特許第5989666号(P5989666)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989666
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】多芯ファイバを使用する撮像システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20160825BHJP
   A61B 1/04 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   A61B1/00 300Y
   A61B1/00 300U
   A61B1/04 370
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-547955(P2013-547955)
(86)(22)【出願日】2012年1月5日
(65)【公表番号】特表2014-502902(P2014-502902A)
(43)【公表日】2014年2月6日
(86)【国際出願番号】IL2012050004
(87)【国際公開番号】WO2012093401
(87)【国際公開日】20120712
【審査請求日】2014年12月26日
(31)【優先権主張番号】61/457,116
(32)【優先日】2011年1月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593003710
【氏名又は名称】バル・イラン・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】BAR ILAN UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】ザレブスキー,ジーブ
(72)【発明者】
【氏名】シャムーン,アザフ
(72)【発明者】
【氏名】スロヴィン,ハムタル
【審査官】 門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−004802(JP,A)
【文献】 特開平08−248326(JP,A)
【文献】 特開昭58−086512(JP,A)
【文献】 特開2010−253155(JP,A)
【文献】 特開2000−210250(JP,A)
【文献】 特開昭63−265215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 − 1/317
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像するためのシステムであって、
光軸を定義し、多芯ファイバを備え、被写体を検出アレイ上に撮像するための光学撮像ユニットであって、前記多芯ファイバが、前記被写体からの光を前記多芯ファイバの入力端面に集め、集められた光を前記多芯ファイバの出力端面へ伝達するように構成された、光学撮像ユニットと、
前記被写体のシフトされた像のセットを得るために、前記多芯ファイバの前記入力端面を前記被写体に対して相対的に前記光軸と略垂直な平面内でシフトするように構成された移動ユニットと、
前記多芯ファイバの芯の直径より小さいもしくは等しい第1の振幅と、前記多芯ファイバの直径より大きいもしくは等しい第2の振幅のいずれかにシフト振幅を設定することによって、前記移動ユニットを操作するように構成された操作ユニットと、
前記光学撮像ユニットが近視野撮像モードと遠視野撮像モードのいずれか1つで動作できるように、前記被写体と前記多芯ファイバの前記入力端面の間の距離を監視するように構成された検出ユニットと、を備え
前記操作ユニットが、
前記検出ユニットと通信するための通信ユーティリティと、
前記被写体と前記多芯ファイバの前記入力端面の間の距離に基づいて、および元の像の視野または解像度を改善すべきであるかに基づいて、前記シフト振幅を設定するためのシフトコントローラと、をさらに備える、システム。
【請求項2】
前記光学撮像ユニットが、前記多芯ファイバの前記出力端面からの光を集めて前記検出アレイ上に前記被写体の像を形成するように構成された光学組立体を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記光学撮像ユニットが、前記システムを通過する光伝播方向に対して前記多芯ファイバの前記入力端面の上流に配置されたレンズユニットを備え、前記レンズユニットが、前記光軸に沿って前記被写体に対して移動可能である、請求項に記載のシステム。
【請求項4】
1つまたは複数の前記シフトされた像を組み合わせることによって前記被写体の結合された像を得るために、前記シフトされた像のセットを示すデータを受けて処理するように構成され、前記検出アレイに接続可能な処理ユニットを備え、前記結合された像が、改善された解像度および/または視野を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記像の少なくとも1つを表示するための表示ユニットをさらに備える、請求項1〜のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記操作ユニットが、前記撮像の視野または解像度を改善すべきであるかを定義する使用者からの入力を受けるように構成された入力ユーティリティを備える、請求項1〜のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記操作ユニットが、前記入力ユニットと通信するための通信ユーティリティを備える、請求項に記載のシステム。
【請求項8】
前記多芯ファイバがファイバ束とフォトニック結晶のいずれかである、請求項1〜のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記多芯ファイバが、2つの対向する略平行な面を画成する多角形の断面を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記多芯ファイバの断面が矩形である、請求項に記載のシステム。
【請求項11】
電気刺激とペルチェ効果を利用した温度感知の少なくともいずれか1つを行うために、前記多芯ファイバの前記対向する面上に配置された電極をさらに備える、請求項または10に記載のシステム。
【請求項12】
前記被写体を照らし、参照波面をもたらすように構成されたコヒーレント光源と、
前記参照波面と前記被写体によって反射され前記多芯ファイバによって伝達された反射波面との干渉を形成する構成されることによって、前記被写体によって反射された光の位相情報をもたらすホログラフィ構成または干渉計構成と、をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、撮像システムおよび方法の領域に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の非特許文献1〜11は、本願発明の技術的背景のものである。
