(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一対の板ガラスの間に空隙部を形成するとともに、前記一対の板ガラスの外縁全周にわたって前記一対の板ガラスの間に外周密閉部を設けて前記空隙部が減圧状態に密閉された、室内空間と室外空間とを仕切るための減圧複層ガラスパネルであって、
前記一対の板ガラスは、前記室内空間側に設けられた室内側板ガラスと、前記室外空間側に設けられた室外側板ガラスとを有し、
前記室外側板ガラスは、前記室外空間側に配置される第1ガラス面と、前記空隙部側に配置される第2ガラス面とを有し、前記第2ガラス面上には、放射率εが0.067以下であるLow−E膜が形成されており、
前記第1ガラス面側から測定された前記室外側板ガラスの日射反射率RG(solar)が31%以上40%以下であり、かつ前記第1ガラス面側から測定された前記室外側板ガラスの日射吸収率AG(solar)が(48−RG(solar))%以上17%以下であり、
日射熱取得率SHGCが0.50以下であり、かつ熱貫流率U値が1.2W/m2・K以下である、減圧複層ガラスパネル。
前記第1ガラス面に、厚さが5nm以上15nm以下となる酸化ケイ素を主成分とする層と厚さが2nm以上5nm以下となる酸化チタンを主成分とする層とが、この順に積層された積層体が形成されている、請求項1に記載の減圧複層ガラスパネル。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明は本発明の一例に関するものであり、本発明はこれらによって限定されるものではない。本明細書において、「主成分」は、質量基準で含有率が最も多い成分を指す用語として使用する。
【0013】
本発明の実施形態に係る減圧複層ガラスパネル1は、室外側板ガラス2、室内側板ガラス3及び空隙部4が一体化され、図示しない低融点ガラスまたは金属ハンダを含む硬質の封着材料により構成された外周密閉部により、室外側板ガラス2及び室内側板ガラス3の外縁全周にわたって封着されており、空隙部4を減圧状態に密閉している。
【0014】
室外側板ガラス2は、
図1に示すように、室外空間側に設けられた板ガラスであり、室内側板ガラス3は、室外側板ガラス2と所定間隔を隔てて設けられ、室内空間側に設けられた板ガラスである。室外側板ガラス2と室内側板ガラス3との間には、減圧状態に密閉された空隙部4が形成されている。室外側板ガラス2は、室外空間側に設けられた第1面2aと、空隙部4側に設けられた第2面2bと、を有している。室内側板ガラス3は、空隙部4側に設けられた第3面3aと、室内空間側に設けられた第4面3bと、を有している。室外側板ガラス2の第2面2bには、Low−E膜5が形成されている。
【0015】
このような減圧複層ガラスパネル1を製造するには、まず材料となるフロートガラス等の室外側板ガラス2及び室内側板ガラス3を準備し、室外側板ガラス2の第2面2b上にLow−E膜5を反応性スパッタリング等によって形成する。次に、室外側板ガラス2と室内側板ガラス3との間にスペーサ6(
図1参照)を挟む。スペーサ6は、圧縮強度が4.9×10
8Pa以上の材料、例えばステンレス鋼(SUS304)を使用して、直径が0.3mm〜1.0mm程度で、高さが0.15mm〜1.0mm程度の円柱形が好ましく、また、各スペーサ間の間隔は、20mm程度が好ましい。そして、このスペーサ6を挟んでサンドイッチ状にした2枚の室外側板ガラス2と室内側板ガラス3との外周全縁にわたって、低融点ガラス等によって封着して室外側板ガラス2と室内側板ガラス3との間に空隙部4を形成する。その後に、空隙部4の空気を吸引する等の方法によって減圧密閉し、例えば1.33Pa以下の減圧環境を呈する状態に構成する。
【0016】
第1面2a側から測定された室外側板ガラス2の可視光反射率R
