特許第5989776号(P5989776)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989776
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】電装装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/114 20130101AFI20160825BHJP
【FI】
   H04B9/00 114
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-527832(P2014-527832)
(86)(22)【出願日】2012年7月30日
(86)【国際出願番号】JP2012069312
(87)【国際公開番号】WO2014020658
(87)【国際公開日】20140206
【審査請求日】2015年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】富士機械製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】特許業務法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100142974
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【弁理士】
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】長坂 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】神藤 高広
(72)【発明者】
【氏名】廣田 重元
(72)【発明者】
【氏名】今寺 泰章
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 義彦
【審査官】 後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−235942(JP,A)
【文献】 特開2001−036467(JP,A)
【文献】 特開2007−028264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B10/00−10/90
H04J14/00−14/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器間の信号伝送を光信号による無線伝送で行う電装装置であって、
前記信号伝送の伝送レートを設定する伝送レート設定部と、
前記光信号を送出する発光部と、
前記光信号を受信する受光部と、
前記発光部より送出される前記光信号の発光強度を制御する発光強度制御部と、
非通常稼働状態であることを報知する報知手段とを備え、
前記伝送レート設定部および前記発光強度制御部は、前記報知手段により前記非通常稼働状態であることが報知されることに応じて、通常稼働状態において設定される無線伝送のビットエラーレートが維持される関係を保って、前記伝送レートおよび前記光信号の発光強度を低減することを特徴とする電装装置。
【請求項2】
前記信号伝送では、前記機器において第1帯域が要求される画像データと、前記機器において前記第1帯域より低帯域の第2帯域が要求されるその他の信号とに係る前記光信号が多重化され、
前記伝送レートの低減は、前記その他の信号における前記第2帯域を下回らない範囲で行われることを特徴とする請求項1に記載の電装装置。
【請求項3】
前記伝送レートの低減は、前記画像データの伝送停止を含むことを特徴とする請求項2に記載の電装装置。
【請求項4】
前記発光部、前記受光部、および前記無線伝送に供される前記光信号の光路を外界から遮蔽する遮蔽部材を備え、
前記報知手段は、前記遮蔽部材の開閉状態を検出する開閉検知センサを含むことを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の電装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器間の信号伝送を光信号による無線伝送で行う電装装置に関するものであり、特に、非通常稼働状態において、無線伝送に供される光信号の人体への安全性を考慮した電装装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を使用する機器については、国際レーザ安全規格IEC60825や、それに準じた各国の国内規格等の安全規格が定められている。例えば、IEC60825−1では出カパワーに基づいてクラス1から4までのクラス分けがなされており、製造者や使用者はクラス毎に各種安全配慮事項を遵守することが義務づけられている。最も安全性の高いクラス1に規定されれば、安全配慮事項の義務付けがなく、レーザ光が人体に触れる可能性のある用途に自由に使用することができる。
