(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989765
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】製造方法および製品
(51)【国際特許分類】
B29C 45/16 20060101AFI20160825BHJP
A61B 17/56 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
B29C45/16
A61B17/56
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-509840(P2014-509840)
(86)(22)【出願日】2012年5月11日
(65)【公表番号】特表2014-518788(P2014-518788A)
(43)【公表日】2014年8月7日
(86)【国際出願番号】GB2012051061
(87)【国際公開番号】WO2012153149
(87)【国際公開日】20121115
【審査請求日】2015年4月16日
(31)【優先権主張番号】1107931.6
(32)【優先日】2011年5月12日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】509229810
【氏名又は名称】デピュイ・(アイルランド)
【氏名又は名称原語表記】DEPUY (IRELAND)
(73)【特許権者】
【識別番号】513283316
【氏名又は名称】レイク・リージョン・メディカル・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アスラン・アンリ
(72)【発明者】
【氏名】リーブ・マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ボープレ・トッド
【審査官】
長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0071572(US,A1)
【文献】
特開昭58−076243(JP,A)
【文献】
特表2009−523554(JP,A)
【文献】
実開平05−035232(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
B29C 33/00−33/76
A61B 17/00−17/94
A61F 2/00− 2/97
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科器具またはプロテーゼを製造する方法において、
暫定的な構成要素を形成するために第1の型に第1の材料を注入する工程と、
前記外科器具またはプロテーゼを形成するために、前記暫定的な構成要素の少なくとも一部を収容する第2の型に第2の材料を注入する工程であって、前記第1および第2の材料の一部が、前記外科器具またはプロテーゼの外表面で露出される、工程と、
を含み、
前記第2の材料は、凹部を含む、前記暫定的な構成要素の表面の選択された部分上に堆積され、その部分における前記第2の材料がマークを形成し、
前記凹部は、前記凹部を取り囲む前記暫定的な構成要素の前記表面から離間した、少なくとも1つの止まり穴をさらに含み、前記止まり穴は、前記第2の材料を前記第2の型に注入する前記工程中に前記凹部内の気体を受容するように構成され、
前記第1および第2の材料は、前記第1の材料の露出部分に隣接した、前記第2の材料の少なくとも1つの露出部分が、ユーザーに見える前記マークを形成するように、視覚的に別個のものである、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、
第2の型に第2の材料を注入する前記工程では、前記第2の材料は、前記暫定的な構成要素の少なくとも1つの部分を部分的または完全に取り囲み、その部分における前記第1の材料が、追加のマークを形成する、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、
前記暫定的な構成要素は、前記暫定的な構成要素の一部を通って延びる、少なくとも1つの孔を組み込み、
前記第2の材料を注入する前記工程は、前記第2の材料が前記孔を通って、前記暫定的な構成要素の前記表面の前記選択された部分まで流れることを含む、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、
