(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989853
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】水平維持装置を備えるバージ船及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
B63B 43/00 20060101AFI20160825BHJP
B63B 35/28 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
B63B43/00 A
B63B35/28
【請求項の数】12
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-97697(P2015-97697)
(22)【出願日】2015年5月12日
(65)【公開番号】特開2015-217941(P2015-217941A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2015年5月12日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0060068
(32)【優先日】2014年5月20日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514180720
【氏名又は名称】ソク−ムン,キム
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ソク−ムン,キム
【審査官】
加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−317836(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2005−0051409(KR,A)
【文献】
韓国登録特許第10−0613668(KR,B1)
【文献】
韓国登録特許第10−0848032(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 43/00
B63B 35/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮力によって海上に浮かぶ船体と、
前記船体の四つの角に各々設置され、前記船体の揺動に対応して揺動抑制モーメントを発生させる水平維持装置と、
前記水平維持装置の一側に各々設置され、前記船体の勾配を測定する勾配検出部と、
前記勾配検出部で検出した値に対応して前記水平維持装置の作動を各々制御する制御部を含む水平維持装置を備えるバージ船。
【請求項2】
前記水平維持装置は内部に空間部を有するボックスと、前記ボックスの内部に設置される駆動モータと、前記駆動モータの回転軸に結合されて回転するフライホイールを含むことを特徴とする請求項1に記載の水平維持装置を備えるバージ船。
【請求項3】
前記勾配検出部は、前記船体の勾配を測定する勾配センサと、前記船体の上下方向の加速度を測定する加速度センサを含み、前記制御部は前記加速度センサの測定値に対応して前記フライホイールの回転速度を各々制御すことを特徴とする請求項2に記載の水平維持装置を備えるバージ船。
【請求項4】
浮力によって海上に浮かぶ船体と、
前記船体の四つの角に各々設置され、前記船体の揺動に対応して揺動抑制モーメントを発生させる水平維持装置と、
前記水平維持装置の一側に各々設置され、前記船体の上下方向の加速度を測定する加速度検出部と、
前記加速度検出部で検出した値に対応して前記水平維持装置の作動を各々制御する制御部を含み、
前記水平維持装置は、内部に空間部を有するボックスと、前記ボックスの内部に回転可能に設置されるジンバルと、前記ジンバル内に設置され、前記ジンバルの回転軸に対して垂直である回転軸を有するフライホイールと、前記フライホイールを回転させる駆動モータを含むことを特徴とする水平維持装置を備えるバージ船。
【請求項5】
前記制御部は、前記船体の四つの角で各々測定される上下方向の加速度値に応じて前記船体の四つの角に設置される前記フライホイールの回転速度を各々独立的に制御することを特徴とする請求項4に記載の水平維持装置を備えるバージ船。
【請求項6】
前記水平維持装置は、前記ジンバルの一側に設置され、前記ジンバルを回転させる回転モータをさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の水平維持装置を備えるバージ船。
【請求項7】
前記制御部は、前記船体の四つの角で各々測定される上下方向の加速度値に応じて前記ジンバルの回転角度と回転速度及び前記フライホイールの回転速度を各々独立的に制御することを特徴とする請求項6に記載の水平維持装置を備えるバージ船。
【請求項8】
