特許第5989724号(P5989724)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エーエーシーアコースティックテクノロジーズ(シンセン)カンパニーリミテッドの特許一覧

<>
  • 特許5989724-フェライトセラミックスの製造方法 図000004
  • 特許5989724-フェライトセラミックスの製造方法 図000005
  • 特許5989724-フェライトセラミックスの製造方法 図000006
  • 特許5989724-フェライトセラミックスの製造方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989724
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】フェライトセラミックスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/638 20060101AFI20160825BHJP
   C04B 35/622 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   C04B35/64 301
   C04B35/26 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-172656(P2014-172656)
(22)【出願日】2014年8月27日
(65)【公開番号】特開2015-81226(P2015-81226A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2014年8月27日
(31)【優先権主張番号】201310497364.0
(32)【優先日】2013年10月22日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】511027518
【氏名又は名称】エーエーシーアコースティックテクノロジーズ(シンセン)カンパニーリミテッド
【氏名又は名称原語表記】AAC Acoustic Technologies(Shenzhen)Co.,Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100156845
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 威一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100112896
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 宏記
(74)【代理人】
【識別番号】100179213
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 未知子
(72)【発明者】
【氏名】蘇 邵華
(72)【発明者】
【氏名】余 金輝
【審査官】 佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−198213(JP,A)
【文献】 特開平07−082040(JP,A)
【文献】 特開2001−089246(JP,A)
【文献】 特開平07−082014(JP,A)
【文献】 特開平05−339044(JP,A)
【文献】 特開2001−106580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/638
C04B 35/622
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェライト粉体を提供する配合工程と、
上記フェライト粉体を加熱にて乾燥させる乾燥工程と、
上記乾燥済みのフェライト粉体100重量部に、分子量が5〜7万のポリビニルブチラール5〜15重量部と分子量が10〜12万のポリビニルブチラール1.5〜5重量部とを含むバインダ、可塑剤、分散剤及び溶媒を加えて混ぜあわせ、スラリーを形成するスラリー調製工程と、
スラリー中の泡を抜く脱泡工程と、
脱泡済みのスラリーを流延成形装置に流延させてセラミックテープを得る流延成形工程と、
上記セラミックテープを切断して所定サイズのグリーン成形体を得る切断工程と、
300〜500℃で5時間以上かけて保温することにより、上記グリーン成形体中の有機物を除去する脱バインダ工程と、
900〜1000℃で2〜5時間保温することによって上記脱バインダ済みのグリーン成形体を焼成し、緻密なフェライトセラミックスを得る焼成工程と
