(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
過去の所定期間における気象観測情報と、前記過去の所定期間における前記分散型電源の発電量の実績値と、に基づいて、前記予測式を生成する予測式導出部を更に含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の発電量予測装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0010】
===予測装置の適用場面===
以下、
図1、
図2を参照して、本実施形態における予測装置が適用される典型的な場面を説明する。
図1は、本実施形態における予測装置が適用される電力系統を概略的に示し、
図2は、予測装置が適用される地域及びサイトを概略的に示す。
【0011】
電力系統200は、電力負荷Rに対して電力を供給するための電力系統であり、
図1に示すように、商用電源G0、電力負荷R、及び、商用電源G0と電力負荷Rとを接続する電力線にそれぞれ並列に接続された風力発電機G1〜G4を含む。風力発電機G1〜G4は分散型電源の一例であり、説明の簡略化のため、
図2に示すように、所定地域A(例えば日本の中国地方)を区画して形成される複数のサイト1〜4にそれぞれ設置されているものとし、予測装置は、このような所定地域Aにおける総発電量を予測するものとする。なお、サイト1〜4が複数の区域に相当し、後述するアンサンブル予報に対応する領域である。また、分散型電源は各サイトに1機だけ設置される必要はなく、複数機設けられてもよい。サイト1に複数の分散型電源が設置される場合、分散型電源(風力発電機)G1は、このような複数の分散型電源を代表して表されているものとする。
【0012】
図1に示すように、サイト1〜4のそれぞれには、発電量測定装置M1〜M4と気象観測装置W1〜W4とが設置されている。発電量測定装置M1〜M4は、風力発電機G1〜G4において発電された電力P1〜P4を所定の時間間隔(例えば1時間毎)で測定し、測定信号SM1〜SM4を予測装置100に出力する装置である。また、気象観測装置W1〜W4は、サイト1〜4における気象条件(例えば風速)を所定の時間間隔(例えば1時間毎)で観測して、観測信号SW1〜SW4を予測装置100に出力する装置である。
【0013】
気象予報装置WFは、アンサンブル予報情報を示す予報信号SWFを出力する装置であり、例えば気象庁に設置される。アンサンブル予報情報には、サイト1〜4のそれぞれにおける、東西及び南北方向の風速を示す複数の予報情報が含まれている。
【0014】
予測装置100は、追って詳述するように、発電量測定装置M1〜M4から測定信号SM1〜SM4を、気象観測装置W1〜W4から観測信号SW1〜SW4を、及び気象予報装置WFから予報信号SWFをそれぞれ受信し、これら信号に含まれる情報等に基づいて、サイト1〜4及び所定地域Aにおける発電量を予測する装置である。
【0015】
なお、予測装置100は、例えば、CPU、メモリ、及び補助記憶装置を備えたコンピュータであり、予測装置の有する後述の機能は、コンピュータで実行可能なプログラムによって実行される。
【0016】
===予測装置===
以下、
図3,
図7〜12を参照して、本実施形態における予測装置について説明する。
図3は、本実施形態における予測装置の機能を示すブロック図であり、
図7は気象観測データの一例を、
図8は発電実績データの一例を、
図9はパワーカーブの一例を、
図10は気象予報データの一例を、
図11は発電量予測データの一例を、
図12は総発電量予測データの一例を、それぞれ示す。
【0017】
<予測装置の概要>
予測装置100は、サイト1〜4毎に発電量を予測する。具体的には、予測装置100は、例えばサイト1の発電量について、発電量測定装置M1から測定信号SM1を、気象観測装置W1から観測信号SW1を、気象予報装置WFから予報信号SWFをそれぞれ受信し、これら信号に含まれる情報等に基づいて、サイト1に設置された分散型電源(風力発電機G1)の発電量に関する複数の予測値(区域予測値)を算出する。サイト2〜3についても同様に、予測装置100は、サイト2〜3に設置された分散型電源(風力発電機G2〜G4)の発電量に関する複数の予測値(区域予測値)をそれぞれ算出する。これが第1算出部の機能に相当する。
【0018】
また、予測装置100は、所定地域Aにおける総発電量を予測する。具体的には、予測装置100は、サイト1〜4のそれぞれについて算出された複数の予測値に基づいて、所定地域Aにおける総発電量に関する複数の予測値(地域予測値)を算出する。これが第2算出部の機能に相当する。
