特許第5989962号(P5989962)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5989962
(24)【登録日】2016年8月19日
(45)【発行日】2016年9月7日
(54)【発明の名称】スタイリング化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/92 20060101AFI20160825BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20160825BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20160825BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20160825BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20160825BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20160825BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20160825BHJP
   A61K 8/97 20060101ALI20160825BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20160825BHJP
【FI】
   A61K8/92
   A61K8/36
   A61K8/37
   A61K8/39
   A61K8/63
   A61K8/81
   A61K8/86
   A61K8/97
   A61Q5/06
【請求項の数】5
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2010-235611(P2010-235611)
(22)【出願日】2010年10月20日
(65)【公開番号】特開2012-87096(P2012-87096A)
(43)【公開日】2012年5月10日
【審査請求日】2013年9月6日
【審判番号】不服2015-9649(P2015-9649/J1)
【審判請求日】2015年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000213482
【氏名又は名称】中野製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075409
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久一
(74)【代理人】
【識別番号】100129757
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久彦
(74)【代理人】
【識別番号】100115082
【弁理士】
【氏名又は名称】菅河 忠志
(74)【代理人】
【識別番号】100125243
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】小西 正博
(72)【発明者】
【氏名】藤井 信乃
【合議体】
【審判長】 大熊 幸治
【審判官】 小川 慶子
【審判官】 内藤 伸一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−126388(JP,A)
【文献】 特開2004−161756(JP,A)
【文献】 特開2008−303178(JP,A)
【文献】 特開2007−326797(JP,A)
【文献】 特開2002−284650(JP,A)
【文献】 特開2004−256491(JP,A)
【文献】 特開2009−256257(JP,A)
【文献】 特開2009−40755(JP,A)
【文献】 特開2010−111594(JP,A)
【文献】 特開2009−161488(JP,A)
【文献】 特開2009−40740(JP,A)
【文献】 特開2002−241234(JP,A)
【文献】 特開2002−187825(JP,A)
【文献】 日本化粧品工業連合会 編「日本化粧品原料集2007」薬事日報社、2007年6月28日、283頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00−8/99
A61Q1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ロウ類:1.0〜50.0質量%、(B)アニオン性界面活性剤および/またはノニオン性界面活性剤:0.5〜30.0質量%、(C)(アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)共重合体の2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール塩および/またはジメチルアクリルアミド・アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリル酸メトキシエチル共重合体:0.05〜3.0質量%を夫々含有し、前記(A)ロウ類は、キャンデリラロウ、およびマイクロクリスタリンワックスりなる群から選ばれる1種以上であり、前記(B)アニオン性界面活性剤が高級脂肪酸塩であると共に、前記ノニオン性界面活性剤がグリセリン脂肪酸エステルまたはポリオキシエチレンアルキルエーテルであり、且つ前記(A)ロウ類と(B)アニオン性界面活性剤および/またはノニオン性界面活性剤の質量比[(A):(B)]が1:0.1〜1:3であることを特徴とするスタイリング化粧料。
