特許第5989905号(P5989905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5989905タービンのための可変ガイド機構、排気ガスターボチャージャーのためのタービン、及び排気ガスターボチャージャー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989905
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】タービンのための可変ガイド機構、排気ガスターボチャージャーのためのタービン、及び排気ガスターボチャージャー
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/24 20060101AFI20160825BHJP
   F01D 17/16 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   F02B37/24
   F01D17/16 A
   F01D17/16 C
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-523445(P2015-523445)
(86)(22)【出願日】2013年7月16日
(65)【公表番号】特表2015-526633(P2015-526633A)
(43)【公表日】2015年9月10日
(86)【国際出願番号】EP2013002101
(87)【国際公開番号】WO2014015958
(87)【国際公開日】20140130
【審査請求日】2015年1月26日
(31)【優先権主張番号】102012106789.9
(32)【優先日】2012年7月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】505448822
【氏名又は名称】アイ・エイチ・アイ チャージング システムズ インターナショナル ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】イェーニケ,ローレンツ
【審査官】 津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−132363(JP,A)
【文献】 実開昭63−82035(JP,U)
【文献】 実開昭63−65821(JP,U)
【文献】 特開2009−114986(JP,A)
【文献】 特開2007−56791(JP,A)
【文献】 特開平11−229886(JP,A)
【文献】 実開昭62−12735(JP,U)
【文献】 特開平6−26352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/24
F01D 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のガイド翼(3)が取付けられた支持リング(2)を備え、前記ガイド翼(3)はガイド翼軸(5)を介して前記支持リング(2)上に回動可能に支持されており、前記ガイド翼軸(5)には作動リンク部材(6)が設けられ、該作動リンク部材(6)は回転リング(7)に係合しており、該回転リング(7)は前記作動リンク部材(6)が嵌合する嵌合凹部(8)を備えている、タービンのための可変ガイド機構において、
前記回転リング(7)は、該回転リングの第1部分(71)において軸方向及び/または径方向に支持されるように形成されており、前記回転リング(7)の第2部分(72)に前記嵌合凹部(8)が設けられており、前記第1部分(71)と前記第2部分(72)とは径方向及び軸方向に互いから離隔した位置にあり、前記回転リング(7)は一体に形成され
前記回転リング(7)は、該回転リングの前記第1部分(71)において前記支持リング(2)上に径方向に支持されるように形成されているか、あるいは、前記回転リング(7)は、該回転リングの前記第1部分(71)において前記ガイド翼軸(5)上に径方向に支持されるように形成され、
前記回転リング(7)を径方向及び/または軸方向に支持するための溝(12)を備えている
ことを特徴とするタービンのための可変ガイド機構。
【請求項2】
前記ガイド翼軸(5)は、前記回転リング(7)を該ガイド翼軸(5)上に支持するための支持具(19)を備えていることを特徴とする請求項記載の可変ガイド機構。
【請求項3】
前記回転リング(7)は転がり軸受(17)を介して支持されていることを特徴とする請求項1または2記載の可変ガイド機構。
【請求項4】
前記回転リング(7)の前記嵌合凹部(8)は少なくともその一部分が、軸方向に立ち上がった壁部(14)により形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項の何れか1項記載の可変ガイド機構。
【請求項5】
