特許第5989743号(P5989743)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989743
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】バルブ遠隔制御システム
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/44 20060101AFI20160825BHJP
   F16K 37/00 20060101ALI20160825BHJP
   F16K 31/54 20060101ALI20160825BHJP
   F16K 31/46 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   F16K31/44 F
   F16K37/00 B
   F16K31/54
   F16K31/46 Z
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-246878(P2014-246878)
(22)【出願日】2014年12月5日
(65)【公開番号】特開2016-109203(P2016-109203A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2015年3月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085660
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 均
(74)【代理人】
【識別番号】100149892
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 弥生
(72)【発明者】
【氏名】大塚 恭士
(72)【発明者】
【氏名】市村 和俊
(72)【発明者】
【氏名】津森 彰
(72)【発明者】
【氏名】土村 淳
(72)【発明者】
【氏名】正上 靖則
(72)【発明者】
【氏名】河村 裕彦
(72)【発明者】
【氏名】藤井 敬三
(72)【発明者】
【氏名】植田 和之
【審査官】 北村 一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−034299(JP,U)
【文献】 特開2004−060682(JP,A)
【文献】 特開2003−329188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/44−31/62;37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の通路を開閉するバルブを操作するバルブ操作軸と一体化されたバルブ操作部に取り付けられ、該バルブ操作部に対して着脱自在に取り付けられるアダプタ駆動部と、該アダプタ駆動部を回転駆動させる駆動力伝達機構と、該駆動力伝達機構に駆動力を供給する駆動用アクチュエータと、を備えたバルブ開閉装置と、
第一の管体と、該第一の管体内に一列に収容された複数の球体と、前記第一の管体の一端に設けられ、該第一の管体内を前記各球体が移動することにより開閉動作する第一の表示機構と、前記第一の管体の他端に設けられ、空気圧により駆動される球体押圧機構とを備えたバルブ選択表示機構と、
基台と、前記バルブ操作軸に配置される可動部と、前記基台外面に配置される第二の管体と、前記第二の管体内に一列に収容された複数の球体と、前記第二の管体内を前記各球体が移動することにより表示動作する第二の表示機構と、前記バルブ操作軸の突出入により前記可動部が移動することで前記各球体を移動させる球体移動機構と、を備えたバルブ開閉表示装置と、
を備えたことを特徴とするバルブ遠隔制御システム。
【請求項2】
前記駆動力伝達機構が、前記駆動用アクチュエータにより進退駆動されるラックギアと、該ラックギアと噛合するピニオン歯車とを有し、該ピニオン歯車が前記アダプタ駆動部の歯車と噛み合い、前記駆動用アクチュエータによる駆動力を前記アダプタ駆動部に伝達するバルブ開閉装置と、
第一の管体と、該第一の管体内に一列に収容された複数の球体と、前記第一の管体の一端に設けられ、該第一の管体内を前記各球体が移動することにより開閉動作する第一の表示機構と、前記第一の管体の他端に設けられ、空気圧により駆動される球体押圧機構とを備えたバルブ選択表示機構と、
基台と、前記バルブ操作軸に配置される可動部と、前記基台外面に配置される第二の管体と、前記第二の管体内に一列に収容された複数の球体と、前記第二の管体内を前記各球体が移動することにより表示動作する第二の表示機構と、前記バルブ操作軸の突出入により前記可動部が移動することで前記各球体を移動させる球体移動機構と、を備えたバルブ開閉表示装置と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のバルブ遠隔制御システム。
【請求項3】
前記第一の表示機構は、前記第一の管体の一端に設けられ、前記球体により押圧されるピストンと、該ピストンの移動により前記第一の管体の外部に露出する状態表示部と、を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のバルブ遠隔制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電所、工場等に設置される流体搬送管等に装備されるバルブ隔制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
発電所等のプラントにおいては空気や蒸気等の気体や、水等の液体を流すための配管が設置されており、これら配管の途中には配管内の気体、液体の流量や圧力を制御するための流体制御バルブが多数設置され、これらバルブの開閉状態を管理することは重要な事項である。特に原子力プラントに設置されている流体制御バルブはバルブの開閉動作を切替るために電磁弁が設けられているが、例えば、電源喪失状態に陥った場合には電磁弁を作動させることができず、プラントの安全な稼動が維持できないという問題点がある。