前記暫定的な構成要素は、前記第2の材料を注入する前記工程中に前記第2の材料の流れを方向付けるように構成された少なくとも1つのチャネルを含み、前記少なくとも1つのチャネルは、前記少なくとも1つの孔と通じている、方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法において、
前記暫定的な構成要素の前記表面の前記選択された部分は、前記暫定的な構成要素の外表面上にある、方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法において、
前記第2の型は、前記暫定的な構成要素の前記表面の前記選択された部分を取り囲む前記暫定的な構成要素に対して密閉されて、前記マークの縁を画定するように構成される、方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法において、
前記第1および第2の材料は、異なる色のものである、方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法において、
前記マークは、前記外科器具またはプロテーゼの周囲外表面から奥まっているか、同じ高さであるか、または盛り上がっているように構成される、方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法において、
前記第1および第2の材料は、プラスチックを含む、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法において、
前記第1および第2のプラスチックは、同じプラスチックを含む、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、
前記第1および第2のプラスチックのうち少なくとも一方は、少なくとも1つの添加剤をさらに含む、方法。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか1項に記載の方法において、
前記プラスチックまたは各プラスチックは、ポリマー、またはシリコーンを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、製造方法と、その製造方法により生産された製品と、に関する。具体的には、本発明は、外科器具およびプロテーゼを作製する方法に関する。
【0002】
外科器具およびプロテーゼは、典型的には、比較的少数の材料から形成され、そのような材料は、生体適合性、強度、および弾性を含む、材料の特性に合わせて選択される。典型的な材料には、ステンレス鋼などの金属、およびプラスチックが含まれる。選択される材料、および器具を形成する方法は、その器具またはプロテーゼの特定の機能に応じて変化する。
【0003】
外科器具およびプロテーゼが、外科医により使用されるのを助けるためにマークを備えていることは、外科器具およびプロテーゼの一般的要件である。マークは、ゲージ線、数字、文字、または任意の他の形態の記号を含み得る。プラスチックから形成される構成要素については、器具の表面に、または、その表面内部の凹部の中へ、染料または塗料を塗ることによって、マークを形成することが知られている。あるいは、マークは、器具上にエッチングされることができる。このような追加的な処理工程は、外科器具を製造するコストを増大させる。さらに、生成されるマークは、洗浄中に損傷される傾向があり、これにより、器具またはプロテーゼを洗浄するのが難しくなる場合がある。
【0004】
本発明の実施形態の目的は、本明細書またはその他で特定されているかどうかにかかわらず、先行技術に関連する問題のうち1つまたは複数を取り除くか、または軽減することである。
【0005】
本発明の第1の態様によると、外科器具またはプロテーゼを製造する方法が提供され、この方法は、暫定的な構成要素を形成するために第1の型に第1の材料を注入する工程と、外科器具またはプロテーゼを形成するために、暫定的な構成要素の少なくとも一部を収容する第2の型に第2の材料を注入する工程であって、第1および第2の材料の一部が、外科器具またはプロテーゼの外表面で露出される、工程と、を含み、第1および第2の材料は、第1または第2の材料のうち一方の露出部分に隣接した、第1または第2の材料のうちもう一方の少なくとも1つの露出部分がユーザーに見えるマークを形成するように、視覚的に別個のものである。
【0006】
