特許第5989915号(P5989915)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大日本除蟲菊株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989915
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】匍匐害虫防除用粉剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 53/08 20060101AFI20160825BHJP
   A01N 25/12 20060101ALI20160825BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20160825BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20160825BHJP
   A01P 7/02 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   A01N53/00 508A
   A01N25/12
   A01N25/00 101
   A01P7/04
   A01P7/02
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-537640(P2015-537640)
(86)(22)【出願日】2014年9月5日
(86)【国際出願番号】JP2014073457
(87)【国際公開番号】WO2015041069
(87)【国際公開日】20150326
【審査請求日】2015年9月26日
(31)【優先権主張番号】特願2013-194997(P2013-194997)
(32)【優先日】2013年9月20日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-248764(P2013-248764)
(32)【優先日】2013年11月30日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100157107
【弁理士】
【氏名又は名称】岡 健司
(72)【発明者】
【氏名】下方 宏文
(72)【発明者】
【氏名】浅井 洋
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
【審査官】 福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−056405(JP,A)
【文献】 特開昭63−290803(JP,A)
【文献】 特開2007−112773(JP,A)
【文献】 特開2012−232964(JP,A)
【文献】 特開平02−279603(JP,A)
【文献】 特開昭62−089605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 1/00−65/48
A01P 1/00−23/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
α位にシアノ基を有しないフェノキシベンジルエステル化合物であるフェノトリンと、
重量平均分子量が200のポリプロピレングリコールとを、
鉱物質担体に担持させてなる匍匐害虫防除用粉剤であり、
前記フェノトリンの配合量が粉剤に対して0.3〜2.0重量%であり、
前記ポリプロピレングリコールの配合量が粉剤に対して1.0〜4.0重量%であり、
前記ポリプロピレングリコールの配合量が、
前記フェノトリンの配合量の0.5〜13倍量であることを特徴とする匍匐害虫防除用粉剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外または屋内の匍匐害虫に対する防除用粉剤に係る。更に詳しくはα位にシアノ基を有しないフェノキシベンジルエステル化合物を用い、かつ簡単な構造でありながら、従来と同等以上の防除効果を発現する匍匐害虫防除用粉剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、屋外または屋内における匍匐害虫を駆除するための防除剤が用いられており、これらの防除剤については常により高い防除性能が求められている。
【0003】
このような匍匐害虫防除用粉剤の防除成分にはピレスロイド化合物が一般的に用いられている。
ここで、ピレスロイド化合物は各種の酸成分とアルコール成分との酸エステルであるが、構造内の酸成分のα位あるいはアルコール成分のα位にシアノ基を有しているか否かによって、タイプI(シアノ基を有しないもの)とタイプII(シアノ基を有しているもの)とに分類されている。
【0004】
また、本出願人は既に各種の匍匐害虫防除用粉剤を開示している。具体的には、特許文献1においてはシフルトリンとジプロピレングリコールなどの溶剤を鉱物質担体に担持させた匍匐害虫防除用粉剤を開示している。また、特許文献2においてはシフルトリンとシナモンパウダーを併用することで飛躍的な防除効果を発現させた匍匐害虫防除用粉剤を開示している。さらに、特許文献3においてはシフルトリンと脂肪族炭化水素系溶剤などの溶剤を特定の比率で鉱物質担体に担持させることによって防除効果を長期間に渡って発現させた匍匐害虫防除用粉剤を開示している。