また、プラントには手動の流体制御バルブも多数設けられており、平常時には作業員が当該バルブが設置されている箇所に移動し、手動で流体制御バルブの開閉を行うが、プラントで災害が発生し、作業員が容易に流体制御バルブに近づくことができないことも想定される。このように流体制御バルブに近づくことができない場合には、流体制御バルブの開閉動作そのものや、バルブ開閉度の確認が困難なためプラントの安全な稼動が維持できない。
このように既設の手動バルブを利用し、緊急遮断弁と等価の機能を行わせるものとして特許文献1記載のものがある。また、バルブの開閉度を表示するものとしては特許文献2記載のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−217679号公報
【特許文献2】特開平10−103562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の従来技術は、既設の手動バルブにバルブ駆動機構を取り付け、これを遠隔操作するものであるが、原子力プラントが被災したケースのように、作業員が現場で稼動する時間が限られている場合に簡易に手動バルブを遠隔制御可能とするものではない。また、特許文献2記載の従来技術では、表示部にバルブの開閉状態が表示されるので、遠隔監視を行う際にはその表示部を撮像しなければならず、バルブ周辺の状況を監視するためには別の監視カメラ等の撮像機器が必要となる。
そこで本発明は、既設のバルブに適用でき、かつ作業時間が短時間で済むバルブ開閉装置及び監視カメラ等で遠隔管理を行う場合であっても、バルブの開閉状態が把握しやすいバルブ遠隔制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1の発明に係るバルブ遠隔制御システムは、流体の通路を開閉するバルブを操作するバルブ操作軸と一体化されたバルブ操作部に取り付けられ、該バルブ操作部に対して着脱自在に取り付けられるアダプタ駆動部と、該アダプタ駆動部を回転駆動させる駆動力伝達機構と、該駆動力伝達機構に駆動力を供給する駆動用アクチュエータと、を備えたバルブ開閉装置と、第一の管体と、該第一の管体内に一列に収容された複数の球体と、前記第一の管体の一端に設けられ、該第一の管体内を前記各球体が移動することにより開閉動作する第一の表示機構と、前記第一の管体の他端に設けられ、空気圧により駆動される球体押圧機構とを備えたバルブ選択表示機構と、基台と、前記バルブ操作軸に配置される可動部と、前記基台外面に配置される第二の管体と、前記第二の管体内に一列に収容された複数の球体と、前記第二の管体内を前記各球体が移動することにより表示動作する第二の表示機構と、前記バルブ操作軸の突出入により前記可動部が移動することで前記各球体を移動させる球体移動機構と、を備えたバルブ開閉表示装置と、を備えたことを特徴とする。
請求項2の発明に係るバルブ遠隔制御システムは、前記駆動力伝達機構が、前記駆動用アクチュエータにより進退駆動されるラックギアと、該ラックギアと噛合するピニオン歯車とを有し、該ピニオン歯車が前記アダプタ駆動部の歯車と噛み合い、前記駆動用アクチュエータによる駆動力を前記アダプタ駆動部に伝達するバルブ開閉装置と、第一の管体と、該第一の管体内に一列に収容された複数の球体と、前記第一の管体の一端に設けられ、該第一の管体内を前記各球体が移動することにより開閉動作する第一の表示機構と、前記第一の管体の他端に設けられ、空気圧により駆動される球体押圧機構とを備えたバルブ選択表示機構と、基台と、前記バルブ操作軸に配置される可動部と、前記基台外面に配置される第二の管体と、前記第二の管体内に一列に収容された複数の球体と、前記第二の管体内を前記各球体が移動することにより表示動作する第二の表示機構と、前記バルブ操作軸の突出入により前記可動部が移動することで前記各球体を移動させる球体移動機構と、を備えたバルブ開閉表示装置と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
請求項3の発明に係るバルブ遠隔制御システムは、前記第一の表示機構は、前記第一の管体の一端に設けられ、前記球体により押圧されるピストンと、該ピストンの移動により前記第一の管体の外部に露出する状態表示部とを有することを特徴とする。

【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、簡単な構造で既設のバルブ装置に取り付けることができ、バルブ選択表示機構によりバルブ装置を特定し、バルブ開閉装置により所望のバルブを遠隔で開閉し、更にバルブ開閉状態表示装置によりバルブの開閉状態を表示することが可能であり、作業員等による誤操作を防ぎ、遠隔で安全にバルブ操作を行うことができる。また監視カメラ等でバルブ周辺の状況を撮影した場合であっても操作対象のバルブを確認でき、かつバルブの開閉状況が明確に分かるので、操作対象のバルブを誤ったり、バルブの開閉状態を誤認識することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係るバルブ開閉装置1の一部の構造を省略した正面図。
図2】本発明に係るバルブ開閉装置1の平面図。
図3】本発明に係るバルブ開閉装置1の一部分解斜視図。
図4】本発明に係るバルブ遠隔制御システムに用いられるバルブ選択表示機構を説明するための図。
図5】(a)、(b)及び(c)は状態表示部が収納された状態を示す正面図、側面図及び平面図。
図6】(a)、(b)及び(c)は状態表示部が展開された状態を示す正面図、側面図及び平面図。
図7】本発明に係る状態表示部の他の実施の形態を示す図であり、(a)は状態表示部の表示部材が管体51内にある状態を示す図、(b)は状態表示部の表示部材が管体51より展開した状態を示す図。
図8】本発明に係るバルブ開閉装置1の空気圧供給ラインを説明するための模式図。
図9】本発明に係るバルブ開閉装置1の空気圧供給ラインに用いられるシリンダ切替部を説明するための図。
