(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989657
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】バッテリー電極、及びバッテリー電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/04 20060101AFI20160825BHJP
H01M 4/02 20060101ALI20160825BHJP
H01M 2/26 20060101ALI20160825BHJP
H01M 4/70 20060101ALI20160825BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20160825BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20160825BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
H01M4/02 Z
H01M2/26 A
H01M4/70 A
H01M4/13
H01M4/139
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-540270(P2013-540270)
(86)(22)【出願日】2011年11月25日
(65)【公表番号】特表2014-502017(P2014-502017A)
(43)【公表日】2014年1月23日
(86)【国際出願番号】EP2011005946
(87)【国際公開番号】WO2012072222
(87)【国際公開日】20120607
【審査請求日】2013年8月13日
(31)【優先権主張番号】102010062143.9
(32)【優先日】2010年11月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513133837
【氏名又は名称】ツェントルム フュア ゾンネンエネルギー ウント ヴァッサーシュトッフ フォルシュング バーデンヴュルテンベルク ゲマインニュッツィゲ シュティフトゥング
(74)【代理人】
【識別番号】100095957
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 美明
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100128587
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 一騎
(72)【発明者】
【氏名】シュテルン ライナー
(72)【発明者】
【氏名】カスパー ミヒャエル
【審査官】
太田 一平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−149911(JP,A)
【文献】
特開2000−208129(JP,A)
【文献】
特開2003−308833(JP,A)
【文献】
特開2002−279964(JP,A)
【文献】
特開2002−246009(JP,A)
【文献】
特開平11−149914(JP,A)
【文献】
特開2003−068278(JP,A)
【文献】
特開昭39−028623(JP,A)
【文献】
特開2002−216740(JP,A)
【文献】
特開2010−034009(JP,A)
【文献】
特開2005−340228(JP,A)
【文献】
特開2002−343342(JP,A)
【文献】
特開平11−167916(JP,A)
【文献】
特開平11−007939(JP,A)
【文献】
特開平10−255772(JP,A)
【文献】
特開平10−064526(JP,A)
【文献】
特開平09−204911(JP,A)
【文献】
特開平08−255611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00 − 4/62
H01M 4/64
H01M 4/70
H01M 2/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電基板(60)と、