【0003】
従来より、主信号と監視チャネルを混ぜて伝送する光伝送装置であって、監視チャネルの制御を行なうOSC制御手段が監視チャネルの送出パワーの時間平均値として、通常通信モードと接続確認モードの少なくとも2つのモードを備えており、接続確認モードではレーザー安全基準の上限パワー値よりも低い時間平均パワーで信号を送出するよう制御し、通常通信モードではレーザー安全基準の上限パワー値を越える時間平均パワーで信号を送出する光伝送装置に関する技術が開示されている(特許文献1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−147086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光無線通信装置が搭載される電子部品供給装置等の電装装置における調整作業では、一時的に安全配慮のため設けられる保護カバーを取り外した状態で、実際に電子部品供給装置の検査用の画像データの確認や、XYステージ等の動作をさせながら調整が行なわれる場合がある。この場合においても、検査用の画像データの取得やXYステージ等の動作のためにはレーザ光による通信は必要となる。作業者は、レーザ光に対する安全配慮のため、保護めがねの装着など、安全を確保した上で作業する必要があり、調整作業の作業性が損なわれ問題であった。
【0006】
特許文献1などに記載されている技術において、監視チャネルは接続確認モードで光伝送装置間の接続を確認するために設けられた専用のチャネルであり、通常時に主信号によって伝送されるデータに代えて接続確認信号が伝達される。接続確認号信号を送出する際に、通常通信モードと接続確認モードとで、異なる送出パワーに制御する技術が開示されているに過ぎない。監視チャネルでは、光伝送装置間の接続を確認するための接続確認信号を送出すればよく、通常時に主信号によって伝送されるデータを送信する必要はない。このため、接続確認モードにおいて通常時と同様なデータを伝送することに関しては何ら記載がない。よって、特許文献1に記載の背景技術では、非通常稼働状態であってレーザ光に対する安全対策が中断する状況において、電子部品供給装置等の調整作業に必要なデータを送信することができない。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、調整作業等の非通常稼働状態において、光信号の人体への悪影響を防止するための安全対策が中断する場合においても、安全基準に準拠した光信号による無線伝送を継続することができる電装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本願の請求項1に記載の電装装置は、機器間の信号伝送を光信号による無線伝送で行う電装装置であって、伝送レート設定部と、発光部と、受光部と、発光強度制御部と、報知手段とを備える。伝送レート設定部は信号伝送の伝送レートを設定する。発光部は光信号を送出する。受光部は光信号を受信する。発光強度制御部は発光部より送出される光信号の発光強度を設定する。報知手段は非通常稼働状態であることを報知する。伝送レート設定部および発光強度設定部は、報知手段により非通常稼働状態であることが報知されることに応じて、通常稼働状態において設定される無線伝送のビットエラーレートが維持される関係を保って、伝送レートおよび光信号の発光強度を低減する。
【0009】
また、請求項2に記載の電装装置は請求項1に記載の電装装置であって、信号伝送では、機器において第1帯域が要求される画像データと、機器において第1帯域より低帯域の第2帯域が要求されるその他の信号とに係る光信号が多重化される。伝送レートの低減は、その他の信号における第2帯域を下回らない範囲で行われる。
【0010】
また、請求項3に記載の電装装置は請求項2に記載の電装装置であって、伝送レートの低減は、画像データの伝送停止を含む。
【0011】
また、請求項4に記載の電装装置は請求項1ないし3の何れか1項に記載の電装装置であって、遮蔽部材を備える。遮蔽部材は、発光部、受光部、および無線伝送に供される光信号の光路を外界から遮蔽する。報知手段は、遮蔽部材の開閉状態を検出する開閉検知センサを含む。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の電装装置では、非通常稼働状態である場合に、通常稼働状態での無線伝送において設定されているビットエラーレートを維持したまま、伝送レートと発光強度とを低減する。これにより、非通常稼働状態において、通常稼働状態と同様な無線伝送を維持した状態で、光信号の発光強度を安全基準に準拠した発光強度まで低減することが可能となる。
ここで、非通常稼働状態とは、機器出荷時の調整作業や機器のメンテナンス時などの調整作業において、発光部、受光部、および光信号の光路が保護カバーなどで遮蔽されないまま無線伝送が行われる稼働状態をいう。
【0013】