【0019】
予測装置100は更に、所定地域Aについて算出された複数の予測値の分布に基づいて、予測の信頼度を決定する。これが信頼度決定部の機能に相当する。
【0020】
また、予測装置100は、決定された信頼度に基づいて、所定地域Aにおける総発電量の見込み値を決定する。これが見込み値決定部の機能に相当する。
【0021】
このような予測装置100は、
図3に示すように、送受信部110、記憶部120、予測式導出部130、発電量算出部140、及び出力部150を備える。
【0022】
<送受信部>
送受信部110は、発電量測定装置M1〜M4、気象観測装置W1〜W4及び気象予報装置WFのそれぞれと有線又は無線で通信を行い、測定信号SM1〜SM4、観測信号SW1〜SW4及び予報信号SWFを受信する。本実施形態において、これらの各信号は、所定の時間間隔でそれぞれの装置から出力されるが、送受信部110からの要求信号に応答して出力されてもよい。
【0023】
<記憶部>
記憶部120は、気象観測データ記憶領域121、発電量測定データ記憶領域122、パワーカーブ記憶領域123、予測式記憶領域124、気象予報データ記憶領域125、及び発電量予測データ記憶領域126を有する。
【0024】
気象観測データ記憶領域121には、気象観測装置W1〜W4から提供された、サイト1〜4についての所定の時間間隔毎の気象観測データが記憶されている。本実施形態では、サイト毎に、例えば
図7に示すような、1時間毎の南北及び東西方向の風速に関する観測データが記憶されている。なお、この種のデータは、風向(例えば南南西)及び風速(例えば6.80m/s)の観測データとして提供されてもよい。
【0025】
発電量測定データ記憶領域122には、発電量測定装置M1〜M4から提供された、サイト1〜4における所定の時間間隔毎の発電量に関する測定データが記憶されている。本実施形態では、サイト毎に、例えば
図8に示すような、1時間毎の発電量の測定データが記憶されている。
【0026】
パワーカーブ記憶領域123には、風力発電機G1〜G4のそれぞれの運転特性を示す情報、すなわちパワーカーブが記憶されている。パワーカーブは、例えば
図9のように、風速と風力発電機の出力との関係を示す曲線として与えられる。なお、
図9の例は、カットイン風速が2m/s、定格風速が15m/sである風力発電機の性能を示している。
【0027】
予測式記憶領域124には、予測式導出部130によってサイト1〜4毎に導出された、気象条件と発電量との関係を示す後述の予測式が記憶される。
【0028】
気象予報データ記憶領域125には、気象予報装置WFから提供された、サイト1〜4毎の気象予報データが記憶される。本実施形態における気象予報データは、アンサンブル予報データであり、6時間間隔で気象予報装置WFから提供されるものとする。また、数種類あるアンサンブル予報の中でも、日本域を範囲とする週間アンサンブル数値予報が用いられ、00UTC(協定世界時)及び12UTCを初期値とする27つのアンサンブルメンバーの示す気象条件が、現在時刻から264時間先まで予報される。週間アンサンブル数値予報は、例えば、地上における東西及び南北方向の風速、気温、相対湿度、積算降水量、全雲量、海面更正気圧、及び地上気圧に関する予報値を含むが、本実施形態において気象予報データ記憶領域125に記憶されるのは、例えば
図10のように、所定日時毎の、27の東西及び南北方向の風速データである。無論、気温や湿度などの他の情報も、気象予報データ記憶領域125に記憶されてもよい。
【0029】
発電量予測データ記憶領域126には、発電量算出部140の第1算出部によって算出された、サイト1〜4毎の発電量に関する複数の予測値(区域予測値)が記憶される。本実施形態では、サイト1〜4毎の発電量の予測に用いられる気象予報データが
図10の例のように所定日時あたり27だけあることに対応して、区域予測値は、
図11に例示するように所定日時あたり27だけある。サイト1〜4毎の発電量の予測値の算出手順については後述する。
【0030】
また、発電量予測データ記憶領域126には、発電量算出部140の第2算出部によって算出された、所定地域Aにおける総発電量に関する複数の予測値(地域予測値)が記憶される。総発電量の予測値の算出手順については後述するが、本実施形態では、所定地域Aに4つのサイトが含まれることに伴い、総発電量の予測値は、
図12に例示するように、所定日時あたり531,441(27の4乗)個ある。
