特許第5989650号(P5989650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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5989650吸水性樹脂の製造方法、及びそれにより得られる吸水性樹脂
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989650
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】吸水性樹脂の製造方法、及びそれにより得られる吸水性樹脂
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/32 20060101AFI20160825BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   C08F2/32
   C08J3/24 ZCEY
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-531261(P2013-531261)
(86)(22)【出願日】2012年8月23日
(86)【国際出願番号】JP2012071347
(87)【国際公開番号】WO2013031654
(87)【国際公開日】20130307
【審査請求日】2015年7月14日
(31)【優先権主張番号】特願2011-187452(P2011-187452)
(32)【優先日】2011年8月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】半田 昌良
(72)【発明者】
【氏名】鷹取 潤一
【審査官】 繁田 えい子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−158667(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/126002(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合開始剤及び分散安定剤の存在下、石油系炭化水素分散媒中で、水溶性エチレン性不飽和単量体を逆相懸濁重合させる工程を含む吸水性樹脂の製造方法であって、前記分散安定剤としてエーテル・エステル型ノニオン界面活性剤を使用することを特徴とし、前記エーテル・エステル型ノニオン界面活性剤が、ステアリン酸ポリオキシエチレンセチルエーテル、ステアリン酸ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ステアリン酸ポリオキシエチレンラウリルエーテル及びイソステアリン酸ポリオキシエチレンラウリルエーテルからなる群より選ばれた少なくとも1種である、吸水性樹脂の製造方法。
【請求項2】
分散安定剤として、さらに、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン及びエチレン・アクリル酸共重合体からなる群より選ばれた少なくとも1種をエーテル・エステル型ノニオン界面活性剤と併用する請求項1記載の吸水性樹脂の製造方法。
【請求項3】
逆相懸濁重合反応を2段以上の多段で行う請求項1又は2記載の吸水性樹脂の製造方法。
【請求項4】
水溶性エチレン性不飽和単量体の逆相懸濁重合工程終了後、後架橋剤を添加して後架橋を行う工程を含む、請求項1〜いずれか記載の吸水性樹脂の製造方法。
【請求項5】
逆相懸濁重合反応を2段以上の多段で行い、かつ水溶性エチレン性不飽和単量体の逆相懸濁重合工程終了後、後架橋剤を添加して後架橋を行う工程を含む、請求項1又は2記載の吸水性樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂の製造方法、及びそれにより得られる吸水性樹脂に関する。さらに詳しくは、生理用ナプキン、失禁パッドや紙オムツ等の衛生用品、保水材や土壌改良材等の農園芸材料、及び止水材や結露防止材等の工業資材等、種々の分野で使用される吸水性樹脂の製造方法、及びそれにより得られる吸水性樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂は、生理用ナプキン、失禁パッドや紙オムツ等の衛生用品、保水材や土壌改良材等の農園芸材料、及び止水材や結露防止材等の工業資材等、種々の分野で広く使用されている。吸水性樹脂としては、例えば、澱粉-アクリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物、澱粉-アクリル酸グラフト共重合体の中和物、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体のけん化物、アクリル酸部分中和物重合体の架橋物等が知られている。
【0003】
通常、衛生材料用途の吸収体に使用される吸水性樹脂には、保水能(吸水容量)、荷重下の吸水能、吸水速度、ゲル強度等の諸性能に優れていることが求められている。これまでにも、前記諸性能のうち、例えば、高い保水能、優れた吸水速度等に着目した技術が検討されている。
【0004】
また近年では、吸水性樹脂は、衛生材料の製造に適した特性、例えば吸湿下での流動性に優れることも求められている。吸水性樹脂は、大気中の水分を吸湿して、金属板への粘着や、粒子同士の凝集が発生しやすいため、衛生材料の製造装置(例えばドラムフォーマー)に固着物を生じやすく、頻繁な清掃が必要となり、衛生材料の生産性が低下する傾向がある。また、吸湿により凝集した状態の吸水性樹脂が、衛生材料に使用されると、ゲルブロッキングによる漏れや逆戻りの増加等、衛生材料の性能が悪化する可能性がある。
【0005】
これまでにも、前記課題に鑑みて、吸水性樹脂の諸性能を改良するべく、さまざまな技術が提案されている。例えば、吸水性樹脂に多価アルコールの有機カルボン酸エステルを添加し、加熱処理する方法(特許文献1参照)、多価アルコールのケタール化物、アセタール化物、アルキルエーテルを添加し、加熱処理する方法(特許文献2参照)、特定のシリコーン系界面活性剤を添加し、表面処理する方法(特許文献3参照)、多価金属を添加し、表面処理する方法(特許文献4参照)等が報告されている。その他にも、界面活性剤等の疎水性の化合物を用いる方法として、逆相懸濁重合方法を中心に、油溶性セルロースエステル又はセルロースエーテルを分散剤として用いる方法(特許文献5参照)、ショ糖脂肪酸エステルを使用する方法(特許文献6参照)等が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−220227号公報
【特許文献2】特開平8−27278号公報
【特許文献3】特開平9−136966号公報
【特許文献4】特開2001−96151号公報
【特許文献5】特開昭57−158210号公報