請求項2に記載の電装装置では、画像データとその他の信号とに係る光信号が多重化される場合に、非通常稼働状態での伝送レートの低減はその他の信号について機器が必要とする第2帯域を下回らない範囲で行われる。これにより、非通常稼働状態において、低い伝送レートおよび発光強度であっても、通常稼働状態と同様に機器の稼働に必要なデータを無線伝送することが可能となる。
【0014】
請求項3に記載の電装装置では、非通常稼働状態において、画像データの光信号による無線伝送が停止される。これにより、非通常稼働状態における伝送レートおよび発光強度の低減を、第2帯域を下回らないレートにまで低減することができる。機器に必要とされるデータの帯域(第2帯域)を確保した状態で発光強度を十分に低減することができる。
【0015】
請求項4に記載の電装装置では、遮蔽部材の開閉状態を検出する開閉検知センサを備えることで、非通常稼働状態を検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例である対基板作業機を示す斜視図である
図2図1に示す対基板作業機の上部カバーを取り外した状態で示す平面図である
図3図1に示す対基板作業機の備える搬送装置を示す斜視図である。
図4図1に示す対基板作業機の備える制御装置を中心とした制御を示すブロック図である。
図5図1の基板作業機における光信号による無線伝送の構成を模式的に示す図である。
図6】光無線装置1の備える制御装置を示すブロック図である。
図7】光無線装置3の備える制御装置を示すブロック図である。
図8】ビットエラーレートを一定にした場合の伝送レートとレーザ光の発光強度との相関関係を示す図である。
図9】各伝送レートにおけるパケットPAと含まれるデータの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。
【0018】
<対基板作業機の構成>
図1および図2に、本発明の実施例の対基板作業機(以下、「作業機」と略す場合がある)10を示す。図1は、作業機10の斜視図であり、図2は、上部カバー21を取り除いた状態での作業機10を上方からの視点において示した概略平面図である。作業機10は、回路基板12に対して回路部品の装着作業を行う回路部品装着機であり、回路基板12を搬送する搬送装置14と、回路基板12に対して回路部品を装着する作動ヘッド16と、その作業ヘッド16を移動させる移動装置18と、回路部品を供給する1対の供給装置20、22とを備えている。
【0019】
搬送装置14は、図3に示すように、1対のコンベアベルト24を有しており、それら1対のコンベアベルト24を電磁モータ26によって周回させることで、コンベアベルト24に支持される回路基板12を搬送する。それら1対のコンベアベルト24の一方は、ベース28に固定され、他方は、搬送装置14による回路基板12の搬送方向に直角な方向に移動させることが可能な構造とされており、コンベア幅替え機構30によって、その他方のコンベアベルト24を一方のコンベアベルト24に接近離間させることが可能となっている。つまり、搬送装置14は、1対のコンベアベルト24の間の距離を変更することが可能となっており、サイズの異なる回路基板を搬送することが可能となっている。搬送装置14は、さらに、基板保持装置32を有しており、所定の位置(図2での回路基板12が図示されている位置)において回路基板12を固定的に保持する。なお、本実施例では、搬送装置14による回路基板12の搬送方向(図2における左右方向)をX軸方向とし、その方向に直角な方向をY軸方向と称し、説明を行う。
【0020】
また、作業ヘッド16は、搬送装置14によって保持された回路基板12に対して回路部品を装着するものであり、下面に回路部品を吸着する吸着ノズル34を有する装着ヘッドである。吸着ノズル34は、正負圧供給装置36(図4参照)を介して負圧エア、正圧エア通路に通じており、負圧にて回路部品を吸着保持し、僅かな正圧が供給されることで保持した回路部品を離脱する。さらに、作業ヘッド16は、吸着ノズル34を昇降させるノズル昇降装置38(図4参照)および吸着ノズル34をそれの軸心回りに自転させるノズル自転装置40(図4参照)を有しており、保持する回路部品の上下方向の位置および回路部品の保持姿勢を変更することが可能である。なお、吸着ノズル34は、作業ヘッド16に着脱可能とされており、回路部品のサイズ、形状等に応じて変更することが可能である。
【0021】
