特許第5989619号(P5989619)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5989619ヘッダープレートレス熱交換器のタンク構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989619
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】ヘッダープレートレス熱交換器のタンク構造
(51)【国際特許分類】
   F28D 7/16 20060101AFI20160825BHJP
   F28F 9/02 20060101ALI20160825BHJP
   F28F 9/18 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   F28D7/16 A
   F28F9/02 Z
   F28F9/18
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-190836(P2013-190836)
(22)【出願日】2013年9月13日
(65)【公開番号】特開2015-55458(P2015-55458A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222484
【氏名又は名称】株式会社ティラド
(74)【代理人】
【識別番号】100082843
【弁理士】
【氏名又は名称】窪田 卓美
(72)【発明者】
【氏名】中村 洋一
【審査官】 鈴木 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−38752(JP,A)
【文献】 特開2012−137251(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0219394(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 7/16
F28F 3/10
F28F 9/02
F28F 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部が厚み方向に膨出された膨出部(1)を有する偏平チューブ(2)が、その膨出部(1)で互いに接触固定してコア(3)を形成し、
そのコア(3)の両端に一対のタンク(4)の開口が接続されたヘッダープレートレス熱交換器のタンク構造において、
そのタンク(4)は、偏平チューブ(2)の積層方向の上下両端に位置する上端板部(5)と下端板部(6)と、それらに直交する一対の側板部(7)とで横断面方形に形成され、
上端板部(5)と下端板部(6)は、前記側板部(7)よりコア(3)側に突出して上嵌入部(8)と下嵌入部(9)とを形成し、その上嵌入部(8)の外面が積層方向の最上段の偏平チューブ(2)の拡開部の上辺部の内面に接すると共に、下嵌入部(9)の外面が最下段の偏平チューブ(2)の下辺部の内面に接して嵌入され、その嵌入部で偏平チューブ(2)とタンク(4)とが、ろう付け固定されたことを特徴とするヘッダープレートレス熱交換器のタンク構造。
【請求項2】
請求項1に記載のヘッダープレートレス熱交換器のタンク構造おいて、
前記一対の側板部(7)の端面が各偏平チューブ(2)の端面に当接して、その当接部がろう付け固定されたヘッダープレートレス熱交換器のタンク構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のヘッダープレートレス熱交換器のタンク構造おいて、
前記タンク(4)がプレス成形により断面方形に一体形成され、その一対の側板部(7)と上端板部(5)および下端板部(6)との境は、そのコア側の先端部のみに隙間(15)が形成されたことを特徴とするヘッダープレートレス熱交換器のタンク構造。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載のヘッダープレートレス熱交換器のタンク構造において、
前記コア(3)の外周に整合するケーシング(11)を有し、そのケーシング(11)は溝形のケーシング本体(11a) とその両側壁間を閉塞する端蓋(11b) とからなり、コア(3)の外周およびタンク(4)の端部外周にケーシング(11)が被嵌され、