【特許文献6】特開昭61−87702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、これら従来技術では、衛生材料の使用に好適な性能、特に保水能と吸水速度、吸湿下での流動性を同時に満足できる吸水性樹脂は得られていない。
【0008】
本発明の課題は、衛生材料に使用される吸水剤に好適な特性として、高い保水能、優れた吸水速度を有し、さらには吸湿下での優れた流動性を有する吸水性樹脂の製造方法、及びそれにより得られる吸水性樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
〔1〕 ラジカル重合開始剤及び分散安定剤の存在下、石油系炭化水素分散媒中で、水溶性エチレン性不飽和単量体を逆相懸濁重合させる工程を含む吸水性樹脂の製造方法であって、前記分散安定剤としてエーテル・エステル型ノニオン界面活性剤を使用することを特徴とする吸水性樹脂の製造方法、並びに
〔2〕 前記〔1〕記載の製造方法により得られる、生理食塩水保水能が25g/g以上、生理食塩水吸水速度が50秒以下、吸湿流動指数が70%以上である吸水性樹脂
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法により、高い保水能、優れた吸水速度を有し、さらには吸湿下での優れた流動性を有する吸水性樹脂を製造することができる。そのような特定の物性を有する吸水性樹脂は、衛生材料の諸性能を高め、かつ衛生材料の製造においても、好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】荷重下での吸水能を測定するための装置の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の吸水性樹脂の製造方法は、ラジカル重合開始剤及び分散安定剤の存在下、石油系炭化水素分散媒中で、水溶性エチレン性不飽和単量体を逆相懸濁重合させるに際し、分散安定剤としてエーテル・エステル型ノニオン界面活性剤を使用することを特徴とする。
【0013】
エーテル・エステル型ノニオン界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレンセチルエーテル、ステアリン酸ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ステアリン酸ポリオキシエチレンラウリルエーテル、イソステアリン酸ポリオキシエチレンラウリルエーテル、モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
なかでも、水溶性エチレン性不飽和単量体の分散安定性の面から、ステアリン酸ポリオキシエチレンセチルエーテル、ステアリン酸ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ステアリン酸ポリオキシエチレンラウリルエーテル及びイソステアリン酸ポリオキシエチレンラウリルエーテルからなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましく、ステアリン酸ポリオキシエチレンセチルエーテル及びステアリン酸ポリオキシエチレンステアリルエーテルがより好ましい。これらの界面活性剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0015】
本発明で用いるエーテル・エステル型ノニオン界面活性剤のHLB値(親水親油バランス)は、得られる吸水性樹脂の吸湿下での流動性を高め、かつ優れた吸水速度を有する吸水性樹脂を得るという観点から、2〜11が好ましく、3〜9がより好ましく、4〜7がさらに好ましい。
【0016】
また、分散安定剤として、前記エーテル・エステル型ノニオン界面活性剤とともに高分子系分散剤を併用してもよい。使用される高分子系分散剤としては、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン・ターポリマー)、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、エチレン・無水マレイン酸共重合体、エチレン・プロピレン・無水マレイン酸共重合体、ブタジエン・無水マレイン酸共重合体、酸化型ポリエチレン、エチレン・アクリル酸共重合体、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。なかでも、水溶性エチレン性不飽和単量体の分散安定性の面から、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン及びエチレン・アクリル酸共重合体が好ましい。これらの高分子系分散剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
分散安定剤の使用量は、石油系炭化水素分散媒中における、水溶性エチレン性不飽和単量体の分散状態を良好に保ち、かつ使用量に見合う分散効果を得る観点から、水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、0.05〜10質量部が好ましく、0.1〜8質量部がより好ましく、0.2〜5質量部がさらに好ましい。
【0018】
高分子系分散剤を併用する場合、分散安定剤総量中の、エーテル・エステル型ノニオン界面活性剤(A)と、高分子系分散剤(B)の質量比率[(A)/(B)]は、石油系炭化水素分散媒中における、水溶性エチレン性不飽和単量体の分散状態を良好に保ち、かつ本発明に記載の吸水性樹脂の諸性能を高める観点から、95/5〜10/90が好ましく、80/20〜20/80がより好ましく、70/30〜30/70がさらに好ましい。高分子系分散剤を併用した場合のエーテル・エステル型ノニオン界面活性剤の使用量は、水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、0.005〜9.5質量部が好ましく、0.02〜6.4質量部がより好ましく、0.06〜3.5質量部がさらに好ましい。
【0019】
本発明で用いる水溶性エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸(本明細書においては「アクリル」及び「メタクリル」を合わせて「(メタ)アクリル」と表記する。以下同様)及びその塩;2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及びその塩;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の非イオン性単量体;N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和単量体及びその4級化物等が挙げられる。これらの水溶性エチレン性不飽和単量体は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、工業的に入手が容易である点から、(メタ)アクリル酸及びその塩、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等が好ましく、(メタ)アクリル酸及びその塩がより好ましい。
