【文献】
Hiroyuki Oguma,etc.,BOAT-BASED MONITORING SYSTEM FOR SHALLOW-WATER BOTTOM FEATURES,Proceedings of ISRS 2013 ,The Remote Sensing Society of Japan ,2013年 5月15日,p.521
【文献】
小熊宏之,ボート搭載型の水中カメラを用いた浅海底観測システムの開発,国立研究開発法人国立環境研究所,国立研究開発法人国立環境研究所,2014年 2月 6日
【文献】
Masahiko Sasano,etc.,Development of boat-based fluorescence imaging lidar for coral monitoring,Proceedings of the 12th International Coral Reef Symposium,2012年 7月 9日,5A Remote sensing of reef environments
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数の水中カメラがシャッター制御可能なビデオカメラにより構成され、前記複数のビデオカメラが左右に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の浅海底観測システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、音響測深機によって観測する場合に得られる情報は、魚群探知機、シングルビーム、ナローマルチビームなどの超音波反射による水深情報に限られるため、可視光域を含む色彩などの光学的性状に関する情報を反映することができないという問題がある。
【0007】
一方、ビデオカメラによって得られる水中映像は、水中における動的観測により光学的性状を把握することが可能になるが、一過性の映像情報で、地理座標を持たないため、水底の態様に関する光学的性状全般に及ぶ定量解析の基礎となり得ないという問題があった。
【0008】
したがって、本発明は、浅水域の水底情報によって、広範囲の水底態様の光学的性状全般に及ぶ定量解析を可能とする浅海底観測システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のかかる目的は、
観測器材を水上移動可能に搭載支持する移動支持浮体と、
前記移動支持浮体に搭載された可視光を検出する複数の水中カメラと、
前記複数の水中カメラの姿勢を
検出し、前記複数の水中カメラの撮影位置を
検出する
姿勢/GPSセンサとを備え、
前記複数の水中カメラによって撮影された撮影画像と前記
姿勢/GPSセンサによって検出された
前記複数の水中カメラの姿勢および撮影位置とを同期記録する収録手段と、
前記収録手段の記録画像を処理する画像処理部を備え、
前記画像処理部が、前記水中カメラによって撮影された複数の撮影画像の重複範囲について、それぞれの撮影条件に基づく画像処理によって地理座標を付与されたDSMデータと、正射投影写真図を作成可能に構成されたことを特徴とする浅海底観測システム
によって達成される。
【0010】
本明細書において、DSMはDigital Surface Modelの略語であり、数値表層モデルをいう。
【0011】
本発明によれば、移動支持浮体は水上移動可能に観測器材を搭載支持し、水中カメラは移動支持浮体に支持されて水底を撮影し、
姿勢/GPSセンサにより、水中カメラの
姿勢および撮影位置を検出し、収録手段により
水中カメラによって撮影された撮影画像および
水中カメラの姿勢および撮影位置を同期して記録し、画像処理部により、撮影画像データの画像処理が実行され、水中カメラによる複数の撮影画像の重複範囲につき、それぞれの撮影条件に基づく正射投影処理をすることによって、正射投影画像が出力され、この正射投影画像によって広範囲の水底態様の光学的性状全般に及ぶ定量解析を可能とし、また、後における同様の対比観測によって得られる同一範囲の正射投影画像との比較による経時的変化を定量的に把握することが可能になる。
【0012】
本発明の好ましい実施態様においては、前記水中カメラがシャッター制御可能なビデオカメラであり、前記複数のビデオカメラは左右に配置されている。
