルブ8が収容されている。リリーフバルブ8は、中圧室116cの圧力が高くなりすぎたときに中圧室116cと低圧室116bとを連通するものである。リリーフバルブ8はy軸負方向側から順に、バルブスプリング80、スプリング保持部材81、ボールプラグ82、シート部材83が設けられている。
【0039】
シート部材83には軸方向に貫通する貫通孔83aが形成されており、リリーフバルブ収容孔70e内に圧入されている。バルブスプリング80は、ばね座部70iとスプリング保持部材81との間に圧縮した状態で設けられており、スプリング保持部材81を介してボールプラグ82をシート部材83方向に付勢している。スプール70には小径部70cとリリーフバルブ収容孔を連通する低圧室連通孔70fが形成されている。これにより、リリーフバルブ収容孔70eのボールプラグ82よりy軸負方向側は低圧室116bと連通し、吸入圧が作用している。
開閉バルブ収容孔70hには、開閉バルブ60が収容されている。開閉バルブ60は、ステアリングホイール91を操舵し高圧室116a内の圧力が高くなったときに、高圧室116a内の作動液を低圧室116b側に逃がすことで高圧室116aの圧力を低下させて、高圧室116aと中圧室116cとの差圧を小さくするものである。開閉バルブ60にはy軸正方向側から順に、バルブスプリング56、スプリング保持部材55、ボールプラグ57、シート部材58が設けられている。
【0040】
シート部材58には軸方向に貫通するバイパス通路58aが形成されており、開閉バルブ収容孔70h内に圧入されている。バルブスプリング56は、ばね座部70iとスプリング保持部材81との間に圧縮した状態で設けられており、スプリング保持部材55を介してボールプラグ57をシート部材58方向に付勢している。バルブスプリング56の付勢力は、高圧室116aと低圧室116bとの差圧が所定値以上となったときに、開閉バルブ60が開弁するように設定されている。すなわち、ステアリングホイール91を微小操舵したことにより高圧室116aの圧力が微増した程度では開閉バルブ60は開弁しないように設定されている。
また開閉バルブ60が開弁したときに、スプリング保持部材55がy軸正方向に所定量移動するとスプリング保持部材55とばね座部70iとが当接し、開閉バルブ60の開弁量を規制するようになっている。すなわち、ばね座部70iのy軸負方向側側面はストッパ70lを構成している。ばね座部70iの中心部には、リリーフバルブ収容孔70eと開閉バルブ収容孔70hとを連通する連通孔70jが設けられている。これにより、開閉バルブ収容孔70hのボールプラグ57よりもy軸正方向側は低圧室116bと連通し、吸入圧が作用している。また、連通孔70jの周囲にもリリーフバルブ収容孔70eと開閉バルブ収容孔70hとを連通する複数の補助連通孔70kが設けられている。補助連通孔70kは、スプリング保持部材55とばね座部70iとが当接しても塞がれない位置に形成され、低圧室116bとの連通を確保している。
【0041】
〔作用〕
ステアリングホイール91を操舵すると高圧室116a内の圧力が上昇し、開閉バルブ60が開弁してバイパス通路58aを通って低圧室116bに流れる流量(バイパス流量)が増大する。バイパス流量が増大すると、高圧室116a内の圧力が下がり、高圧室116aと中圧室116cとの差圧が小さくなる。そのため、スプール70はy軸負方向側に移動して、低圧室116bから第1流体通路A1への作動液の流入量が増大する。したがって、ロータ3の1回転当たりの吐出流量が増大し、エンジン回転数が一定であったとしても可変容量形ベーンポンプ1の吐出流量が増大する。
開閉バルブ60が開弁したときに、スプリング保持部材55がy軸正方向に所定量移動すると開閉バルブ60の開弁量を規制するストッパ70lを設けた。これにより、開閉バルブ60の開弁量が過剰になることを防止し、吐出流量の増大を飽和させることができる。
【0042】