【0005】
しかしながら、これらの匍匐害虫防除用粉剤は、防除成分としていずれも構造内にシアノ基を有しているタイプIIのピレスロイド化合物(シフルトリン)を用いているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4424944号公報
【特許文献2】特許第4813870号公報
【特許文献3】特開2012−232964号公報
【特許文献4】特許第4278654号公報
【特許文献5】特許第4356006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、構造内にシアノ基を有しないタイプIのピレスロイド化合物については、例えば特許文献4、5においてかかるピレスロイド化合物を用いた匍匐害虫防除用粉剤が開示されている。
【0008】
しかしながら、これらの匍匐害虫防除用粉剤は、防除成分として構造内にシアノ基を有しないピレスロイド化合物を用いているものであるが、以下のような問題点がある。まず、特許文献4に記載の害虫防除剤は、害虫と殺虫剤との接触効率を向上させたり、等脚類を石下から這い出させたりすることを特徴とする防除剤であることから、かかる効果を発現させるためのウインターグリーン油などの行動撹乱剤を必須成分として配合しなければならないものとなっている(特許文献4の[請求項1]、[0003]参照)。また、特許文献5に記載の有害生物防除剤は、球状の内部固形剤の表面に、粒状の外部固形剤が付着している複雑な構造となっていることから、製造工程も複雑になり、コストも高くなってしまうという問題がある。
【0009】
今回、本発明者らは、ポリアルキレングリコールやソルビタン脂肪酸エステルを用いることによって、構造内にシアノ基を有しないタイプIのピレスロイド化合物の中でもフェノキシベンジルエステル化合物(特に、フェノトリン、ペルメトリン)を用いて匍匐害虫防除用粉剤を作製することができるという知見を得た。また、かかる匍匐害虫防除用粉剤は、従前のような複雑な構造や他の必須成分を必要とすることなく、極めて高い防除効果を発現するという知見を得た。
【0010】
すなわち本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、α位にシアノ基を有しないフェノキシベンジルエステル化合物を用い、かつ簡単な構造でありながら、従来と同等の防除効果を発現する匍匐害虫防除用粉剤の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る匍匐害虫防除用粉剤は、α位にシアノ基を有しないフェノキシベンジルエステル化合物であるフェノトリンと、重量平均分子量が200のポリプロピレングリコールとを、鉱物質担体に担持させてなる匍匐害虫防除用粉剤であり、フェノトリンの配合量が粉剤に対して0.3〜2.0重量%であり、ポリプロピレングリコールの配合量が粉剤に対して1.0〜4.0重量%であり、ポリプロピレングリコールの配合量が、フェノトリンの配合量の0.5〜13倍量であることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る匍匐害虫防除用粉剤は、ポリアルキレングリコールとして、重量平均分子量が100〜500のものを用いることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る匍匐害虫防除用粉剤は、ポリアルキレングリコールが、ポリプロピレングリコールであることを特徴とする。
【0018】
次に、本発明に係る匍匐害虫防除用粉剤を構成する各構成要件を説明する。
【0019】
(フェノキシベンジルエステル化合物)
まず、本発明に用いられるフェノキシベンジルエステル化合物は、α位にシアノ基を有しないタイプIのピレスロイド化合物であり、具体的にはフェノトリン、ペルメトリンやこれらの各種の異性体が挙げられる。そしてこれらの中でもより高い防除効果が得られることから、フェノトリン、ペルメトリンから選ばれる1種または2種の化合物を用いることが好ましく、さらにその中でもフェノトリンを用いることが好ましい。
【0020】
フェノキシベンジルエステル化合物の配合量としては、使用される環境や防除対象とする害虫などによって適宜決定されるものであるが、本発明に係る匍匐害虫防除用粉剤に対して0.1〜3.0重量%とすることが好ましく、0.3〜2.0重量%とすることがより好ましい。配合量が0.1未満の場合には防除性能の向上が十分に発現しない恐れがあり、3.0重量%を超える場合には防除性能の向上によるメリットは望めず、逆にコスト面によるデメリットの方が大きくなる恐れがある。
また、後記するポリアルキレングリコールやソルビタン脂肪酸エステルとの配合比率の関係からは、3.0重量%を超えるとフェノキシベンジルエステル化合物に対するこれらの溶剤の配合量も多くなることになり、粉体状に成形することが困難となる恐れがある。
【0021】
(ポリアルキレングリコールおよび/またはソルビタン脂肪酸エステル)