G(vis)は30%以下であることが好ましい。また、第1面2a側から測定された室外側板ガラス2のL
*a
*b
*表色系で表したときの反射色a
*が10以下であり、反射色b
*が10以下であることが好ましく、さらに第1面2a側から測定された室外側板ガラス2のL
*a
*b
*表色系で表したときの反射色a
*が−5以上5以下であり、反射色b
*が10以下であることが好ましい。
【0017】
Low−E膜5は、例えば、
図2に示すように、第2面2b上に、下側誘電体層7、金属層8、犠牲層9及び上側誘電体層10が順に積層された積層体である。このうち金属層8に使用する金属としては銀が推奨されるが、その他、銀にパラジウム、金、インジウム、亜鉛、錫、アルミニウム、または銅等他の金属をドープしたものも好ましく使用できる。下側誘電体層7及び上側誘電体層10に使用する材料の主成分は、亜鉛、錫、チタニウム、インジウム、及びニオブの各酸化物の中から選ばれるいずれか1種であることが好ましい。また、下側誘電体層7及び上側誘電体層10の少なくとも一方を、複数の層からなる積層体としてもよい。この積層体は、シリコン、アルミニウム及びチタンから選ばれる少なくとも1種の金属を含む窒化物層または酸窒化物層を含んでいてもよい。
【0018】
Low−E膜5は、放射率εが0.067以下、好ましくは0.063以下である。室外側板ガラス2において、室外空間側を向く第1面2a側から測定された日射反射率R
G(solar)は、31%以上、好ましくは32%以上、より好ましくは33%以上である。第1面2a側から測定された日射反射率R
G(solar)は、40%以下、好ましくは38%以下、より好ましくは35%以下である。室外側板ガラス2において、第1面2a側から測定された日射吸収率A
G(solar)は、(48−R
G(solar))%以上17%以下であり、好ましくは左記式を満たすとともに14%以上である。なお、日射反射率R
G(solar)が31%以上40%以下である場合、日射吸収率A
G(solar)は、8%以上17%以下となる。また、日射吸収率A
G(solar)+日射反射率R
G(solar)+日射透過率T
(solar)=100%であるので、室外側板ガラス2の日射透過率T
(solar)は、52%以下である。また、減圧複層ガラスパネル1は、その日射熱取得率SHGCが0.50以下であり、かつその熱貫流率U値が1.2W/m
2・K以下である。日射吸収率A
G(solar)は、好ましくは、{18.3−(0.07*R
G(solar))+(20*ε)}%以下である。この場合には、上記夏期日射条件での室外側板ガラス2と室内側板ガラス3との温度差ΔTを13.0℃以下とすることが容易となる。従って、日射を受けても室外側板ガラス2及び室内側板ガラス3に反りが発生することを十分に防止できる。日射吸収率A
G(solar)は、さらに好ましくは、{17.3−(0.07*R
G(solar))+(20*ε)}%以下である。この場合には、上記夏期日射条件での室外側板ガラス2と室内側板ガラス3との温度差ΔTを12.5℃以下とすることが容易となり、反りの発生をより確実に防止できる。
【0019】
犠牲層9は、
図2に示すように、金属層8と上側誘電体層10との間に形成され、反応性スパッタリングによって上側誘電体層10を形成するときに、または、減圧複層ガラスパネルの製造における加熱工程において、犠牲層9自身が酸化することによって金属層8の酸化を防止するための金属または金属酸化物等からなる層である。犠牲層9を構成する材料の具体例としては、チタン、亜鉛、ニッケル、クロム、亜鉛/アルミニウム合金、ニオブ及びステンレス等の金属及びこれらの合金あるいはこれらの酸化物を挙げることができる。犠牲層9は、チタン、亜鉛、ニッケル、クロム、ニオブ及びステンレスから選ばれるいずれか1つである金属材料、又は前記金属材料の酸化物を主成分とする層であることが好ましい。
