特許第5989687号(P5989687)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5989687-送電線リレー盤リカバリー装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989687
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】送電線リレー盤リカバリー装置
(51)【国際特許分類】
   H02H 3/02 20060101AFI20160825BHJP
   H02H 3/00 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   H02H3/02 D
   H02H3/00 D
   H02H3/02 T
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-7470(P2014-7470)
(22)【出願日】2014年1月20日
(65)【公開番号】特開2015-136270(P2015-136270A)
(43)【公開日】2015年7月27日
【審査請求日】2015年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107467
【弁理士】
【氏名又は名称】員見 正文
(72)【発明者】
【氏名】福川 孝二
【審査官】 猪瀬 隆広
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−005468(JP,A)
【文献】 特開昭63−204327(JP,A)
【文献】 特開2013−247706(JP,A)
【文献】 特開2005−051911(JP,A)
【文献】 米国特許第05214560(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 1/00− 3/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電線事故発生時に遮断器を遮断して送電線を停電させる送電線リレー盤を再起動させるための送電線リレー盤リカバリー装置(10)であって、
前記送電線リレー盤が、自己診断機能を有するデジタルリレーユニットを備え、
前記デジタルリレーユニットが、
CPU(11〜1n)と、
該CPUに接続されたメモリ(21〜2n)と、
前記CPUおよび前記メモリに給電するための電源装置(4)と、
該電源装置に接続された電源スイッチ(5)とを備え、
前記送電線リレー盤リカバリー装置が、
前記CPUから前記メモリにエラーコードが新たに格納されたか否かを監視し、該エラーコードが新たに格納されると該エラーコードを該メモリから読み出すためのエラーコード監視手段と、
該エラーコード監視手段によって読み出された前記エラーコードが所定の本来のエラーコードであるか該本来のエラーコード以外の無意味なエラーコードであるかを判定するためのエラーコード判定手段と、
前記デジタルリレーユニットの自己診断機能により装置故障が発生していると判定された場合には前記送電線リレー盤を再起動させず、前記エラーコード判定手段によって前記エラーコードが前記無意味なエラーコードであると判定された場合にだけ前記電源スイッチを一度だけ切ったのちに入れて前記送電線リレー盤を再起動させるための再起動手段とを具備し、
前記エラーコード監視手段が、前記再起動手段によって前記送電線リレー盤を再起動させても前記無意味なエラーコードが再発生すると、前記装置故障以外の突発的装置故障が発生していると判定する、
ことを特徴とする、送電線リレー盤リカバリー装置。
【請求項2】
前記電源装置が前記送電線リレー盤リカバリー装置にも給電することを特徴とする、請求項1記載の送電線リレー盤リカバリー装置。
【請求項3】
前記エラーコード監視手段として機能するエラーコード監視部(11)を備え、
前記エラーコード判定手段として機能するエラーコード比較部(12)およびエラーコードメモリ(13)を備え、
前記再起動手段として機能する電源装置制御部(14)を備え、
前記エラーコード監視部が、前記エラーコードを前記メモリから読み出して前記エラーコード比較部に出力し、
前記エラーコード比較部が、前記エラーコード監視部から入力された前記エラーコードと前記エラーコードメモリに格納された前記本来のエラーコードとを比較し、該エラーコードが前記無意味なエラーコードであると再起動指示信号を前記電源装置制御部に出力し、