次に、本発明の匍匐害虫防除用粉剤は、上記したフェノキシベンジルエステル化合物をポリアルキレングリコールおよび/またはソルビタン脂肪酸エステルを溶剤として担体に保持させることを特徴とするものである。このように、様々な溶剤の中でもポリアルキレングリコールやソルビタン脂肪酸エステルを用いなければ、構造内にシアノ基を有しないタイプIのフェノキシベンジルエステル化合物を用いながら従前と同等の防除効果を発現する特徴を有する、本発明の匍匐害虫防除用粉剤は作製することができないのである。
【0022】
(ポリアルキレングリコール)
ここで、ポリアルキレングリコールはHO(RCHCHO)Hの構造式(Rは水素原子または炭素数1〜3の炭化水素)で表されるものであり、具体的には、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。なお、ポリアルキレングリコールにあまりにも分子量が高いものを使用すると匍匐害虫が匍匐害虫防除用粉剤に接触した際に防除成分が害虫に付着しづらくなる恐れがあることから、これらの中でも重量平均分子量が100〜500のポリプロピレングリコールまたはポリブチレングリコールを用いることが好ましく、さらにその中でも重量平均分子量が200のポリプロピレングリコールを用いることが好ましい。
【0023】
(ソルビタン脂肪酸エステル)
また、ソルビタン脂肪酸エステルとしては、具体的にはソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンセスキオレエートなどが挙げられる。なお、ソルビタン脂肪酸エステルについてもポリアルキレングリコールと同様に、あまりにも分子量が高いものを使用すると匍匐害虫が匍匐害虫防除用粉剤に接触した際に防除成分が害虫に付着しづらくなる恐れがあることから、これらの中でもソルビタンモノオレエートを用いることが好ましい。
【0024】
また、本発明においては、ポリアルキレングリコールやソルビタン脂肪酸エステルに替えてラウリン酸ジエタノールアミドなどを用いることもできる。
【0025】
(ポリアルキレングリコールおよび/またはソルビタン脂肪酸エステルの配合量、フェノキシベンジルエステル化合物に対する配合比率)
ポリアルキレングリコールやソルビタン脂肪酸エステルの配合量としては、使用される環境や防除対象とする害虫などによって適宜決定されるものであるが、本発明に係る匍匐害虫防除用粉剤に対して0.5〜5.0重量%とすることが好ましく、1.0〜4.0重量%とすることが好ましい。配合量が0.5未満の場合には防除性能の向上効果が十分に発現しない恐れがあり、5.0重量%を超える場合には粉体状に調製することができなくなる恐れがあるからである。
【0026】
また、ポリアルキレングリコールやソルビタン脂肪酸エステルの配合量については、上記の配合量に加えてポリアルキレングリコールおよび/またはソルビタン脂肪酸エステルの配合量(配合比率)が、フェノキシベンジルエステル化合物の配合量の0.5〜13倍量であることが好ましく、3〜6倍量であることがより好ましい。配合比率が0.5倍量未満の場合や13倍量を超える場合には、固体状のフェノキシベンジルエステル化合物を使用する場合において、かかるフェノキシベンジルエステル化合物が溶解せず、後記する鉱物質担体に防除成分を均一に担持させることができなくなったり、粉体状に調製することが困難になったりする恐れがあるからである。
【0027】
なお、ポリアルキレングリコールの粘度については特に限定されるものではなく、防除対象とする害虫に応じて適宜設定することができるが、あまりにも高粘度や低粘度のものを使用すると粉体状に成形することが困難になったり、匍匐害虫が匍匐害虫防除用粉剤に接触した際に防除成分が害虫に付着しづらくなったりする恐れがあることから、25℃において5〜100mPa・sであることが好ましい。
【0028】
(鉱物質担体)
本発明に用いられる鉱物質担体としては、カオリン、クレー、タルク、ベントナイト、ゼオライト、ジークライト、カープレックスなどを挙げることができる。
【0029】
なお、上記した構成要件以外にも、必要に応じてアレスリン、プラレトリン、フタルスリン、エトフェンプロックスなどのピレスロイド化合物、フェニトロチオン、ダイアジノン、プロパホスなどの有機リン剤、プロポクスル、メトキシジアゾンなどのカーバメート剤、シラフルオフェンなどの有機ケイ素系殺虫剤、カルタップ、ブプロフェジンなどの殺虫剤、殺ダニ剤、殺菌剤、昆虫成虫かく乱剤、その他の活性成分、種々の界面活性剤、分散剤、PAPなどの流動性改良剤、殺虫成分の安定剤、補助溶剤などを配合することができる。さらに、シナモンパウダー、レモングラスパウダーなど各種パウダー類を添加することもできる。
【0030】
本発明の匍匐害虫防除用粉剤の製造方法としては公知の方法を用いることができる。例えば、ポリアルキレングリコールやソルビタン脂肪酸エステルに本発明に用いるフェノキシベンジルエステル化合物を混合して溶液とし、まず半量程度の鉱物質担体にこの溶液を配合して倍散した後、残りの鉱物質担体を配合することで製造する方法などが挙げられる。
【0031】