その作業ヘッド16は、移動装置18によって、ベース28上の任意の位置に移動可能である。詳しく言えば、移動装置18は、作業ヘッド16をX軸方向に移動させるためのX軸方向スライド機構50と、作業ヘッド16をY軸方向に移動させるためのY軸方向スライド機構52とを備えている。X軸方向スライド機構50は、X軸方向に移動可能にベース28上に設けられたX軸スライダ54と、駆動源としての電磁モータ56(図4参照)とを有しており、その電磁モータ56によって、X軸スライダ54がX軸方向の任意の位置に移動可能である。また、Y軸方向スライド機構52は、Y軸方向に移動可能にX軸スライダ54の側面に設けられたY軸スライダ58と、駆動源としての電磁モータ60(図4参照)とを有しており、その電磁モータ60によって、Y軸スライダ58がY軸方向の任意の位置に移動可能である。そして、そのY軸スライダ58に作業ヘッド16が取り付けられることで、作業ヘッド16は、移動装置18によって、ベース28上の任意の位置に移動可能である。なお、作業ヘッド16は、Y軸スライダ58にワンタッチで着脱可能とされており、種類の異なる作業ヘッド、例えば、ディスペンサヘッド等に変更することが可能である。
【0022】
また、1対の供給装置20、22は、搬送装置14を挟むようにして、ベース28のY軸方向における両側部に配設されている。それら1対の供給装置20、22の一方は、フィーダ型の供給装置20とされており、他方は、トレイ型の供給装置22とされている。フィーダ型の供給装置20は、テーピング化された回路部品を保持して1つずつ回路部品を送り出すテープフィーダ70を複数有しており、それら複数のテープフィーダ70の各々によって、作業ヘッド16への供給位置に回路部品を供給する。一方、トレイ型の供給装置22は、複数の回路部品が載置された部品トレイ72を複数有しており、それら複数の部品トレイ72のうちの任意のものをトレイ移動機構74(図4参照)によって作業ヘッド16への供給位置に移動させる。
【0023】
なお、各供給装置20、22は、供給するべき回路部品の不足、回路部品の種類の交換等に対応するべく、ベース28に着脱可能とされており、各供給装置20、22がベース28に取り付けられた状態を維持するため、つまり、各供給装置20、22をベース28に固定するための供給装置固定機構76、78(図4参照)が設けられている。各供給装置固定機構76、78は、供給装置20、22をベース28から取り外せないようにロックした状態と、そのロックを解除した状態とで切換可能である。つまり、供給装置20、22の交換が禁止された状態と許容された状態とで切換可能である
【0024】
また、移動装置18には光無線装置1が備えられている。光無線装置3は、光無線伝送の相手方として制御装置90側に備えられている。光無線装置1は、光無線装置3との間で光軸が一致するように移動装置18のX軸スライダ54に設けられる。これにより、光無線装置1と光無線装置3との間で、後述する画像データ、各種の位置情報や駆動制御情報のレーザ光による無線伝送が可能となっている。
【0025】
また、作業機10は、マークカメラ80(図4参照)およびパーツカメラ82(図4参照)を備えている。マークカメラ80は、下方を向いた状態でY軸スライダ58の下面に固定されており、移動装置18によって移動させられることで、回路基板12の表面を任意の位置において撮像することが可能となっている。一方、パーツカメラ82は、上を向いた状態で設けられており、作業ヘッド16の有する吸着ノズル34によって吸着保持された回路部品を撮像することが可能となっている。マークカメラ80によって得られた画像データおよび、パーツカメラ82によって得られた画像データは、画像処理装置84(図4参照)において処理され、回路基板12に関する情報、基板保持装置32による回路基板12の保持位置誤差、吸着ノズル34による回路部品の保持位置誤差等が取得される。
【0026】
さらに、作業機10は、図4に示すように、制御装置90を備えている。制御装置90は、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータを主体とするコントローラ92と、上記電磁モータ26、56、60、コンベア幅替機構30、基板保持装置32、正負圧供給装置36、ノズル昇降装置38、ノズル自転装置40、テープフィーダ70、トレイ移動機構74、供給装置固定機構76、78の各々に対応する複数の駆動回路94と、表示装置86、88の制御回路96とを備えている。コントローラ92には、マークカメラ80およびパーツカメラ82によって得られた画像データを処理する画像処理装置84、3つの検知センサ98、および開閉検知センサ99が接続されている。それら3つの検知センサ98は、1対のコンベアベルト24の間のベース28上に上を向いた状態で配設されており、1つは、回路基板12が搬入される側の端部に、1つは、搬出される側の端部に、1つは、回路基板12が基板保持装置32に保持される位置に配設されている。
【0027】
画像処理装置84によって処理された画像データによって得られる回路基板12に関する情報、回路基板12の保持位置情報、吸着ノズル34による吸着情報等の情報は、移動装置18に備えられる光無線装置1からレーザ光により光無線伝送され、制御装置90に接続される光無線装置3で受光されてコントローラ92に送信される。
【0028】
