(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
沈殿シリカの懸濁液(S1)を得るためのシリケートと酸性化剤の反応後、ケーキを得るための分離工程、沈殿シリカの懸濁液(S2)を得るための前記ケーキの分解工程、およびこの懸濁液の乾燥工程を含む、沈殿シリカの製造方法であって、前記分解工程が、75〜85℃の温度で実施される、方法。
【背景技術】
【0002】
触媒担体として、活性物質用の吸収剤(特に、ビタミン(特にビタミンE)、塩化コリンなどの、たとえば食品中に使用される、液体用の担体)として、粘性化剤、テクスチャライジング剤もしくは凝固防止剤として、電池セパレーター要素として、または練り歯磨き用もしくは紙用の添加剤として沈殿シリカを用いることは公知である。
【0003】
沈殿シリカを、シリコーンマトリックス(たとえば、電気ケーブルを被覆するための)中でまたは、たとえば靴底、床仕上げ材、ガスバリア、難燃性材料ならびにまた空中ケーブルローラー、家庭電化製品用のシール、液体もしくはガスパイプ用のシール、ブレーキシステム・シール、被覆材料、ケーブルおよび伝動ベルトなどの、エンジニアリング構成部品用の、天然もしくは合成ポリマーを、特にエラストマー、とりわけジエンエラストマーをベースとする組成物中で強化充填材として用いることもまた可能である。
【0004】
沈殿シリカは、エラストマー、特に、タイヤにおいて、白色強化充填材として長い間用いられてきた。
【0005】
沈殿シリカは、概して、シリケート、特にアルカリ金属シリケートと酸性化剤との沈殿反応に続いて、濾過ケーキを得るための濾過による分離工程、このケーキの洗浄工程、濾過ケーキの分解の任意選択的な工程、および前記ケーキの、たとえば、噴霧化による乾燥工程により、製造される。
【0006】
沈殿シリカを製造するある方法では、その方法により得られる濾過ケーキの粘度が非常に高く、分解工程は、大きな機械エネルギーがないと実施できない。水の添加は、粘度を減じるのに寄与する1つの解決策となり得る。しかしながら、水の添加は、同量のシリカを乾燥するために、より多くの水を除去する必要がある場合、乾燥の生産性に悪影響があることがわかっている。
【0007】
さらに、分解工程において機械エネルギーを導入すると、シリカの粒子サイズが大きく減少する場合があり、これは、乾燥後の凝集シリカが過剰となり、これは、たとえば、エラストマーマトリックスに分散させるのに向かないものとなり得る。
【0008】
最新技術の方法においては、エネルギー消費が高い。乾燥がエネルギー消費の主な源であるため、かなり高コストである。
【0009】
エネルギー消費の減少が、たとえば、乾燥操作において、必要とされている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
好ましくは、本発明による方法の分解工程は、50〜100℃、特に、60〜100℃、さらに、70〜90℃、たとえば、75〜85℃の温度で実施される。分解工程は、80℃の温度で実施することができる。
【0016】
本発明によれば、分解工程は加圧下で実施することができる。
【0017】
一実施形態によれば、分解工程は大気圧で実施される。
【0018】
典型的に、分解工程は、蒸気の添加または加熱により、50〜120℃の高温で実施することができる。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、分解工程は、蒸気の添加を含むことができる。
【0020】
本発明の他の実施形態によれば、分解工程は、加熱工程を含むことができる。典型的に、加熱工程は、破砕機(または分解工程を実施するチャンバ)において実施することができる。
【0021】
本発明によれば、分解工程は、特に、加熱の前に、濾過ケーキを予熱する予備工程を含むことができる。
【0022】
特に、濾過ケーキは、1分〜10時間、好ましくは、30分〜5時間、好ましくは、1〜5時間、たとえば、約3時間予熱することができる。
【0023】
好ましくは、濾過ケーキの任意選択の予熱は、分解工程を実施するのと同一または実質的に同一の温度で実施される。