本発明の第1の態様の利点は、外科器具またはプロテーゼの表面上にマークが生成され得ることであり、これらのマークは、器具またはプロテーゼを洗浄する際に生じる損傷に対して比較的復元力のある(resilient)ものである。これは、染料または塗料を使用して器具の表面に塗布される、洗浄中に消えることのあるマークとは対照的に、マークが器具の残部と同様のプラスチックから形成されているので器具の一体的部分を形成するためである。使用されるプラスチックは視覚的に別個のものである、例えば異なる色のものであるので、マークは、外科医に非常によく見える。
【0007】
第2の材料を第2の型に注入する工程では、第2の材料は、暫定的な構成要素の少なくとも1つの部分を部分的または完全に取り囲むことができ、その部分における第1の材料が、マークを形成する。
【0008】
第2の材料を第2の型に注入する工程では、第2の材料は、暫定的な構成要素の表面の選択された部分上に堆積されてよく、その部分における第2の材料がマークを形成する。
【0009】
暫定的な構成要素は、暫定的な構成要素の一部を通って延びる、少なくとも1つの孔を組み込んでよく、第2の材料を注入する工程は、第2の材料がこの孔を通って、暫定的な構成要素の表面の選択された部分まで流れることを含む。
【0010】
暫定的な構成要素は、第2の材料を注入する工程中に第2の材料の流れを方向づけるように構成された少なくとも1つのチャネルを含んでよく、この少なくとも1つのチャネルは、少なくとも1つの孔と通じている。
【0011】
暫定的な構成要素の表面の選択された部分は、マークを形成するために第2の材料を受容するように構成された凹部を含み得る。
【0012】
この凹部は、凹部を取り囲む暫定的な構成要素の表面から離間した、少なくとも1つの止まり穴をさらに含み得、止まり穴は、第2の材料を第2の型に注入する工程中に凹部内の気体を受容するように構成される。
【0013】
暫定的な構成要素の表面の選択された部分は、暫定的な構成要素の外表面上にあってよい。
【0014】
第2の型は、暫定的な構成要素の表面の選択された部分を取り囲む暫定的な構成要素に対して密閉されて、マークの縁を画定するように構成され得る。
【0015】
第1および第2の材料は、異なる色であってよい。
【0016】
マークは、外科器具またはプロテーゼの周囲外表面から奥まっているか、同じ高さであるか、または盛り上がっているように構成され得る。
【0017】
第1および第2の材料は、プラスチックを含み得る。第1および第2のプラスチックは、実質的に同様の構造特性を有してよい。第1および第2のプラスチックは、同じプラスチックを含むことができる。第1および第2のプラスチックのうち少なくとも一方は、少なくとも1つの添加剤をさらに含み得る。この、または各プラスチックは、高性能もしくは超高性能ポリマー、またはシリコーンを含み得る。
【0018】
本発明の第2の態様によると、射出成形された外科器具またはプロテーゼが提供され、これは、外表面を有する射出成形された本体を含み、外表面は、第1の射出成形工程で第1の材料から形成された少なくとも1つの第1の露出部分と、第2の射出成形工程で第2の材料から形成された少なくとも1つの第2の露出部分と、を含み、第1および第2の材料は、第1および第2の部分のうち少なくとも一方が、ユーザーに見えるマークを形成するように、視覚的に別個のものである。
【0019】
本発明は、添付図面を参照して、ほんの一例として説明される。
【0020】
外科器具およびプロテーゼを含む製品を、射出成形を通じて製造することが知られている。熱可塑性物質または熱硬化性プラスチックなどの材料を加熱および混合して、均一な一貫性(uniform consistency)を確実にする。溶融材料が、圧力下で、型の空洞に押し込まれ、そこで、冷却され固まる。型の空洞を満たすのに必要な材料の量は、ショットと呼ばれる。
【0021】
射出成形を用いて、プラスチック材料の層を、現在の暫定的な構成要素の一部または全体にわたり取り付けることが知られている。この技術は、オーバーモールド、または、2ショット成形と呼ばれ得る。この技術の1つの既知の適用は、異なる材料特性を有する2つの異なる形態のプラスチックを互いに連結することである。例えば、歯ブラシが、ハンドルの本体を形成する第1の堅いプラスチックと、ハンドグリップを形成する第2の柔らかいプラスチックと、を含み得る。2ショット成形は、金属などの他の材料をプラスチックでコーティングし、2つの別々の構成要素を互いに結合することでも知られている。
【0022】
