(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
− 極性非プロトン性有機溶媒並びにパーフルオロヘキサン、パーフルオロオクタン、ヘキサフルオロベンゼン、ヒドロフルオロエーテル及びヒドロフルオロポリエーテルの群から選択される非極性有機溶媒から選択される、少なくとも1種の非プロトン性有機溶媒と、
− 前記少なくとも1種の非プロトン性有機溶媒中に溶解または分散された少なくとも1種のフッ素化イオン交換ポリマーであって、前記フッ素化イオン交換ポリマーは、式CF2=CClY(式中、Yは、FまたはClのいずれかである)のクロロフルオロオレフィンに由来する40から94モル%の繰り返し単位、および式CF2=CF−O(CF2CF(CF3)O)m−(CF2)nSO2X[式中、mは、0または1に等しい整数であり、nは、0から10の整数であり、Xは、ハロゲン(Cl、F、Br、I)、−O−M+(ここで、M+は、H+、NH4+、K+、Li+、Na+、またはそれらの混合物から選択されるカチオンである)から選択される]の少なくとも1種の官能性モノマーに由来する6から60モル%の繰り返し単位からなるフッ素化イオン交換ポリマーと
を含む、液体組成物。
【背景技術】
【0003】
フッ素化イオン交換ポリマーの液体組成物は、イオン交換膜の製造における使用について、導電性および非導電性粒子を含有する膜コーティングについて、および多くの他の用途について知られている。このような組成物は、溶液と呼ばれることもあるが、この組成物は、一般にポリマー粒子の分散液(すなわち、コロイド懸濁液)であると認められている。
【0004】
(特許文献1)(DU PONT DE NEMOURS)(1972年8月23日)には、有機溶媒中にスルホネート基、スルホンアミド基またはスルホン酸基を含む(パー)フッ素化イオン交換ポリマーの溶液が開示されている。この(パー)フッ素化イオン交換ポリマーは、スルホネート基、スルホンアミド基またはスルホン酸基を有する、少なくとも14モル%のモノマー単位を含む。有機溶媒は、水に少なくとも5重量%可溶性であり、C
1〜C
4アルコール、フルオロカーボンアルコール、有機アミド、アセトンから選択され、好ましくは130℃未満の沸点を有する。アルコール以外の有機溶媒中の報告されたポリマーの濃度は、非常に低く、約1重量%である。
【0005】
(特許文献2)(DU PONT DE NEMOURS)(1984年12月21日)には、1025〜1500g/当量の範囲の当量を有する、−SO
3M官能基(ここで、Mは、H、Na、K、NR
4である)を有する(パー)フッ素化イオン交換ポリマーを、水系アルコール液体媒体中に溶解させるための方法が開示されている。好ましい媒体は、場合によって水に混和性の他の溶媒の存在下での、20〜90重量%の水と10〜80重量%のアルコール(C
1〜C
4)との混合物である。この方法は、密閉容器中180から300℃の温度で行われ、分離する異なる密度を有する2つの液相が得られる。
【0006】
(特許文献3)(AUSIMONT SPA)(2000年5月31日)には、0.1重量%〜50重量%の水、50重量%〜99重量%のC
1〜C
4アルコール、および少なくとも1個のフッ素化末端基において1個の水素原子を有する0.1重量%〜40重量%のフルオロ(ポリ)オキシアルキレンを含む単相三元混合物中に−SO
3M官能基(ここで、Mは、H、Li、Na、K、NR
4である)を含む(パー)フッ素化イオン交換ポリマーを含有する溶液および/または分散液を調製する方法が開示されている。この方法は、室温〜150℃の間からなる温度で行われる。
【0007】
これらの文献のすべてにおいて、アルコール系液相は、濃縮溶液の調製に用いられている。しかし、アルコール系液体組成物の使用は、一部の用途について望ましくない。例えば、(パー)フッ素化イオン交換ポリマーが、触媒含有電極の調製にバインダーとして用いられる場合、アルコールの残留痕跡は、副反応を起こし得、さらには火災の原因となるものに相当し得る。また、(パー)フッ素化イオン交換ポリマーのアルコール系液体組成物は、一般に、それらを、例えば、多孔質基材の含浸による、膜の調製において使用することを困難にさせる高粘度を特徴とする。
【0008】
フッ素化交換ポリマーを含むアルコール不含液体組成物、すなわち、1025〜1500g/当量の範囲の当量を有する最大10重量%までの(パー)フッ素化イオン交換ポリマーを含む水性液体組成物が、(特許文献2)(DUPONT DE NEMOURS)(1984年12月21日)に開示された。(特許文献4)(DU PONT DE NEMOURS)(2000年11月21日)にはまた、明確な固体粒径分布を有する0.5から50重量%の(パー)フッ素化イオン交換ポリマーとともに水性液体媒体または非水性液体媒体を含有する液体組成物であって、前記組成物は、水混和性アルコールを実質的に含まない液体組成物も開示されている。この水性液体組成物は、水の存在下で、または場合によって、水および方法の最後で液体組成物から分離する0.5から75重量%の水不混和性有機溶媒の存在下で、加圧容器中150〜350℃の間の温度における溶解方法によって得られる。非水性液体組成物は、イオン交換ポリマーの水性液体組成物を乾燥させることによって得られる固体の再分散によって得られる。