【請求項2】
平均分子量:1,700,000〜4,800,000の高重合ポリエチレングリコールを0.1〜5.0質量%含有するものである請求項1に記載のスタイリング化粧料。
【請求項3】
無機粉体を1.0〜15.0質量%含有するものである請求項1に記載のスタイリング化粧料。
【請求項4】
ワレモコウエキスおよび/またはγ−オリザノールを含有するものである請求項1〜3のいずれかに記載のスタイリング化粧料。
【請求項5】
シア脂を含有するものである請求項1〜4のいずれかに記載のスタイリング化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再整髪性およびセット力が高く、ヘアスタイルを容易にアレンジでき、そのアレンジしたヘアスタイルを長時間持続させる効果に優れたスタイリング化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
毛髪をセットするためのスタイリング化粧料としては、ワックスに代表されるようなロウ類を配合したものが知られている。このようなスタイリング化粧料は、毛髪を固めることなく、しっかりとした毛束感と手直しのし易さが良好であるという基本性能を発揮するものである。このタイプのスタイリング化粧料は、主にロウ類の種類や配合量によってセット力を調整しているが、仕上がりが重く、べたつく傾向が強いという問題がある。そのため、軟毛や細い毛髪へワックスを使用すると、髪の立ち上がりが弱かったり、作ったヘアスタイルが時間経過と共に崩れてくることがある。
【0003】
こうしたことから、ヘアスタイルの持続力(キープ力)を高めるために、セット力の高いジェル状のスタイリング化粧料にワックスをミックスして使用したり、ワックスでセットした後にスプレーで固めたり、水分が少ないドライ(マット)系のワックスを使用する等の工夫がなされている(例えば、非特許文献1〜3)。
【0004】
また、これらの問題を解決するために、無機粉体を用い、且つ水分をほとんど使用せず、毛髪への接着性によるセット力とキープ力を出すスタイリング化粧料や、ロウ類と特定の油剤に高重合ポリエチレングリコールと低重合ポリエチレングリコールを併用させることで、仕上がり時の質感を軽くし、セット力とキープ力を出すスタイリング化粧料の提案がされている(特許文献1〜4)。しかしながら、これまで提案されているものは、いずれも軟毛や細い毛髪には満足できる仕上がりが達成されず、ワックス特有のしっとり感によって、時間経過と共にスタイルが崩れるといった欠点がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】キラリ!特別編集 モテる髪型オーダーBOOK955 P123〜130 (株)マガジン・マガジン 2009年9月25日発行
【非特許文献2】FINEBOYS+PlusHAIR おしゃれヘアカタログ2010summer P81〜82 (株)日之出出版 2010年5月15日発行
【非特許文献3】キラリ!6月号 P44〜46 (株)マガジン・マガジン 2010年6月1日発行
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4136967号公報
【特許文献2】特開2008−303178号公報
【特許文献3】特許第4440456号公報
【特許文献4】特開2006−096670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、これまでのスタイリング化粧料が持つ問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、毛髪を固めることなくセットし、しっかりとした毛束感と手直しのし易さというワックスの持つ基本性能を発揮させつつ、軟毛や細い毛髪に対してもしっかりとセットでき、軽い仕上がりで、作ったスタイルを長時間持続できるようなスタイリング化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成することができた本発明のスタイリング化粧料とは、(A)ロウ類:1.0〜50.0質量%(スタイリング化粧料全体に対する割合、以下同じ)、(B)アニオン性界面活性剤および/またはノニオン性界面活性剤:0.5〜30.0質量%、(C)(アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)共重合体の2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール塩および/またはジメチルアクリルアミド・アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリル酸メトキシエチル共重合体:0.05〜3.0質量%を夫々含有し、前記(A)ロウ類と(B)アニオン性界面活性剤および/またはノニオン性界面活性剤の質量比[(A):(B)]が1:0.1〜1:3である点に要旨を有するものである。
【0009】
本発明のスタイリング化粧料において、前記ロウ類としては、キャンデリラロウ、マイクロクリスタリンワックスおよびミツロウよりなる群から選ばれる1種以上のものが好ましいものとして挙げられる。
【0010】