また、コントローラ92には、各駆動回路94を介して搬送装置、移動装置、装着ヘッド等の各装置14、18、16等に対して駆動制御指令が発せられ、搬送装置、移動装置、装着ヘッド等の各装置14、18、16等の作動を制御することが可能である。移動装置、装着ヘッド等の各装置18、16等の作動の駆動制御指令はコントローラ92から発せられ、制御装置90に接続される光無線装置3から送出される光信号により移動装置18に備えられる光無線装置1で受信される。
【0029】
また、作業機10には、図1に示すように、Y軸方向における両側面に1対の表示装置86、88が設けられている。各表示装置86、88は、作業ヘッド16等による装着作業に関する情報であり、タッチパネル式の表示装置とされている。コントローラ92には、表示装置86、88が接続されており、表示装置86、88に表示されるタッチボタンの操作結果が入力されるようになっている。また、制御回路96を介して各種情報を表示することが可能である。
【0030】
また、作業機10には、図1に示すように、上部カバー21が設けられている。上部カバー21によって、作業機10の内部にある光無線装置1、3との間のレーザ光による光無線伝送の伝送路は覆われる。これにより、レーザ光および光源が遮蔽され、調整作業などを行う作業者に対してレーザ光を使用する際の安全配慮事項を遵守することができる。また、開閉検知センサ99(図4参照)は、例えばインターロック機構における作業機10が上部カバー21に覆われているか否かを検知するセンサである。開閉検知センサ99により、作業機10が上部カバー21に覆われている通常稼働状態と検知されると、レーザ光の発光強度が、通常の稼働状態において必要とされる高出力状態に設定される。また、作業機10の光信号の伝送路が覆われていない状態が検知されると、レーザ光の発光強度が、安全配慮事項の義務付けがないクラス1となる低出力状態に設定される。レーザ光の低出力状態での光無線伝送であっても、通信品質を示すビットエラーレートを維持したまま、光無線装置1、3を介して各種の信号を伝送することができる。作業機10の出荷時やメンテナンス時において、最低限必要な光無線伝送を維持しながら調整作業を行うことができる。
【0031】
この場合、ビットエラーレートが一定の条件では、レーザ光の発光強度が低減することにより無線伝送における伝送レートは低減する。しかしながら、伝送レートの低減は、画像データ以外の各種の機器が必要とするデータや信号の更新頻度(帯域)は確保される範囲内での低減である。このため、各種機器において、動作上や制御上で必要となるデータや信号の更新頻度は通常稼働状態と同様に維持される。調整作業時に、レーザ光の発光強度を低減して作業者の安全を確保しながら、通常稼働時と同様の動作をさせた状態での調整が可能となる。この場合、画像データの伝送レートが低減し静止画等の更新頻度(帯域)が低下することにはなるが、フレーム当りの画像データのデータ量は通常稼働時と同様に維持される。通常稼働状態と同様な画質を確保しながら調整作業を行うことができる。また、この場合、動画像の更新頻度(帯域)は低下せざるを得ないところ、静止画像の更新頻度(帯域)が十分に低い場合には、画像データの伝送レートが低減する場合においても、静止画像の更新頻度(帯域)で静止画像を構成する画像データが送信される。よって、静止画像の更新頻度(帯域)が低下することなく通常稼働状態と同様な画質を確保しながら調整作業を行うことができる。
【0032】
ちなみに、作業機10では、制御用電源と駆動用電源とが設けられており、駆動用電源は、搬送装置14および供給装置固定機構76、78のための電源と、それら搬送装置14および供給装置固定機構76、78以外の装置のための電源とに分けられている。つまり、作業機10には、制御装置90に対応した電源と、搬送装置14および供給装置固定機構76、78に対応した電源と、移動装置18等に対応した電源との3つの電源が設けられている。
【0033】
さて、作業機10では、上述した構成によって、移動装置18に備えられる光無線装置1とコントローラ92に備えられる光無線装置3とが光無線伝送する。これにより、画像処理装置84によって処理された画像データが移動装置18からコントローラ92に向けて伝送され、移動装置、装着ヘッド等の各装置18、16等の作動の駆動制御指令がコントローラ92から移動装置18に向けて伝送される。
【0034】
この他にも、検知センサ98や開閉検知センサ99等からのセンサ信号、選択ボタン105、操作ボタン107、選択用ラジオボタン109から指令信号、および各種の駆動装置等に設置されている図示しないセンサからの信号などが制御装置90に伝送され、制御装置90が備える制御回路96から各種の制御信号や表示データなどが表示装置86、88に伝送される場合にも、光無線伝送を使用可能であることは言うまでもない。
【0035】
図5は、実施例に係る作業機10が備える光無線装置1、3の構成を模式的に示す図である。作業機10における各種の機器(後述するカメラ8X、モータM、センサ・スイッチS等)と制御装置90との間に光無線装置1、3を設けた構成を模式的に示す図である。
【0036】