【0020】
なお、上述の水溶性エチレン性不飽和単量体は、逆相懸濁重合する際に、石油系炭化水素分散媒中での分散効率を上昇させるために水溶液にして用いてもよい。このような水溶液中における上記の単量体の濃度は特に限定はされないが、通常20質量%以上飽和濃度以下とすればよく、25〜70質量%が好ましく、30〜55質量%がより好ましい。
【0021】
水溶性エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等のように酸基を有する場合、必要に応じてその酸基が予めアルカリ性中和剤により中和されたものを用いてもよい。このようなアルカリ性中和剤としては、特に限定されるものではないが、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属塩;アンモニア等が挙げられる。特にこれらのアルカリ性中和剤は、中和操作を簡便にするために水溶液の状態にして用いてもよい。上述のアルカリ性中和剤は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
アルカリ性中和剤による水溶性エチレン性不飽和単量体の中和度については、特に限定されないが、得られる吸水性樹脂の浸透圧を高めることで吸水性能を高め、かつ余剰のアルカリ性中和剤の存在に起因する安全性等に問題が生じないようにするために、水溶性エチレン性不飽和単量体が有する全ての酸基に対する中和度として、通常10〜100モル%が好ましく、30〜80モル%がより好ましい。
【0023】
石油系炭化水素分散媒としては、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルペンタン、3-エチルペンタン、n-オクタン等の炭素数6〜8の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、trans-1,2-ジメチルシクロペンタン、cis-1,3-ジメチルシクロペンタン、trans-1,3-ジメチルシクロペンタン等の脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。これらの石油系炭化水素分散媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの石油系炭化水素分散媒のなかでも、工業的に入手が容易であり、品質が安定しており、かつ安価である点で、n-ヘプタン及びシクロヘキサンが好適に用いられる。また、上記石油系炭化水素分散媒の混合物の例として、市販されているエクソールヘプタン(エクソンモービル社製:ヘプタン及び異性体の炭化水素75〜85質量%含有)等を用いても好適な結果が得られる。
【0024】
石油系炭化水素分散媒の使用量は、水溶性エチレン性不飽和単量体を均一に分散し、重合温度の制御を容易にする観点から、通常、水溶性エチレン性不飽和単量体100質量部に対して、50〜600質量部が好ましく、100〜550質量部がより好ましい。
【0025】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;過酸化水素等の過酸化物;2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンジアミン]四水塩、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド]等のアゾ化合物等が挙げられる。これらの中では、入手が容易で取り扱いやすいという観点から、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム及び2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩が好ましい。これらラジカル重合開始剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0026】
ラジカル重合開始剤の使用量は、重合反応の時間を短縮し、かつ急激な重合反応を防ぐ観点から、通常、水溶性エチレン性不飽和単量体1モルに対して0.00005〜0.01モルが好ましい。
【0027】
なお、前記ラジカル重合開始剤は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、及びL-アスコルビン酸等の還元剤を併用して、レドックス重合開始剤として用いることもできる。
【0028】
また、吸水性樹脂の吸水性能を制御するために、連鎖移動剤を添加してもよい。このような連鎖移動剤としては、次亜リン酸塩類、チオール類、チオール酸類、第2級アルコール類、アミン類等が挙げられる。
【0029】
本発明では、水溶性エチレン性不飽和単量体を逆相懸濁重合する際に、必要に応じて架橋剤を使用してもよい。このような架橋剤(以下、「内部架橋剤」という)としては、特に限定されるものではないが、例えば、重合性不飽和基を2個以上有する化合物を用いることができる。このような化合物の具体例としては、(ポリ)エチレングリコール(本明細書において、例えば、「ポリエチレングリコール」と「エチレングリコール」を合わせて「(ポリ)エチレングリコール」と表記する。以下同様である)、(ポリ)プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、(ポリ)グリセリン等のポリオール類のジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類;前記のポリオールとマレイン酸、フマール酸等の不飽和酸類とを反応させて得られる不飽和ポリエステル類;N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド等のビスアクリルアミド類;ポリエポキシドと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類;トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のポリイソシアネートと、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとを反応させて得られるジ(メタ)アクリル酸カルバミルエステル類;アリル化澱粉;アリル化セルロース;ジアリルフタレート;N,N’,N”-トリアリルイソシアヌレート;ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0030】
内部架橋剤としては、上述のような重合性不飽和基を2個以上有する化合物のほかに、その他の反応性官能基を2個以上有する化合物を用いてもよい。このような内部架橋剤としては、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等のグリシジル基含有化合物;(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレート等を例示できる。これらの内部架橋剤は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