を含むことを特徴とする、フェライトセラミックスの製造方法。
【請求項2】
前記配合工程において、原料を選別することで前記フェライト粉体の中間粒径を0.5〜3.5μm範囲にすることを特徴とする、請求項1に記載のフェライトセラミックスの製造方法。
【請求項3】
前記乾燥工程において、前記フェライト粉体を乾燥させて含水率を0.1%以下にすることを特徴とする、請求項1に記載のフェライトセラミックスの製造方法。
【請求項4】
前記脱泡工程において、真空引きと加熱を組合わせてスラリー中の泡を除去することを特徴とする、請求項1に記載のフェライトセラミックスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェライトセラミックスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェライト焼結磁石は、各種の電動モーター、ゼネレータ、スピーカー等、各種の用途に用いられ、フェライト焼結磁石の代表例として、六方晶系のM型マグネトプランバイト(magneto plumbite)構造を有するSrフェライト(SrFe1219)、Baフェライト(BaFe1219)が知られている。これらのフェライト焼結磁石は、例えば、酸化鉄と、ストロンチウム(Sr)やバリウム(Ba)等の炭酸塩を原料とし、粉体冶金法を利用して比較的安価で製造することができる。
【0003】
近年、環境への配慮などから、車載用電装部材、電気設備用部材等において部材の小型化、軽量化及び高効率化を目的としてフェライト焼結磁石に対して高性能化が要求されつつあり、特に、車載用電装部材として用いられる電動モーターに対し、高い残留磁束密度Br(以下、「Br」と略称する)を維持でき、且つ薄型化にする際の反磁場による減磁が生じにくい高保磁力HcJ(以下、「HcJ」と略称する)のフェライト焼結磁石が求められてきた。
【0004】
従来、フェライトの成形では主に乾式成形法を採用し、例えば、フェライト粉体と所定のバインダ等の有機物とを一定の配合比で均一に混ぜ合わせ、一次の篩分けを経て造粒した後、金型内で一定の圧力を加えて必要の形状に圧密し、その後、脱バインダ処理と焼成処理を施し、後に磁気性能を測定する作業が行われている。
乾式成形法の加圧成形工程においてクラック、変形等の現象がよく発生することから、金型設計が不十分であり、並びに不適切な加圧成形方式を採用した場合、焼結製品が許容誤差の範囲を超えてしまい、製品の歩留まりと生産効率に悪影響を与える虞があった。加えて、乾式成形の場合、更に構造多様性に欠け、寸法制御が難しく、製品成分にバラツキが大きく、生産効率が低く、量産性に劣り、大型の薄板を製造することができない等といった欠点があるので、製造現場における寸法と形状が異なる成形体の製造需要を満足できず、且つ品質を確保することができない。
【0005】
したがって、上述の欠陥を克服するため、新規のフェライト磁石の製造方法を探し出すことが必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の事情に鑑みて新規のフェライトセラミックスの製造方法を提供し、従来の乾式成形法におけるフェライトを製造する加圧成形工程でクラック、変形等の現象が発生しやすく、焼成で得られる製品が許容誤差の範囲を超えて製品の歩留まりと生産効率に悪影響を与えるといった技術課題を解決し、並びに乾式成形が構造多様性に欠け、寸法制御が困難であり、製品成分にバラツキが大きく、生産効率が低く、量産性に劣り、大型の薄板を製造することができない等の欠点を解消するとともに、製造現場における寸法と形状が異なる成形体の製造需要を満足できず、且つ品質を確保できないといった問題の解決を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明は、フェライトセラミックスの製造方法を提供し、該方法は、フェライト粉体を提供する配合工程と、上記フェライト粉体を加熱して乾燥させる乾燥工程と、上記乾燥済みのフェライト粉体に、バインダ、可塑剤、分散剤及び溶媒を加えて混ぜあわせることによってスラリーを形成するスラリー調製工程と、スラリー中の泡を抜く脱泡工程と、脱泡済みのスラリーを流延成形装置に流延させてセラミックテープを得る流延成形工程と、上記セラミックテープを切断して所定サイズのグリーン成形体を得る切断工程と、300〜500℃で5時間以上かけて保温することにより、上記グリーン成形体中の有機物を除去する脱バインダ工程と、900〜1000℃で2〜5時間保温することによって上記脱バインダ済みのグリーン成形体を焼成し、緻密なフェライトセラミックスを得る焼成工程とを含む。
【0008】