【0009】
水系液体組成物は、一般に、例えば、表面、特にフッ素化表面を湿らすそれらの能力低下によって、例えば、多孔性支持体のコーティングまたは含浸による複合膜の調製に適さない。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第1の目的は、少なくとも1種の非プロトン性有機溶媒と、
− 式CF
2=CClY(式中、Yは、FまたはClのいずれかである)のクロロフルオロオレフィンに由来する40から94モル%の繰り返した単位、および
− 式CF
2=CF−O−(CF
2CF(CF
3)O)
m−(CF
2)
nSO
2X[式中、mは、0または1に等しい整数であり、nは、0から10の整数であり、Xは、ハロゲン(Cl、F、Br、I)、−O
−M
+(ここで、M
+は、H
+、NH
4+、K
+、Li
+、Na
+、またはそれらの混合物から選択されるカチオンである)から選択される]の少なくとも1種の官能性モノマーに由来する6から60モル%の繰り返し単位
からなる少なくとも1種のフッ素化イオン交換ポリマーとを含む、液体組成物である。
【0019】
フッ素化されたという用語は、クロロフルオロオレフィンに由来する単位において、水素原子をまったく含まない、すなわち、水素原子のすべてが、フッ素原子および/または塩素原子で置き換えられた化合物(例えば、モノマー、ポリマーなど)を指すために本明細書で使用される。
【0020】
一般に、液体組成物は、フッ素化イオン交換ポリマーを、液体組成物の全重量に対して、少なくとも5重量%の量で含有する。典型的には、液体組成物中のフッ素化イオン交換ポリマーの量は、液体組成物の全重量に対して、少なくとも6重量%、好ましくは少なくとも8重量%、より好ましくは少なくとも10重量%、さらにより好ましくは少なくとも12重量%である。典型的には、液体組成物中のフッ素化イオン交換ポリマーの量は、液体組成物の全重量に対して、60重量%を超えない、好ましくは、それは50重量%を超えない、より好ましくは、それは45重量%を超えない。組成物中のフッ素化イオン交換ポリマーの量が、60重量%を超える場合、組成物の粘度は、一般に高すぎて、例えば、キャスティング、コーティングまたは含浸法によって、膜を調製することができない。他方で、組成物中のフッ素化イオン交換ポリマーの量が、5重量%未満である場合、所与の基材上に堆積されるポリマーの量は、一般に低すぎて、均一な厚さの連続膜を与えることができない。このような場合、多数の順次堆積工程、例えば、コーティング、キャスティングまたは含浸が、所望の厚さの膜を得るために必要とされ得る。
【0021】
液体組成物は、溶解または分散形態下でフッ素化イオン交換ポリマーを含む。「溶解形態」という用語は、フッ素化イオン交換ポリマーの「真の」溶液を意味することが意図される。「分散形態」という表現は、フッ素化イオン交換ポリマーのコロイド懸濁液であって、それにより一般に500nm未満の平均粒径のフッ素化イオン交換ポリマーの粒子が、かき乱されない状態で放置されたときに、沈降現象なしに安定に懸濁されるコロイド懸濁液を意味することが本明細書により意図される。
【0022】
分散形態の場合、フッ素化イオン交換ポリマーは、有利には1から500nm、好ましくは1から250nm、さらにより好ましくは1から100nmの平均粒径を有する。
【0023】
第1の実施形態において、液体組成物は、官能基−SO
2Xをそれらの酸または塩形成形態で有する、すなわち、X=O
−M
+であり、M
+が、H
+、NH
4+、K
+、Li
+、Na
+、またはその混合物から選択されるカチオンである、官能基−SO
2Xを有する、フッ素化イオン交換ポリマーを含む。好ましくは、M
+は、H
+、NH
4+、K
+、Na
+から選択されるカチオンである。より好ましくは、液体組成物は、それらの酸形態における、すなわち、X=O
−M
+であり、M
+はH
+である、官能基−SO
2Xを有する、フッ素化イオン交換ポリマーを含む。前記液体組成物は、それらが、追加の活性化工程がまったくなしで、燃料電池で直接使用され得るプロトン交換膜の調製を可能にするので特に有利である。「酸形態」および/または「塩形成形態」という表現は、ポリマー中のイオン交換基の実質的にすべてが、プロトン化される(M
+=H
+)および/または中性化される(M
+=NH
4+、K
+、Li
+、Na
+)ことを示すことが意味される。
【0024】
第2の実施形態において、液体組成物は、官能基−SO
2Xをそれらの中性形態で有する、すなわち、XがハロゲンF、Cl、Br、Iから選択される、官能基−SO
2Xを有するフッ素化イオン交換ポリマーを含む。好ましくは、液体組成物は、X=Fである官能基−SO
2Xを有するフッ素化イオン交換ポリマーを含む。
【0025】
フッ素化イオン交換ポリマーに加えて、液体組成物は、非プロトン性有機溶媒をさらに含む。「非プロトン性有機溶媒」という表現は、酸性水素原子を含まない有機溶媒を意味することが意図される。本文の残りにおいて、この表現は、本発明の目的のために、2種以上の非プロトン性有機溶媒が、任意の一度で用いられ得るという点において、単数形および複数形の両方において理解される。
【0026】
非プロトン有機溶媒は、非極性かまたは極性のいずれかであり得る。極性と非極性の非プロトン性有機溶媒の混合物も、用いることができる。