また、バルブスプリング56により、スプリング保持部材55を介してボールプラグ57をシート部材58に付勢して、開閉バルブ60を閉弁するようにしている。
図7は高圧室116aの圧力とバイパス流量の関係を示す図である。高圧室116aの圧力が小さいときには、開閉バルブ60は閉弁されているため、バイパス流量はほぼゼロである。高圧室116aの圧力が所定圧となると開閉バルブ60の開弁し、圧力の増加に伴い開弁量が大きくなっていきバイパス流量が増加する。高圧室116aの圧力が所定圧を超えると、スプリング保持部材55がストッパ70lに当接し、開閉バルブ60の開弁量はそれ以上大きくならないため、バイパス流量は一定となる。
そのため、可変容量形ベーンポンプ1の吐出流量を増大させる必要のない微小操舵時には高圧室116aと中圧室116cの差圧を確保し、カムリング4を偏芯させ、可変容量形ベーンポンプ1の吐出流量を小さくすることができる。また、操舵時にも過剰な吐出流量増大を抑制し、操舵の安定性を向上させることができる。また、システムの保護を図ることができる。
【0043】
〔効果〕
(8) 開閉バルブ60の開弁量を規制するストッパ70lを設けた。
よって、開閉バルブ60の開弁量が過剰になることを防止し、吐出流量の増大を飽和させることができる。
(9) バイパス通路58aを通過する作動液の流量を、高圧室116a、高圧導入路113および吐出通路20のうちメータリングオリフィス23よりも上流側の領域における作動液の液圧が所定圧に到達するまでほぼ一定に保持するようにした。
よって、吐出流量増大の必要のない微小操舵時には可変容量形ベーンポンプの吐出流量を小さくすることができる。
(10) バイパス通路58aを通過する作動液の流量を、高圧室116a、高圧導入路113および吐出通路20のうちメータリングオリフィス23よりも上流側の領域における作動液の液圧が所定圧以上のときほぼ一定に保持するようにした。
よって、過剰な吐出流量増大を抑制し、操舵の安定性を向上させることができる。また、システムの保護を図ることができる。
【0044】
[実施例4]
実施例2では、開閉バルブ60が開弁したときのバイパス通路58aの流路面積が段階的に増大するようにした。実施例1と同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。
〔構成〕
図8は制御バルブ7部分の拡大断面図である。スプール70の内部にはリリーフバルブ収容孔70eと開閉バルブ収容孔70hが形成されている。リリーフバルブ収容孔70eはy軸正方向側に、開閉バルブ収容孔70hはy軸負方向側に形成されており、リリーフバルブ収容孔70eと開閉バルブ収容孔70hとの間にはばね座部70iが設けられている。
リリーフバルブ収容孔70eには、リリーフバルブ8が収容されている。リリーフバルブ8は、中圧室116cの圧力が高くなりすぎたときに中圧室116cと低圧室116bとを連通するものである。リリーフバルブ8はy軸負方向側から順に、バルブスプリング80、スプリング保持部材81、ボールプラグ82、シート部材83が設けられている。
【0045】
シート部材83には軸方向に貫通する貫通孔83aが形成されており、リリーフバルブ収容孔70e内に圧入されている。バルブスプリング80は、ばね座部70iとスプリング保持部材81との間に圧縮した状態で設けられており、スプリング保持部材81を介してボールプラグ82をシート部材83方向に付勢している。スプール70には小径部70cとリリーフバルブ収容孔を連通する低圧室連通孔70fが形成されている。これにより、リリーフバルブ収容孔70eのボールプラグ82よりy軸負方向側は低圧室116bと連通し、吸入圧が作用している。
開閉バルブ収容孔70hには、開閉バルブ60が収容されている。開閉バルブ60は、ステアリングホイール91を操舵し高圧室116a内の圧力が高くなったときに、高圧室116a内の作動液を低圧室116b側に逃がすことで高圧室116aの圧力を低下させて、高圧室116aと中圧室116cとの差圧を小さくするものである。開閉バルブ60にはy軸正方向側から順に、バルブスプリング56、弁体59、シート部材58が設けられている。