好ましくは、前記配合工程において、原料を選別することで前記フェライト粉体の中間粒径を0.5〜3.5μm程度にする。
【0009】
好ましくは、前記乾燥工程において、前記フェライト粉体を乾燥させて含水率を0.1%以下にする。
【0010】
好ましくは、前記脱泡工程において、真空引きと加熱を組合わせてスラリー中の泡を抜く。
【発明の効果】
【0011】
従来の技術に比べて、本発明により提供されるフェライトセラミックスの製造方法は、単一相または多重相のセラミックシート材料を製造することができ、欠陥サイズが小さく、製品成分のバラツキが小さく、性能が安定で、生産効率が高く、連続した作業を実現可能で、量産性に優れ、並びに工業化生産と大型シートを成形するのに適し、厚さ制御の精度が高く、スラリーの配合比を調整可能である等といった長所があり、フェライト基材の小型化、高性能化、多用途化の開発動向に適応したものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の実施例に係る技術案をより明確に説明するため、以下、実施例の説明に使われる図面について簡単に説明する。当然のことながら、以下で説明する図面は本発明の一部の実施例に限ったものであり、当業者が創造性のある作業をしなくてもこれらの図面に基づいて他の関連の図面を得ることができる。
【0013】
図1】本発明の流延成形工程で得たグリーン成形体の表面を写した実体顕微鏡写真である。
図2】流延成形工程で得たグリーン成形体の熱重量と示差熱の測定結果を示すグラフである。
図3】フェライトセラミックスの表面を写した実体顕微鏡写真である。
図4】フェライトセラミックスの透磁率スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例に係る図面を参照しながら本発明の実施例に係る技術案について明確、且つ全面的に説明する。当然のことながら、ここで説明する実施例はただ本発明の一部の実施例であり、全ての実施例を網羅したわけではない。したがって、本発明に係る実施例に基づき、当業者が創造性のある作業をせずに得られた他の全ての実施例は、何れも本発明の保護範囲に含まれる。
【0015】
従来の乾式成形法を用いてフェライトを製造する際の技術欠点を解消するため、本発明は、フェライトセラミックスの製造方法を提供し、該方法は以下の工程を含む。
【0016】
配合工程(S1):フェライト粉体を提供し、該フェライト粉体は、原料を選別することで中間粒径が0.5〜3.5μm範囲にあり、且つ比較的に集中した粒度分布を有する。
【0017】
乾燥工程(S2):上記フェライト粉体を加熱にて乾燥させ、前記フェライト粉体の含水率を0.1%以下にする。
【0018】
スラリー調製工程(S3):上記乾燥済みのフェライト粉体に、バインダ、可塑剤、分散剤及び溶媒を添加して混ぜ合わせることでスラリーを調製する。
但し、前記スラリーを調製する際に添加するバインダ、可塑剤、分散剤及び溶媒としては、下記表1に示されるとおりである。
本明細書において、「KD−1」は分散剤Hypermer KD−1のことを指す。Hypermer KD−1は市販で入手でき、例えば、英国のクローダ社により販売されているHypermer KD−1である。「PVB1」とは分子量が5〜7万のポリビニルブチラールの略記であり、「PVB2」とは分子量が10〜12万のポリビニルブチラールの略記であり、「DBP」とはフタル酸ジブチルの略記である。
【0019】
【表1】
【0020】
そのうち、前記分散剤は、スラリーのpHと粒子表面電荷を制御するために用いられ、粒子同士に立体障害をもたらし、凝集状態の粒子を分散させる役目がある。前記分散剤は、主に下記2とおりの方式にてその効果を発揮する。即ち、1)イオン分散剤は、粒子表面において拡散電気二重層を形成することによって粒子同士の間の静電反発作用を増大させ、2)非イオン分散剤は、水素結合またはファンデルワールス力を利用して粉体の表面に吸着し、同時に、その疎水鎖が有機溶媒に溶解されて立体障害効果を奏し、粉体粒子同士の凝集を阻止する。
【0021】
前記可塑剤は、スラリーにレオロジー性を付与し、成形体に一定程度の可塑性と可撓性を付与するとともに、バインダの室温及び比較的低い温度でのガラス転移温度を下げるために用いられる。また、可塑剤としては、樹脂バインダとの相容性に優れ、可塑効率と沸点が高く、蒸気圧が低く、熱、光り及び化学試薬に対して安定し、且つ低温域において極めて優れた可撓性を有し、他の物質と接触する際に遷移が起こりにくいといった性能が求められる。
【0022】