【0027】
非プロトン有機溶媒は好ましくは、少なくとも50℃の、好ましくは少なくとも60℃の沸騰温度を有するものから選択される。
【0028】
非極性非プロトン性有機溶媒を含む液体組成物は、フッ素化イオン交換ポリマーが官能基−SO
2Xをそれらの中性形態で含む場合、すなわち、Xがハロゲン(F、Cl、Br、I)から選択される場合、好ましくはX=Fである場合、有利に得ることができる。
【0029】
適切な非極性有機溶媒のうちで、特にフッ素化脂肪族および芳香族化合物、例えば、パーフルオロヘキサン、パーフルオロオクタン、ヘキサフルオロベンゼン、ヒドロフルオロエーテル(例えば、式C
3F
7OCH
3、C
4F
9OCH
3、C
4F
9OC
2H
5、C
7F
15OC
2H
5のもの)、ヒドロフルオロポリエーテル(例えば、H−GALDEN(登録商標)ZT60、H−GALDEN(登録商標)ZT85、H−GALDEN(登録商標)ZT100、H−GALDEN(登録商標)ZT130、H−GALDEN(登録商標)ZT150、H−GALDEN(登録商標)ZT180という商品名の下でSolvay Solexis S.p.A.から入手できるもの)を挙げることができる。
【0030】
極性有機溶媒を含む液体組成物は、有利には、フッ化イオン交換ポリマーが、官能基−SO
2Xを、それらの酸または塩形成形態で、すなわち、Xが−O
−M
+であり、M
+が、H
+、NH
4+、K
+、Li
+、Na
+、またはそれらの混合物から選択されるカチオンである場合に、含む場合に得ることができる。
【0031】
本発明の液体組成物に適した極性非プロトン性有機溶媒のうちで、特に、ケトン(アセトン、メチルエチルケトンのような)、エステル(酢酸メチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、酢酸エチルのような)、ニトリル(アセトニトリルのような)、スルホキシド(ジメチルスルホキシドのような)、アミド(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドのような)、ピロリドン(N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドンのような)を挙げることができる。
【0032】
好ましい極性非プロトン有機溶媒は、スルホキシド(ジメチルスルホキシドのような)、アミド(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドのような)、ピロリドン(N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドンのような)からなる群から選択される。場合によってケトンまたはニトリルの存在下で、ピロリドン(N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドンのような)の使用が有利である。
【0033】
典型的には、適切な極性有機溶媒は、150℃以上、好ましくは160℃以上の沸騰温度を有することを特徴とする。
【0034】
液体組成物は、さらなる成分を場合によって含んでもよい。非イオン性界面活性剤(TRITON(登録商標)界面活性剤、TERGITOL(登録商標)界面活性剤のような);および典型的にはフィルム形成性を有する熱可塑性フルオロポリマーを挙げることができる。液体組成物中でフッ素化イオン交換ポリマーと組み合わせて用いることができる熱可塑性フルオロポリマーのうちで、PFA、ETFE、PCTFE、PDVF、ECTFEなどを挙げることができる。
【0035】
本発明のある実施形態において、液体組成物は、フッ素化イオン交換ポリマーに加えて、ビスオレフィンおよびラジカル開始剤をさらに含む。適切なビスオレフィンの非限定的な例は、以下の式:
− R
1R
2C=CH−(CF
2)
j−CH=CR
3R
4(式中、jは、2〜10の間、好ましくは4〜8の間の整数であり、R
1、R
2、R
3、R
4は、互いに等しいかまたは異なっていて、−H、−FまたはC
1〜C
5アルキルもしくは(パー)フルオロアルキル基である):
− A
2C=CB−O−E−O−CB=A
2[式中、Aのそれぞれは、互いに等しいかまたは異なっていて、−F、−Cl、および−Hから独立して選択され;Bのそれぞれは、互いに等しいかまたは異なっていて、−F、−Cl、−Hおよび−OR
B(ここで、R
Bは、部分的、実質的または完全にフッ素化または塩素化され得る分岐鎖または直鎖のアルキル基である)から独立して選択され、;Eは、エーテル結合が挿入されていてもよい、場合によってフッ素化された、2から10個の炭素原子を有する二価の基であり;好ましくは、Eは−(CF
2)
z−基であり、zは、3から5の整数であり;好ましいビスオレフィンは、F
2C=CF−O−(CF
2)
5−O−CF=CF
2である];
− R
6R
7C=CR
5−E−O−CB=CA
2(式中、E、AおよびBは、上に定義されたのと同じ意味を有し;R
5、R
6、R
7は、互いに等しいかまたは異なっていて、−H、−FまたはC
1〜C
5アルキルもしくは(パー)フルオロアルキル基である)
のものから選択される。
【0036】