最上段の偏平チューブ(2)の拡開部の上辺部および最下段の偏平チューブ(2)の下辺部がタンク(4)とケーシング(11)との間に挟持されて圧縮された状態で、各部品間がろう付けされたヘッダープレートレス熱交換器のタンク構造。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のヘッダープレートレス熱交換器のタンク構造おいて、
上端板部(5)と下端板部(6)は、偏平チューブ(2)の厚み分内側に段付きに形成されると共に、前記タンク(4)がプレス成形により断面方形に一体形成され、その両嵌入部(8)(9)の幅が偏平チューブ(2)の拡開部の内幅に等しく形成されたヘッダープレートレス熱交換器のタンク構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両端が膨出した偏平チューブを積層してなるヘッダープレートレス熱交換器のタンク構造であって、そのコアとタンクとの気密・液密性を改良したものに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッダープレートレス熱交換器は、図7図8に示す如く、両端が厚み方向に膨出した偏平チューブ2をその膨出部で積層することによりコアを形成し、ヘッダープレートを必要としないものである。そして、偏平チューブ2の積層体からなるコア3の外周に、ケーシング11を被嵌すると共に、コア3の両端にタンク4を被嵌し、互いに各部品間を一体にろう付け固定したものである。
なお、偏平チューブ2は図1に示す如く、夫々溝形に曲折した一対の上側のプレート2aと下側のプレート2bとを、各溝底を対向させて互いに嵌着したものからなる。また、ケーシング11は溝形に形成されたケーシング本体11aとその両側壁間を閉塞する端蓋11bとからなる。さらに、タンク4はプレス成形により横断面方形の筒型に一体成形されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−002133号公報
【特許文献2】特開2011−232020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなヘッダープレートレス熱交換器とタンク4とは、ろう付けにより隙間なく接合する必要がある。ところが、図8において、タンク4の開口端と偏平チューブ2との間の部分Aに隙間が生じ、気密性及び液密性が損なわれる場合がある。それはタンク4がプレス成形により一体形成されているため、スプリングバックにより外側に反り返り、偏平チューブ2とタンク4とを密着し難いことにもとづく。さらには、図8のB部およびC部にも隙間が生じる。そのB部の隙間は、上側のプレート2aと下側のプレート2bの嵌着部であり、C部の隙間は、各プレート2a、2bのプレス成形の際に生じるRが原因で、各偏平チューブ2の継目に生じるものである。
それらの隙間が生じると、ろう付け中にいわゆる、ろう切れが生じ、タンクの気密性及び液密性を損なうことになる。
そこで本発明は、特にタンク4とコア3とのろう付け部に隙間の生じないタンク構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、両端部が厚み方向に膨出された膨出部(1)を有する偏平チューブ(2)が、その膨出部(1)で互いに接触固定してコア(3)を形成し、
そのコア(3)の両端に一対のタンク(4)の開口が接続されたヘッダープレートレス熱交換器のタンク構造において、
そのタンク(4)は、偏平チューブ(2)の積層方向の上下両端に位置する上端板部(5)と下端板部(6)と、それらに直交する一対の側板部(7)とで横断面方形に形成され、
上端板部(5)と下端板部(6)は、前記側板部(7)よりコア(3)側に突出して上嵌入部(8)と下嵌入部(9)とを形成し、その上嵌入部(8)の外面が積層方向の最上段の偏平チューブ(2)の拡開部の上辺部の内面に接すると共に、下嵌入部(9)の外面が最下段の偏平チューブ(2)の下辺部の内面に接して嵌入され、その嵌入部で偏平チューブ(2)とタンク(4)とが、ろう付け固定されたことを特徴とするヘッダープレートレス熱交換器のタンク構造である。
【0006】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のヘッダープレートレス熱交換器のタンク構造おいて、
前記一対の側板部(7)の端面が各偏平チューブ(2)の端面に当接して、その当接部がろう付け固定されたヘッダープレートレス熱交換器のタンク構造である。
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のヘッダープレートレス熱交換器のタンク構造おいて、
