(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989737
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】リクレーマ
(51)【国際特許分類】
B65G 65/06 20060101AFI20160825BHJP
【FI】
B65G65/06
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-211894(P2014-211894)
(22)【出願日】2014年10月16日
(65)【公開番号】特開2016-78989(P2016-78989A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2015年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 大司
【審査官】
大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−120286(JP,A)
【文献】
実用新案登録第2547057(JP,Y2)
【文献】
実開昭55−107556(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G65/06,69/04
F16B9/00−9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハローフレームに棒状のハロー爪が多数配設され、山積みされた粒状物を前記ハロー爪で掻き崩すリクレーマにおいて、
丸棒状で両端部に雄ネジ部が形成され、3つ以上の複数の前記ハロー爪に渡って配設される補助部材を備え、
前記ハロー爪に挿入孔が形成され、前記補助部材が前記挿入孔に挿入されて前記複数のハロー爪に渡って配設され、ナットが前記各雄ネジ部に螺合されて前記ハロー爪と前記補助部材とが連結されている、
ことを特徴とするリクレーマ。
【請求項2】
前記ハローフレームは、断面が四角い角材で構成され、
棒体で一端部が円環状に曲げられて爪挿入部が形成され他端部には雄ネジ部が形成された、2つの取付用ネジの前記爪挿入部内に、前記ハロー爪の上部が挿入され、前記ハロー爪が前記角材の第1の面に当接されて、前記取付用ネジの雄ネジ部が前記第1の面の対向面から突出され、2つの挿入孔が形成された取付板が前記対向面に当接されて、前記取付板の挿入孔に前記取付用ネジの雄ネジ部が挿入され、前記取付用ネジの雄ネジ部に爪用ナットが螺合されることで、前記ハロー爪が前記ハローフレームに着脱自在に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載のリクレーマ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、山形に積み上げられた石炭や鉱石、土砂等の粒状物を掻き崩すリクレーマに関する。
【背景技術】
【0002】
リクレーマは、ハローフレームに棒状のハロー爪が多数配設され、例えば、山積みされた石炭の傾斜面に沿ってハローフレームが移動することで、ハロー爪で石炭を掻き崩すものである。このようなリクレーマにおいて、ハロー爪による石炭の掻き崩しを円滑に行うために、補助部材を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この補助部材は、例えば、丸棒部材で構成され、この丸棒部材を複数のハロー爪の間を架け渡すように配設する。これにより、掻き取られた石炭群と山肌との接触抵抗が低下して、掻き取られた石炭群が山肌に沿って円滑に滑り落ち、安定した掻き崩しが可能となるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−120286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ハロー爪は、石炭などを掻き取ることで常時摩耗し、摩耗が進行すると掻き取り性能が劣化するため、取り替える必要がある。このような取り替えは、補助部材を備える場合も必要であるが、ハロー爪と補助部材とは、従来、溶接で連結されているため、ハロー爪を取り替える際に、現場でハロー爪と補助部材との溶接をし直さなければならなかった。
【0006】