【0031】
<予測式導出部>
予測式導出部130は、気象観測データ記憶領域121に記憶された気象観測データ及び発電量測定データ記憶領域122に記憶された発電量測定データに基づいて、サイト1〜4毎に予測式を導出する。予測式は、後述するように、サイト1〜4のそれぞれにおける発電量を予測するための数式であり、本実施形態では、重回帰分析によって求められる線形回帰方程式である。
【0032】
<発電量算出部>
発電量算出部140は、サイト1〜4毎の発電量の予測値及び所定地域Aの総発電量の予測値をそれぞれ算出する部分であり、第1算出部141、第2算出部142、信頼度決定部143、及び見込み値決定部144を含む。第1算出部141は、予測式導出部130で生成された予測式及び気象予報データ記憶領域125に記憶された気象予報データに基づいて、サイト1〜4のそれぞれにおける発電量に関する複数の予測値を算出する。第2算出部142は、第1算出部141によって算出されたサイト1〜4の発電量に関する複数の予測値に基づいて、所定地域Aにおける総発電量に関する複数の予測値を算出する。信頼度決定部143は、第2算出部142によって算出された総発電量に関する複数の予測値の分布に基づいて、予測の信頼度を決定する。予測値の分布は、例えば算術平均及び標準偏差によって示されてもよいし、あるいは、
図13(b)及び(c)のような度数分布図によって与えられてもよい。そして、見込み値決定部144は、信頼度決定部143によって決定された予測の信頼度に基づいて、所定地域Aにおける総発電量の見込み値を決定する。なお、サイト1〜4における発電量及び所定地域Aにおける総発電量に関する予測値の算出手順、予測の信頼度の決定手順、並びに、総発電量の見込み値の決定手順ついては、後述する。
【0033】
なお、信頼度決定部143は、サイト1〜4毎の発電量に関する複数の予測値の分布に基づいてサイト毎の予測の信頼度を求めてもよく、見込み値決定部144は、サイト毎の信頼度に基づいて、サイト毎の発電量の見込み値を決定してもよい。
【0034】
<出力部等>
出力部140は、予測装置100に入力された情報を表示したり、予測装置100から出力される情報を表示したりするための部分であり、例えばモニタやプリンタである。予測装置100は、予測装置100に対して情報を入力するためのキーボードを備えてもよい。
【0035】
===発電量の予測手順===
図4〜
図6、
図13等を参照して、本実施形態における予測装置100で実行される発電量の予測手順を説明する。
図4は、予測装置100の動作の概略を示すフローチャート、
図5は、サイトごとに予測式を作成するための手順を示すフローチャート、
図6は、サイトごとに発電量の予測値を算出するための手順を示すフローチャートである。また、
図13は、(a)総発電量の実績値及び複数の予測値の時間変化の一例、(b)ある時刻t1における総発電量の予測値の度数分布、及び(c)時刻t1より後(将来)の時刻t2における総発電量の予測値の度数分布を示す。
【0036】
<予測手順の概要>
本実施形態では、説明の便宜上、例えば
図7及び
図8に示すように、気象観測データ及び発電実績データが1時間毎に気象観測装置W1〜W4及び発電量測定装置M1〜M4からそれぞれ提供され、気象観測データ記憶領域121及び発電量測定データ記憶領域122には少なくとも過去1年分のデータが記憶されていることを前提とする。また、
図10に例示するように、2014年8月1日0時を現在時刻として、この時刻以降(将来)のアンサンブル予報データが気象予報装置WFから提供された場合に、予測装置100が発電量を予測する手順を示すこととする。
【0037】
まず発電量の予測手順を概略的に説明すると、
図4に示すように、ステップS1において、サイト1〜4毎に発電量の予測式を生成し、ステップS2において、サイト1〜4毎に、生成された予測式に気象予報値を代入して発電量に関する複数の予測値を算出する。そして、ステップS3において、算出されたサイト1〜4毎の複数の予測値に基づいて、所定地域Aにおける総発電量に関する複数の予測値を得る。ステップS4において、総発電量に関する複数の予測値の分布を求め、その分布に基づいて、予測された総発電量の信頼度を決定し、ステップS5において、決定された信頼度に基づいて総発電量の見込み値を決定する。なお、これらの手順は、例えば、気象予報装置WFから新たな気象予報データが提供される度(例えば6時間毎)に実行されてもよい。
以下、ステップS1〜S5を詳細に説明する。
【0038】
<予測式の生成>