前記回転リング(7)はスタンピング加工により製造されたものであることを特徴とする請求項1〜請求項の何れか1項記載の可変ガイド機構。
【請求項6】
排気流通セクションを備え、排気流通セクションのタービンハウジングの中にタービン羽根車が回転可能に収容されている、排気ガスターボチャージャーのためのタービンにおいて、
前記排気流通セクションは、請求項1〜請求項の何れか1項記載の可変ガイド機構(1)を備えており、該可変ガイド機構(1)の前記ガイド翼(3)は前記タービンハウジングの上流側のノズル部の中に配設されていることを特徴とする排気ガスターボチャージャーのためのタービン。
【請求項7】
請求項記載のタービンを備えたことを特徴とする排気ガスターボチャージャー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段に記載した種類のタービンのための可変ガイド機構、請求項に記載した排気ガスターボチャージャーのためのタービン、及び、請求項に記載した排気ガスターボチャージャーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、タービンのための可変ガイド機構が開示されている。この可変ガイド機構は、エンジンから排出された排気がタービン羽根車へ流入する際の流動状態を整えるものである。そうするために、この可変ガイド機構は複数枚の可変ガイド翼を備えており、それら可変ガイド翼は排気流通セクションに形成されたノズル部の中に配設されている。ノズル部は排気流通セクションに形成されたタービンハウジングの上流側に設けられており、タービンハウジングにはタービン羽根車が回転可能に収容されている。この可変ガイド機構は更に、それら可変ガイド翼が取付けられた支持リングを備えている。各々の可変ガイド翼は夫々にガイド翼軸を介して回動可能に支持リング上に支持されている。基本的に、各々のガイド翼軸に夫々に作動リンク部材を装備するようにしてあり、それら作動リンク部材は回転リングに係合している。回転リングにはそれら作動リンク部材が夫々に嵌合する複数の嵌合凹部が形成されている。
【0003】
回転リングは平板リング形に形成されており径方向及び軸方向に当接支持されている。回転リングを径方向及び軸方向に当接支持しているのは支持リングである。回転リングと支持リングとの間に作用する摩擦を低減するために、支持リングに対向している回転リングの当接支持面に複数の凹部が形成されている。これによって、回転リングの表面と支持リングの表面とが当接する当接面積を縮減しており、もって、それら表面の間に作用する摩擦による摩擦損失を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第1 227 221 B1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、簡明な手段を用いて摩擦損失を更に低減した可変ガイド機構を提供することにある。また更に、本発明の目的は、動作信頼性の高いタービンを提供すること、及び、効率を大幅に改善した排気ガスターボチャージャーを構成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、請求項1に記載した特徴を備えたタービンのための可変ガイド機構、請求項に記載した特徴を備えたタービン、及び、請求項に記載した特徴を備えた排気ガスターボチャージャーにより達成される。従属請求項は、本発明の好適且つ重要な構成上の特徴を備えた特に有利な実施の形態を記載したものである。
【0007】
この種のタービンのための可変ガイド機構は、複数枚のガイド翼が取付けられた支持リングを備えており、前記ガイド翼はガイド翼軸を介して前記支持リング上に回動可能に支持されている。前記ガイド翼軸には作動リンク部材が装備されており、該作動リンク部材は回転リングに係合しており、該回転リングは前記作動リンク部材が嵌合する嵌合凹部を備えている。
【0008】
本発明によれば、前記回転リングは、該回転リングの第1部分において軸方向及び/または径方向に支持されるように形成されており、前記回転リングの第2部分に前記嵌合凹部が設けられており、前記第1部分と前記第2部分とは径方向及び軸方向に互いから離隔した位置にある。
【0009】
従ってこのように構成した前記回転リングでは、第1に、前記作動リンク部材を前記回転リングの前記嵌合凹部に嵌合可能にするために、前記第2部分に前記作動リンク部材が嵌合するようにしており、そして、そのようにした前記第2部分から離隔した前記第1部分において前記回転リングが支持されるようにしている。即ち、前記回転リングは、該回転リングのただ1つの部分だけで支持され、つまり、該回転リングの前記第1部分だけで支持されるようにしており、これによって、摩擦が作用する当接面における接触面積が可及的に且つ格段に減縮され、ひいては摩擦損失が低減されるようにしたものである。
【0010】
