特許第5989588号(P5989588)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989588
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/26 20060101AFI20160825BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   H02K1/26 Z
   H02K15/02 F
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-76316(P2013-76316)
(22)【出願日】2013年4月1日
(65)【公開番号】特開2014-204472(P2014-204472A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2015年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101352
【氏名又は名称】アスモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】寺田 裕一
(72)【発明者】
【氏名】栗林 剛
(72)【発明者】
【氏名】山本 貴宏
【審査官】 宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−259349(JP,A)
【文献】 特開平6−14481(JP,A)
【文献】 特開2003−319578(JP,A)
【文献】 特開平9−131004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/00−1/16
H02K 1/18−1/26
H02K 1/28−1/34
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸の周囲に形成された円環部と、前記円環部の径方向外側に放射状に形成された複数のティース形成部とを有する複数のコアシートが積層されることにより形成された積層コアと、
前記複数のティース形成部が積層されることにより形成され放射状に延びる複数のティースに巻回された巻線と、
前記複数のコアシートのうち互いに重なり合うコアシートの一方における前記円環部に形成された嵌合部と、
前記複数のコアシートのうち互いに重なり合うコアシートの他方における前記円環部に形成され、前記積層コアの軸方向を挿入方向として前記嵌合部と嵌合された被嵌合部と、
少なくとも前記積層コアの軸方向端部において互いに重なり合う前記コアシートの一方における前記ティース形成部に形成された係合部と、
少なくとも前記積層コアの軸方向端部において互いに重なり合う前記コアシートの他方における前記ティース形成部に形成され、前記積層コアの軸方向を挿入方向として前記係合部と係合されると共に、前記係合部との挿入長さが前記嵌合部及び前記被嵌合部の挿入長さよりも短い被係合部と、
を備えた回転電機。
【請求項2】
前記係合部及び前記被係合部が係合される前の状態において、前記係合部及び前記被係合部の一方における凸形状の外径は、前記係合部及び前記被係合部の他方における凹形状の内径よりも大きい、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記係合部及び前記被係合部の一方における凸形状の先端角部は、前記係合部及び前記被係合部の他方における凹形状の開口角部に接触している、
請求項2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記係合部としての外径側係合部と、
前記被係合部としての外径側被係合部と、
少なくとも前記積層コアの軸方向端部において互いに重なり合う前記コアシートの一方における前記円環部に形成された内径側係合部と、