【0003】
内視鏡は、内部器官の医療検査を行うための一般的な医療機器である。内視鏡の主要なタイプは2つある。軟性式と硬性式である。軟性内視鏡は、シングルモードのファイバの束で構成されており、その束の各ファイバは、単一の空間の点、すなわち単一の画素に対応する空間情報を後方に伝達する。上記ファイバ束は体内に入ることができ、撮像カメラは外側に配置される。境界面の光学により、上記束から出てくる光情報が検出カメラに適合される。マルチモードファイバ(複数の画素に対応する空間情報を伝達することができる)ではなく、束内の各ファイバにシングルモードファイバを使用する理由は、内視鏡を挿入するとき、ならびにそれを体内で操作する間、そのファイバを屈曲できることに関連する。マルチモードファイバが屈曲されると、各空間モードが互いに結合し、像が強く歪む。束内のシングルモードファイバの典型的な直径は約30μmである(これはそのクラッドの直径であり、芯は約8〜9μmの直径を有する)。束内の典型的なファイバ数は約10,000〜30,000本である。典型的な全体(束全体)の直径は約3mm〜5mmである。
【0004】
もう1つのタイプの内視鏡は、硬性内視鏡と呼ばれる。この場合、カメラは体外に留まるのではなく患者の体内に入るが、そのカメラは剛性を有するスティックの端面に配置されている。硬性内視鏡の像の品質は通例、より優れており、硬性内視鏡を用いると像の後方への伝達だけでなく他の医療処置も可能になる。しかしながら、その主要な欠点は、それが実際に剛性であるため、したがって可撓性に乏しく、体内操作処置にそれほど適さないことに関連する。
【0005】
内視鏡検査には代替解決策があり、例えば、患者が飲み込み、胃および腸を通って伝わりながら内臓の画像を取り込むことができる錠剤を使用するものがある。
【0006】
多芯ファイバはまた、高い品質の撮像作業を行うのに適していることがわかっている。非特許文献2〜4で、高解像度マイクロレンズによる生体内蛍光撮像技術の現況の概要を確認することができる。非特許文献5〜7で、生体脳の蛍光撮像用途に対する上記マイクロ内視鏡の実証を確認することができる。多芯ファイバを使用すると、かかる機器の直径が小さなことから損傷が最小限になるので、侵襲的用途で好ましい場合もある。
【0007】
例えば、多芯ファイバを利用する内視鏡が特許文献1に記載されている。ここでは、画素を形成するための複数の芯でできたイメージファイバ本体およびそれに共通のクラッドを有するイメージファイバと、そのイメージファイバにレーザ光を入れるための、かつイメージファイバから像を取り込むための、イメージファイバの接眼レンズ側に接続された光学系とを含んだ、内視鏡システムが開示されている。この内視鏡システムでは、イメージファイバは、イメージファイバ本体の断面全体にわたってほぼ等間隔に配置された芯を有し、その断面は、イメージファイバ本体の長手方向に対して垂直になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0046897号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】ジー.アンフレイド(G. Unfried)、エフ.ウィーザー(F. Wieser)、エー.アルブレヒト(A. Albrecht)、エー.カイダー(A. Kaider)、エフ.ネーゲレ(F. Nagele)著、「外来子宮鏡検査のための軟性式内視鏡と硬性式内視鏡の比較:予想無作為化臨床試験(Flexible versus rigid endoscopes for outpatient hysteroscopy: a prospective randomized clinical trial)」、ヒューマンリプロダクション(Human Reproduction)、第16巻、p.168−171、2001年
【非特許文献2】アール.ピー.ジェイ.バレット(R. P. J. Barretto)、ビー.メッサーシュミット(B. Messerschmidt)、エム.ジェイ.シュニッツァー(M. J. Schnitzer)著、「高解像度マイクロレンズによる生体内蛍光撮像(In vivo fluorescence imaging with highresolution microlenses)」、ネイチャーメソッズ(Nature methods)、第6巻、p.511−514、2009年
【非特許文献3】ビー.エー.フラスバーグ(B. A. Flusberg)、イー.ディー.コッカー(E. D. Cocker)、ダブリュー.ピヤワッタナメタ(W. Piyawattanametha)、ジェイ.シー.ユング(J. C. Jung)、エー.エル.エム.チューン(E. L. M. Cheung)、エム.ジェイ.シュニッツァー(M. J. Schnitzer)著、「光ファイバー蛍光撮像(Fiber-optic fluorescence imaging)」、ネイチャーメソッズ(Nature methods)、第2巻、p.941−950、2005年
【非特許文献4】エム.イー.ルウェリン(M. E. Llewellyn)、アール.ピー.ジェイ.バレット(R. P. J. Barretto)、エス.エル.デルプ(S. L. Delp)、エム.ジェイ.シュニッツァー(M. J. Schnitzer)著、「マウス及びヒトにおける筋節収縮力学の低侵襲高速撮像(Minimally invasive high-speed imaging of sarcomere contractile dynamics in mice and humans)」、ネイチャー(Nature)、第454巻、p.784−788、2008年
【非特許文献5】ケー.ダイセロス(K. Deisseroth)、ジー.フォン(G. Feng)、エー.ケー.マジュースカ(A. K. Majewska)、ジー.ミーゼンボック(G. Miesenbock)、エー.ティン(A. Ting)、エム.ジェイ.シュニッツァー(M. J. Schnitzer)著、「遺伝的標的脳回路を照光するための次世代光学技術(Next-Generation Optical Technologies for Illuminating Genetically Targeted Brain Circuits)」、神経科学ジャーナル(The Journal of Neuroscience)、第26巻、p.10380−10386、2006年