(a)バージ船の船体の四つの角で揺動による勾配及び上下方向の加速度を検出する段階と、
(b)前記(a)段階で検出した値により前記バージ船の船体の四つの角に各々設置された水平維持装置で発生させなければならない揺動抑制モーメントを算出する段階と、
(c)前記(b)段階で算出した揺動抑制モーメントに応じて前記水平維持装置の作動を制御する段階を含む水平維持装置を備えるバージ船の制御方法。
【請求項9】
前記水平維持装置は、内部に空間部を有するボックスと、前記ボックスの内部に設置される駆動モータと、前記駆動モータの回転軸に結合されて回転するフライホイールを含むことを特徴とする請求項8に記載の水平維持装置を備えるバージ船の制御方法。
【請求項10】
前記(c)段階は、前記(b)段階で算出した揺動抑制モーメントに応じて前記フライホイールの回転速度及び回転方向を各々独立的に制御することを特徴とする請求項9に記載の水平維持装置を備えるバージ船の制御方法。
【請求項11】
前記水平維持装置は、前記ボックスの内部に回転可能に設置されるジンバルと、前記ジンバルの一側に設置されて前記ジンバルを回転させる回転モータをさらに含み、前記ジンバルは前記フライホイールの回転軸に対して垂直である回転軸を有するように設置されることを特徴とする請求項9に記載の水平維持装置を備えるバージ船の制御方法。
【請求項12】
前記(c)段階は、前記(b)段階で算出した揺動抑制モーメントに応じて前記ジンバルの回転角度と回転速度及び前記フライホイールの回転速度と回転方向を各々独立的に制御することを特徴とする請求項11に記載の水平維持装置を備えるバージ船の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海上で船体の揺動を抑制できるようにジャイロ効果を利用した水平維持装置を備えたバージ船及びそのバージ船の水平維持制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、バージ船とは港内、内海、湖、河川、運河などで貨物を運搬したり海上作業用工事装備を搭載して海上作業をする無動力船舶をいい、大量の工事材料及び工事装備を海上に運搬したり海上での作業空間を提供するために船体上部に広い空間を確保した形で製造された船を指す。
【0003】
このようなバージ船は二つの地点の間で貨物を運搬したり、港内に大型船が接岸できない場合などにおいて、貨物の積み込みや積み下ろしのために本船の横に係留したはしけとして使用されたり、各種工事装備を搭載して海岸工事を実施することに使用されており、多くの場合、自力で運行できる動力を備えず、タグボートにより牽引あるいは推進されながら航行するように構成される。
【0004】
しかし、バージ船は海に浮いたまま重量体の荷役作業をしたり海上作業をするとき、海洋の気象状態の悪化による高波や風浪によって船体がひどく揺れ動くため、非常に不安定なだけでなく、工事装備が転倒したり、作業者が行方不明になるなどのような事故がたびたび発生するという問題がある。さらに、バージ船の甲板上に積載された重量体が均等に配置されず、偏重されている場合は船体の転覆事故につながる危険性がある。
【0005】
したがって、従来にはバージ船の船体の均衡を安定的に取るための方案として、終端にアンカーが備えられている支持ケーブルを船体の四つの角から海底面まで下ろしたり、円形または角形のスパッド(spud)を海底面まで垂直に下ろし、バージ船を海上に係留させる方法が使用された。
【0006】
しかし、支持ケーブルを利用した従来技術の場合、その使用は、港内、湖、河川、運河などで貨物を運搬する程度の役割を果たす小型のバージ船に局限され、また波浪などによって船体が過度に揺らぐため、精密な海上作業が不可能であり、船体の固定度が弱いため、海上天気の影響を多く受けるという問題点がある。
【0007】
また、スパッドを利用した従来技術の場合、バージ船の均衡を維持するために高価のスパッドを少なくとも4個以上設置しなければならないため、装備製作と投入及び設置が複雑であるため運営費が高く、かつ短距離の移動作業ができないため長距離だけでなく短距離移送時にも常にタグボートを必要とするという問題点がある。さらに、中空の鋼管からなるスパッドを使用するため、スパッドの体積により排除される海水の量に相当する少なくない大きさの浮力が船体に作用して不安定性を加重させる問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】韓国特許公報第10−1078391号明細書