適切なラジカル開始剤の非限定的な例は、アゾ−化合物、例えば、2,2’−アゾ−ビス−イソブチロニトリル(AIBN)、アゾ−ビス−ジフェニルメタンおよびテトラゼン;有機および無機過酸化物(すなわち、ジアルキルおよびジアシルパーオキシド)およびヒドロパーオキシド(すなわち、tert−ブチルヒドロパーオキシド)である。最も一般的に用いられる過酸化物のうちで、ジアルキルパーオキシド(例えば、ジ−テルブチルパーオキシド、および2,5−ジメチル−2,5−ジ(テルブチルパーオキシ)ヘキサンのような);ジクミルパーオキシド;ジベンゾイルパーオキシド;ジテルブチルパーベンゾエート;ジ[1,3−ジメチル−3−(テルブチルパーオキシ)ブチル]カーボネートを挙げることができる。さらに、レドックス系、例えば、過酸化水素および可溶性鉄塩を含む組成物などを用いることができる。
【0037】
ビスオレフィンが用いられる場合、液体組成物は、典型的にはフッ素化イオン交換ポリマーの全量に対して、0.01モル%から5モル%のビスオレフィンを含む。ラジカル開始剤は、典型的には液体組成物中のフッ素化イオン交換ポリマーを引き合いに出して0.5重量%から6重量%の量で存在する。
【0038】
ビスオレフィンおよびラジカル開始剤を含む液体組成物は、有利には架橋膜の調製に用いられもよい。架橋は、典型的には熱処理またはUV照射によって促進される。
【0039】
本発明の液体組成物中で用いられるフッ素化イオン交換ポリマーは、
− 式CF
2=CClY(式中、Yは、FまたはClのいずれかである)のクロロフルオロオレフィンに由来する40から94モル%の繰り返し単位、および
− 式CF
2=CF−O−(CF
2CF(CF
3)O)
m−(CF
2)
nSO
2X[式中、mは、0または1に等しい整数であり、nは、0から10の整数であり、Xは、ハロゲン(Cl、F、Br、I)、−O
−M
+(ここで、M
+は、H
+、NH
4+、K
+、Li
+、Na
+、またはそれらの混合物から選択されるカチオンである)から選択される]の少なくとも1種の官能性モノマーに由来する6から60モル%の繰り返し単位
からなる。
【0040】
本文の残りにおいて、「フッ素化官能性モノマー」という表現は、本発明の目的のために、上に定義されたとおりの2種以上のフッ素化官能性モノマーが、任意の一度で用いられ得るという点で、単数形および複数形の両方において理解される。
【0041】
フッ素化イオン交換ポリマー中の式CF
2=CF−O−(CF
2CF(CF
3)O)
m−(CF
2)
nSO
2Xのフッ素化官能性モノマーに由来する繰り返し単位の量は、少なくとも6モル%であり、好ましくは少なくとも7モル%であり、より好ましくは少なくとも8モル%である。典型的には、フッ素化官能性モノマーに由来する繰り返し単位の量は、60モル%を超えず、好ましくは、それは55モル%を超えず、より好ましくは、それは50モル%を超えず、さらにより好ましくは、それは45モル%を超えない。
【0042】
フッ素化イオン交換ポリマー中のフッ素化官能性モノマーに由来する繰り返した単位の量が、少なくとも6モル%である場合、液体組成物が、低い温度かつ少ない溶解時間で、5重量%を超えるポリマー濃度を有して調製され得る。フッ素化官能性モノマーの量が増加すると、より高濃度の液体組成物が、温度および/または溶解プロセスの時間を増加させることなく調製され得ることが認められた。
【0043】
式CF
2=CClYのクロロフルオロオレフィンに由来する繰り返し単位の量は、好ましくはフッ素化官能性モノマーに由来する単位の量に対して100モル%に補完するものである。しかし、典型的には3モル%以下、より典型的には2モル%以下の少量の他のフッ素化エチレン性不飽和モノマー(例えば、C
3〜C
8パーフルオロオレフィン、パーフルオロアルキルビニルエーテル)が、本発明の範囲から逸脱することなく、本発明のフッ素化イオン交換ポリマー中に存在してもよい。
【0044】
クロロフルオロオレフィンは、好ましくはクロロトリフルオロエチレン(CTFE)である。
【0045】
式CF
2=CF−O−(CF
2CF(CF
3)O)
m−(CF
2)
nSO
2Xのフッ素化官能性モノマーにおいて、mが1に等しい場合、nは、0から10、好ましくは0から6の整数である。好ましくは、mが1に等しい場合、nは2に等しく、フッ素化官能性モノマーは、式CF
2=CF−O−(CF
2CF(CF
3)O)−(CF
2)
2SO
2X(パーフルオロ−2−(2−フルオロスルホニルエトキシ)プロピルビニルエーテル)を有する。
【0046】
mが0である場合、nは、0から10、好ましくは2から6、より好ましくは2から4の整数である。より好ましくは、mが0である場合、nは2であり、フッ素化官能性モノマーは、式CF
2=CF−O−(CF
2)
2SO
2Xのパーフルオロ−5−スルホニルフルオリド−3−オキサ−1−ペンテンである。
【0047】
本発明の好ましい実施形態において、フッ素化イオン交換ポリマーは、CTFEに由来する40モル%から94モル%、好ましくは50モル%から94モル%、さらにより好ましくは55モル%から92モル%の繰り返し単位、およびCF
2=CF−O−(CF
2)
nSO
2Xに由来する6モル%から60モル%、好ましくは6モル%から50モル%、より好ましくは8モル%から45モル%の繰り返し単位からなる。より好ましくは、フッ素化官能性モノマーは、CF