本発明の実施形態によると、2ショット射出成形プロセスは、ユーザーに見えて、かつ日常的な洗浄の間の損傷に耐えるマークを、外科器具またはプロテーゼ上に生成するのに使用され得る。第1の射出成形工程では、器具またはプロテーゼの本体を構成する暫定的な構成要素が形成される。第2の射出成形工程では、暫定的な構成要素の一部または全体が、第2の型に挿入され、第2の型は、暫定的な構成要素に対して密閉され、記号および線などのマークが形成されるべき領域を、暫定的な構成要素の表面上に画定する。第1の射出成形工程で使用されるプラスチック材料と視覚的に異なるプラスチック材料を、マークの領域で型に注入する。
【0023】
視覚的に別個となるような何らかの方法で、例えば異なる色とすることによって、扱われるにもかかわらず、まったく同じプラスチックが第1および第2の射出成形工程で使用されるかもしれない。しかしながら、異なるものの、類似のプラスチックが使用されるかもしれない。特定の適用では、類似していないプラスチックが使用され得るが、器具またはプロテーゼの使用に伴う機能的理由から、典型的には同じかまたは類似のプラスチックが必要とされる。「類似」とは、各射出成形工程で使用されるプラスチックが、類似の化学的、構造的、または機能的特性を備えて、概して同じであることを意図している。異なるが類似のプラスチックが使用される、本発明の特定の実施形態では、各プラスチックは、「高性能ポリマー」および「超高性能ポリマー」としてプラスチック業界で知られるプラスチック群の範囲内のものであってよく、これは、それらのポリマーが、化学物質、水分、および温度に対する高い耐性、ならびに高い剛性を概して有するためである。あるいは、いくつかの種類のシリコーンを使用することができる。マークを形成するのに2ショット成形を使用するための1つのオプションは、器具またはプロテーゼの本体をガラス充填プラスチック(glass filled plastic)から形成し、マークを、ガラスが充填されていない同じプラスチックから形成することである。あるいは、これらのプラスチックが実質的に互いに同じで、プラスチック混合物に組み込まれる特定の染料のみが異なっていてもよい。
【0024】
暫定的な構成要素の表面上の、マークが形成されるべき領域は、暫定的な構成要素の平らな表面の選択された部分であってよい。この領域の形状およびサイズ(暫定的な構成要素の周囲表面上のマークの高さを含む)は、型の形状、および型が暫定的な構成要素に対して密閉される方法により、定められ得る。あるいは、マークの領域は、暫定的な構成要素の表面内の凹部により部分的にまたは完全に画定されてよい。凹部が使用される場合、型は、第2のプラスチック材料が暫定的な構成要素の周囲表面に対して奥まるように、暫定的な構成要素に対して密閉されることができる。あるいは、マークは、周囲表面と同じ高さであるか、または、周囲表面より盛り上がっていてよい。
【0025】
第2のプラスチック材料が暫定的な構成要素の表面上の必要な領域に確実に移動できるようにするために、1つまたは複数のチャネルが、暫定的な構成要素内部に画定されて、マーク領域につながることができる。例えば、マークが第1の表面上に形成されるべきである場合、チャネルは、暫定的な構成要素の裏面に形成されて、マーク領域の下を通ることができる。フィルホール(fill hole)が、チャネルをマーク領域につなげてよく、チャネルに供給される、注入されたプラスチックは、フィルホールを通ってマーク領域まで移動することができる。有利なことに、単一のチャネルが、それぞれのマーク領域に連結される複数のフィルホールを備えてよく、第2の射出成形工程で、単一の注入ポートを使用して、複数のマークを形成することができる。
【0026】
図1を参照すると、この図は、本発明の実施形態による、製造プロセスの途中の暫定的な構成要素の斜視図を示す。暫定的な構成要素は、外科器具またはプロテーゼを形成されるためにオーバーモールドされることが意図される、射出成形プラスチック構成要素を含む。
図1の暫定的な構成要素は、外科器具の構造の大部分(または射出成形を通じて形成される外科器具全体の少なくともその部分)を概ね構成し得る、単一の本体30を含むことが分かる。本体30の表面内には、一連の凹部、例えば凹部32が配される。凹部32のうちいくつかが数字および文字を形成し、いくつかが線および他の形状を形成しているのが分かる。凹部32は、マークが形成されるべき領域を、本体30の表面上に画定する。
【0027】
各凹部32の基部には、少なくとも1つのフィルホール34がある。フィルホール34は、
図1が暫定的な構成要素の斜視図であるために、
図1では凹部32のうちのいくつかにおいてしか見ることができないことが理解される。さらに、凹部32のうちいくつかまたはすべては、止まり穴40を含み得る。フィルホール32は、暫定的な構成要素30を完全に貫通して延びる。止まり穴40は、一端部で閉じており、マークの凹部32の基部において、より小さな凹部を形成する(from)。1つのフィルホール32および1つの止まり穴40が、