【0013】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、ビデオカメラが左右に配置されているから、10mに満たない近接距離の水底画像について80%の重複範囲を確保して,効率よく撮影することができ、また、シャッター制御により、波浪による急激な視点変動があっても、明瞭な水底画像を撮影することができるので、画像処理精度の向上を図ることができる。
【0014】
本発明の好ましい実施態様においては、浅海底観測システムはさらに、水底までの距離を計測可能な測距装置を備えている。
【0015】
本発明の好ましい実施態様においては、前記測距装置が、レーザを用いて、水底までの距離を計測可能なレーザ測距装置によって構成されている。
【0016】
本発明の好ましい実施態様によれば、浅海底観測システムは、可視光を検出する複数の水中カメラに加えて、水底までの距離を計測可能なレーザ測距装置を備えているから、水質が汚濁しているために、可視光を検出する水中カメラによって、精度よく、水底表面データを作成することができず、可視光を検出する水中カメラによって得られる水底表面データの一部が欠損している場合や、可視光を検出する水中カメラによって水底を撮影するときに、陰になってしまい、精度よく、水底表面データを作成することができず、可視光を検出する水中カメラによって得られる水底表面データの一部が欠損している場合、太陽光線の陰りや夜明け/薄暮時、あるいは、コントラストがきわめて高く、そのために明るさが不足して十分な露光が得られない部分ができ、水底表面データの一部が欠損している場合、左右に配置されたビデオカメラによって得られる水底表面画像の結合処理(画像マッチング処理)がうまく出来ずに、水底表面データの一部が欠損している場合にも、レーザや超音波等を利用したレーザ測距装置によって水底までの距離を測定し、可視光を検出する水中カメラによって得られる水底表面データの欠損を補完することが可能になる。
【0017】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記レーザ測距装置が、前記移動支持浮体の下面に取り付けられている。
【0018】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、可視光を検出する前記複数の水中カメラが前記移動支持浮体の左右の両外側またはその一方に配置されている。
【0019】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、移動支持浮体の左右の両外側またはその一方に水中カメラを配置することにより、左右または前後の視差画像を収録することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、浅水域の水底情報によって、広範囲の水底態様の光学的性状全般に及ぶ定量解析を可能とする浅海底観測システムを提供することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の好ましい実施態様にかかる浅海底観測システムの機能構成図である。
【0024】
図1に示されるように、本発明の好ましい実施態様にかかる浅海底観測システム1は、水上移動可能に観測器材を搭載支持する移動支持浮体2と、移動支持浮体2に支持されて水底画像を撮影する一対の水中ビデオ(ビデオカメラ)3、3と、一対のビデオカメラ3、3の撮影位置と撮影時の姿勢を検出する撮影条件検出部材(GPS/ジャイロ装置(姿勢計測装置))4と、一対のビデオカメラ3、3によって撮影された水底画像および特定された撮影条件を同期して記録する収録部(ビデオレコーダ)5と、収録部5に記録された水底画像および撮影条件に基づいて、移動支持浮体2上でリアルタイムに水底画像を画像処理し、あるいは、撮影作業終了後に水底画像の画像処理をする画像処理部6を備えたパーソナルコンピュータ7を備えている。
【0025】
本実施態様において、移動支持浮体2は、アウトリガータイプの小型ボート、ゴムボート、漁船等の専用または汎用の浮体と、カメラとジャイロを支持し、浅海域に幅広く適用でき、かつ、安定撮影を可能とする架台である専用支持体とによって構成されている。移動支持浮体2は、曳航または自走により、計画の撮影行程線に沿って水上移動され、水底観測を行われる。
【0026】
各ビデオカメラ3としては、ハウジング内に収納され、電子制御可能な高速シャッターを備えた水中撮影可能なビデオカメラが用いられている。ビデオカメラ3としては、それぞれ、10mに満たないような近接距離の水底画像の80%を重ねた撮影を可能とし、波浪による揺れを受けた場合でも、高速シャッターによって鮮明画像を収録可能なものが用いられ、浅海域の移動のために、移動支持浮体2に支持されている。