少なくとも前記積層コアの軸方向端部において互いに重なり合う前記コアシートの他方における前記円環部に形成され、前記積層コアの軸方向を挿入方向として前記内径側係合部と係合されると共に、前記内径側係合部との挿入長さが前記嵌合部及び前記被嵌合部の挿入長さよりも短い内径側被係合部とを備えた、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転軸の周囲に形成された円環部と、この円環部の径方向外側に放射状に形成された複数のティース形成部とを有する複数のコアシートが積層されることにより形成された積層コアを備えた回転電機がある(例えば、特許文献1参照)。また、この種の回転電機のなかには、複数のティース形成部が積層されることにより形成された複数のティースに巻線が分布巻き(重ね巻き)方式により巻回されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−102403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の分布巻き方式では、巻線が複数のティースに跨って巻回される。このため、積層コアの軸方向端部に位置するコアシートには、巻線のテンションにより積層コアの周方向に荷重が作用し、このコアシートが積層コアの周方向にずれる虞がある。
【0005】
また、積層コアの軸方向端部に位置するコアシートが積層コアの周方向にずれることを抑制するために、積層コアを軸方向にかしめることも考えられるが、この場合には、積層コアの鉄損が増加する虞がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、積層コアの鉄損が増加することを抑制しつつ、積層コアの軸方向端部に位置するコアシートが積層コアの周方向にずれることを抑制することができる回転電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の回転電機は、回転軸と、前記回転軸の周囲に形成された円環部と、前記円環部の径方向外側に放射状に形成された複数のティース形成部とを有する複数のコアシートが積層されることにより形成された積層コアと、前記複数のティース形成部が積層されることにより形成され放射状に延びる複数のティースに巻回された巻線と、前記複数のコアシートのうち互いに重なり合うコアシートの一方における前記円環部に形成された嵌合部と、前記複数のコアシートのうち互いに重なり合うコアシートの他方における前記円環部に形成され、前記積層コアの軸方向を挿入方向として前記嵌合部と嵌合された被嵌合部と、少なくとも前記積層コアの軸方向端部において互いに重なり合う前記コアシートの一方における前記ティース形成部に形成された係合部と、少なくとも前記積層コアの軸方向端部において互いに重なり合う前記コアシートの他方における前記ティース形成部に形成され、前記積層コアの軸方向を挿入方向として前記係合部と係合されると共に、前記係合部との挿入長さが前記嵌合部及び前記被嵌合部の挿入長さよりも短い被係合部と、を備えている。
【0008】
この回転電機によれば、複数のコアシートのうち互いに重なり合うコアシートの一方における円環部には、嵌合部が形成されている。この嵌合部は、複数のコアシートのうち互いに重なり合うコアシートの他方における円環部に形成された被嵌合部と積層コアの軸方向を挿入方向として嵌合されている。
【0009】
また、少なくとも積層コアの軸方向端部において互いに重なり合うコアシートの一方におけるティース形成部には、係合部が形成されている。この係合部は、少なくとも積層コアの軸方向端部において互いに重なり合うコアシートの他方におけるティース形成部に形成された被係合部と積層コアの軸方向を挿入方向として係合されている。
【0010】
従って、放射状に延びる複数のティースに巻線が例えば分布巻き方式によって巻回されることにより、積層コアの軸方向端部に位置するコアシートに巻線のテンションが加わり、このコアシートに積層コアの周方向への荷重が作用した場合でも、このコアシートが積層コアの周方向にずれることを抑制することができる。
【0011】
また、一般に積層コアの外径側では、積層コアの内径側に比べて、隣り合うティース間のスロットの幅が広くなるため、巻線の巻数が多くなる。このため、積層コアの外径側では、積層コアの内径側に比べて、磁束密度が高くなる。しかしながら、積層コアの外径側に形成された係合部及び被係合部の挿入長さは、嵌合部及び被嵌合部の挿入長さよりも短くなっている。従って、少なくとも積層コアの軸方向端部における外径側でのコアシート同士の接触面積を小さくすることができるので、積層コアの鉄損が増加することを抑制することができる。
【0012】
請求項2に記載の回転電機は、請求項1に記載の回転電機において、請求項1に記載の回転電機において、前記係合部及び前記被係合部が係合される前の状態において、前記係合部及び前記被係合部の一方における凸形状の外径が、前記係合部及び前記被係合部の他方における凹形状の内径よりも大きいものである。