【非特許文献6】ビー.エー.フラスバーグ(B. A. Flusberg)、ジェイ.シー.ユング(J. C. Jung)、イー.ディー.コッカー(E. D. Cocker)、イー.ピー.アンダーソン(E. P. Anderson)、エム.ジェイ.シュニッツァー(M. J. Schnitzer)著、「携帯型3.9グラム二光子蛍光内視顕微鏡を使用した生体脳撮像(In vivo brain imaging using a portable 3.9 gram two-photon fluorescence microendoscope)」、オプティクスレターズ(Optics Letters)、第30巻、p.2272−2274、2005年
【非特許文献7】ダブリュー.ピヤワッタナメタ(W. Piyawattanametha)、イー.デー.コッカー(E. D. Cocker)、エル.ディー.バーンズ(L. D. Burns)、アール.ピー.ジェイ.バレット(R. P. J. Barretto)、ジェイ.シー.ユング(J. C. Jung)、エイチ.ラー(H. Ra)、オー.ソルガード(O. Solgaard)、エム.ジェイ.シュニッツァー(M. J. Schnitzer)著、「微小電気機械システム走査ミラーに基づく携帯型2.9グラム二光子顕微鏡を使用した生体脳撮像(In vivo brain imaging using a portable 2.9g two-photon microscope based on a microelectromechanical systems scanning mirror)」、オプティクスレターズ(Optics Letters)、第34巻、p.2309−2311、2009年
【非特許文献8】ジー.ゾルフスキー(Z. Zalevsky)、ディー.メンドロヴィック(D. Mendlovic)、「光超解像技術(Optical Super Resolution)」、スプリンガー(Springer)、2004年
【非特許文献9】エー.ボルコウスキー(A. Borkowski)、ジー.ゾルフスキー(Z. Zalevsky)、ビー.ジャビディ(B. Javidi)著、「非周期的空間マスキングを使用した幾何的超解像撮像(Geometrical Super Resolved Imaging Using Non periodic Spatial Masking)」、ジェー・オー・エス・エー.エー(JOSA A)、第26巻、p.589−601、2009年
【非特許文献10】ジェイ.フォルティン(J. Fortin)、ピー.シェヴレット(P. Chevrette)、アール.プラント(R. Plante)著「微小走査処理の評価(Evaluation of the microscanning process)」、赤外線技術XX(Infrared Technology XX)、ビョルン.エフ.アンドレセン(Bjorn. F. Andresen)編、SPIE、第2269号、p.271−279、1994年
【非特許文献11】ヴィー.ミコ(V. Mico)、ジー.ゾルフスキー(Z. Zalevsky)、ジェイ.ガルシア(J. Garcia)著、「共通光路位相シフト・デジタル・ホログラフィック顕微鏡:定量位相撮像および超解像への道筋(Common-path Phase-shifting Digital Holographic Microscopy: a way to Quantitative Phase Imaging and Superresolution)」、オプティクスコミュニケーション(Optics Communications)、第281巻、p.4273−4281、2008年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
多芯ファイバの使用は、その小さなサイズと、必要なら計器を望ましい形で可撓性を有するようにできることから、医療用途を含む様々な用途で有利である。しかしながら、多芯ファイバに基づいた撮像では、近視野または遠視野状況下で撮像に使用する場合、不十分な解像度および/または視野に関わる問題に直面する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、こういった限界の克服を可能にする新規な撮像システムおよび方法を提供する。本発明の撮像システムは、検出アレイ上に被写体を結像するための光学撮像ユニットの一部分を形成または一部分である多芯ファイバを含む。この多芯ファイバはその入力端面が被写体平面に面し、その出力端面が検出器平面に面する。したがって、多芯ファイバは、入力端面で被写体から光を集め、集めた光を出力端面へ伝達する。さらに、被写体に対して相対的に、すなわち光学撮像ユニットの光軸とほぼ垂直な平面内で、多芯ファイバの入力端面を少なくとも側方シフトすることを実現するように動作する移動ユニットが、撮像システムに設けられる。これにより、被写体のシフトされた像のセットを、検出器アレイで順次得ることができる。上記移動ユニットは、操作ユニット(operating unit)によって制御可能式に操作され、操作ユニットは、多芯ファイバ内にある芯の直径より小さいもしくは等しい第1の振幅、または多芯ファイバの直径より大きいもしくは等しい第2の振幅のいずれかになるようにシフト振幅を設定する。
【0012】
以下に詳細に説明するように、近視野モードを使用する撮像のときは、空間解像度は十分に高い可能性があるが、視野は一般に不十分である。第2のシフト振幅を用いて多芯ファイバを側方にシフトすると、複数の連続的に取得された像によって形成される結合像内の視野を改善することができる。一方、遠視野モードを使用して被写体を撮像するときは、視野は十分である可能性があるが、空間解像度は一般に不十分である。第1のシフト振幅を用いた多芯ファイバの側方シフトを使用することによってそれを解決、あるいは少なくとも部分的に解決することができる。
【0013】
本発明は、上述のような多芯ファイバの側方シフトと、遠視野モードと近視野モードの間の系操作という長手方向シフトの両方の利用を実現する。後者は、多芯ファイバの入力端面自体をシフトすることによって、あるいは(または追加で)光学撮像ユニットの光軸に沿って移動可能な撮像光学部品を使用することによって実施することができる。実際には、そうしたレンズは多芯ファイバと検出器アレイの間に配置する方が容易であるはずであるが、一般に被写体と多芯ファイバの間に移動可能レンズが存在する可能性がある。
【0014】
したがって、本発明の広範な一態様によると、被写体を撮像するためのシステムが提供され、上記システムは、光軸を定義し、多芯ファイバを備える、被写体を検出アレイ上に撮像するための光学撮像ユニットにおいて、上記多芯ファイバが、上記被写体からの光を上記多芯ファイバの入力端面に集め、集められた光を上記多芯ファイバの出力端面へ伝達するように構成される光学撮像ユニットと、上記被写体のシフトされた像のセットを得るために、上記多芯ファイバの上記入力端面を上記被写体に対して相対的に上記光軸とほぼ垂直な平面内でシフトするように構成された移動ユニットと、上記多芯ファイバの芯の直径より小さいもしくは等しい第1の振幅、または上記多芯ファイバの直径より大きいもしくは等しい第2の振幅のいずれかに、シフト振幅を設定することによって、上記移動ユニットを操作するように構成された操作ユニットとを備える。
