(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989697
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】レーザ式ガス分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3504 20140101AFI20160825BHJP
G01N 21/61 20060101ALI20160825BHJP
G01N 21/15 20060101ALI20160825BHJP
G01N 1/00 20060101ALN20160825BHJP
【FI】
G01N21/3504
G01N21/61
G01N21/15
!G01N1/00 101R
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-54171(P2014-54171)
(22)【出願日】2014年3月17日
(65)【公開番号】特開2015-175796(P2015-175796A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2015年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼政 賢治
【審査官】
奥田 雄介
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭60−105946(JP,A)
【文献】
特開2013−231638(JP,A)
【文献】
特開2003−042915(JP,A)
【文献】
特開2012−053038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/3504
G01N 21/15
G01N 21/61
G01N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス流路の内部に挿入される円筒部材のガス採取管と、
前記円筒部材が延びる方向に沿って計測用の光を発光する発光部と、
前記円筒部材の内部空間を通過した前記計測用の光を受光する受光部と、
前記円筒部材の径方向外側に配置された整流板と、
外側からみて前記整流板に覆われる位置の前記円筒部材に開けられた気体導入孔とを備え、
前記排ガス流路の上流側の前記ガス採取管と前記整流板との距離は、前記排ガス流路の下流側の前記ガス採取管と前記整流板との距離よりも大きく、
前記気体導入孔から導入される、前記排ガス流路の排ガスが前記円筒部材の内壁に沿って旋回流となることを特徴とするレーザ式ガス分析装置。
【請求項2】
前記円筒部材が延びる方向において前記気体導入孔とは異なる位置であって、外側からみて前記整流板に少なくとも一部が覆われる位置の前記円筒部材に開けられ、前記内部空間の排ガスを排出する気体排出孔を備え、
前記気体排出孔は、前記気体導入孔よりも前記整流板の下流側端部に近いことを特徴とする請求項1に記載のレーザ式ガス分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ式ガス分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラ等の排ガス中から窒素酸化物(NOx)を脱硝する脱硝装置が知られている。このような脱硝装置は、排ガス中にアンモニアガスを注入して排ガスとアンモニアガスとを混合し、その混合ガスを脱硝触媒に接触させることにより窒素ガスと水蒸気とに還元する。
【0003】
このようなアンモニアガスの注入を過不足なく行うためには、例えば、脱硝装置の出口側の排ガス流路において排ガスの一部を採取し、これに含まれるアンモニア量(濃度)を精度よく測定する必要がある。そのため、特許文献1及び特許文献2の技術のように、排ガス流路内に排ガス採取管を設け、この排ガス採取管を介して排ガス流路外へ排ガスの一部を採取していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−093156号公報
【特許文献2】特開2010−236877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
排ガス流路は、残存する煤塵などのダストを含み、レーザ式ガス分析により対象ガスであるアンモニアの濃度を精度よく計測するには煤塵などのダストを集塵する必要がある。煤塵などのダストが多い場合、レーザ式ガス分析は、対象ガス分析の精度が低下する可能性がある。煤塵などのダストを集塵する方法としては、特許文献2に記載の電気集塵機などがあるが、動力源が必要となり、サンプリングする範囲でよりダスト量を低減しようとすると、より簡易に分析するガスの集塵を行うことが望まれている。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、無動力でダストの影響を抑制し、ガス分析の精度の高いレーザ式ガス分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のレーザ式ガス分析装置は、排ガス流路の内部に挿入される円筒部材のガス採取管と、前記円筒部材が延びる方向に沿って計測用の光を発光する発光部と、前記円筒部材の内部空間を通過した前記計測用の光を受光する受光部と、を備え、前記円筒部材の内壁に開けられた気体導入孔から導入される、前記排ガス流路のガスが前記円筒部材の内壁に沿って旋回流となることを特徴とする。
【0008】
これにより、排ガスに含まれるダストは、旋回流でガス採取管の内壁側に押し付けられ、測定用の光が通過する領域では、ダスト量が低減する。その結果、レーザ式ガス分析装置は、ガス分析の精度が高くなる。
【0009】