ステップS1における予測式の生成は、予測式導出部130によって実行される。
【0039】
予測式導出部130は、サイト1〜4毎に、過去の所定期間(例えば現在から過去1年間)における気象観測値と、パワーカーブを用いて風速値から換算した過去の所定期間における発電量換算値と、過去の所定期間の発電実績値と、に基づいて、これらの各値の関係を表す予測式を導出する。
【0040】
ステップS1の手順を詳細に示した
図5を参照しつつ、サイト1における発電量の予測式を導出する具体的な手順を説明すると、予測式導出部130は、ステップS101において、気象観測データ記憶領域121から、サイト1における過去の所定期間の気象観測データ(例えば風速値;
図7参照)を取得するとともに、発電量測定データ記憶領域122から過去の所定期間の発電実績データを取得する。併せて、予測式導出部130は、パワーカーブ記憶領域123からサイト1の風力発電機G1に適用されるパワーカーブ(
図9参照)を呼び出す。
【0041】
そして、予測式導出部130は、ステップS102において、サイト1における過去の所定期間の風速値を、パワーカーブを用いて発電量に換算する。例えば予測式導出部130は、過去1年分の1時間毎の風速値8,760個(24個/日×365日)のそれぞれを、パワーカーブによって発電量に換算する。その際、風速は、気象観測データ記憶領域121において、東西方向の成分W
X(東向きが正)と南北方向の成分W
Y(北向きが正)とによりベクトル量として記憶されているため、式(1)によりスカラ量W
scalarへ換算したうえでパワーカーブに適用する。
W
scalar=(W
X2+W
Y2)
1/2 (1)
なお、このスカラ量W
scalarを更に、所定の換算式に基づいて、風力発電機のナセルの高さにおける風速に換算してもよく、かかる更なる換算によってより精度の高い発電量の換算値を得ることができる。
【0042】
次に、ステップS103において、予測式導出部130は、上述した過去の所定期間におけるサイト1での気象観測データと、パワーカーブを用いて風速値から算出した過去の所定期間におけるサイト1での発電量の換算値と、過去の所定期間におけるサイト1での発電実績値と、に基づいて重回帰分析を実行し、これらの各値の関係を表す予測式を求める。予測式は、例えば、式(2)に示される線形回帰方程式で与えられ、予測式導出部130は、最小二乗法を用いてこの予測式を導出してもよい。
Y=a+b・X
1+c・X
2+d・X
3+e・X
4+f・X
5 (2)
ここで、X
1は風速の発電量換算値、X
2は東向きの風速の大きさ、X
3は西向きの風速の大きさ、X
4は南向きの風速の大きさ、X
5は北向きの風速の大きさを、それぞれ示す回帰変数であり、Yは発電実績値を示す被回帰変数である。また、a〜fは回帰パラメータであり、上述のとおり最小二乗法によって決定され得る。
【0043】
このようにして式(2)の回帰パラメータa〜fが決定されると、サイト1における発電量の予測式が決まり、予測式記憶領域124に記憶される。
【0044】
そして、予測式導出部130は、ステップS104において、サイト2〜4の全てについて発電量の予測式を導出したかどうかを確認し、全てのサイトについて予測式の導出が完了するまで、ステップS101〜S203を繰り返す。
【0045】
このようにして導出されたサイト1〜4毎の予測式における回帰変数X
1〜X
5に、気象予報データと、風速の予報値からパワーカーブを用いて換算した換算値と、を代入することにより、次のステップS2において、サイト1〜4のそれぞれについて発電量の予測値(Y)を求めることができるようになる。また、サイト1〜4毎に予測式を生成することで、個別のサイトの発電環境に適した発電量の予測が可能になり、発電量の予測精度が向上する。
【0046】
なお、分散型電源として太陽光発電装置を採用する場合には、気象観測データとして気温、日射量、雲量などの気象条件を用いて同様の重回帰分析を実行し、回帰方程式を導出すればよい。この場合、パワーカーブは不要である。
【0047】
<サイト毎の発電量の予測値の算出>
上述のようにサイト1〜4毎の予測式が導出されると、
図4のステップS2において、これら予測式に気象予報データを適用することでサイト1〜4毎の発電量の予測値が算出される。このような予測値の算出は、発電量算出部140の第1算出部141によって実行される。
【0048】
ステップS2を詳細に示した