図1で特定される。
図1の斜視図および
図2の平面図では、フィルホール32および止まり穴40は識別しづらいことが理解される。フィルホール32と止まり穴40との違いは、以下に説明する
図4〜
図8の断面図で、よりはっきりと見ることができる。
【0028】
また、
図2の暫定的な構成要素の上面図を参照すると、各凹部32が少なくとも1つのフィルホール34とつながっているのが分かる。
図3を参照すると、これは、
図1の暫定的な構成要素30の底面図である。暫定的な構成要素30の基部は、いくつかのチャネル36を画定し、これらのチャネル36はそれぞれ、暫定的な構成要素の外縁38から一群のフィルホール34まで延びる。本発明の代替的な実施形態では、チャネル36は、単一のフィルホールのみとつながることができる。各チャネル36は、1つの面で開口しており(これは、第2の射出成形工程中、第2の型の側面により閉鎖される)、各フィルホール34まで、したがって各凹部32までプラスチックを流すように十分な深さのものである。
【0029】
図4および
図5は、
図6および
図7の拡大図と共に、暫定的な構成要素の断面図を示す。チャネル36が、本体30のかなりの深さにわたって延び、フィルホール34が、凹部32に開口する手前でチャネル36より狭く浅いことが、
図7の拡大図で特に分かる。
図7は、
図4の断面図の一部を拡大図で示しており、この図では、チャネル36、フィルホール34、マークの凹部32の相対寸法が明確に分かる。
図6は、マークの凹部32を含まない暫定的な構成要素30の領域を通過するチャネル36の一部を示す、
図5の断面図の一部を拡大図で示している。チャネル36は、暫定的な構成要素30の外縁38から、マークが必要とされるいかなる場所にも延びなければならないことが、理解されるであろう。
図3は、第2の射出成形工程でマークの凹部32すべてにプラスチックを供給するために、複数のチャネル36が必要とされ得ることを示す。本発明の代替的な実施形態では、第2の射出成形工程のための型は、暫定的な構成要素30の面に直接プラスチックを供給するよう構成されてよいので、暫定的な構成要素30の縁38までずっと(all of the way)延びるチャネルを有する必要はないかもしれない。
【0030】
次に
図8を参照すると、これは、
図4の断面図の拡大された部分を示しており、一対の止まり穴40がフィルホール34に隣接しているのを見えるようにしている。第2の射出成形工程中、凹部32内部の空気は、概して、型の表面と暫定的な構成要素30との間で追い出される。しかしながら、空気が閉じ込められると、これにより、凹部32が第2のプラスチックで正しく満たされることが妨げられてしまう。このことは、第2のプラスチックから形成される連続表面が、完成した外科器具またはプロテーゼのその特定のマークのために形成されることを妨げ得る。止まり穴40は、閉じ込められた空気を収容し、第2のプラスチックを、凹部32全体にわたって十分に流す。止まり穴40は、すべての凹部32、特に小さな凹部、または別個の空気逃がしチャネルを備えた大きな凹部について、必要とされない場合があることが理解される。
図9を参照すると、この図は、
図2の暫定的な構成要素の上面図の拡大部分を示す。5つの凹部32が示されており、これには2つの数字、および3つのダッシュ記号が含まれる。各凹部は、少なくとも1つのフィルホール34、および少なくとも1つの止まり穴40を含む。凹部を両端部から満たす2つのフィルホール34を有する凹部32の場合(例えば数字「3」)または、凹部32が細長く、フィルホール32により一端部に向かって満たされる場合(例えば数字「1」)には、止まり穴40が特に有用であることが、分かった。
【0031】
図10および
図11を参照すると、これは、第2の射出成形工程で
図1の暫定的な構成要素30を用いて、本発明の実施形態に従って形成された外科器具の上面および底面の一部をそれぞれ示す。
図10では、2つの数字、およびダッシュ記号を含む、マーク42が見える。第1のマーク(数字「5」)は、周囲器具と同じ高さであることが分かる。特に、第1のマークは、平らな部分を有する第2の型によって周囲の第1のプラスチックと同じ高さで密閉された凹部の中に、フィルホールを通じて第2のプラスチックを注入することにより、形成された。第2のマーク(数字「3」)は、第2の射出成形工程の型が周囲の第1のプラスチックに対して密閉され、第2の型が数字の形状を有する凹部を含むので、周囲器具より盛り上がっている。