本発明のスタイリング化粧料には、必要によって、更に(a)平均分子量1,700,000〜4,800,000の高重合ポリエチレングリコール:0.1〜5.0質量%、(b)無機粉体:1.0〜15.0質量%、(c)ワレモコウエキスおよび/またはγ−オリザノール、(d)シア脂等を含有させることも有効であり、含有させる成分に応じてスタイリング化粧料の特性が更に改善される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、(A)ロウ類、(B)アニオン性界面活性剤および/またはノニオン性界面活性剤、(C)(アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)共重合体の2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール塩および/またはジメチルアクリルアミド・アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリル酸メトキシエチル共重合体を夫々所定量含有すると共に、(A)ロウ類と(B)アニオン性界面活性剤および/またはノニオン性界面活性剤の質量比[(A):(B)]を所定の範囲に設定することによって、軟毛や細い毛髪に対してもしっかりとセットでき、軽い仕上がりで、作ったスタイルを長時間持続できるスタイリング化粧料が実現できた。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、様々な角度から検討を加えた。その結果、(A)ロウ類:1.0〜50.0質量%、(B)アニオン性界面活性剤および/またはノニオン性界面活性剤:0.5〜30.0質量%、(C)(アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)共重合体の2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール塩および/またはジメチルアクリルアミド・アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリル酸メトキシエチル共重合体:0.05〜3.0質量%を夫々含有し、前記(A)ロウ類と(B)アニオン性界面活性剤および/またはノニオン性界面活性剤の質量比[(A):(B)]が1:0.1〜1:3であるようなスタイリング化粧料とすれば、軟毛や細い毛髪に対しても、作ったヘアスタイルを長時間持続できることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
本発明で用いる(A)ロウ類は、常温では固形状で、毛髪に付着させることで毛髪に接着性を持たせ、毛髪を固定する油である。ロウ類としては、キャンデリラロウ、マイクロクリスタリンワックス、ミツロウ、コメヌカロウ、パラフィンワックスおよびカルナウバロウ等が挙げられ、それらを単独または併用して用いることができる。このうち、特にキャンデリラロウ、マイクロクリスタリンワックスおよびミツロウよりなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
【0014】
(A)ロウ類の含有量は、スタイリング化粧料全体に対する割合で1.0〜50.0質量%とする必要があり、好ましくは4.0〜30.0質量%程度である。(A)ロウ類の含有量が1.0質量%より少なくなると、十分なセット力が得られない。また(A)ロウ類の含有量が50.0質量%よりも多くなると、ロウ類の質感によって仕上がりが重くなったり、ゴワついたりする。また、仕上がりが重くなった分、作ったヘアスタイルは持続できなくなる。
【0015】
また、(B)アニオン性界面活性剤および/またはノニオン性界面活性剤は、スタイリング化粧料の乳化に関係するだけでなく、(A)ロウ類特有の重さやゴワつき感を軽減し、更には手や毛髪からの洗い流しにも関与する。本発明で用いる(B)ノニオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;モノステアリン酸グリセリル、自己乳化型モノステアリン酸グリセリル等のグリセリン脂肪酸エステルポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルのポリオキシエチレンアルキルエーテルモノオレイン酸ポリエチレングリコール等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル等が挙げられる。このうち、特にモノステアリン酸グリセリル、自己乳化型モノステアリン酸グリセリル等のグリセリン脂肪酸エステルが好ましい。
【0016】
(B)アニオン性界面活性剤は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸等のリン酸エステル等が挙げられる。このうち、特にラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩が好ましい。
【0017】
(B)アニオン性界面活性剤および/またはノニオン性界面活性剤の含有量は、スタイリング化粧料全体に対して0.5〜30.0質量%とする必要があり、好ましくは1.0〜20.0質量%程度である。(B)アニオン性界面活性剤および/またはノニオン性界面活性剤の含有量(併用する場合は合計含有量)が0.5質量%より少なくなると、ロウ類特有の重さやゴワつきが感じられたり、スタイリング化粧料の安定性が低下する恐れがある。(B)アニオン性界面活性剤および/またはノニオン性界面活性剤の含有量が30.0質量%より多くなると、仕上がりが重くなりベタつきの原因となる。
【0018】