図6を参照しつつ、サイト1における予測値の算出の具体的手順を説明すると、第1算出部141はまず、ステップS201において、気象予報データ記憶領域125に記憶されているサイト1の気象予報データを取得する。かかる気象予報データは、上述したとおりアンサンブル予報に基づく数値データであり、1つのサイトにおける1つの日時での1種類の気象条件につき、27個の数値が含まれている。本実施形態では、
図10に例示するように、アンサンブル数値予報データのうち、現在時刻(2014年8月1日0時)以降の1時間毎の風速に関する27個の予報値が、予測値の算出のために用いられるべく、気象予報データ記憶領域125に記憶されている。
【0049】
次いで、第1算出部141は、ステップS202において、指定された日時(2014年8月1日0時)におけるサイト1の風速の予報値を、サイト1の風力発電機G1に適用されるパワーカーブに代入して、その日時における発電量の換算値を算出する。なお、パワーカーブを用いて風速の予報値を発電量に換算する手順は、上述したステップS102と同様の手順により行われ得る。
【0050】
ステップS203において、第1算出部141は、指定日時における風速の予報値と、ステップS202において算出された発電量の換算値と、を予測式(2)に適用し、この日時におけるサイト1の発電量に関する複数の予測値を求める。これら複数の予測値は、風速の予報値が27個あることに伴い、1つのサイトの1つの日時につき27個算出される。
【0051】
このようにして指定日時におけるサイト1の発電量の予測値を得た後、指定日時を2014年8月1日1時、同日2時・・・、同年同月2日0時・・・のように将来に向かって所定の時間間隔(本実施形態では1時間)だけ変更して、上述した手順を繰返し行う。このような手順を繰り返すことにより、第1算出部141は、サイト1における発電量を数十時間先まで予測する。このようにして予測された、サイト1での発電量に関する将来の数十時間に亘る予測値は、発電量予測データ記憶領域126に記憶される。なお、サイト1における発電量の予測結果は、例えば
図11のデータテーブルのようになる。
【0052】
そして、ステップS204において、第1算出部141は、サイト2〜4の全てについて将来の数十時間に亘る発電量の予測値を算出したかどうかを判定し、予測値の算出が完了するまでステップS201〜203を繰り返す。これによりステップS2が終了し、ステップS3に移る。なお、このようにして算出されたサイト1〜4毎の発電量の予測値は、出力部150を介して出力されてもよい。
【0053】
<所定地域の総発電量の予測値の算出>
サイト1〜4毎に将来の発電量の予測値が算出されると、
図4のステップS3において、所定地域Aにおける将来の総発電量に関する複数の予測値が算出される。このような総発電量の予測値の算出は、発電量算出部140の第2算出部142によって実行される。
【0054】
将来の総発電量の予測値は、本実施形態では、指定日時(2014年8月1日0時)におけるサイト1〜4の発電量の予測値に基づいて算出される。本実施形態において、指定日時における予測値は、サイト1〜4それぞれにつき27個あるところ、第2算出部142は、サイト1〜4のそれぞれから任意の1つの予測値を選択し、選択されたサイト1〜4の予測値の和をとって総発電量の1つの予測値とする。そして、第2算出部142は、同様の作業を、サイト1〜4の予測値における全ての組合せについて行う。そうすると、本実施形態において所定地域Aは4つのサイトを含み、また、各サイトにおける指定日時の予測値は27個ずつあるから、上記の組合せは27の4乗(531,441)通りあることになる。したがって、上述の作業によって総発電量の予測値は27の4乗(531,441)個だけ算出されることになる。
【0055】
一般的に、所定地域Aにサイトの数がnだけあり、かつ、各サイトにつき1つの指定日時に対してm個の同種類の気象予報値が与えられる(したがって各サイトにおける発電量の予測値はm個)と、第2算出部142が算出する総発電量の予測値は、1つの指定日時につきmのn乗個である。本実施形態では、説明の簡略化のため、サイトを4つとしているが、所定区域Aがより多くのサイトを含む場合、ステップS3において算出される総発電量の予測値の数は増加する。
【0056】
このようにして指定日時における総発電量の複数の予測値を算出すると、第2算出部142は、指定日時を2014年8月1日1時、同日2時・・・、同年同月2日0時・・・のように将来に向かって所定の時間間隔(本実施形態では1時間)だけ変更し、同様の計算を繰り返す。
【0057】