【0015】
いくつかの実施形態では、上記光学撮像ユニットが、上記多芯ファイバの上記出力端面からの光を集め、上記被写体の像を上記検出アレイ上に形成するように構成された光学組立体を備える。
【0016】
いくつかの実施形態では、上記光学撮像ユニットが、近視野撮像モードおよび遠視野撮像モードのうちのいずれかで選択的に動作するように構成される。
【0017】
いくつかの実施形態では、上記光学撮像ユニットが、上記システムを通過する光伝播方向に対して上記多芯ファイバの上記入力端面の上流に配置されたレンズユニットを備え、上記レンズユニットが、上記光軸に沿って上記被写体に対して移動可能である。
【0018】
いくつかの実施形態では、上記システムがさらに、上記シフトされた像のセットを示すデータを受け、処理するように構成された、上記検出アレイに接続可能な、1つまたは複数の上記シフトされた像を組み合わせることによって上記被写体の結合された像を得るための処理ユニットを備え、上記結合された像が、改善された解像度および/または視野を有する。
【0019】
いくつかの実施形態では、上記システムがさらに、上記被写体と上記多芯ファイバの上記入力端面の間の距離を監視し、それによって上記近視野撮像モードおよび上記遠視野撮像モードのいずれかで上記光学撮像ユニットの動作を可能にするように構成された検出ユニットを備える。
【0020】
いくつかの実施形態では、上記システムがさらに、上記像のうちの少なくとも1つを表示するための表示ユニットを備える。
【0021】
いくつかの実施形態では、上記操作ユニットが、上記撮像の視野か解像度を改善すべきであるかを定義する使用者からの入力を受けるように構成された入力ユーティリティを備える。
【0022】
いくつかの実施形態では、上記操作ユニットがさらに、上記検出ユニットと通信するための通信ユーティリティと、上記被写体と上記多芯ファイバの上記入力端面の間の距離に基づいて、ならびに上記元の像の視野か解像度を改善すべきであるかに基づいて、上記シフト振幅を設定するためのシフトコントローラとを備える。
【0023】
いくつかの実施形態では、上記操作ユニットが、上記入力ユニットと通信するための通信ユーティリティを備える。
【0024】
いくつかの実施形態では、上記多芯ファイバがファイバ束またはフォトニック結晶である。
【0025】
いくつかの実施形態では、上記多芯ファイバが、2つの対向するほぼ平行な面を画成して多角形の断面を有する。
【0026】
いくつかの実施形態では、上記多芯ファイバの断面が矩形である。
【0027】
いくつかの実施形態では、上記システムがさらに、電気刺激とペルチェ効果利用温度感知のうちの少なくとも一方を行うために、上記多芯ファイバの上記対向する面上に配置された電極を備える。
【0028】
いくつかの実施形態では、上記システムがさらに、上記被写体を照らし、参照波面をもたらすように構成されたコヒーレント光源と、上記参照波面と上記被写体によって反射され上記多芯ファイバによって伝達された反射波面との干渉を形成し、それによって上記被写体によって反射された光の位相情報をもたらすように構成されたホログラフィ構成または干渉計構成とを備える。
【0029】
本発明の広範な別の態様によると、被写体を撮像する方法が提供され、入力端面および出力端面を有する多芯ファイバを介して上記被写体からくる光を伝達するステップと、上記多芯ファイバの上記出力端面から光を集めることによって検出アレイ上に上記被写体を結像するステップと、撮像の解像度または視野の改善を可能にするために、上記多芯ファイバの芯の直径より小さいもしくは等しい第1の振幅または上記多芯ファイバの直径より大きいもしくは等しい第2の振幅のいずれかになるように、多芯ファイバのためのシフト振幅を設定するステップと、上記シフト振幅を使用して、上記多芯ファイバの上記入力端面をシフトするステップにおいて、それによって上記被写体のシフトされた像のセットを得るステップと、上記解像度または視野を改善するために、上記シフトされた像を組み合わせることによって上記被写体の結合された像を得るように、上記シフトされた像のセットを処理するステップとを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、上記方法がさらに、近視野撮像モードおよび遠視野撮像モードのうちのいずれかで上記被写体を選択的に撮像するステップを含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、上記方法が、上記多芯ファイバの上記入力端面の手前で上記光伝播軸に沿って、上記被写体に対してレンズユニットを移動させるステップを含む。
【0032】
本発明を理解し、それをどのように実際に実行できるか確認するために、次に、非限定的な例として実施形態について添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の一実施形態による、被写体を撮像するためのシステムを示す全体図である。
図2】本発明の一実施形態による、被写体を撮像する方法を示す全体図である。
図3】本発明の一実施形態によるシステムのプローブの写真である。
図4】本発明の一実施形態による、被写体を撮像するシステムのプローブの出力端面の画像である。
図5】(A)(B)は本発明の一実施形態による撮像システムによって取得された像の実験結果の図である。
図6】本発明の一実施形態による撮像システムを用いて寒天溶液を介して撮像したFeビーズの像の実験結果の図である。
図7】(A)は顕微鏡を用いた、スライド上のラットの心筋増殖の撮像の実験結果の図であり、(B)は本発明の一実施形態による撮像システムを用いた、スライド上のラットの心筋増殖の撮像の実験結果の図である。
図8】(A)は顕微鏡を用いた、鶏手羽肉内の静脈の撮像の実験結果の図であり、(B)(C)(D)は本発明の一実施形態による撮像システムを用いた、鶏手羽肉内の静脈の撮像の実験結果の図である。
図9】本発明の一実施形態による撮像システムを用いた、鶏手羽肉の静脈に沿った撮像の実験結果の図である。
図10】本発明の一実施形態による、ラットの脳を撮像するための撮像システムによる実験の構成を示す図である。