【0013】
この回転電機によれば、係合部及び被係合部が係合される前の状態において、係合部及び被係合部の一方における凸形状の外径は、係合部及び被係合部の他方における凹形状の内径よりも大きい。従って、係合部及び被係合部の一方における凸形状を、係合部及び被係合部の他方における凹形状にしっかりと係合させることができるので、少なくとも積層コアの軸方向端部において互いに重なり合うコアシート同士のがたつきを抑制することができる。
【0014】
請求項3に記載の回転電機は、請求項2に記載の回転電機において、前記係合部及び前記被係合部の一方における凸形状の先端角部が、前記係合部及び前記被係合部の他方における凹形状の開口角部に接触しているものである。
【0015】
この回転電機によれば、係合部及び被係合部の一方における凸形状の先端角部は、係合部及び被係合部の他方における凹形状の開口角部に接触している。これにより、少なくとも積層コアの軸方向端部において互いに重なり合うコアシート同士のがたつきをより一層抑制することができる。
【0016】
請求項4に記載の回転電機は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の回転電機において、前記係合部としての外径側係合部と、前記被係合部としての外径側被係合部と、少なくとも前記積層コアの軸方向端部において互いに重なり合う前記コアシートの一方における前記円環部に形成された内径側係合部と、少なくとも前記積層コアの軸方向端部において互いに重なり合う前記コアシートの他方における前記円環部に形成され、前記積層コアの軸方向を挿入方向として前記内径側係合部と係合されると共に、前記内径側係合部との挿入長さが前記嵌合部及び前記被嵌合部の挿入長さよりも短い内径側被係合部とを備えている。
【0017】
係合部及び被係合部をコアシートの外径側にのみ設けると、積層コアの積層時に積層コアの外径側のみコアシート間の隙間が大きくなるように積層コアが歪む(積層コアが軸方向へ膨らむ)場合がある。この場合には、積層コアの積層時に係合部及び被係合部に位置ずれが発生し、係合部及び被係合部の係合強度が低下する虞がある。
【0018】
この点、この回転電機によれば、係合部としての外径側係合部及び被係合部としての外径側被係合部に加え、積層コアの内径側(円環部)には、互いに係合された内径側係合部及び内径側被係合部が形成されている。従って、積層コアが歪む(積層コアが軸方向へ膨らむ)ことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る回転電機の一部断面を含む平面図である。
図2図1に示される積層コアを軸方向に見た図である。
図3図2に示される積層コアの内径側(凹凸嵌合部)の断面図である。
図4図2に示される積層コアの内径側(縁切り部)の断面図である。
図5図2に示される積層コアの外径側(外径側凹凸係合部)の断面図である。
図6図2に示される積層コアの内径側(内径側凹凸係合部)の断面図である。
図7図5に示される外径側凹凸係合部を係合させる様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づき、本発明の一実施形態について説明する。
【0021】
図1に示される本発明の一実施形態に係る回転電機10は、ブラシ付き直流モータであり、モータケース12と、フロントハウジング14と、マグネット16と、ブラシ装置18と、電機子20とを備えている。
【0022】
モータケース12は、有底筒状に形成されている。フロントハウジング14は、モータケース12の開口部に組み付けられており、このモータケース12の開口部を塞いている。マグネット16は、モータケース12の内周面に固定されている。
【0023】
ブラシ装置18は、モータケース12及びフロントハウジング14によって形成された内部空間に収容されており、フロントハウジング14に固定されている。このブラシ装置18は、ハウジング22と、ブラシホルダ24と、ブラシ26を有している。ハウジング22は、後述する回転軸28の周囲に環状に設けられている。ブラシホルダ24は、ハウジング22の外径側に設けられており、ブラシ26は、ブラシホルダ24に収容されている。
【0024】