前記第1部分と前記第2部分とが径方向及び軸方向に互いから離隔した位置にあることから、前記回転リングは、Z形材の断面形状と略々同様の断面形状を有するように形成することができる。また、そのように形成することによって、前記回転リングの厚さを薄くしつつ、それでもなお大きな強度及び剛性を備えたものとすることができる。またそれにより、前記回転リングと前記支持リングとの間の径方向の間隙寸法を高精度に設定することが可能になる。また更にそれによって、前記回転リングの耐摩耗性が向上すると共に、前記回転リングの膠着が発生しにくくなることから、可変ガイド機構の機能性が大いに向上する。
【0011】
本発明に係る可変ガイド機構の実施の形態によれば、前記回転リングは、該回転リングの前記第1部分において前記支持リング上に径方向に支持されるように形成されている。この構成とすることによって、当接支持する箇所の径方向の間隙寸法を調節するための別の部品が不要となるため、本発明に係る可変ガイド機構のコストを大いに低減することができる。
【0012】
本発明に係る可変ガイド機構の他の実施の形態によれば、前記回転リングは、該回転リングの前記第1部分において前記ガイド翼軸上に径方向に支持されるように形成されている。この構成とすることによって、上述したコスト低減という利点が得られることに加えて更に、軽量化も達成することができ、なぜならば、そうすることで前記支持リングの軸方向の寸法をかなり短縮できるからである。また更に、この構成とすることによって、摩擦損失を更に低減することができ、なぜならば、前記回転リングと前記ガイド翼軸の外周面とが接触する箇所の接触状態は略々線接触となるため、接触面積が格段に減縮されるからである。更なる重要な改良点として、前記回転リングが回転するとき、互いに接触している前記回転リングの表面と前記ガイド翼軸の表面とが同一方向へ移動するため、それら表面どうしの間の相対移動速度が従来構成のものと比べて低減されるということがある。
【0013】
また、この他の実施の形態では、前記回転リングを該ガイド翼軸上に支持するために、前記ガイド翼軸が例えば支持ブッシュなどの形の支持具を備えているようにするとよい。支持ブッシュの外周面の表面加工は前記ガイド翼軸それ自体の外周面の表面加工より格段に容易に行えるため、支持ブッシュの外周面に粗面化加工を施す場合にも低コストで加工を行え、そのような加工を施した支持ブッシュを用いることで、前記回転リングと前記支持ブッシュとの間の接触面における摩擦損失を更に低減することができる。
【0014】
本発明に係る可変ガイド機構の特に有利な他の実施の形態では、径方向の支持を確実なものとするために溝が設けられている。かかる溝は、前記回転リングが前記支持リング上に支持される構成とする場合には前記支持リングに設け、また、これとは異なり、前記回転リングが前記ガイド翼軸上に支持される構成とする場合には、かかる溝を前記ガイド翼軸に設けるか、或いは、前記支持ブッシュに設ける。かかる溝を形成する方法としては、例えば切削加工などを用いることがコスト的に有利である。
【0015】
特に有利な更なる他の実施の形態によれば、前記回転リングは転がり軸受を介して支持されている。この実施の形態によれば、潤滑剤が可変ガイド機構を経由して排気に混入するおそれを完全に払拭することができ、なぜならば、例えばボールベアリング、ローラベアリング、ニードルベアリングなどの転がり軸受には、密封型のベアリングケージを装備することができるからである。潤滑剤はベアリングケージの内部に封止され、可変ガイド機構の排気が流通している領域へ漏出することはない。更に、転がり軸受は、滑り軸受と比べて摩擦特性に優れており、耐摩耗性にも優れている。
【0016】
更なる他の実施の形態によれば、前記回転リングの前記嵌合凹部は少なくともその一部分が、軸方向に立ち上がった壁部により形成されている。この実施の形態によれば、前記回転リングの厚さをより薄くすることができ、なぜならば、この軸方向に立ち上がった壁部によって、前記嵌合凹部に嵌合させる前記作動リンク部材をより確実に嵌合位置に案内できるからである。かかる壁部を備えない構成では、前記回転リングの厚さを極めて薄くした場合に、状況によっては前記作動リンク部材を嵌合位置に確実に案内することができず、そのため可変ガイド機構に不具合を生じるおそれがある。かかる壁部を備えることによって、そのような不具合を回避できると共に、前記回転リングの厚さを薄くできることから前記回転リングを軽量化することも可能となる。
【0017】
本発明に係る可変ガイド機構の特に低コストな他の実施の形態によれば、前記回転リングはスタンピング加工により製造されたものである。製造方法としてのスタンピング加工は、特に、厚さの薄い部品を低コストで容易に製造できる製造方法である。ただし、スタンピング加工により製造された部品にはバリが付いていることがある。従来の構成では、動作状況によっては、回転リングの外周縁がその回転リングを囲繞している係止リングと接触することがあり、そのため、回転リングのバリ取りが適切に行われていないと回転リングの膠着が生じるおそれがあった。しかるに、本発明に係る可変ガイド機構の前記回転リングは、上述したように構成されていることから、そのような不具合が生じるおそれが払拭されており、低コストで製造することのできる前記回転リングによって効率的で完璧な動作特性が得られるものとなっている。