図11】本発明の一実施形態による撮像システムを用いて、ラットの脳の内部にある血管を撮像した実験結果の図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、屈曲した場合(体内操作時など)でも芯間の光漏れを回避するように適切に分離された数万本の芯を有する多芯ファイバ(プローブとも呼ばれる)を含んだ撮像システムを提案する。このプローブの構造により、プローブの入力先端のシフトに基づいた解像度の拡張すなわち超解像を行うことが可能になる。このプローブの構造によりまた、入力先端のシフトに基づいた視野の拡張を行うことも可能になる。さらに、多芯ファイバの光芯は、波面を後方に伝達し、像を生成するように機能する。ただし、1本または複数の芯を、被写体自体を照らすために使用することもでき、さらには、高い光パワー密度で照らす場合、被写体の加熱に使用することもできる。さらに、レーザなどのコヒーレント光で被写体を照らすと、反射された波面の振幅だけでなく位相も推定できる検出平面近傍の干渉形態による3D情報の抽出を可能にすることができる。例えば、検出器アレイ平面で有効な参照ビームを、被写体で反射し多芯ファイバを介して伝達された波面と干渉させることができ、それによって、被写体で反射された波面に関する位相情報を得ることが可能になる。この位相情報により、被写体に関する3D情報を得ることが可能になり得、すなわち被写体の外形を構築することが可能になり得る。別の実施形態では、干渉形態を、ホログラフィの構成と置き換えることができる。
【0035】
上記プローブを用いると、光学ズームと等価な光学操作の実現、すなわち視野を狭く、サンプリング解像度を高くすることが可能になる。この操作は、光学組立体を軸方向にシフトすることによって(すなわち、視野が広く解像度がより低い遠視野形態から、解像度が高く視野が狭い近視野近似に移動することによって)実現することができる。
【0036】
上記プローブの断面は矩形にすることができ、それによってその対向する面のうちの2つを金属でコーティングすることが可能になり、その端面での電気刺激能力が実現する。この電気刺激能力は、加熱/冷却や、コーティングに2つの異なるタイプの金属が使用された場合はペルチェ効果に基づいた温度感知を含む。
【0037】
ここで提案するプローブは、その小さい直径により非侵襲的な医学的操作性が可能になり、多種多様な新しい生物医学的用途に使用することができる。その用途は、動脈を介した操作、涙道を介した鼻および頭部の内腔への移動、特に(より小さな流路を有する)小さな子どもたちのラムを介した操作の実行、および子宮だけでなく前立腺関連の治療の実行を含むことができる。
【0038】
図1に、本発明の一実施形態による撮像システム1が全体に示されている。撮像システム1は光学撮像ユニット2を備え、光学撮像ユニット2は、撮像システム1の検出器アレイ4上に被写体3の像を形成するように構成される。被写体3は、撮像ユニット2から離して配置され、すなわち被写体3から出て、撮像ユニット2に到達する光学波面を、平面波面とみなすことができる(遠視野近似)ように配置することができる。あるいは、上記の遠視野近似が有効にならないよう、被写体3を撮像ユニット2の近くに配置することもできる。以下、これらの2つの構成をそれぞれ遠視野配置(または構成、モードなど)、近視野配置と呼ぶ。
【0039】
光学撮像ユニット2は、光軸Xを規定し、多芯ファイバ20(プローブとも呼ばれる)および光学組立体30を備える。多芯ファイバ20は、被写体3から多芯ファイバ20の入力端面21に到達する光を、多芯ファイバ20の出力端面22の方へ伝達することができる。光学組立体30は、多芯ファイバ20の出力端面22で光を集め、集めた光の焦点を検出器アレイ4上に合わせるように構成することができる。光学組立体30は、撮像ユニット2の遠視野または近視野に、すなわち入力端面21の相対的に遠くまたは相対的に近くのいずれかに配置された被写体3の像を形成するように構成することができる。一実施形態では、光学組立体30は、検出器アレイ4上に結像される被写体3の位置に対して適合可能であってよい。一実施形態では、光学組立体30は、出力端面22と検出器アレイ4の間に配置される結像レンズであってよい。上記実施形態では、結像レンズは、遠視野または近視野のいずれかに配置された被写体3からの光に対応するために、光軸Xに沿って長手方向に移動可能であってよい。別の実施形態では、光学組立体30は、入力端面21の上流に配置された入力レンズを備えることができる。芯の直径および多芯ファイバ20の直径は、それぞれd、Dと呼ぶことができる。dおよびDの値は、製造関連および用途関連の制限によって規定される。例えば、Dは、特定の医療用途で非侵襲の状態を保つために、300μmよりも小さくすることができる。dの値は、所望の空間解像度に従って決定することができる。Dが300μmと等しく、100×100ピクセルの解像度を有することが望まれる場合、dは約3μmであってよいということになる。一般に、dは、十分なエネルギー効率で光とファイバの結合を可能にするために、集光される光の光学波長よりも大きくすることができる。
【0040】
撮像システム1はさらに、検出ユニット40、光学組立体コントローラ50、移動ユニット60、操作ユニット70および処理ユニット80を備えることができる。検出ユニット40は、入力端面21に対する被写体3の位置を監視するように構成することができる。例えば、検出ユニット40は、被写体3が近視野にあるか遠視野にあるかを判定するために、多芯ファイバ20の入力端面21と被写体3の間の長手方向の距離を判定することができる。多芯ファイバ20の入力端面21と被写体3との間の長手方向の距離を示すデータを、光学組立体コントローラ50および/または操作ユニット70へ送信するために、検出ユニット40は検出通信ユーティリティを備えることができる。光学組立体コントローラ50は、多芯ファイバ20の入力端面21と被写体3の間の長手方向の距離を示すデータを検出ユニット40から受けるために、検出ユニット40と通信するためのコントローラ通信ユーティリティを備えることができる。光学組立体コントローラ50は、被写体3から出る光の焦点を検出器アレイ4上に合わせるために、上記データに基づいて光学組立体30を適合するように構成することができる。つまり、光学組立体コントローラ50は、多芯ファイバ20から出力された光が被写体3の近視野または遠視野構成に応じて検出器アレイ4上に像を形成するように、光学組立体30を操作するように構成することができる。光学組立体30が結像レンズである上述の実施形態では、光学組立体適合ユニット40は、多芯ファイバ20によって伝達された光の焦点を検出器アレイ4上に合わせるために、光軸Xに沿って長手方向に結像レンズを移動するように構成することができる。光学組立体コントローラ50は、結合関係に応じて被写体3を撮像するための光学組立体30の構成を判定するために、多芯ファイバ20の入力端面21と被写体3の間の長手方向の距離を示す上記データを処理するように構成されたプロセッサを備えることができる。光学組立体30が結像レンズである実施形態では、その結像関連の特性に関して、多芯ファイバ20の入力端面21および出力端面22がレンズの主面と同様に作用するかのように多芯ファイバ20を実際は見なすことができるので、光学組立体30の位置は以下の関係式に従って判定することができる。
