特許第5989851号(P5989851)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ブランパン・エス アーの特許一覧

特許5989851時打ち機構から音を生成するための組立体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989851
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】時打ち機構から音を生成するための組立体
(51)【国際特許分類】
   G04B 21/06 20060101AFI20160825BHJP
   G10K 1/10 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   G04B21/06 Z
   G10K1/10
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-93859(P2015-93859)
(22)【出願日】2015年5月1日
(65)【公開番号】特開2015-212696(P2015-212696A)
(43)【公開日】2015年11月26日
【審査請求日】2015年5月1日
(31)【優先権主張番号】14167093.5
(32)【優先日】2014年5月6日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】594082512
【氏名又は名称】ブランパン・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】マルコ,ロシャ
【審査官】 藤田 憲二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−083050(JP,A)
【文献】 特開2010−160155(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0104994(US,A1)
【文献】 特開平03−018898(JP,A)
【文献】 欧州特許第02196869(EP,B1)
【文献】 特開2010−019823(JP,A)
【文献】 実開平01−091284(JP,U)
【文献】 特開昭55−007626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00−49/04
G10K 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腕時計の時打ち機構から打音を生成するための打音生成組立体(1)であって、
前記組立体は少なくとも1つのゴング(2)を含み、
前記ゴング(2)は、ゴング支持体(3)によって組み付け要素(4)と一体化されて単一部品を形成し、
前記組み付け要素(4)は、腕時計ケース内部に前記打音生成組立体を設置するために使用され、
前記組み付け要素(4)は、バンドもしくはケーシングリングで円形状のもの又は四角形もしくは多角形状のものである
ことを特徴とする、組立体(1)。
【請求項2】
前記組立体を作製するために使用される材料は、金属ガラス、又は金若しくは白金等の貴金属、又は貴金属合金であることを特徴とする、請求項1に記載の打音生成組立体(1)。
【請求項3】
前記ゴング(2)は、前記ゴング(2)の一方の端部を介して前記ゴング支持体(3)に対して保持され、
他方の端部は自由に運動でき、
前記ゴングの一部は、前記腕時計ケース内部の腕時計ムーブメントの周りに配置されることになる180°〜360°の角度を有する円の一部を画定する
ことを特徴とする、請求項1に記載の打音生成組立体(1)。
【請求項4】
前記組立体は、同一の前記ゴング支持体(3)を始点とする2つのゴング(2、2’)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の打音生成組立体(1)。
【請求項5】
前記2つのゴング(2、2’)のうちの第1のゴング(2)の一方の端部及び前記2つのゴング(2、2’)のうちの第2のゴング(2’)の一方の端部はそれぞれ、前記ゴング支持体(3)の2つの対向する側部に接続され、各前記ゴングの他方の端部は自由に運動できること、並びに
各前記ゴングは、前記腕時計ケース内部の前記腕時計ムーブメントの周りに配置されることになる180°〜360°の角度を有する円の一部を画定すること
を特徴とする、請求項4に記載の打音生成組立体(1)。
【請求項6】
2つの前記ゴング(2、2’)は、互いに接触せずに、前記腕時計ケース内で重ねて、同軸に配設されることを特徴とする、請求項4又は5に記載の打音生成組立体(1)。
【請求項7】
時打ち機構を含む時計ムーブメント(14)のためのハウジングを画定する、中央部分(12)、裏蓋(11)及び風防(13)を有する腕時計ケースを含む、腕時計(10)であって、
前記時打ち機構は、請求項1〜のいずれか1項に記載の打音生成組立体(1)を含むことを特徴とする、腕時計(10)。
【請求項8】