【0018】
本発明に係る排気ガスターボチャージャーのためのタービンは、排気流通セクションを備え、排気流通セクションのタービンハウジングの中にタービン羽根車が回転可能に収容されている、排気ガスターボチャージャーのためのタービンであり、該タービンの前記排気流通セクションは、請求項1〜請求項の何れか1項記載の本発明に係る可変ガイド機構を備えており、また、該可変ガイド機構の前記ガイド翼は、前記タービンハウジングの上流側のノズル部の中に配設されていることを特徴とするものである。このタービンの利点は、その動作特性の信頼性が格段に向上していることにあり、この信頼性の向上は、本発明に係る可変ガイド機構を備えることから、前記回転リングの膠着を原因とするタービンの故障が殆ど発生しないことによるものである。
【0019】
また、本発明に係る排気ガスターボチャージャーは、本発明に係るタービンを備えたことを特徴とするものである。この排気ガスターボチャージャーの利点は、1つには、摩擦損失が低減されているために極めて高効率であることにあり、もう1つには、動作信頼性が極めて高いことから、この排気ガスターボチャージャーは故障が非常に少ないということがある。また、これらのことから、特に、この排気ガスターボチャージャーを、車両に搭載されるエンジンに装備した場合には、排気排出量が低減されるという利点が得られ、これは、この排気ガスターボチャージャーの動作特性の信頼性が高く、そのため、この排気ガスターボチャージャーとエンジンとの適合性が非常に優れていることによるものである。
【0020】
本発明の更なる利点、並びに、本発明の好適な様々な実施の形態については、その他の請求項、図面に即した以下の説明、及び、図面の記載から理解される通りのものである。また、図面については以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】従来例に係る可変ガイド機構の断面図である。
図2図1に示した可変ガイド機構の平面図である。
図3】本発明の第1の実施の形態に係る可変ガイド機構の断面図である。
図4図3に示した可変ガイド機構の断面平面図である。
図5図3に示した可変ガイド機構の回転リングを別構成の回転リングに替えた可変ガイド機構の断面平面図である。
図6図5に示した回転リングの部分拡大断面図である。
図7】本発明の第2の実施の形態に係る可変ガイド機構の断面図である。
図8図7に示した可変ガイド機構の断面平面図である。
図9】本発明の第3の実施の形態に係る可変ガイド機構の断面図である。
図10】本発明の第4の実施の形態に係る可変ガイド機構の断面図である。
図11図10に示した可変ガイド機構の断面平面図である。
図12】本発明の第5の実施の形態に係る可変ガイド機構の断面図である。
図13】本発明の第6の実施の形態に係る可変ガイド機構の断面図である。
図14図13に示した可変ガイド機構の断面平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
排気ガスターボチャージャーの排気流通セクション(不図示)は、エンジン(不図示)の排気系(不図示)の中に組み込まれている。ここでいうエンジンとは、例えばオットーエンジンやディーゼルエンジンなどである。また、排気ガスターボチャージャーは更に、吸気流通セクション(不図示)と、軸受構造部(不図示)とを備えており、吸気流通セクションはエンジンの吸気管(不図示)の中に組み込まれている。
【0023】
排気ガスターボチャージャーは、ロータアセンブリ(不図示)を備えている。ロータアセンブリは、燃焼用空気を吸入して圧縮するコンプレッサ羽根車(不図示)と、流入してくる排気を内部で膨張させるタービン羽根車(不図示)と、それら2つの羽根車を一体回転させるように互いに連結して回転軸心を中心として回転するロータ軸(不図示)とを備えている。排気ガスターボチャージャーの軸受構造部は、吸気流通セクションと排気流通セクションとの間に配設されており、ロータ軸はこの軸受構造部によって回転可能に支持されている。
【0024】
排気を排気流通セクションに導入するために、排気流通セクションには導入流路(不図示)が形成されている。導入流路は、エンジンの運転中にタービン羽根車を駆動して回転させる排気の流動状態を整えるものである。タービン羽根車が回転するとロータ軸を介してコンプレッサ羽根車も回転し、それによって燃焼用空気が吸入されて圧縮される。
【0025】