前記電源装置制御部が、前記再起動指示信号に応じて前記電源スイッチを一度だけ切ったのちに入れる、
ことを特徴とする、請求項1または2記載の送電線リレー盤リカバリー装置。
【請求項4】
前記送電線リレー盤を再起動しても前記突発的装置故障が発生するか否かを判定するための再起動後判定手段をさらに具備することを特徴とする、請求項1乃至3いずれかに記載の送電線リレー盤リカバリー装置。
【請求項5】
前記送電線リレー盤を再起動しても前記突発的装置故障が発生するか否かを判定するための再起動後判定手段をさらに具備し、
前記エラーコード監視部、前記エラーコード比較部および前記エラーコードメモリが前記再起動後判定手段としても機能し、
前記送電線リレー盤の再起動後に前記CPUから前記メモリに新たなエラーコードが格納されると、前記エラーコード監視部が該新たなエラーコードを該メモリから読み出して前記エラーコード比較部に出力し、
前記エラーコード比較部が、前記新たなエラーコードと前記エラーコードメモリに格納された前記本来のエラーコードとを比較して、該新たなエラーコードが前記無意味なエラーコードであると、無意味なエラーコードの再発生を示すエラーコード比較結果信号を前記エラーコード監視部に出力し、
前記エラーコード監視部が、前記エラーコード比較結果信号に応じて、前記突発的装置故障発生を示す突発的装置故障発生信号(SINFO)を遠隔監視制御盤に送信する、
ことを特徴とする、請求項3記載の送電線リレー盤リカバリー装置。
【請求項6】
前記再起動手段が、前記送電線に他の送電線リレー盤により二重に保護が掛けられていない場合には、1秒以内に前記送電線リレー盤を再起動させ、一方、前記送電線に他の送電線リレー盤により二重に保護が掛けられている場合には、2秒後に前記送電線リレー盤を再起動させることを特徴とする、請求項1乃至5いずれかに記載の送電線リレー盤リカバリー装置。
【請求項7】
前記再起動手段が、前記送電線に他の送電線リレー盤により二重に保護が掛けられていない場合には、1秒以内に前記送電線リレー盤を再起動させ、一方、前記送電線に他の送電線リレー盤により二重に保護が掛けられている場合には、2秒後に前記送電線リレー盤を再起動させ、
前記再起動手段として機能する、かつ、前記電源装置制御部からタイマ起動信号が入力されると動作を開始するとともに動作開始後2秒が経過すると2秒経過信号を該電源装置制御部に出力するタイマ(15)を備えることを特徴とする、請求項3または5記載の送電線リレー盤リカバリー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原因不明の装置故障時に送電線リレー盤を自動的に再起動させるのに好適な送電線リレー盤リカバリー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力会社では、短絡事故や地絡事故を検出したときに遮断器を自動的に遮断して送電線を停電させるために、送電線リレー盤を変電所に設置している。
送電線リレー盤が備えるデジタルリレーユニットは、自己診断機能を有しており、自己診断結果が装置故障発生となった場合には、送電線リレー盤を不使用にするとともに装置故障情報を伝送部6(図1(a)参照)および通信装置(不図示)を介して遠隔監視制御盤に送信して、装置故障発生を表示している。
【0003】
自己診断の標準的な監視項目および範囲は決められており(下記の非特許文献1参照)、最低限の監視項目は各メーカーとも準拠しているとともにこれにメーカー独自の監視項目などが追加されているため、常時30項目以上にわたって自己診断を行い、装置故障の内容によって重故障(各機能が重篤な状態になるような故障)と軽故障(軽微な故障)とに分けて表示出力している。
たとえば、重故障に関しては、3相平衡監視、零相監視、高調波重畳監視、A/D精度監視、サンプリング割り込み監視、サンプリング・アドレス監視、RAM監視、サムチェック、プログラム監視、インバリッド・チェック、パリティ、タイムアウトおよびウォッチドッグタイマについて各監視プログラムによって判定している。
軽故障についても、各項目について各監視プログラムによって判定している。
【0004】
デジタルリレーユニットの自己診断機能は、これらの監視プログラムの働きが健全性を維持できなくなった場合や入力される電気量が不調となった場合に、装置故障(重故障または軽故障)と判定している。
【0005】