【0020】
具体的には、金属層8は、銀を主成分とする層であることが好ましい。犠牲層9は、チタン酸化物を主成分とする層であることが好ましい。下側誘電体層7及び上側誘電体層10は、それぞれ、1又は複数の非晶質層と、1又は複数の結晶質層とを含むことが好ましい。また、下側誘電体層7の厚さは、5nm以上40nm以下であることが好ましく、さらに10nm以上30nm以下であることが好ましい。金属層8の厚さは、11nm以上16nm以下であることが好ましい。上側誘電体層10の厚さは、30nm以上70nm以下であることが好ましく、43nm以上60nm以下であることがより好ましい。高い遮熱性能と低い可視光反射率を両立させるためである。
【0021】
犠牲層9の厚さは、例えば、0.5nm以上15nm以下であり、2nm以上10nm以下であることが好ましく、さらに2nm以上8nm以下であることが好ましく、さらに2nm以上6nm以下であることが好ましい。また、Low−E膜5における光吸収を表す指標として、Low−E膜5の表面側から測定された、Low−E膜5が形成された室外側板ガラス2の可視光吸収率A
F(vis)は、12%以下であることが好ましい。可視光吸収率A
F(vis)は、Low−E膜5の表面(膜表面)側から入射した可視光がLow−E膜5及び室外側板ガラス2によって吸収される率である。犠牲層9として金属からなる層を形成し、犠牲層9の上に上側誘電体層10を形成するとき、犠牲層9の一部が酸化されるので、金属層8の酸化を防止できる。犠牲層9の酸化の度合いが大きいと、可視光吸収率A
F(vis)が小さくなる。可視光吸収率A
F(vis)が12%以下と小さい場合、室外側板ガラス2の温度上昇を抑制できる。
【0022】
さらに、Low−E膜5の表面側から測定された、Low−E膜5が形成された室外側板ガラス2の波長400nmにおける光吸収率A
F(400)は、14%以下であることが好ましい。波長400nmにおける光吸収率A
F(400)は、室外側板ガラス2の光学特性に関わらずLow−E膜5における紫外線吸収を表す指標とみなすことができる。波長400nmにおける光吸収率A
F(400)が14%以下と小さい場合、室外側板ガラス2の温度上昇を抑制できる。
【0023】
下側誘電体層7は、好ましくは、1又は複数の非晶質層と、1又は複数の結晶質層とを含む。金属層8は、下側誘電体層7に含まれる結晶質層に接して形成されていることが好ましい。下側誘電体層7に含まれる結晶質層は、この層の上に直接形成される金属層8の結晶性を向上させ、Low−E膜5の性能を向上させる。結晶質層のみからなる下側誘電体層7を厚く形成すると、結晶質層の結晶粒が大きくなると共に結晶質層の表面の凹凸が大きくなり、これに伴って金属層8の結晶性が低下する。この低下を防ぐためには、下側誘電体層7に非晶質層を含ませるとよい。非晶質層の表面は相対的に滑らかになるから、非晶質層上に形成される結晶質層の表面の凹凸の増大を防止できる。また、上側誘電体層10は、好ましくは、1又は複数の非晶質層と、1又は複数の結晶質層とを含む層である。上側誘電体層10の最も外側(ガラス面と反対側)には非晶質層が配置されていることが好ましい。非晶質層は、一般に、結晶質層よりも硬く、上側誘電体層10の内部への水分の浸入の防止に適している。このため、非晶質層が最外層として配置された上側誘電体層10は、Low−E膜5の耐久性の向上に適している。
【0024】