【0041】
【数1】
【0042】
ここで、Uは被写体3と多芯ファイバ20の入力端面21との間の距離、Uは多芯ファイバ20の出力端面22との間の距離、Vは光学組立体30の光心と検出アレイ4の間の距離、Fは光学組立体30の焦点距離である。
【0043】
移動ユニット60(またはプローブ移動ユニット)は、多芯ファイバ20の入力端面21を被写体3に対して相対的にシフトさせるように構成することができる。一実施形態では、被写体3のシフトされた像のセットを検出器アレイ4上に形成するために、このシフトを光軸Xとほぼ垂直な平面で行うことができる(いわゆる「側方シフト」)。あるいは、または好ましくは追加として、上記シフトを光軸に沿って行うこともできる(いわゆる「長手方向シフト」)。これは、多芯ファイバ20の入力端面21を両方の軸に沿って移動させる同一の移動ユニットによって、あるいはプローブの上流または下流にあるレンズと関連付けられた追加の移動ユニットによって実施することができる。
【0044】
プローブ移動ユニット60は、操作ユニット70からの振幅シフト命令および/または方向シフト命令を受けるように構成された移動通信ユーティリティを備えることができ、それによって操作ユニット70による移動ユニット60の操作が可能になる。操作ユニット70はさらに、多芯ファイバ20の入力端面21と被写体3の間の長手方向の距離を示すデータを検出ユニット40から受けるために、検出ユニット40と通信するための操作通信ユーティリティを備えることができる。操作通信ユーティリティはさらに、撮像の解像度または視野を改善すべきかどうかに関する指示を、入力ユーティリティ(図示せず)から受けるように構成することができる。操作ユニット70はさらに、多芯ファイバ20の芯の直径より小さいもしくは等しい第1の振幅、または多芯ファイバ20の直径より大きいもしくは等しい第2の振幅にシフト振幅を設定するように構成されたシフトコントローラを備えることができる。上記振幅の設定は例えば、入力端面21と被写体3の間の距離(すなわち近視野モードまたは遠視野モード)や、上記入力ユーティリティを介して受ける使用者からの入力に基づくことができる。
【0045】
処理ユニット80は、検出器アレイ4に接続可能にすることができ、検出器アレイ4上に形成されるシフトされた像のセットを取得し、そのシフトされた像のセットを組み合わせることによって処理し、それによってより良好な解像度または視野を有する結合像を得るように構成することができる。操作ユニット70は、設定されたシフト振幅を処理ユニット80に提供することができる。本発明で使用される近視野超解像では、組み合わせたシフトされた像のセットの画像処理は、非特許文献9、10に開示されている空間マスキング技術に従って実行することができる。遠視野超解像では、本発明者が開発し、非特許文献11に記載されている従来の像処理技術を使用することができる。
【0046】
したがって、本明細書のシステムは、製造し易く、高解像度を有する画像を提供できる、コンパクトかつ人間工学的な解決策を提供する。さらに、限られた手動操作量によるシフトを実行するために、使用者は上記操作ユニットを利用することができる。
【0047】
図2において、本発明の実施形態に従って被写体を撮像する方法のステップが全体に示されている。第1のステップS101では、光学撮像ユニットを使用して検出器アレイ上に被写体の像を形成することができ、上記光学撮像ユニットは、イメージガイドとしての多芯ファイバと、多芯ファイバによって伝達された光の焦点を検出器アレイ上に合わせるための光学組立体(例えば結像レンズ)を備える。被写体の位置、すなわち近視野または遠視野配置に基づいて、光学組立体の位置決めを行うことができる。この像をさらに、表示ユニット上に表示することができる。第2のステップS102では、使用者が、解像改善と視野改善の間で像の達成すべき改善を、例えば表示された像の観察に基づいて定義することができる。第3のステップS103では、定義された改善と、被写体が配置されているのが撮像ユニットの近視野か遠視野のいずれかと、に基づいて、多芯ファイバの芯の直径より小さいもしくは等しい第1の振幅と、多芯ファイバの直径より大きいもしくは等しい第2の振幅の間で、シフト振幅を設定することができる。
【0048】
近視野モードで、解像度を改善するには、達成すべき所定の超解像係数K(Kは整数)を仮定すると、シフト振幅を第1の振幅に設定することができる。第1の振幅は以下の関係式によって決定することができる。
=d/K
ここで、dはファイバの芯の直径である。さらに、実行するシフトの回数は超解像係数と等しくてよい。
【0049】
遠視野モードで、解像度を改善するには、所定の超解像係数を仮定すると、シフト振幅を第2の振幅に設定することができる。第2の振幅は以下の関係式によって決定することができる。
=D
ここで、Dは多芯ファイバの直径である。さらに、シフトの回数は超解像係数と等しくてよい。
【0050】
近視野で視野(解像度ではない)を広くするには、第2のシフト振幅Aを用いてシフトを実行することができる。具体的には、視野をK倍広くするには、第2のシフト振幅Aを用いてK回シフトを実行することができる。遠視野で、視野をK倍広くするには、第1のシフト振幅Aを用いてK回シフトを実行することができる。
【0051】
被写体が配置されているのが撮像ユニットの近視野か遠視野かどうか判定するために、被写体の位置を検出することができる。例えば、多芯ファイバの入力端面と被写体の間の長手方向の距離をセンサによって検出することができる。一実施形態では、(a)被写体が遠視野内にあり、解像度を改善すべき場合、ならびに/または(b)被写体が近視野内にあり、視野を改善すべき場合、シフト振幅を第2の振幅に設定することができる。一実施形態では、(c)被写体が近視野内にあり、解像度を改善すべき場合、ならびに/または(d)被写体が遠視野内にあり、視野を改善すべき場合、シフト振幅は第1の振幅に設定される。したがって、異なる目的のために、つまり、異なるモードすなわち遠視野モード、近視野モードにある被写体を撮像するときに解像度または視野を拡張する異なる目的のために、同一のシフト振幅を使用することができる。第4のステップS104では、シフトされた像のセットを得るために、多芯ファイバ入力端面を上記シフト振幅だけシフトすることができる。第5のステップS105で、シフトされた像のセットを処理して、定義された改善、すなわちステップS101で得られた像(元の像とも呼ばれる)よりもよりよい解像度または視野を達成する、結合された像を得ることができる。
【0052】
シフトされた像のセットの処理とシフト振幅の設定とからなる上記実施形態については(シフト振幅の設定は、多芯ファイバに対する被写体の相対位置と、元の像で達成すべき撮像改善とに基づいている)、以下を考慮するとより良く理解することができる。つまり、