遠隔監視制御盤に装置故障発生が表示されると、作業員が該当の送電線リレー盤が設置されている変電所に赴いて、ヒューマン・インターフェースやメンテナンス・パソコンを送電線リレー盤に接続して、装置故障の原因を探索している。
【0006】
なお、下記の特許文献1には、故障警報が出力された場合に、運転保守員が遠方制御用の制御部から不良が発生した保護制御装置に対して再起動信号を出力し、この再起動信号によって保護制御装置の主リレーおよび補助リレーのb接点を作動させて2本の電源線を開路して、保護制御装置の演算制御ユニットに対する給電を断ってリセットするようにした保護制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−090550号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】電気協同研究会、第50巻第1号、105〜117頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、作業員がメンテナンス・パソコンなどを送電線リレー盤に接続して装置故障の原因を探索する方法では、以下に示すような問題があった。
デジタルリレーユニットはマルチCPU(n個のCPU11〜1n図1(a)参照))によって構成されており、各CPU11〜1nは分散した機能および処理を独自に行っているとともにシステムバス3(図1(a)参照)を介して互いにリンクされてデータ交換を常時行っており、各監視プログラムは複数の処理から装置故障判定を行って装置故障発生を検出するとその内容を示す所定のエラーコード(“C011”や“48E0”などのように装置故障の内容に応じて予め定められたエラーコード。以下、「本来のエラーコード」と称する。)を各メモリ21〜2n図1(a)参照)に格納しているが、本来のエラーコード以外の無意味なエラーコード(たとえば、“0000”や“0F0F”など)がメモリ21〜2nに格納される場合がある。
このような場合でも、作業員が物理的に離れた変電所まで赴いて、メンテナンス・パソコンによって各メモリ21〜2nに格納されたエラーコードを読み出して、読み出したエラーコードが無意味なエラーコードであると、電源装置4(図1(a)参照)からマルチCPUへの給電を一旦停止させて送電線リレー盤を再起動させているため、特に深夜帯では、送電線の保護を維持するためにバックアップによる保護または送電線停止という対応が必要になる。
その結果、送電線リレー盤に重故障または軽故障以外の送電線リレー盤の再起動によってほとんど修復するような装置故障(以下、「突発的装置故障」と称する。)が生じた場合でも、系統運用や公衆災害などへの対応に支障を及ぼしたり停電範囲の拡大を生じさせたりしていた。
【0010】
なお、上記の特許文献1に開示された保護制御装置は、保護リレー装置に突発的装置故障(一過性の故障)が発生した場合には有効であると思われるが、突発的装置故障以外の重故障または軽故障が発生した場合でも演算制御ユニットを再起動させるため、これに費やされる時間だけ作業員の変電所への出動が遅れる結果、不必要に系統運用や公衆災害などへの対応に支障を及ぼしたり停電範囲の拡大を生じさせたりするという問題がある。
特に、送電線リレー盤の台数は送電線の数以上(たとえば、数千台)であるため、複数の送電線リレー盤において重故障または軽故障がほぼ同時に発生した場合の迅速な故障復旧ができなくなるという問題がある。
【0011】
本発明の目的は、不必要な系統運用などへの対応支障および停電範囲の拡大を防止することができる送電線リレー盤リカバリー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の送電線リレー盤リカバリー装置は、送電線事故発生時に遮断器を遮断して送電線を停電させる送電線リレー盤を再起動させるための送電線リレー盤リカバリー装置(10)であって、前記送電線リレー盤が、自己診断機能を有するデジタルリレーユニットを備え、前記デジタルリレーユニットが、CPU(11〜1n)と、該CPUに接続されたメモリ(21〜2n)と、前記CPUおよび前記メモリに給電するための電源装置(4)と、該電源装置に接続された電源スイッチ(5)とを備え、前記送電線リレー盤リカバリー装置が、前記CPUから前記メモリにエラーコードが新たに格納されたか否かを監視し、該エラーコードが新たに格納されると該エラーコードを該メモリから読み出すためのエラーコード監視手段と、該エラーコード監視手段によって読み出された前記エラーコードが所定の本来のエラーコードであるか該本来のエラーコード以外の無意味なエラーコードであるかを判定するためのエラーコード判定手段と、前記デジタルリレーユニットの自己診断機能により装置故障が発生していると判定された場合には前記送電線リレー盤を再起動させず、前記エラーコード判定手段によって前記エラーコードが前記無意味なエラーコードであると判定された場合にだけ前記電源スイッチを一度だけ切ったのちに入れて前記送電線リレー盤を再起動させるための再起動手段とを具備し、前記エラーコード監視手段が、前記再起動手段によって前記送電線リレー盤を再起動させても前記無意味なエラーコードが再発生すると、前記装置故障以外の突発的装置故障が発生していると判定することを特徴とする。