前記集電基板(60)上に設けられた、バインダー、カーボンブラック、黒鉛を含むインク塗膜(70)と、
前記集電基板(60)の前記インク塗膜(70)によって被覆された被覆領域の内部に突出し、且つ、前記集電基板(60)の端部に形成された、前記集電基板(60)の表面が露出されているアレスタ(arrester)領域(40)と、
前記アレスタ領域(40)の位置に対応するような位置に設けられ、前記被覆領域の内部に向かって突出する切欠き形状を有する切り取り領域(80)と、
を備え、
前記アレスタ領域(40)における前記集電基板(60)の表面は、前記被覆領域における前記インク塗膜(70)の下の前記集電基板(60)の表面に比べて低い位置にある、
バッテリー電極。
【請求項2】
前記アレスタ領域(40)の外周の少なくとも半分は、前記インク塗膜(70)に隣接する、請求項1に記載のバッテリー電極。
【請求項3】
前記アレスタ領域(40)は、長方形、三角形、円形、環状の形、又はその一部を有する、請求項1又は2に記載のバッテリー電極。
【請求項4】
前記インク塗膜(70)、及び/又は、前記アレスタ領域(40)は、前記集電基板(60)の両面に形成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のバッテリー電極。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のバッテリー電極を少なくとも一つ含む、バッテリー。
【請求項6】
集電基板(60)上で、バインダー、カーボンブラック、黒鉛及び溶剤からなる材料を乾燥、硬化することにより、インク塗膜(70)を形成するステップと、
前記集電基板(60)の端部において、前記インク塗膜(70)及び前記集電基板(60)の表面側の薄層を除去して、前記集電基板(60)の前記インク塗膜(70)によって被覆された被覆領域の内部に突出するアレスタ領域(40)を形成するステップと、
前記アレスタ領域(40)の位置に対応するような位置において、前記集電基板(60)および前記インク塗膜(70)を切り取ることにより、前記集電基板(60)の前記被覆領域の内部に突出する切欠き形状を有する切り取り領域(80)を形成するステップと、
を含む、バッテリー電極を製造する方法。
【請求項7】
前記アレスタ領域(40)の外周の少なくとも半分が前記インク塗膜(70)によって囲まれるように、前記アレスタ領域が形成される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記インク塗膜(70)を前記集電基板(60)の両面に形成する、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記インク塗膜(70)は、レーザーアブレーションによって除去される、請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記切り取り領域(80)は、レーザー切断によって形成される、請求項6〜9のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリー電極、及びバッテリー電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、バッテリーは、充電不可能な一次電池と、充電可能な二次電池(充電バッテリーとも呼ばれる)を示す。バッテリーは、基礎化学の酸化還元反応、原料、電気的な価値(例えば、電圧や電気容量)、又は幾何学的、構造上の配置に基づいて、分類される。一例は、アルカリマンガン電池、亜鉛炭素電池、リチウム電池を含む。巻回電池と積層電池の間の内部構造に依存した差異も、示されている。巻回電池の場合には、上下に配置された電極及びセパレータの層は螺旋状に巻き上げられ、例えば円筒ハウジングを備える円形電池に取り付けられている。一方で、積層電池の場合には、多数の電極及びセパレータの層が上下に交互に積層されている。
【0003】
図1は、一例として、積層されたバッテリーを示す。
図1に示すように、陽極10及び陰極20は、バッテリーに交互に設けられている。セパレータ30は、物理的及び電気的に二つの電極を分離させるために、陽極10と陰極20の間に各表面に設けられている。