排気流通セクションは、導入流路の下流側に形成された回転対称形の流れを作り出すための渦巻形流路(不図示)を備えている。この渦巻形流路は、導入流路とこの渦巻形流路の下流側のノズル部(不図示)とを接続する接続流路でもある。排気流通セクションは、そのノズル部の下流側に形成されたタービンハウジング(不図示)を備えている。このタービンハウジングの中にタービン羽根車が回転可能に収容されている。排気流通セクションは更に、そのタービンハウジングの下流側に形成された排出流路(不図示)を備えている。この排出流路を介して排気流通セクションから排気が排出される。
【0026】
更に、排気流通セクション内には可変ガイド機構1が配設されている。この可変ガイド機構1は、エンジンが低負荷低回転で運転されているときも、また高負荷高回転で運転されているときも、排気ガスターボチャージャーの効率を可及的最大にできるように排気の流動状態を整えるための機構であり、可変機構として構成されている。
【0027】
図1に示したのは、従来例に係る可変ガイド機構1である。可変ガイド機構1は、タービン羽根車の周囲を囲繞するリング形に構成されている。可変ガイド機構1は支持リング2を備えており、この支持リング2に、流動状態を整えるための複数枚のガイド翼3が取付けられている。それらガイド翼3は支持リング2上に回動可能に支持されている。
【0028】
支持リング2を排気流通セクションの中に配設したならば、複数枚のガイド翼3はノズル部の中に位置する。支持リング2に対向して取付けられているのはシュラウド板4であり、このシュラウド板4は流動状態を整える機能を有するものであり、また、このシュラウド板4を備えることで、可変ガイド機構1が組立ての容易なものになっている。
【0029】
複数枚のガイド翼3を回動可能に支持リング2上に支持するために、それらガイド翼3の各々が夫々にガイド翼軸5を備えている。ガイド翼軸5は、ガイド翼3には固定連結されており、支持リング2には嵌合して回動可能に支持されている。ガイド翼軸5を回転させることでガイド翼3を回動させるために、ガイド翼軸5には、ガイド翼3が固定連結されている端部とは反対側の端部に作動リンク部材6が装備されており、この作動リンク部材6もガイド翼3と同じくガイド翼軸5に固定連結されている。
【0030】
複数枚のガイド翼3を回動させるのは、支持リング2と同軸心的な位置関係にあって可変ガイド機構1に取付けられている回転リング7である。この回転リング7は、複数の作動リンク部材6が夫々に係合する複数の嵌合凹部8を備えている。作動リンク部材6は、ガイド翼軸5に固定連結されている端部とは反対側の端部を、対応する嵌合凹部8に係合可能な形状に形成しておくことが好ましい。
【0031】
この従来例に係る可変ガイド機構1は、回転リング7をその取付位置に係着するために当接支持リング9を備えている。この当接支持リング9は回転リング7を軸方向の一方向に支持するように形成されている。また更に、回転リング7を軸方向の他方向から係着するために係止リング10を備えており、当接支持リング9と係止リング10とは、それら2つのリングの間に回転リング7を回転可能に保持するように形成されて取付けられている。また、回転リング7の径方向の支持は、回転リング7の内周面が係止リング10に当接することによって行われている。
【0032】
これに対して、本発明に係る可変ガイド機構1では、1つには、部品点数を減らすために、またもう1つには、摩擦が作用する接触面積を縮減するために、ガイド翼軸5の全長のうち、ガイド翼3とそのガイド翼3を回動させるための作動リンク部材6との間の部分を、回転リング7が直接的にまたは間接的に囲繞するように、回転リング7を構成し、またそれに合わせて、各々の作動リンク部材6が回転リング7の夫々に対応した嵌合凹部8に嵌合するようにしている。別の言葉で述べるならば、本発明に係る可変ガイド機構1では、回転リング7の断面形状を、Z形材の断面形状に類似した2箇所で屈曲した2次元的な形状にしている。更に別の言葉で述べるならば、本発明に係る可変ガイド機構1では、回転リング7を、第1部分71(以下の説明では第1リング部分71という)、第2部分72(以下の説明では第2リング部分72という)、及び第3部分(以下の説明では第3リング部分73という)を備えたものとしており、従って回転リング7は、第1リング部分71、第2リング部分72、及び第3リング部分73から構成されている。
【0033】
第1リング部分71と第2リング部分72とは径方向及び軸方向に互いから離隔した位置にあるが、ただし互いに同心的な位置関係にあり、それらは第3リング部分73を介して互いに接続している。第3リング部分73は、第1リング部分71と第2リング72部分との間の軸方向の位置のずれを越えてそれらリング部分を橋渡ししている、架橋的接続部のようなものである。第3リング部分73は、第1リング部分71の外周縁に接続することによってこの第1リング部分71に接続しており、また、第2リング部分72の内周縁に接続することによってこの第2リング部分72に接続している。