(C)(アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)共重合体の2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)塩および/またはジメチルアクリルアミド・アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリル酸メトキシエチル共重合体は、毛髪へのセット力を高め、キープ力を向上させることができる成分である。(C)(アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)共重合体の2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール塩の具体的なものとして、「プラスサイズL−9540B」、および「プラスサイズL−75CB」(いずれも商品名:互応化学工業株式会社製)等が挙げられる。ジメチルアクリルアミド・アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリル酸メトキシエチル共重合体の具体的なものとして、「プラスサイズ L−2700」(商品名:互応化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0019】
(C)(アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)共重合体の2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール塩および/またはジメチルアクリルアミド・アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリル酸メトキシエチル共重合体の含有量は、スタイリング化粧料全体に対して0.05〜3.0質量%とする必要があり、好ましくは0.1〜1.0質量%程度である。
【0020】
上記のような(C)(アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)共重合体の2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール塩とジメチルアクリルアミド・アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリル酸メトキシエチル共重合体は、夫々単独で含有させることができるが、併用して含有させることによって、毛髪の柔軟性が更に向上する。
【0021】
(C)(アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)共重合体の2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール塩および/またはジメチルアクリルアミド・アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリル酸メトキシエチル共重合体の含有量が0.05質量%より少なくなると、キープ力が弱くなり、軟毛や細い毛髪のヘアスタイルが保持できない。
【0022】
(C)(アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)共重合体の2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール塩および/またはジメチルアクリルアミド・アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリル酸メトキシエチル共重合体の含有量が3.0質量%よりも多くなると、樹脂特有のバリバリとした質感が感じられ、ワックスを配合することによる効果の一つである再整髪性が低下することになる。
【0023】
上記(A)ロウ類と、(B)アニオン性界面活性剤および/またはノニオン性界面活性剤の配合比は、質量比[(A):(B)]で1:0.1〜1:3とする必要がある。この質量比[(A):(B)]は、好ましくは1:0.2〜1:2程度である。(B)アニオン性界面活性剤および/またはノニオン性界面活性剤が(A):(B)=1:0.1より少なくなると、ロウ類特有の重さやゴワつきが感じられたり、スタイリング化粧料の安定性が低下する恐れがある。(B)アニオン性界面活性剤および/またはノニオン性界面活性剤が(A):(B)=1:3より多くなると、仕上がりが重くなりベタつきの原因となる。
【0024】
本発明のスタイリング化粧料においては、再整髪性や安定性、クリームの伸びを向上させるために、平均分子量1,700,000〜4,800,000の高重合ポリエチレングリコールを含有させることも有用である。より好ましい平均分子量は、3,300,000〜3,800,000程度である。平均分子量1,700,000〜4,800,000の高重合ポリエチレングリコールの具体的なものとしては、「PEO−8P」、「PEO−15P」(いずれも住友精化株式会社製)等が挙げられる。
【0025】
本発明で用いる高重合ポリエチレングリコールの平均分子量は、オストワールド粘度計を用いて極限粘度[η]を測定し、以下(1)式より算出される[例えば、J.Appl.Polymer.Sci,1,56(1959)]。
(極限粘度[η])=6.4×10-5×(平均分子量)0.82 ・・・(1)
但し、溶媒は純水、測定温度35℃に限る。
【0026】
また上記極限粘度[η]の測定は、以下の手順に従って求められる。まずオストワールド粘度計を用いて同一条件にて測定した標準液(純水)と被検液[ポリエチレンオキサイド(PEO)希薄溶液]の粘度を夫々η0,ηとすれば、ポアジュイコの法則によって、相対粘度ηrは下記(2)式のように表される。
相対粘度ηr=η/η0=(h・g・ρ・t)/(h・g・ρ0・t0
=(ρ・t)/(ρ0・t0) ・・・(2)
但し、h:オストワールド粘度計内の液面差の平均値
g:重力定数
ρ0:標準液(純水)の密度
ρ:被検液体(PEO希薄溶液)の密度
t0:標準液(純水)のオストワールド粘度計管内通過時間(秒)
t:被検液体(PEO希薄溶液)のオストワールド粘度計管内通過時間(秒)
【0027】