図10】本発明の一実施形態に係るバルブ開閉表示装置の動作状態を示す一部断面図であり、(a)はバルブの閉状態を示す図、(b)はバルブの開状態を示す図。
図11】バルブ開閉表示装置に用いられる吊環部の構造を説明するための外観斜視図。
図12】本発明に係るバルブ開閉装置1、バルブ選択表示機構50、バルブ開閉表示装置140を用いたバルブ遠隔制御システムを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に示した実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1は本発明に係るバルブ開閉装置1の一部の構造を省略した正面図、図2は本発明に係るバルブ開閉装置1の平面図、図3は本発明に係るバルブ開閉装置1の一部分解斜視図である。
バルブ開閉装置1の取付け対象物であるバルブ装置30は、バルブ収容部32、バルブ操作軸34、バルブ操作部36を備え、バルブ収容部32内には流体通路を開閉するバルブ本体(図示省略)を有し、バルブ本体はバルブ操作軸34の一端に設けられている。バルブ操作軸34はバルブ収容部32の操作軸支持部38に形成した図示しない雌螺子部と螺合する雄螺子部を有する。バルブ操作部であるバルブハンドル36を正逆二方向に回転させることで、バルブ操作軸34は操作軸支持部38から突没自在に移動し、バルブ操作軸34の一端に設けられたバルブ本体をバルブ収容部32内の弁座に当接させたり、弁座から離間させたりすることで流体通路を開閉する。本実施例ではバルブ操作軸34が操作軸支持部38から最大限に突出した状態ではバルブは全開状態となっており、一方、最も没した状態ではバルブは全閉状態となっている。なお、バルブ操作軸34の出没方向と、バルブの開閉とは逆であってもよい。
【0010】
本発明に係るバルブ開閉装置1は、既設のバルブ装置30に取り付けられるものであって、バルブ装置30の底部に固定配置される基台3と、バルブ装置30の上方、本例ではバルブハンドル36の上方に固定配置され、その上面に駆動機構が実装された駆動機構載置台5と、基台3と駆動機構載置台5との間を一定間隔で維持しつつ基台に対して駆動機構載置台5を固定するための支柱6と、該支柱6による組み立て構造を補強するための補助板部材7と、支柱を固定するためのナット8とを有する。この補強板部材7は複数の分割片に分割可能に構成し、補強板部材7を構成する分割片を組み合わせた状態の四隅には支柱6が貫通する孔7aが設けられ、さらに、そのほぼ中央部にはバルブ装置30の操作軸支持部38の下部外周面の外形に適合した略円形の穴部7bが形成されている。補強板部材7を分割可能に構成することでバルブハンドル36を取り外すことなく補強板部材7を操作軸支持部38の下部に嵌め込むことが可能であり、これにより補強板部材7は操作軸支持部38とバルブ収容部32との間で上下方向にずれることなく位置決めすることができる。なお、図示は省略するが、補強板部材7を構成する各部材が互いに当接する断面に二重突合せ等の継ぎ構造を採用することで、補強板部材7の各部材の密着強度を上げることも可能である。また、補強板部材7の下面とバルブ収容部32の上部とを直接接触させつつ、両者の接触面積を多くし、より密着するよう構成しても良い。更に補強板部材7をバルブ収容部32に対して針金や巻線等の材料により固定しても良い。このように補強板部材7をバルブ収容部32に密着させる場合、補強板部材7は弾力性のある素材により構成するのが好ましい。
【0011】
駆動機構載置台5上には空気圧により駆動される一対の駆動用アクチュエータ9と、各アクチュエータ9のピストンロッド9aに固定されて駆動用アクチュエータ9により進退駆動されるラックギア(駆動力伝達機構)11と、各ラックギア11の歯部11aと夫々噛合した一対のピニオン歯車(駆動力伝達機構)13と、各ピニオン歯車13に噛合し、ピニオン歯車13より大口径の一つの歯車(アダプタ駆動部)15とが配置され、各ラックギア11及び各ピニオン歯車13は駆動力伝達機構を構成し、大口径の歯車15がアダプタ駆動部を構成している。
駆動機構載置台5の下面には、歯車15の下面中央部に同軸状に固定された接続用アダプタである駆動力伝達アダプタ17が配置されている。駆動力伝達アダプタ17はその小径部を駆動機構載置台5に設けた軸穴5bにより回転自在に軸支され、軸穴5b内には軸受19を設ける。
【0012】
駆動力伝達アダプタ17の下面から円形の配置で突出した複数の爪部17aをバルブハンドル36のスポーク間に挿入することでアクチュエータ9から供給される動力がラックギア11、ピニオン歯車13、歯車15、駆動力伝達アダプタ17を介して回転力としてバルブハンドル36に伝達され、バルブ装置30を開閉することができる。
なお、歯車15及び駆動力伝達アダプタ17はバルブ装置30のバルブ操作軸34と同軸上で回転可能に設けられている。また、歯車15及び駆動力伝達アダプタ17の回転を容易にするため、本実施例においては駆動機構載置台5と駆動力伝達アダプタ17とが当接する駆動機構載置台5の軸方向断面にはベアリング等の軸受け19を配置しているが、駆動機構載置台5や駆動力伝達アダプタ17の材質を選択し、駆動力伝達アダプタ17のスムースな動きが確保できれば軸受け19を省略することも可能である。
【0013】
このようなバルブ開閉装置1を既設のバルブ装置30に取り付ける際には、まず、基台3をバルブ装置30の底部に配置し、かつ、補強板部材7の中央の穴部7bがバルブ装置30の所望の外周に当接するよう補強板部材7を配置した状態で補強板部材7の四隅に設けた孔7aに支柱6を貫通させ、該支柱6の下部に形成された雄ネジ部を基台3の四隅に設けた雌ネジ部に螺合させることで基台3の四隅に支柱6を立設する。その後、駆動機構載置台5の下面に取り付けられた駆動力伝達アダプタ17の爪部17aがバルブハンドル36のスポーク間に挿入、嵌合するよう爪部17aとスポークとの位置関係を調整して駆動機構載置台5をバルブハンドル36の上方に配置した後、駆動機構載置台5の四隅に設けた孔5aから支柱6の上端の雄ネジ部を突出させ、駆動機構載置台5の上面からナット8で固定する。