下側誘電体層7は、例えば、非晶質の第1のスズ亜鉛酸化物層、結晶質の第1の酸化亜鉛を主成分とする層が、この順に積層された積層体である。上側誘電体層10は、例えば、結晶質の第2の酸化亜鉛を主成分とする層、非晶質の第2のスズ亜鉛酸化物層、非晶質の窒化ケイ素を主成分とする層が、この順に積層された積層体である。この層構成において、下側誘電体層7の厚さは、10nm以上30nm以下であることが好ましい。結晶質の第1の酸化亜鉛を主成分とする層の厚さは、前述の効果を得るために、3nm以上9nm以下であることが好ましい。金属層8は、厚さが13nm以上16nm以下となる銀からなる層であることが好ましい。犠牲層9は、厚さが2nm以上6nm以下となるチタンの酸化物からなる層であることが好ましい。上側誘電体層10は、厚さが43nm以上60nm以下であることが好ましい。結晶質の第2の酸化亜鉛を主成分とする層は、前述の低い光吸収率A
F(400)に関する効果を得るためには、厚さが4nm以上15nm以下であることが好ましい。非晶質の窒化ケイ素を主成分とする層は、前述の耐久性に関する効果を得るためには、厚さが6nm以上であることが好ましい。非晶質の第1のスズ亜鉛酸化物層及び非晶質の第2のスズ亜鉛酸化物層の厚さは、それぞれ、下側誘電体層7及び上側誘電体層10の厚さが好ましい範囲に含まれるように任意に設定できる。
【0025】
なお、下側誘電体層7の別の膜構成として、非晶質の第1のスズ亜鉛酸化物層に代えて、非晶質の窒化ケイ素を主成分とする層を用いてもよい。
【0026】
また、上側誘電体層10の別の膜構成としては、結晶質の酸化亜鉛を主成分とする2以上の層と、非晶質の窒化ケイ素を主成分とする2以上の層とを含む構成であってもよい。この場合、非晶質の窒化ケイ素を主成分とする2以上の層が、結晶質の酸化亜鉛を主成分とする2以上の層のうちの1層を挟みこむように配置されていることが好ましい。この膜構成の具体例では、下側誘電体層は、非晶質の第1のスズ亜鉛酸化物層、結晶質の第1の酸化亜鉛を主成分とする層が、この順に積層された積層体であり、上側誘電体層は、結晶質の第2の酸化亜鉛を主成分とする層、非晶質の第2のスズ亜鉛酸化物層、非晶質の第1の窒化ケイ素を主成分とする層、結晶質の第3の酸化亜鉛を主成分とする層、非晶質の第2の窒化ケイ素を主成分とする層が、この順に積層された積層体である。
【0027】
この層構成においても、上側誘電体層10は、厚さが43nm以上60nm以下であることが好ましい。結晶質の酸化亜鉛を主成分とする2以上の層は、前述の波長400nmにおける光吸収率A
F(400)に関する効果を得るためには、合計の厚さが4nm以上15nm以下であることが好ましい。結晶質の酸化亜鉛を主成分とする2以上の層のそれぞれの厚さは、上側誘電体層10の厚さが好ましい範囲に含まれるように任意に設定すればよい。非晶質の窒化ケイ素を主成分とする2以上の層は、前述の耐久性に関する効果を得るためには、上側誘電体層10の最も外側の表面に積層される層の厚さが6nm以上であることが好ましい。上側誘電体層10の最も外側の表面に積層される層以外の厚さについては、非晶質の窒化ケイ素を主成分とする2以上の層のそれぞれの厚さは、上側誘電体層10の厚さが好ましい範囲に含まれるように任意に設定すればよい。
【0028】
さらに別の詳細な膜構成としては、下側誘電体層7の厚さが、10nm以上25nm以下であり、金属層8の厚さが、11nm以上13nm以下であり、犠牲層9の厚さが、2nm以上10nm以下であり、上側誘電体層10の厚さが、35nm以上45nm以下であってもよい。
【0029】
変形例として、室外側板ガラス2の第1面2a上には、Low−E膜5が形成された室外側板ガラス2の光学特性に実質的に影響を及ぼすことのない機能性膜が形成されていてもよい。機能性膜としては、撥水性膜、低保守コーティング等があげられる。撥水性膜としては、例えば、フルオロアルキル鎖を有するシランカップリング剤を含む溶液を塗布、乾燥して形成された膜があげられる。低保守コーティングとしては、第1面2aに厚さが5nm以上15nm以下となる酸化ケイ素を主成分とする層、厚さが2nm以上5nm以下となる酸化チタンを主成分とする層を、この順に積層した層があげられる。