2=CF−O−(CF
2)
2SO
2Xである。6モル%から35モル%のCF
2=CF−O−(CF
2)
2SO
2Xに由来する繰り返し単位の量は、プロトン交換膜の調製にきわめて有利であることが見出された。
【0048】
フッ素化イオン交換ポリマーにおいて、Xは、好ましくはF、−O
−M
+(ここで、M
+は、H
+、NH
4+、K
+、Li
+、Na
+、またはそれらの混合物から選択されるカチオンである)から選択される。より好ましくは、Xは、F、−O
−M
+(ここで、M
+は、H
+、NH
4+、K
+、Na
+から選択されるカチオンである)から選択される。
【0049】
フッ素化イオン交換ポリマーは、クロロフルオロオレフィンとフッ素化官能性モノマーとをフリーラジカル開始剤の存在下で重合させることによって便利に調製され得る。典型的には、重合プロセスは、分散相中で行われる。このような重合プロセスにおいて、重合温度での水、界面活性剤および式CF
2=CF−O−(CF
2CF(CF
3)O)
m−(CF
2)
nSO
2X(式中、Xは、典型的にはハロゲン(F、Cl、Br、I)、好ましくはフッ素から選択される)を含有するエマルションの形成は、反応容器中に託され;クロロフルオロオレフィンが、前記エマルションに供給され、次いで、重合反応が、フリーラジカル開始剤を添加することによって開始され;クロロフルオロオレフィンは、典型的には重合プロセスの最後までの期間供給される。水性液相中に分散されたフッ素化イオン交換ポリマーを含む重合ラテックスが、工程の最後で得られる。フッ素化イオン交換ポリマーは、周知の技術、例えば、凍結融解凝固法を用いて前記重合ラテックスから回収され得る。
【0050】
次いで、凝固ポリマーは、慣用の後処理およびペレット化操作を施してもよい。例えば、ポリマーは、当技術分野で知られたとおりに、フッ素化処理を施して、不安定な鎖末端基を除去してもよい。
【0051】
フッ素化イオン交換ポリマーは、公知の方法に従って、重合プロセスから得られたポリマーを強塩基(例えば、NaOH、KOH)で処理することよって、その塩形成形態(ここで、Xは、−O
−M
+であり、M
+は、NH
4+、K
+、Li
+、Na
+、またはそれらの混合物から選択されるカチオンである)で得ることができる。
【0052】
フッ素化イオン交換ポリマーは、ポリマーの対応する塩形成形態を濃酸溶液で処理することによって、その酸形態(ここで、Xは、−O
−M
+であり、M
+はH
+である)で得ることができる。
【0053】
本発明の液体組成物は、上に詳述されたとおりのフッ素化イオン交換ポリマーを与える工程;および前記ポリマーを非プロトン性意有機溶媒と少なくとも20℃の温度で接触させる工程を含む、溶解プロセスによって調製される。このプロセスは、撹拌下少なくとも50℃、好ましくは少なくとも60℃、より好ましくは少なくとも70℃の温度で行われる。温度は、典型的には200℃を超えず、好ましくは、それは180℃を超えず、さらにより好ましくは、それは160℃を超えない。
【0054】
「溶解プロセス」という表現は、溶解または分散形態でフッ素化イオン交換ポリマーを含む液体組成物を調製するプロセスを指すために本明細書で使用される。
【0055】
このプロセスは、有利には、加圧容器を用いることを必要しないで大気圧で行われる。
【0056】
本出願人は、驚くべきことに、溶解プロセスで用いられる圧力および温度の温和な条件にもかかわらず、非プロトン性有機溶媒中少なくとも10重量%のフッ素化イオン交換ポリマーを含む液体組成物を得ることができ、これは、イオン交換膜の調製に用いることができる。
【0057】
好ましくは、液体組成物は、少なくとも1種の極性非プロトン性溶媒を含み、フッ素化イオン交換ポリマーは、その塩形成または酸形態であり;より好ましくは、フッ素化イオン交換ポリマーは、その酸形態である。
【0058】
本発明の液体組成物は、特にイオン交換膜の調製に適する。したがって、本発明はさらに、上で詳述されたとおりの液体組成物を用いてイオン交換膜を調製する方法に関する。
【0059】
イオン交換膜は、当技術分野で知られた任意の慣用方法を用いて、例えば、キャスティング、コーティング、例えば、ローラーコーティング、グラビアコーティング、リバースロールコーティング、ディップコーティング、吹付けコーティングなどによって調製され得る。フッ素化イオン交換ポリマーに加えて、強化支持体、好ましくは多孔性支持体を含む複合イオン交換膜はまた、含浸法によって、上に詳述されたとおりの液体組成物を用いても調製され得る。
【0060】
このような含浸法は、多孔性支持体に本発明の液体組成物を含浸させる工程を含む。
【0061】
多孔性支持体の選択は、特に限定されない。一般に最終的な複合膜の運転条件下で不活性である多孔性支持体が選択される。
【0062】
適切な機械的特性を有する複合膜を与えることができる多孔性不活性材料のうちで、織られたまたは不織のポリオレフィ膜、特にポリエチレン膜、およびフルオロポリマー多孔性支持体を挙げることができる。フルオロポリマーの多孔性支持体は、一般にそれらの高い化学慣性のために好ましい。
【0063】