【0024】
特に、本発明による方法は、したがって次の工程を含む。
−少なくとも1つのシリカを、少なくとも1つの酸性化剤と反応(沈殿反応)させて、沈殿シリカの懸濁液(S1)を得る、
−固体/液体分離工程、特に、濾過工程を、実施して、「濾過」ケーキとも呼ばれる固体生成物を得る、
−前記濾過ケーキに、上述した温度、この場合は、50〜120℃の温度で分解操作を施して、沈殿シリカの懸濁液(S2)を得る、
−このようにして得られた生成物を、好ましくは、噴霧化により乾燥する。
【0025】
分解操作は、流体化または液化操作であり、濾過ケーキが液体とされ、沈殿シリカは再び懸濁液とされる。一般に、この操作によって、特に、後に乾燥すべき懸濁液の粘度を下げることができる。この操作は、このように、アルミン酸ナトリウム等のアルミニウム化合物および/または酸を、機械的作用(たとえば、連続攪拌タンクに通過させたり、コロイドタイプのミルに通したりすることにより)と有利には組み合わせて、濾過ケーキに化学作用を施すことによって実施することができる。分解後に得られる懸濁液(特に、水性懸濁液)は、比較的低い粘度を示す。
【0026】
概して、本発明による方法において、分解工程を施した生成物(濾過ケーキ)は、少なくとも10重量%(特に、10重量%〜40重量%、たとえば、10重量%〜35重量%)、好ましくは、少なくとも15重量%(特に、15重量%〜40重量%、たとえば、15重量%〜35重量%)、さらに好ましくは、少なくとも18重量%、特に、18重量%〜40重量%、特に、20重量%〜35重量%、たとえば、20重量%〜30重量%の固体含量を示すことができる。特に、本発明による方法の分解工程により処理した生成物(濾過ケーキ)は、少なくとも25重量%、特に、25重量%〜35重量%、たとえば、25重量%〜30重量%の固体含量を示すことができる。
【0027】
本発明の方法において、分解工程の継続時間(任意選択の予熱工程の継続時間は含まれない)は、5〜120分、好ましくは15〜60分、特に、15〜40分とすることができる。この継続時間は、特に、15〜35分、たとえば、20〜35分とすることができる。
【0028】
分解工程の結果得られる沈殿シリカの懸濁液(S2)は、概して、少なくとも10重量%(特に、10重量%〜40重量%、たとえば、10重量%〜35重量%)、好ましくは、少なくとも15重量%(特に、15重量%〜40重量%、たとえば、15重量%〜35重量%)、より好ましくは、少なくとも18重量%、特に、18重量%〜40重量%、特に、20重量%〜35重量%、たとえば、20重量%〜30重量%の固体含量を示す。特に、本発明の方法による分解工程の結果得られる懸濁液(S2)は、少なくとも25重量%、特に、25重量%〜35重量%、たとえば、25重量%〜30重量%の固体含量を示すことができる。
【0029】
本発明の方法の有利な実施形態によれば、分解工程の結果得られる生成物は、15重量%〜30重量%、好ましくは、18重量%〜29重量%、有利には、26重量%〜29重量%の固体含量を示す。
【0030】
概して、本発明の方法において、分解前後のシリカケーキまたは懸濁液の固体含量は、同一または僅かに異なり得る。有利には、分解工程を高温、すなわち、50〜120℃で実施すると、同一の粘度を得るために提供されるべき機械エネルギーを減じながら、水の添加を省けることが分かった。
【0031】
同様に、高温で実施される分解工程によって、周囲温度で実施される分解工程よりむしろ高い、さらに高い固体含量で操作することができることが分かった。除去すべき水が少ない場合は、乾燥工程が促進されることが分かった。本発明による方法によって、特に、乾燥工程の生産性を改善できることが分かった。
【0032】
さらに、有利には、本発明の方法の高温での分解工程に必要とされる機械エネルギーは、全く同一の高固体含量のケーキについて、好ましくは、周囲温度での分解工程に用いられる場合よりも少ないことが分かった。従って、得られる沈殿シリカ(S2)の懸濁液は、粉砕される範囲が少ないことが分かり、得られる沈殿シリカの品質には実質的に変わりがない。