【特許文献1】韓国特許公開第10−2005−0051409号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前述した問題を解決するために案出されたものであって、ジャイロスコープ技術を利用して運航及び停止の際に船体の揺動を抑制できる水平維持装置を備えるバージ船及びその制御方法を提供することに目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した本発明の目的は、浮力によって海上に浮かぶ船体と、前記船体の四つの角に各々設置され、前記船体の揺動に対応して揺動抑制モーメントを発生させる水平維持装置と、前記水平維持装置の一側に各々設置され、前記船体の勾配を測定する勾配検出部と、前記勾配検出部で検出した値に対応して前記水平維持装置の作動を各々制御する制御部を含む水平維持装置を備えるバージ船を提供することによって達成できる。
【0011】
本発明の好ましい特徴によれば、前記水平維持装置は、内部に空間部を有するボックスと、前記ボックスの内部に設置される駆動モータと、前記駆動モータの回転軸に結合されて回転するフライホイールを含み得る。
【0012】
本発明の他の好ましい特徴によれば、前記勾配検出部は前記船体の勾配を測定する勾配センサと、前記船体の上下方向の加速度を測定する加速度センサを含み、前記制御部は前記加速度センサの測定値に対応して前記フライホイールの回転速度を各々制御できる。
【0013】
一方、前述した本発明の目的は、浮力によって海上に浮かぶ船体と、前記船体の四つの角に各々設置され、前記船体の揺動に対応して揺動抑制モーメントを発生させる水平維持装置と、前記水平維持装置の一側に各々設置され、前記船体の上下方向の加速度を測定する加速度検出部と、前記加速度検出部で検出した値に対応して前記水平維持装置の作動を各々制御する制御部を含む水平維持装置を備えるバージ船を提供することによっても達成できる。
【0014】
本発明の好ましい特徴によれば、前記水平維持装置は、内部に空間部を有するボックスと、前記ボックスの内部に回転可能に設置されるジンバルと、前記ジンバル内に設置され、前記ジンバルの回転軸に対して垂直である回転軸を有するフライホイールと、前記フライホイールを回転させる駆動モータを含み得る。
【0015】
本発明の他の好ましい特徴によれば、前記制御部は、前記船体の四つの角で各々測定される上下方向の加速度値に応じて前記船体の四つの角に設置される前記フライホイールの回転速度を各々独立的に制御できる。
【0016】
本発明のまた他の好ましい特徴によれば、前記水平維持装置は、前記ジンバルの一側に設置されて前記ジンバルを回転させる回転モータをさらに含み得る。
【0017】
本発明のまた他の好ましい特徴によれば、前記制御部は前記船体の四つの角で各々測定される上下方向の加速度値に応じて前記ジンバルの回転角度と回転速度及び前記フライホイールの回転速度を各々独立的に制御できる。
【0018】
一方、前述した本発明の目的は、(a)バージ船の船体の四つの角で揺動による勾配及び上下方向の加速度を検出する段階と、(b)前記(a)段階で検出した値により前記バージ船の船体の四つの角に各々設置された水平維持装置で発生させなければならない揺動抑制モーメントを算出する段階と、(c)前記(b)段階で算出した揺動抑制モーメントに応じて前記水平維持装置の作動を制御する段階を含む水平維持装置を備えるバージ船の制御方法を提供することによっても達成できる。
【0019】
本発明の好ましい特徴によれば、前記水平維持装置は内部に空間部を有するボックスと、前記ボックスの内部に設置される駆動モータと、前記駆動モータの回転軸に結合されて回転するフライホイールを含み得る。
【0020】
本発明の他の好ましい特徴によれば、前記(c)段階は前記(b)段階で算出した揺動抑制モーメントに応じて前記フライホイールの回転速度及び回転方向を各々独立的に制御できる。
【0021】
本発明のまた他の好ましい特徴によれば、前記水平維持装置は前記ボックスの内部に回転可能に設置されるジンバルと、前記ジンバルの一側に設置されて前記ジンバルを回転させる回転モータをさらに含み、前記ジンバルは前記フライホイールの回転軸に対して垂直である回転軸を有するように設置され得る。
【0022】
本発明のまた他の好ましい特徴によれば、前記(c)段階は前記(b)段階で算出した揺動抑制モーメントに応じて前記ジンバルの回転角度と回転速度及び前記フライホイールの回転速度と回転方向を各々独立的に制御できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明による水平維持装置を備えるバージ船及びその制御方法によれば、船体揺動時の水平維持装置が揺動抑制モーメントを直ちに発生させることによって水平状態を安定的に維持できる効果がある。
【0024】
また、本発明による水平維持装置を備えるバージ船及びその制御方法によれば、従来とは違って別途のケーブルやスパッドを海底面に設置する必要がないため、海上に係留しているときだけでなく移動時にも船体の均衡を維持できる効果がある。
【0025】
また、本発明による水平維持装置を備えるバージ船及びその制御方法によれば、バージ船の四つの角に各々加速度センサと水平維持装置を設置し、加速度センサから測定される値に応じて各々の水平維持装置の作動を独立的に制御できるので、バージ船の不規則的な動きに対する微細な調整が可能であるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明による船上に水平維持装置を備えるバージ船の概略図である。