ここで、前記電源装置が前記送電線リレー盤リカバリー装置にも給電してもよい。
前記エラーコード監視手段として機能するエラーコード監視部(11)を備え、前記エラーコード判定手段として機能するエラーコード比較部(12)およびエラーコードメモリ(13)を備え、前記再起動手段として機能する電源装置制御部(14)を備え、前記エラーコード監視部が、前記エラーコードを前記メモリから読み出して前記エラーコード比較部に出力し、前記エラーコード比較部が、前記エラーコード監視部から入力された前記エラーコードと前記エラーコードメモリに格納された前記本来のエラーコードとを比較し、該エラーコードが前記無意味なエラーコードであると再起動指示信号を前記電源装置制御部に出力し、前記電源装置制御部が、前記再起動指示信号に応じて前記電源スイッチを一度だけ切ったのちに入れてもよい。
前記送電線リレー盤を再起動しても前記突発的装置故障が発生するか否かを判定するための再起動後判定手段をさらに具備してもよい。
前記送電線リレー盤を再起動しても前記突発的装置故障が発生するか否かを判定するための再起動後判定手段をさらに具備し、前記エラーコード監視部、前記エラーコード比較部および前記エラーコードメモリが前記再起動後判定手段としても機能し、前記送電線リレー盤の再起動後に前記CPUから前記メモリに新たなエラーコードが格納されると、前記エラーコード監視部が該新たなエラーコードを該メモリから読み出して前記エラーコード比較部に出力し、前記エラーコード比較部が、前記新たなエラーコードと前記エラーコードメモリに格納された前記本来のエラーコードとを比較して、該新たなエラーコードが前記無意味なエラーコードであると、無意味なエラーコードの再発生を示すエラーコード比較結果信号を前記エラーコード監視部に出力し、前記エラーコード監視部が、前記エラーコード比較結果信号に応じて、前記突発的装置故障発生を示す突発的装置故障発生信号(SINFO)を遠隔監視制御盤に送信してもよい。
前記再起動手段が、前記送電線に他の送電線リレー盤により二重に保護が掛けられていない場合には、1秒以内に前記送電線リレー盤を再起動させ、一方、前記送電線に他の送電線リレー盤により二重に保護が掛けられている場合には、2秒後に前記送電線リレー盤を再起動させてもよい。
前記再起動手段が、前記送電線に他の送電線リレー盤により二重に保護が掛けられていない場合には、1秒以内に前記送電線リレー盤を再起動させ、一方、前記送電線に他の送電線リレー盤により二重に保護が掛けられている場合には、2秒後に前記送電線リレー盤を再起動させ、前記再起動手段として機能する、かつ、前記電源装置制御部からタイマ起動信号が入力されると動作を開始するとともに動作開始後2秒が経過すると2秒経過信号を該電源装置制御部に出力するタイマ(15)を備えてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の送電線リレー盤リカバリー装置は、以下に示す効果を奏する。
(1)突発的装置故障を迅速に解消することができるとともに重故障または軽故障発生時には送電線リレー盤の再起動を行わせることなく作業員を即座に変電所に出動させることができるため、不必要な系統運用などへの対応支障および停電範囲の拡大を防止することができる。
(2)送電線リレー盤リカバリー装置の動作回数が増えると送電線リレー盤が故障する前兆と判断できるため、点検などによる予防保全が行い易くなる。
(3)突発的装置故障が発生する可能性がある遠方監視制御装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施例による送電線リレー盤リカバリー装置10について説明するための図であり、(a)はマルチCPUなどとの接続関係を示す図であり、(b)は送電線リレー盤リカバリー装置10のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記の目的を、無意味なエラーコードがメモリに格納されると送電線リレー盤を一度だけ自動的に再起動させることにより実現した。