【0030】
さらに別の変形例として、
図3に示すように、室外側板ガラス2の第1面2a上に、Low−E膜5が形成された室外側板ガラス2の光学特性に影響を及ぼす層として、反射層11を形成してもよい。このような反射層11を形成すると、室外側板ガラス2の第1面2aにおける日射の反射が増大し、室外側板ガラス2における日射の吸収が減少するので、室外側板ガラス2の温度上昇を抑制できる。反射層11のナトリウムランプ光源の輝線における屈折率ndが1.8以上であり、反射層11の厚さが14nm以上55nm以下であることが好ましい。また、反射層11は、組成の異なる2以上の層を含んでいてもよい。
【0031】
次に、具体的な実施例と比較例とを示して本発明の減圧複層ガラスパネルの性能を説明する。
【0032】
(実施例1)
Low−E膜5が形成された厚さ3.1mmの室外側板ガラス2を所定寸法に切断し、室内側板ガラス3用として厚さ3.1mmのフロートガラスを用意し、この2枚の室外側板ガラス2と室内側板ガラス3との間に、直径が0.5mmかつ高さが0.2mmのステンレス製円柱型スペーサ6を挟み、低融点ガラスで室外側板ガラス2及び室内側板ガラス3の外周全周にわたって封着し、その後、空隙部4を減圧排気して減圧複層ガラスパネル1を作製した。
【0033】
Low−E膜5は、室外側板ガラス2の第2面2b上に反応性スパッタリングによって形成した。Low−E膜5は、表1に示す材料から構成され、表1に示す厚さとなるように、下側誘電体層7、金属層8、犠牲層9及び上側誘電体層10を順に積層して形成した。詳細には、下側誘電体層7は、スズ亜鉛酸化物(ZnSnO、非晶質層)、スズドープ酸化亜鉛(ZnO:Sn、結晶質層)の順に積層した層である。金属層8は、Ag層である。犠牲層9は、酸化チタン(TiO
x)(0≦x≦2)層である。上側誘電体層10は、ZnO:Sn、ZnSnO、アルミニウムドープ窒化ケイ素(SiN:Al、非晶質層)の順に積層した層である。
【0035】
上記によって完成した減圧複層ガラスパネル1を下記の条件で評価した。
条件(1);日射熱量が700(814W/m
2)kcal/m
2h、室外温度35℃、室内温度25℃の夏期日射条件となるように実験家屋の条件を設定し、測定開始から10分後に、熱貫流率U値(W/m
2・K)及び室外側板ガラス2と室内側板ガラス3との間の温度差ΔT(℃)を測定した。また、室外側板ガラス2において測定された可視光透過率T
(vis)(%)、第1面2aにおいて測定された可視光反射率R
G(vis)(%)、第1面2aにおいて測定された可視光吸収率A
G(vis)(%)、室外側板ガラス2において測定された日射透過率T
(solar)(%)、第1面2aにおいて測定された日射反射率R
G(solar)(%)、第1面2aにおいて測定された日射吸収率A
G(solar)(%)、Low−E膜5の膜面において測定された可視光反射率R
F(vis)(%)、Low−E膜5の膜面において測定された可視光吸収率A
F(vis)(%)、Low−E膜5の膜面において測定された波長400nmにおける光吸収率A
F(400)(%)、Low−E膜5の膜面において測定された日射反射率R
F(solar)(%)、Low−E膜5の膜面において測定された日射吸収率A
F(solar)(%)、Low−E膜5の放射率ε及び日射熱取得率SHGCは、室外側板ガラス2及び室内側板ガラス3それぞれの光学特性実測値の結果から、日本工業規格(JIS) R 3106(板ガラス類の透過率・反射率・放射率・日射熱取得率の試験方法)に基づいて計算により求めた。また、第1面2aにおいて測定されたL
*a
*b
*表色系で表したときの反射色a
*及び反射色b
*は、JIS Z 8722(色の測定方法 反射及び透過物体色)及びJIS Z 8729(色の表示方法L