電機子20は、回転軸28と、整流子30と、積層コア32と、巻線34を有している。回転軸28は、モータケース12の底部及びフロントハウジング14の中央部にそれぞれ設けられた一対の軸受36,38により回転可能に支持されている。整流子30及び積層コア32は、環状に形成されている。この整流子30及び積層コア32の内側には、回転軸28が圧入されており、これにより、整流子30及び積層コア32は、回転軸28に固定されている。整流子30には、ブラシ26が当接されており、積層コア32には、巻線34が巻装されている。この巻線34の端末部は、整流子30に接続されている。
【0025】
また、積層コア32は、より具体的には、次のように構成されている。すなわち、積層コア32は、複数のコアシート40が積層されることにより形成されている。図2に示されるように、各コアシート40は、回転軸28の周囲に形成された円環部42と、この円環部42の径方向外側に放射状に形成された複数のティース形成部44とを有している。
【0026】
各ティース形成部44は、円環部42の径方向外側に延びる軸部46と、この軸部46の先端部(すなわちティース形成部44の先端部)に形成された傘部48とを有している。傘部48は、ティース形成部44の幅方向に延びており、軸部46よりも幅広に形成されている。
【0027】
また、各コアシート40に形成された複数のティース形成部44の各々が積層コア32の軸方向に積層されることにより、積層コア32には、放射状に延びる複数の複数のティース50が形成されている。この放射状に延びる複数のティース50には、一例として、上述の巻線34(図1参照)が分布巻き(重ね巻き)方式により巻回されている。つまり、上述の巻線34は、複数のティース50に跨って巻回されている。
【0028】
複数のコアシート40(後述する貫通孔状の被嵌合部53(図4参照)を有するコアシート40を除くコアシート40)の各々における円環部42には、図3に示されるように、凸状の嵌合部52と、凹状の被嵌合部53とがそれぞれ形成されている。凹状の被嵌合部53は、各コアシート40における板厚方向一方側に形成されており、積層コア32の軸方向一方側(矢印A側)に開口している。一方、凸状の嵌合部52は、各コアシート40における板厚方向他方側に形成されており、積層コア32の軸方向他方側(矢印B側)に突出している。
【0029】
本実施形態では、一例として、図1に示される積層コア32に対する整流子30側が積層コア32の軸方向一方側(矢印A側)とされており、積層コア32に対する整流子30側と反対側が積層コア32の軸方向他方側(矢印B側)とされている。
【0030】
図3に示されるように、各コアシート40において、嵌合部52及び被嵌合部53は、平面視にて重なる位置に形成されている。嵌合部52は、例えば、コアシート40の打抜き加工時に被嵌合部53が凹状に形成されることにより、この被嵌合部53の反対側に凸状に形成されたものである。各コアシート40において、この嵌合部52及び被嵌合部53からなる凹凸嵌合部54は、図2に示されるように、円環部42の周方向における各ティース50と対応する位置(オーバーラップする位置)にそれぞれ形成されている。
【0031】
また、複数のコアシート40のうちいくつかのコアシート40には、図4に示されるように、嵌合部52と対応する位置にコアシート40の板厚方向に貫通する貫通孔56が形成されている。また、このコアシート40には、貫通孔56が形成されることにより貫通孔状の被嵌合部53が形成されている。この貫通孔状の被嵌合部53を有するコアシート40は、複数のコアシート40の全数のうち所定枚数に一枚の割合で配置されている。
【0032】
そして、複数のコアシート40のうち互いに重なり合うコアシート40の一方に形成された嵌合部52は、複数のコアシート40のうち互いに重なり合うコアシート40の他方に形成された被嵌合部53に嵌合(圧入)されている。この嵌合部52及び被嵌合部53は、積層コア32の軸方向を挿入方向として嵌合されている。
【0033】
また、図5に示されるように、複数のコアシート40の各々におけるティース形成部44には、凸状の外径側係合部62(係合部)と、凹状の外径側被係合部63(被係合部)とがそれぞれ形成されている。この外径側係合部62及び外径側被係合部63からなる外径側凹凸係合部64は、図2に示されるように、各ティース形成部44における軸部46と傘部48との境界部に形成されている。図5に示されるように、凹状の外径側被係合部63は、各コアシート40における板厚方向一方側に形成されており、積層コア32の軸方向一方側(矢印A側)に開口している。一方、凸状の外径側係合部62は、各コアシート40における板厚方向他方側に形成されており、積層コア32の軸方向他方側(矢印B側)に突出している。