本発明の望ましい態様として、前記円筒部材が延びる方向において前記気体導入孔とは異なる位置の前記円筒部材に開けられた気体排出孔から、前記内部空間のガスを排出することが好ましい。この構造により、旋回流がスパイラルとなり、より煤塵などのダストが光路の通過する領域から低減する。その結果、レーザ式ガス分析装置は、ガス分析の精度が高くなる。
【0010】
本発明の望ましい態様として、前記気体導入孔の径方向外側に配置された整流板を備え、前記排ガス流路の上流側の前記ガス採取管と前記整流板との距離は、前記排ガス流路の下流側の前記ガス採取管と前記整流板との距離よりも大きいことが好ましい。この構造により、無動力で、煤塵などのダストを低減した状態で、ガス分析することができる。
【0011】
本発明の望ましい態様として、前記気体排出孔は、前記気体導入孔よりも前記整流板の下流側端部に近いことが好ましい。その結果、ガス採取管からのダストの排出がスムーズになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、無動力でダストの影響を抑制し、精度の高いレーザ式ガス分析装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るレーザ式ガス分析装置を模式的に説明する上面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るレーザ式ガス分析装置の断面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係るレーザ式ガス分析装置の気体導入孔を説明するための説明図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係るレーザ式ガス分析装置の気体排出孔を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0015】
図1は、本実施形態に係るレーザ式ガス分析装置を模式的に説明する上面図である。
図2は、本実施形態に係るレーザ式ガス分析装置の断面図である。
図3は、本実施形態に係るレーザ式ガス分析装置の気体導入孔を説明するための説明図である。
図3の断面は、
図2のA−A断面である。
図4は、本実施形態に係るレーザ式ガス分析装置の気体排出孔を説明するための説明図である。
図4の断面は、
図2のB−B断面又はC−C断面である。なお、以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部の位置関係について説明する。後述する光路が進行する方向はX軸方向といい、X軸方向と直交する方向はY軸方向といい、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向をZ軸方向とする。なお、X軸は、YZ平面と直交する。Y軸は、XZ平面と直交する。Z軸は、XY平面と直交する。XY平面は、X軸及びY軸を含む。XZ平面は、X軸及びZ軸を含む。YZ平面は、Y軸及びZ軸を含む。本実施形態において、後述する排ガス流路の排ガスは、Z軸方向に沿って流通しているものとする。
【0016】
本実施形態のレーザ式ガス分析装置100は、送受信ユニット10と、ガス採取ユニット30と、ミラーユニット20と、制御装置40とを備えている。
【0017】
本実施形態のレーザ式ガス分析装置100は、流路壁90に囲まれた排ガス流路91に取り付けられている。排ガス流路91は、脱硝装置の出口側の排ガス流路であって、大気CAと隔離された排ガスV中に含まれるアンモニア量(濃度)を精度よく測定する必要がある。
【0018】
本実施形態のレーザ式ガス分析装置100は、ミラーユニット20側のガス採取ユニット30を流路壁90を貫通させ、排ガス流路91内へ
図1に示すX軸方向に挿入している。
図1に示すように、ガス採取ユニット30は、ガス採取管31と、整流板32を備えている。
【0019】
制御装置40は、CPU(:Central Processing Unit)41、ROM(:Read Only Memory)、RAM(:Random Access Memory)等のメモリ42と、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等の記憶部43とを備える。
【0020】
送受信ユニット10は、発光部11と、受光部12と、信号処理回路13と、光学部材14とを備える。ミラーユニット20は、ミラー21と、光学部材22とを備える。光学部材14、光学部材22は、レンズなどで光学系の焦点を設定し、エアーシャッターなどを備えている。発光部11は、レーザダイオードが測定対象ガスのアンモニア特有の吸収波長に合致した波長のレーザ光を発生させ、ミラーユニット20が備えるミラー21に反射させ、受光部12へ受光させる。受光部12は、例えばフォトダイオードである。本実施形態の計測用の光は、赤外線の波長領域の光である。
【0021】
図2に示すように、制御装置40は、入出力インターフェースを介して、信号処理回路13に接続されている。信号処理回路13は、発光部11及び受光部12に接続され、発光部11のレーザ発光及び受光部12の検出値を電気信号に変換して制御装置40へ送出する。レーザ光は、X軸方向に平行に照射されており、往路光路LTと、復路光路LRとは平行である。本実施形態では、ミラー21を用いたが、発光部11と受光部12とがガス採取管31を介して対向する位置に配置され、受光部12は、発光部11の発光する、ガス採取管31の内部空間を通過したレーザ光を受光してもよい。制御装置40は、CPU41がメモリ42と協働して、受光部12の検出値から対象ガスの濃度(例えば、アンモニア量)を演算し、記憶部43へ演算値を記憶する。
【0022】
ガス採取管31は、
図2、
図3及び