プラントの電源喪失時等には、バルブ開閉装置1をバルブ装置30に固定し、アクチュエータ9(エアシリンダ)の空気供給口9b、9cに空気配管を取り付け、圧縮空気を供給することで、バルブ装置30を開閉することが可能となる。圧縮空気を供給する空気配管は作業員の安全が確保できる箇所に設置した空気ボンベ室等からポリウレタン樹脂製やゴム製のエアチューブを用いることができる。
【0014】
上記実施例においては、バルブ装置30のバルブハンドル36を駆動する駆動力を高めるためにアクチュエータ9の出力をラックギア11及びピニオン歯車13に供給し、ピニオン歯車13から歯車15及び駆動力伝達アダプタ17に供給しているが、バルブ装置30の開閉に必要なバルブ操作軸34の回転量や要求されるトルクによっては、駆動力伝達アダプタ17に取り付けられる歯車15をピニオン歯車13より小口径のものとし、ピニオン歯車13を大口径のものとしても良い。
更に、空気圧によりアクチュエータ9のピストンを駆動し、ピストンの移動量によりバルブ装置30の開閉を行う例を記載したが、アクチュエータ9及びラックギア11に代えて、正逆回転が可能な空気圧モータを用い、空気圧モータの出力軸に小径のピニオン歯車13を取り付けても良い。空気圧モータを用いることにより、アクチュエータ9のピストンのストローク量に制限されることなく、バルブ装置30を開閉するための駆動力を得ることができる。また、バルブハンドル36への駆動力を高めるために2つのアクチュエータ9を用いた例をあげて説明したが、単一のアクチュエータ9でバルブハンドル36を操作するよう構成しても良い。
【0015】
図4は本発明に係るバルブ遠隔制御システムに用いられるバルブ選択表示機構50を説明するための図である。
バルブ選択表示機構50は、一端が閉鎖(封止)され、他端が開放された第一の管体としての管体51と、管体51の内部に一列に、且つ可動な状態(転動自在な状態)で収容された複数の球体53と、管体の一端側に配置されて球体53を押圧する球体押圧機構としての押圧ピストン(ピストン)55と、管体51の閉鎖された一端と押圧ピストン55との間に配置され、押圧ピストン55を管体51の閉鎖された一端側に引っ張る方向に付勢しているバネ材57と、管体51の他端に設けられた第一の表示機構としての状態表示部59と、を備えている。また管体51の閉鎖された一端と押圧ピストン55との間の外周面には2系統の配管61及び63からそれぞれ圧縮空気が供給されるプラグ61a、63aが接続されている。つまり、2系統の配管61及び63から夫々延びるプラグ61a、63aは、管体51の閉鎖側端部と押圧ピストン55との間の空間(バネ材57収容部)に相当する管体の外周面に対して接続されている。
配管61または63からプラグ61aまたは63aを介して圧縮空気が管体51に供給されると、押圧ピストン55の端面に空気圧を受け、バネ材57の引っ張り力に抗して押圧ピストン55は管体51の開口部側に移動し、押圧ピストン55の変位が管体51内に収容された球体53を介して伝達されて管体51の他端に設けた状態表示部59を作動させる。
【0016】
図5図6に示すように、状態表示部59は、管体51内に固定配置された管固定軸71、開閉することにより表示動作を行う複数の翼部材(開閉表示部材)73、ピストン部材(ピストン)79と翼部材73とを連結する2つの連結部材75、連結軸77、ピストン部材79、及びピストン固定軸81により構成し、各部材の少なくとも一部は管体51内に配置されている。
2つの翼部材73は、一端部同士を重ねた状態で管固定軸71により管体51の端部近傍に回動可能に軸支され、また、各翼部材73の長手方向略中間部には連結軸77を介して連結部材75の一端が取り付けられ、2つの連結部材75の他端部は重ねた状態でピストン固定軸81によりピストン部材79に軸支されている。
前述したように配管61または63から圧縮空気が供給されると、管体51内の押圧ピストン55が管体51の開口部側に移動し、管体51内に収容された一連の球体53は押圧ピストン55と接触して状態表示部59側に押圧され、他端の球体53の外周面とピストン部材79の下面とが当接し、球体53の移動に伴ってピストン部材79が押し上げられる。ピストン部材79の押し上げにより翼部材73が管固定軸71を中心に展開し、管体51の先端近傍の側壁に設けられたスリット52から翼部材73の先端部が管体51の外周より外側に持ち上がる。これにより、翼部材73が展開された状態となり、2系統の配管61及び63の両方或いは何れか一方から圧縮空気が供給されたことを表示することができる。
【0017】
一方、2系統の配管61及び63からの圧縮空気の供給が遮断されると、押圧ピストン55はバネ材57により管体51の閉鎖された一端側に引き戻され、押圧ピストン55による一端の球体53への押圧力が解除される。一端側の球体53への押圧解除に伴い、他端側の球体53によるピストン部材79への押圧も解除され、ピストン部材79の自重により他端の球体53が下方に押圧され一連の球体53は管体51内を押圧ピストン55側に移動する。これにより、状態表示部59の翼部材73は管体51内に収容された状態となる。
球体53はその外周面の摩擦抵抗が小さい、金属、或いは樹脂等の材料により構成され、管体51内に一列に配列、収容され、押圧ピストン55の変位を管体51内の球体53が順次伝達し、他端の球体53の変位により状態表示部59を作動させる。球体53は個々に独立した状態であっても良いし、例えば、各球体53の中心部を貫通する孔を設け、該孔にワイヤーを挿入することで各球体53を連結して一連の状態を形成しても良い。この場合には各球体は管体内で転動自在とはならないが、押圧ピストン55の変位を状態表示部59に対して伝達することは可能である。
【0018】
図7(a)、(b)は本発明に係る状態表示部の他の実施の形態を示す図であり、(a)は状態表示部の表示部材が管体51内にある状態を示す図、(b)は状態表示部の表示部材が管体51より展開した状態を示す図である。