前記タンク(4)がプレス成形により断面方形に一体形成され、その一対の側板部(7)と上端板部(5)および下端板部(6)との境は、そのコア側の先端部のみに隙間(15)が形成されたことを特徴とするヘッダープレートレス熱交換器のタンク構造。
【0007】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のヘッダープレートレス熱交換器のタンク構造において、
前記コア(3)の外周に整合するケーシング(11)を有し、そのケーシング(11)は溝形のケーシング本体(11a) とその両側壁間を閉塞する端蓋(11b) とからなり、コア(3)の外周およびタンク(4)の端部外周にケーシング(11)が被嵌され、
最上段の偏平チューブ(2)の拡開部の上辺部および最下段の偏平チューブ(2)の下辺部がタンク(4)とケーシング(11)との間に挟持されて圧縮された状態で、各部品間がろう付けされたヘッダープレートレス熱交換器のタンク構造である。
【0008】
請求項5に記載の本発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載のヘッダープレートレス熱交換器のタンク構造おいて、
上端板部(5)と下端板部(6)は、偏平チューブ(2)の厚み分内側に段付きに形成されると共に、前記タンク(4)がプレス成形により断面方形に一体形成され、その両嵌入部(8)(9)の幅が偏平チューブ(2)の拡開部の内幅に等しく形成されたヘッダープレートレス熱交換器のタンク構造である。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明は、その側板部7よりコア3側に突出したタンク4の上嵌入部8の外面が積層方向の最上段の偏平チューブ2の拡開部の上辺部の内面に接すると共に、同様に突出した下嵌入部9の外面が最下段の偏平チューブ2の下辺部の内面に接して嵌入され、その嵌入部で偏平チューブとタンクとがろう付け固定されたものである。そして、上端板部および下端板部は側板部7より突出しているので、厚み方向への変形が容易となり、偏平チューブ2との接触部を密着することができる。そのため、ろう付け部の液密性、気密性を確保できる。
【0010】
上記構成に加えて、請求項2に記載の発明のように、一対の側板部7の端面を各偏平チューブ2の端面に当接して、その当接部をろう付け固定した場合には、従来の図8のB部、C部の隙間を閉塞して、ろう付け部の液密性、気密性を確保できる。
上記構成に加えて、請求項3に記載の発明のように、一対の側板部7と上端板部5および下端板部6との境の先端部のみに隙間15が形成された場合には、上端板部および下端板部は側板部7の厚み方向への変形がさらに容易となり、偏平チューブ2との接触部をより密着することがで、ろう付け部の液密性、気密性を確保できる。
【0011】
上記構成に加えて、請求項4に記載の発明のように、最上段の偏平チューブ2の拡開部の上辺部および最下段の偏平チューブ2の下辺部がタンク4とケーシング11との間に挟持されて圧縮された状態で、各部品間がろう付けされた場合には、各部品の接触部間の隙間を確実になくし、そのろう付けを確実に行うことができる。
【0012】
上記構成に加えて、請求項5に記載の発明のように、上端板部5と下端板部6を、偏平チューブ2の厚み分内側に段付きに形成すると共に、前記タンク4をプレス成形により断面方形に一体形成し、その両嵌入部8,9の幅を偏平チューブ2の拡開部の内幅に等しく形成した場合には、両者の接触部が大きくなり、ろう付けの信頼性がさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のヘッダープレートレス熱交換器のタンク構造の分解斜視図。
図2】同タンク4と偏平チューブ2との組立て説明図。
図3】同組立て状態を示す要部斜視図。
図4】同縦断面図。
図5図4のV−V矢視断面略図。
図6】本発明の他のタンク構造の要部斜視図。
図7】従来型熱交換器の要部縦断面図。
図8図7のVIII−VIII矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図面に基づいて本発明の実施の形態につき説明する。