【0033】
本発明による方法は、沈殿シリカの合成方法、すなわち、特定の種類の沈殿シリカに限定することなく、まず、少なくとも1つの酸性化剤を、少なくとも1つのシリケートと反応させる沈殿工程を実施する方法に関する。
【0034】
本発明による方法は、特に、たとえば、欧州特許第0 520 862号明細書、欧州特許第0 670 813号明細書、欧州特許第0 670 814号明細書、欧州特許第0 917 519号明細書、国際公開第95/09127号パンフレット、国際公開第95/09128号パンフレット、国際公開第98/54090号パンフレット、国際公開第03/016215号パンフレット、国際公開第2009/112458号パンフレットまたは国際公開第2012/010712号パンフレットに記載された方法に従って得られる沈殿シリカを製造することができる。
【0035】
シリケートと酸性化剤の反応による沈殿反応は、いずれかの調製方法に従って、本発明による方法において実施することができ、特に、酸性化剤のシリケートの容器ヒール(vessel heel)への添加、または、酸性化剤とシリケートの水の容器ヒール(vessel heel)への全または部分添加、またはシリケートまたは酸性化剤のその他同時添加により行うことができる。
【0036】
酸性化剤とシリケートの選択は、それ自体は周知されている。概して、酸性化剤としては、強無機酸、たとえば、硫酸、硝酸または塩酸、あるいは、有機酸、たとえば、酢酸、ギ酸またはカルボン酸が用いられる。
【0037】
沈殿工程の結果、沈殿シリカの懸濁液(またはスラリー)S1が得られ、任意選択的に、様々な添加剤を加えることができ、それは後に分離される。
【0038】
本発明の特定の実施形態によれば、上述した分離工程は、固体/液体分離工程からなる。好ましくは、それは濾過工程からなり、結果として、濾過ケーキが得られ、適切であれば、前記ケーキの洗浄工程が続く。
【0039】
濾過は、任意選択の好適な方法によって、たとえばフィルタープレス、ベルトフィルターまたは回転真空フィルターを用いて実施される。
【0040】
得られた生成物(ケーキ)に、続いて、上述した分解工程を施す。
【0041】
一実施形態によれば、本発明の方法は、任意選択的に分離工程と分解工程の間に解砕工程を含むことができる。
【0042】
この任意選択の工程は、分離工程から得られたケーキの破砕からなり、濾過ケーキの粒子サイズを減じることを可能とさせる。たとえば、この工程は、Gericke Nibbler で実施することができ、ケーキを、20mm未満の直径、好ましくは2〜14mmのサイズの篩に通すものである。この解砕工程はまた、Wyssmontデバイス、たとえば、「Rotocage Lumpbreaker」、「Double Rotocage Lumpbreaker」または「Triskelion Lumpbreaker」により実施することができる。
【0043】
分解工程の結果得られた沈殿シリカの懸濁液S2を、続いて乾燥する。
【0044】
この乾燥操作は、それ自体公知の任意選択的な手段によって実施することができる。
【0045】
本発明の好ましい実施形態によれば、乾燥は噴霧により実施される。
【0046】
この目的のために、任意の種類の好適な噴霧器、特に回転、噴霧、好ましくはノズル、液体圧力または二流体噴霧器を用いてもよい。
【0047】
乾燥操作を、ノズル噴霧器により実施するときは、本発明による方法により得ることのできる沈殿シリカは、有利には、実質的に球状ビーズ(マイクロビーズ)の形態で、好ましくは、少なくとも80μmの平均サイズで存在する。
【0048】
この乾燥操作の結果、回収した生成物に粉砕(特に、乾燥粉砕)工程を任意選択で実施することができる。得られた沈殿シリカは、概して、粉末、好ましくは5〜70μmの平均サイズで存在する。
【0049】
乾燥操作を、回転噴霧器により実施するときは、得ることのできる沈殿シリカは、たとえば、5〜70μmの平均サイズの粉末の形態で存在することができる。
【0050】