【0034】
各コアシート40において、外径側係合部62及び外径側被係合部63は、上述の嵌合部52及び被嵌合部53と同様に、平面視にて重なる位置に形成されている。外径側係合部62は、例えば、コアシート40の打抜き加工時に外径側被係合部63が凹状に形成されることにより、この外径側被係合部63の反対側に凸状に形成されたものである。
【0035】
そして、複数のコアシート40のうち互いに重なり合うコアシート40の一方に形成された外径側係合部62は、複数のコアシート40のうち互いに重なり合うコアシート40の他方に形成された外径側被係合部63に係合されている。この外径側係合部62及び外径側被係合部63は、積層コア32の軸方向を挿入方向として係合されている。凸状の外径側係合部62は、同じく凸状に形成された嵌合部52よりも突出長さが短く形成されており、外径側係合部62及び外径側被係合部63の挿入長さL2は、嵌合部52及び被嵌合部53の挿入長さL1(図3参照)よりも短くなっている。
【0036】
隣り合うコアシート40の外径側係合部62及び外径側被係合部63は、図7に示されるように、複数のコアシート40の積層に伴って互いに係合される。ここで、外径側係合部62及び外径側被係合部63が係合される前の状態において、外径側係合部62における凸形状の外径φ1は、外径側被係合部63における凹形状の内径φ2よりも大きく設定されている。そして、これにより、隣り合うコアシート40の外径側係合部62及び外径側被係合部63が互いに係合された状態では、外径側係合部62における凸形状の先端角部62Aは、外径側被係合部63における凹形状の開口角部63Aに接触している(図5も参照)。
【0037】
さらに、図6に示されるように、複数のコアシート40の各々における円環部42には、凸状の内径側係合部72と、凹状の内径側被係合部73とがそれぞれ形成されている。この内径側係合部72及び内径側被係合部73からなる内径側凹凸係合部74は、図2に示されるように、円環部42における複数の凹凸嵌合部54よりも内径側に形成されている。また、この内径側凹凸係合部74は、いくつか(一例として、3つ)の凹凸嵌合部54に一つの割合で形成されている。この内径側凹凸係合部74は、いくつかの凹凸嵌合部54のうちの一つと対応する位置(オーバーラップする位置)に形成されている。
【0038】
図6に示されるように、凸状の内径側係合部72及び凹状の内径側被係合部73は、上述の外径側係合部62及び外径側被係合部63と同一の構成とされている。つまり、凹状の内径側被係合部73は、各コアシート40における板厚方向一方側に形成されており、積層コア32の軸方向一方側(矢印A側)に開口している。一方、凸状の内径側係合部72は、各コアシート40における板厚方向他方側に形成されており、積層コア32の軸方向他方側(矢印B側)に突出している。
【0039】
各コアシート40において、内径側係合部72及び内径側被係合部73は、上述の外径側係合部62及び外径側被係合部63と同様に、平面視にて重なる位置に形成されている。内径側係合部72は、例えば、コアシート40の打抜き加工時に内径側被係合部73が凹状に形成されることにより、この内径側被係合部73の反対側に凸状に形成されたものである。
【0040】
そして、複数のコアシート40のうち互いに重なり合うコアシート40の一方に形成された内径側係合部72は、複数のコアシート40のうち互いに重なり合うコアシート40の他方に形成された内径側被係合部73に係合されている。この内径側係合部72及び内径側被係合部73は、積層コア32の軸方向を挿入方向として係合されている。凸状の内径側係合部72は、同じく凸状に形成された嵌合部52よりも突出長さが短く形成されており、内径側係合部72及び内径側被係合部73の挿入長さL3は、嵌合部52及び被嵌合部53の挿入長さL1(図3参照)よりも短くなっている。
【0041】
次に、本発明の一実施形態の作用及び効果について説明する。
【0042】