制御装置90は、PC等のコンピュータシステムで構成されるコントローラ92により制御される。コントローラ92は、画像ボード90A、駆動制御ボード90B、およびI/Oボード90Cを介して、光無線装置3が接続されている伝送路7の一端に接続されている。画像ボード90Aは、画像データの送受信を制御するボードである。駆動制御ボード90Bは、電磁モータを動作させる際の指令である動作指令や、電磁モータからフィードバックされるトルク情報や位置情報などのサーボ制御情報の入出力を制御するボードである。I/Oボード90Cは、ランプ表示の制御や各種のセンサ・スイッチなどからの信号の授受を制御するボードである。
【0037】
画像ボード90A、駆動制御ボード90B、およびI/Oボード90Cは、光無線装置3を介して伝送路7の一端に接続され、伝送路7においてレーザ光による光無線伝送が行われる。伝送路7の他端は光無線装置1を介して、カメラ8X、電磁モータM、およびセンサ・スイッチSに接続されている。ここで、カメラ8Xはマークカメラ80あるいはパーツカメラ82に例示される撮像装置であり、電磁モータMは図4に示される電磁モータ26、56、60やその他の可動装置である。尚、センサ・スイッチSは搬送装置14、装着ヘッド16、移動装置18、供給装置20、22、および表示装置86、88(図4参照)等に、必要に応じて設置されている。
【0038】
図5に例示される光無線装置1では、カメラ8Xにより撮像された画像データ、電磁モータMより取得されるトルク情報や位置情報などのサーボ制御情報、およびセンサ・スイッチSから出力される各種のI/O信号が、多重化された上で、光無線信号として伝送路7を伝送する。伝送した多重化信号は光無線装置3により受信され多重化が解除され、個々のデータに分離される。分離されたデータのうち、画像データは画像ボード90Aに転送され、サーボ制御情報は駆動制御ボード90Bに転送され、I/O信号はI/Oボード90Cに転送される。
【0039】
光無線装置3により受信された画像データ、サーボ制御情報、I/O信号は、コントローラ92において処理される。コントローラ92による処理結果は、電磁モータMやその他の可動装置を制御する動作指令、および表示装置86、88の制御する表示信号として、駆動制御ボード90B、およびI/Oボード90Cから光無線装置3を介して伝送路7を伝送し、光無線装置1より電磁モータMやその他の可動装置等に対して次の制御が行われる。
【0040】
図6は光無線装置1の制御装置を示すブロック図であり、図7は光無線装置3の制御装置を示すブロック図である。
【0041】
光無線装置1のブロック図(図6参照)について説明する。カメラ8Xから転送される画像データ、電磁モータMから転送されるサーボ制御情報、およびセンサ・スイッチSから転送されるI/O信号は、各々、入力バッファB1に取り込まれる。
【0042】
入力バッファB1に取り込まれた画像データ、サーボ制御情報、およびI/O信号は、入力バッファB1を介して多重化部(MUX)B2に転送される。多重化部(MUX)B2は、開閉検知センサ99から出力される検知信号S1により、通常稼働状態時と非通常稼働状態時とで各データを多重化する割合を制御する。
【0043】
作業機10が上部カバー21に覆われている通常稼働状態が報知される場合に、多重化部(MUX)B2では、画像データ、サーボ制御情報、およびI/O信号は、通常の稼働状態で各種の機器が必要とする更新頻度(帯域)を満足するデータ量がパケットに構成され、誤り訂正符号化部B3に転送される。
【0044】
一方、作業機10が上部カバー21に覆われていない非通常稼働状態では、レーザ光の発光強度が、通信品質を示すビットエラーレートが通常稼働状態の場合と同じレートに維持されたまま安全配慮事項の義務付けがないクラス1となる低出力状態に設定される。これに応じて、無線伝送における伝送レートは低減される。ここで、非通常稼働状態とは、例えば、作業機10の出荷時やメンテナンス時に行われる調整作業の状態である。この場合、サーボ制御情報およびI/O信号は各種の機器が必要とする更新頻度(帯域)は確保しておくことが便宜である。調整作業中にも各種の機器を通常稼働状態と同様に稼働させることができ、通常稼働状態と同様な状態で調整作業を行うことができるからである。多重化部(MUX)B2では、伝送レートの低減に伴い、サーボ制御情報およびI/O信号を、各種機器が必要とする更新頻度(帯域)を満足する帯域で伝送できるように各パケットに割り当てる。伝送レートの低減に伴い単位時間当たりの伝送データ量が低減する分、パケット当りのデータ量を増加させる等の調整が行われる。尚、画像データについては、通常稼働状態での伝送レートから低減することとなる。しかしながら、この場合も、フレームを構成する画像データの全てを伝送する構成とすれば、静止画像に関して通常稼働状態と同様の画質を維持することができる。多重化されたデータは誤り訂正符号化部B3に転送される。
【0045】