請求項7に記載の腕時計(10)を製造するための方法であって、前記打音生成組立体(1)は、前記腕時計ケースに打ち込むことにより設置され、これにより前記打音生成組立体の少なくとも1つの振動ゴング(2)の音響放射を最適化することを特徴とする、腕時計(10)を製造するための方法
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、前記組み付け要素(4)は、前記中央部分(12)の内側壁部(12a)に対して打ち込むことにより設置されることを特徴とする、腕時計(10)を製造するための方法
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項に記載の打音生成組立体(1)を製造するための方法であって、
予備成形品を打ち抜き加工する作業、又は型の中で部品を成形する作業によって、前記ゴング支持体(3)を介して前記組み付け要素(4)に接続された前記少なくとも1つのゴング(2)により、単一部品が形成され、
前記組み付け要素(4)は前記腕時計ケース内部に前記組立体を設置するために使用される
ことを特徴とする、打音生成組立体(1)を製造するための方法。
【請求項11】
以下のステップ:
‐前記組立体の予備成形品を打ち抜き加工して、前記組み付け要素(4)、前記ゴング支持体(3)及び1つ又は2つのゴング(2、2’)を得るステップであって、ここで各前記ゴングの一方の端部は同一の前記ゴング支持体(3)に接続され、各前記ゴングの少なくとも他方の端部は、前記組み付け要素の内側部分においてブリッジにより接続される、ステップ;並びに
‐各前記ゴングを保持する材料の少なくとも1つの前記ブリッジをフライス加工又は切断して、前記ゴングの前記他方の端部を解放するステップ
を含むことを特徴とする、請求項10に記載の打音生成組立体(1)を製造するための方法。
【請求項12】
後続のフライス加工作業は、各前記ゴングを調整するために実施されることを特徴とする、請求項11に記載の打音生成組立体(1)を製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時打ち機構を含む時計ムーブメントを備える腕時計に嵌合される、打音を生成するための組立体に関する。
【0002】
本発明はまた、打音を生成するための組立体を備える時打ち機構を含む時計ムーブメントのためのハウジングを画定する、中央部分、裏蓋及び風防を有する腕時計ケースを含む、腕時計にも関する。
【0003】
本発明はまた、打音を生成するための組立体を製造する方法にも関する。
【背景技術】
【0004】
時計学の分野において、腕時計ケース内部の時計ムーブメントは、従来の構成の時打ち機構を備える場合がある。このような時打ち機構は一般に、ムーブメントを支持する腕時計の地板と一体であるゴング支持体に端部のうちの一方が固定されたゴングと、所定の瞬間にゴングを打つためのハンマーとを含む。この時打ち機構は特に、ミニッツリピータ又はアラームのために使用される。ゴングは、円形の金属ワイヤであってよく、時計ムーブメントの周りに配置してよい。
【0005】
従来の時打ち機構は、腕時計の地板上で交互に組み付けられるよう設計された、独立した複数の要素で形成される。時打ち機構の組み付けは一般に、完遂に長い時間がかかることが多く、これは欠点である。更に、時打ち機構を形成する要素を、互いに独立して製造しなければならない。腕時計の様々な他の要素と組み合わせて振動をより効率的に伝達できるよう腕時計の時打ち機構の効率を最適化するような、時打ち機構の少なくとも1つのゴングの構成も考慮しなければならない。ゴングから腕時計ケース等の外部部品への振動伝播の改善が望まれているが、従来の時打ち機構を用いてこれを達成するのは困難である。
【0006】
この点に関して、時打ち機構を有する腕時計ケースを開示している特許文献1を挙げることができる。時打ち機構のゴング及びゴング支持体は、腕時計ケースの中央部分及び/又は裏蓋と同時に作製される。ゴング及びゴング支持体は、中央部分又は裏蓋と一体であり、これにより腕時計ケースの中央部分又は裏蓋と共に単一部品を形成する。
【0007】
しかしながらこのような実施形態の1つの欠点は、ゴングが腕時計ケースの製造に関連しており、結果として複雑かつ高価となる点である。従って、腕時計ケースの材料を考慮せずに、ゴングを形成する材料を選択することはできない。時打ち機構の打音を修正するために、又は破損若しくは観察された欠陥が原因でゴングを交換したい場合に、腕時計ケースの一部も交換しなければならず、これは欠点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第2196869B1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って本発明の目的は、作製が容易でありかつ豊かな音を生成できる、腕時計ケースに設置された場合の振動伝播が改善された、時打ち機構から打音を生成するための組立体を提供することにより、従来技術の欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のために、本発明は、独立請求項1において定義される特徴部分を含む、上述の時打ち機構から打音を生成するための組立体に関する。