【0046】
シート部材58には軸方向に貫通するバイパス通路58aが形成されており、開閉バルブ収容孔70h内に圧入されている。弁体59はy軸負方向側に挿入部59aとy軸正方向側にスプリング保持部59bとを有している。挿入部59aは本体部59cよりも小径に形成されており、閉弁時には挿入部59aがバイパス通路58a内に挿入される。バルブスプリング56は、ばね座部70iと弁体59のスプリング保持部59bとの間に圧縮した状態で設けられており、弁体59をシート部材58方向に付勢している。バルブスプリング56の付勢力は、高圧室116aと低圧室116bとの差圧が所定値以上となったときに、開閉バルブ60が開弁するように設定されている。すなわち、ステアリングホイール91を微小操舵したことにより高圧室116aの圧力が微増した程度では開閉バルブ60は開弁しないように設定されている。ばね座部70iの中心部には、リリーフバルブ収容孔70eと開閉バルブ収容孔70hとを連通する連通孔70jが設けられている。これにより、開閉バルブ収容孔70hの弁体59よりもy軸正方向側は低圧室116bと連通し、吸入圧が作用している。
【0047】
〔作用〕
ステアリングホイール91を操舵すると高圧室116a内の圧力が上昇し、開閉バルブ60が開弁してバイパス通路58aを通って低圧室116bに流れる流量(バイパス流量)が増大する。バイパス流量が増大すると、高圧室116a内の圧力が下がり、高圧室116aと中圧室116cとの差圧が小さくなる。そのため、スプール70はy軸負方向側に移動して、低圧室116bから第1流体通路A1への作動液の流入量が増大する。したがって、ロータ3の1回転当たりの吐出流量が増大し、エンジン回転数が一定であったとしても可変容量形ベーンポンプ1の吐出流量が増大する。
閉弁時には弁体59の挿入部59aがバイパス通路58a内に挿入されるようになっている。そのため、弁体59がy軸正方向に移動するとバイパス通路58aの流路面積が段階的に増大する。これにより、高圧室116aの圧力変化に対する吐出流量変化の応答性を高めることができる。
【0048】
〔効果〕
(11) 弁体59が軸方向の他方側に移動するほど、バイパス通路58aの流路面積が段階的に増大するようにした。
よって、高圧室116aの圧力変化に対する吐出流量変化の応答性を高めることができる。
【0049】
[実施例5]
実施例5では、開閉バルブ60が開弁したときのバイパス通路58aの流路面積が連続的に減少するようにした。実施例1と同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。
〔構成〕
図9は制御バルブ7部分の拡大断面図である。スプール70の内部にはリリーフバルブ収容孔70eと開閉バルブ収容孔70hが形成されている。リリーフバルブ収容孔70eはy軸正方向側に、開閉バルブ収容孔70hはy軸負方向側に形成されており、リリーフバルブ収容孔70eと開閉バルブ収容孔70hとの間にはばね座部70iが設けられている。
リリーフバルブ収容孔70eには、リリーフバルブ8が収容されている。リリーフバルブ8は、中圧室116cの圧力が高くなりすぎたときに中圧室116cと低圧室116bとを連通するものである。リリーフバルブ8はy軸負方向側から順に、バルブスプリング80、スプリング保持部材81、ボールプラグ82、シート部材83が設けられている。
【0050】
シート部材83には軸方向に貫通する貫通孔83aが形成されており、リリーフバルブ収容孔70e内に圧入されている。バルブスプリング80は、ばね座部70iとスプリング保持部材81との間に圧縮した状態で設けられており、スプリング保持部材81を介してボールプラグ82をシート部材83方向に付勢している。スプール70には小径部70cとリリーフバルブ収容孔を連通する低圧室連通孔70fが形成されている。これにより、リリーフバルブ収容孔70eのボールプラグ82よりy軸負方向側は低圧室116bと連通し、吸入圧が作用している。