状態表示部85は一連の球体53の他端に連結したピストン部材87と、ピストン部材87の上面略中央部分に配置された骨部材89と、骨部材89の端部に固定された表示部材91とから構成している。骨部材89は金属もしくは樹脂等の弾性部材で形成され、(b)に示すように外力を受けない状態では骨部材89の自由端が水平方向に拡がり、表示部材91が展開するよう構成している。従って、骨部材89の端部に布材等からなる表示部材91を取り付けることで、押圧ピストン55が球体53を押圧した際には球体53によりピストン部材87が押し上げられ、管体51内から骨部材89が展開し、それに伴い表示部材91も展開する。
【0019】
一方、押圧ピストン55による押圧力が解除された場合には、球体53によるピストン部材87への押圧力が解除されるので、他端の球体53の下方移動に伴いピストン部材87が管体51の下方に移動し、弾性を有する骨部材89及び該骨部材89に取り付けられた布材等からなる表示部材91も管体51内に収容される(図7(a))。
このように表示部材91が管体51の端部で展開し、或いは管体51内に収容されることで、目視によるバルブ状態の把握をより容易にすることができる。また、バルブの開閉状態に関連して表示部材91の展開状態が変わるので、表示部材91の見え方、すなわち、表示部材91が見える面積によってバルブの開閉度合いを目視で容易に確認することができ、表示部材91を撮影し、その表示部材91が確認できる面積を画像処理すると、バルブの開閉度合いを極めて正確且つ細かく把握することができる。
【0020】
図8は本発明に係るバルブ開閉装置1の空気圧供給ラインを説明するためのアクチュエータ9周りの配管模式図、図9は空気圧供給ラインに用いられるシリンダ切替部92を説明するための図である。空気圧供給ラインにはシリンダ切替部92が設けられ、シリンダ切替部92はその内部に両端をスプリング材93、94により付勢された弁体95を有し、該弁体95はシリンダ切替部92内のシリンダ部97内に配置されている。シリンダ切替部92には制御用空気配管121及び123がそれぞれ取り付けられる供給口92a、92bと、バルブ駆動用空気配管125が取り付けられる供給口92cと、駆動用空気出力配管127、129が取り付けられる出力口92d、92eを備えている。制御用空気配管121及び123から制御用圧縮空気が供給されていない状態では、図8に示すように弁体95は中立状態となり、弁体95により出力口92d、92eのいずれも閉止され、バルブ駆動用空気配管125から供給されているバルブ駆動用圧縮空気はチャンバー92f内に留まっている。
制御用空気配管121から供給口92aを介して制御用圧縮空気がシリンダ切替部92に供給されると、弁体95の右側面に空気圧が付与され、スプリング材94の押圧力に抗して弁体が左側のスプリング材94側に移動し、チャンバー92fと出力口92dとが連通することでバルブ駆動用空気配管125から供給されているバルブ駆動用圧縮空気は駆動用空気出力配管127に出力される。これにより、アクチュエータ9の空気供給口9bに圧縮空気が供給されアクチュエータ9内のピストンを押圧し、2つのピストンロッド9aを同方向(本例では、各ピストンロッド9aがアクチュエータを構成するシリンダの外側へ突出する方向)へ作動させることができる。
【0021】
一方、制御用空気配管121からの供給を停止すると共に、制御用空気配管123から供給口92bを介して制御用圧縮空気がシリンダ切替部92に供給されると、弁体95の左側面に空気圧が付与され、右側のスプリング材93の押圧力に抗して弁体がスプリング材93側に移動し、チャンバー92fと出力口92eとが連通することでバルブ駆動用空気配管125から供給されているバルブ駆動用圧縮空気は駆動用空気出力配管129に出力される。これにより、各アクチュエータ9の空気供給口9cに圧縮空気が供給され、各アクチュエータ9内のピストンを押圧し、ピストンロッド9aを同方向(本例では、各ピストンロッド9aがアクチュエータを構成するシリンダの内部へ没入する方向)へ作動させることができる。
各ピストンロッド9aがそれぞれラックギア11と一体化されていることは上述の通りである。
【0022】
図10(a)及び(b)は本発明の一実施形態に係るバルブ開閉表示装置の動作状態を示す一部断面図であり、(a)はバルブの閉状態を示す図、(b)はバルブの開状態を示す図、図11はバルブ開閉表示装置に用いられる吊環部の構造を説明するための外観斜視図である。
【0023】
バルブ開閉表示装置140は、バルブ収容部32とバルブハンドル36(バルブ操作軸34)との間に設けられ、バルブ収容部32の適所、本例では上部に配置(固定)された基台135と、バルブ操作軸34に配置(固定)され、バルブ操作軸34の突出や没入に伴ってその軸方向に位置が可変する可動部としての吊環部141と、吊環部141の適所、本例では吊環部141の下面と基台135(管体151)との間に配置される球体移動機構としての蛇腹パイプ(伸縮パイプ)155と、蛇腹パイプ155の下端開口に対して上端開口にて連通接続した第二の管体としての管体151と、蛇腹パイプ155及び管体151の内部に一列に、且つ可動な状態(転動自在な状態)で収容された複数の球体153と、吊環部141の上下動に伴って球体153を押圧する押圧部材157と、管体151の他端に設けられた第二の表示機構としての状態表示部60と、を備えている。
【0024】
吊環部141は、バルブハンドル36を取り外した状態のバルブ操作軸34に嵌挿可能な環状構造を有し、バルブ操作軸に嵌挿された状態でバルブ操作軸34に螺子161等で固定される小径の固定部材163と、固定部材の外周面に対して相対回転可能に配置され、且つ押圧部材157が取り付けられた環状の可動部材165と、固定部材163と可動部材165との間に配置されて固定部材に対して可動部材を相対回転可能にするベアリング部167とにより構成している。
これによりバルブ操作軸34に固定された固定部材163がバルブ操作軸34の回転に伴い回転しても、ベアリング部167によって回転運動が可動部材165には伝達されず、可動部材165と固定部材163との供回りを防止し、可動部材165はバルブ操作軸34の回転に連れて上下方向に移動し、吊環部141の下面と基台135の上面との間に配置された蛇腹パイプ155を圧縮或いは伸張させることができる。