内部架橋剤は分散媒に添加して用いてもよいが、内部架橋剤による効果をより効率的に発揮させるために、上述の単量体に添加して用いることが好ましい。
【0032】
内部架橋剤を使用する場合、その使用量は、得られる吸水性樹脂の吸水性能を十分に高めるために、水溶性エチレン性不飽和単量体1モルに対して、0.0000001〜0.01モルとすることが好ましく、0.000001〜0.005モルとすることがより好ましい。
【0033】
逆相懸濁重合においては、粒径を調整するために、水溶性エチレン性不飽和単量体に増粘剤を添加してもよい。増粘剤としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸(部分)中和物等が挙げられる。
【0034】
重合反応の反応温度は、使用するラジカル重合開始剤によって異なるが、重合を迅速に進行させ、重合時間を短くすることにより生産性を高めるとともに、重合熱をより容易に除去して円滑に反応を行う観点から、通常20〜110℃が好ましく、40〜90℃がより好ましい。反応時間は、通常、0.1時間〜4時間程度が好ましい。
【0035】
本発明では、逆相懸濁重合反応を2段以上の多段で行うこともできる。即ち、前記のごとく逆相懸濁重合を行った後、重合反応液を冷却して、さらに水溶性エチレン性不飽和単量体を添加して、逆相懸濁重合反応を行う2段以上の多段重合とすることもできる。2段以上の多段重合では、1段目の懸濁重合で得られた粒子を凝集させることで、吸水性樹脂の粒径を大きくすることができるため、衛生材料に好適とされる適度な粒径を得ることが、より容易となる。
【0036】
上記の1段目の重合反応液の冷却温度は、特に限定されないが、例えば5〜40℃程度が好ましく、10〜30℃がより好ましい。重合反応液の冷却にかかる時間は特に限定されない。
【0037】
2段目以降の各段における逆相懸濁重合では、水溶性エチレン性不飽和単量体の他に、ラジカル重合開始剤と、必要に応じて添加する内部架橋剤を、2段目以降の各段における逆相懸濁重合の際に添加する水溶性エチレン性不飽和単量体の量を基準として、前述した水溶性エチレン性不飽和単量体に対する各成分のモル比の範囲内で添加して、上記した方法と同様の条件で逆相懸濁重合を行うことができる。
【0038】
本発明の逆相懸濁重合によって得られる吸水性樹脂の中位粒子径は、通常、20〜800μmの範囲であることが好ましい。なお、衛生材料に好適に使用されるためには、粉体としての流動性を良好に保ち、かつ衛生材料の感触を柔らかく保つという観点から、60〜700μmであることがより好ましく、80〜600μmであることがさらに好ましい。
【0039】
本発明においては、水溶性エチレン性不飽和単量体の逆相懸濁重合工程終了後、架橋剤を添加して後架橋を行う工程を行うことが好ましい。逆相懸濁重合後、カルボキシル基と反応し得る官能基を複数有する化合物を架橋剤(以下、「後架橋剤」という)として添加して、吸水性樹脂の表面近傍に架橋処理を施すことにより、荷重下の吸水能等に優れた吸水性樹脂を得ることができる。さらに、逆相懸濁重合反応を2段以上の多段で行い、かつ水溶性エチレン性不飽和単量体の逆相懸濁重合工程終了後、後架橋剤を添加して後架橋を行う工程を含む態様が、得られる吸水性樹脂の吸水能の観点からより好ましい。
【0040】
このような後架橋剤としては、反応性官能基を2個以上有する化合物を挙げることができる。その例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)エチレングリコールトリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、α-メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物等の反応性官能基を2個以上有する化合物;3-メチル-3-オキセタンメタノール、3-エチル-3-オキセタンメタノール、3-ブチル-3-オキセタンメタノール、3-メチル-3-オキセタンエタノール、3-エチル-3-オキセタンエタノール、3-ブチル-3-オキセタンエタノール等のオキセタン化合物;1,2-エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;エチレンカーボネート等のカーボネート化合物等が挙げられる。これらの中でも、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)エチレングリコールトリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物が好ましい。これらの後架橋剤は、単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0041】
後架橋剤の使用量は、得られる吸水性樹脂の保水能を低下させず、かつ表面近傍の架橋密度を適度に強めて荷重下の吸水能を高める観点から、逆相懸濁重合反応で用いる水溶性エチレン性不飽和単量体の総量1モルに対して、0.00005モル〜0.01モルが好ましく、0.0001モル〜0.005モルがより好ましい。
【0042】
後架橋剤の添加時期は、水溶性エチレン性不飽和単量体の重合終了後であればよく、特に限定されないが、水溶性エチレン性不飽和単量体の総量100質量部に対し、1〜400質量部の範囲の水分存在下に添加されるのが好ましく、5〜200質量部の範囲の水分存在下に添加されるのがより好ましく、10〜100質量部の範囲の水分存在下に添加されるのがさらに好ましい。このように、後架橋剤添加時の水分量をコントロールすることによって、より好適に、吸水性樹脂の表面近傍における架橋を施すことで、荷重下での吸水能に優れた吸水性樹脂を得ることができる。
【0043】
後架橋剤の添加方法としては、後架橋剤をそのまま添加しても、水溶液として添加してもよいが、必要に応じて、溶媒として親水性有機溶媒を用いた溶液として添加してもよい。親水性有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール等の低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類、並びに、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類等が挙げられる。これら親水性有機溶媒は、それぞれ単独で使用してもよく、2種類以上を併用、又は水との混合溶媒として使用してもよい。
【0044】
後架橋反応における温度は、50〜250℃が好ましく、60〜180℃がより好ましく、60〜140℃がさらに好ましく、70〜120℃がさらに好ましい。また、前記後架橋の反応時間は、反応温度、後架橋剤の種類及び量等によって異なるので一概には決定することができないが、通常、1〜300分間程度が好ましく、5〜200分間がより好ましい。