希薄溶液を用いるので、ρ≒ρ0とすると相対粘度ηr=t/t0となる。また比粘度ηspは(η−η0)/η0=ηr−1と表せる。一方、極限粘度は下記(3)式、(4)式のように定義され、相対粘度ηr、比粘度ηspを測定により数点算出し、それと濃度の関係からc→0のときの値を算出し、極限粘度[η]を求める。
【0028】
【数1】
【0029】
【数2】
【0030】
高重合ポリエチレングリコールの含有量は、スタイリング化粧料全体に対する割合で0.1〜5.0質量%が好ましく、より好ましくは0.2〜1.0質量%程度である。高重合ポリエチレングリコールの含有量が0.1質量%より少なくなると、高重合ポリエチレングリコールの粘着性が感じられず、再整髪性等の向上は認められない。高重合ポリエチレングリコールの含有量が5.0質量%より多くなると、高重合ポリエチレングリコールを配合することによる糸引きが強くなり、毛髪に塗布しにくくなったり、ベタつきの原因となる。
【0031】
本発明においては、ドライ感やキープ力を向上させるために、必要によって、高重合ポリエチレングリコールの代わりに無機粉体を含有することも有効である。こうした無機粉体としては、カオリン、マイカ、海泥等が挙げられ、このうち特にカオリンが好ましい。無機粉体の具体的なものとして、「ASP−170」(ENGELHARD CORPORATION製)、「セリサイト DN」、「ミロネクトン」(大日本化成株式会社製)等が挙げられる。
【0032】
無機粉体の含有量は、1.0〜15.0質量%が好ましく、より好ましくは4.0〜10.0質量%程度である。無機粉体の含有量が1.0質量%より少なくなると、ドライ感が感じられない。無機粉体の含有量が15.0質量%よりも多くなると、ドライ感が強くなり、毛髪に塗布した後にパサつきや引っ掛かりの原因となる。
【0033】
本発明のスタイリング化粧料においては、紫外線による毛髪のダメージ抑制やカラーの変色・退色を抑制するために、抗酸化剤としてワレモコウエキスやγ―オリザノールを含有することもできる。ワレモコウエキスやγ−オリザノールの含有量は、スタイリング化粧料全体に対して0.000005〜1.0質量%が好ましい。ワレモコウエキスやγ−オリザノールの含有量が、0.000005質量%より少なくなると、紫外線による毛髪のダメージの抑制やカラーの変色・退色を抑制することができない。ワレモコウエキスやγ−オリザノールの含有量が、1.0質量%より多くなると、スタイリング化粧料の粘性や安定性が低下する恐れがある。
【0034】
本発明のスタイリング化粧料においては、紫外線による髪のダメージ抑制やカラーの変色・退色を抑制するために、紫外線防御剤としてシア脂を含有することができる。シア脂の含有量は、スタイリング化粧料全体に対して0.0005〜1.0質量%が好ましい。シア脂の含有量が0.0005質量%より少なくなると、紫外線による毛髪のダメージの抑制やカラーの変色・退色を抑制することができない。シア脂の含有量が1.0質量%よりも多くなると、スタイリング化粧料の仕上がりが重くなり、作ったヘアスタイルが時間経過と共に崩れる恐れがある。
【0035】
本発明のスタイリング化粧料には、上記以外にもスタイリング化粧料に通常添加されるような成分(添加剤)を含有することができる。こうした添加剤としては、タンパク質類、加水分解タンパク質類、アミノ酸類、紫外線吸収剤(ワレモコウエキス、γ−オリザノールおよびシア脂を除く)、保湿剤、油脂剤、ラノリン類、高級アルコール類、フッ素系化合物類、シリコーン類、カチオン化ポリマー類、界面活性剤(カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤)、消臭剤、防腐剤、キレート剤、pH調整剤、溶剤、抗炎症剤、香料、色素等を挙げることができ、これらを適宜配合することができる。
【0036】
本発明のスタイリング化粧料は、クリーム剤型であることが好ましいが、クリーム剤型以外の液状、乳液、ゲル、スプレー、フォーム剤型等でも利用することができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0038】
[実施例1]
(再整髪性試験用毛束の作製)
化学的処理(例えば、パーマ処理、ヘアカラー処理、ブリーチ処理など)を全く受けていない毛髪を用いて、長さ20cm、重さ15gの試験用毛束を作製し、完全に乾燥させた後に以下の評価に用いた。尚、毛束に用いた毛髪については、「毛髪直径計測システム」[カトーテック(株)製]により毛髪の直径を計測し、80μm以下の毛髪を用いた(試験用毛髪については、以下同じ)。
【0039】
(毛髪の再整髪性の評価方法)
専門パネラー10名により、試験用毛束(長さ:20cm、重さ:15g)に、各処方例で調製したスタイリング化粧料を1.0g塗布し、毛髪に均一にのばした。その後、20℃、湿度60%で24時間以上調湿し、再び毛髪をくしで通し、毛髪の再整髪性を下記の3段階評価(評価点)で目視評価し、評価点の平均値を求め、以下の基準で判定した。
3点:くしを通した後でも非常にスタイルが作りやすい
2点:くしを通した後でもスタイルが作りやすい
1点:くしを通した後のスタイルが作りにくい
【0040】
[再整髪性の評価基準]
◎:2.5点以上
○:2点以上、2.5点未満
△:1.5点以上、2点未満
×:1点以上、1.5点未満
【0041】
(毛髪のセット力の評価方法:セット力(1))
専門パネラー10名により、試験用ウィッグ(毛髪の長さ:20cm)に、各処方例で調製したスタイリング化粧料を全体に適量(2.0g)塗布し、毛髪に均一にのばした。その後毛髪を根元から立ち上げ、セット力[この方法による評価をセット力(1)と呼ぶ]を下記の3段階評価(評価点)で官能評価し、評価点の平均値を求め、以下の基準で判定した。
3点:非常に立ち上げやすい
2点:立ち上げやすい
1点:立ち上げにくい
【0042】
[セット力(1)の評価基準]
◎:2.5点以上
○:2点以上、2.5点未満