*a
*b
*表色系及びL
*u
*v
*表色系)に基づいて標準イルミナントD
65に対する値を計算により求めた。さらに、室外側板ガラス2の反り量については、室外側板ガラス2と室内側板ガラス3との間の温度差ΔT(℃)≦12.5(℃)であるとき、反り量は小であると判定し、12.5<ΔT(℃)≦13.0(℃)であるとき、反り量は中であると判定し、ΔT(℃)>13.0(℃)であるとき、反り量は大であると判定した。これらの結果を表2に示す。
【0037】
実施例1では、可視光透過率T
(vis)が77.6%である。可視光反射率R
G(vis)が18.2%である。可視光吸収率A
G(vis)が4.2%である。日射透過率T
(solar)が51.6%である。日射反射率R
G(solar)が33.9%である。日射吸収率A
G(solar)が14.5%である。反射色a
*が−0.1である。反射色b
*が−16.3である。可視光反射率R
F(vis)が15.3%である。可視光吸収率A
F(vis)が7.1%である。波長400nmにおける光吸収率A
F(400)が9.0%である。日射反射率R
F(solar)が39.0%である。日射吸収率A
F(solar)が9.4%である。放射率εが0.046である。日射熱取得率SHGCが0.49である。熱貫流率U値が1.2W/m
2・Kである。室外側板ガラス2と室内側板ガラス3との間の温度差ΔTが11.8℃である。ΔT≦12.5℃であるので、反り量が小である。したがって、(48−R
G(solar))は、14.1%である。{18.3−(0.07*R
G(solar))+(20*ε)}は、16.8%である。{17.3−(0.07*R
G(solar))+(20*ε)}は、15.8%である。すなわち、ε(=0.046)≦0.067、31≦R
G(solar)(=33.9)≦40、(48−R
G(solar))≦A
G(solar)(=14.5)≦17、T
(solar)(=51.6)≦52、A
G(solar)(=14.5)≦{17.3−(0.07*R
G(solar))+(20*ε)}(=15.8)、A
F(vis)(=7.1)≦12、A
F(400)(=9.0)≦14、SHGC(=0.49)≦0.50、U値(=1.2)≦1.2、となる関係式が成立する。ここでは、上記関係式が成立することにより、室外側板ガラス2と室内側板ガラス3との温度差ΔTが12.5℃以下と小さくなるので、反り量も小さくなる。また、R
G(vis)(=18.2)≦30、−5≦a
*(=−0.1)≦5、b
*(=−16.3)≦10となる関係式が成立する。これにより、室外側板ガラス2において、可視光を透過しやすくなるとともに、建築物のガラス、特に、減圧複層ガラスパネルで好まれる薄い青色を中心とする無色から薄い青緑色の反射色が容易に得られる。
【0038】
(実施例2〜15)
実施例2〜15では、実施例1と同様の方法で減圧複層ガラスパネル1を作製した。実施例2〜15では、表1に示すように、下側誘電体層7、金属層8、犠牲層9及び上側誘電体層10の層構成、各層の材料及び各層の層厚を異ならせた。実施例2〜15では、実施例1と同様の方法で減圧複層ガラスパネル1を評価し、これらの評価結果を表2に示す。実施例2〜17では、ε≦0.067、31≦R
G(solar)≦40、(48−R
G(solar))≦A
G(solar)≦17、T
(solar)≦52、A
G(solar)≦{17.3−(0.07*R
G(solar))+(20*ε)}、A
F(vis)≦12、A
F(400)≦14、SHGC≦0.50、U値≦1.2、となる関係式が成立する。ここでは、上記関係式が成立することにより、室外側板ガラス2と室内側板ガラス3との温度差ΔTが12.5℃以下と小さくなるので、反り量も小さくなる。また、実施例3、5、7、8、10〜13、15では、R