【実施例1】
【0016】
以下、本発明の送電線リレー盤リカバリー装置の実施例について図面を参照して説明する。
本発明の送電線リレー盤リカバリー装置は、以下に示す点を特徴とする。
(1)送電線リレー盤の各CPU11〜1nから各メモリ21〜2nにエラーコードが新たに格納されたか否かを常時監視して、本来のエラーコード以外の無意味なエラーコードがメモリ21〜2nに新たに格納されると、送電線リレー盤を一度だけ再起動させる。なお、この再起動は、通常は電気設備の技術基準を満たすために1秒以内に行うが、送電線に他の送電線リレー盤により二重に保護が掛けられている場合には2秒後に行う。
(2)送電線リレー盤を再起動することにより本来のエラーコードおよび無意味なエラーコードのいずれもが各メモリ21〜2nに新たに格納されない場合には、「送電線リレー盤は正常に復帰した」と判定して、リカバリー復帰情報を遠隔監視制御盤に送信してリカバリー復帰を表示させる。
一方、送電線リレー盤を再起動させても無意味なエラーコードがメモリ21〜2nに新たに格納されると、「突発的装置故障が発生している」と判定して、送電線リレー盤を不使用にするとともに突発的装置故障発生情報を遠隔監視制御盤に送信して突発的装置故障発生を表示させる。
(3)電源装置4を送電線リレー盤リカバリー装置にも給電することにより、電源装置4の故障によって送電線リレー盤が停止した場合には動作しないようにする。
なお、この場合には、電源装置4の故障が発生したことを示す電源装置故障発生情報が従来の送電線リレー盤と同様にして遠隔監視制御盤に送信されるため、送電線リレー盤の再起動を行わせることなく作業員を即座に変電所に出動させることができる。
【0017】
以下、本発明の一実施例による送電線リレー盤リカバリー装置10(以下、「リカバリー装置10」と称する。)について、図1(a),(b)を参照して説明する。
本実施例によるリカバリー装置10は、デジタルリレーユニットに内蔵され、図1(a)に示すように、システムバス3を介してマルチCPUに接続されており、制御線を介して電源装置4の電源スイッチ5に接続されているとともに、電源線を介して電源装置4に接続されている。
【0018】
ここで、電源装置4には、DC100Vが外部から電源スイッチ5を介して供給されている。
電源スイッチ5は、後述する電源装置制御部14から入力される電源スイッチ制御信号SSWによってオン/オフ制御される。
【0019】
リカバリー装置10は、図1(b)に示すように、不揮発性メモリを内蔵するエラーコード監視部11と、エラーコード比較部12と、本来のエラーコードが格納されたエラーコードメモリ13と、電源装置制御部14と、タイマ15とを具備する。
【0020】
エラーコード監視部11は、各CPU11〜1nから各メモリ21〜2nにエラーコードが新たに格納されたか否かを常時監視し、エラーコードが各メモリ21〜2nのいずれかに新たに格納されると、このエラーコードをそのメモリ21〜2nから読み出してエラーコード比較部12に出力する。
【0021】
エラーコード比較部12は、ヒューマン・インターフェースなどを介して外部から入力されるモード設定信号SS(通常モード動作(送電線に他の送電線リレー盤により二重に保護が掛けられていないときの動作)および二重保護モード動作(送電線に他の送電線リレー盤により二重に保護が掛けられているときの動作)のいずれかを設定する信号)に応じて、通常モード動作および二重保護モード動作のいずれかを行う。
エラーコード比較部12は、エラーコード監視部11からエラーコードが入力されると、入力されたエラーコードとエラーコードメモリ13に格納された本来のエラーコードとを比較する。
その結果、入力されたエラーコードが本来のエラーコードのいずれにも一致しないと、エラーコード比較部12は、通常モード動作に設定されている場合には、1秒以内の再起動を指示する1秒以内再起動指示信号をエラーコード監視部11および電源装置制御部14に出力し、一方、二重保護モード動作に設定されている場合には、2秒後の再起動を指示する2秒後再起動指示信号をエラーコード監視部11および電源装置制御部14に出力する。
【0022】
電源装置制御部14は、1秒以内再起動指示信号がエラーコード比較部12から入力されると、1秒以内に電源スイッチ5を切ったのちに入れるように制御するスイッチ制御信号SSWを電源スイッチ5に出力する。