【0004】
しかし、セパレータ30は、蓄積された化学エネルギーを電気エネルギーに変換するイオンを透過させなければならない。ガラス繊維やポリエチレンで構成される微小孔性の樹脂や不織布は、通常セパレータ30に利用される。陽極10は、陰極20と同様にアレスタ領域40で互いに連結され、その結果、同じ種類の全ての電極が相互接続されている。陰極20及び陽極10の連結つまみ50(
図2B参照)は、アレスタ領域40上に取り付けられている。前記連結つまみは、バッテリーの対応する外部電圧ポール(outer voltage pole)と接続されている。
【0005】
図2Aは、アレスタ領域40を備える陰極20の平面図を示す。陰極20は、上下に配置された陰極20のアレスタ領域40で互いに連結されている。
図2Bに示すように、連結つまみ50は、互いに連結されているアレスタ領域40上に取り付けられている。前記連結つまみは、バッテリーが組み立てられた後にバッテリーの陰極と連結される。
【0006】
バッテリー電極は、通常バルクとして作成され、又はバッテリーの製造時好適な電極形状に切り取られた材料によって巻かれている。
図3に示すように、電極材料は、塗膜70を備える集電基板60を包含する。かかる場合に、電極材料は、外部に電圧や電流を放電するために、後の組立段階で必要とされる一つ又は二つ以上の被覆されていないアレスタ領域40を有する。多数の同じ種類の電極は、金属連結つまみ50が取り付けられているアレスタ領域40で互いに接続されている。集電基板60が両面で被覆されている場合に、アレスタ領域40も両面に形成されている。かかる場合に、アレスタ領域は、必ずしも互いに逆に形成される必要は無く、
図3に示すように相互の関連でオフセットされうる。
【0007】
図4A及び
図4Bは、スロット・ダイス・システム(slot die system)300による電極材料の製造方法を示す。インクのような塗膜70が帯状のような集電基板60に塗られている。この塗布プロセスは、不連続の断続的な塗布、すなわち、
図4Aに示すように規則正しく中断する塗布、又は
図4Bに示すように連続塗布によって実行される。しかし、これらの方法を用いて比較的複雑なアレスタ領域を形成することは、とても面倒である。従って、マスクをするステップが、通常用いられる。別の方法として、アレスタ領域40は、ブラッシング又は同様な方法で集電基板60上に露出されうる。
【0008】
塗布後、塗膜を圧縮し、塗膜70を乾燥させる時に生成された空洞を取り除くために、電極材料は艶出しされる。終了した電極材料は、それから巻き上げられ、更なる処理まで保管されうる。バッテリーの種類やバッテリーの形によって異なる好適な形は、バッテリーを製造するために、電極材料から切り取られ、又は打ち抜かれる。電極材料が切り取られた時には、アレスタ領域40が存在することを確保することがさらに必要である。アレスタ領域40を有する長方形の電極形状の例が、
図2Aに示されている。
【0009】
図5は、巻回電池や積層電池用のバッテリーの製造プロセスを説明するために用いるフローチャートを示す。最初に、集電基板60は、例えば間欠法を用いて、塗膜70で被覆される(S10)。ここで、多数の被覆されていないアレスタ領域40が、インクのような膜を塗る時に中断又は停止することで形成される。次に、電極材料は、艶出しされる(S20)。次に、好適な電極形状が、電極材料から切り取られ、又は打ち抜かれる(S30)。ここで、打ち抜かれた形状は、アレスタ領域40を有しなければならない。これらのステップは、陽極10を製造する時と陰極20を製造する時に実行される。次に、打ち抜かれた電極は、間にセパレータ30を有する陽極10及び陰極20が交互に連続的に配置されるように(
図1参照)、上下に配置される(S40)。この場合、陰極20のアレスタ領域40、及び陽極10のアレスタ領域40は、各面に上下に配置され、互いに接続されている。次に、連結つまみ50が、アレスタ領域上に取り付けられる(S50)。この場合、上下に配置された陽極10及び陰極20の数は、バッテリーの種類や特性に依存して変化しうる。電極の配置が完了した後、前記電極はハウジングに挿入され、連結つまみ50はハウジングの外部電圧ポール(outer voltage poles)に接続される(S60)。巻回電池の場合には、電極配置も螺旋状に巻き上げられ、この状態でハウジングに挿入される。電解液が導入された後(S70)、電池はシールされ(S80)、最後に成形される(S90)。