以上詳述したように、本発明の一実施形態に係る回転電機10によれば、図3に示される如く、複数のコアシート40のうち互いに重なり合うコアシート40の一方における円環部42には、凸状の嵌合部52が形成されている。この凸状の嵌合部52は、複数のコアシート40のうち互いに重なり合うコアシート40の他方における円環部42に形成された凹状の被嵌合部53と嵌合されている。
【0043】
また、図5に示される如く、複数のコアシート40のうち互いに重なり合うコアシート40の一方におけるティース形成部44には、凸状の外径側係合部62が形成されている。この外径側係合部62は、複数のコアシート40のうち互いに重なり合うコアシート40の他方におけるティース形成部44に形成された凹状の外径側被係合部63と係合されている。
【0044】
従って、放射状に延びる複数のティース50に巻線34が例えば分布巻き方式によって巻回されることにより、積層コア32の軸方向端部に位置するコアシート40に巻線34のテンションが加わり、このコアシート40に積層コア32の周方向への荷重が作用した場合でも、このコアシート40が積層コア32の周方向にずれることを抑制することができる。
【0045】
また、一般に積層コア32の外径側では、積層コア32の内径側に比べて、隣り合うティース50間のスロットの幅が広くなるため、巻線34の巻数が多くなる。このため、積層コア32の外径側では、積層コア32の内径側に比べて、磁束密度が高くなる。しかしながら、凸状の外径側係合部62は、同じく凸状に形成された嵌合部52よりも突出長さが短く形成されており、外径側係合部62及び外径側被係合部63の挿入長さL2は、嵌合部52及び被嵌合部53の挿入長さL1(図3参照)よりも短くなっている。従って、積層コア32の外径側でのコアシート40同士の接触面積を小さくすることができるので、積層コア32の鉄損が増加することを抑制することができる。
【0046】
また、図7に示されるように、外径側係合部62及び外径側被係合部63が係合される前の状態において、外径側係合部62における凸形状の外径φ1は、外径側被係合部63における凹形状の内径φ2よりも大きく設定されている。従って、外径側係合部62における凸形状を、外径側被係合部63における凹形状にしっかりと係合させることができるので、互いに重なり合うコアシート40同士のがたつきを抑制することができる。
【0047】
また、隣り合うコアシート40の外径側係合部62及び外径側被係合部63が互いに係合された状態では、外径側係合部62における凸形状の先端角部62Aは、外径側被係合部63における凹形状の開口角部63Aに接触している。これにより、互いに重なり合うコアシート40同士のがたつきをより一層抑制することができる。
【0048】
ところで、外径側係合部62及び外径側被係合部63のような凹凸係合部をコアシート40の外径側にのみ設けると、積層コア32の積層時に積層コア32の外径側のみコアシート40間の隙間が大きくなるように積層コア32が歪む(積層コア32が軸方向へ膨らむ)場合がある。この場合には、積層コア32の積層時に外径側係合部62及び外径側被係合部63に位置ずれが発生し、外径側係合部62及び外径側被係合部63の係合強度が低下する虞がある。
【0049】
この点、この回転電機10によれば、外径側係合部62及び外径側被係合部63に加え、積層コア32の内径側(円環部42)には、図6に示されるように、互いに係合された内径側係合部72及び内径側被係合部73が形成されている。従って、積層コア32が歪む(積層コア32が軸方向へ膨らむ)ことを抑制することができる。
【0050】
また、凸状の内径側係合部72は、同じく凸状に形成された嵌合部52よりも突出長さが短く形成されており、内径側係合部72及び内径側被係合部73の挿入長さL3は、嵌合部52及び被嵌合部53の挿入長さL1(図3参照)よりも短くなっている。従って、内径側係合部72及び内径側被係合部73によるコアシート40同士の接触面積を小さくすることができるので、積層コア32の鉄損が増加することを抑制することができる。
【0051】
次に、本発明の一実施形態の変形例について説明する。
【0052】
上述の本発明の一実施形態において、嵌合部52は、凸状に形成され、被嵌合部53は、凹状に形成されていた。しかしながら、嵌合部52は、積層コア32の軸方向に開口する凹状に形成され、被嵌合部53は、積層コア32の軸方向に突出する凸状に形成されていても良い。
【0053】