第1小径部70aを径方向に貫通するバイパス通路70gが形成されている。バイパス通路70gにより高圧室116aと開閉バルブ収容孔70h内が連通されている。開閉バルブ収容孔70hには、開閉バルブ60が収容されている。開閉バルブ60にはy軸正方向側から順に、バルブスプリング56、弁体59、シート部材58が設けられている。シート部材58には軸方向に貫通する高圧室連通孔58bが形成されており、開閉バルブ収容孔70h内に圧入されている。
【0051】
弁体59は開閉バルブ収容孔70h内に摺動可能に設けられている。弁体59の本体部59d最外径は開閉バルブ収容孔70hとほぼ同径に形成されており、弁体59によりy軸負方向側と正方向側とは隔成されている。
図10は弁体59およびバイパス通路70g部分の拡大断面図である。弁体59の外周面のy軸正方向側は徐々に径が小さくなるように形成されたテーパ部59eが形成されている。弁体59がy軸正方向に移動するとテーパ部59eによってバイパス通路70gの流路面積が連続的に減少するようになっている。
バルブスプリング56は、ばね座部70iと弁体59との間に圧縮した状態で設けられており、スプリング保持部材55を介してボールプラグ57をシート部材58方向に付勢している。ばね座部70iの中心部には、リリーフバルブ収容孔70eと開閉バルブ収容孔70hとを連通する連通孔70jが設けられている。これにより、開閉バルブ収容孔70hの弁体59よりもy軸正方向側は低圧室116bと連通し、吸入圧が作用している。
【0052】
〔作用〕
高圧室116aの圧力が上昇すると、高圧室116aからバイパス通路70gを通って低圧室116bに流れる流量(バイパス流量)が増大する。バイパス流量が増大すると、高圧室116a内の圧力が下がり、高圧室116aと中圧室116cとの差圧が小さくなる。そのため、スプール70はy軸負方向側に移動して、低圧室116bから第1流体通路A1への作動液の流入量が増大する。したがって、ロータ3の1回転当たりの吐出流量が増大し、エンジン回転数が一定であったとしても可変容量形ベーンポンプ1の吐出流量が増大する。
また弁体59がy軸負方向に移動するにしたがって、バイパス通路70gの流路面積が連続的に減少するようにした。これにより、吐出流量変化が過敏になるのを抑制することができ、操舵安定性を向上させることができる。
〔効果〕
(12) 弁体59が軸方向他方側に移動するほど、バイパス通路70gの流路面積が連続的に減少するようにした。
よって、吐出流量変化が過敏になるのを抑制することができ、操舵安定性を向上させることができる。
【0053】
[実施例6]
実施例6では、スプール70のy軸負方向先端にバイパス通路70gを形成するようにした。実施例1と同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。
〔構成〕
図11は制御バルブ7部分の拡大断面図である。
図12はスプール70の斜視図である。スプール70のy軸負方向先端にバイパス通路70gが形成されている。このバイパス通路70gは、低圧室連通孔70fに比べて十分小径に形成されている。バイパス通路70gの開口部は、スプール70がy軸負方向側にあるときにはプラグ部材72によって閉鎖されている。
スプール70がy軸正方向側に移動すると、バイパス通路70gによってリリーフバルブ収容孔70e内は高圧室116aと連通することとなるが、リリーフバルブ収容孔70e内は低圧室116bとも連通しているため、リリーフバルブ収容孔70e内はほぼ吸入圧に保たれている。一方、高圧室116a内は吐出圧に比べて圧力は若干下がるものの、バイパス通路70gは低圧室連通孔70fに比べて十分小径に形成されているため、吸入圧よりは十分に高い圧力が作用している。