【0027】
一対のビデオカメラ3、3は、移動支持浮体2の左右両側に配置されている。
【0028】
GPS/ジャイロ装置(姿勢計測装置)4は、ビデオカメラ3、3の位置とビデオカメラ3、3の光軸方向の姿勢データを検出し、高精度のDGPSを適用可能に構成されている。
【0029】
収録部(ビデオレコーダ)5は、各ビデオカメラ3、3によって撮影された水底画像と撮影条件とを同期して記録メディアに収録し、これを移動支持浮体2上に搭載されたパーソナルコンピュータ7の画像処理部6に入力し、あるいは、可搬メディアまたは無線伝送によって、地上に位置したパーソナルコンピュータ7の画像処理部6に入力可能に構成されている。
【0030】
画像処理部6には、一対のビデオカメラ3、3によって生成された海底の映像データ、一対のビデオカメラ3、3の姿勢データおよび一対のビデオカメラ3、3の位置データが入力され、画像処理部6は、これらのデータに基づいて、ステレオマッチングにより、地理座標上で表現される数値地表モデルであるDSMモデルを作成するように構成されている。
【0031】
図2は、
図1に示された本発明の好ましい実施態様にかかる浅海底観測システム1におけるDSM作成部と正射写真図作成部のブロックダイアグラムである。
【0032】
図2に示されるように、DSM作成部11は、レンズ補正を含む前処理を経た映像データ、一対のビデオカメラ3、3の姿勢データとカメラ位置データから、海底表面形状を表す数値地表モデルである地理座標上で示されるDSMデータを出力するように構成され、正射写真図作成部12は、DSM作成部11からDSMデータを受けて、正射投影写真画像を作成するように構成されており、これらによって、浅海底の正射投影写真図を作成可能に構成されている。
【0033】
より詳細には、左右一対のビデオカメラ3,3が用いられた本実施態様にかかる浅海底観測システム1においては、DSM作成部11により、左右一対のビデオカメラ3、3によって撮像された海底画像データにつき、それぞれ、姿勢データにより縦視差を除去後に、画像マッチングにより横視差を算出し、同期して観測した一対のビデオカメラ3、3の位置データおよび姿勢データと、別途観測したカメラパラメータを用いて、写真測量で用いられる共線条件式により地理座標上で海底表面形状のDSMデータが算出される。
【0034】
また、左右一対のビデオカメラ3,3のうち、一方のビデオカメラ3の映像から、レンズ歪み等が除去され、進行方向に80%ラップしたペア画像が作成され、姿勢データによる横視差の除去後に、画像マッチングにより縦視差が算出され、同期して観測されたカメラ位置・姿勢データと、別途観測したカメラパラメータを用い、写真測量で用いられる共線条件式によって、地理座標上で海底表面形状のDSMデータが算出される。
【0035】
これら2つのDSMデータを合成し、あるいは、DSMデータの一方を単独で使用することにより、ある地理座標上で示されたDSMデータが作成される。
【0036】
また、正射写真図作成部12は、左右一対のビデオカメラ3、3の映像から1/30秒毎の画像を作成し、カメラパラメータを用いて、レンズ歪みを除去した後に、同期して観測した一対のビデオカメラ3、3の位置データおよび姿勢データを用いて、上述のDSMデータに画像の流れの少ない画像を投影する。流れの少ない画像は、1/30秒毎の画像同士の差分を取った動きの少ない画像で、かつ、エッジがシャープな画像とする。
【0037】
なお、カメラパラメータの観測については、別途水槽内に設置したターゲットを水中ビデオカメラで撮影し、写真測量式を用いて焦点距離・レンズ歪みの補正を行う。
【0038】
以上のように構成された本実施態様にかかる浅海底観測システム1においては、移動支持浮体2を観測水域まで移送した上で、観測初期値取得のための水深検出と移動支持浮体2に搭載された一対のビデオカメラ3、3の下降とによって観測を開始する。
【0039】
観測は、移動支持浮体2を曳航又は自走によって、観測計画線に沿って移動させつつ、一対のビデオカメラ3、3によって海底画像を撮影するとともに、GPS/ジャイロ装置4によって、一対のビデオカメラ3、3の撮影条件である視点位置と光軸方向を検出し、収録部(ビデオレコーダ)5によって、両者を同期記録する。