しかしながら、高い位置での作業であり、しかも、養生シートの敷設などを行わなければならず、ハロー爪と補助部材との溶接には、多大な時間と労力、費用を要していた。しかも、例えば、貯炭場の場合、溶接火花によって火災が発生するおそれがあった。
【0007】
また、ハロー爪と補助部材とをボルトで連結する場合でも、ボルトで連結するのみでは、ハロー爪と補助部材とが強固に一体的にならず、補助部材が外れたり変形したりするおそれがある。
【0008】
そこでこの発明は、容易かつ安全、強固にハロー爪を取り替えることが可能なリクレーマを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、ハハローフレームに棒状のハロー爪が多数配設され、山積みされた粒状物を前記ハロー爪で掻き崩すリクレーマにおいて、
丸棒状で両端部に雄ネジ部が形成され、3つ以上の複数の前記ハロー爪に渡って配設される補助部材を備え、前記ハロー爪に挿入孔が形成され、前記補助部材が前記挿入孔に挿入されて前記複数のハロー爪に渡って配設され、
ナットが前記各雄ネジ部に螺合されて前記ハロー爪と前記補助部材と
が連結されている、ことを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、補助部材を複数のハロー爪の挿入孔に挿入し、つまり、複数のハロー爪に補助部材を貫通させて、
ナットを締結することでハロー爪と補助部材とが連結される。また、
ナットを解除して補助部材を挿入孔から引き抜くことで、ハロー爪と補助部材とが分離される。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載のリクレーマにおいて、
前記ハローフレームは、断面が四角い角材で構成され、棒体で一端部が円環状に曲げられて爪挿入部が形成され他端部には雄ネジ部が形成された、2つの取付用ネジの前記爪挿入部内に、前記ハロー爪の上部が挿入され、前記ハロー爪が前記角材の第1の面に当接されて、前記取付用ネジの雄ネジ部が前記第1の面の対向面から突出され、2つの挿入孔が形成された取付板が前記対向面に当接されて、前記取付板の挿入孔に前記取付用ネジの雄ネジ部が挿入され、前記取付用ネジの雄ネジ部に爪用ナットが螺合されることで、前記ハロー爪が前記ハローフレームに着脱自在に取り付けられている、ことを特徴とする。
【0012】
また、請求項1の発明によれば、補助部材を複数のハロー爪の挿入孔に挿入し、補助部材の両
雄ネジ部にナットを螺合、締結することで、ハロー爪と補助部材とが連結される。また、ナットを取り外して(解除して)補助部材を挿入孔から引き抜くことで、ハロー爪と補助部材とが分離される。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、
ナットの締結や解除を行うだけで、ハロー爪と補助部材とを連結したり分離したりすることができ、この結果、容易かつ短時間、低費用でハロー爪を取り替えることが可能となる。また、溶接などの火器を使用しないため、貯炭場などでも火災が発生することがなく、安全かつ安心してハロー爪を取り替えることが可能となる。
【0014】
しかも、複数のハロー爪を補助部材が貫通した状態でハロー爪と補助部材とが連結されるため、各ハロー爪と補助部材とが強固に一体的となる。この結果、補助部材が外れたり変形したりするのを抑制することが可能となる。
【0015】
また、ナットの螺合や取り外しだけで、ハロー爪と補助部材とを連結したり分離したりすることができ、この結果、容易かつ短時間、低費用でハロー爪を取り替えることが可能となる。しかも、補助部材の両端部に
雄ネジ部が形成されているだけであるため、構成が簡易で耐久性も高い。また、補助部材の両端部にナットを螺合するため、両端に位置するハロー爪がナットで挟持された状態となり、複数のハロー爪と補助部材とを安定して強固に連結することが可能となる。
請求項2の発明によれば、取付用ネジの雄ネジ部に爪用ナットを締め付けることで、ハロー爪がハローフレームに取り付けられ、爪用ナットを緩めてハロー爪を取付用ネジの爪挿入部から引き抜くことで、ハロー爪がハローフレームから取り外せる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明の実施の形態に係るリクレーマのハロー爪と補助部材との連結状態を示す正面図である。
【
図2】この発明の実施の形態に係るリクレーマのハローを示す正面図である。