二軸拡張PTFE多孔性支持体(別にePTFE膜として知られる)は、好ましい支持体のうちである。これらの支持体は、特にGORE−TEX(登録商標)、TETRATEX(登録商標)という商品名の下で市販されている。
【0064】
本発明の方法は、多孔性支持体が、本発明の液体組成物と接触する1つまたは2つ以上の含浸工程を含み得る。
【0065】
この方法は、典型的には少なくとも1つの乾燥工程および/または少なくとも1つのアニーリング工程を含む。
【0066】
乾燥工程は、典型的には含浸支持体から過剰の液体媒体を除去することが意図される。この工程は、一般に典型的には20から100℃、好ましくは25から90℃、より好ましくは30から80℃の温度で行われる。空気または不活性ガス(例えば、窒素)の流れは、一般にこの工程の間に含浸支持体と接触する。
【0067】
この方法が、複数の含浸工程を含む場合、それは、一般にそれらのそれぞれに、乾燥工程が続き、その後、多孔性支持体は、さらなる含浸工程のために上に詳述されたとおりに液体組成物と再び接触する。
【0068】
典型的には含浸多孔性支持体を強固なものとするために考え出されたアニーリング工程は、一般に少なくとも120℃、好ましくは少なくとも150℃、より好ましくは少なくとも180℃の温度で行われる。最高温度は、特に限定されないが、ただし、多孔性支持体およびフッ素化イオン交換ポリマーが、これらの条件下で安定なままであることを条件とする。したがって、アニーリング工程は、270℃を超えない、好ましくは250℃を超えない、より好ましくは220℃を超えない温度で行われることが一般に理解される。本発明の方法は、典型的にはただ一つのアニーリング工程を含み、これは、一般に含浸/乾燥の順序のすべてが完了すると直ちに行われる。
【0069】
液体組成物がまた、ビスオレフィンおよびラジカル開始剤を含む場合、フッ素化イオン交換ポリマーの架橋は、アニーリング工程と同時期に便利に行われ得る。
【0070】
本出願人は、驚くべきことに、フッ素化イオン交換ポリマーを、液体組成物の全重量に対して少なくとも5重量%の量で含む、本発明の液体組成物を用いることによって、有利には、単純な単一工程の含浸操作によって、得られた膜の全体の厚さにわたってフッ素化イオン交換ポリマーの一様な分布を有する複合膜を得ることが可能であることを見出した。
【0071】
前記含浸工程は、液体組成物を含む含浸容器中に多孔性支持体を浸漬させることによって行われ得るか、またはそれの適切な量を周知のコーティング技術、例えば、キャスティング、コーティング、吹付け、はけ塗りなどによって、多孔性支持体のそれぞれの側に同時にもしくはその後のコーティング工程において塗布することによって行われ得る。それにもかかわらず、液体組成物を含む容器に浸漬させることによる含浸は、最良の結果を与えてきた技術であることが一般に理解される。
【0072】
含浸プロセスは、好ましくは連続プロセスである。
【0073】
イオン交換膜は、例えば、有機汚染物質を除去するためのすすぎ洗い工程などを含む、さらなる工程にさらにかけることができる。
【0074】
この方法で使用される液体組成物が、その酸または塩形成形態で上に定義されたとおりのフッ素化イオン交換ポリマーを含む場合、イオン交換膜として直接使用できる膜を得るために製造プロセスの最後において活性化処理はまったく必要とされない。上に定義されたとおりのフッ素化イオン交換ポリマーがその酸形態である場合、得られた膜は、燃料電池用途のためのプロトン交換膜として直接使用できる。
【0075】
この方法で使用される液体組成物が、その中性形態で上に定義されたとおりのフッ素化イオン交換ポリマーを含む場合、フッ素化イオン交換ポリマーについて記載されたような活性化処理が、イオン交換膜として使用され得る膜を得るために製造プロセスの最後において一般に必要とされる。
【0076】
本発明の液体組成物から得られるイオン交換膜は、本発明のさらなる目的である。
【0077】
したがって、本発明はまた、上に定義されたとおりのフッ素化イオン交換ポリマーを含むイオン交換膜に関する。
【0078】
好ましい実施形態において、イオン交換膜は、
− 多孔性支持体(上に詳述されたとおりの);および
− 該支持体上に含浸された上に定義されたとおりのフッ素化イオン交換ポリマー
を含む。
【0079】
フッ素化イオン交換ポリマーは、その中性、塩形成または酸形態であってもよい。好ましくは、フッ素化イオン交換ポリマーは、その酸形態である。
【0080】
本発明のイオン交換膜、特に複合膜は、燃料電池用途におけるプロトン交換膜として有用である。本出願人は、添付の実施例によって示されるとおりに、前記イオン交換膜が、テトラフルオロエチレンに由来する繰り返し単位を含むフッ素化イオン交換ポリマーを用いて得られる膜に対して、燃料電池の使用の条件下でより高い安定性を有して提供されることを見出した。このような安定性の増加は、極めて予想外であり;テトラフルオロエチレンを含むイオン交換ポリマーに基づく膜における炭素−フッ素結合に対して、本発明の膜における炭素−塩素結合のより低いエネルギーが、本発明膜のより低い安定性を示唆していたであろう。
【0081】