【0054】
〔作用〕
バイパス通路70gの開口部は、スプール70がy軸負方向側にあるときにはプラグ部材72によって閉鎖されるようにした。スプール70が移動しないような吐出圧が小さい状態では、高圧室116a内の作動液が低圧室116b側に逃げないようにするこができ、可変容量形ベーンポンプ1の駆動初期の吐出圧の安定化を図ることができる。
〔効果〕
(13) バイパス通路70gを、スプール70が制御バルブ収容孔116の軸方向の一方側端部に位置するとき遮断状態となり、スプール70が軸方向の他方側に移動するとき連通状態となるようにした。
よって、可変容量形ベーンポンプ1の駆動初期の吐出圧の安定化を図ることができる。
【0055】
〔他の実施例〕
以上、本発明を実施例1ないし実施例6に基づいて説明してきたが、各発明の具体的な構成は実施例1ないし実施例6に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば実施例1では、スプール70の第1小径部70aにバイパス通路70gを形成したが、スプール70の先端に形成するようにしても良い。
図13は制御バルブ7部分の拡大断面図である。
図14はスプール70の斜視図である。スプール70のy軸負方向先端にバイパス通路70gが形成されている。またスプール70のy軸負方向先端には、バイパス通路70gを横断するように切欠部70mが形成されている。この切欠部70mによって、スプール70がy軸負方向側にあるときにも、バイパス通路70gが閉鎖されず、高圧室116aと低圧室116bとを連通することができる。
【0056】
実施例1ないし実施例6では、バイパス通路70g(またはバイパス通路58a)を高圧室116aとスプール70の内周とを連通するようにしているが、高圧室116a、通路21、および吐出通路20のうちメータリングオリフィス23よりも上流側の領域における作動液が、吸入通路12a側または吐出通路20のうちメータリングオリフィス23よりも下流側の領域に逃げるように形成されていれば良い。
【0057】
〔請求項以外の技術的思想〕
更に、上記実施例から把握しうる請求項以外の技術的思想について、以下にその効果と共に記載する。
(A) 請求項3に記載の可変容量形ベーンポンプにおいて、
前記開閉バルブは、前記開閉バルブに作用する圧力が所定圧以上のとき開弁するように形成されることを特徴とする可変容量形ベーンポンプ。
吐出流量増大の必要のない微小操舵時には可変容量形ベーンポンプの吐出流量を小さくすることができる。
(B) 請求項3に記載の可変容量形ベーンポンプにおいて、
前記開閉バルブは、開弁量を規制するストッパを更に有することを特徴とする可変容量形ベーンポンプ。
開閉バルブ60の開弁量が過剰になることを防止し、吐出流量の増大を飽和させることができる。
【0058】
(C) 請求項3に記載の可変容量形ベーンポンプにおいて、
前記開閉バルブは、前記制御バルブの弁体内に設けられることを特徴とする可変容量形ベーンポンプ。
開閉バルブを設けたとしても可変容量形ベーンポンプの大型化を避けることができる。
(D) 請求項2に記載の可変容量形ベーンポンプにおいて、
前記バイパス通路を通過する作動液の流量は、前記高圧室、前記高圧導入路、および前記吐出通路のうち前記メータリングオリフィスよりも上流側の領域における作動液の液圧が所定圧に到達するまでほぼ一定に保持されることを特徴とする可変容量形ベーンポンプ。
吐出流量増大の必要のない微小操舵時には可変容量形ベーンポンプの吐出流量を小さくすることができる。
【0059】
(E) 請求項2に記載の可変容量形ベーンポンプにおいて、
前記バイパス通路を通過する作動液の流量は、前記高圧室、前記高圧導入路、および前記吐出通路のうち前記メータリングオリフィスよりも上流側の領域における作動液の液圧が所定圧以上のときほぼ一定に保持されることを特徴とする可変容量形ベーンポンプ。