【
図3】
図1のハロー爪のハローフレームへの取付状態を示す、(a)正面図と(b)平面図である。
【
図4】
図1のハロー爪と補助部材との連結部を示す拡大図である。
【
図5】この発明の他の形態におけるハロー爪と補助部材との連結状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0018】
図1〜
図4は、この発明の実施の形態を示し、
図2は、この実施の形態に係るリクレーマのハロー1を示す正面図である。このリクレーマは、ハローフレーム2に棒状のハロー爪3が多数配設され、山積みされた粒状物をハロー爪3で掻き崩して、スクレーパ(図示せず)で掻き出す装置であり、この実施の形態では、粒状物が石炭の場合について主として説明する。
【0019】
ハロー1は、
図2に示すように、櫛状のハローフレーム2に、このハローフレーム2の面から垂直に突出するように、丸棒状のハロー爪3が多数取り付けられたものであり、この実施の形態では、このようなハロー1を2つ備えている。そして、山積みされた石炭の傾斜面に沿ってハロー1(ハローフレーム2)が移動することで、多数のハロー爪3で石炭を掻き崩すものである。
【0020】
ハローフレーム2は、断面が四角い角材で構成され、「ハ」字状に斜めに延びてハローフレーム2の輪郭を形成する2つの斜辺体21と、2つの斜辺体21内に配設され櫛の歯に相当する複数の垂直体22と、を備えている。そして、次のようにして、各斜辺体21と各垂直体22に複数のハロー爪3が、着脱自在に取り付けられている。ここでは、垂直体22に取り付けられる場合について、説明する。
【0021】
すなわち、
図3に示すように、取付板41と2つの取付用ネジ42とを備え、取付板41には上下方向に2つの挿入孔が形成されている。取付用ネジ42は、棒体で構成され、一端部が円環状に曲げられて爪挿入部42aが形成され、他端部には雄ネジ部42bが形成されている。
【0022】
そして、2つの取付用ネジ42の爪挿入部42a内にハロー爪3の上部を挿入し、ハロー爪3を垂直体22の第1の面22aに当接させて、取付用ネジ42の雄ネジ部42bを垂直体22の第2の面22b(第1の面22aの対向面)から突出させる。次に、取付板41の挿入孔に雄ネジ部42bを挿入しながら取付板41を第2の面22bに当接させ、雄ネジ部42bに爪用ナット43を螺合、締め付ける。これにより、ハロー爪3が第1の面22aに押し付けられて、ハロー爪3が垂直体22に取り付けられる。また、爪用ナット43を緩めて、ハロー爪3を各取付用ネジ42の爪挿入部42aから引き抜くことで、ハロー爪3が垂直体22から取り外せるものである。
【0023】
このようにして、ハロー爪3が各斜辺体21と各垂直体22に所定の間隔で、着脱自在に取り付けられており、さらに、各垂直体22においては、
図2に示すように、3つのハロー爪3を1組の爪ユニットUとして、補助部材5が着脱自在に配設されている。
【0024】
すなわち、
図1に示すように、3つ(複数)のハロー爪3に渡って補助部材5が配設されている。具体的には、補助部材5は、丸棒状で、その外径がハロー爪3の外径よりも小径(約半分)で、両端部に雄ネジ部5aが形成されている。また、補助部材5の長さは、後述するようにして補助部材5を3つのハロー爪3に貫通させた状態で、両端に位置するハロー爪3から雄ネジ部5aの一部が突出するように設定されている。一方、ハロー爪3の下部には、
図3(a)に示すように、補助部材5の外径よりもやや大きい挿入孔3aが形成されている。
【0025】
そして、補助部材5が、各ハロー爪3の挿入孔3aに挿入されて3つのハロー爪3に渡って配設された状態で、
図1、4に示すように、ナット(締結手段)6が補助部材5の各雌ネジ部5aに螺合(締結)されている。ここで、ナット6は、緩み防止機能を備えたナットであり、各雌ネジ部5aには、2つのナット6が螺合されており、つまり、ダブルナットされており、これにより、ナット6が補助部材5に固定され、ハロー爪3と補助部材5とが連結されている。
【0026】
すなわち、補助部材5の両雌ネジ部5aにナット6を締め付けることで、補助部材5の両端に位置するハロー爪3がナット6で押圧され、補助部材5がナット6(両端のハロー爪3)で挟持された状態となる。これにより、補助部材5がハロー爪3の挿入孔3aから引き抜けなくなり、ハロー爪3と補助部材5とが連結された状態となるものである。