【0011】
打音を生成するための組立体の具体的な実施形態は、従属請求項2〜7において定義される。
【0012】
打音を生成するための組立体の1つの利点は、ゴング及びゴング支持体が腕時計ケース内の組み付け用要素と同時に作製され、これによりただ1つの部品を形成することにある。これにより、少なくとも一方の端部がゴング支持体に固定されたゴングの製造、及び腕時計ケース内でゴング支持体をゴングと共に保持する役割も果たす組み付け要素の製造が簡略化される。よって、単一部品のゴング/組み付け要素を形成する材料を、腕時計ケースを形成する材料に関係なく選択できる。更にゴング支持体及びゴングは、組み付け要素と同一の予備成形品において同時に作製されるため、ゴング支持体に対するゴングの更なる組み付け作業が回避される。
【0013】
有利には、組み付け要素は、バンド又はケーシングリング等のリングの形態で作製される。ゴング支持体及びゴングを支持するこのリングは、腕時計ケース、特に腕時計ケースの中央部分に打ち込むことにより組み付けることができる。よって組立体は、ゴングが自由に振動できる状態のまま、腕時計ケース内部で保持される。よってゴングから腕時計ケースへの振動伝達が改善され、これにより、知覚される打音の音量が増大する。
【0014】
この目的のために、本発明はまた、独立請求項8において定義される特徴部分を含む、腕時計にも関する。
【0015】
この腕時計の具体的な実施形態は、従属請求項9、10において定義される。
【0016】
従って本発明は、この目的のために、独立請求項11において定義される特徴部分を含む、打音を生成するための組立体を製造する方法にも関する。
【0017】
具体的な製造ステップは、従属請求項12、13において定義される。
【0018】
本発明による打音を生成するための組立体を製造するための方法の1つの利点は、組み付け要素、ゴング及びそのゴング支持体を含む単一の部品が、打抜き加工又は成形作業等の1つの機械加工作業によって形成されることにある。
【0019】
腕時計の時打ち機構から打音を生成するための組立体及び該組立体を製造するための方法の目的、利点及び特徴は、特に添付の図面を参照して以下の説明を読むことにより、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1a図1aは、本発明による時打ち機構から打音を生成するための組立体の第1の実施形態の3次元上面図である。
図1b図1bは、本発明による時打ち機構から打音を生成するための組立体の第1の実施形態の平面図である。
図2a図2aは、本発明による時打ち機構から打音を生成するための組立体の第2の実施形態の3次元上面図である。
図2b図2bは、本発明による時打ち機構から打音を生成するための組立体の第2の実施形態の、図2aのII‐IIに沿った断面図である。
図3a図3aは、本発明による時打ち機構から打音を生成するための組立体が配設された腕時計の概略平面図である。
図3b図3bは、本発明による時打ち機構から打音を生成するための組立体が配設された腕時計の、図3aのIII‐IIIに沿った概略断面図である
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の説明において、ハンマーによって打たれたゴングを介して打音を生成するための組立体を含む腕時計の時打ち機構の、当該技術分野において周知である全ての部品については、簡単にしか説明しない。
【0022】
図1a、1bは、時打ち機構から打音を生成するための組立体1の第1の実施形態を示す。この組立体は、その端部のうちの一方がゴング支持体3に固定された少なくとも1つのゴング2と、ゴング支持体3に直接固定された組み付け要素4とで形成される。ゴング2の他方の端部は自由に運動できる。上記組み付け要素は直接設置でき、特に腕時計ケースの中央部分等の腕時計ケースの相補的な部分に打ち込まれる。
【0023】
図1a、1bによると、ゴング2は組み付け要素4の僅かに上方に、かつ組み付け要素4対して平行に配置される一方で、ゴング支持体3によって組み付け要素に接続される。しかしながら、ゴングをゴング支持体3によって組み付け要素4に接続しつつ、組み付け要素と同一の平面に配置してもよい。更に、ゴング2の2つの端部を、ゴング支持体3の2つの対向する側部に固定してもよい。
【0024】
機械式時計ムーブメントの組み付け要素4は好ましくは、バンド又はリングの形態で作製される。このリングは例えば、図3a、3bで概略的に示したような、腕時計内に打ち込むことにより組み付けられるよう構成されたケーシングリングであってよい。しかしながら、ケーシングリングを、別の方法で上記腕時計ケース内部に固定してもよい。バンド又はリング4は、機械式時計ムーブメントも設置される腕時計の地板上に設置してよい。好ましくは、ケーシングリング4の下側部分を地板上に設置し、ゴング2をケーシングリング4の上側部分の側部に配置する。