【0040】
観測の終了後に、記録メディアに収録されたデータは、移動支持浮体2上に搭載されたパーソナルコンピュータ7の画像処理部6に入力され、あるいは、可搬メディアまたは無線伝送によって、地上に位置したパーソナルコンピュータ7の画像処理部6に入力されて、正射投影画像処理が実行される。
【0041】
この画像処理出力は、従来の等深線や符号で示されていた浅海域の珊瑚礁や浅瀬をカラーで視覚的に表すことによって、浅海域の珊瑚礁や浅瀬の状況を視覚的に分りやすく示すことができる。
【0042】
したがって、本実施態様によれば、浅海域の珊瑚礁や浅瀬の水中環境をカラーで面的に捉えることができるから、色の違いによる珊瑚礁や浅瀬の植生(藻)の成育状況を把握することが可能となる。
【0043】
また、本実施態様によれば、短時間の観測によって、広範囲の浅海底について高精度の写真地図情報の取得が可能となるから、珊瑚や植生の分布範囲の量的な把握に加え、可視光域を中心とする光学的性状全般に及ぶ定量解析により、珊瑚の成育白化状況等の質的な把握ができるとともに、後の対比観測により、同じ地理座標位置におけるその間の経時的な変化の捕捉が可能となる。
【0044】
図3は、本発明の別の好ましい実施態様にかかる浅海底観測システムの略斜視図である。
【0045】
図3に示されるように、本実施態様にかかる浅海底観測システム20においては、
図1および
図2に示された浅海底観測システム1と同様に、水上移動可能に観測器材を搭載支持する移動支持浮体2と、移動支持浮体2に支持されて水底画像を撮影する一対のビデオカメラ3、3と、移動支持浮体2の下面に取り付けられ、海底面をレーザビームによって走査するレーザ測距装置8を備えている。
【0046】
図3において、参照符号52、52で示されているのは、一対のビデオカメラ3、3によって撮影された海底面の撮影領域であり、
図3に示されるように、一対のビデオカメラ3、3の撮影領域52、52は、重複領域53において、重複している。
【0047】
図4は、
図3に示された本発明の好ましい実施態様にかかる浅海底観測システム20の構成要素を示すブロックダイアグラムである。
【0048】
図4に示されるように、浅海底観測システム20は、パーソナルコンピュータ30と、同期信号発生装置31と、一対のビデオカメラ3、3と、ビデオレコーダ33、33と、ビデオ編集機34、34と、GPS/ジャイロ装置4と、レーザ測距装置8を備えている。図示されてはいないが、パーソナルコンピュータ30は、画像処理部6を備えている。
【0049】
図4に示されるように、浅海底観測システム20は、さらに、DSMデータを生成するDSM生成部11と、DSMデータに基づいて、正射写真図作成部12を備えている。
【0050】
図5は、レーザ測距装置8のレーザビーム放出部の略斜視図である。
【0051】
図5に示されるように、レーザ測距装置8は、レーザビーム40をパルス状に放出するLEDレーザ光源41を備え、LEDレーザ光源41から放出されたレーザビーム40は、コリメータレンズ42に入射して、平行なビームに変換される。コリメータレンズ42によって平行なビームに変換されたレーザビーム40は拡散部材43に入射し、レーザビーム40は、拡散部材43によって、多数のレーザビーム45に分割されて、たとえば、128×128のマトリックス状に海底面に照射される。
【0052】
拡散部材43としては、たとえば、Advanced Scientific Concepts, Inc.によって製造販売されている「3D Flash Lidar」(登録商標)に使われている拡散部材が好ましく使用される。
【0053】
図6は、レーザ測距装置8のレーザビーム受光部の略斜視図である。
【0054】
図6に示されるように、拡散部材43によって分割され、海底面によって反射されたレーザビーム45は、集光レンズ46によって集光されて、受光センサ47によって、光電的に検出される。
【0055】
図7は、受光センサ47の略縦断面図であり、
図7に示されるように、受光センサ47は、海底面によって反射されたレーザビーム45の検出時間を感知するフォトセンサ48と海底面によって反射されたレーザビーム45の強度を検出するCCDセンサ49を備えている。
【0056】
図8は、レーザ測距装置8の制御系および検出系のブロックダイアグラムである。
【0057】