前記バインダは、成形性を高め、且つ成形体に一定程度の強度を与えるために使われる。そのうち、PVB1の分子量が5〜7万、PVB2の分子量が10〜12万である。バインダの分子量が大きくなるにつれて粘着強度が増大し、同時に、溶解度が小さくなる傾向がある。
【0023】
脱泡工程(S4):スラリー中の泡を除去する。本発明の一好適な実施形態において、真空引きと加熱処理を組合わせることでスラリー中の泡を抜き、粘度を所定の範囲内に抑える。
【0024】
流延成形工程(S5):脱泡済みのスラリーを流延成形装置に流延させてセラミックテープを得る。スラリーの粘度、流延ブレードの間隙、コンベアベルトの移動速度及びスラリータンク中の液面高度等を制御することでセラミックテープの厚さを制御する。流延成形の際に、溶媒が揮発し続けると同時に、バインダ自体が三次元網目構造に硬化してセラミックテープにおける粒子の沈降を防ぎ、且つセラミックテープに一定程度の強度を付与する。
【0025】
切断工程(S6):上記セラミックテープを切断して所定サイズのグリーン成形体を得る。
【0026】
脱バインダ工程(S7):300〜500℃で5時間以上かけて保温することにより、上記グリーン成形体中の有機物を除去する。ここで、空気中で加熱するとき、空気中に酸素があるため、一部の重合体が先に酸化して過酸化水素基とカルボニル基等の酸化物を生成し、分子量が低下してしまう。次に、温度が生成した酸化物の沸点に接近するにつれて、かかる酸化物が揮発し、分子量が次第に低下する。脱バインダの際に、酸素供給が十分であることが前提となり、そうでなければ有機物が完全に分解できず、焼成後にそのまま残留物として残り、性能に影響を与える虞がある。
【0027】
焼成工程(S8):900〜1000℃で2〜5時間保温することによって上記脱バインダ済みのグリーン成形体を焼成し、緻密なフェライトセラミックスを得る。
【0028】
その後、焼成工程で得られるフェライトセラミックスに対して国際の基準に依拠して測定を行い、該フェライトセラミックスの磁気性能を得る。
【0029】
表2に示すように、実験データを利用して本発明を詳細に説明するため、本発明において、性能比較に備えて配合例を提供する。
【0030】
【表2】
【0031】
図1に示すように、上記例示の配合比に従って調製し、流延成形処理を施したグリーン成形体の表面を写した実体顕微鏡写真から、スラリーの配合例aと比べ、bのほうがセラミック粒子と有機物がより均一に分散し、且つ塊状の凝集がないことが分かる。
【0032】
図2は、流延成形工程で得られたグリーン成形体の熱重量と示差熱の測定結果を示すグラフであり、温度変化に伴うグリーン成形体試料の質量と熱流の変化を反映するものである。熱重量グラフにおいて、加熱温度が150〜400℃域にある場合、試料内部の有機物の揮発や分解により流延シートの質量が減少し続けるが、温度が400℃を超えた場合、流延シートの質量変化がさほど顕著ではない。150〜200℃域で急激な重量喪失が見られ、これは可塑剤の揮発と熱分解により起因するものであり、250〜300℃域での急激な重量喪失は、バインダの揮発分解によるもので、350〜400℃域での重量喪失は、主に分散剤の変化によるものであると考えられる。

【0033】
図3に示す焼成後のフェライトセラミックスの表面を写した実体顕微鏡写真から、同様の脱バインダと焼成条件において、スラリーの配合例aに比べ、bのセラミックが2種類のバインダが段階的に揮発することで、気孔がより小さくなり、緻密性がより優れていることが分かる。
【0034】
最後に、図4に示す焼成後のフェライトセラミックスの透磁率スペクトルから、スラリーの配合例aに比べ、bのほうがより高いμ'及びより低いμ”を有し、即ち、より優れた磁気性能を有することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
関連の技術と比較して、本発明により提供されるフェライトセラミックスの製造方法は、単一相または多重相のセラミックシート材料を製造することができ、欠陥サイズが小さく、製品成分のバラツキが小さく、性能が安定で、生産効率が高く、連続した作業を実現可能で、量産性に優れ、並びに工業化生産と大型シートを成形するのに適し、厚さ制御の精度が高く、スラリーの配合比を調整可能である等といった長所があり、フェライト基材の小型化、高性能化、多用途化の開発動向に適応したものである。
【0036】
以上において本発明の実施例について説明したが、本発明の特許範囲がこれらによって制限されないことに留意されたい。したがって、本発明の明細書及び図面の記載に基づいて行う同等の構造や同等のプロセスへの変更、もしくは他の関連の技術分野への直接的または間接的な応用は、言うまでもなく全て本発明の特許保護の範囲内に含まれる。
図1
図2
図3
図4