このような計算を繰り返すことにより、第2算出部142は、所定地域Aにおける総発電量を数十時間先まで算出する。このようにして算出された、所定地域Aにおける将来の総発電量に関する数十時間に亘る予測値は、発電量予測データ記憶領域126に記憶される。また、総発電量の予測結果は、例えば
図12のデータテーブルのようになる。そして、第2算出部142が総発電量を数十時間先まで算出すると、ステップS3は終了し、ステップS4に移行する。
【0058】
このようにサイト1〜4のそれぞれから選ばれた1つの予測値の和を全ての組合せについて算出して総発電量の予測値とすることで、1つ1つの予測値に内在する誤差が互いに打ち消されることが期待される。よって、サイト1〜4における予測値が1つだけである場合と比較して、気象リスクを考慮した発電量の予測が可能となるとともに、予測に対する信頼度が向上する。このことは、所定地域Aにおける発電計画の効率的かつ安定的な運用に資する。
【0059】
なお、ステップS3において算出された将来の一定期間に亘る総発電量の予測値は、概ね
図13(a)の例のように示される。つまり、横軸を時間軸、縦軸を総発電量として実績値及び複数の予測値(ただし、アンサンブルメンバー毎の時間変化を示すべく、同じメンバーの異なる時刻における予測値は直線で結ばれている)をプロットしたグラフは、現在時刻t0からt1,t2へと将来に向かって時間が進行するにつれて、予測値のばらつき(分散度)が大きくなる一般的傾向を示している。このことは、
図13(b),(c)に示すように、
図13(a)の時刻t1,t2における総発電量の予測値の度数分布図(ヒストグラム)の様子からも理解される。なお、
図13(a)における現在時刻t0より左側の折れ線は、過去の発電実績を示している。
図13に示されるグラフは、出力部150を介してモニタ等に出力されてもよい。
【0060】
なお、指定日時における総発電量の予測値を算出するためのサイト1〜4の予測値の組合せは、後述する予測の信頼度が保たれる限り、部分的に省略されてもよい。
【0061】
<信頼度の決定>
指定日時毎における総発電量の複数の予測値が算出されると、ステップS4において、予測の信頼度が決定される。このような信頼度の決定は、発電量算出部140の信頼度決定部143によって実行される。
【0062】
予測の信頼度は、指定日時(2014年8月1日0時)における総発電量の予測値の分布に基づいて決定される。本実施形態において、指定日時における総需要の予測値は27の4乗個あり、まず信頼度決定部143は、このような総需要の予測値について算術平均と標準偏差を求める。本実施形態では、標準偏差の値と信頼度との対応関係を示す対応表は予め設定されているものとし、信頼度決定部143は、このような対応表を参照して、予測に対する信頼度を決定する。標準偏差の値と信頼度との対応関係は、例えば、標準偏差の値が0から大きくなるにつれて、Aランク(信頼度:高)、Bランク(信頼度:中)、及びCランク(信頼度:低)のように分類される。
【0063】
このようにして指定日時における予測の信頼度を決定すると、信頼度決定部143は、指定日時を2014年8月1日1時、同日2時・・・、同年同月2日0時・・・のように将来に向かって所定の時間間隔(本実施形態では1時間)だけ変更し、その日時における予測の信頼度を決定する手順を繰り返す。そして、このような信頼度の決定手順を繰り返すことにより、信頼度決定部143は、所定地域Aにおける総発電量の予測に対する信頼度を数十時間先まで決定し、これによってステップS4は終了する。
【0064】
このようにして総発電量の予測に対する信頼度の情報を得ることで、後述する総発電量の見込み値の精度が向上する。
【0065】
なお、予測の信頼度は、
図13(b),(c)のようなヒストグラムを描画することで得られるヒストグラムの特徴(中央付近の高さや裾の広がり具合)に基づいて決定されてもよい。
【0066】
<総発電量の見込み値の決定>
ステップS4において信頼度が決定されると、ステップS5において、所定地域Aにおける総発電量の見込み値が決定される。総発電量の見込み値の決定は、発電量算出部140の見込み値決定部144によって実行される。
【0067】