【0010】
しかし、従来のバッテリー電極の製造方法においては、次の問題に直面する。例えば、マスキングのステップやコーティングをブラシで払うことによる被覆されていないアレスタ領域の生成は、とても複雑で高価である。スロット・ダイス・システムを用いて間欠的、又は連続的な塗布による代わりの製造方法では、電極材料の可能な形状、及び配置は、非常に制限される。バッテリーの様々な分野、特に携帯電話、ラップトップ、又は自動車等の設計製品での使用を考慮すると、バッテリー電極の構造の面での柔軟性が次第に要求されている。この場合、比較的小さいデバイスへの傾向が、特にバッテリー製造の難題をもたらす。第1に、比較的小さい寸法のバッテリーが開発され、第2に、できるだけデバイスの内部を最も効率的に利用するために複雑な形状がしばしば要求されている。さらに、間欠的な塗布法では、塗布領域とアレスタ領域との間に、規則的できれいなエッジ領域を生成することは困難である。
【0011】
また、従来の方法で電極の様々な形状を実現することは、困難でかつ高価である。コストの理由で、巻回材料が電極材料として通常用いられ、前記巻回材料で塗膜70に対してアレスタ領域40が可能な位置は固定されている。しかし、結果として、電極形状の設計の自由度は、電極の各々がアレスタ領域40を有する必要があるため、厳しく制限されている。加えて、アレスタ領域40と一緒に好適な電極形状が切り取られたときに、多量の廃棄される過剰電極材料が生成される。例えば、アレスタ領域40を含むように小さい電極が切り取られても、連続するアレスタ領域40の間に位置する被覆基板の領域は、前記連続するアレスタ領域の間に長い距離がある場合には、もはや利用できない。結果として、材料の消費は増加し、製造方法はより費用がかかる。また、好適形状を切り抜くための専用のスタンピング・ダイス(stamping die)が、好適な電極形状毎に作られなければならない。しかし、これらのスタンピング・ダイスは、切削品質に対する高需要が理由で、とても高価である。
【0012】
従来の製造方法で、連結つまみ50を前記アレスタ領域に取り付け、互いに同じ種類の電極を接続させるために、アレスタ領域40は予め被覆電極領域によって形成されている。しかし、これは、動的な電極材料が満たされないバッテリーの未使用空間を発生させる。結果として、バッテリーのサイズは、不必要に増加し、及び/又はバッテリーの外形が一定となる。
【0013】
さらに、従来の製造方法で、あるいは保管中に、アレスタ領域40は容易に汚染されうる。特に艶出しプロセスの場合に、不純物がアレスタ領域40に付着しうる。これは、同じ種類の電極間や、電極と関連した連結つまみ50との間の電気接続の品質に、悪影響を及ぼす。加えて、アレスタ領域40は電極材料の製造時の艶出しプロセスの前に形成されるので、艶出しは、不均一な厚肉構造のため、より困難である。また、従来方法で形成されているアレスタ領域40は、はっきりとしていない。特に、アレスタ領域40のエッジ領域は、不適切かつ不均一に形成されうる。
【発明の概要】
【0014】
そのため、本発明の目的は、低製造コストのコンパクトなバッテリー電極の構成によって容積エネルギー密度が増加するバッテリー電極、及びバッテリー電極の製造方法を特定することにある。
【0015】
前記目的は、独立項の特徴によって達成られる。
【0016】
本発明は、アレスタ領域が、集電基板の被覆領域の内部に突出し、または被覆領域内に設けられるように、アレスタ領域として機能する被覆されていない領域を、バッテリー電極の集電基板に配置するアイディアに基づいている。前記被覆されていないアレスタ領域が被覆領域の内部に突出する場合に、被覆領域全体の円周長さは、突出する(protruding)アレスタ領域を有するバッテリー電極の場合よりも大きい。同時に、被覆されていない領域の外部エッジ、すなわちバッテリー電極のエッジに隣接するエッジが、最小化される。このようにして、バッテリー電極から突出するアレスタ領域によって生じるバッテリーの利用されない空間が、避けられ、またバッテリーの容量を一定に維持した状態でエネルギー密度が増加する。