図8に示されるように、レーザ測距装置8は、LEDレーザ光源41からパルス状にレーザビーム40を放出した時間と、そのレーザビーム40が海底面によって反射されて生成されたレーザビーム45が、フォトセンサ48によって受光された時間を記憶する第一のメモリ50Aと、LEDレーザ光源41から放出されたレーザビーム40の強度とCCDセンサ49が検出したレーザビーム45の強度を記憶する第二のメモリ領域50Bを備えたRAM50を有している。
【0058】
さらに、レーザ測距装置8は、RAM50の第一のメモリ50Aに記憶されたLEDレーザ光源41からレーザビーム40が放出された時間およびフォトセンサ48によって受光された時間と海底面によって反射されたレーザビーム45をフォトセンサ48が受光した時間ならびにLEDレーザ光源41から放出されたレーザビーム40の強度およびCCDセンサ49が検出したレーザビーム45の強度に基づいて、海底面までの距離を算出するコントローラ51を備えている。
【0059】
また、
図8に示されるように、レーザ測距装置8は、レーザビーム40の照射によって得られたデータを処理するレーザデータ処理部10を備えている。
【0060】
レーザビーム40が拡散部材43によって分割されて、128×128のマトリックス状に海底面に照射された場合には、128×128のマトリックスの要素によって反射されたレーザビーム45をフォトセンサ48およびCCDセンサ49により光電検出することによって、その要素とLEDレーザ光源41との距離を正確に算出することができ、したがって、128×128のマトリックスのすべての要素とLEDレーザ光源41との距離を正確に算出することが可能になる。
【0061】
図9は、
図3ないし
図8に示された本発明の好ましい実施態様にかかる浅海底観測システム20によって、浅海底を観測する処理を示すフローチャートである。
【0062】
オペレータによって、スタート信号がパーソナルコンピュータ30に入力されると、パーソナルコンピュータ30から同期信号発生装置31に駆動信号が出力されて、同期信号発生装置31から、一対のビデオカメラ3、3と、レーザ測距装置8と、GPS/ジャイロ装置4およびコンバートソフトウエア55に同期信号が出力される。このとき、パーソナルコンピュータ30はLEDレーザ光源41からレーザビーム40が放出された時間をレーザ測距装置8のRAM50内の第一のメモリ領域50A内に格納するとともに、LEDレーザ光源41から放出されたレーザビーム40の強度をレーザ測距装置8のRAM50内の第二のメモリ領域50B内に格納する。
【0063】
同期信号を受けると、一対のビデオカメラ3、3は、撮影を開始し、海底面の撮影領域52、52のカラー画像が撮影される。
【0064】
一方、レーザ測距装置8は、LEDレーザ光源41からパルス状にレーザビーム40を放出させ、コリメータレンズ42によって平行なビームに変換した後に、拡散部材43に入射させる。拡散部材43を通過させることによって、レーザビーム40は多数のレーザビーム45、たとえば、128×128に分割されて、一対のビデオカメラ3、3の海底面の撮影領域52、52が重複している重複撮影領域53に照射され、重複撮影領域53内に128×128のマトリックス状照射部53Aが形成される。
【0065】
海底面の128×128のマトリックス状照射部53Aの各々によって反射されたレーザビーム45は、集光レンズ46によって集光されて、受光センサ47によって、光電的に検出される。
【0066】
上述のように、受光センサ47は、海底面によって反射されたレーザビーム45の検出時間を感知するフォトセンサ48と海底面によって反射されたレーザビーム45の強度を検出するCCDセンサ49とによって構成されている。
【0067】
フォトセンサ48は、海底面の128×128のマトリックス状照射部53Aの各々によって反射されたレーザビーム45を検出したときに、レーザビーム45を検出した時間をRAM50内の第一のメモリ領域50A内に格納する。ここに、第一のメモリ領域50A内は128×128のマトリックス状照射部53Aに対応して、128×128のマトリックス状メモリ領域に分割されており、フォトセンサ48は、海底面の128×128のマトリックス状照射部53Aの各々によって反射されたレーザビーム45の検出時間を、第一のメモリ領域50A内の対応するマトリックス状メモリ領域内に格納する。
【0068】