過剰な吐出流量増大を抑制し、操舵の安定性を向上させることができる。また、システムの保護を図ることができる。
(F) 請求項2に記載の可変容量形ベーンポンプにおいて、
前記バイパス通路は、前記弁体が前記制御バルブ収容部の前記軸方向の一方側端部に位置するとき遮断状態となり、前記弁体が前記軸方向の他方側に移動するとき連通状態となるように構成されることを特徴とする可変容量形ベーンポンプ。
可変容量形ベーンポンプの駆動初期の吐出圧の安定化を図ることができる。
【0060】
(G) 請求項4に記載の可変容量形ベーンポンプにおいて、
前記バイパス通路は、前記バイパス通路の流路面積が、前記開閉バルブの弁体が前記軸方向の他方側に移動するほど段階的に増大するように構成されることを特徴とする可変容量形ベーンポンプ。
高圧室116aの圧力変化に対する吐出流量変化の応答性を高めることができる。
(H) 請求項4に記載の可変容量形ベーンポンプにおいて、
前記バイパス通路は、前記バイパス通路の流路面積が、前記開閉バルブの弁体の前記軸方向他方側に移動するほど連続的に減少するように構成されることを特徴とする可変容量形ベーンポンプ。
吐出流量変化が過敏になるのを抑制することができ、操舵安定性を向上させることができる。
【0061】
(I) 請求項5に記載のパワーステアリング装置において、
前記バイパス通路は、前記制御バルブ収容部と前記第1ランド部との間の隙間以外の部分に設けられ前記高圧室と前記低圧室とを連通するように形成されることを特徴とするパワーステアリング装置。
制御バルブの制御圧である高圧室の圧力を低圧側に逃がすことにより、操舵操作に対する制御バルブの作動の応答性を高めることができる。
(J) 請求項5に記載のパワーステアリング装置において、
前記バイパス通路は、前記バイパス通路の途中に設けられ、前記メータリングオリフィスよりも下流側の圧力の上昇によって開弁する開閉バルブを更に有することを特徴とするパワーステアリング装置。
非操舵時には、高圧室と中圧室の差圧を確保し、カムリングを偏芯させ、可変容量形ベーンポンプ1の吐出流量を小さくすることができる。
【0062】
(K) 上記(J)に記載のパワーステアリング装置において、
前記開閉バルブは、前記開閉バルブに作用する圧力が所定圧以上のとき開弁するように形成されることを特徴とするパワーステアリング装置。
吐出流量増大の必要のない微小操舵時には可変容量形ベーンポンプの吐出流量を小さくすることができる。
(L) 上記(J)に記載のパワーステアリング装置において、
前記開閉バルブは、開弁量を規制するストッパを更に有することを特徴とするパワーステアリング装置。
開閉バルブ60の開弁量が過剰になることを防止し、吐出流量の増大を飽和させることができる。
【0063】
(M) 上記(J)に記載のパワーステアリング装置において、
前記開閉バルブは、前記制御バルブの弁体内に設けられることを特徴とするパワーステアリング装置。
開閉バルブを設けたとしても可変容量形ベーンポンプの大型化を避けることができる。
(N) 上記(I)に記載のパワーステアリング装置において、
前記バイパス通路を通過する作動液の流量は、前記高圧室、前記高圧導入路、および前記吐出通路のうち前記メータリングオリフィスよりも上流側の領域における作動液の液圧が所定圧に到達するまでほぼ一定に保持されることを特徴とするパワーステアリング装置。
吐出流量増大の必要のない微小操舵時には可変容量形ベーンポンプの吐出流量を小さくすることができる。
【0064】
(O) 上記(I)に記載のパワーステアリング装置において、
前記バイパス通路を通過する作動液の流量は、前記高圧室、前記高圧導入路、および前記吐出通路のうち前記メータリングオリフィスよりも上流側の領域における作動液の液圧が所定圧以上のときほぼ一定に保持されることを特徴とするパワーステアリング装置。
過剰な吐出流量増大を抑制し、操舵の安定性を向上させることができる。また、システムの保護を図ることができる。