【0017】
本発明の一つの観点は、集電電極と、集電電極上に形成された塗膜と、アレスタ領域とを備え、アレスタ領域の大部分が塗膜で覆われているバッテリー電極を特定する。アレスタ領域は、バッテリー電極の外部エッジと一致する円周領域を有しうる。しかし、アレスタ領域は、主にバッテリー電極の塗膜によって覆われている活性領域(active region)に隣接する、すなわちアレスタ領域は塗膜によって外部円周の少なくとも半分以上が囲まれている。代わりに、アレスタ領域は、集電基板の被覆領域内に完全に位置しうる。この結果、アレスタ領域は、外周の大部分において塗膜に隣接する。このようにして、バッテリーが組み立てられたとき、非活性領域、又は死容積は減る。この結果、同一のバッテリーサイズと仮定すると、容量、及びエネルギー密度が、増加する。
【0018】
一実施形態では、アレスタ領域は、例えば、実質的に円形、環状の形、長方形、三角形のような任意の形状で、バッテリー電極に形成されている。アレスタ領域とバッテリー電極が長方形の形状を有する場合には、アレスタ領域はバッテリー電極の隅に配置されうる。その結果、アレスタ領域の二つの側が塗膜に隣接する。代わりに、アレスタ領域は、一つの側のみによって、バッテリー電極の外部エッジに隣接しうる。その結果、アレスタ領域の3つの側が、バッテリー電極の被覆領域によって覆われる。
【0019】
バッテリー電極の活性領域を増加させるために、塗膜は集電基板の両面に形成されていることが好ましい。この場合、少なくとも一つのアレスタ領域が、集電基板の両面に形成されうる。アレスタ領域が集電基板の両面にそれぞれ形成されている場合には、二つのアレスタ領域は、互いに反対に位置することが望ましい。その結果、同じ種類のバッテリー電極は、例えば溶接した接点によって、アレスタ領域で互いに容易に連結されうる。代わりに、アレスタ領域は、集電基板の両面で相互の関連でオフセットして配置されても良い。
【0020】
好ましい実施形態では、アレスタ領域が、塗膜のレーザーアブレーションによって形成される。その結果、アレスタ領域の真下に位置する集電電極が、露出する。このようにして、塗膜は、アレスタ領域を開放させずに、広い表面領域で集電基板に連続的に形成されうる。また、塗膜は、集電基板の片面又は両面に大部分の領域に形成される。その結果、集電基板は、均一の厚さを有する。被覆された集電基板の均一な厚みのため、艶出しプロセスは、さらに簡易化し、また良い品質で実施されうる。また、アレスタ領域は、当該アレスタ領域との接点が形成される直前に形成されうる。その結果、新しく清潔な表面が、接点形成に利用される。従って、製造後のバッテリーに深刻なダメージを与え、短絡を生じさせる樹状突起の形成を生じさせる、例えばブラッシングの時に生成される研磨粒子、又は塗布残留物等の不純物の発生が避けられる。アレスタ領域を露出するためにレーザーを用いるため、アレスタ領域も、任意の好適な形状で、清潔で整ったエッジを有する任意の好適位置に、被覆集電基板に形成される。これは、設計の完全な自由と、表面領域で最適化されたアレスタ構造の生成の選択をもたらす。バッテリー電極の外形は、さらにレーザーを用いて切り取られる。これは、追加の道具、及び/又は追加の動作ステップ、特に高価なスタンピング・ダイスを省く。結果として、少量でも費用効率の良い方法で任意の電極形状を製造できる。従って、処理される電極材料、又は省かれる道具の変更の結果、二つの異なる動作ステップが、一つのレーザーの利用に合わせて大幅に省かれて実行される。
【0021】
また、少なくとも一つの切り抜きが、バッテリー電極に形成されうる。電極の切り抜きは、交互の電極配置の場合には、上下に配置された同じ種類の電極のアレスタ領域が、他の電極を介して互いに接続できるように、異なる種類の電極に形成されたアレスタ領域に対応することが望ましい。これは、例えば、電極のアレスタ領域が、被覆電極の領域の内側に突出し、または前記被覆電極の領域によって完全に囲まれた場合に、利点がある。バッテリー電極がレーザー切断によって切り抜かれる場合には、方法の順番を最適化するために、少なくとも一つの切り抜きは同様にレーザーを用いて切り抜かれる。