そして、こうして得られた本発明の匍匐害虫防除用粉剤は、屋内もしくは屋外において、1m当たり1〜100g、より好ましくは5〜50g散布することによって各種の衛生害虫、不快害虫や農業害虫に優れた防除効果を発揮する。なお、衛生害虫としてはゴキブリ、ノミ、イエダニ、屋内塵性ダニ類、その他の各種のダニ類、トコジラミ(ナンキンムシ)、マダニなど、不快害虫としてはダンゴムシ、ワラジムシ、ムカデ、ヤスデ、ケムシ、ゲジゲジ、アリ、シバンムシなど、農業害虫としてはツマグロヨコバイ、ウンカ類、コブノメイガ、カメムシ類などが例示される。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る匍匐害虫防除用粉剤によれば、ピレスロイド化合物の中でもシアノ基を有しないフェノキシベンジルエステル化合物(特に、フェノトリン、ペルメトリン)を用いながら、防除効果にすぐれた匍匐害虫防除用粉剤を得ることができる。また、簡易な構成でかかる効果を有する匍匐害虫防除用粉剤を得ることができる。
【0033】
また、本発明に係る匍匐害虫防除用粉剤によれば、各構成成分の配合量や配合比率を特定の範囲とすることによって、より防除効果にすぐれた匍匐害虫防除用粉剤を得ることができる。
【0034】
さらに、本発明に係る匍匐害虫防除用粉剤によれば、ポリアルキレングリコールやソルビタン脂肪酸エステルに特定のものを用いることによって、より防除効果にすぐれた匍匐害虫防除用粉剤を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
次に、実施例および比較例に基づいて、本発明の匍匐害虫防除用粉剤を更に詳細に説明する。なお、以下に述べる実施例は本発明を具体化した一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものでない。
【0036】
(実施例1)
重量平均分子量が200のポリプロピレングリコール0.25重量%にペルメトリン0.05重量%を溶解させた混合溶液と、カオリン99.7重量%とを十分に混合した後、ハンマーミルで粉砕混合して、実施例1の匍匐害虫防除用粉剤を得た。
【0037】
(実施例2〜28)
使用する化合物および配合量を表1に記載の通りにした以外は、実施例1と同様にして実施例2〜28の匍匐害虫防除用粉剤を得た。
【0038】
【表1】
【0039】
(比較例1〜5)
使用する化合物および配合量を表1に記載の通りにした以外は、実施例1と同様にして比較例1〜5の匍匐害虫防除用粉剤を得た。
【0040】
(溶解性評価)
なお、実施例および比較例の作製に際しては、[0026]に記載の通り、フェノキシベンジルエステル化合物がポリアルキレングリコールに溶解していたり、あるいはソルビタン脂肪酸エステルを用いる場合には防除成分と混合した後が溶液状となっていないと鉱物質担体に防除成分を均一に担持させることができなくなることから、使用するポリアルキレングリコールやソルビタン脂肪酸エステルと、フェノキシベンジルエステル化合物との溶解性を目視にて確認しながら混合溶液の作製を行った。
その結果、実施例については○評価(問題なく溶解)であったが、グリセリンを用いた比較例2については溶解に長時間を要してしまい×評価(溶解不十分)となった。
【0041】
(防除性能試験)
次に、実施例および比較例の匍匐害虫防除用粉剤について防除性能の評価を行った。防除性能は、以下の試験方法によって求めたKT50値と駆除率から評価を行った。
1)直径15cmのろ紙の上に実施例または比較性の匍匐害虫防除用粉剤0.5gを均一に塗布した。
2)逃亡防止のために内壁に薄くバターを塗ったプラスチックリング(直径12cm、高さ8cm)を1)のろ紙上に設置した。
3)リング内にチャバネゴキブリを放ち、時間の経過に伴うノックダウン虫数を数え、KT50値を求めた。
4)60分間接触後、リング内のチャバネゴキブリを別の容器に移して3%砂糖水を与え、72時間後の死虫数から駆除率(致死率)を求めた。結果を表1に示す。
【0042】
また、実施例3、6、7、11、12、18の匍匐害虫防除用粉剤および比較例1の匍匐害虫防除用粉剤については、以下の方法によって、マダニの防除性能についても評価を行った。
1)直径15cmのろ紙の上に実施例3、6、7、11、12、18または比較性1の匍匐害虫防除用粉剤0.5gを均一に塗布した。
2)逃亡防止のために内壁に薄くタルクを塗ったプラスチックリング(直径3cm、高さ1cm)を1)のろ紙上に設置した。
3)リング内にフタトゲチマダニを放ち、時間の経過に伴うノックダウン虫数を数え、KT50値を求めた。
4)10分間接触後、リング内のフタトゲチマダニを別の容器に移し、24時間後の死虫数から駆除率(致死率)を求めた。結果を表1に示す。
【0043】
その結果、本発明の構成要件を充足する実施例1〜28の匍匐害虫防除用粉剤については、構成要件を充足しない比較例1〜5の匍匐害虫防除用粉剤に比べて高い防除性能を示すことがわかった。すなわち、アルキレングリコールやソルビタン脂肪酸エステルを用いることによって、始めて従前のような複雑な構造や他の必須成分を必要とすることなく、構造内にシアノ基を有しないフェノキシベンジルエステル化合物を用いつつ、従前と同等の防除効果を発現する匍匐害虫防除用粉剤を作製することができることがわかった。
一方、比較例の匍匐害虫防除用粉剤については、本発明の構成要件を具備していないことから、実施例の匍匐害虫防除用粉剤に比べて防除性能が低くなった。以上の結果から本発明の有用性が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の匍匐害虫防除用粉剤は、屋外または屋内の匍匐害虫に対する防除、駆除に用いることができる。