【0025】
ケーシングリング4に対して平行なゴング2は、円形であり、かつ上記ケーシングリング4に対して同軸であってよい。ゴング2の外径は、ケーシングリング4の内径より僅かに小さくてよい。ゴング2を、腕時計の地板上の時計ムーブメントの一部を取り囲むよう構成してよい。これもまた時計ムーブメントの一部を形成する時打ち機構のハンマーによって、ゴングを打つことができる。ゴング2は、上記地板に対して平行な平面内に延在する。ゴング2の金属ワイヤは、例えば180°以下〜360°、ただし好ましくは約330°の角度を有する円の一部を画定してよい。
【0026】
ゴング2、ゴング支持体3、組み付け要素4は、好ましくは金属である材料又は金属ガラスで作製できる。材料は、鋼等の金属材料、又は金、白金若しくは銀等の貴金属、又は貴金属合金となるよう選択してよい。ゴングの断面は、直径が1mm未満(例えば約0.6mm)の円形であってよい。しかしながら以下に説明するように、各ゴングの断面は好ましくは矩形であってもよく、これにより作製がより容易となり得る。
【0027】
ゴング2の材料を、特に金である貴金属から選択する場合、腕時計ケース内で金属ワイヤを一周させるだけで鐘の音を生成できる。ゴングの下流に位置する腕時計の外部部品への伝達係数が上昇することにより、音響強度が改善される。従ってこれにより、ゴング2から腕時計の放射部品への振動伝播が改善される。
【0028】
これより、打音を生成するための組立体1を製造する方法を説明できる。ゴング支持体3に接続された少なくとも1つのゴング2を、同一の予備成形品において組み付け要素4と共に作製してよい。これを達成するために、並びに使用される材料の種類又は得ようとする形状に応じて、組立体の予備成形品を打ち抜き加工する作業、又は成形作業を初めに実施できる。
【0029】
予備成形品の打ち抜き加工作業の場合、ゴング支持体3によって組み付け要素4に接続されたゴング2を含む形成済みの部品を、打ち抜き加工用ダイにおける単一のステップで得ることができる。しかしながら、ゴングの自由端部が材料の少なくとも1つのブリッジによって組み付け要素に対して保持されること、及び上記打ち抜き加工作業の後に工作機械における少なくとも1つのフライス加工作業を実施して、上記ゴング2の端部を解放し、場合によっては上記ゴングを調整することが好ましい。しかしながら、ゴングの2つの端部をゴング支持体の2つの対向する側部に接続しなければならない場合には、単一の打ち抜き加工作業で十分であり得る。
【0030】
少なくとも2つの部分を有する型における成形作業の場合、溶融状態の金属又は金属ガラスを上記型に導入し、その後冷却作業を実施する。このようにして、型から取り外してすぐに、ゴング支持体3を介して組み付け要素4に接続された少なくとも1つのゴング2を含む組立体1を得ることができる。ゴング支持体3に固定された2つの端部、又はゴング支持体に固定された1つの端部及び1つの自由端部を有するゴング2が、ただ1つの成形ステップの後に即座に形成される。各ゴングの断面は、この成形作業によって円形又は同様に矩形としてよい。しかしながら、ゴング2を調整するために、続けてフライス加工作業を実施してもよい。
【0031】
図2a、2bは、時打ち機構から打音を生成するための組立体1の第2の実施形態を示す。この組立体は、その端部のうちの少なくとも一方が同一のゴング支持体3に固定された第1のゴング2及び第2のゴング2’と、ゴング支持体3に直接接続された組み付け要素4とで形成される。第1のゴング2及び第2のゴング2’の他方の端部はそれぞれ自由に運動できる。組立体1のために使用される材料は、第1の実施形態に関して記載した材料と同一である。
【0032】
図2a、2bによると、ゴング2、2’は組み付け要素4の僅かに上方に、かつ組み付け要素4対して平行に配置される一方で、ゴング支持体3によって組み付け要素に接続される。第2のゴング2’は第1のゴング2上に重なり、各ゴングは、組み付け要素4に対して平行かつ同軸に配置される。2つのゴング2、2’は、それぞれが時打ち機構の各ハンマーによって打たれるように、互いに対して接触しない。
【0033】
第1の実施形態と同様に、機械式時計ムーブメントの組み付け要素4は、バンド又はケーシングリング等のリングであってよい。バンド又はリング4は、腕時計ケース、特にケース中央内の相補的な形状の部分に打ち込むことにより設置されるよう構成される。しかしながら、ケーシングリングを、別の方法で上記腕時計ケース内に固定してもよい。ケーシングリング4を腕時計の地板上に設置してよい。ケーシングリング4の下側部分を地板上に設置してよく、ゴング2、2’はケーシングリング4の上側部分の側部上に配置される。
【0034】