【0022】
カッティング、又はエッジングのレーザーシステム等の任意の好適なレーザーシステムは、レーザーアブレーションによって材料を除去することや、レーザ切断に利用できる。切削誘導、及び侵入深さの点での高エッジ品質及び切削精度のため、高品質のアレスタ領域が生成されうる。さらに、超短レーザーパルスを利用するため、入力エネルギーが減少される。その結果、電極材料の熱負荷も低く維持される。好適なレーザーシステムは、コストの面でスロット・ダイス・システムに匹敵するので、高い購入コストは負担されない。
【0023】
本発明の別の観点は、上述した実施形態の一つに係る少なくとも一つのバッテリー電極を含むバッテリーを特定する。大部分が塗膜によって囲まれ、比較的低い空間要求を有するアレスタ領域を形成することで、バッテリー電極が比較的コンパクトに設計されるので、バッテリーの容積エネルギー密度が増加する。
【0024】
本発明の別の観点は、塗膜が集電基板上に塗られるバッテリー電極の製造方法を特定する。塗膜によってアレスタ領域の外周の大部分が囲まれるように、又はアレスタ領域の少なくとも半分が囲まれるように、塗膜はアレスタ領域で除去される。アレスタ領域が塗膜を除去して形成されるので、実質的に完全に被覆された集電基板は、特段の予防措置が不要な電極材料として蓄えられ、またアレスタ領域は接点が当該アレスタ領域に形成される直前のみに形成されうる。このようにして、表面における不純物や化学変化が避けられ、アレスタ領域での接触抵抗が低下する。さらに、この方法において、塗膜は、集電基板の大部分の表面、及び/又は表面全体の実質的に完全に形成されうる。塗膜は、集電基板の両面に形成可能である。ドクターブレード、コンマバー(comma bar)、キスコーティング(kiss coating)等の連続塗布方法が、有効に利用される。その結果、製造コストが減少する。また、艶出し工程が単純化・改善される結果として、被覆された集電基板は均一の厚さを有する。
【0025】
好ましい実施形態では、アレスタ領域の塗膜は、レーザーを用いて除去されている。この場合、アレスタ領域の表面状態を改良するために、好ましい実施形態で同時に集電基板の薄膜がアレスタ領域で除去されうる。アレスタ領域を形成するためのレーザーアブレーションの利用は、バッテリー電極及びアレスタ領域の構成における設計の自由度を高め、個々の製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、従来のバッテリーの電極配置の概略断面図を示す。
【
図5】
図5は、従来のバッテリー製造方法のフローチャートを示す。
【
図6】
図6は、本発明の第1の実施形態に係るバッテリー電極を示す。
【
図7】
図7は、本発明の他の実施形態に係るバッテリー電極を示す。
【
図8】
図8は、本発明の他の実施形態に係るバッテリー電極を示す。
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態に係る製造方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、高エネルギー密度、及び熱安定性を有するリチウムイオンバッテリーを例に挙げて以下に説明される。しかし、本発明は、リチウムイオンバッテリーに限定されるものでは無く、他の好適なバッテリーに適用されうる。
【0028】
リチウムイオンバッテリーにおいて、陽極10の集電基板60は、例えば黒鉛、カーボンブラック、及び溶媒を含む塗膜70で被覆されている銅で構成される。本発明によれば、アレスタ領域40の塗膜70が除去され、その結果、アレスタ領域40の集電基板60は露出される。例えばニッケルを含む連結つまみ50は、陽極10のアレスタ領域40に取り付けられうる。陰極20の場合には、集電基板60は、例えばアルミニウムを含み、酸化還元反応を寄与する活性材料である、バインダー、カーボンブラック、黒鉛、及び溶剤を含む塗膜70で被覆されている。陰極の連結つまみは、好ましくは、アルミニウム等を含む。
【0029】