図4に示すように、長手方向がX軸方向に延びる筒状であって、Y−Z平面において円環状の円筒部材である。ガス採取管31は、X軸方向の異なる位置に、排ガス流路91の排ガスVの一部を内部の内部空間へ導入する気体導入領域IJと、内部空間の排ガスVを排ガス流路91へ排出する気体排出領域EJと、を備えている。
【0023】
図3及び
図4に示すように、整流板32は、ガス採取管31に隣接する位置に固定されている。排ガスの流れ方向をGとした場合、Z軸方向に排ガスが流れている。排ガス流路91の上流側のガス採取管31と整流板32との距離L1は、排ガス流路91の下流側のガス採取管31と整流板32との距離L2よりも大きい。この構造により、排ガス流路91の上流側のガス採取管31との間に、導入路32iができ、排ガス流路91の下流側のガス採取管31と整流板32との間に放出路32eができる。
【0024】
導入路32iのX−Y平面の断面積は、放出路32eのX−Y平面の断面積よりも大きい。この構造により、導入路32iより進入した排ガス流g1は、放出路32eに近くなるに従って、流速を増加させる。
【0025】
図2に示す気体導入領域IJは、
図3に示すように、ガス採取管31の壁面に気体導入孔33が開けられている。気体導入領域IJのガス採取管31の周方向の壁面端部33f1、壁面端部33f2は、
図3に示す気体導入孔33に面している。ガス採取管31の周方向の壁面端部33f1と、ガス採取管31の中心Xrと、壁面端部33f2とがなす角度θ1の範囲は、外側からみて、整流板32で覆われている。このように、壁面端部33f1又は壁面端部33f2は、整流板32に対向している。
【0026】
図2に示す気体排出領域EJは、
図4に示すように、ガス採取管31の壁面に気体排出孔34が開けられている。気体排出領域EJのガス採取管31の周方向の壁面端部34f1、壁面端部34f2は、
図4に示す気体排出孔34に面している。ガス採取管31の周方向の壁面端部34f1と、ガス採取管31の中心Xrと、壁面端部34f2とがなす角度θ2の範囲は、外側からみて、一部又は全部が整流板32で覆われておらず、露出している。このように、壁面端部34f1又は壁面端部34f2の少なくとも1つは、整流板32に対向している。なお角度θ2は、角度θ1より狭く、ガス採取管31の中心Xrの周りの周方向において角度θ1の位置とずれている。
【0027】
図3に示すように、導入路32iより進入した排ガス流g1は、気体導入孔33で一部がガス採取管31の内部空間に排ガス流g2として取り込まれ、残部が放出路32eから排ガス流g0として排出される。ガス採取管31の内部空間に侵入した排ガス流g2には遠心力が作用し、排ガス流g3、排ガス流g4、排ガス流g5、排ガス流g6の順に旋回する旋回流となる。
【0028】
図4に示すように、導入路32iより進入した排ガス流g1は、気体導入孔33で取り込まれることなく、放出路32eから排ガス流g7として排出される。放出路32eから排出される排ガス流g7は、排ガス流g0よりも流速が早くなる。排ガスg7は、気体排出孔34の周囲を通過し、この排ガスg7に巻き込まれた排ガス流e4を引き起こす。排ガス流e4は、気体排出孔34の周囲の圧力を低下させ、ガス採取管31の内部空間を吸引して排ガス流e3を、排ガス流e2、排ガス流e1の旋回流を引き起こす。
図2に示すように、気体導入領域IJ(
図3に示す気体導入孔33)とX軸方向において異なる位置に気体排出領域EJ(
図4に示す気体排出孔34)を開けているので、排ガス流e1は、X軸方向への気流を受けてスパイラル状の旋回流となり、ガス採取管31の内部空間で長い間、排ガスが旋回する。
【0029】
以上説明したように、本実施形態のレーザ式ガス分析装置100は、排ガス流路91の内部に挿入される円筒部材のガス採取管31と、ガス採取管31の内部空間をレーザの光路である往路光路LT及び復路光路LRが通過するように一対の発光部11及び受光部12と、を備える。そして、ガス採取管31に開けられた気体導入孔33から導入される、排ガス流路91の排ガスがガス採取管31の内壁に沿って旋回流となる。煤塵などのダストは、旋回流でガス採取管31の内壁側に押し付けられ、往路光路LT及び復路光路LRが通過する領域では、ダスト量が低減する。その結果、本実施形態のレーザ式ガス分析装置100は、ガス分析の精度が高くなる。
【0030】
往路光路LT及び復路光路LRの進行方向であるX軸方向において気体導入孔33がある気体導入領域IJとは異なる気体排出領域EJに開けられた気体排出孔34から、内部空間の排ガスが排出される。これにより、旋回流がスパイラルとなり、より煤塵などのダストが往路光路LT及び復路光路LRから低減する。
【0031】
レーザ式ガス分析装置100は、ガス採取管31の径方向外側に配置された整流板32を備え、排ガス流路91の上流側のガス採取管31と整流板32との距離L1は、排ガス流路91の下流側のガス採取管31と整流板32との距離L2よりも大きい。これにより、レーザ式ガス分析装置100は、無動力で、煤塵などのダストを低減した状態で、ガス分析することができる。
【0032】
気体排出孔34は、気体導入孔33よりも整流板の下流側端部に近い。この構造により、放出路32eから排出される流速の早い排ガス流g7のエネルギーを利用して、気体排出孔34からの排出をスムーズにすることができる。
【符号の説明】
【0033】
10 送受信ユニット
11 発光部
12 受光部
13 信号処理回路
14 光学部材
20 ミラーユニット
21 ミラー
22 光学部材
30 ガス採取ユニット
31 ガス採取管
31 排ガス流路
32 整流板
32i 導入路
32e 放出路
33 気体導入孔
34 気体排出孔
40 制御装置
42 メモリ
43 記憶部
90 流路壁
91 排ガス流路
100 レーザ式ガス分析装置
EJ 気体排出領域
IJ 気体導入領域
LR 復路光路
LT 往路光路
V 排ガス
Xr 中心