【0045】
本発明において、乾燥工程は常圧下でも減圧下で行ってもよく、乾燥効率を高めるため、窒素等の気流下で行ってもよい。乾燥工程が常圧の場合、乾燥温度は70〜250℃が好ましく、80〜180℃がより好ましく、80〜140℃がさらに好ましく、90〜130℃がさらに好ましい。また、減圧下の場合、乾燥温度は60〜100℃が好ましく、70〜90℃がより好ましい。
【0046】
乾燥後の吸水性樹脂の水分率は、粉体としての流動性の観点から、20質量%以下が好ましく、3〜15質量%がより好ましい。
【0047】
本発明の吸水性樹脂には、目的に応じて、滑剤、消臭剤、抗菌剤、酸化防止剤、膨潤ゲルの劣化防止剤等、公知の添加剤を配合することもできる。
【0048】
このようにして得られた本発明の吸水性樹脂は、高い保水能、荷重下での高い吸水能及び優れた吸水速度を有し、さらには吸湿下での優れた流動性を有するため、衛生材料に好適に使用される。
【0049】
ここで、吸水性樹脂の生理食塩水保水能、2.07kPa荷重下の生理食塩水吸水能、生理食塩水吸水速度、及び吸湿流動指数は、後述の実施例に記載の測定方法にしたがって測定される。
【0050】
本発明の吸水性樹脂の生理食塩水保水能は、衛生材料に用いられた際、吸収容量を高める観点から、25g/g以上が好ましく、30g/g以上がより好ましく、35g/g以上がさらに好ましい。
【0051】
本発明の吸水性樹脂の2.07kPa荷重下の生理食塩水吸水能は、衛生材料に用いられた際、荷重下における使用においても、液体を吸収する観点から、20ml/g以上が好ましく、25ml/g以上がより好ましく、30ml/g以上がさらに好ましい。
【0052】
本発明の吸水性樹脂の生理食塩水吸水速度は、衛生材料に用いられた際、液体を迅速に吸収することで漏れを防止する観点から、50秒以下が好ましく、40秒以下がより好ましく、30秒以下がさらに好ましい。
【0053】
本発明の吸水性樹脂の吸湿流動指数は、吸水性樹脂の取り扱い性をよくし、衛生材料等を製造する装置の内部、例えば、吸水性樹脂の投入ホッパー内壁、フィーダー内部、又は吸収体を積層する金網メッシュ等に粒子が固着しにくくする観点から、70%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上がさらに好ましい。
【実施例】
【0054】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によってなんら限定されるものではない。
【0055】
実施例1
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、撹拌機として翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する攪拌翼を備えた内径100mmの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn-ヘプタン321g をとり、HLB値4のステアリン酸ポリオキシエチレンステアリルエーテル(日本エマルジョン(株)、エマレックスSWS-4)0.92g、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学(株)、ハイワックス1105A)0.92gを添加し、80℃まで昇温して界面活性剤を溶解したのち、55℃まで冷却した。
【0056】
一方、500mlの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液92g(1.03モル)とイオン交換水51.2g、ヒドロキシエチルセルロース(住友精化(株)、AW-15F)0.28gをとり、外部より冷却しつつ、30.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液102.9gを滴下してアクリル酸の75モル%の中和を行ったのち、過硫酸カリウム0.11g(0.41ミリモル)、エチレングリコールジグリシジルエーテル9.2mg(0.053ミリモル)を加えて溶解し、単量体水溶液を調製した。
【0057】
前記単量体水溶液を前記セパラブルフラスコに添加して、系内を窒素で置換しながら、35℃で30分間保持した後、70℃の水浴に浸漬し、重合を30分間行うことにより、重合反応液を得た。
【0058】
次いで、125℃の油浴で前記重合反応液を昇温し、水とn-ヘプタンとの共沸蒸留によりn-ヘプタンを還流しながら、126.2gの水を系外へ抜き出した後、エチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液3.68g(0.42ミリモル)を添加し、80℃で2時間保持した。その後、120℃の油浴を用いて加熱し、分散媒と水を蒸留により系外へ除去後、窒素気流下で乾燥し、球状の吸水性樹脂100.8gを得た。
【0059】
実施例2
界面活性剤をHLB値5のステアリン酸ポリオキシエチレンステアリルエーテル(日本エマルジョン(株)、エマレックスSWS-6)0.92gに変更した以外は、実施例1と同条件で、球状の吸水性樹脂98.3gを得た。
【0060】
実施例3
界面活性剤をHLB値6のステアリン酸ポリオキシエチレンステアリルエーテル(日本エマルジョン(株)、エマレックスSWS-9)0.92gに変更した以外は、実施例1と同条件で、球状の吸水性樹脂103.7gを得た。
【0061】
実施例4
界面活性剤をHLB値7のステアリン酸ポリオキシエチレンステアリルエーテル(日本エマルジョン(株)、エマレックスSWS-10)0.92gに、さらに系外に抜き出した水の量を128gに変更した以外は、実施例1と同条件で、球状の吸水性樹脂108.1gを得た。
【0062】
実施例5
界面活性剤をHLB値8のステアリン酸ポリオキシエチレンステアリルエーテル(日本エマルジョン(株)、エマレックスSWS-12)0.92gに変更した以外は、実施例4と同条件で、球状の吸水性樹脂107.0gを得た。
【0063】
実施例6
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、撹拌機として翼径50mmの4枚傾斜パドル翼2段で有する攪拌翼を備えた内径100mmの円筒型丸底セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn-ヘプタン321gをとり、HLB値5のステアリン酸ポリオキシエチレンステアリルエーテル(日本エマルジョン(株)、エマレックスSWS-6)0.92g、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学(株)、ハイワックス1105A)0.92gを添加し、80℃まで昇温して界面活性剤を溶解したのち、55℃まで冷却した。
【0064】