図11では、2つの充填済みチャネル44が見え、第2のプラスチック材料が第2の型の一部の中に、型の縁38に沿って注入されており、フィルホール34が設けられたチャネル36の部分まで、第2のプラスチックが流れるようになっている。比較のため、1つのチャネル36が、第2のプラスチック材料で充填されずに、図示されている。
【0032】
完成した外科器具またはプロテーゼ上のマークの視覚的品質は、さまざまな要因の影響を受ける。これらの要因には、使用される特定の材料、マークの幅および深さ(すなわち凹部および/もしくは周囲のプラスチックから突出しているマークの部分)、フィルホールの寸法、位置および数、チャネルの寸法、止まり穴の寸法、位置および数、ならびに第1の射出成形工程で形成された暫定的な構成要素の壁厚および精度、が含まれる。
【0033】
適切なプラスチックの例として、Avaspire(登録商標) AV 651 GF30 BK95を、第1の射出成形工程で使用して、暫定的な構成要素を形成することができる。これは、30%のガラス繊維で強化されたポリアリールエーテルケトンであり、Solvay Advanced Polymersが製造し、黒く着色されたものである。Avaspire(登録商標) AV 651 GF30 BG20は、マークを形成するために第2の射出成形工程で使用され得る。これは、ベージュに着色されたことを除いて、第1のプラスチックと概ね同じである。
【0034】
良質のマークは、それらが0.25mm以上、例えば約0.43mmの最小幅を有する場合に形成され得ることが分かった。同様に、適切な最大のマーク幅は、2mm以下、例えば約1mmであることが分かった。良質のマークは、それらが、0.1mm以上、例えば約0.24mmの最小深さを有する場合に形成され得ることが分かった。
【0035】
マークまでプラスチックが適切に流れるのを確実にするために、フィルホールは、直径と長さとの最大比が2である、例えば0.5mmの直径および0.25mmの長さを有するべきであることが分かった。フィルホールの最大直径は、第2の射出成形工程で充填されるべき凹部の形状およびサイズにより制限される。しかしながら、第2の射出成形工程で注入される材料の良好な機械的保持を確実にするために、凹部内でフィルホールが凹部の側面から離間することを確実にするのが望ましい。フィルホールは、0.25mm以上、例えば約0.3mmの最小直径を有することができる。フィルホールは、0.75mm以下、例えば約0.530mmの最大直径を有することができる。フィルホールは、0.25mm以上、例えば約0.35mmの最小長さを有することができる。フィルホールは、2mm以下、例えば約1.0mmの最大長さを有することができる。フィルホールの寸法、数および位置は、注入圧力を含む第2の射出成形工程のパラメータと組み合わせて、形成されるべきマークの形状、およびマークを形成するのに必要な材料の容量に大きく依存していることが理解される。
【0036】
代替的な実施形態では、第1のプラスチックから形成された暫定的な構成要素は、少なくとも1つのマークを含み、第2の射出成形工程が、マークを取り囲み、かつマークを覆いのない状態にする、器具またはプロテーゼの外側構造を形成するよう構成されることがあるかもしれない。第2のプラスチックは、マークを部分的にまたは十分に取り囲むように構成され得る。マークは、器具またはプロテーゼの外表面で露出され、かつ周囲の第2または第1のプラスチックそれぞれと比べて可視である、第1および第2のプラスチック双方の一部から形成されることもできる。
【0037】
前述した本発明の実施形態は、外科器具、およびそのような器具を製造する方法に関するものであるが、請求項により定められる発明は、これに限定されない。同じ製造技術を、外科プロテーゼの製造に適用することもできる。具体的には、前述した製造技術は、頑丈なマークをプラスチックの外科器具またはプロテーゼに付ける必要がある場所のどこにでも、概ね適用可能である。
【0038】
本発明の他の適用および改変は、請求項の範囲から逸脱せずに、本明細書の教示から当業者には容易に明らかとなるであろう。
【0039】
〔実施の態様〕
(1) 外科器具またはプロテーゼを製造する方法において、
暫定的な構成要素を形成するために第1の型に第1の材料を注入する工程と、
前記外科器具またはプロテーゼを形成するために、前記暫定的な構成要素の少なくとも一部を収容する第2の型に第2の材料を注入する工程であって、前記第1および第2の材料の一部が、前記外科器具またはプロテーゼの外表面で露出される、工程と、
を含み、