【
図2】本発明の第1実施形態による水平維持装置の構成図である。
【
図3】本発明の第1実施形態による水平維持装置の揺動抑制モーメントの発生を示す概略図である。
【
図4】本発明の第2実施形態による水平維持装置の構成図である。
【
図5】本発明の第3実施形態による水平維持装置の構成図である。
【
図6】本発明による水平維持装置を備えるバージ船の制御方法を示す順序図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下で説明される実施形態は本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が発明を簡単に実施できるほど詳細に説明するためであり、これによって本発明の保護範囲が限定されることを意味するものではない。また、本発明の様々な実施形態を説明することにおいて、同じ技術的特徴を有する構成要素に対しては同じ図面符号を使用する。
【0028】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明による船上に水平維持装置を備えるバージ船の概略図である。
【0029】
本発明の第1実施形態による水平維持装置を備えるバージ船(以下、「バージ船」という)100は、
図1に示すように船体200の四つの角に各々一つずつ総4個の水平維持装置300を備え、各々の水平維持装置300の作動を制御するための制御部500が船体200の一側に備える。
【0030】
この際、本実施形態では水平維持装置300が船体200の上側に設置されている場合を例に挙げて説明しているが、本発明はこれに限定されない。船体200の内部または船体200の下側に水平維持装置300が設置されることもできる。さらに、本実施形態は船体200の四つの角に各々一つずつ水平維持装置300が設置されている場合を示しているが、例えば各々の角と角の間に一つずつ水平維持装置300を設置することもできる。
【0031】
海上で波によって揺れるバージ船100が水平状態を継続して維持するためには船体200の揺動に対応して水平に取るための微細な調整が必要である。
【0032】
すなわち、バージ船100は海上の風と波によって不規則に揺動し、このような動きはバージ船100の船体200の四つの角で各々異なって現れる。本発明の第1実施形態によれば、このように船体200の四つの角ごと異なって現れる動きに合わせて船体200の四つの角ごとに設置された水平維持装置300の作動が制御部500によって各々独立的に制御される。
【0033】
図2は、本発明の第1実施形態による水平維持装置の構成図である。
【0034】
本発明の第1実施形態による水平維持装置300は、ジャイロ効果(gyro effect)を利用した場合であり、船体200の揺動に対応して揺動抑制モーメントを発生させることによって船体200が水平状態を維持できるようにする役割を果たす。ここでいうジャイロ効果とは、高速回転する回転体が回転軸を常に最初の状態に一定に維持しようとする性質があることを指す。
【0035】
図2に示すように、本発明の第1実施形態による水平維持装置300は、内部に空間部を有するボックス310と、ボックス310の内部に設置される駆動モータ320と、駆動モータ320の回転軸330に結合されて回転するフライホイール340を含む。
図1と
図2に図示すボックス310は六面体形状に示しているが、これは一例に過ぎず、内部に駆動モータ320とフライホイール340が設置される空間を有しているのであればボックス310の外観は特に限定されない。例えば、ボックス310は球形または八面体などの多面体形状であり得る。
【0036】
駆動モータ320は、フライホイール340を回転させるためのものであり、ボックス310の内部に設置される。駆動モータ320の作動は制御部500によって制御できる。したがって、駆動モータ320の作動を制御することによってフライホイール340の回転方向と回転速度を制御できる。
【0037】
フライホイール340は、回転軸330によって駆動モータ320と結合し、駆動モータ320の作動によって回転して慣性モーメントを発生させる。この際、フライホイール340の回転によって発生する慣性モーメントは船体200の揺動を抑制する揺動抑制モーメントとして作用する。
【0038】
一方、フライホイール340の一側には船体200の勾配を測定する勾配検出部400が備えられ、例えば船体200の揺動による勾配を測定する勾配センサ410と、上下方向の加速度を測定する加速度センサ420を含んで構成される。
【0039】
図3は、本発明の第1実施形態による水平維持装置の揺動抑制モーメントの発生を示す概略図である。
【0040】