イオン交換膜の調製のための使用に加えて、本発明の液体組成物は、燃料電池に用いられるイオン伝導性膜の表面上に電極層を構築するために使用される、いわゆる「触媒インク」の調製にも有利に用いられ得る。このような触媒インクは、上に記載されたとおりのフッ素化イオン交換ポリマーを含む液体組成物に加えて、触媒粒子を含む。典型的な触媒粒子は、白金、ルテニウム、金、パラジウム、ロジウム、インジウムのような金属;それらの電気伝導性酸化物および合金を含む。この活性化合物は、一般に好ましくは電気的に伝導性である、本明細書で「担体」と呼ばれる適切な材料上に支持される。担体は、有利には炭素粉末、例えば、カーボンブラックから選択される。
【0082】
触媒インク中の触媒粒子(もしあれば、担体を含む)の量は、一般に触媒インクの全重量に基づいて、少なくとも1重量%からなる。好ましくは、それは、少なくとも3重量%、より好ましくは少なくとも5重量%からなる。触媒インク中の触媒粒子(もしあれば、担体を含む)の量は、有利には触媒インクの全重量に基づいて、せいぜい50重量%、好ましくはせいぜい40重量%、より好ましくはせいぜい30重量%からなる。
【0083】
本発明の液体組成物を含む触媒インクは、電極触媒層の調製に用いることができる。電極触媒層は、例えば、イオン交換膜の表面に触媒インクをスクリーン印刷または溶液コーティングすることによって調製され得る。イオン交換膜は、本発明のフッ素化イオン交換ポリマーを、同じかもしくは異なるモル組成を有して、含んでもよいか、またはそれは、異なるイオン交換ポリマーを含んでもよい。
【0084】
したがって、本発明のさらなる目的は、第1および第2の表面を有するイオン交換膜、ならびに前記第1の表面に付着された第1の電極触媒層および前記第2の表面に付着された第2の電極触媒層を備えるアセンブリであって、前記イオン交換膜、第1または第2の電極触媒層の少なくとも1つは、上に定義されたとおりのフッ素化イオン交換ポリマーを含むアセンブリである。
【0085】
本発明は、これから以下の実施例を参照してより詳細に説明されるが、その目的は、単に例証的なものであり、本発明の範囲を限定することは意図されない。
【0086】
参照により本明細書に組み込まれるいずれかの特許、特許出願、および刊行物の開示が、用語を不明瞭にさせ得る程度に本出願の説明と対立する場合は、本説明が優先されるものとする。
【実施例】
【0087】
実施例1
5リットルのオートクレーブに、以下の反応物質を導入した:35gの式CF
2ClO(CF
2CF(CF
3)O)
p(CF
2O)
qCF
2COOK(p/q=10、平均分子量527g/モル)のパーフルオロポリオキシアルキレン;25gのパーフルオロポリエーテル油Galden(登録商標)D02(Solvay Solexis SpAにより供給された);40gの脱塩水を混合することによって前もって得た100gのパーフルオロポリオキシアルキレンマイクロエマルション;2.5リットルの脱塩水;600gのCF
2=CF−O−(CF
2)
2−SO
2Fおよび425gのCTFE。
【0088】
600rpmで撹拌したオートクレーブを50℃まで加熱した。反応温度における全圧力は、7.7絶対大気圧であった。次いで、50g/lの濃度の過硫酸カリウムを有する130mlの水溶液をオートクレーブ中に供給して、反応を開始させた。圧力は、シリンダから液体CTFEを導入することによって7.7絶対大気圧に保持した。反応の最後に、合計で174gのCTFEを導入した。反応を開始から293分後に止めた。気相が排気される間、反応器を70℃で30分間加熱し、次いで、それを室温に冷却した。
【0089】
生成ラテックスは、16.5重量%の固形分を有した。このポリマーラテックスを凍結および融解させることによって凝固させ、回収したポリマーを水で洗浄し、80℃で40時間乾燥させた。
【0090】
ポリマー組成をNMR分析によって決定し、表1に報告する。
【0091】
実施例2〜実施例5
異なる量のCTFEおよびCF
2=CF−O−(CF
2)
2−SO
2Fを含むイオン交換ポリマーを、実施例1の同じ手順に従って調製した。それらの組成を表1に報告する。
【0092】
【表1】
【0093】
比較例1−テトラフルオロエチレン(TFE)とCF
2=CF−O−CF
2CF
2−SO
2Fとのコポリマー
22リットルのオートクレーブに、以下の反応剤を投入した:11.5リットルの脱塩水;980gのCF
2=CF−O−CF
2CF
2−SO
2F、水中CF
2ClO(CF
2CF(CF
3)O)
n(CF
2O)
mCF
2COOK(平均分子量521およびn/m=10)の3100gの5重量%溶液。
【0094】
470rpmで撹拌したオートクレーブを60℃の温度に加熱し、過硫酸カリウムの150mlの水系溶液(6g/l)を添加して、反応を開始させた。TFEを挿入することによって、圧力を、11.5バール絶対圧の値に保持した。1200gのTFEの初期の添加後、220gのモノマーCF
2=CF−O−CF
2CF
2−SO
2Fを、オートクレーブに供給されるTFE200gごとに添加した。撹拌を止めることによって、反応を296分後に停止させ、オートクレーブを冷却し、TFEを排気することによって内圧を減少させ;合計で4000gのTFEを供給した。
【0095】
生成ラテックスを窒素バブリング下で16時間保持して、残留モノマーをストリッピングして除き、次いで、ポリマーを凍結および融解させることによって凝固させ、水で洗浄し、150℃で40時間乾燥させた。
【0096】
ポリマーは、16.5モル%のCF