【0025】
蛇腹パイプ155はその下部開口部を管体151の一端開口(上部開口)と連通接続させており、蛇腹パイプ155は自らのバネ力により伸張方向に付勢されている。従って、吊環部141の下面と管体151が載置されている基台135との鉛直方向の間隙が広くなるに伴い、蛇腹パイプ155の蛇腹構造が伸張し、蛇腹パイプ155及び管体151で構成している球体153を収容する領域を確保することができる。
なお、蛇腹パイプ155の上部開口部を吊環部141の下面に直接固定する場合には蛇腹構造は伸張方向に付勢されていなくても吊環部141の移動に伴い蛇腹構造が伸張、圧縮し、更に、蛇腹パイプ155及び管体151内の球体153を吊環部141の下面で直接押圧するので、押圧部材157を省略することもできる。
【0026】
基台135はバルブ収容部32の操作軸支持部38及びバルブ収容部32本体の一部の外径より大径の開口部136を有する円盤状の構造であり、吊環部141と同様にバルブハンドル36を取り外した状態でバルブ収容部32上に配置し、図示を省略した固定手段によりバルブ収容部32上に固定される。また、図11に示したように円板状の基台135をその直径方向に沿って2分割して2つの基台部材135aと135bから構成すれば、バルブ操作用ハンドル36を取り外すことなく基台部材135aと135bとをその開口部136がバルブ収容部32の一部の外周面に接するような状態でバルブ収容部にネジ止め、或いは溶接等で固定することもできる。
なお、基台135は、バルブ収容部以外の箇所に固定してもよく、周辺に手ごろな固定対象物があればそれを利用してもよい。例えば、前述したバルブ開閉装置1とバルブ開閉表示装置140とを統合して使用する場合には、基台135をバルブ開閉装置1の補強板部材7に固定しても良いし、補強板部材7を基台135の代わりに利用しても良い。補強板部材7を基台135の代わりに利用する場合には補強板部材7は弾性を有する材質のものではなく剛性を有する材質のものを利用するのが好ましい。球体153、状態表示部60は図4乃至図7に示したバルブ選択表示機構50に用いた状態表示部59と同様の構成であり、その説明を省略する。
【0027】
図12は本発明に係るバルブ開閉装置1、バルブ選択表示機構50、バルブ開閉表示装置140を用いたバルブ遠隔制御システムを説明する概念図である。プラント内の既設のバルブ装置30に前述したバルブ開閉装置1、バルブ選択表示機構50、バルブ開閉表示装置140を取り付け、バルブ開閉装置1のシリンダ切替部92に制御用空気配管121、123(以下、制御用空気配管121を「”開”制御用空気配管121」、制御用空気配管123を「”閉”制御用空気配管123」と称すことがある)及びバルブ駆動用空気配管125を取り付ける。またバルブ選択表示機構50のプラグ61a、63aに制御用空気配管121、123から分岐した配管61及び63をそれぞれ取り付ける。駆動用空気配管125の経路には他のバルブへの分岐路125b、125cや、圧力を一定に保持するための空気タンク130が設けられている。
【0028】
作業員の安全が確保できる箇所に設置した空気ボンベ室173等には制御用空気配管121、123及び駆動用空気配管125に圧縮空気を供給するための圧縮空気ボンベ或いは空気圧縮機175と、制御用空気配管121、123及び駆動用空気配管125に設けられたバルブ177、179、181と、これら各バルブを制御するための制御盤183が設けられ、制御盤183の制御空気用スイッチ或いはレバー183aを操作することでバルブ177、179の開閉が制御され、駆動用空気用スイッチ或いはレバー183cを操作することでバルブ181の開閉が制御される。なお、制御空気用スイッチ或いはレバー183bはバルブ装置30以外のバルブの制御空気用バルブ(図示せず)を操作するためのものである。
更に、バルブ選択表示機構50及びバルブ開閉表示装置140の状態表示部59、105を監視できる位置にカメラ185が設けられ、該カメラ185の撮像データは空気ボンベ室173等で作業する作業員の携帯端末187に転送される。
【0029】
このように構成したバルブ遠隔制御システムにおいて、バルブ装置30の『開』操作を空気ボンベ室173から遠隔制御する手順について以下説明する。
まず、制御盤183のバルブ“開”選択スイッチSW1aを操作するか、あるいは電源喪失等で制御盤183が機能しない場合には空気ボンベ175の制御空気用バルブであるバルブ177を直接操作することでバルブ177を開き、圧縮空気ボンベ175から”開”制御用空気配管121及び該”開”制御用空気配管121から分岐した配管61に圧縮空気が供給され、これによりバルブ装置30に取り付けられたバルブ選択表示機構50が作動する。バルブ選択表示機構50に圧縮空気が供給されることによりバルブ選択表示機構50の押圧ピストン55が押圧され一連の球体53を介して状態表示部59が作動し、その状態をカメラ185で撮影することで操作対象のバルブ装置であることを確認できる。また”開”制御用空気配管121から圧縮空気が供給されることで、シリンダ切替部92の弁体95が押圧され、シリンダ切替部92において駆動用空気配管125と駆動用空気出力配管127とが連通した状態となる。
【0030】
次に、制御盤183の駆動空気用バルブ駆動スイッチSW2を操作するか、あるいは電源喪失等で制御盤183が機能しない場合には空気ボンベ175の駆動空気用バルブであるバルブ181を直接操作することで、圧縮空気ボンベ175から駆動用空気配管125に圧縮空気を供給すると、シリンダ切替部92のチャンバー92f、シリンダ部97を介して駆動用空気出力配管127に圧縮空気が供給される。それによりアクチュエータ9に圧縮空気が供給され、ピストンロッド9aが作動し、バルブハンドル36を回転させる。