図6は、アレスタ領域40が、外周で、集電基板60上の塗膜70に主に隣接する本発明に係るバッテリー電極を示す。陽極10と陰極の両方は、内側のアレスタ領域40、及び切り抜き80を有する。切り抜き80は、組立時に異なる種類の各電極のアレスタ領域40に対応する位置に形成される。陽極10の切り抜き80は、電極の組立時に陽極10のアレスタ領域40の上又は下に位置するように、配置される。
図6の矢印は、組立時の電極配置を示し、陽極10及び陰極20のいずれも、上下に交互に配置されている。この場合、セパレータ30(不図示)は、陽極10と陰極20の間に配置されている。前記セパレータは、微光フィルム又は不織布を含むことができる。連結つまみ50は、電極の組立前に、それぞれ、陽極10の少なくとも一つのアレスタ領域上、及び陰極20の少なくとも一つのアレスタ領域上に取り付けられうる。しかし、連結つまみ50は、電極の組立後に、例えば超音波溶接によって、アレスタ領域40上に取り付けられることが望ましい。この実施形態では、電極のアレスタ領域40が、異なる種類の電極において切り抜き80の反対に位置しているので、陽極10、及び陰極20は、それぞれアレスタ領域40で同時に互いに電気的に接続できる。
【0030】
内部アレスタ領域、又は内側に突出するアレスタ領域を有する陰極のみ、又は陽極のみ形成することも可能である。二つの電極のうちの他方は、隆起型のアレスタ領域を有する従来の方法に従って形成される。
【0031】
図7は、本発明に係るバッテリー電極の別の実施形態を示す。
図7に示す陽極10が、中央に円形の切り抜き80を有する一方で、陰極20は、中央に対応するアレスタ領域40を有する。陽極10のアレスタ領域40は、外周エッジに形成されており、その結果、陰極20は、この位置に切り抜き80を有する。上述したように、同じ種類の電極のアレスタ領域40は互いに接続され、連結つまみ50は、陽極10及び陰極20のアレスタ領域40にそれぞれ取り付けられている。
【0032】
図8は、本発明に係るバッテリー電極の別の例を示す。この実施形態では、アレスタ領域40は、塗膜70によって完全に囲まれている。この場合、陽極10は、二つのアレスタ領域40a、40bを有し、陰極20は、二つの対応する切り抜き80a、80bを有する。この場合、一つの連結つまみ50は、陽極10の二つのアレスタ領域40a、40bのそれぞれに取り付けられる。一つの電極に複数のアレスタ領域を形成することは、電圧消失を改善し、抵抗を減らすことにつながる。
【0033】
バッテリー電極の製造方法の一例を以下に説明する。本発明によれば、集電基板60は、
図9Aに示すように、最初に、大部分の表面領域と両面に塗膜70で被覆される。しかし、集電基板60は、大部分の表面領域、又は実質的に一方の面のみに被覆されても良い。塗膜70は、液体状態で集電基板60に塗られる。ドクターブレード、コンマバー、又はキスコーティング等の簡素な連続塗布技術が、この場合利用されても良い。次に、塗膜70は乾燥され、又は硬化される。乾燥状態の塗膜70の厚みは、例えば約25μmである。塗膜70が乾燥、又は硬化された後に、被覆された集電基板60は、塗膜70を圧縮するために艶出しされる。集電基板60の均一厚さのため、艶出し工程は簡易化され、より効率的に実行される。その結果、電極材料の品質が改良される。また、被覆された集電基板60は、巻回材料として保管され、後続の工程の電極材料として利用される。
【0034】
図9Bに示すように、次に、アレスタ領域40の塗膜70がレーザーアブレーションによって除去され、真下に位置する集電基板60が露出することで、少なくとも一つのアレスタ領域40が、被覆された集電基板60に形成される。しかし、これは、アレスタ領域40の形成プロセスの一例に過ぎない。代わりに、アレスタ領域40は、ブラッシング、リソグラフィー、及び他の方法で形成されうる。レーザーアブレーションの場合には、材料が、レーザーアブレーションの作用を受けることで、表面から除去される。一例として、高エネルギー密度を有するパルスレーザーアブレーションが、この目的に利用される。熱伝導によって体積へエネルギーが非常に遅く輸送されるので、照射エネルギーは表面の非常に薄い層に集中する。結果として、表面は非常に熱せられ、材料は、突然蒸着又は溶融される。レーザー光の十分な吸収を確保するために、レーザー光線の波長は、除去される材料の機能に応じて選択される。波長が1070nmであるイッテルビウムファイバーレーザーを有するエッチング、又は切断レーザーシステムが、利用されるのが望ましい。しかし、他の気体、固体、又はファイバーレーザーも、利用されうる。レーザー処理過程の間、除去された材料を切り口から排除し、又は表面での望まれない化学反応を防ぐために、プロセスガス又は放射ガスも表面に導かれうる。プロセスガスは、レーザー加工の間電極材料を冷やすために、好ましくは低温である。材料が蒸着又は溶融されて、害の無い不純物が発生される。