2=CF−O−CF
2CF
2−SO
2Fおよび83.5モル%のTFEを含む。
【0097】
実施例6:−SO
2F形態での実施例1〜実施例5および比較例1のポリマーの液体組成物の調製
実施例1から実施例5のポリマーのそれぞれ約15mgを、70℃で0.6mlのC
6F
6中に溶解させ、残留固体をまったく含まない透明溶液を得て、これを、ポリマーの
19F−NMR特徴付けに用いた。
【0098】
比較例1のポリマーの同量を、70℃で0.6mlのC
6F
6中で撹拌し、撹拌7時間後でさえも目に見える固体の一定の存在により示されるように、ポリマーは溶解しなかった。
【0099】
実施例7:実施例1〜実施例5および比較例1のポリマーのそれらの酸(−SO
3H)形態への転換のための一般手順
実施例1〜実施例5および比較例1のポリマーのそれぞれ50gを、KOH/H
2O10w/w%の溶液(300g)中に懸濁させ、得られた混合物を激しい撹拌下90℃で8時間加熱した。次いで、粉末をろ別し、洗浄水が中性に達するまで脱イオン水で慎重に洗浄した。次いで、このようにして得た粉末を、HNO
3/H
2O20w/w%溶液(300ml)中に撹拌下室温で2時間懸濁させた。脱イオン水中でかなり(洗浄水がpH7に達するまで)洗浄後、粉末を真空オーブン中80℃で16時間乾燥させた。
【0100】
実施例8:酸形態での実施例1〜実施例5および比較例1のポリマーを含む液体組成物の調製
酸形態での実施例1〜実施例5のポリマーのそれぞれ20gを、N−エチル−2−ピロリドン(80g)に撹拌下100℃で少しずつ添加した。2時間後、この混合物を室温に冷却し、20重量%のポリマーを含む、残留物の痕跡を含まない液体組成物を得た。
【0101】
このようにして得た液体組成物のそれぞれにアセトンを添加して、組成物の粘度および表面張力を調節し、複合膜の調製を容易にした。最終の液体組成物を表2に報告する。
【0102】
【表2】
【0103】
実施例9:酸形態での比較例1のポリマーを含む液体組成物の調製
酸性形態での比較例1の20gのポリマーを、N−エチル−2−ピロリドン(80g)に撹拌下100℃で少しずつ添加した。撹拌7時間後でさえも、非溶解固体はけっして消失せず、複合膜の調製に用いることができる液体組成物は得ることができなかった。複合膜の調製に適切な液体組成物を得るために、比較例1のポリマーをオートクレーブ中250℃で水によって3時間処理した。21重量%の溶解ポリマーを含有する液体組成物をこのようにして得た。イソプロピルアルコールを液体組成物に添加して、水−イソプロピルアルコール混合物中15重量%濃度のポリマーを得た(比較LC1)。
【0104】
実施例10:複合膜の調製
拡張PTFE薄膜(TETRATEX(登録商標)#3107(Donaldson製))を、フレーム上でフランジを付け、それぞれの側に20mlの各液体組成物LC1〜LC5および比較LC1を用いて含浸させた。試験片を通風オーブン中に入れ、65℃で1時間、次いで、90℃で1時間加熱し、次いで、190℃で1時間アニーリングした。25ミクロンの厚さを有する完全に透明な膜をすべての場合で得た。
【0105】
実施例11:燃料電池における実施例10で得た膜の試験
実施例10で得た複合膜を、LT250EWガス拡散電極を有する25cm
2電池において組み立て、電子負荷によって0.6Vの一定電圧を保持することによって、75℃、反応物質100%加湿(カソード側空気およびアノード側純水素)で24時間調整した。反応物質に逆圧はかけなかった。
【0106】
調整後、電池抵抗をインピーダンス分光法によって測定し;それは、虚数成分をゼロとして測定する場合、インピーダンス曲線の実数成分に対応する。測定は、調整段階と同じ運転条件下で行った。値を表3に示す。
【0107】
電池抵抗の測定後、電子負荷の接続を断ち、カソード側供給を窒素(100%加湿)に変え、逆圧は、アノード側とカソード側の両方でゼロであった。ポテンショスタットを用いることによって、電池に0.42Vの電池電圧をかけ、カソード側の酸化電流を測定した(このようにして、アノード側から膜を横切る水素の量を定量化する)。水素クロスオーバーを、電流に関して測定し;電流密度値を表3に報告する。
【0108】
【表3】
【0109】
したがって、比較例1のポリマーで調製した膜に対して、本発明の膜は、水素の非常により低い通過を可能にする(膜の厚さは同じである)。
【0110】
実施例2および比較例1のポリマーから得た膜をさらに、以下の運転条件下での電池耐久性評価のために用いた:
電池温度:90℃
カソード側反応物質:純酸素、吸気口相対湿度30%。逆圧なし。
アノード側反応物質:純水素、吸気口相対湿度30%。逆圧なし。
【0111】
電池電圧は、開路電圧(OCV)で維持して、その結果、電池からゼロ電流を排流させ、電圧を試験中モニターし、寿命末期基準は、ガスクロスオーバーの非常に高いレベル、すなわち、膜の不可逆的損傷として当技術分野で認められる0.7Vに固定した。
【0112】
比較例1のポリマーを含む複合膜は、試験230時間後に0.7Vの設定限界に達した。
【0113】
実施例2のポリマーを含む複合膜の試験は、電圧が依然として0.8Vを超える500時間後に任意に止めた。
【0114】
試験により、高酸化性運転条件下で比較のものに対する本発明の膜のより高い抵抗性が示される。