総発電量の見込み値は、指定日時(2014年8月1日0時)における信頼度に基づいて決定される。例えば、見込み値決定部144は、指定日時における信頼度がランクA(信頼度:高)であると、その日時における総発電量の予測値の平均値から5%少なく総発電量を見込み、信頼度がランクB(信頼度:中)であると、平均値から10%少なく総発電量を見込み、また、信頼度がランクC(信頼度:低)であると、平均値から30%少なく総発電量を見込む。あるいは、見込み値決定部144は、A,B,Cの各ランクに応じて、全ての予測値の50パーセンタイル(中央値)、40パーセンタイル、20パーセンタイルに該当する予測値を、総発電量の見込み値として決定してもよい。他の方法として、見込み値を範囲で定めてもよく、見込み値決定部144は、例えば平均値(μ)と標準偏差(σ)とを用いて、−(μ+3σ)以上+(μ+3σ)以下の範囲を総発電量の見込み値として決定してもよい。更には、見込み値決定部144は、統計学における区間推定の考え方に基づき、例えば信頼係数95%に対する信頼区間を総発電量の見込み値としてもよい。
【0068】
このようにして指定日時における総発電量の見込み値を決定すると、見込み値決定部144は、指定日時を2014年8月1日1時、同日2時・・・、同年同月2日0時・・・のように将来に向かって所定の時間間隔(本実施形態では1時間)だけ変更し、その日時における総発電量の見込み値を決定する手順を繰り返す。そして、このような見込み値の決定手順を繰り返すことにより、見込み値決定部144は、所定地域Aにおける総発電量の見込み値を数十時間先まで決定し、これによってステップS5は終了する。
【0069】
このようにして信頼度に基づいて総発電量の見込み値を得ることで、予測の精度が向上し、発電計画の効率的かつ安定的な運用が可能となる。
【0070】
前述したとおり、発電量算出部140は、分散型電源G1〜G4の発電量と分散型電源G1〜G4の位置における気象情報との関係を示す予測式と、分散型電源G1〜G4の位置における指定の日時についての複数の気象予報値と、に基づいて、指定の日時における分散型電源G1〜G4の発電量に関する複数の予測値を算出する。また、信頼度決定部143は、複数の予測値における分布に基づいて、予測された発電量に対する信頼度を決定する。よって、分散型電源の発電量に関する予測に、予測の信頼度に関する情報を付加することができる。このことは、サイト1〜4及び所定地域Aにおける発電計画の効率的かつ安定的な運用に資する。
【0071】
また、見込み値決定部144が予測の信頼度に基づいて発電量の見込み値を決定することで、予測の精度が向上するとともに、気象リスクを考慮した発電量の予測が可能となる。データに裏付けられた、客観的で信頼度の高い発電量の予測が可能となる。
【0072】
また、予測式導出部130が、過去の所定期間における気象観測情報と、過去の所定期間における分散型電源G1〜G4の発電量の実績値と、に基づいて、予測式を生成することで、分散型電源G1〜G4の個別の発電環境に適した発電量の予測が可能になり、発電量の予測精度が向上する。
【0073】
分散型電源G1〜G4は、所定地域Aにおけるサイト1〜4(複数区域)内にそれぞれ設けられ、発電量算出部140は、第1算出部141と第2算出部142とを備えていることが好ましい。第1算出部141は、サイト1〜4毎に発電量に関する複数のサイト(区域)予測値を算出し、第2算出部142は、サイト1〜4毎に算出された前記複数のサイト予測値に基づいて、所定地域Aに設けられた分散型電源G1〜G4の総発電量に関する複数の地域予測値を算出し、そして、信頼度決定部143は、複数の地域予測値の分布に基づいて、予測された総発電量に対する信頼度を決定する。このように複数の地域予測値を算出することで、サイト1〜4毎の予測値に含まれる誤差が互いに打ち消されるため、気象リスクを考慮した所定地域Aの総発電量の予測が可能となるとともに、予測に対する信頼度が向上する。
【0074】
また、予測値の分布が算術平均及び標準偏差によって示されることで、予測値のばらつきが数値により表され、客観的で信頼度の高い発電量の予測が可能となる。
【0075】
また、複数の気象予報値がアンサンブル予報に基づく値であることによって、予報値のばらつき具合が発電量の予測値に反映されるため、信頼性を加味した発電量の予測が可能となる。
【0076】
また、分散型電源G1〜G4が風力発電機であり、また、複数の気象予報値が風速に関する複数の予報値を含むことにより、風力発電機の発電量を精度よく予測することができるとともに、予測の信頼度を得ることもできる。
【0077】
また、分散型電源G1〜G4が太陽光発電装置であり、また、複数の気象予報値が気温及び雲量のそれぞれについて複数の予報値を含むことにより、太陽光発電装置の発電量を精度よく予測することができるとともに、予測の信頼度を得ることもできる。
【0078】
なお、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。