△:1.5点以上、2点未満
×:1点以上、1.5点未満
【0043】
これらの結果を、スタイリング化粧料の処方例(処方例1〜15)と共に、下記表1、2に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
表1の結果から次のように考察できる。(A)ロウ類がキャンデリラロウ、マイクロクリスタリンワックスおよびミツロウの場合(処方例1〜3、7〜9)では、セット力がより高まることが分かる。
【0047】
表2の結果から次のように考察できる。(A)ロウ類が1.0質量%より少なくなると(処方例11)、十分なセット力が得られず、再整髪性も低下することが分かる。また(A)ロウ類が30.0質量%より多くなると(処方例15)、仕上がりが重くなるため再整髪性が低下することが分かる。
【0048】
[実施例2]
下記表3〜5に示す各種スタイリング化粧料(処方例16〜33)を用いて実施例1と同様に評価[再整髪性、セット力(1)]すると共に、下記の方法によって毛髪の軽さ(ベタつきのなさ)を評価した。
【0049】
(毛髪の軽さ試験用毛束の作製)
化学的処理(例えば、パーマ処理、ヘアカラー処理、ブリーチ処理など)を全く受けていない毛髪を用いて、長さ20cm、重さ15gの試験用毛束を作製し、完全に乾燥させた後に以下の評価に用いた。
【0050】
(毛髪の軽さの評価方法)
専門パネラー10名により、試験用毛束(長さ:20cm、重さ:15g)に、各処方例で調製したスタイリング化粧料を1.0g塗布し、毛髪に均一にのばした。その後、20℃、湿度60%で24時間以上調湿し、毛髪の軽さ(ベタつきのなさ)を下記の3段階評価(評価点)で官能評価し、評価点の平均値を求め、以下の基準で判定した。
3点:非常に軽い(全くベタつかない)
2点:軽い(ほとんどベタつかない)
1点:重い(ベタつく)
【0051】
[毛髪の軽さ評価基準]
◎:2.5点以上
○:2点以上、2.5点未満
△:1.5点以上、2点未満
×:1点以上、1.5点未満
【0052】
これらの結果を、スタイリング化粧料の処方例(処方例16〜33)と共に、下記表3〜5に示す。尚、表3には、比較のために前記表1に示した処方例1の結果も同時に示した。
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【0055】
【表5】
【0056】
表3の結果から次のように考察できる。(B)アニオン性界面活性剤が高級脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩である場合や、ノニオン性界面活性剤がグリセリン脂肪酸エステルである場合(処方例1、16〜18、21)では、軽い仕上がりが得られ、セット力がより高まることが分かる。
【0057】
表4の結果から次のように考察できる。(B)アニオン性界面活性剤および/またはノニオン性界面活性剤が0.5質量%より少なくなると(処方例23)、ロウ類特有の重さやゴワつきが感じられるため、軽さ、再整髪性およびセット力が低下することが分かる。また(B)アニオン性界面活性剤および/またはノニオン性界面活性剤が30.0質量%よりも多くなると(処方例27)、仕上がりが重くなり、再整髪性およびセット力が低下することが分かる。
【0058】
表5の結果から次のように考察できる。(B)アニオン界面活性剤および/またはノニオン性界面活性剤の含有量が(A):(B)=1:0.1より少なくなると(処方例28)、ロウ類特有の重さやゴワつきを感じるため、軽さ、再整髪性およびセット力が低下することが分かる。また(B)アニオン界面活性剤および/またはノニオン性界面活性剤の含有量が(A):(B)=1:3より多くなると(処方例33)、仕上がりが重くなり、再整髪性やセット力が低下することが分かる。
【0059】
[実施例3]
下記表6に示す各種スタイリング化粧料(処方例34〜37)を用いて実施例2と同様に評価[再整髪性、セット力(1)、毛髪の軽さ]すると共に、下記の方法によって毛髪のスタイルの保持性[この方法による評価をスタイルの保持性(1)と呼ぶ]を評価した。
【0060】
(スタイルの保持性の評価方法:スタイルの保持性(1))
専門パネラー10名により、試験用ウィッグ(毛髪の長さ:20cm)に、各処方例で調製したスタイリング化粧料を全体に適量(2.0g)塗布し、毛髪に均一にのばした。その後毛髪を根元から立ち上げてセットし、20℃、湿度60%で1時間放置を行ない、立ち上げた毛髪の状態を確認した。下記の3段階評価(評価点)で官能評価し、評価点の平均値を求め、以下の基準で判定した。
3点:立ち上げた毛髪が、ほとんど崩れていない
2点:立ち上げた毛髪が、少し崩れている
1点:立ち上げた毛髪が、ほとんど崩れている
【0061】
[スタイルの保持性(1)評価基準]
◎:2.5点以上
○:2点以上、2.5点未満
△:1.5点以上、2点未満
×:1点以上、1.5点未満
【0062】
これらの結果を、スタイリング化粧料の処方例(処方例34〜37)と共に、下記表6に示す。尚、表6には、比較のために前記表1に示した処方例1の結果も同時に示した。
【0063】
【表6】
【0064】
表6の結果から次のように考察できる。(C)(アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)共重合体の2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール塩および/またはジメチルアクリルアミド・アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリル酸メトキシエチル共重合体以外の樹脂を用いた場合(処方例35〜37)では、樹脂特有のバリバリとした質感が感じられ再整髪性が低下することが分かる。