同様に、乾燥した、特に、粉末形態で存在するとき、または粉砕した生成物に、たとえば、直接圧縮、湿式造粒(すなわち、水、シリカ懸濁液などの、バインダーを使った)、押出しまたは、好ましくは、乾式圧縮からなる凝集化工程を任意選択で施すことができる。後者の技法が用いられる場合、圧縮を実施する前に、その中に含まれる空気を除去するため、そしてより一様な圧縮を確保するために粉状生成物を脱気する(予備圧縮または脱ガスとも言われる操作)ことが推奨される。
【0051】
この凝集化工程の結果得ることのできる沈殿シリカは、概して、顆粒の形態で、特に、サイズは、少なくとも1mm、特に、1〜10mm、特に、最大寸法の軸に沿って存在する。
【0052】
以下の実施例は、本発明を例示するものであるが、その範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0053】
用いる出発材料
−濾過工程で得られた、固体含量が27重量%の沈殿シリカZ1165MPのケーキ、
−Al
2O
3として表すと濃度23%およびNa
2O/Al
2O
3重量比0.8を示すアルミン酸ナトリウム溶液
−80g/lに等しい濃度の硫酸。
【0054】
モニタリング基準
−0.5μm未満の粒子のパーセンテージからの、Sedigraph55100デバイス(Micromeretics)で実施された沈殿による粒子サイズ測定。この技術により分析された懸濁液を、純水で4.6重量%まで希釈し、緩やかに攪拌する。得られた懸濁液を続いて、250μmの篩を用いて篩分けし、0.3〜85μmの測定範囲をとって分析を実施する。
−Mastersizer2000デバイス(Malvern)で実施されるレーザー回折による粒子サイズ測定。測定範囲において純水で希釈。ビームの閉塞は8〜13%。
−Zanchetta造粒機での攪拌による分解で失われたエネルギー。
【0055】
分解工程は、Zanchetta造粒機(電気トルク測定による「高せん断三枚刃」造粒乾燥機」)で実施される。
【0056】
Zanchetta造粒機から出てくる各分解ケーキを800μmで篩分けしてから、固体含量を、Malvernレーザー粒子サイズ測定およびSedigraph粒子サイズ測定によりモニターする。
【0057】
分解手順
・温度制御容器(25℃または80℃)で1000回転/分で分解、
・t=0:アルミネートを密閉袋中(容器を後に80℃で制御する場合)で80℃で3時間予熱したケーキ1kg(4mmの篩に予め通して破砕しておいたケーキ)と接触させたところ、0.3%のAl/SiO
2比となる、
・t=7分:1分間の硫酸の添加によるpH調整、
・30分での分解終了後:生成物を続いて800μmの篩に通す。
【0058】
【0059】
試験1および2は、周囲温度(25℃)で実施される分解工程に対応する、高固体含量による比較試験である。
【0060】
分解工程を80℃で実施する本発明による試験3および4は、比較としての高固体含量レベルについての周囲温度で実施された試験1および2よりも必要とする機械エネルギーが少ない。これは、試験1および2においては、200秒で失われたエネルギーは、30600および34300Jであるのに対し、本発明による試験3および4においてはわずか17300および19450Jであるからである。
【0061】
同様に、本発明による試験3および4において、分解工程で失われた累積エネルギーが大幅に減じている(30分後の機械エネルギー)。
【0062】
さらに、ケーキの固体状態から液体状態への変化に対応する強度ピークでの時間は、比較試験1および2の方が、本発明による試験3および4よりも長い。このように、本発明の条件下での分解工程は、高固体含量について、周囲温度で実施する分解工程中によるよりも液体状態への変化に要するエネルギーが少なくて済む。
【0063】
【0064】
細粒含量(0.5μm未満の直径(d)を有する粒子の%)は、分解工程を80℃で実施する試験3および4においては、分解工程を25℃で実施する試験1および2で得られる細粒含量よりも少ないことが分かる。生成物は、80℃での分解工程においては、比較としての固体含量について25℃での分解工程におけるよりも粉砕される範囲が少なかった。