一方、500mlの三角フラスコ中に80.5質量%のアクリル酸水溶液92g(1.03モル)とイオン交換水51.2g、ヒドロキシエチルセルロース(住友精化(株)、AW-15F)0.28gをとり、外部より冷却しつつ、30.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液102.9gを滴下してアクリル酸の75モル%の中和を行ったのち、過硫酸カリウム0.11g(0.41ミリモル)、エチレングリコールジグリシジルエーテル9.2mg(0.053ミリモル)を加えて溶解し、第1段目の単量体水溶液を調製した。
【0065】
前記単量体水溶液を前記セパラブルフラスコに添加して、系内を窒素で置換しながら、35℃で30分間保持した後、70℃の水浴に浸漬し、重合を30分間行うことにより、第1段目の重合反応液を得た。
【0066】
一方、別の500mlの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液110.4g(1.23モル)、イオン交換水26.3gをとり、外部より冷却しつつ、30.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液123.4gを滴下してアクリル酸の75モル%の中和を行ったのち、過硫酸カリウム0.13g(0.48ミリモル)、エチレングリコールジグリシジルエーテル11.0mg(0.063ミリモル)を加えて溶解して、第2段目の単量体水溶液を調製した。
【0067】
前記第1段目の重合反応液を25℃に冷却し、前記第2段目の単量体水溶液を系内に添加し、窒素で置換しながら30分間保持した。
【0068】
再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を30分間行うことにより、第2段目の重合反応液を得た。
【0069】
次いで、120℃の油浴を使用して昇温し、水とn-ヘプタンとの共沸蒸留により、n-ヘプタンを還流しながら、249gの水を系外へ抜き出した後、エチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液3.96g(0.45ミリモル)を添加した。その後、120℃の油浴を用いて加熱し、分散媒と水を蒸留により系外へ除去後、窒素気流下で乾燥し、球状粒子が凝集した形態の吸水性樹脂203.9gを得た。
【0070】
実施例7
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、撹拌機として翼径50mmの4枚傾斜パドル翼2段で有する攪拌翼を備えた内径100mmの円筒型丸底セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn-ヘプタン321g をとり、HLB値7のステアリン酸ポリオキシエチレンステアリルエーテル(日本エマルジョン(株)、エマレックスSWS-10)0.92gを添加し、80℃まで昇温して界面活性剤を溶解したのち、55℃まで冷却した。
【0071】
一方、500mlの三角フラスコ中に80.5質量%のアクリル酸水溶液92g(1.03モル)とイオン交換水51.2g、ヒドロキシエチルセルロース(住友精化(株)、AW-15F)0.28gをとり、外部より冷却しつつ、30.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液102.9gを滴下してアクリル酸の75モル%の中和を行ったのち、過硫酸カリウム0.11g(0.41ミリモル)、エチレングリコールジグリシジルエーテル9.2mg(0.053ミリモル)を加えて溶解し、第1段目の単量体水溶液を調製した。
【0072】
前記単量体水溶液を前記セパラブルフラスコに添加して、系内を窒素で置換しながら、35℃で30分間保持した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を30分間行うことにより、第1段目の重合反応液を得た。
【0073】
一方、別の500mlの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液128.2g(1.43モル)、イオン交換水30.5gをとり、外部より冷却しつつ、30.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液143.3gを滴下してアクリル酸の75モル%の中和を行ったのち、過硫酸カリウム0.15g(0.55ミリモル)、エチレングリコールジグリシジルエーテル12.8mg(0.073ミリモル)を加えて溶解して、第2段目の単量体水溶液を調製した。
【0074】
前記第1段目の重合反応液を25℃に冷却し、前記第2段目の単量体水溶液を系内に添加し、窒素で置換しながら30分間保持した。
【0075】
再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を30分間行うことにより、第2段目の重合反応液を得た。
【0076】
次いで、120℃の油浴を使用して昇温し、水とn-ヘプタンとの共沸蒸留により、n-ヘプタンを還流しながら、267.3gの水を系外へ抜き出した後、エチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液3.96g(0.45ミリモル)を添加し、80℃で2時間保持した。その後、120℃の油浴を用いて加熱し、分散媒と水を蒸留により系外へ除去後、窒素気流下で乾燥し、球状粒子が凝集した形態の吸水性樹脂201.0gを得た。
【0077】
実施例8
界面活性剤をHLB値7のステアリン酸ポリオキシエチレンセチルエーテル(日本エマルジョン(株)、エマレックスCWS-10)0.92gに変更した以外は、実施例6と同条件で、球状粒子が凝集した形態の吸水性樹脂202.4gを得た。
【0078】
比較例1
界面活性剤をHLB値3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ(株)、リョートーシュガーエステルS-370)0.92g、さらに系外に抜き出した水の量を116gに変更した以外は、実施例1と同条件で行い、球状の吸水性樹脂98.0gを得た。
【0079】
比較例2
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、撹拌機として翼径50mmの4枚傾斜パドル翼2段で有する攪拌翼を備えた内径100mmの円筒型丸底セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn-ヘプタン321g をとり、HLB値3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ(株)、リョートーシュガーエステルS-370)0.92g、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学(株)、ハイワックス1105A)0.92gを添加し、80℃まで昇温して界面活性剤を溶解したのち、55℃まで冷却した。