G(vis)≦30、−5≦a
*≦5、b
*≦10となる関係式が成立する。これにより、室外側板ガラス2において、可視光を透過しやすくなるとともに、前述の好ましい反射色が容易に得られる。
【0039】
(実施例16)
実施例16では、実施例1と同様の方法で減圧複層ガラスパネル1を作製した。実施例16では、表1に示すように、下側誘電体層7、金属層8、犠牲層9及び上側誘電体層10の層構成、各層の材料及び各層の層厚を異ならせた。
【0040】
さらに、実施例16では、室外側板ガラス2の第1面2aに、Low−E膜5が形成された室外側板ガラス2の光学特性に影響を及ぼすことのない機能性膜である低保守コーティング(特表2008−505842号公報の段落0021参照)が形成されている。実施例16では、低保守コーティングは、酸化ケイ素(SiO
2)、酸化チタン(TiO
2)の順に積層した層である。SiO
2の膜厚は、9nmであり、TiO
2の膜厚は、4nmである。すなわち、SiO
2の膜厚が5nm以上15nm以下であり、TiO
2の膜厚が2nm以上5nm以下である。
【0041】
実施例16では、実施例1と同様の方法で減圧複層ガラスパネル1を評価し、これらの評価結果を表2に示す。実施例16では、ε≦0.067、31≦R
G(solar)≦40、(48−R
G(solar))≦A
G(solar)≦17、T
(solar)≦52、A
G(solar)≦{17.3−(0.07*R
G(solar))+(20*ε)}、A
F(vis)≦12、A
F(400)≦14、SHGC≦0.50、U値≦1.2、となる関係式が成立する。ここでは、上記関係式が成立することにより、室外側板ガラス2と室内側板ガラス3との温度差ΔTが12.5℃以下と小さくなるので、反り量も小さくなる。また、R
G(vis)≦30、−5≦a
*≦5、b
*≦10となる関係式が成立する。これにより、室外側板ガラス2において、可視光を透過しやすくなるとともに、前述の好ましい反射色がより容易に得られる。
【0042】
(実施例17〜23)
実施例17〜23では、実施例1と同様の方法で減圧複層ガラスパネル1を作製した。実施例17〜23では、表1に示すように、下側誘電体層7、金属層8、犠牲層9及び上側誘電体層10の層構成、各層の材料及び各層の層厚を異ならせた。
【0043】
さらに、実施例17〜23では、室外側板ガラス2の第1面2aに、Low−E膜5が形成された室外側板ガラス2の光学特性に影響を及ぼす反射層11が形成されている。実施例17〜23では、反射層11は、組成の異なる2以上の層を含むが、実施例16の酸化ケイ素(SiO
2)、酸化チタン(TiO
2)の順に積層した層を含まない。反射層11は、屈折率が1.8以上であり、厚さが14nm以上55nm以下である。このような反射層11を形成することにより、室外側板ガラス2の第1面2aにおける日射の反射が増大し、室外側板ガラス2における日射の吸収が減少する。
【0044】
実施例17〜23では、実施例1と同様の方法で減圧複層ガラスパネル1を評価し、これらの評価結果を表2に示す。実施例18〜25では、ε≦0.067、31≦R
G(solar)≦40、(48−R
G(solar))≦A
G(solar)≦17、T
(solar)≦52、A
G(solar)≦{17.3−(0.07*R
G(solar))+(20*ε)}、A
F(vis)≦12、A
F(400)≦14、SHGC≦0.50、U値≦1.2、となる関係式が成立する。ここでは、上記関係式が成立することにより、室外側板ガラス2と室内側板ガラス3との温度差ΔTが12.5℃以下と小さくなるので、反り量も小さくなる。また、R
G(vis)≦30、−5≦a
*≦5、b