図3に示すように波浪エネルギによって船体200が傾いた場合、制御部500は勾配検出部400によって測定される勾配及び加速度に応じてフライホイール340の回転方向及び回転速度を制御して復原力を発生させる。
【0041】
この際、前述したように、船体200の四つの角で勾配及び加速度が各々測定され、船体200の四つの角に各々設置されたフライホイール340の回転方向及び回転速度が互いに独立的に制御されることによって、船体200の揺動に対応した揺動抑制モーメントが船体200の四つの角で各々独立的に発生する。
【0042】
すなわち、フライホイール340が回転し始めるとき、重力によるトルク(torque)はフライホイール340の上段平面上で一方に傾くように作用する。このようなトルクは歳差運動によりフライホイール340の上段平面上に垂直である仮想の軸線に対してフライホイール340を真っすぐに立てるトルクを誘発し、フライホイール340の回転速度が速くなるほど少しずつ真っすぐに立てられる。これによって、重力によるトルクは消えて歳差運動によるトルクだけが残って、フライホイール340が回転するあいだ船体200が傾かず水平状態を維持するようになる。
【0043】
この際、船体200の各角ごとに設置された加速度センサ420は上下方向の加速度を測定し、測定した加速度値が大きいほどフライホイール340の回転速度を増加させることが好ましい。例えば、船体200の四つの角の上下方向の加速度を測定し、加速度が大きい順にフライホイール340の回転速度を大きくすることが好ましい。
【0044】
この場合、揺動が大きい角は揺動が小さい角に比べて相対的に大きい揺動抑制モーメントが発生し、揺動が小さい角は揺動が大きい角に比べて相対的に小さい揺動抑制モーメントが発生し、船体200の揺動に対応した瞬間的な微細調整が可能になる。
【0045】
〔第2実施形態〕
図4は、本発明の第2実施形態による水平維持装置の構成図である。説明の便宜上図面にはボックスを省略した。以下、前述した第1実施形態の構成と同じ構成に対しては同じ図面符号を付与して重複説明は省略する。
【0046】
本発明の第2実施形態による水平維持装置300’は、内部に空間部を有するボックス(310、
図1を参照)と、ボックス310の内部に回転可能に設置されるジンバル(gimbal)350と、ジンバル350内に回転可能に設置されるフライホイール340と、フライホイール340を回転させる駆動モータ320を含む。
【0047】
ここで、ボックス310はバージ船の船体の四つの角に各々備えられ、その内部に設置されるジンバル350とフライホイール340及び駆動モータ320を保護する役割を果たす。この際、ボックス310の外観は特に限定されない。例えば球形または四面体や八面体などの多面体形状であり得る。
【0048】
本実施形態でボックス310は、船体200の上側に備えられているが、船体200の内部または船体200の下側に位置できることは前述した通りである。さらに、本実施形態ではボックス310が船体200の角に備えられているが、例えば船体200の角と角の間に位置することも可能である。
【0049】
ジンバル350は、内部にフライホイール340と駆動モータ320を設置可能なように空間部を有し、ボックス310の内部に回転可能に設置される。例えば、
図4に示すように、ジンバル350は両面が開口された六面体形状で形成され得る。ジンバル350の両側にはジンバルの回転軸351が外側に突出して形成され、ボックス310の床面に互いに離隔して垂直に設置される一対の支持台360の上段部に回転可能に結合される。したがって、船体200が揺動するとき、ジンバル350はジンバルの回転軸351を基準に図面上の上下方向に所定の角度回転が可能である。
【0050】
ジンバル350の中央部にはフライホイールの回転軸341がジンバルの回転軸351に対して垂直方向に設置される。例えば、
図4に示す実施形態の場合、図面上の左右方向に設置されたジンバルの回転軸351に対して図面上の上下方向にフライホイールの回転軸341が軸回転可能に設置される。
【0051】
ジンバル350の床面には駆動モータ320が固定設置され、駆動モータ320の上部にフライホイールの回転軸341が中央部を貫くようにフライホイール340が結合される。この際、駆動モータ320の回転力はフライホイール回転軸341を介してフライホイール340に伝達される。したがって、駆動モータ320の作動時にフライホイールの回転軸341と共にフライホイール340が一体で回転して慣性モーメントを発生させる。
【0052】
本発明の第2実施形態によれば、ジンバル350及びフライホイール340の回転によるジャイロ効果を利用して船体200が揺動する逆方向に揺動抑制モーメントを発生させることによって船体200の揺動を安定化させる。
【0053】
例えば、
図4に示すようにフライホイール340がZ軸を中心に回転しているとき、Z軸に垂直であるY軸を中心にするジンバル350の回転が入力として加わると、Z軸とY軸すべてに垂直であるX軸を中心にする回転によって揺動抑制モーメントが発生する。