【0065】
[実施例4]
下記表7に示す各種スタイリング化粧料(処方例38〜45)を用いて実施例3と同様に評価[再整髪性、セット力(1)、毛髪の軽さ、スタイルの保持性(1)]すると共に、下記の方法によって毛髪の柔軟性を評価した。
【0066】
(毛髪の柔軟性試験用毛束の作製)
化学的処理(例えば、パーマ処理、ヘアカラー処理、ブリーチ処理など)を全く受けていない毛髪を用いて、長さ20cm、重さ15gの試験用毛束を作製し、完全に乾燥させた後に以下の評価に用いた。
【0067】
(毛髪の柔軟性の評価方法)
専門パネラー10名により、試験用毛束(長さ:20cm、重さ:15g)に、各処方例で調製したスタイリング化粧料を1.0g塗布し、毛髪に均一にのばした。その後、20℃、湿度60%で24時間以上調湿し、毛髪の柔軟性を下記の3段階評価(評価点)で官能評価し、評価点の平均値を求め、以下の基準で判定した。
3点:やや柔軟性がある
2点:やや硬い
1点:硬い
【0068】
[毛髪の柔軟性の評価基準]
◎:2.5点以上
○:2点以上、2.5点未満
△:1.5点以上、2点未満
×:1点以上、1.5点未満
【0069】
これらの結果を、スタイリング化粧料の処方例(処方例38〜45)と共に、下記表7に示す。
【0070】
【表7】
【0071】
表7の結果から次のように考察できる。(C)(アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)共重合体の2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール塩および/またはジメチルアクリルアミド・アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリル酸メトキシエチル共重合体が0.05質量%より少なくなると(処方例38、43)、十分なスタイルの保持性が得られないことが分かる。(C)(アクリル酸アルキル/ジアセトンアクリルアミド)共重合体の2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール塩および/またはジメチルアクリルアミド・アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリル酸メトキシエチル共重合体の合計含有量が3.0質量%より多くなると(処方例42、45)、樹脂特有のバリバリとした質感が感じられ再整髪性が著しく低下することが分かる。
【0072】
[実施例5]
下記表8に示す各種スタイリング化粧料(処方例46〜50)を用いて実施例3と同様に評価[再整髪性、セット力(1)、毛髪の軽さ、スタイルの保持性(1)]すると共に、下記の方法によって「クリームののばし易さ」を評価した。
【0073】
(クリームののばし易さの評価方法)
専門パネラー10名により、試験用ウィッグ(毛髪の長さ:20cm)に、各処方例で調製したスタイリング化粧料を全体に適量(2.0g)塗布し、毛髪に均一にのばした。塗布する前に手ひらでのばす際ののび易さとウィッグに塗布した際の塗布のし易さを下記の3段階評価(評価点)で官能評価し、評価点の平均値を求め、以下の基準で判定した。
3点:非常にのび易い、非常に塗布しやすい
2点:のび易い、塗布しやすい
1点:のび難い、塗布しにくい
【0074】
[クリームののばし易さの評価基準]
◎:2.5点以上
○:2点以上、2.5点未満
△:1.5点以上、2点未満
×:1点以上、1.5点未満
【0075】
これらの結果を、スタイリング化粧料の処方例(処方例46〜50)と共に、下記表8に示す。
【0076】
【表8】
【0077】
表8の結果から次のように考察できる。平均分子量1,700,000〜4,800,000の高重合ポリエチレングリコールを用いない場合には(処方例46、50)、クリームの伸びが悪くなり、髪に不均一に付着してしまうことが分かる。
【0078】
[実施例6]
下記表9に示す各種スタイリング化粧料(処方例51〜54)を用いて実施例5と同様に評価[再整髪性、セット力(1)、毛髪の軽さ、スタイルの保持性(1)、クリームののばし易さ]すると共に、下記の各方法によってセット力[この方法による評価をセット力(2)と呼ぶ]およびスタイルの保持性[この方法による評価をスタイルの保持性(2)と呼ぶ]を評価した。
【0079】
(セット力試験用毛束の作製)
化学的処理(例えば、パーマ処理、ヘアカラー処理、ブリーチ処理など)を全く受けていない毛髪を用いて、長さ20cm、重さ1.0gの試験用毛束を作製し、完全に乾燥させた後に以下の評価に用いた。
【0080】
(毛髪のセット力の評価方法:セット力(2))
試験用毛束1.0gにスタイリング化粧料0.1gを塗布し、ロッド(直径2.5cm)に巻きつけ固定し、60℃で30分間乾燥させ、カールを形成した。その後、20℃、湿度60%で1時間以上放置し冷却し、ロッドから毛髪を外した。カールを形成した毛髪の自然長を比較することにより、セット力を評価した。このとき、カール形成直後の長さ(自然長:吊るした状態での長さ)がロッド径(2.5cm)に近い長さであれば、セット力が高いと評価できるものである。そして、以下の評価基準で判定した。
【0081】
[セット力(2)の評価基準]
◎:ロッド径(2.5cm)+2.5cm未満
○:ロッド径(2.5cm)+2.5cm以上、3.5cm未満
△:ロッド径(2.5cm)+3.5cm以上、4.5cm未満
×:ロッド径(2.5cm)+4.5cm以上
【0082】
(スタイルの保持性試験用毛束の作製)
化学的処理(例えば、パーマ処理、ヘアカラー処理、ブリーチ処理など)を全く受けていない毛髪を用いて、長さ20cm、重さ1.0gの試験用毛束を作製し、完全に乾燥させた後に以下の評価に用いた。
【0083】