これにより、送電線に他の送電線リレー盤により二重に保護が掛けられていない場合には、送電線リレー盤が1秒以内に再起動される。
【0023】
一方、電源装置制御部14は、2秒後再起動指示信号がエラーコード比較部12から入力されると、タイマ起動信号をタイマ15に出力する。
タイマ15は、タイマ起動信号が電源装置制御部14から入力されると、動作を開始したのち、2秒経過後に2秒経過信号を電源装置制御部14に出力する。
電源装置制御部14は、2秒経過信号がタイマ15から入力されると、電源スイッチ5を切ったのちに入れるように制御するスイッチ制御信号SSWを電源スイッチ5に出力する。
これにより、送電線に他の送電線リレー盤により二重に保護が掛けられている場合には、送電線リレー盤が2秒後に再起動される。
【0024】
エラーコード監視部11は、1秒以内再起動指示信号または2秒後再起動指示信号がエラーコード比較部12から入力されると、再起動実施データを内蔵の不揮発性メモリに格納するとともに、送電線リレー盤を不使用にさせたり装置故障情報を遠隔監視制御盤に送信したりしないように指示するCPU指示信号SCPUを各CPU11〜1nに出力する。
これにより、従来の送電線リレー盤のように自己診断結果が装置故障発生となった場合に送電線リレー盤を不使用にするとともに装置故障情報を遠隔監視制御盤に送信して装置故障発生を表示させることを一旦止めさせることができる。
【0025】
その後、送電線リレー盤が再起動されると、エラーコード監視部11は、内蔵の不揮発性メモリに再起動実施データが格納されているか否かを調べ、再起動実施データが格納されていると、再起動してもエラーコードが各メモリ21〜2nのいずれかに新たに格納されるか否かを監視する。
【0026】
その結果、エラーコードが新たに格納されないと、エラーコード監視部11は、「送電線リレー盤は正常に復帰した」と判定して、リカバリー復帰情報を伝送部6および通信装置を介して遠隔監視制御盤に送信して装置リカバリー復帰を表示させる。
【0027】
一方、再起動してもエラーコードが各メモリ21〜2nのいずれかに新たに格納されると、エラーコード監視部11は、新たに格納されたエラーコード(以下、「新たなエラーコード」と称する。)をそのメモリ21〜2nから読み出してエラーコード比較部12に出力する。
【0028】
エラーコード比較部12は、エラーコード監視部11から新たなエラーコードが入力されると、新たなエラーコードとエラーコードメモリ13に格納された本来のエラーコードとを比較する。
【0029】
その結果、新たなエラーコードが本来のエラーコードのいずれにも一致しないと、無意味なエラーコードの再発生を示すエラーコード比較結果信号をエラーコード監視部11に出力し、一方、入力されたエラーコードが本来のエラーコードのいずれかに一致すると、本来のエラーコードの発生を示すエラーコード比較結果信号をエラーコード監視部11に出力する。
【0030】
エラーコード監視部11は、無意味なエラーコードの再発生を示すエラーコード比較結果信号がエラーコード比較部12から入力されると、「突発的装置故障が発生している」と判定して、送電線リレー盤を不使用にさせるように指示するCPU指示信号SCPUを各CPU11〜1nに出力するとともに、突発的装置故障発生を示す突発的装置故障発生信号SINFOを伝送部6および通信装置を介して遠隔監視制御盤に送信して突発的装置故障発生を表示させる。
【0031】
一方、本来のエラーコードの発生を示すエラーコード比較結果信号がエラーコード比較部12から入力されると、エラーコード監視部11は、送電線リレー盤を不使用にさせるとともに装置故障情報を遠隔監視制御盤に送信するように指示するCPU指示信号SCPUを各CPU11〜1nに出力する。
【0032】
以上の説明では、デジタルリレーユニットはマルチCPUを備えたが、デジタルリレーユニットがCPUおよびメモリを1個ずつ備えた送電線リレー盤についてもリカバリー装置10を内蔵させることにより同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0033】
1〜1n CPU
1〜2n メモリ
3 システムバス
4 電源装置
5 電源スイッチ
6 伝送部
10 リカバリー装置
11 エラーコード監視部
12 エラーコード比較部
13 エラーコードメモリ
14 電源装置制御部
15 タイマ
S モード設定信号
SW スイッチ制御信号
CPU CPU指示信号
INFO 突発的装置故障発生信号
図1