この熱交換器は、図1に示す如く、多数の偏平チューブ2をその両端の膨出部1で積層しコア3を形成する(右側を省略)。その偏平チューブ2は、図2に示す如く、夫々溝形に形成された上側のプレート2aと下側のプレート2bとの嵌着体からなる。そして、下側のプレート2bの側壁の上部は、プレート2aの板厚分内側に曲折した段付きに成形されて、そこに段付き部2cを形成する。そして、上側のプレート2aの内側に下側のプレート2bの上端部が嵌着する。それらプレート2a,プレート2bの長手方向両端部は、厚み方向に膨出された膨出部1を有する。そして、プレート2a, 2bは、同図の如く嵌着されて偏平チューブ2を形成する。この例では、図1に示す如く、各偏平チューブ2内にはインナーフィン13が介装されている。
次に、ケーシング11は、図1に示す如く、溝形に形成されたケーシング本体11aとその両側壁間を閉塞する端蓋11bとからなる。端蓋11bは、ケーシング本体11aの外周に整合する浅い溝形に形成されている。
【0015】
次に、タンク4はプレス機械により一体成形されたものからなり、図1に示す如く、全体が浅い漏斗状に形成され、その一端開口が円形に、他端開口が方形に形成されている。
また、そのタンク4の板厚は、図4図5に示す如く、溝形の各プレート2a、2bの板厚の和以上であると共に、各偏平チューブ2の接触部のコーナーに生じる隙間Cの深さ(偏平チューブの幅方向の深さ)以上である。そして、タンク4は、上下に対向する上端板部5と下端板部6と、その両側に配置された一対の側板部7とにより横断面方形に形成されている。さらに、上端板部5,下端板部6には、偏平チューブ2の板厚分だけ内側に段付きに形成された上嵌入部8及び下嵌入部9が設けられ、それが側板部7よりコア3側に突出する。その上嵌入部8,下嵌入部9の幅は、好ましくは、偏平チューブ2の内幅に整合する。また、タンク4の両側板部7の高さはコア3の高さより僅かに低い。その両側板部7と上嵌入部8,下嵌入部9との境は、先端部で、欠切部15によって分離され、それにより上嵌入部8,下嵌入部9は、厚み方向に夫々、より弾性変形可能に形成されている。なお、その欠切部15の位置は、図5に示す如く、各プレート2a、2bの継目の位置Bより上方にある。
【0016】
このようにしてなるタンク4は、図2図3及び図4に示す如く、その上嵌入部8がコア3の積層方向最上段の偏平チューブ2のプレート2aの内側に嵌入し、下嵌入部9が積層方向最下段の偏平チューブ2のプレート2bの内側に接触して嵌入される。それと共に、一対の側板部7の端面は、各偏平チューブ2の端面に当接する。その結果、図5に示す如く、各プレート2a、2bの継目の隙間Bおよび、各偏平チューブ2の接続部のコーナーの隙間Cを側板部7の端面が閉塞する。
そして、図3図4の如く組立てられる。各部品の接触部間には予め、ろう材が被覆又は塗布される。そして、図4において、ケーシング本体11aが上方から、端蓋11bが下方からコア3及びタンク4に被嵌される。そして、最上段の偏平チューブ2の上側のプレート2aの端部は、タンク4の上嵌入部8とケーシング本体11aとに挟持される。また、最下段の偏平チューブ2の下側のプレート2bの端部は、タンク4の下嵌入部9と端蓋11bとに挟持される。
【0017】
そして、ろう付け時には、それらが互いに密着した状態でろう付けされる。このとき、上嵌入部8及び下嵌入部9は、夫々欠切部15の存在でより自由に弾性変形し、互いに隣接する部品間が密着状態でろう付けされる。そのためには、ケーシング11の外周を図示しない治具で、内側に締結してろう付けする。すると、タンク4と各偏平チューブ2との間に隙間が生じることなく、気密性及び液密性を確保できる。そして、従来の熱交換器における図8のAに生じるの隙間が夫々閉塞され、気密性及び液密性が確保される。
なお、ケーシング11は図1に示す如く、そのケーシング本体11aの長手方向両端部に冷却水出入口12が形成され、そこから冷却水が流入して、それが各偏平チューブ2の隙間に供給される。また、一方のタンク4側から一例として高温の排ガスが流入し、各偏平チューブ2内を流通して冷却水との間に熱交換が行われる。
【0018】
次に、図6は本発明の第2実施例の要部斜視図であり、この例が第1実施例と異なる点は、タンク4の上端板部5および下端板部6と両側板部7の欠切部15の位置のみである。この例では、欠切部15が上端板部5の上面および下端板部6の下面に形成されている。
【符号の説明】
【0019】
1 膨出部
1a 端縁
2 偏平チューブ
2a プレート
2b プレート
2c 段付き部
3 コア
4 タンク
5 上端板部
6 下端板部
7 側板部
【0020】
8 上嵌入部
9 下嵌入部
11 ケーシング
11a ケーシング本体
11b 端蓋
12 冷却水出入口
13 インナーフィン
15 欠切部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8