[毛髪のスタイル保持性の評価方法:スタイルの保持性(2)]
試験用毛束1.0gにスタイリング化粧料0.1gを塗布し、ロッド(直径2.5cm)に巻きつけ固定し、60℃で30分間乾燥させ、カールを形成した。その後、20℃、湿度60%で1時間以上放置し冷却し、ロッドから毛髪を外した。カールを形成した毛髪を20℃で1時間放置した後(相対湿度:60%)、その自然長を比較することにより、スタイルの保持性を評価した。このとき、カール形成直後の長さ(自然長:吊るした状態での長さ)を100%とし、1時間放置後の自然長が長くなるにつれて、スタイルの保持性が低くなると評価できるものである。そして、以下の評価基準で判定した。
【0084】
[スタイルの保持性(2)の評価基準]
◎:100%以上、150%未満
○:150%以上、200%未満
△:200%以上、250%未満
×:250%以上
【0085】
これらの結果を、スタイリング化粧料の処方例(処方例51〜54)と共に、下記表9に示す。尚、表9には、比較のために前記表8に示した処方例48の結果も同時に示した。
【0086】
【表9】
【0087】
表9の結果から次のように考察できる。平均分子量1,700,000〜4,800,000の高重合ポリエチレングリコールが0.05質量%より少ない場合(処方例51)では、クリームののびが悪いことが分かる。平均分子量1,700,000〜4,800,000の高重合ポリエチレングリコールが5.0質量%より多い場合(処方例54)では、クリームののびが悪く、仕上がりが重くなり、時間経過後のセット力およびスタイルの保持性が低下することが分かる。
【0088】
[実施例7]
下記表10に示す各種スタイリング化粧料(処方例55〜57)を用いて実施例3と同様に評価[再整髪性、セット力(1)、毛髪の軽さ、スタイルの保持性(1)]すると共に、下記の各方法によってドライ感(サラッとした手触りで、ボリュームが出易い質感)を評価した。
【0089】
(ドライ感の評価方法)
専門パネラー10名により、試験用ウィッグ(毛髪の長さ:20cm)に、各処方例で調製したスタイリング化粧料を全体に適量(2.0g)塗布し、毛髪に均一にのばしセットした。その際のドライ感を下記の3段階評価(評価点)で官能評価し、評価点の平均値を求め、以下の基準で判定した。
3点:非常にサラッとしていて、ボリュームが出やすい
2点:サラッとしていて、ボリュームが出やすい
1点:サラッとしない(しっとりしている)、ボリュームが出ない
【0090】
[ドライ感の評価基準]
◎:2.5点以上
○:2点以上、2.5点未満
△:1.5点以上、2点未満
×:1点以上、1.5点未満
【0091】
これらの結果を、スタイリング化粧料の処方例(処方例55〜57)と共に、下記表10に示す。
【0092】
【表10】
【0093】
表10の結果から、無機粉体の中でもカオリンを含有させることでドライ感がより高まることが分かる(処方例55)。
【0094】
[実施例8]
下記表11に示す各種スタイリング化粧料(処方例58〜62)を用いて実施例6と同様に評価[再整髪性、セット力(1)、(2)、毛髪の軽さ、スタイルの保持性(1)、(2)]すると共に、実施例7と同様にしてドライ感(サラッとした手触りで、ボリュームが出易い質感)を評価した。
【0095】
これらの結果を、スタイリング化粧料の処方例(処方例58〜62)と共に、下記表11に示す。
【0096】
【表11】
【0097】
表11の結果から次のように考察できる。無機粉体が1.0質量%より少ない場合(処方例58)では、ドライ感が低下することが分かる。無機粉体が15.0質量%より多い場合(処方例62)では、無機粉体の含有量が多くなりすぎ、毛髪にパサつきが感じられロウ類などの粘着性が低下し、時間経過後のセット力およびスタイルの保持性が低下することが分かる。
【0098】
[実施例9]
下記表12に示すスタイリング化粧料(処方例63)を用いて実施例3と同様に評価[再整髪性、セット力(1)、毛髪の軽さ、スタイルの保持性(1)]すると共に、下記の各方法によってカラー退色防止能を評価した。
【0099】
(カラー退色防止能試験用毛束の作製)
化学的処理(例えば、パーマ処理、ヘアカラー処理、ブリーチ処理など)を全く受けていない白髪に、キャラデコ A/v−7(クリーム状酸化染毛剤:中野製薬株式会社製)とキャラデコ オキサイド 06(過酸化水素系酸化剤:中野製薬株式会社製)を1:1(質量比)となるように混合した酸化染毛剤を質量比1:1の割合で塗布し、30℃、30分間の条件で処理した後、10質量%のSDS溶液(ドデシル硫酸ナトリウム溶液)によって洗浄し、完全に乾燥させ試験用毛束を調製し、以下の評価に用いた。
【0100】
(カラーの退色防止能の評価方法)
試験用毛束1.0gに各処方例で調製したスタイリング化粧料を0.2g塗布し、毛髪に均一にのばした。その後、東光電気株式会社製の「デルマレイ−200」を用いてUV−A(紫外線のA波)を500分間照射(3日分のUV−Aの照射量)し、その際のカラーの退色防止能を専門パネラー10名により、下記の3段階評価(評価点)で目視評価し、評価点の平均値を求め、以下の基準で判定した。
3点:ほとんど退色・変色していない
2点:わずかに退色・変色している
1点:退色・変色している
【0101】
[カラーの退色防止能の評価基準]
◎:2.5点以上
○:2点以上、2.5点未満
△:1.5点以上、2点未満
×:1点以上、1.5点未満
【0102】
この結果を、スタイリング化粧料の処方例(処方例63)と共に、下記表12に示す。
尚、表12には、前記表1に示した処方例1の結果も同時に示した。
【0103】
【表12】
【0104】
この結果から、ワレモコウエキス、γ−オリザノールおよびシア脂を含有することで、カラーの退色を防止できることが分かる(処方例63)。