一方、CCDセンサ49は、海底面の128×128のマトリックス状照射部53Aの各々によって反射されたレーザビーム45の強度を検出し、海底面の128×128のマトリックス状照射部53Aの各々によって反射されたレーザビーム45の強度を、第二のメモリ領域50B内の対応するマトリックス状メモリ領域内に格納する。
【0069】
次いで、コントローラ51がRAM50にアクセスして、第一のメモリ領域50A内のマトリックス状メモリ領域の各々に記憶されたLEDレーザ光源41からレーザビーム40が放出された時間およびフォトセンサ48によってレーザビーム45が検出された時間、ならびに、第二のメモリ領域50B内のマトリックス状メモリ領域の各々に記憶されたLEDレーザ光源41から放出されたレーザビーム40の強度およびCCDセンサ49が検出したレーザビーム45の強度に基づいて、海底面の128×128のマトリックス状照射部53Aの各々の水深データを算出する。
【0070】
同期信号に応答して、GPS/ジャイロ装置4は、一対のビデオカメラ3、3の姿勢データを生成し、コンバートソフトウエア55が起動し、写真測量における外部評定要素が算出される。
【0071】
同期信号に応答して、一対のビデオカメラ3、3によって撮影された海底面の画像に対応する画像データはビデオレコーダ33、33に出力され、さらに、ビデオ編集機34、34によって、連番画像が生成される。次いで、別途観測したカメラパラメータを用いて、焦点距離・レンズ歪みの補正が行われ、補正済みの連番画像(1/30秒毎のペア画像)が生成される。
【0072】
ここに、カメラパラメータは、別途水槽内に設置したターゲットを水中ビデオカメラ3で撮影し、写真測量式を用いて、焦点距離・レンズ歪みを求めることによって、観測される。
【0073】
一対のビデオカメラ3、3で撮影された画像から生成された歪み補正済みの連番画像から、まず同連番の左右画像に対し、たとえば、テンプレートマッチングを実行して、横視差を算出する。こうして得られた横視差から水深データが算出され、その水深データをもとに標高値A(x, y, z)が算出される。
【0074】
次に、一対のビデオカメラ3、3の左右どちらかで得られた歪み補正済みの連番画像は、GPS/ジャイロ装置4によって測定された姿勢データを用いて、横視差が除去される。
【0075】
横視差が除去された補正済みの連番画像(縦=時間軸)に対して、たとえば、テンプレートマッチングを実行して、縦視差を算出する。
【0076】
こうして得られた縦視差を利用して、標高値が算出され、水深データが算出され、その水深データをもとに、標高値B(x, y, z)が算出される。
【0077】
このように、標高値A(x, y, z)および標高値B(x, y, z)が算出され、標高値A(x, y, z)および標高値B(x, y, z)を合成した標高値を用いて、DSMデータが作成される。
【0078】
一方、レーザ測距装置8によって生成された距離データは、GPS/ジャイロ装置4によって測定された姿勢データを用いて、レーザデータ処理部10において、水深データに変換し、さらに、この水深データをもとに補完用の標高値のDSMデータが生成される。
【0079】
ここに、レーザ測距装置8によって生成された水深データは、たとえば、128×128のマトリックス状の領域53Aの水深データで、さらに、重複撮影領域53を分割して、256×256のマトリックス状の領域53Aを生成し、それぞれの水深データを求めても、各領域53Aの大きさは、一対のビデオカメラ3、3が撮影した画像の画素に比べて、はるかに大きいので、本実施態様においては、レーザ測距装置8によって生成したマトリックス状の領域53Aの水深データに基づいて、一対のビデオカメラ3、3によって撮影した画像によって生成されるDSMデータを補完するための補完用DSMデータが生成される。
【0080】
こうして、一対のビデオカメラ3、3が撮影した画像に基づいて生成されたDSMデータおよびレーザ測距装置8により生成された補完用DSMデータによって、撮影対象となる海底領域のDSMデータが生成される。ここに、一対のビデオカメラ3、3によって撮影された画像から正常に生成されたDSMデータがある海底領域に対しては、レーザ測距装置8によって生成した補完用DSMデータは適用されない。
【0081】
一方で、補正済み連番画像がDSMデータ上に重畳して投影される。
【0082】
次いで、オルソ画像作成ソフトウエアを起動させ、こうして得られた画像を、コンバートソフトウェアによって生成された外部評定要素を用いて、正射投影をし、正射投影写真画像データが作成される。