よって第1のゴング2及び第2のゴング2’は、ケーシングリング4の内径より小さくてよい同一の外径を有する、円形のものであってよい。各ゴング2、2’の金属ワイヤは、例えば180°以下〜360°、ただし好ましくは約330°の角度を有する円の一部を画定してよい。第1のゴング2の円の一部は、第2のゴング2’の円の一部の角度とは異なる角度を有してよい。各ゴングは、その全長にわたって同一の断面を有してよいか、又はその全長にわたって非一定の断面を有してよい。第1のゴング2の断面は、第2のゴング2’の断面とは異なっていてもよい。第1のゴング2の一方の端部はゴング支持体3の一方の側部上に固定され、第2のゴング2’の一方の端部は同一のゴング支持体3の反対側の側部上に固定される。
【0035】
第2の実施形態の打音生成組立体1を製造する方法は、組立体の第1の実施形態に関して記載した方法と同一の製造ステップを含む。組立体1の第2の実施形態に関して、同一のゴング支持体3を始点とする第1のゴング2及び第2のゴング2’は、予備成形品において組み付け要素4と共に作製される。組立体の予備成形品を打ち抜き加工する作業、又は成形作業等の機械加工作業を実施してよい。
【0036】
同一のゴング支持体3に接続された少なくとも1つの端部を有する2つのゴング2、2’を作製したい場合、材料のブリッジは通常、2つのゴングの自由端部を組み付け要素4の内側部分又は他方のゴングに接続する。このような場合、2つのゴング及びこれらの組み付け要素4への連結を分離するために、予備成形品を打ち抜き加工した後に、工作機械において、少なくとも1つのフライス加工又は切断作業を実施しなければならない。しかしながらゴング2、2’の両方の端部をゴング支持体3に固定しなければならない場合、打ち抜き加工作業のみを実施する。各ゴングの断面は好ましくは、打ち抜き加工作業後には矩形であってよい。
【0037】
図3a、3bは、時打ち機構を含む腕時計10の部分平面図及び直径に沿った概略断面図である。上記時打ち機構は、地板15上に配置された時計ムーブメント14内のある部分と、打音を生成するための組立体1で形成された別の部分とを含む。時計ムーブメント14に含まれる時打ち機構の一部は特に、所定の瞬間にゴングを打つために駆動ばねによって駆動される少なくとも1つのハンマーで形成される。
【0038】
腕時計10は腕時計ケースも含み、この腕時計ケースは従来の様式で、ケース中央12の下部に固定された裏蓋11と、ケース中央12の上部に設置されて腕時計ケースを閉鎖する腕時計の風防13とで形成される。地板15はケース中央12に固定されるが、密閉用ガスケット(図示せず)を挿入することにより、裏蓋11とケース中央12との間に固定することもできる。時計機構の一部を有する時計ムーブメント14は、裏蓋11、ケース中央12、風防13によって画定されるハウジング内で上記地板15上に設置される。図示していないが、腕時計10は、時計ムーブメント14の上方の文字盤、及び文字盤上で時間を表示するための、少なくとも1つのアーバによって時計ムーブメントに接続された針も含む。
【0039】
打音生成組立体1は好ましくは、腕時計ケースの中央部分12等の、腕時計ケースの相補的な部分12aに打ち込むことにより、組み付けられる。よって組み付け要素4は、他の固定用構成部品を要することなく、中央部分12の内側壁部12aに対して摩擦によって保持される。この組み付け要素4は、地板15上に支持されてもよい。
【0040】
図3a、3bの実施形態では、ゴング2は、組み付け要素4のように円形のものであり、ゴング支持体3に直接固定された2つの端部を含む。ゴング2は、組み付け要素4と接触せずに、組み付け要素4に対して同軸かつ同一平面に配置される。組み付け要素4は中央部分12の内側壁部12aに打ち込むことにより固定されるため、打音生成組立体1の組み付けが容易となり、振動ゴング2から腕時計ケース10等の外部部品への振動伝播が改善される。
【0041】
以上の説明から、当業者は、請求項によって定義される本発明の範囲を逸脱することなく、時打ち機構から打音を生成するための組立体の複数の変形例を考案できる。同一のゴング支持体に、又は組み付け要素の周縁部上に配設された複数のゴング支持体に固定された、複数のゴングを設けてもよい。各ゴングは、それぞれが振動中に特定の音を定義できるように、他の全てのゴングとは異なる長さ及び断面を有してよい。1つ又は複数のゴングは円以外の形状、例えば概ね矩形若しくは多角形状であってよく、又は腕時計ムーブメントの周りでらせん形状を描いてもよい。組み付け要素を、1つ又は複数のゴングの内側に配置してよい。組み付け要素の内側に配置された少なくとも1つのゴング、及び組み付け要素と同一の平面、又は組み付け要素と同一でない平面において、組み付け要素の外側に配置された少なくとも1つの他のゴングを設けてよい。打音生成組立体を、レーザ又はウォータージェット切断又はフライス加工等の機械加工作業によって完成させることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 打音生成組立体
2 ゴング、第1のゴング
2’ ゴング、第2のゴング
3 ゴング支持体
4 組み付け要素
10 腕時計
11 裏蓋
12 中央部分
12a 中央部分の内側壁部
13 風防
14 時計ムーブメント
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b