多重化部(MUX)B2で多重化されたデータは、誤り訂正符号化部B3において誤り訂正符号が付加された上で、データ伝送部B4に伝送される。データ伝送部B4ではパケットを構成し送出する。データ伝送部B4は、伝送レート制御部B5により通常稼働状態時と非通常稼働状態時とで異なる伝送レートに制御されてパケットを送出する。発光モジュールB6は、データ伝送部B4から送出されたパケットを光信号に変換して伝送路7に送出する。この場合、発光モジュールB6は、発光強度制御部B7により通常稼働状態時と非通常稼働状態時とで異なるレーザ光の発光強度に制御される。
【0046】
伝送レート制御部B5および発光強度制御部B7では、開閉検知センサ99から出力される検知信号S1に応じて制御される。は検知信号S1は、作業機10が上部カバー21に覆われているか否かを報知する信号である。通常稼働状態時が報知される場合には、伝送レート制御部B5によりあらかじめ設定されている伝送レートが設定され、発光強度制御部B7によりあらかじめ設定されているレーザ光の発光強度が設定される。一方、非通常稼働状態時には、光無線伝送におけるビットエラーレートを維持した範囲で、伝送レート制御部B5により低減された伝送レートが設定され、発光強度制御部B7により低減されたレーザ光の発光強度が設定される。レーザ光の発光強度は安全配慮事項の義務付けがないクラス1まで低減される。
【0047】
受信側の光無線装置3(図7参照)について説明する。伝送路7を伝送した光信号は受光モジュールB21で受光されて電気信号に変換される。受光モジュールB21から出力される電気信号は、同期回路B22によってビットごとに検出されて多重化データに抽出される。同期制御部B23は、開閉検知センサ99から出力される検知信号S1により同期回路B22を制御する。通常稼働状態時と非通常稼働状態時とでそれぞれに異なる伝送レートで同期回路B22が動作するように制御する。
【0048】
抽出された多重化データは、誤り訂正復号化部B24により誤りの検出および訂正が行われる。誤り訂正された多重化データは非多重化部(DEMUX)B25により各データに分離される。
【0049】
画像データ、サーボ制御情報、およびI/O信号は、各々出力バッファB26を介して、画像ボード90A、駆動制御ボード90B、およびI/Oボード90Cに転送される。
【0050】
図8は、ビットエラーレートを一定にした場合の光無線装置1、3間の伝送レートとレーザ光の発光強度との相関関係を示す図である。図8において、X軸は単位時間当たり伝送できるデータ量である伝送レート、Y軸はレーザ光の発光強度である。
【0051】
図8に示すように、ビットエラーレートが一定に維持される関係において、光無線装置1、3間の伝送レートが高いほど、レーザ光には高い発光強度が必要とされる。通常稼働状態における伝送レートを伝送レートR1とすると、図8より、データ伝送に必要な発光強度は発光強度PW1となる。
【0052】
レーザ光の発光強度が安全配慮事項の義務付けがないクラス1となる低出力状態に設定される。この場合、図8より、レーザ光の発光強度がクラス1の上限である発光強度PW2で伝送レートは伝送レートR2となるものとする。伝送レートR2は、通常稼働状態における伝送レートR1と比べ、伝送レートが低減し、単位時間当たり光無線装置1、3間を伝送できるデータ量は低減される。
【0053】
発光強度が発光強度PW2より下回る発光強度PW3の場合では、伝送レートは、伝送レートR2より更に低い伝送レートR3となる。この伝送レートR3は、画像データ以外のサーボ制御情報およびI/O信号を伝送する際、各種の機器が必要とする更新頻度(帯域)を確保するために必要な最低限の伝送レートであるものとする。この場合、サーボ制御情報およびI/O信号の更新頻度(帯域)を維持するため、画像データの伝送は停止状態とされる。
【0054】
図9には、各伝送レートR1、R2、R3におけるパケットPAの構成例を示す。パケットPAに含まれるデータは、画像データA、サーボ制御情報B、およびI/O信号Cである。サーボ制御情報BおよびI/O信号Cは、各種機器において動作上や制御上で必要となるデータや信号であり、各種の機器が必要とする更新頻度(帯域)を確保する必要がある。図9では、更新頻度(帯域)として、単位時間T当りに、kビットのサーボ制御情報B1〜Bk、および1ビットのI/O信号C1とする。
【0055】
通常稼働状態における伝送レートである伝送レートR1では、kビットの駆動制御情報B1〜Bk、1ビットのI/O信号C1、およびnビットの画像データA1〜Anが伝送される。
【0056】
非通常稼働状態において、レーザ光の発光強度がクラス1の上限である発光強度PW2に低減され、これに対応して伝送レートが伝送レートR2に低減する場合にも、通常稼働状態での伝送レートR1と同様に、kビットの駆動制御情報B1〜Bkおよび1ビットのI/O信号C1が単位時間Tで伝送され各種機器の更新帯域は維持される。一方、画像データは、x(x<n)ビットの画像データA1〜Axが単位時間Tに伝送される。画像データAに関しては、更新帯域が通常稼働状態に比して低減し静止画像の更新頻度が低減するものの、フレームを構成するデータ量が不変であれば、画質は通常時を同様の画質とすることができる。