【0027】
また、少なくとも一方のナット6を補助部材5から取り外して(解除して)、補助部材5を各挿入孔3aから引き抜くことで、各ハロー爪3と補助部材5とが分離される。
【0028】
次に、このような構成のリクレーマの作用、特にハロー爪3と補助部材5との連結構造による作用について説明する。
【0029】
まず、貯炭場で山積みされた石炭群の傾斜面に沿ってハロー1を移動させることで、多数のハロー爪3で石炭を掻き崩す。この際、補助部材5によって石炭群の山肌となる傾斜面が剥ぎ取られるため、掻き取られた石炭群と山肌との接触抵抗が低下して、掻き取られた石炭群が山肌に沿って円滑に滑り落ち、安定した掻き崩しが可能となる。
【0030】
このような掻き崩し(掻き取り)を繰り返し、ハロー爪3が所定量摩耗した場合には、ハロー爪3を取り替える。この際、爪ユニットU以外のハロー爪3に対しては、上記のようにして、摩耗したハロー爪3をハローフレーム2の斜辺体21から取り外し、新たなハロー爪3を斜辺体21に取り付ける。
【0031】
また、各爪ユニットUに対しては、ナット6を取り外して(解除して)補助部材5を各挿入孔3aから引き抜いて、各ハロー爪3と補助部材5とを分離させる。次に、摩耗したハロー爪3をハローフレーム2の垂直体22から取り外し、新たなハロー爪3を垂直体22に取り付ける。そして、補助部材5を挿入孔3aに挿入して3つのハロー爪3に貫通させ、補助部材5の両雌ネジ部5aにナット6を螺合、締め付けて、ハロー爪3と補助部材5とを連結するものである。
【0032】
以上のように、このリクレーマ、特にハロー爪3と補助部材5との連結構造によれば、ナット6を締め付けたり外したりするだけで、ハロー爪3と補助部材5とを連結したり分離したりすることができる。この結果、容易かつ短時間にハロー爪3を取り替えることができ、さらに、取り替えに要する費用を軽減することができる。
【0033】
また、溶接などの火器を使用しないため、貯炭場でも火災が発生することがなく、安全かつ安心してハロー爪3を取り替えることが可能となる。また、火災発生のおそれがないため、養生する必要もない。
【0034】
さらに、3つのハロー爪3を補助部材5が貫通した状態でハロー爪3と補助部材5とが連結されるため、各ハロー爪3と補助部材5とが強固に一体的となる。この結果、補助部材5が外れたり変形したり、あるいはハロー爪3が変形したりするのを抑制することが可能となる。
【0035】
しかも、補助部材5の両端部にナット6を締め付けるため、両端に位置するハロー爪3がナット6で挟持された状態、換言すると、補助部材5がナット6(両端のハロー爪3)で挟持された状態となり、3つのハロー爪3と補助部材5とを安定して強固に連結することが可能となる。また、補助部材5の両端部に雌ネジ部5aが形成されているだけであるため、構成が簡易で耐久性も高い。
【0036】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、3つのハロー爪3を1組の爪ユニットUとして、補助部材5を配設する場合について説明したが、2つハロー爪3、または4つ以上のハロー爪3に渡って補助部材5を配設してもよい。
【0037】
また、補助部材5の両端の雌ネジ部5aにナット6を締め付けて、ハロー爪3と補助部材5とを連結しているが、補助部材5の一端部のみにナット6を締め付けるようにしてもよい。すなわち、
図5に示すように、補助部材5の一端部に雌ネジ部5aを形成し、他端部に挿入孔3aよりも大きいストッパ部5bを形成する。そして、一端側のハロー爪3にストッパ部5bを当接させて、他端側のハロー爪3から突出した雌ネジ部5aにナット6を締め付けるようにしてもよい。これにより、ナット6の取付数が減るため、より容易かつ短時間にハロー爪3を取り替えることが可能となる。
【0038】
さらに、締結手段をナット6で構成しているが、ボルトで構成してもよい。例えば、ハロー爪3に、軸心と直交する方向に延びて挿入孔3aまで貫通するネジ穴を形成する。そして、挿入孔3aに補助部材5を挿入した状態で、ネジ孔にボルトを螺合、締め付けてハロー爪3と補助部材5とを連結する。
【符号の説明】
【0039】
1 ハロー
2 ハローフレーム
3 ハロー爪
3a 挿入孔
41 取付板
42 取付用ネジ
42a 爪挿入部
5 補助部材
5a 雄ネジ部
6 ナット(締結手段)
U 爪ユニット