【0034】
上述した回転リング7の断面形状は、必ずしも回転リング7の全周に亘ってそのような断面形状である必要はなく、全周のうちの少なくとも、第1リング部分71、及び/または、第2リング部分72、及び/または、第3リング部分73が存在する領域においてそのような断面形状であればよい。また、回転リング7と支持リング2との間に作用する摩擦による摩擦損失を低減するための実行容易な手段として、回転リング7に、即ち、その3つのリング部分のうちの少なくとも1つのリング部分に、即ち、第1リング部分71、及び/または、第2リング部分72、及び/または、第3リング部分73に、凸条を形成するのもよく、またそうする場合には、回転リング7をスタンピング加工により製造する際にその凸条の形成を行うようにすることが好ましい。
【0035】
本発明の第1の実施の形態に係るガイド機構1によれば、回転リング7は図3に示したように配設されている。即ち、回転リング7は、その第1リング部分71において支持リング2上に支持されており、また、径方向及び軸方向に当接支持されている。その当接支持のために、支持リング2には、作動リンク部材6に対向する箇所に段部11が形成されている。また、第2リング部分72には、図4に示したように、複数の作動リンク部材6が夫々に係合する複数の嵌合凹部8が形成されており、この回転リング7の第2リング部分72は、複数の作動リンク部材6に当接してそれら作動リンク部材6を支持することができる位置にある。この実施の形態では、第2リング部分72はその全体が円環形状に形成されている。
【0036】
図には示さないが他の実施の形態として、回転リング7の回転移動を確実に案内するために、支持リング2に対向している第1リング部分71の内周面が嵌合する溝12を支持リング2に設けたものがある。図5及び図6は、上述した回転リング7とは異なる構成の回転リング7を2通りの方向から見た図である。この回転リング7では、嵌合凹部8は少なくともその一部分が、軸方向に立ち上がった壁部14により形成されている。かかる壁部14を設けることで回転リング7の厚さDを薄くすることができ、なぜならば、かかる壁部14を設ければ、かかる壁部14が作動リンク部材6に当接して作動リンク部材6を支持することから、回転リング7の厚さDを薄くしても作動リンク部材6を揺動させる上で何ら不都合を生じないからである。
【0037】
本発明の第2の実施の形態に係る可変ガイド機構1は、図7及び図8に示したように構成されている。即ち、平板リング形の当接支持板15を備えており、この当接支持板15の外径寸法ADは回転リング7の内径寸法IDに対応している。回転リング7は、この当接支持板15の外周に嵌合している。当接支持板15と回転リング7とは同心的な位置関係にあり、回転リング7の内周面13が当接支持板15の外周面16に当接することによって、回転リング7は径方向に支持される形で当接支持されている。当接支持板15は例えばねじなどの適宜の固定手段によって支持リング2に固定して取付けられており、そのため当接支持板15は支持リング2に対して相対回転しないようになっている。
【0038】
本発明の第3の実施の形態に係る可変ガイド機構1は、図9に示したように構成されている。第2の実施の形態と同様にこの第3の実施の形態でも、回転リング7は平板リング形の当接支持板15によって径方向に支持されているが、ただしこの第3の実施の形態における当接支持板15は、その外径寸法ADが第2の実施の形態のものと比べて小さく、そのため、この当接支持板15上に支持される回転リング7の内径寸法IDも第2の実施の形態のものと比べて小さい。この実施の形態でも、当接支持板15は適宜の固定手段によって支持リング2に固定されている。
【0039】
図10及び図11に示した本発明の第4の実施の形態では、回転リング7が転がり軸受17(例えばボールベアリングなど)を介して支持リング2上に支持されている。ガイド翼軸5を回動しやすくするために、回転リング7のガイド翼軸5の配設箇所にはこの回転リング7を貫通して軸方向に延在する開口18が形成されている。
【0040】
図12に示した本発明の第5の実施の形態に係る可変ガイド機構1では、回転リング7が、複数のガイド翼軸5の夫々に形成された溝12によって径方向及び軸方向に支持されている。
【0041】
図13及び図14に示した本発明の第6の実施の形態では、複数のガイド翼軸5が夫々に支持ブッシュ19を備えており、それら支持ブッシュ19はガイド翼軸5に固定して取付けられている。また、支持ブッシュ19は、回転リング7を径方向及び軸方向に確実に支持できるように、その外周面20に溝12が形成されており、回転リング7の内周面13がこの溝12に確実に嵌合するようにしてある。
【0042】
回転リング7は、低コストの加工法であるスタンピング加工により製造することが好ましい。
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