また、積層コア32の軸方向の一端(矢印A側の端)に配置され凸状の嵌合部52を有するコアシート40には、凹状の被嵌合部53が形成され、積層コア32の軸方向の他端(矢印B側の端)に配置され凹状の被嵌合部53を有するコアシート40には、凸状の嵌合部52が形成されていた。しかしながら、積層コア32の軸方向の一端に配置され凸状の嵌合部52を有するコアシート40には、凹状の被嵌合部53が形成されていなくても良い。また、積層コア32の軸方向の他端に配置され凹状の被嵌合部53を有するコアシート40には、凸状の嵌合部52が形成されていなくても良い。
【0054】
また、貫通孔状の被嵌合部53(図4参照)を有するコアシート40の被嵌合部53は、貫通孔状ではなく、他の被嵌合部53と同様に凹状でも良い。
【0055】
また、外径側係合部62は、凸状に形成され、外径側被係合部63は、凹状に形成されていた。しかしながら、外径側係合部62は、積層コア32の軸方向に開口する凹状に形成され、外径側被係合部63は、積層コア32の軸方向に突出する凸状に形成されていても良い。同様に、内径側係合部72は、積層コア32の軸方向に開口する凹状に形成され、内径側被係合部73は、積層コア32の軸方向に突出する凸状に形成されていても良い。
【0056】
また、各コアシート40において、嵌合部52は、凸状及び凹状のうち一方の形状とされ、外径側係合部62は、凸状及び凹状のうち他方の形状とされていても良い。同様に、各コアシート40において、被嵌合部53は、凸状及び凹状のうち一方の形状とされ、外径側被係合部63は、凸状及び凹状のうち他方の形状とされていても良い。
【0057】
また、各コアシート40において、外径側係合部62は、凸状及び凹状のうち一方の形状とされ、内径側係合部72は、凸状及び凹状のうち他方の形状とされていても良い。同様に、各コアシート40において、外径側被係合部63は、凸状及び凹状のうち一方の形状とされ、内径側被係合部73は、凸状及び凹状のうち他方の形状とされていても良い。
【0058】
また、複数のコアシート40の各々には、凸状の外径側係合部62と、凹状の外径側被係合部63とがそれぞれ形成されていた。しかしながら、外径側係合部62及び外径側被係合部63は、積層コア32の軸方向端部において互いに重なり合ういくつかの(数枚の)コアシート40にのみ形成されていても良い。同様に、内径側係合部72及び内径側被係合部73も、積層コア32の軸方向端部において互いに重なり合ういくつかの(数枚の)コアシート40にのみ形成されていても良い。
【0059】
また、積層コア32の軸方向の一端に配置され凸状の外径側係合部62を有するコアシート40には、凹状の外径側被係合部63が形成されていなくても良い。また、積層コア32の軸方向の他端に配置され凹状の外径側被係合部63を有するコアシート40には、凸状の外径側係合部62が形成されていなくても良い。
【0060】
同様に、積層コア32の軸方向の一端に配置され凸状の内径側係合部72を有するコアシート40には、凹状の内径側被係合部73が形成されていなくても良い。また、積層コア32の軸方向の他端に配置され凹状の内径側被係合部73を有するコアシート40には、凸状の内径側係合部72が形成されていなくても良い。
【0061】
また、巻線34は、複数のティース50に一例として分布巻き方式により巻回されていたが、分布巻き以外の方式により複数のティース50に巻回されていても良い。
【0062】
なお、上記複数の変形例のうち組み合わせ可能な変形例は、適宜組み合わされて実施可能であることは勿論である。
【0063】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0064】
10…回転電機、12…モータケース、14…フロントハウジング、16…マグネット、18…ブラシ装置、20…電機子、22…ハウジング、24…ブラシホルダ、26…ブラシ、28…回転軸、30…整流子、32…積層コア、34…巻線、36,38…軸受、40…コアシート、42…円環部、44…ティース形成部、46…軸部、48…傘部、50…ティース、52…嵌合部、53…被嵌合部、54…凹凸嵌合部、56…貫通孔、62…外径側係合部(係合部)、62A…先端角部、63A…開口角部、63…外径側被係合部(被係合部)、64…外径側凹凸係合部、72…内径側係合部、73…内径側被係合部、74…内径側凹凸係合部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7