【0054】
すなわち、波や潮流または海流によって船体200に揺動が発生する場合、回転しているフライホイール340に対して自然にジンバル350が回転するようになり、このようなジンバル350の回転を入力とするジャイロ効果により、揺動抑制モーメントが発生して船体200に伝達されて船体200の揺動が低減される。
【0055】
この際、船体200の各角で測定される加速度値に応じてフライホイール340の回転速度を異なるようにすることによって船体200の揺動に対応した瞬間的な微細調整が可能であることは前述した通りである。
【0056】
〔第3実施形態〕
図5は、本発明の第3実施形態による水平維持装置の構成図である。本発明の第3実施形態による水平維持装置300”は、
図4を参照して前述した本発明の第2実施形態による水平維持装置300’とその構成が全体的に類似する。ただし、ジンバル350を回転させるための回転モータ352がジンバルの回転軸351の一側端部に備えられるという点において差異がある。
【0057】
したがって、前述した第2実施形態の構成と同じ構成に対しては同じ図面符号を付与して重複説明は省略する。
【0058】
図5を参照すると、ジンバル回転軸351の一側端部に回転モータ352が設置され、制御部500によって回転モータ352の作動が制御されるためジンバル350を任意に所定角度回転させることができる。
【0059】
すなわち、本発明の第3実施形態によれば、船体200の揺動を勾配センサ410または加速度センサ420によって感知すると、各々のセンサ(410、420)で測定した値が制御部500に伝達され、制御部500は揺動を抑制するために必要なジンバル350の回転角度と回転速度を算出して回転モータ352の作動を制御する。したがって、フライホイール340とジンバル350の回転によるジャイロ効果により揺動抑制モーメントを発生させて船体200の揺動を低減させることができる。
【0060】
この際、船体200の各角で測定される加速度値に応じて各々の水平維持装置300”を構成するジンバル350の回転角度と回転速度、またフライホイール340の回転速度を異なるようにすることによって、船体200の揺動に対応して船体200の各角で瞬間的な微細調整が可能になる。
【0061】
図6は、本発明による水平維持装置を備えるバージ船の制御方法を示す順序図である。以下、
図1ないし
図6を参照して本発明による水平維持装置を備えるバージ船の制御方法について詳細に説明する。
【0062】
(勾配及び加速度を検出する段階(S10))
船体200が揺動するとき、船体200の四つの角に設置された水平維持装置(300、300’、300”)の勾配検出部400で船体200の勾配及び上下方向の加速度を各々測定し、測定した値を制御部500に伝達する。
【0063】
(揺動抑制モーメントを算出する段階(S20))
制御部500は、勾配検出部400で測定した値を伝達され、船体200の四つの角で必要とする揺動抑制モーメントを算出するが、このとき、フライホイール340の回転方向及び回転速度を決定する。この段階では必要に応じてジンバル350の回転角度と回転速度が決定される場合もある。
【0064】
(水平維持装置の作動を制御する段階(S30))
制御部500で算出して決定したフライホイール340の回転方向及び回転速度に応じて駆動モータ320の作動を制御してフライホイール340を回転させる。
【0065】
この際、船体200の四つの角において、測定した加速度値が大きいほどフライホイール340の回転速度を大きくし、測定した加速度値が小さいほどフライホイール340の回転速度を小さくすることが好ましい。
【0066】
さらに、ジンバル350の回転角度と回転速度が決定された場合は回転モータ352の作動を制御してジンバル350を所定角度回転させることもでき、フライホイール340とジンバル350の回転方向及び回転速度は制御部500によって船体200の四つの角で各々互いに独立的に制御され得る。
【0067】
結果的には、フライホイール340またはフライホイール340とジンバル350の回転によって船体200の四つの角の部分でジャイロ効果による揺動抑制モーメントが各々発生し、これによって船体の揺動が低減されてバージ船100は安定的に水平状態を維持できる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が、本発明の特許請求の範囲から外れず、多様に変更して実施できるものと理解することができる。
【符号の説明】
【0069】
100 バージ船
200 船体
300、300’、300” 水平維持装置
310 ボックス
320 駆動モータ
340 フライホイール
341 フライホイール回転軸
350 ジンバル
351 ジンバル回転軸
352 回転モータ
360 支持台
400 勾配検出部
500 制御部