前記第1および第2の材料は、前記第1または第2の材料のうち一方の露出部分に隣接した、前記第1または第2の材料のうちもう一方の少なくとも1つの露出部分が、ユーザーに見えるマークを形成するように、視覚的に別個のものである、方法。
(2) 実施態様1に記載の方法において、
第2の型に第2の材料を注入する前記工程では、前記第2の材料は、前記暫定的な構成要素の少なくとも1つの部分を部分的または完全に取り囲み、その部分における前記第1の材料が、マークを形成する、方法。
(3) 実施態様1に記載の方法において、
第2の型に第2の材料を注入する前記工程では、前記第2の材料は、前記暫定的な構成要素の表面の選択された部分上に堆積され、その部分における前記第2の材料が、マークを形成する、方法。
(4) 実施態様3に記載の方法において、
前記暫定的な構成要素は、前記暫定的な構成要素の一部を通って延びる、少なくとも1つの孔を組み込み、
前記第2の材料を注入する前記工程は、前記第2の材料が前記孔を通って、前記暫定的な構成要素の前記表面の前記選択された部分まで流れることを含む、方法。
(5) 実施態様4に記載の方法において、
前記暫定的な構成要素は、前記第2の材料を注入する前記工程中に前記第2の材料の流れを方向付けるように構成された少なくとも1つのチャネルを含み、前記少なくとも1つのチャネルは、前記少なくとも1つの孔と通じている、方法。
【0040】
(6) 実施態様3〜5のいずれかに記載の方法において、
前記暫定的な構成要素の前記表面の前記選択された部分は、前記マークを形成するために前記第2の材料を受容するように構成された凹部を含む、方法。
(7) 実施態様6に記載の方法において、
前記凹部は、前記凹部を取り囲む前記暫定的な構成要素の前記表面から離間した、少なくとも1つの止まり穴をさらに含み、前記止まり穴は、第2の材料を第2の型に注入する前記工程中に前記凹部内の気体を受容するように構成される、方法。
(8) 実施態様3〜7のいずれかに記載の方法において、
前記暫定的な構成要素の前記表面の前記選択された部分は、前記暫定的な構成要素の外表面上にある、方法。
(9) 実施態様3〜8のいずれかに記載の方法において、
前記第2の型は、前記暫定的な構成要素の前記表面の前記選択された部分を取り囲む前記暫定的な構成要素に対して密閉されて、前記マークの縁を画定するように構成される、方法。
(10) 実施態様1〜9のいずれかに記載の方法において、
前記第1および第2の材料は、異なる色のものである、方法。
【0041】
(11) 実施態様1〜10のいずれかに記載の方法において、
前記マークは、前記外科器具またはプロテーゼの周囲外表面から奥まっているか、同じ高さであるか、または盛り上がっているように構成される、方法。
(12) 実施態様1〜11のいずれかに記載の方法において、
前記第1および第2の材料は、プラスチックを含む、方法。
(13) 実施態様12に記載の方法において、
前記第1および第2のプラスチックは、同じプラスチックを含む、方法。
(14) 実施態様13に記載の方法において、
前記第1および第2のプラスチックは、同じプラスチックを含む、方法。
(15) 実施態様14に記載の方法において、
前記第1および第2のプラスチックのうち少なくとも一方は、少なくとも1つの添加剤をさらに含む、方法。
【0042】
(16) 実施態様12〜15のいずれかに記載の方法において、
前記プラスチックまたは各プラスチックは、高性能もしくは超高性能ポリマー、またはシリコーンを含む、方法。
(17) 射出成形された外科器具またはプロテーゼにおいて、
外表面を有する、射出成形された本体を含み、
前記外表面は、第1の射出成形工程で第1の材料から形成された少なくとも1つの第1の露出部分と、第2の射出成形工程で第2の材料から形成された少なくとも1つの第2の露出部分と、を含み、
前記第1および第2の材料は、前記第1および第2の部分のうち少なくとも一方がユーザーに見えるマークを形成するように、視覚的に別個のものである、外科器具またはプロテーゼ。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明の実施形態による製造方法を用いて形成された暫定的な構成要素の一部の斜視図である。
【
図4】矢印の方向に線4:4に沿った、
図2の暫定的な構成要素の断面図である。
【
図5】矢印の方向に線5:5に沿った、
図2の暫定的な構成要素の断面図である。
【
図10】
図1の暫定的な構成要素から形成された外科器具の上部の一部の図である。
【
図11】
図1の暫定的な構成要素から形成された外科器具の底部の一部の図である。