いかなる撮像システムでも、空間的に隣接する2つの特徴を識別する能力は限られている。この能力を制限する物理的要因は2つのタイプに分けることができる。第1のタイプは、被写体から撮像センサの方へ伝播される光の回折の効果に関連する(非特許文献8)。像平面において得られる回折による解像限界は以下と等しい。
δ=1.22λF
ここで、λは光学波の波長、Fは焦点距離と結像レンズの直径との比であるF値を示す。
【0053】
第2のタイプは、検出アレイの幾何形状に関連する(非特許文献8、9)。この幾何学的な限界を2種類の限界に分けることができる。第1の種類は、サンプリング画素のピッチすなわち2つの隣接する画素の間の距離に関連する。この距離によって、ナイキスト・サンプリング定理に従い、スペクトル・エイリアシング(信号を空間領域でサンプリング中に生じる)による回復可能な最大空間周波数が決まる。
δpitch=1/2νmax=1/BW
ここで、δpitchは隣接する画素同士の間のピッチ、νmaxは回復可能な最大空間周波数、BWはサンプリングされた像のスペクトルの帯域幅である。第2の種類は、各画素の形状に関連し、各画素がデルタ関数ではなく、したがって非理想的な空間サンプリングを具体化していることに関連する。
【0054】
実際には、多芯プローブによる解像度低下のタイプは、プローブの端面と被写体の間の距離(前出のU)によって決まる。
【0055】
回折の解像度低下が求められるのは、プローブの入力平面が被写体から比較的離れており(遠視野近似)、そのときその平面上の光の分布が結像レンズ開口上の光の分布に類似している場合である。その場合、ファイバの直径Dにより、そのファイバによって伝達される最大空間周波数が決まり、したがって像平面内で得られる空間解像度も決まる。
δ=λV/D
複数の芯が存在するということは、フーリエ平面におけるサンプリングと等価であり、それは、像平面での再現によって、取得可能な視野に対する限界的制約が生じることを意味する。
Δ=λV/d
ここで、Δは像平面内で取得可能な視野、dは多芯プローブ内の2つの隣接する芯の間のピッチである。
【0056】
幾何学的限界が求められるのは、ファイバと被写体の間の距離(U)が比較的小さく(近視野近似)、そのとき視野がファイバDの直径によって制限される場合であり、一方、2つの芯の間のピッチdにより、空間サンプリング解像度が決まる。
Δ=MDおよびδ=Md
Mは、ここで提案する撮像システムの縮小係数であり、これは以下に等しい。
M=V/(U+U
【0057】
本発明の撮像方法では、被写体が近視野にあるか遠視野にあるかどうかの検出に基づいて、したがってシフトされた像のセットを得るのに適切なシフト振幅の設定に基づいて、幾何学的限界または回折限界を選択的に克服し、それによって超解像処理の実行が可能になる。超解像では、その概念は、光学系を用いて撮像できない空間情報を他のいくつかの領域にエンコードするというものである。そしてそれを上記システムを介して伝達し、デコードする(非特許文献8)。そうするのに最も一般的な領域は時間領域である。
【0058】
したがって、ここで提案する構成における解像改善の実現方法は、以下の通りにすることができる。限界係数が回折と関連する遠視野配置の場合、ファイバ自体を適時にシフトさせることができる。この時間スキャニング操作は、合成開口レーダ(SAR)で行われるものと同様の、合成的に拡大される開口の生成と等価である。このスキャニング操作では、解像改善係数は、スキャンされる領域とプローブの直径Dの比に比例する。超解像の代わりに撮像視野を広くしたい場合は、その複数の芯によってスペクトル領域のオーバーサンプリングを生成するために、プローブをd未満の振幅でシフトする必要がある。この場合、芯未満の距離のシフトの実行後、各像が取得されると同時に像のセットが取り込まれる。次いで、効果的な芯未満のサンプリングを生成するために、それに応じて像は全て互いに組み合わされる。近視野近似の場合、時間スキャニングによってやはり、非特許文献9、10に記載されているように解像能力を改善することができる。この場合、dのサイズによってシフトが制限される。やはり、芯未満の距離のシフトの実行後、各像が取得されると同時に像のセットが取り込まれる。次いで、効果的な芯未満のサンプリングを生成するために、それに応じて像は全て互いに組み合わされる。解像改善の代わりに撮像視野を広くしたい場合、プローブはやはり、しかし今回はより大きな振幅でスキャニングを実行することができる。視野拡大は、シフト振幅とプローブの直径Dの比に比例する。
【0059】
図3に、本発明の一実施形態による撮像システムの多芯ファイバ20が示されている。多芯ファイバ20は、一方の端面をホルダ25によって保持することができる。多芯ファイバ20は、上述の方法を使用して高解像撮像を行う高解像撮像機能を可能にするのに十分となる多数の光芯線を有することができる。このファイバ内に製造される芯の数は約5,000〜10,000本である。このマイクロプローブはポリマー製で、芯はポリスチレン製、クラッドはポリメチルメタクリレート(PMMA)製である。波長632nmにおけるPSおよびPMMAの屈折率は、それぞれ1.59、1.49である。
【0060】
図4に、被写体から出る光を伝達するプローブの出力端面から見た多芯線220が示されている。図4に示されているプローブは、およそ5,000本の芯を有するが、この本数の芯であっても実際の空間解像度は、前述の方法に従って作り上げられた超解像処理のおかげでより高くなる可能性がある。この図では、波長630nmで空間情報を伝達するその何千もの光チャネルを確認することができる。各チャネルは基本的に、構築される像における別々の画素にすることができる。前述のように、各画素を個々に伝達でき、この内視鏡を基本的にマルチモードファイバではなく多芯ファイバにできることによって、ファイバの屈曲に反応しない像の生成が可能になる。この特徴により、多芯ファイバの屈曲が可能になり、多芯ファイバによる例えば内視鏡処置の実施が可能になる。
【0061】
図5(A)および図5(B)に、本発明の一実施形態による撮像システムによって取得された像の実験結果が示されている。図5(A)には、図3のマイクロプローブによる高解像度ターゲットの撮像が示されている。この示されている実験結果は、多芯ファイバによって後方に伝達され、検出器アレイ(CCDカメラ)上に結像された像を含む。撮像された被写体は解像度ターゲットであり、示されている像は、上列に左から右へ、回転した黒色の縦縞を有する被写体301と、回転した黒色の縦縞が被写体301に対して90度回転した被写体302を含む。2行目の列には左から右へ、小さな黒い矩形を有する被写体303、次いで大きな黒線を有し後方に伝達された像の左側に黒い矩形が現れる被写体304がある。図5(B)には、方形の解像度ターゲット305の3つのシフトされた像が示されており、その像は、異なる場所で撮像、すなわち、図3に示されている多芯ファイバを含んだ本発明の一実施形態による撮像システムを使用して、方形の解像度ターゲット305に対して多芯ファイバの入力端面をシフトすることによって撮像した。この図は、多芯ファイバ(マイクロプローブ)はその直径が非常に小さいが、取得したシフトされた像を適切にカスケード接続することによって、大きい視野を得ることができることを実証している。