【0080】
一方、500mlの三角フラスコ中に80.5質量%のアクリル酸水溶液92g(1.03モル)とイオン交換水51.2g、ヒドロキシエチルセルロース(住友精化(株)、AW-15F)0.28gをとり、外部より冷却しつつ、30.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液102.9gを滴下してアクリル酸の75モル%の中和を行ったのち、過硫酸カリウム0.11g(0.41ミリモル)、エチレングリコールジグリシジルエーテル9.2mg(0.053ミリモル)を加えて溶解し、第1段目の単量体水溶液を調製した。
【0081】
前記単量体水溶液を前記セパラブルフラスコに添加して、系内を窒素で置換しながら、35℃で30分間保持した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を30分間行うことにより、第1段目の重合反応液を得た。
【0082】
一方、別の500mlの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液128.2g(1.43モル)、イオン交換水30.5gをとり、外部より冷却しつつ、30.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液143.3gを滴下して75モル%の中和を行ったのち、過硫酸カリウム0.15g(0.55ミリモル)、エチレングリコールジグリシジルエーテル12.8mg(0.073ミリモル)を加えて溶解して、第2段目の単量体水溶液を調製した。
【0083】
前記第1段目の重合反応液を28℃に冷却し、前記第2段目の単量体水溶液を系内に添加し、窒素で置換しながら30分間保持した。
【0084】
再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を30分間行うことにより、第2段目の重合反応液を得た。
【0085】
次いで、120℃の油浴を使用して昇温し、水とn-ヘプタンとの共沸蒸留により、n-ヘプタンを還流しながら、267.8gの水を系外へ抜き出した後、エチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液3.96g(0.45ミリモル)を添加した。その後、120℃の油浴を用いて加熱し、分散媒と水を蒸留により系外へ除去後、窒素気流下で乾燥し、球状粒子が凝集した形態の吸水性樹脂227.4gを得た。
【0086】
比較例3
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、撹拌機として、翼径50mmの4枚傾斜パドル翼2段で有する攪拌翼を備えた内径100mmの円筒型丸底セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn-ヘプタン321g をとり、HLB値3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ(株)、リョートーシュガーエステルS-370)0.92g、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学(株)、ハイワックス1105A)0.92gを添加し、80℃まで昇温して界面活性剤を溶解したのち、55℃まで冷却した。
【0087】
一方、500mlの三角フラスコ中に80.5質量%のアクリル酸水溶液92g(1.03モル)とイオン交換水51.2g、ヒドロキシエチルセルロース(住友精化(株)、AW-15F)0.28gをとり、外部より冷却しつつ、30.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液102.9gを滴下してアクリル酸の75モル%の中和を行ったのち、過硫酸カリウム0.11g(0.41ミリモル)、エチレングリコールジグリシジルエーテル27.6mg(0.16ミリモル)を加えて溶解し、第1段目の単量体水溶液を調製した。
【0088】
前記単量体水溶液を前記セパラブルフラスコに添加して、系内を窒素で置換しながら、35℃で30分間保持した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を30分間行うことにより、第1段目の重合反応液を得た。
【0089】
一方、別の500mlの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液119.1g(1.33モル)、イオン交換水30.5gをとり、外部より冷却しつつ、30.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液133.2gを滴下して75モル%の中和を行ったのち、過硫酸カリウム0.14g(0.52ミリモル)、エチレングリコールジグリシジルエーテル35.7mg(0.20ミリモル)を加えて溶解して、第2段目の単量体水溶液を調製した。
【0090】
前記第1段目の重合反応液を28℃に冷却し、前記第2段目の単量体水溶液を系内に添加し、窒素で置換しながら30分間保持した。
【0091】
再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を30分間行うことにより、第2段目の重合反応液を得た。
【0092】
次いで、120℃の油浴を使用して昇温し、水とn-ヘプタンとの共沸蒸留により、n-ヘプタンを還流しながら、259.9gの水を系外へ抜き出した後、エチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液11.0g(1.26ミリモル)を添加した。その後、120℃の油浴を用いて加熱し、分散媒と水を蒸留により系外へ除去後、窒素気流下で乾燥し、球状粒子が凝集した形態の吸水性樹脂217.1gを得た。
【0093】
実施例1〜8及び比較例1〜3の吸水性樹脂について、(1)生理食塩水保水能、(2)2.07kPa荷重の生理食塩水吸水能、(3)生理食塩水吸水速度、(4)吸湿流動指数、(5)中位粒子径、(6)水分率を、以下の手順により測定した。結果を表1に示す。
【0094】
(1)生理食塩水保水能
500mL容のビーカーに、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)500gを量り取り、600r/minで攪拌させながら、吸水性樹脂2.0gを、ママコが発生しないように分散させた。攪拌させた状態で30分間放置し、吸水性樹脂を十分に膨潤させた。その後、綿袋(メンブロード60番、横100mm×縦200mm)中に注ぎ込み、綿袋の上部を輪ゴムで縛り、遠心力が167Gとなるよう設定した脱水機(国産遠心機株式会社製、品番:H-122)を用いて綿袋を1分間脱水し、脱水後の膨潤ゲルを含んだ綿袋の質量Wa(g)を測定した。吸水性樹脂を添加せずに同様の操作を行い、綿袋の湿潤時の空質量Wb(g)を測定し、以下の式から保水能を算出した。
【0095】