【0057】
伝送レートR3では、伝送レートR1、R2と同様に、kビットの駆動制御情報B1〜Bkおよび1ビットのI/O信号C1の伝送を単位時間Tで行うことができる。この場合、画像データの伝送は停止される。調整作業に画像データが特に必要ではない場合に好適である。
【0058】
本実施例では、非通常稼働状態では、伝送レートとレーザ光の発光強度とを、図8の、伝送レートがR2〜R3、これに対応する発光強度がPW2〜PW3の範囲で低減することができる。この範囲で低減すれば、伝送に伴うビットエラーレートと、画像データ以外の各種機器に必要となるデータや信号の更新頻度(帯域)とを、通常稼働状態と同じ状態に維持しながら、レーザ光の発光強度をクラス1に低減することができる。これにより、調整作業において、作業者の安全を確保しながら、通常稼働状態と同様な状態で調整作業を行うことができる。
【0059】
以上、詳細に説明した通り、本実施例によれば、作業機10が備える光無線装置1では、開閉検知センサ99から出力される検知信号S1により、作業機10の光信号の伝送路が覆われていない非通常稼働状態であると報知される。この場合、伝送レート制御部B5および発光強度制御部B7は、通常稼働状態での無線伝送において設定されているビットエラーレートを維持したまま伝送レートを低減し、レーザ光の発光強度が安全配慮事項の義務付けがないクラス1まで低減を行なう。これにより、非通常稼働状態において、通常稼働状態と同様なビットエラーレートでの無線伝送を行うことができ、無線伝送における通信品質を維持した状態で、光信号の発光強度を安全基準に準拠した発光強度まで低減することが可能となる。
【0060】
また、作業機10が備える光無線装置1では、非通常稼働状態であると報知される。この場合において、多重化部(MUX)B2では、サーボ制御情報およびI/O信号の機器において必要とされる更新頻度(帯域)は維持する一方で、画像データの帯域を低減するように、パケットに構成される各データの割合が制御される。これにより、駆動制御情報およびI/O信号は、各種機器において、動作上や制御上で必要となるデータや信号の帯域で伝送され、各機器が必要とする更新頻度(帯域)を通常稼働状態と同様に確保できる。よって、非通常稼働状態において、低い伝送レートおよび発光強度であっても、通常稼働状態と同様に機器の稼働に必要なデータを無線伝送することが可能となる。
【0061】
また、伝送レートR3では、サーボ制御情報およびI/O信号は更新頻度(帯域)に必要最低限の伝送レートでありレーザ光の発光強度は必要最低限まで低減される。この場合、サーボ制御情報およびI/O信号の更新頻度(帯域)を維持するため、多重化部(MUX)B2では、画像データの伝送は停止状態とされる。これにより、機器に必要とされるデータの更新頻度(帯域)を確保した状態で発光強度を十分に低減することが可能となる。
【0062】
また、作業機10が備える開閉検知センサ99では、作業機10が上部カバー21に覆われているか否かを検知することで、非通常稼働状態を検知することが可能となる。
【0063】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。
例えば、本実施形態では、通常稼働状態、非通常稼働状態の検知は、開閉検知センサ99によるものに限られない。開閉検知センサ99の他に、表示装置86、88に備えられる選択ボタン105、操作ボタン107、選択用ラジオボタン109等から、通常稼働状態、非通常稼働状態の検知が行われてもよい。
【0064】
実施例においては、サーボ制御情報、I/O信号を例示して説明したが、本願はこれに限定されるものではない。移動装置、装着ヘッド等の各装置18、16等の作動の駆動制御指令や、選択ボタン105、操作ボタン107、選択用ラジオボタン109から指令信号、および各種の駆動装置等に設置されている図示しないセンサからの信号等の光無線伝送の場合についても同様に構成し、同様の作用効果を奏するように構成することができることは言うまでもない。
【0065】
ちなみに、上記実施例において、対基板作業機10は、電装装置の一例であり、また、データ伝送部および伝送レート制御部B5は、伝送レート設定部の一例であり、また、発光モジュールB6は、発光部の一例であり、また、受光モジュールB21は、受光部の一例であり、また、上部カバー21は、遮蔽部材の一例ある。
【符号の説明】
【0066】
1、3:光無線装置 7:伝送路 10:対基板作業機 8X:カメラ M:電磁モータ S:センサ・スイッチ 90:制御装置 90A:画像ボード 90B:駆動制御ボード 90C:I/Oボード 92:コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9