【0062】
図6に、寒天溶液を介して撮像された直径およそ1μmを有するFeビーズ306の像の実験結果が示されている。高い空間識別能をさらに実証するために、実験を繰り返した。生物的媒体を介した撮像が可能であることを示すために、そして、製作した試作品の高い空間解像度によりミクロン以下の特徴間の空間分離が可能になることを実証するために、Feマイクロビーズ306の撮像を寒天溶液を介して行った。図6に示されている実験結果は、図3に示されている多芯ファイバを含んだ本発明の一実施形態による撮像システムを使用することによって行った。
【0063】
図7(A)および図7(B)に、スライド上でのラット心筋増殖の撮像が示されている。図7(A)には、ラット心筋の上から見た顕微鏡像が示され、図7(B)には、図3に示されている多芯ファイバを含んだ本発明の一実施形態による撮像システムを用いて撮像された、上記細胞(図7(A)の挿入画像に示されている)が示されている。測定のための細胞培養およびサンプルの準備は以下の通りであった。ラットの心筋細胞を摘出した。簡単に言えば、生まれたばかりのラットからの心臓をリン酸緩衝食塩水(PBS)内で洗浄し、小片に切り分け、タンパク質分解酵素−RDB(Biological Institute、Ness−Ziona、イスラエル)の溶液を用いて培養した。分離した細胞を、10%の不活性ウマ血清(バイオロジカルインダストリーズ(Biological Industries)、キブツ ベイト ハエメック(Kibbutz Beit Haemek)、イスラエル)および2%のニワトリ胚抽出液を含んだダルベッコー修飾イーグル培地(DMEM)内で懸濁させ、300×gで5分間、遠心力分離器にかけた。沈殿物(細胞ペレット)を増殖培地内で再懸濁させ、培養皿内のコラーゲン/ゼラチンでコーティングしたカバーガラス上に配置した。4日目に、細胞を、0.5〜5μMのDOXで18時間処理し、次いで、薬を使用しない増殖培地で追加の24時間処理した。細胞のサンプルを、顕微鏡のカバーガラス上で増殖させ、図3に示されている多芯ファイバを含んだ本発明の一実施形態による撮像システムによって撮像した。
【0064】
図8(A)〜8(D)に、鶏手羽肉の内部にある静脈の撮像が示されている。図8(A)には、鶏手羽肉領域の静脈307の上から見た顕微鏡像が示され、図8(B)〜8(D)には、図3に示されている多芯ファイバを含んだ本発明の一実施形態による撮像システムを用いて撮像された静脈307(実線矢印で示されている)が示されている。
【0065】
図9に、図3に示されている多芯ファイバを含んだ本発明の一実施形態による撮像システムによる鶏手羽肉に沿った撮像の実験結果が示されている。像51〜54は、鶏手羽肉における静脈のシフトされた像を示す(実線矢印で示されている)。像51〜54は、多芯ファイバの入力端面をシフトすることによって撮影した。多芯ファイバ(マイクロプローブ)の直径は200μmと等しいが、リアルタイム画像処理を用いて大きい像の構造を得ることができる。プローブ移動ユニット(この例ではマイクロプローブが配置される多軸の台)のシフト(または相対移動)を計算し、それを像移動に変換することによって、これを行うことができる。像51〜54はそれぞれ、撮像される静脈に沿ったマイクロプローブの異なる位置を示す。実際には、視覚化の観点から、上記画像は、単一の像にカスケード接続する代わりに、個別に示している。実線矢印55は静脈を示し、破線矢印は(ラベル文字も同様に)図9に示されている像の間のカスケード接続点を示す。上記4つの画像51〜54は、図9に示されている参照箇所A、B、CおよびDに対応し、画像51〜54のそれぞれで、破線56が、所与の像に対して他の像が現れる位置を示す。したがって、4つの画像はそれぞれ、大きい視野内で区分されたものになる。上記画像を適切にカスケード接続することによって、着目する検査領域(静脈など)の全長を得ることができる。かかるカスケード接続はまた、視野を改善するためのモザイク化または画像処理と呼ぶことができる。
【0066】
図10に、ラットの脳の内部から撮像するために使用される実験の構成が示されている。この構成は第1のモジュールおよび第2のモジュールを含む。第1のモジュールは、手術および実験処理中のラットの保持に使用される特殊なラットホルダ91を備え、第2のモジュールは、プローブ移動ユニット(台)に関連し、プローブ移動ユニットは、傾斜/回転台92、XYZステージ93およびV溝94を備え、V溝により、検査領域の内部におけるマイクロプローブ20の正確な操作が可能になる。脳組織内部における多芯ファイバ(マイクロプローブ)の操作は、プローブ移動ユニットを使用することによって行うことができ、プローブ移動ユニットは、XYZステージ93および傾斜/回転台92により、5軸の位置決めステージを実現する。この多軸ステージの上部で、V溝は、検査領域でのマイクロプローブの配置を可能にするファイバ素線ホルダとして構成される。
【0067】
図11は、図3に示されている多芯ファイバを含んだ本発明による撮像システムによって、図10に示されている実験構成を使用して撮像されたラット脳の静脈(実線矢印で示されている)を示す、白黒反転写真である。撮像は、脳組織の内部にマイクロプローブを挿入することによって行われる。簡単に言えば、この外科的処置は以下のようであった。ラットをケージ内に配置し、そこでイソフルランを気化器を介して注入した。その直後、ウレタン注射を使用してラットに麻酔をかけ、ラットを特殊なラット頭部ホルダに配置した。次いでおよそ7mmの直径の穴をラットのバレル皮質上に穿設した。これは解剖学的座標によって識別する。上記実験手順を行うために、硬膜を慎重に取り除いた。ここで提案する、実現したプローブは、その直径が一般に使用されている内視鏡と比較して非常に小さい一方で、同等の良好な空間解像度を実現するだけでなく、検査領域の内部への挿入と最小限の侵襲的損傷を共に可能にするということに留意されたい。
【0068】
上記の例および説明は、当然ながら、例示の目的のためだけに行ったものであり、本発明を限定するためのものではない。当業者には理解されるように、本発明は、本発明の範囲を超えずに、上述した技術のうちからいくつかを用いて様々な方法で実施することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11