生理食塩水保水能(g/g)=[Wa-Wb](g)/吸水性樹脂の質量(g)
【0096】
(2)2.07kPa荷重下の生理食塩水吸水能
吸水性樹脂の2.07kPa荷重下での生理食塩水吸水能は、図1に概略の構成を示した装置Xを用いて測定した。
【0097】
図1に示した装置Xは、ビュレット部1、導管2、測定台3、測定台3上に置かれた測定部4からなっている。
ビュレット部1は、ビュレット10の上部にゴム栓14、下部に空気導入管11とコック12が連結されており、さらに、空気導入管11は先端にコック13を有している。ビュレット部1と測定台3の間には、導管2が取り付けられており、導管2の内径は6mmである。測定台3の中央部には、直径2mmの穴があいており、導管2が連結されている。測定部4は、アクリル樹脂製の円筒40と、この円筒40の底部に接着されたナイロンメッシュ41と、重り42とを有している。円筒40の内径は、20mmである。ナイロンメッシュ41は目開き75μm(200メッシュ)である。そして、測定時には、ナイロンメッシュ41上に吸水性樹脂5が均一に撒布されている。重り42は、直径19mm、質量59.8gである。この重りは、吸水性樹脂5上に置かれ、吸水性樹脂5に対して2.07kPaの荷重を加えることができるようになっている。
【0098】
次に、測定手順を説明する。測定は、25℃の室内にて行われる。まずビュレット部1のコック12とコック13を閉め、25℃に調節された生理食塩水をビュレット10上部から入れ、ゴム栓14でビュレット上部の栓をした後、ビュレット部1のコック12、コック13を開ける。次に、測定台3中心部の導管口から出てくる生理食塩水の水面と、測定台3の上面とが同じ高さになるように測定台3の高さの調整を行う。
【0099】
円筒40のナイロンメッシュ41上に0.10gの吸水性樹脂5を均一に撒布して、この吸水性樹脂5上に重り42を置いて、測定部4を準備する。その後、測定部4を、その中心部が測定台3中心部の導管口に一致するようにして置く。
【0100】
空気導入管11からビュレット10内に気泡が発生し、吸水性樹脂5が吸水し始めた時点から、60分間経過後のビュレット10内の生理食塩水の減少量(すなわち、吸水性樹脂5が吸水した生理食塩水)Wc(ml)を読み取る。吸水性樹脂5の2.07kPa荷重下の生理食塩水吸水能は、以下の式により求めた。
2.07kPa荷重下の生理食塩水吸水能(ml/g)=Wc(ml)÷吸水性樹脂の質量(g)
【0101】
(3)生理食塩水吸水速度
100mL容のビーカーに、25±0.2℃の温度の生理食塩水50±0.01gを入れ、マグネチックスターラーバー(8mmφ×30mm、リング無し)を用いて、回転数が600r/minになるように調整した。次に吸水性樹脂2.0±0.002gを前記ビーカーに素早く添加し、添加し終わると同時にストップウォッチをスタートした。吸水性樹脂が生理食塩水を吸水し、渦がなくなるまでの時間(秒)をストップウォッチで測定し、生理食塩水吸水速度とした。
【0102】
(4)吸湿流動指数
目開き850μmのJIS標準篩を通過させた吸水性樹脂5.0gを、平滑なアルミ製板(サイズ120×120mm、厚み0.3mm、質量約11g)の上に均一に散布した。このサンプルを30±1℃、相対湿度80±5%の条件に調整した恒温恒湿器(ナガノ科学機械製作所(株)、型番:LH-20)内に90分間放置し、吸湿させた。吸湿後の吸水性樹脂の質量(Wd)を測定した後、受け皿を付した目開き1400μmの篩い上に、アルミ製板を、吸水性樹脂を載せた面を下向きにして載置した。
篩いにふたをして、ロータップ式振とう機を用いて5回タッピングし、篩いを通過した吸水性樹脂の質量(We)を測定した。下式により吸湿流動指数を算出した。
吸湿流動指数(%)=(We/Wd)×100
【0103】
(5)中位粒子径
吸水性樹脂50gに、滑剤として、0.25gの非晶質シリカ(デグサジャパン(株)、Sipernat200)を混合した。これを、JIS標準篩の目開き250μmの篩を用いて通過させ、篩上に残る量がその50質量%以上の場合には<α>の篩の組み合わせを、50質量%未満の場合には<β>の篩の組み合わせを、用いて中位粒子径を測定した。
【0104】
<α>
JIS標準篩を上から、目開き850μmの篩、目開き600μmの篩、目開き500μmの篩、目開き400μmの篩、目開き300μmの篩、目開き250μmの篩、目開き150μmの篩及び受け皿の順に組み合わせた。
【0105】
<β>
JIS標準篩を上から、目開き500μmの篩、目開き250μmの篩、目開き180μmの篩、目開き150μmの篩、目開き106μmの篩、目開き75μmの篩、目開き45μmの篩及び受け皿の順に組み合わせた。
【0106】
組み合わせた最上の篩に、前記吸水性樹脂50gを入れ、ロータップ式振とう器を用いて20分間振とうさせて分級した。
【0107】
分級後、各篩上に残った吸水性樹脂の質量を全量に対する質量百分率として計算し、粒子径の大きい方から順に積算することにより、篩の目開きと篩上に残った吸水性樹脂の質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットした。確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を中位粒子径とした。
【0108】
(6)水分率
吸水性樹脂2.0gを、あらかじめ恒量(Wf(g))としたアルミホイールケース(8号)にとり精秤した(Wg(g))。上記サンプルを、内温を105℃に設定した熱風乾燥機(ADVANTEC社製)で2時間乾燥させた後、デシケーター中で放冷して、乾燥後の質量Wh(g)を測定した。以下の式から、吸水性樹脂の水分率を算出した。
水分率(質量%)=[(Wg−Wf)−(Wh−Wf)]/(Wg−Wf)×100
【0109】
【表1】
【0110】
以上の結果から明らかなように、実施例1〜8の製造方法では、高い保水能(吸水容量)と優れた吸水速度を有するうえに、吸湿下での流動性にも優れる吸水性樹脂が得られた。
一方、比較例においては、高い保水能を有するも吸湿下での流動性が悪いもの(比較例1)、吸水速度が遅いもの(比較例2)、及び吸湿下での流動性は優れるが保水能が低いもの(比較例3)であり、保水能と吸水速度、吸湿下での流動性を同時に満足できる吸水性樹脂は得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明の方法により得られる吸水性樹脂は、衛生材料の吸収容量や吸収速度等の諸性能を高め、かつ衛生材料の製造工程において発生しうる課題を回避できることから、生理用ナプキン、失禁パッド、紙おむつ等の衛生材料に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0112】
X 測定装置
1 ビュレット部
10 ビュレット
11 空気導入管
12 コック
13 コック
14 ゴム栓
2 導管
3 測定台
4 測定部
40 円筒
41 ナイロンメッシュ
42 重り
5 吸水性樹脂
図1