バルブ装置30のバルブハンドル36及びバルブ操作軸34が回転すると、バルブ操作軸34は操作軸支持部38から突出し、バルブ開閉表示装置140は図10(b)に示すように状態表示部59が管体151内に収容される。その状態変化をカメラ185で撮像し、撮像データを作業員の携帯端末187で確認することで、バルブ装置30の『開』状態を把握することができる。バルブ装置30の開閉動作が完了した後、制御用及び駆動用の圧縮空気の供給を停止することで、バルブ選択表示機構50の押圧ピストン55が初期位置に戻り、状態表示部59の表示、すなわち、翼部材73或いは表示部材91は管体51内に格納される。
【0031】
バルブ装置30の『閉』操作も同様であり、まず、制御盤183のバルブ“閉”選択スイッチSW1bを操作するか、あるいは電源喪失等で制御盤183が機能しない場合には空気ボンベ175の制御空気用バルブであるバルブ179を直接操作することでバルブ選択表示機構50に”閉”制御用空気配管123を介して圧縮空気を供給し、バルブ選択表示機構50の状態表示部59を作動させる。バルブ選択表示機構50の状態表示部59をカメラ185で撮像した画像データで確認することで所望のバルブ装置であるか否かを判断する。その後、バルブ選択表示機構50が動作しているバルブ装置が所望のものであることを確認した後、制御盤183の制御空気用スイッチ或いはレバー183cを作動させてバルブ181を開き、圧縮空気ボンベ175から駆動用空気配管125に圧縮空気を供給する。それにより、シリンダ切替部92のチャンバー92f、シリンダ部97を介して駆動用空気出力配管127に圧縮空気が供給され、アクチュエータ9のピストンロッド9aが作動し、バルブハンドル36が回転する。
【0032】
バルブ装置30のバルブハンドル36及びバルブ操作軸34が回転すると、バルブ操作軸34は操作軸支持部38に没入し、バルブ開閉表示装置140は図10(a)に示すように状態表示部59が管体151内から展開した状態となる。その状態変化をカメラ185で撮像し、撮像データを作業員の携帯端末187で確認することで、バルブ装置30の『閉』状態を把握することができる。バルブ装置30の開閉動作が完了した後、制御用及び駆動用の圧縮空気の供給を停止すると、バルブ選択表示機構50の押圧ピストン55が初期位置に戻り、状態表示部59の表示、すなわち、翼部材73或いは表示部材91は管体51内に格納される。
なお、カメラ185は静止画或いは動画のいずれを撮像するものであってもよい。またカメラ185を複数台利用し、ステレオ画像とすることで、カメラ185から得た画像をステレオマッチングし、両方の画像データの相関が得られた箇所の視差を用いることで監視対象であるバルブ(状態表示装置)までの距離を把握することが可能となる。従って、複数のカメラ185を用いてステレオ画像処理を行うと、発電所等のように多数のバルブが配管上に配置されている場合であっても、個々のバルブの位置を正確に特定することでき、誤認識なくバルブの開閉状態を把握することが可能である。
【0033】
また、第一の状態表示機構である状態表示部59と、第二の状態表示機構である状態表示部60とが同じ構成である場合、作業員は誤認する可能性が生じるので、一方の状態表示部と他方の状態表示部とが誤認されにくい外観、形状のものを用いることが好ましい。例えば、第一の状態表示機構である状態表示部として図4乃至図6に示したものを用い、第二の状態表示機構である状態表示部として図7に示したものを用いることで、両者を明確に区別することができる。
更に、第一及び第二の状態表示機構の状態表示部59,60を共に図7に示した構成とし、表示部材91の素材、色(配色)、模様(凹凸等)、光の反射率等を異ならせることで、いずれの状態表示部が表示状態となっているのか外観上識別しやすくしてもよい。
【0034】
上記実施の形態においては、バルブ開閉表示装置140の球体移動機構として、蛇腹パイプのものを用いて説明を行ったが、これに限定されず、可動部材165と管体151を載置している部材(図10の例では基台135)との間の距離の変動により、球体153を収容する容積が変化する構造のものを用いることができる。このような構造のものとしては、可動部材165に連結した押圧部材が管体151側面に設けたスリットを介して管体151内の球体153を直接押圧する構造のものや、直径の異なる管体を用い、小口径の管体の外径より大きい内径を有する大口径の管体内に前記小口径の管体を挿入し、何れか一方の管体を可動部材165と管体151を載置している部材との間の距離の変動により摺動させ、球体153を収容する容積が変化する構造のものを用いても良い。
本発明は発電所、工場などの設備に配管される流体搬送用の管体に設けられるバルブ開閉装置や貯留タンクのバルブ開閉装置に適用されるが、適用対象はこれに限らず、たとえばガスボンベの開閉装置にも適用することができる。
【0035】
また、本発明によれば、事故等に起因して発電所や工場が破壊されたことにより作業員が事故現場に長時間滞在することができない環境下において、バルブにより配管内の流体を制御する必要が生じた場合、できるだけ短時間で、配管に設けたバルブに対して後付けによってバルブの開閉装置、バルブ選択表示機構、バルブ開閉表示装置を取り付けることにより、バルブの開閉状態を表示し、遠隔により確認することが可能となる。更にバルブ開閉装置やバルブ選択表示機構の動力は圧縮空気を用いるので、電源が喪失した状態であっても圧縮空気や圧縮された窒素ガス等の圧縮気体ボンベを利用して各装置を機能させることができる。
本発明のバルブの開閉表示装置は装置構成がシンプルであり、配管に対して取付けが容易であるため、短時間で設置が可能となり、作業員の安全性を高めることができる。
【0036】
<本発明の構成、作用、効果のまとめ>
本発明にかかるバルブ開閉装置1は、流体の通路を開閉するバルブを操作するバルブ操作軸34と一体化されたバルブ操作部36に取り付けられ、該バルブ操作部に対して着脱自在に取り付けられるアダプタ駆動部15と、該アダプタ駆動部を回転駆動させる駆動力伝達機構13、11と、該駆動力伝達機構に駆動力を供給する駆動用アクチュエータ9と、を備えたことを特徴とする。
本発明のバルブの開閉表示装置は、装置構成がシンプルであり、配管に対して取付けが容易であるため、短時間で設置が可能となり、作業員の安全性を高めることができる。