*≦10となる関係式が成立する。これにより、室外側板ガラス2において、可視光を透過しやすくなるとともに、前述の好ましい反射色がより容易に得られる。
【0045】
(比較例1〜8)
比較例1〜8では、実施例1と同様の方法で減圧複層ガラスパネル1を作製した。表1に示すように、下側誘電体層7、金属層8、犠牲層9及び上側誘電体層10を順に積層してLow−E膜5を形成した。比較例1〜8は、下側誘電体層7、金属層8、犠牲層9及び上側誘電体層10の層構成、各層の材料及び各層の層厚を異ならせた。比較例1〜8では、実施例1と同様の方法で減圧複層ガラスパネル1を評価した。これらの評価結果を表2に示す。比較例1〜8では、(48−R
G(solar))%≦A
G(solar)≦17%、A
G(solar)≦{18.3−(0.07*R
G(solar))+(20*ε)}%となる関係式が成立しない。比較例1、3〜8では、上記関係式が成立しないことにより、室外側板ガラス2と室内側板ガラス3との温度差ΔTが13.0℃より大きくなるので、反り量が大きくなる。比較例2では、反り量が小さいが、これは、日射熱取得率SHGCが0.58と非常に大きく、減圧複層ガラスパネル1の遮熱性が低いためである。また、比較例1〜3、5、6では、−5≦a
*≦5、b
*≦10となる関係式が成立している。これにより、室外側板ガラス2において、前述の好ましい反射色が容易に得られる。
【0046】
実施例及び比較例に係る第1面2aにおいて測定された日射反射率R
G(solar)と、第1面2aにおいて測定された日射吸収率A
G(solar)との関係を示すグラフを
図4に示す。実施例のA
G(solar)(
図4に白丸図形で示す)は、31≦R
G(solar)≦40、(48−R
G(solar))≦A
G(solar)≦17、A
G(solar)≦{17.3−(0.07*R
G(solar))+(20*ε)}の関係式を満たす領域(
図4に示す三角形の領域)の内側に位置している。比較例のA
G(solar)(
図4に黒四角図形で示す)は、上記領域の外側に位置している。なお、実施例及び比較例に係るLow−E膜5の膜面において測定された日射反射率R
F(solar)と、Low−E膜5の膜面において測定された日射吸収率A
F(solar)との関係を示すグラフを
図5に示す。実施例のA
F(solar)(
図5に白丸図形で示す)及び比較例のA
F(solar)(
図5に黒四角図形で示す)は、(48−R
F(solar))≦A
F(solar)の関係式を満たす領域(
図5に示すA
F(solar)=48−R
F(solar)のグラフより右側の領域)に位置している。
【0047】
室外側板ガラス2及び室内側板ガラス3は、本実施形態で説明した厚さ3.1mmの板ガラスに限るものではなく、他の厚さの板ガラスまたは厚さ寸法が異なる板ガラスを組み合わせたものであってもよい。また、板ガラスの種別は任意に選定することが可能であり、例えば型板ガラス、すりガラス(表面処理により光を拡散させる機能を付与したガラス)、網入りガラス、線入りガラス、強化ガラス、倍強度ガラス、高透過板ガラスや、それらとの組み合わせであってもよい。ガラスの組成については、ホウケイ酸ガラスや、アルミノケイ酸ガラスや、各種結晶化ガラス等であってもよい。
【0048】
また、スペーサ6は、本実施形態で説明したステンレス鋼製のスペーサに限るものではなく、例えば、鉄、銅、アルミニウム、タングステン、ニッケル、クロム、チタン等の金属、または炭素鋼、クロム鋼、ニッケル鋼、ニッケルクロム鋼、マンガン鋼、クロムマンガン鋼、クロムモリブデン鋼、ケイ素鋼、真鍮、ジュラルミン等の合金、あるいはセラミックス、ガラス等であってもよく、外力を受けて両板ガラスが接することがないように変形しにくいものであればよい。スペーサ6の形状も円柱形に限らず、球状や角柱等でもよく、各スペーサ間の間隔についても、適宜変更が可能である。