【0035】
アレスタ領域40がレーザーアブレーションによって生成されるので、好ましいアレスタ形状、及びアレスタ配置が形成される。特に、アレスタ領域40は、バッテリー電極から突出しないように、基板表面に配列される。結果として、同じ電気特性と仮定すると、エネルギー密度/体積の比は増加し、バッテリーのサイズも減少する。同じ種類の電極が接続され、又は連結つまみ50がアレスタ領域40に取り付けられる直前に、アレスタ領域40が形成されることが望ましい。一例として、アレスタ領域40での溶接接触により、上下に配置された同じ種類の電極は互いに接続されうる。かかる場合に、連結つまみ50は、同時にアレスタ領域40の一つに取り付けられる。アレスタ領域40は電極材料が更に処理される少し前に形成されるので、新しく、きれいな表面が、同じ種類の電極間での接点設置、連結つまみ50の取り付けに利用できる。結果として、酸化表面、及び不純物等のアレスタ領域40の保護層が避けられる。
【0036】
アレスタ領域40の塗膜70だけでなく、
図9Cに示すように、集電基板60の薄層も、レーザーによって除去することが可能である。高レベルの切断精度を有するレーザーシステムによって、レーザーの侵入深さが正確に制御される。その結果、材料除去の深さは、要求通りに選択される。従って、アレスタ領域40の集電基板60は、ターゲットとされた方法で薄くなりうる。また、電気接触のための表面状態は、結果として改良される。
【0037】
図10は、本発明に係るバッテリーの製造方法のフローチャートを示す。最初に、インクのような塗膜70が、約8〜20μmの厚さの金属片を有する集電基板60の広い表面、又は実質全体に塗られる(S100)。乾燥状態で約25μmの厚みの塗膜70が乾燥又は硬化された後、乾燥の際に生成される空洞や凹凸を塗膜70から取り除くために、均一に皮膜された集電基板60が艶出しされる(S200)。艶出しされ被覆された集電基板60は、更に処理される迄、巻回材料として保管される。バッテリー電極を仕上げるために、被覆された集電基板60のアレスタ領域40の塗膜70は、レーザーアブレーションによって除去される(S300)。電気接触の表面品質を改善するために、アレスタ領域40の集電基板60の薄層が追加で除去されうる。次のステップS400で、電極、及び切り取り80は、被覆された集電基板60から好適な形状に切り取られる。電極、又は切り取り80は、レーザーによって切り取られることが望ましいが、代わりに、切り抜く装置が利用されても良い。ステップS400とS300の順序は、逆転しても良い。次に、陽極10及び陰極20は、同じ種類の電極のアレスタ領域40が互いに逆に位置するように、交互に上下に配置される。陰極20の切り取り80が、逆に、陽極10のアレスタ領域40間に配置される。次に、同じ種類の電極のアレスタ領域40は、例えば超音波溶接によって互いに接続され、一つの連結つまみ50はアレスタ領域に取り付けられる(S500)。代わりに、連結つまみ50は、電極の組立前に、陰極20又は陽極10の一つに取り付けられても良い。
【0038】
その後のステップは、バッテリーの従来の製造方法に対応する。電極配置は容器に挿入され、連結つまみ50はバッテリーの外部電圧ポールに接続される(S60)。次に、電解液が導入され(S70)、電池がシールされる(S80)。最後に、成形が実行される(S90)。
【0039】
本発明によれば、アレスタ領域は、バッテリー電極の外周から突出せず、むしろバッテリー電極の被覆領域の内部に突出するように、形成される。結果として、同じバッテリーサイズと仮定すると、高容量、及び高エネルギー密度が達成される。