【0083】
観測は、移動支持浮体2を曳航又は自走によって、観測計画線に沿って移動させつつ、以上のように、一対のビデオカメラ3、3によって水底画像を撮影し、レーザ距離装置8によって水底との距離を測定するとともに、GPS/ジャイロ装置4によって一対のビデオカメラ3、3の撮影条件である視点位置と光軸方向を検出し、ビデオレコーダ33、33によって、両者を同期記録することによって実行される。
【0084】
観測の終了後に、正射投影写真画像データは、移動支持浮体2上に搭載されたパーソナルコンピュータ30の画像処理部6に入力され、あるいは、可搬メディアまたは無線伝送によって、地上に位置したパーソナルコンピュータ7の画像処理部6に入力されて、正射投影画像処理が実行される。
【0085】
この画像処理出力は、従来の等深線や符号で示されていた浅海域の珊瑚礁や浅瀬をカラーで視覚的に表すことによって、浅海域の珊瑚礁や浅瀬の状況を視覚的に分りやすく示すことができる。
【0086】
したがって、本実施態様によれば、浅海域の珊瑚礁や浅瀬の水中環境をカラーで面的に捉えることができるから、色の違いによる珊瑚礁や浅瀬の植生(藻)の成育状況を把握することが可能となる。
【0087】
また、本実施態様によれば、浅海底観測システム20は、可視光を検出する一対のビデオカメラに加えて、水底までの距離を計測可能なレーザ距離装置8を備えているから、水質が汚濁しているために、可視光を検出するビデオカメラ3、3よっては、精度よく、水底表面データを作成することができず、可視光を検出するビデオカメラ3、3によって得られる水底表面データの一部が欠損している場合や、可視光を検出するビデオカメラ3、3によって水底を撮影するときに、陰になってしまい、精度よく、水底表面データを作成することができず、可視光を検出する水中カメラによって得られる水底表面データの一部が欠損している場合、太陽光線の陰りや夜明け/薄暮時、あるいは、コントラストがきわめて高く、そのために明るさが不足して十分な露光が得られない部分ができ、水底表面データの一部が欠損している場合、左右に配置された一対のビデオカメラ3、3によって得られる水底表面画像の結合処理(画像マッチング処理)がうまく出来ずに、水底表面データの一部が欠損している場合にも、レーザ距離装置8によって水底までの距離を測定し、可視光を検出するビデオカメラ3、3によって得られる水底表面データの欠損を補完することが可能になる。
【0088】
本発明は、以上の実施態様に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0089】
たとえば、前記実施態様においては、一対のビデオカメラが設けられているが、ビデオカメラの数は複数であればよく、2つに限定されるものではない。
【0090】
また、
図3ないし
図9に示された前記実施態様においては、水底までの距離を計測するレーザ測距装置8は、レーザビーム40を多数のレーザビーム45に分割する拡散部材43、好ましくは、Advanced Scientific Concepts, Inc.によって製造販売されている「3D Flash Lidar」(登録商標)を備えているが、この種の拡散部材43を備えたレーザ測距装置8を用いることは必ずしも必要ではなく、ファイバー式のレーザ測距装置や走査型のレーザ測距装置などを用いることもでき、さらには、レーザではなく、他の周波数の電磁波や超音波を含む音波などと用いてもよく、海底との距離が計測可能な距離計であれば、とくに限定されるものではない。
【0091】
さらに、
図3ないし
図9に示された前記実施態様においては、CCDセンサ49を用いて、レーザビームの反射強度を測定しているが、CCDセンサ49を用いて、レーザビームの反射強度を測定することは必ずしも必要でなく、受光センサ47がフォトセンサ48のみによって構成されていてもよい。
【0092】
また、
図3ないし
図9に示された前記実施態様においては、レーザ測距装置8が移動支持浮体2の下面に取り付けられているが、レーザ測距装置8を移動支持浮体2の下面に取り付けることは必ずしも必要でなく、移動支持浮体2の上面に取り付けられていてもよく、すなわち、レーザ測距装置8は水上または水中に位置するように、移動支持浮体2み取り付けることができる。
【0093】
また、前記実施態様においては、浅海底が観測されているが、本発明は浅海底の観測に限定されるものではなく、湖沼や沿岸部の浅水域などの観測に広く用いることができる。