また、本発明のバルブ開閉装置では、駆動力伝達機構は、駆動用アクチュエータ9により進退駆動されるラックギア11と、該ラックギアと噛合するピニオン歯車13とを有し、該ピニオン歯車がアダプタ駆動部の歯車と噛み合い、駆動用アクチュエータによる駆動力をアダプタ駆動部15に伝達することを特徴とする。
駆動力伝達機構を、必要最小限のギア数からなり、且つシンプルな構成としたので、短時間での設置が可能となり、長期間に亘って信頼性の高いバルブ開閉を実現できる。
【0037】
また、本発明のバルブ選択表示機構は、第一の管体51と、該第一の管体内に一列に収容された複数の球体53と、第一の管体の一端に設けられ、該第一の管体内を各球体が移動することにより開閉動作する第一の表示機構59と、第一の管体の他端に設けられ、空気圧により駆動される球体押圧機構55とを備えたことを特徴とする。
バルブ選択表示機構を部品点数の少ないシンプルな構成としたので、最小限の組み付け手数による設置が可能であり、また故障が少ないため、長期間の運用を期待できる。
また、本発明のバルブ選択表示機構は、第一の表示機構59は、第一の管体51の一端に設けられ、球体により押圧されるピストン部材55と、該ピストン部材の移動により第一の管体の外部に露出する状態表示部とを有することを特徴とする。
バルブ選択表示機構を部品点数の少ないシンプルな構成としたので、最小限の組み付け手数による設置が可能であり、また故障が少ないため、長期間の運用を期待できる。
【0038】
本発明のバルブ遠隔制御システムは、バルブ開閉装置1と、第一の管体51と、該第一の管体内に一列に収容された複数の球体53と、第一の管体の一端に設けられ、該第一の管体内を各球体が移動することにより開閉動作する第一の表示機構59と、第一の管体の他端に設けられ、空気圧により駆動される球体押圧機構とを備えたバルブ選択表示機構50と、基台3と、バルブ操作軸に配置される可動部141と、基台外面に配置される第二の管体と、第二の管体内に一列に収容された複数の球体153と、第二の管体内を各球体が移動することにより表示動作する第二の表示機構60と、バルブ操作軸の突出入により可動部が移動することで各球体を移動させる球体移動機構とを備えたバルブ開閉表示装置と、を備えたことを特徴とする。
これによれば、事故等に起因して発電所や工場が破壊されたことにより作業員が事故現場に長時間滞在することができない環境下において、バルブにより配管内の流体を制御する必要が生じた場合、できるだけ短時間で、配管に設けたバルブに対して後付けによってバルブの開閉装置、バルブ選択表示機構、バルブ開閉表示装置を取り付けることにより、バルブの開閉状態を表示し、遠隔により確認することが可能となる。更にバルブ開閉装置やバルブ選択表示機構の動力は圧縮空気を用いるので、電源が喪失した状態であっても圧縮空気や圧縮された窒素ガス等の圧縮気体ボンベを利用して各装置を機能させることができる。
【0039】
本発明に係るバルブ遠隔制御システムでは、駆動力伝達機構は、駆動用アクチュエータの出力軸に接続するラックギアと、該ラックギアと噛合するピニオン歯車とを有し、該ピニオン歯車が接続用アダプタと同軸上に設けられたアダプタ駆動部の歯車と噛み合い、駆動用アクチュエータの出力軸による作動力をアダプタ駆動部に伝達したことを特徴とする。
本発明に係るバルブ遠隔制御システムでは、第一の表示機構59は、第一の管体51の一端に設けられ、球体により押圧されるピストン部材と、該ピストンの移動により第一の管体の外部に露出する状態表示部とを有することを特徴とする。
【0040】
実施形態では、状態表示部59を作動させることにより、2系統の配管61及び63の両方、或いは何れか一方から圧縮空気が供給されたことを表示したり、供給されていないことを表示する。
表示機構を部品点数の少ないシンプルな構成としたので、最小限の組み付け手数による設置が可能であり、また故障が少ないため、長期間の運用を期待できる。
【符号の説明】
【0041】
1…バルブ開閉装置、3…基台、5…駆動機構載置台、5a…孔、5b…軸穴、6…支柱、7…補助板部材、7a…孔、7b…穴部、8…ナット、9…駆動用アクチュエータ、9a…ピストンロッド、9b…空気供給口、9c…空気供給口、11…ラックギア(駆動力伝達機構)、11a…歯部、13…ピニオン歯車(駆動力伝達機構)、15…歯車(アダプタ駆動部)、17…接続用アダプタ(駆動力伝達アダプタ)、17a…爪部、19…軸受、30…バルブ装置、32…バルブ収容部、34…バルブ操作軸、36…バルブハンドル(バルブ操作部)、38…操作軸支持部、50…バルブ選択表示機構、51…管体、52…スリット、53…球体、55…押圧ピストン(球体押圧機構)、55…球体押圧機構、57…バネ材、59…第一の表示機構(状態表示部)、60…第二の表示機構(状態表示部)、61…配管、61a…プラグ、71…管固定軸、73…翼部材、75…連結部材、77…連結軸、79…ピストン部材、81…ピストン固定軸、85…状態表示部、87…ピストン部材、89…骨部材、91…表示部材、92…シリンダ切替部、92a…供給口、92b…供給口、92c…供給口、92d…出力口、92f…チャンバー、93…スプリング材、94…スプリング材、95…弁体、97…シリンダ部、121…制御用空気配管、123…制御用空気配管、125…バルブ駆動用空気配管、125b…分岐路、127…駆動用空気出力配管、129…駆動用空気出力配管、130…空気タンク、135…基台、135a…基台部材、136…開口部、140…バルブ開閉表示装置、141…吊環部(可動部)、151…管体、153…球体、155…蛇腹パイプ(球体移動機構)、157…押圧部材、161…螺子、163…固定部材、165…可動部材、167…ベアリング部、173…空気ボンベ室、175…圧縮空気ボンベ(空気圧縮機)、177…バルブ、179…バルブ、181…バルブ、183…制御盤、183a…レバー、183b…レバー、183c…レバー、185…カメラ、187…携帯端末、92e、92d…出力口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
図12